JP2000326449A - 多層構造容器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 過酸化水素を含有する内容物が保存中に容器
内で発生する酸素ガスを酸素吸収剤層で吸収し、容器が
酸素ガスで膨張することを防止する。 【解決手段】 少なくとも脱酸素機能を有する酸素吸収
剤を混入した酸素吸収層を設けた多層構造体からなる容
器に、５％以下の過酸化水素を含有する内容物を充填密
封したことを特徴とする多層構造容器。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ガスバリアー層と
脱酸素機能を有する脱酸素剤を混入した酸素吸収層を設
けた多層構造体からなる容器で、特に過酸化水素を含有
する内容物を密封した際、過酸化水素の分解によって発
生する酸素ガスによる容器の膨張を防止する多層構造容
器に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、染毛剤や漂白剤などの過酸化水素
を含有する内容物を密封する場合、保存中に過酸化水素
が分解し酸素ガスが発生するため、これらの製品を密封
する場合は特別なガス抜き機構を設けた剛性の強い金属
容器やガラス壜に密封されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近こ
れらの製品を軽量なプラスチック容器に密封することが
望まれているが、プラスチック容器では有効なガス抜き
機構もなく、発生した酸素ガスにより容器が膨張し変形
したり、開封したとき容器内部のガス圧により内容物が
噴出する問題があった。本発明の目的は前記課題の少な
くとも一つを解決するとともに、製造が容易で安価な容
器を提供することにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明によれば、上記課
題を解決するため、少なくとも脱酸素機能を有する脱酸
素剤を混入した酸素吸収層を１層設けた多層構造体から
なる容器に、５％以下の過酸化水素を含有する内容物を
充填密封する多層構造容器が提供される。

【０００５】本発明においては、ポリオレフィン系樹脂
と、還元性鉄粉の粒子とこれにコーティングされた酸化
促進剤乃至触媒の層からなる鉄系酸素吸収剤との組成物
からなる厚さ５０μｍ乃至２００μｍ酸素吸収剤層を、
内容物１０ｇ当たり１０ｃｍ２以上有する多層構造容器
が好ましい。

【０００６】更に好ましい他の多層構造として、少なく
ともエチレンービニルアルコール共重合体からなるガス
バリアー層と上記脱酸機能を有する酸素吸収剤層とから
なる多層構造体の容器に、５％以下の過酸化水素を含有
する内容物を充填密封する多層構造容器が提供される。

【０００７】

【発明の実施の形態】［多層構造容器の構造及び作用］
本発明のもっとも好ましい多層構造は容器外部から容器
内部に向けて、ポリオレフィン／接着剤層／ガスバリア
ー層／接着剤層／酸素吸収剤層／ポリオレフィンからな
る多層構造である。本発明において、酸素吸収剤層はポ
リオレフィン樹脂に鉄系酸素吸収剤が分散粒子相として
存在しており、酸素吸収性能は当然のことながらこの鉄
系酸素吸収剤による。この鉄系酸素吸収剤粒子をポリオ
レフィン樹脂等との組成物の形で用いるのは、酸素吸収
剤粒子を多層構造に成形可能にし且つその脱落を防止す
るためである。また、酸素吸収剤層を最内層のポリオレ
フィン樹脂で覆うのは、酸素吸収剤粒子が容器内面に露
出するのを防止するためである。

【０００８】また、ガスバリアー層を設けるのは容器外
部からの酸素侵入を防止するためである。酸素吸収剤と
して鉄系のものを使用した場合、この層を最内層とする
と鉄が過酸化水素を分解する触媒となるため、酸素発生
速度が大きくなるので、酸素透過性のよいポリオレフィ
ン等の樹脂を１層設ける必要がある。

【０００９】他の多層構造として、容器外部から容器内
部に向けて、（１）ポリプロピレン／接着剤層／ガスバ
リアー層／接着剤層／酸素吸収剤層／ポリプロピレン、
（２）ポリオレフィン／接着剤層／ガスバリアー層／酸
素吸収剤層／ポリオレフィン、（３）ポリエチレンテレ
フタレート／接着剤層／ナイロン／接着剤層／アルミニ
ウム／接着剤層／酸素吸収剤層／ポリオレフィン、
（４）ポリオレフィン／酸素吸収剤層／ポリオレフィ
ン、（５）ポリオレフィン／酸素吸収剤層、（６）ポリ
エチレンテレフタレート／酸素吸収剤層／ポリエチレン
テレフタレート、（７）ポリエチレンテレフタレート／
酸素吸収剤層／ポリエチレンテレフタレート／酸素吸収
剤層／ポリエチレンテレフタレートなど各種の多層構造
がありが、この構造に限られるものではない。また、酸
素吸収剤層には酸素吸収剤と接着剤樹脂及び酸素吸収剤
とＭＸナイロン樹脂との混合したものも含まれる。

【００１０】このように構成することで、容器内で発生
した酸素は内容物の保護層せある最内層のポリオレフィ
ン層を透過して、酸素吸収剤層によって吸収され容器の
膨張が押さえらる。尚、容器外部からの酸素侵入はガス
バリアー層によって阻止される。

【００１１】［酸素吸収剤］本発明に用いる酸素吸収剤
としては、従来この種の用途に使用されている鉄系酸素
吸収剤が好ましいが、アスコルビン酸、ネオデカン酸コ
バルト化合物であってもよい。本発明に用いる酸素吸収
剤粒子は、還元性鉄粉と酸化促進剤乃至触媒がブレンド
されたものでもよいが還元性鉄粉のコア粒子と、これに
コーティングされた酸化促進剤乃至触媒の層とからなる
のがより好ましい。

【００１２】この酸素吸収剤では、鉄粉粒子の表面に促
進剤乃至触媒が安定に存在するので、酸化促進剤乃至触
媒によって吸収された水分は直ちに還元性鉄粉を活性化
し、鉄の酸化反応による酸素の吸収が進行し、酸素吸収
速度が高いレベルの保持されるものである。また、酸化
促進剤乃至触媒によって吸収される水分も水和酸化物等
の生成に有効に利用され、水分による膨れの発生やクラ
ックの発生も抑制される。

【００１３】酸化促進剤乃至触媒が還元性鉄粉当たり
０．１乃至５．０重量％の量で存在するのが好ましい。
酸化促進剤乃至触媒としては、塩化ナトリウム等の水溶
性乃至潮解性無機電解質を挙げることができる。

【００１４】［酸素吸収剤層］本発明に用いる酸素吸収
剤層は、上記鉄系酸素吸収剤をポリオレフィンに分散さ
せたものからなる。ポリオレフィン１００重量部当たり
鉄系酸素吸収剤を２乃至６０重量部分散させるのがよ
く、鉄系酸素吸収剤の量が上記範囲を下回ると酸素吸収
機能が不十分となり、一方、上記範囲を上回ると配合組
成物の成形性が低下したり、酸素吸収後の体積膨張に伴
うトラブルが発生しやすい。

【００１５】ポリオレフィンとしては、例えば低―、中
―或いは高―密度のポリエチレン等が挙げられる。これ
らは単独でも、或いは２種以上のブレンド物の形でも使
用することができる。

【００１６】酸素吸収剤層の厚みは、１０乃至２００μ
ｍ、特に５０乃至１５０μｍの範囲で、５％の過酸化水
素を含有する内容物１０ｇ当たり１０ｃｍ２以上の平面
積があることが好ましい。最大酸素吸収能力は約０．４
ｍｌ／ｃｍ２である。

【００１７】一般に５％の過酸化水素を含有する内容物
は、約３年保存すると１０ｇ当たり５〜１０ｍｌの酸素
を発生する。この厚みと平面積の範囲を下回ると酸素吸
収能力が不足する傾向があり、上回ると酸素吸収能力は
十分であるが成形性が悪くなると共に、包装材としての
可撓性、柔軟性が低下する傾向がある。

【００１８】［ポリオレフィン内面材］最内層のポリオ
レフィン内面材としては、酸素吸収層に関して述べたポ
リオレフィンが使用される。内面材と酸素吸収剤層との
層間接着性の点では、内面材のポリオレフィンと酸素吸
収剤層のポリオレフィンとは同種のものであることが望
ましい。ポリオレフィン内面材の厚みは、５乃至５０μ
ｍ、特に１０乃至３０μｍの範囲にあるのがよい。この
厚みを下回ると酸化で生成する鉄酸化物粒子が突出す
る。一方上記範囲を上回ると酸素吸収性が低下する傾向
がある。

【００１９】［用途］本発明の包装材は、柔軟包装材と
して、各種容器や可撓性蓋材の用途に用いることができ
る。容器形態としては、例えば、ボトル類、チューブ
類、パウチ類、カップ類、トレー類などあらゆる形態の
容器に適用可能であるが、これに限定されるものではな
い。また、蓋材としては、カップ、トレー等の容器に対
するシール蓋として用いるこたができる。

【００２０】本発明の容器は、内容物として保存中に酸
素を発生するもの、例えば、過酸化水素を含む染毛剤、
漂白剤、消毒液などに有用である。過酸化水素の含有量
は１０％以下、好ましくは５％以下が最適である。

【００２１】

【実施例】実施例１ 容器外層から容器内層に向かって、層構成が、ポリプロ
ピレン／接着剤層／エチレンー酢酸ビニル共重合体ケン
化物／接着剤層／酸素吸収剤層／ポリプロピレンよりな
り、直径２５．４ｍｍ、長さ１３０ｍｍの円筒状の多層
構造のチューブを制作し、過酸化水素を５％含有する染
毛剤を４０ｇ密封し、５０℃で１ヶ月間保存した。

【００２２】酸素吸収剤として、酸素吸収速度：３００
ｍＬ／ｍ２・２４ｈｒ・５０μｍの能力を有する鉄系の
酸素吸収剤をポリプロピレンに２７重量％混合したもの
を酸素吸収剤層として使用した。酸素吸収剤層の厚さは
１００μｍで、最大酸素吸収量は０．４ｍｌ／ｍ２であ
る。

【００２３】その結果、チューブの膨張はまったく見ら
れず、内容品の性能も維持しており、商品価値も全く問
題を生じなかった。

【００２４】比較例１ 実施例１の多層構造の酸素吸収剤層をアルミニウム箔層
にかえたチューブ容器に、実施例１と同じ内容物、条件
で保存した。その結果、明確な膨張を起こし商品価値が
認められなかった。

【００２５】

【発明の効果】本発明は以上の構成よりなるので、本発
明の多層構造からなる容器に過酸化水素等を含有する酸
素を発生する内容物を密封充填し長期間保存しても、酸
素吸収剤層が発生する酸素を吸収し、容器を膨張させる
こともなく、また、内容物の品質を劣化させることもな
く、保存性が良好となる。

【００２６】また、使用時に内容物が容器内のガス圧に
より噴出することもなく、衣類等の汚染を防止すること
ができる等の効果を有する。

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 少なくとも１層の脱酸素機能を有する酸
   素吸収層を設けた多層構造体で構成される容器に、過酸
   化水素を含有する内容物を充填密封したことを特徴とす
   る多層構造容器。
2. 【請求項２】 過酸化水素の含有量は５％以下であるこ
   とを特徴とする請求項１記載の多層構造容器。
3. 【請求項３】 ポリオレフィン系樹脂と、還元性鉄粉の
   粒子とこれにコーティングされた酸化促進剤乃至触媒の
   層からなる鉄系酸素吸収剤との組成物からなる厚さ５０
   μｍ乃至２００μｍ酸素吸収剤層を、内容物１０ｇ当た
   り１０ｃｍ２以上有する請求項１または２記載の多層構
   造容器。