JP2000328811A - ワイヤ束を用いた振動エネルギ吸収装置 - Google Patents

ワイヤ束を用いた振動エネルギ吸収装置

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JP2000328811A
JP2000328811A JP11143337A JP14333799A JP2000328811A JP 2000328811 A JP2000328811 A JP 2000328811A JP 11143337 A JP11143337 A JP 11143337A JP 14333799 A JP14333799 A JP 14333799A JP 2000328811 A JP2000328811 A JP 2000328811A
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wire bundle
wire
energy absorbing
absorbing device
vibration energy
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Yukio Nakamura
幸夫 中村
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Yokohama Rubber Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ワイヤ束ダンパーを使用し、建物の地震動等
により振動を効果的に抑制することができ且つ長期間の
寿命に耐え得る振動エネルギ吸収装置を得る。 【解決手段】 相対的に変位を生じ得る二つの構造体の
一方に、所定の間隔で対向する2つの面を設け、他方の
構造体をこれらの2つの面の間に挟み込む形状とし、金
属又はエンジニアリングプラスチックの複数本のワイヤ
を束ねて成るワイヤ束の両端を一方の構造体の2つの面
側にそれぞれ固定すると共に、該ワイヤ束の中途部分を
他方の構造体に設けた孔に貫通・固定したことを特徴と
する、ワイヤ束を用いた振動エネルギ吸収装置を構成す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2つの部材間の相
対的な変位による運動エネルギを吸収するワイヤ束を用
いた振動エネルギ吸収装置、特に橋梁、ビル、家屋等の
建築物の風荷重、交通振動等、常時微振動から大地震に
至る振動をワイヤ束を利用して吸収させ、各種建築物を
地震動等の振動から保護するエネルギ吸収装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ワイヤ束或いはワイヤロープを用いて建
造物の振動エネルギを吸収する装置として、従来、次の
ような装置が知られている。例えば、特開平2−272
160号公報には、建物壁及び非免震床の少なくとも一
方と前記建物内に配設された免震床の底部を構成する梁
との間にワイヤロープアイソレータを配設して成る緩衝
装置が開示されている。そして、このワイヤロープアイ
ソレータは、ステンレス製のワイヤロープを螺旋状に巻
いて2枚のリテーナで上下をそれぞれ締め付けた構造と
なっている。
【0003】また、特開平9−13318号公報には、
高架橋の主桁に地震時の衝撃的な荷重が付与される時に
ボルトや連結板が損傷するのを防ぐために、主桁の遊間
部に、1対の連結板を相互に独立してリンク式に連結
し、連結板間をワイヤロープで連結することにより、衝
撃荷重を吸収するようにした橋桁の耐震連結装置が開示
されている。
【0004】また、特開平9−13319号公報では、
相隣る主桁の遊間部に対向する腹板に連結板としてシャ
ープレートを添設し、高力ボルトで連結し、フランジに
近接してワイヤソケットにワイヤロープを外ケーブル式
に張設した橋桁の主桁連結工法が開示されている。一
方、建築物の壁面に設置する振動吸収装置、即ち振動吸
収型ビルブレースとして、例えば特開平5−44356
号公報では、ビルブレースを、低降伏応力度鋼部材から
なるエネルギ吸収部材を介して梁に取り付け、地震等に
起因する振動を抑制することが開示されている。
【0005】また、特開平5−59840号公報に開示
されている高減衰構造物では、建造物の柱梁架構内にブ
レースを取り付け、高減衰要素を介在して設置し、受動
型の制振構造を実現するものである。また、特開昭63
−233135号公報に開示されている構造体の減衰構
造では、ディスクダンパーをリンク状に組み込み、摩擦
力を用いて振動減衰機能を持たせている。
【0006】また、特開平2−210172号公報に開
示されている耐震壁では、ダンパーとブレースとを重ね
て締結し、摩擦力を用いて振動減衰機能を持たせてい
る。更にまた、すでに建っている既存ビルに発生する風
(台風)・地震・交通振動等の振動を吸収するのに、ビ
ルの変形をエネルギー減衰を使って減少させる目的で、
後から外部にブレース枠組構造を設け、ビルと当該ブレ
ース間にハネカム構造体を用いる技術が公然実施されて
いる。このようなビルブレース用のハネカム構造体につ
いて、図1及び図2により説明する。図1は既存のビル
を示し、図2は図1の一部を拡大して示す。1は建物全
体、2は既存建物の水平梁(大梁)、3は水平ブレー
ス、4は大梁、5は垂直ブレース、6はハネカムダンパ
ーである。
【0007】ハネカムダンパー6は垂直ブレース5の上
部と大梁4との間に設置される。即ち、ハネカムダンパ
ー6の底部は垂直ブレースの上部に固定され、ハネカム
ダンパー6の上部は大梁4に固定される。地震等により
二つの構造体(この場合は、大梁4と垂直ブレース5)
間に相対的な変位を生ずる。ハネカムダンパー6はその
ハネカム構造のため、容易に塑性変形することにより、
大梁4と垂直ブレース5間の相対的変位を吸収し、制振
する。
【0008】新たに新築ビルを建てる場合は、外観上の
問題から、内部各階にせん断パネルを設置して、その内
部に粘性流体等を封じ込め、せん断変形の減衰を行う技
術が実施されている。また、パネル構造ではなく、斜め
部材であるブレースを設置し、ブレースと建物構造間を
上記のようなハネカム材で連結し、各階天井と床のせん
断変形振動を吸収することも可能である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、ビルの
制振構造として、「既存ビル」外壁側にブレース枠を設
置し、梁等のビル構造とブレースとの間にハネカム金属
体からなるダンパーを設置して、このハネカムダンパー
の塑性変形時のエネルギ吸収で振動の減衰を行い、「新
築ビル」では、一例として、各階の床と天井との間にブ
レースを設置して対向する面間に粘性(流)体を封じ込
め、粘性減衰により相対エネルギ吸収を行う。
【0010】金属製ハネカムダンパーを用いるのは、薄
い金属板にすることで小さい力で降伏しやすくして「降
伏力:Fy」を小さくし、せん断変形時の「せん断剛性
係数:K」を低くする為である。しかしながら、金属の
塑性変形では永久歪みの蓄積による破壊の進行が避けら
れず、長寿命化が難かしいという問題がある。エネルギ
ー吸収材料として、粘性流体や液状ポリマー類を使うと
温度依存性が大きくて特性が安定しないのみならず、せ
ん断面積を大きくする必要があって大容量化が難しく、
耐候劣化や光劣化の問題もあった。一方、ハネカム状の
金属材のように、金属の塑性変形を使ってエネルギー吸
収を行う装置は、一旦降伏を起こすと形が元に戻らずに
変形が蓄積してゆくのみなので長寿命化が難しいという
問題があった。
【0011】上述の金属製ハネカムダンパーにおける寿
命の問題を解決するために、上述の公知例にもあるよう
に、ワイヤ束ダンパーを使用する。そこで、本発明の目
的は、復元力に関して温度依存性・せん断歪み依存性等
の諸量が小さく、長期間にわたって性能安定性があり、
吸収効率が高くかつ長寿命を達成できる、ワイヤ束ダン
パーを用いた振動エネルギ吸収装置を提供することにあ
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】このような課題を達成す
るために、本発明では、互いに間隔をおいて対向し且つ
相対的に変位を生じ得る二つの構造体の間に設置する振
動エネルギ吸収装置であって、金属又はエンジニアリン
グプラスチックからなる複数本のワイヤを束ねてワイヤ
束を構成し、該ワイヤ束の一端を一方の構造体に固定
し、該ワイヤ束の他端を他方の構造体に固定したことを
特徴とする、ワイヤ束を用いた振動エネルギ吸収装置が
提供される。この場合において、ワイヤ束の一端を前記
一方の構造体に設けた孔に充填・固定し、該ワイヤ束の
他端を他方の構造体に設けた孔に充填・固定したことを
特徴とする。このように、ワイヤ束を片持ばり状の支持
構造にすることが出来る。
【0013】また、本発明は、相対的に変位を生じ得る
二つの構造体の一方に、所定の間隔で対向する2つの面
を設け、他方の構造体をこれらの2つの面の間に挟み込
む形状とし、金属又はエンジニアリングプラスチックの
複数本のワイヤを束ねて成るワイヤ束の両端を一方の構
造体の2つの面側にそれぞれ固定すると共に、該ワイヤ
束の中途部分を他方の構造体に設けた孔に貫通・固定し
たことを特徴とする、ワイヤ束を用いた振動エネルギ吸
収装置が提供される。この場合において、ワイヤ束の両
端を、前記一方の構造体の2つの面を貫通する孔にそれ
ぞれ貫通・固定したことを特徴とする。このようにワイ
ヤ束を三点曲げモードで使用することが出来る。このよ
うに、三点曲げモードにした場合は、片持ちばり状の支
持の場合に比べ、減衰特性を大きくとることが出来る。
【0014】ワイヤ束を用いたエネルギ吸収装置では、
金属内部の塑性変形によりエネルギの吸収を行うのでは
なく、また過大な力が作用するとワイヤ表面で滑りが開
始されるのでワイヤ自体が破壊することがない。このよ
うに、長寿命化が図られる為に、ハネカム構造体の場合
に比べて頻繁に保守を行う必要がない。ワイヤの径を小
さくすると、曲げ剛性が低く、滑りの相乗効果により
「せん断剛性係数:K」を自在に低く設定することがで
きる。更に、粘性(流)体のようにその特性の温度依存
性が高くないので、減衰特性の温度依存性がきわめて安
定する。また粘性流体パネルの場合は、その減衰容量を
上げるには、二つの構造体の対向する面積を増加する必
要があるので構造上限界があったが、ワイヤ束ダンパー
では、ワイヤの本数を増やしたり、ワイヤどうしの「か
しめ力」の調節により、減衰容量を大幅に増加させるこ
とが出来ることから設計の自由度が広がる。このよう
に、変形時の剛性が低く、減衰が大きくとれるので、ビ
ル・ブレースの性能指数である「C/K:減衰定数を剛
性で除した係数」を極端に大きくすることが出来る。
【0015】ワイヤ束の断面に空隙があると、変形時に
ワイヤ間の再配置が起き、ヒステリシス曲線に負の勾配
が生じて不安定な特性になる場合がある。このような場
合に鑑み、ワイヤ束を構成する各ワイヤは、三角形、四
角形、六角形等の多角形の断面形状を有することを特徴
とする。この構成によると、隣接するワイヤ相互間の接
触面積を大きくし、ワイヤ間の摩擦力を増加することが
できる。
【0016】或いは、ワイヤ束を構成する各ワイヤは、
円形又は楕円形、或いは隣接するワイヤとの間に空隙を
生ずる多角形の断面形状を有し、該空隙に細線径のワイ
ヤを挿入して細密充填構造とする。この構成によると、
隣接するワイヤ間に細線径のワイヤが充填されているの
で、ワイヤ及び細線径ワイヤを含むワイヤ同士の接触面
積を大きくし、ワイヤ間の摩擦力を増加することができ
る。これにより、負の勾配を防止すると同時にヒステリ
シス面積を大きく出来る。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照して本発明
の実施の形態について詳細に説明する。図3はビルの側
面のブレース取付部を示し、このブレース取付部に本発
明の振動エネルギ吸収装置を取付けた場合の実施形態を
示す。ブレース5は上下の水平梁4、4及び左右の垂直
梁7、7間に規定される枠内に取付けられる。具体的に
は、ブレース5の一端が、枠の左下部のブレース取付部
5aに固定され、斜め上方に延びて中央部10は水平部
分となり、そこから斜め下方に延びて他端が枠の右下部
のブレース取付部5bに固定されている。
【0018】上側の水平梁4の中央部には、断面がコ字
形になった部材20が固定されている。この場合、部材
20は図示していないが、例えばその両側にてボルト締
め等により水平梁4に固定することが出来る。地震等の
振動が生じた場合は、ブレース5の上中央部10と、水
平梁4即ちコ字形部材20との間で水平方向の相対変位
を生ずる。したがって、このコ字形部材20(構造体の
一方)とブレース5の中央部10(構造体の他方)との
間に本発明の振動エネルギ吸収装置が取付けられている
のである。
【0019】図4及び図5に示す実施形態は、水平方向
設置式のエネルギ吸収装置であって、コ字形部材20
は、所定の間隔で上下に対向する2つの面21、22を
有し、他方の構造体であるブレース中央部10をこれら
の2つの面21、22の間に水平方向に挟み込む形状と
している。コ字形部材20の一方の面21、ブレース中
央部10及びコ字形部材20の他方の面22を貫通する
垂直方向の孔31を複数個所に設け、これらの孔31の
中に複数本のワイヤからなるワイヤ束30をそれぞれ垂
直方向に貫通させて充填する。ワイヤとしては、金属の
もの以外にエンジニアリングプラスチック等も使用する
ことが出来る。
【0020】ワイヤ束30はコ字形部材20及びブレー
ス中央部10を貫通する孔31に挿入しかつ充填した
後、各ワイヤがバラバラにならないように、図5及び図
6に示すように、その上端及び下端を略円錐状となるよ
うに、鉛32で固めている。ワイヤ束30の上端及び下
端の略円錐状の鉛32の部分は、ワイヤ束30自体の直
径よりも大きく、ワイヤ束30が孔31から脱落するの
を防止している。
【0021】図7に示す実施形態は、鉛直方向設置式の
エネルギ吸収装置であって、一方の構造体であるコ字形
部材20は、所定の間隔で対向する垂直方向の2つの面
21、22を有し、他方の構造体であるブレースにはそ
の中央部10にこれらの2つの面21、22の間に挟み
込まれる突起部11が一体的に設けられている。そし
て、コ字形部材20の一方の面21、突起部11及びコ
字形部材20の他方の面22を貫通する水平方向の孔3
1が複数個所に設けられ、これらの孔31の中に複数本
のワイヤからなるワイヤ束30をそれぞれ水平方向に貫
通させて充填する。ワイヤ束30の両端部は前述の実施
形態と同様略円錐形の鉛32で固められている。
【0022】図8及び図9に示す実施形態は、建物の壁
面の水平梁4、4及び左右の垂直梁7、7間に規定され
る枠の四隅から枠の中央部に延びる4本のブレース5
(5a、5b)を中央部にて振動エネルギ吸収装置に連
結している。即ち、各ブレース5(5a、5b)はそれ
らの一端が枠の隅に設けられた連結部8に固定され、他
端は振動エネルギ吸収装置に固定されている。
【0023】エネルギ吸収装置は所定の垂直方向の間隔
をもって配置された2枚の円形部材16、17を具備
し、これらの2枚の円形板を貫通する水平方向の孔31
が複数個所に設けられ、これらの孔31の中に複数本の
ワイヤからなるワイヤ束30をそれぞれ水平方向に貫通
させて充填している。この実施形態では、図示のよう
に、例えば、上側の2本のブレース5aが手前側の円形
部材16に連結され、下側の2本のブレース5bが奥側
の円形部材17に連結されている。
【0024】したがって、地震動により建物に振動が生
じた時は、4本のブレース5を通じて、2つの構造部材
である円形部材16、17に相対的に回転動作が伝わ
り、両者間に相対的な捩じれを生ずる。これにより、各
ワイヤ束30が複数のワイヤ相互間の摩擦作用により撓
み、ワイヤ束30自体の弾塑性により振動を吸収する作
用をする。ワイヤ束30の両端部は鉛によって固められ
ていることは前述の実施例と同様である。
【0025】なお、図8及び図9に示す実施形態では、
上側の2本のブレース5aを手前側の円形部材16に連
結し、下側の2本のブレース5bを奥側の円形部材17
に連結したが、例えば、左側の2本のブレース(5)を
手前側の円形部材16に連結し、右側の2本のブレース
(5)を奥側の円形部材17に連結しても同様の作用を
することとなる。
【0026】図10はワイヤ束30の断面図である。ワ
イヤ束30は金属鋼又はエンジニアリングプラスチック
からなり且つ円形の断面形状を有する複数本のワイヤ3
3を断面が略円形となるように束ねたものである。各ワ
イヤ33がバラバラにならないように、孔31に挿入・
充填後、図6で示したように端部を鉛32で固定するこ
ともできる。
【0027】図11は別の実施形態に係るワイヤ束30
の断面図である。この実施形態においては、各ワイヤ3
3が円形の断面形状を有し、隣接するワイヤ33間の空
隙に金属又はエンジニアリングプラスチックからなる細
線34を適当本数挿入し、固定する。これにより、ワイ
ヤ33のみの場合と比較して、細線34を含むワイヤの
隣接するものどおしの間の接触面積を全体として増加さ
せることがてき、摩擦力を大きくすることができる。
【0028】図12は更に別の実施形態に係るワイヤ束
30の断面図であり、この実施形態では、各ワイヤ35
が四角形の断面形状を有する。円形断面のワイヤ32の
みから成るワイヤ束30(図9)と比較して、ワイヤの
隣接するものどおしの相互間の接触面積を大きくとるこ
とができ、全体として摩擦力を増加させることができ
る。
【0029】図13及び図14は本発明による振動エネ
ルギ吸収装置においてワイヤ束の振動吸収効果を求める
ための試験を行った場合の条件を示す。全長70mmの
ワイヤ33を外形15mmになるように円形に束ねてワ
イヤ束30とし、黄銅製の、内径15mm・リング高さ
10mmの3個のリング40に充填する。これをMTS
試験機(図示せず)を使って3点曲げ試験を実施した。
【0030】70mmのワイヤ長に対し、10mm×3
=30mmがリング40内に拘束されているので、変形
自由長は70mm−30mm=40mmと簡略化し、中
央部リングを、両端リングに対し15mmだけ変形させ
た時のせん断歪みを、γ=15/20=75%と解釈
し、力(荷重)と、剪断歪み(変位)のヒステリシス曲
線の計測を行った。
【0031】その結果を図15及び図16に示す。図1
5(a)は試験を行ったワイヤ束30に用いたワイヤ3
3の断面を示す。中央に1本の円形断面の素線33aと
周囲に6本の同じ径の円形断面の素線33bが配置され
た構造(1+6、素線径:4mm)である。図15
(b)は試験結果を示すヒステリシス曲線であり、横軸
は変位、縦軸は荷重を示す。
【0032】heq(等価減衰定数)は34.8%であ
った。なお、heqの測定は、1軸圧縮引張試験機によ
る1Hz.±75%歪時の等価減衰定数で評価した。図
16(a)は、上記のワイヤ33と同様のワイヤに更に
同じ径の円形断面の素線33cを12本配置すると共
に、素線33bと素線33cとの間の空隙に細線素線3
4を6本配置し、素線33aと素線33bとの間隙にさ
らに細い素線36を6本配置した例である。この場合に
おいて、素線33a〜33cの素線径を3mmとした。
図16(b)はその場合の結果を示すヒステリシス曲線
である。heqは24.9%であった。
【0033】図15及び図16のヒステリシス曲線を比
較してわかるように、図16のように細密構造とした場
合、ループが囲う面積が大きく、ヒステリシスの勾配が
減少しており、金属の塑性、変形によるエネルギ吸収の
度合いがより小さくなっていることが理解される。
【0034】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の振動エ
ネルギ吸収装置(ワイヤ束ダンパー)は、金属内部の塑
性変形によるエネルギの吸収を行うのではなく、また過
大な力が作用するワイヤ表面においてワイヤ相互間で滑
りが開始される。従って、ワイヤは破壊することなく、
長寿命化が図られる。また、ハネカム構造体の場合のよ
うに頻繁に保守を行う必要がない。ワイヤ径を小さくす
ると、曲げ剛性が低く、滑りの相乗効果により「せん断
剛性係数:K」を自在に低く設定することができる。更
に、粘性(流)体を使用する場合のように温度依存性が
高くないので、減衰特性の温度依存性がきわめて安定な
ものとなる。また粘性流体パネルの減衰容量を上げるに
は、二つの構造体の対向する面積を増加する必要があり
構造上限界があったが、本発明のようにワイヤ束ダンパ
ーでは、ワイヤの本数を増やしたり、ワイヤどうしのか
しめ力の調節により、減衰容量を大幅に増加させること
が出来て設計の自由度を広げることができる。このよう
に、変形時の剛性が低く、減衰容量が大きくとれるの
で、ビル・ブレースの性能指数である「C/K:減衰定
数を剛性で除した係数」を充分に大きくすることが出来
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】建物の外壁部に設けたブレースを示す略斜視図
である。
【図2】従来例によるハネカムダンパーを用いた制振構
造を示す斜視図である。
【図3】本願発明によるワイヤ束を用いた振動エネルギ
吸収装置の側面図である。
【図4】水平方向設置式の制振装置の斜視図である。
【図5】図4に示す制振装置の断面図である。
【図6】ワイヤ束(鉛固定スリーブ)を示す図である。
【図7】鉛直方向設置式の制振装置の斜視図である。
【図8】捩じり制振装置の側面図である。
【図9】捩じり制振装置の要部を示す斜視図である。
【図10】円形断面のワイヤからなるワイヤ束の断面図
である。
【図11】細密構造のワイヤ束の断面図である。
【図12】四角形断面のワイヤ束の断面図である。
【図13】ワイヤ束の試験条件(未荷重の状態)を示
す。
【図14】ワイヤ束の試験条件(荷重時の状態)を示
す。
【図15】(a)はワイヤ束の断面図及び(b)はその
試験結果を示すヒステリシス曲線である。
【図16】(a)は細密構造のワイヤ束の断面図及び
(b)はその試験結果を示すヒステリシス曲線である。
【符号の説明】
4…水平梁 5…ブレース 7…垂直梁 10…ブレース上部 20…コ字形部材 21…対向面 30…ワイヤ束 31…貫通孔 32…鉛固定部 33…ワイヤ 34…細線素線
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16F 15/06 F16F 15/06 A

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに間隔をおいて対向し且つ相対的に
    変位を生じ得る二つの構造体の間に設置する振動エネル
    ギ吸収装置であって、金属又はエンジニアリングプラス
    チックからなる複数本のワイヤを束ねてワイヤ束を構成
    し、該ワイヤ束の一端を一方の構造体に固定し、該ワイ
    ヤ束の他端を他方の構造体に固定したことを特徴とす
    る、ワイヤ束を用いた振動エネルギ吸収装置。
  2. 【請求項2】 ワイヤ束の一端を前記一方の構造体に設
    けた孔に充填・固定し、該ワイヤ束の他端を他方の構造
    体に設けた孔に充填・固定したことを特徴とする請求項
    1に記載の振動エネルギ吸収装置。
  3. 【請求項3】 相対的に変位を生じ得る二つの構造体の
    一方に、所定の間隔で対向する2つの面を設け、他方の
    構造体をこれらの2つの面の間に挟み込む形状とし、金
    属又はエンジニアリングプラスチックの複数本のワイヤ
    を束ねて成るワイヤ束の両端を一方の構造体の2つの面
    側にそれぞれ固定すると共に、該ワイヤ束の中途部分を
    他方の構造体に設けた孔に貫通・固定したことを特徴と
    する、ワイヤ束を用いた振動エネルギ吸収装置。
  4. 【請求項4】 ワイヤ束の両端を、前記一方の構造体の
    2つの面を貫通する孔にそれぞれ貫通・固定したことを
    特徴とする請求項3に記載の振動エネルギ吸収装置。
  5. 【請求項5】 ワイヤ束を構成する各ワイヤは、三角
    形、四角形、六角形等の多角形の断面形状を有すること
    を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の振動
    エネルギ吸収装置。
  6. 【請求項6】 ワイヤ束を構成する各ワイヤは、円形又
    は楕円形、或いは隣接するワイヤとの間に空隙を生ずる
    多角形の断面形状を有し、該空隙に細線径のワイヤを挿
    入して細密充填構造としたことを特徴とする請求項1〜
    4のいずれか1項に記載の振動エネルギ吸収装置。
  7. 【請求項7】 ワイヤ束は二つの構造体の間を水平方向
    に延びていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか
    1項に記載の振動エネルギ吸収装置。
  8. 【請求項8】 ワイヤ束は二つの構造体の間を垂直方向
    に延びていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか
    1項に記載の振動エネルギ吸収装置。
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