JP2000319760A - 疲労特性と制振性に優れた機械構造用鋼 - Google Patents
疲労特性と制振性に優れた機械構造用鋼Info
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Abstract
となく、また加工後においても優れた制振性を示す機械
構造用鋼と機械構造用鋼部品を提供すること。 【解決手段】 鋼組織中に占める黒鉛の面積率が2〜1
5%であり、且つ黒鉛の最大粒径が30μm以下で、主
成分としてCを0.1〜2wt%、Siを3.0%以
下、Mnを3.0%以下、Pを0.03%以下、Sを
0.1%以下、Bを0.0003〜0.015wt%、
Alを0.5%以下、Nを0.001〜0.03wt%
を含む低合金鋼。
Description
動車、電化製品等の部品素材として用いられる特に疲労
特性と制振性の改善された機械構造用鋼に関し、この機
械構造用鋼は、例えばシャフト、歯車、軸受の如き高レ
ベルの疲労特性と制振性が求められる機械構造用鋼製部
品として極めて有効に活用できる。
トや軸受、自動車などの変速機や差動装置に使用される
歯車などの機械構造用部品においては、これら機械構造
用部品の回転中に発生する異音や振動を抑制することが
求められている。そこで、設計面から寸法精度を高めた
り、装置全体をカバーすることにより異音を抑える方法
などの対策が採られている。また歯車をファインピッチ
化することによって異音を抑制する方法も試みられてい
る。
るので、部品素材面からの制振性付与対策も種々講じら
れており、例えば下記の様な制振材料が提案されてい
る。
金属と粘弾性物質の界面での粘性流動を利用して制振を
与えた制振材料(例えば、片状黒鉛鋳鉄など)、 強磁性型制振材料:磁壁の移動に伴う磁気的・機械的
ヒステリシスを利用して制振性を与えた制振材料(例え
ば、12%Cr鋼など)、 転位型制振材料:転位が固着点から離脱するために生
じるヒステリシスを利用して制振性を与えた制振材料
(例えば、Mg合金など)。
音の低減はある程度達成できるが、それぞれ次の様な問
題が指摘されている。
れるものの必ずしも十分とは言えず、より一層の向上が
求められる。また、鋼素材中に黒鉛を多量残存させるこ
とにより制振性が向上することは確認されているが、反
面、疲労強度が低下するという問題を生じる、 強磁性型制振材料:この素材は優れた制振性を示す
が、加工歪を受けると磁壁の移動が小さくなって制振性
が低下するため、加工部品としては必ずしも満足のいく
制振性が得られない、 転位型制振材料:加工歪を受けると制振性が大幅に低
下するため、やはり加工部品としての制振性は不十分で
ある。
情に着目してなされたものであって、その目的は、強度
特性や耐摩耗性などに悪影響を及ぼすことなく、また加
工後においても優れた制振性を示す機械構造用鋼と機械
構造用鋼部品を提供することにある。
のできた本発明の機械構造用鋼は、鋼組織中に占める黒
鉛の面積率が2〜15%で、且つ黒鉛の最大粒径が30
μm以下であり、疲労特性と制振性が共に改善された機
械構造用鋼である。
成分組成は、質量%で、 C :0.1〜2.0%、 Si:3.0%以下、 Mn:3.0%以下、 P :0.03%以下、 S :0.1%以下、 B :0.0003〜0.015%、 Al:0.5%以下、 N:0.001〜0.03%、 残部:Feおよび不可避的不純物 を満たし、あるいは、これらに加えてCu:2.0%以
下、Ni:3.0%以下、Cr:2.5%以下、Mo:
1.0%以下、V:1.0%以下、Ca:0.01%以
下、Zr:0.2%以下、Ti:0.1%以下、Nb:
0.1%以下、Co:0.5%以下、W:0.1%以下
よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含
み、あるいは更に、Pb:0.4%以下、Bi:0.3
%以下、Te:0.3%以下、Se:0.3%以下、R
em:0.2%以下よりなる群から選択される少なくと
も1種の元素を含む鋼材である。
焼入れ焼戻し処理後の状態、あるいは表面硬化処理後の
状態で、鋼組織中に占める黒鉛の面積率が同様に2〜1
5%であり、且つ黒鉛の最大粒径も同様に30μm以下
で、部品状態で優れた疲労特性と制振性を兼ね備えたも
のであるところに要旨がある。
術の下で、安定した制振性を示す複合型制振材料である
黒鉛鋼に注目し、一層の制振性向上とそれに伴う疲労特
性の劣化防止を期して改良研究を進めてきた。
せることによって制振性が向上することは既に公知とな
っており、疲労強度を必要としない鋳鉄分野では多く利
用されている。また機械構造用鋼であっても、疲労強度
がそれほど必要とされない部品には黒鉛鋼が適用されて
いるが、疲労強度が重視される機械構造部品には殆ど適
用されていない(特開平3-75331号公報など)。
鋼組織中における黒鉛の存在形態を改善すれば、疲労強
度を低下させることなく制振性を高めることができるの
ではないかと考え、その線に沿って研究を重ねた。その
結果、鋼組織中に存在する黒鉛の最大粒径と面積率を適
正に制御してやれば、制振性と疲労特性を兼ね備えた機
械構造用鋼が得られることを知り、上記本発明に想到し
たものである。
粒径を規定し、あるいは更に好ましい鋼材組成を定めた
理由を、後述する実施例データの解析を含めて詳細に説
明していく。
して、鋼組織中における黒鉛の面積率および黒鉛の最大
粒径が内部摩擦(制振性)と疲労強度に与える影響を整
理して示したグラフである。ここで黒鉛の面積率は、鋼
材の表面下0.1mmの位置を光学顕微鏡で写真撮影
(×400、3視野)した後、画像解析によって求め、
また黒鉛の最大粒径は、画像解析により求めた長径と短
径の和の1/2として算出した。また疲労強度および内
部摩擦の測定法は、後記実施例の項に示す通りであり、
内部摩擦とは制振性を表すパラメータで、内部摩擦が大
きいほど制振性は良好と判断できる。
ついて、鍛造(または圧延)後に黒鉛化処理したものの
黒鉛の面積率と最大粒径が内部摩擦(制振性)と疲労特
性に与える影響を示したグラフであり、図1からも明ら
かな様に、黒鉛の面積率が増大するにつれて内部摩擦は
増大し制振性が向上する。その傾向は黒鉛の面積率が2
%以上で顕著に現われ、2%未満では満足のいく制振性
を与えることができない。そして該面積率が2%以上、
より好ましくは5%以上であるものは、安定して高い内
部摩擦を示し優れた制振性を発揮することが分かる。
係を示したグラフであり、この図からも明らかな様に、
黒鉛の面積率が15%以下であれば疲労強度の低下は殆
ど認められないが、該面積率が15%を超えると疲労強
度が急激に低下してくる。従って、疲労強度の低下を招
くことなく内部摩擦を十分に増大して制振性を高めるに
は、黒鉛の面積率を2〜15%の範囲に制御すべきであ
ることが分かる。
関係を示したグラフであり、最大粒径が30μmを超え
ると疲労強度は大幅に低下してくる。従って、優れた疲
労強度を確保するには、前述した黒鉛の面積率に加えて
最大粒径を30μm以下に抑えることが必須となる。
化学成分の鋼材を使用し、鍛造(または圧延)→黒鉛化
処理→機械加工→焼入れ焼戻し処理を行なったもの、更
に図7〜9は、後記実施例の表5に示す化学成分の鋼材
を使用し、鍛造(または圧延)→黒鉛化処理→機械加工
→表面硬化(浸炭)処理を行なったものについて、上記
と同様に黒鉛の面積率と最大粒径が内部摩擦(制振性)
および疲労強度に与える影響を示したグラフである。こ
れらの図からも明らかな様に、焼入れ焼戻し後の鋼ある
いは表面硬化処理後の鋼についても、前記図1〜3の場
合と同様に、黒鉛の面積率を2〜15%の範囲とし且つ
最大粒径を30μm以下に抑えることによって、高レベ
ルの疲労強度を維持しつつ優れた制振性を確保できるこ
とが分かる。
は、転がり軸受に黒鉛鋼を適用し、浸炭窒化処理を施し
て浸炭窒化層の黒鉛を消失させ、非浸炭層のみに黒鉛を
残存させた制振性の優れた転がり軸受が開示されてい
る。
ところによると、黒鉛を無作為に残存させるだけでは制
振性の確実な向上を果たすことはできず、上記の様に黒
鉛の面積率で2%以上を確保することが制振性の向上に
必須の要件となる。しかも高レベルの疲労特性を維持す
るには、黒鉛の面積率を15%以下に抑えると共に、黒
鉛の最大粒径を30μm以下に抑えることが必須となる
のである。
表面硬化処理後の状態で、鋼組織中に所定の面積率と最
大粒径を満たす黒鉛を存在させることが必要であり、こ
れら焼入れ焼戻し処理あるいは表面硬化処理時に黒鉛が
マトリックス中に溶解して消失すると、本発明で意図す
る優れた制振性を得ることができなくなる。
や最大粒径を確保するには、鋼材の成分組成も重要であ
り、焼入れ焼戻し処理や表面硬化処理前の鋼材中に存在
する黒鉛をより安定化しておくことが必要となる。
しい成分組成を下記の様に規定するが、特に適量のBを
含有させることによって黒鉛の安定化を図り、表面硬化
などの処理時に黒鉛がマトリックス中に溶解し難くする
ことが極めて有効となる。この時、B添加に加えてCa
やZrの1種以上を適量含有させると、鋼組織中の黒鉛
は更に安定化するので、制振性の向上に極めて有効であ
る。
分組成の限定理由について説明する。
であり、0.1%未満では黒鉛の生成量が不十分となっ
て満足のいく制振性が得られ難くなる。従って0.1%
以上、より好ましくは0.2%以上含有させるべきであ
るが、C量が多くなり過ぎると、鋼組織中に残存するセ
メンタイト量が多くなって鋼が硬質化し、被削性などの
加工性に悪影響を及ぼす様になるので、2.0%以下、
より好ましくは1.5%以下に抑えるべきである。
果は、Siを好ましくは0.1%以上含有させることに
よって有効に発揮される。しかしながらSi含有量が多
くなり過ぎると、鋼が硬質化して被削性や加工性に悪影
響を及ぼす様になるので、3.0%以下、より好ましく
は2.0%以下に抑えることが望ましい。
より、熱間加工性に悪影響を及ぼすFeSの析出を抑え
る作用を有しており、不可避的に混入してくるS量にも
よるが、通常は0.2%以上含有させることによってそ
の効果は有効に発揮される。しかしMn量が多くなり過
ぎると、黒鉛化が阻害されて制振性の向上に悪影響を及
ぼす様になるので、3.0%以下、より好ましくは2.
0%以下に抑えるのがよい。
3%以下、より好ましくは0.02%以下に抑えるべき
である。
面、シャフトや歯車などに適用する場合、縦目の衝撃特
性だけでなく横目の衝撃特性にも悪影響を及ぼす。そし
て、特に横目の衝撃特性を高めるには異方性を低減する
ことが必要であり、そのためにはS含有量を0.1%以
下、より好ましくは0.03%以下に抑えることが望ま
しい。
その効果を有効に発揮させるには0.0003%以上含
有させることが望ましい。しかし、その効果は0.01
5%でほぼ飽和するので、それ以上の添加は経済的に無
駄である。
Bを含む成分系では必ずしも必須ではない。しかし、A
lを少量含有させると黒鉛化が更に増進されるので、好
ましくは0.005%程度以上含有させることが望まし
い。但し、Al含有量が多くなり過ぎると、酸化物系介
在物量の増大によって鋳片割れや加工割れを起こし易く
なるので、0.5%以下、より好ましくは0.4%以下
に抑えることが望まれる。
効に作用する。その作用を有効に発揮させるには0.0
01%以上含有させるべきであるが、その作用は0.0
3%で飽和するばかりでなく、N量が多くなり過ぎると
冷間加工性等に悪影響を及ぼす様になるので、0.03
%以下に抑えるべきである。
は2.0%で飽和するばかりでなく、多過ぎると熱間加
工性に悪影響を及ぼす様になるので、2.0%以下に抑
えることが望ましい。ただしCuの単独添加では、少量
の添加でも熱間加工性を劣化させるので、Cuを添加す
る場合は、熱間加工性に対して改善効果を有するNiを
Cu含有量に対して70%以上含有させることが望まし
い。
作用を有しており、安定した心部硬さを確保するために
極めて有用な元素である。しかも黒鉛化を阻害すること
もないので、制振性鋼材の含有元素としては有用な元素
であり、通常は0.2%程度以上含有させることが望ま
しい。しかしこうしたNiの効果は約3.0%で飽和す
るので、それ以上の添加は無駄であり、好ましくは2.
0%以下に抑えられる。
0.2%程度以上含有させることによって有効に発揮さ
れる。しかしCr量が多くなり過ぎると、Crが粒界に
偏析して炭化物を生成し、粒界強度を低下させて靭性劣
化を引き起こすので、Cr量は2.5%以下、より好ま
しくは2.0%以下に抑えるべきである。
れ組織を低減すると共に焼入れ性の確保に有用な元素で
あり、その効果は一般的に0.05%程度以上含有させ
ることによって有効に発揮される。しかしそれらの効果
は1.0%で飽和するので、それ以上の添加は経済的に
無駄である。
は炭・窒化物を生成し、結晶粒を微細化して靭性の向上
に有効に作用する。その作用は0.05%程度以上含有
させることによって有効に発揮されるが、過剰量の添加
は被削性に悪影響を及ぼすので、1.0%以下、より好
ましくは0.8%以下に抑えるべきである。
るが、その効果は0.01%で飽和し、却って衝撃特性
などの強度特性に悪影響を及ぼす恐れが生じてくるの
で、0.01%以下に抑えることが望ましい。
0.2%で飽和し、却って衝撃特性などの強度特性を阻
害する傾向が生じてくるので、0.2%以下に抑えるべ
きである。
下、Co:0.5%以下、W:0.1%以下よりなる群
から選ばれる少なくとも1種 これらの元素は部品成形後に表面硬化処理を行う際に、
焼入れ性を高める作用を有しているが、いずれも黒鉛化
を抑制するマイナス作用を有しているので、黒鉛化を阻
害しない範囲でそれぞれの上限を定めている。
下、Te:0.3%以下、Se:0.3%以下、Re
m:0.2%以下よりなる群から選ばれる少なくとも1
種 これらの元素は、部品加工時の被削性改善に有効に作用
する。しかしいずれも黒鉛化を抑制する作用を有してい
るので、黒鉛化を阻害しない範囲で各元素含有率の上限
を決定した。
れば、本発明で規定する前記黒鉛の面積率および最大粒
径の要件を満たす鋼材を得ることができ、且つこの鋼材
は、部品状に加工してから焼入れ焼戻し処理や表面硬化
処理を施した後も、黒鉛の好適面積率と最大粒径を維持
し、高レベルの疲労特性を維持しつつ優れた制振性を示
すものとなるが、上記黒鉛の好ましい面積率と最大粒径
をより確実に得る上で好ましい熱処理条件や、その後の
好ましい焼入れ焼戻し処理あるいは表面硬化処理条件を
示すと次の通りである。
間以上加熱してから空冷 焼入れ焼戻し条件: 焼入れ:750〜950℃×30分以上加熱してから油
冷または水冷 焼戻し:100〜250℃×60分以上加熱してから空
冷 表面硬化処理条件:750〜980℃×50分以上加熱
してから油冷。
説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受ける
ものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当
に変更を加えて実施することも可能であり、それらはい
ずれも本発明の技術的範囲に包含される。
を溶製した後、直径30mmの棒状に鍛造(または圧延)
し、黒鉛化処理(T℃×t時間→空冷)した後、機械加工
により図10に示す回転曲げ疲労試験片と、幅5mm×
厚さ0.7mm×長さ105mmの内部摩擦試験片を作
製し、回転曲げ疲労試験および内部摩擦試験を行った。
内部摩擦試験は、ねじり振り子型内部摩擦測定装置を用
いて歪振幅1×10-3、周波数1.3Hzで行った。
0.1mmの位置を光学顕微鏡写真撮影(×400、3
視野)し、これを画像解析して黒鉛の面積率および最大
粒径を求めた。結果を表2および図1〜3に示す。
に、鋼No.1a〜16aは、本発明で定める黒鉛の面
積率および最大粒径の要件を満たしており、化学成分も
適正であるので、高レベルの疲労強度を維持しつつ優れ
た内部摩擦(制振性)を示している。
黒鉛の面積率が不足するため内部摩擦が小さく、満足な
制振性が得られない。また鋼No.21a〜22aは、
鋼中のC量が好適範囲を超えているため、黒鉛の最大粒
径が過大となり疲労強度が低下している。鋼No.23
a〜24aは、黒鉛の面積率が規定範囲に満たないため
内部摩擦が低く、満足のいく制振性が得られない。
鋼材を溶製した後、直径30mmの棒状に鍛造(または
圧延)し、黒鉛化処理(700℃×20Hr→空冷)して
から、機械加工により図2に示す回転曲げ疲労試験片
と、幅5mm×厚さ0.7mm×長さ105mmの内部
摩擦試験片を作製した。機械加工後、焼入れ(T℃×t
分→60℃油冷)・焼戻し処理(450℃×2Hr→空
冷)を施してから、回転曲げ疲労試験および内部摩擦試
験を行った。
測定装置を用い、歪振幅1×10-3、周波数1.3Hz
で行なった。また黒鉛の面積率は、各供試鋼の表面下
0.1mmの位置を光学顕微鏡で写真撮影(×400、
3視野)した後、画像解析により黒鉛の面積率と最大粒
径を求めた。結果を表4および図4〜6に示す。
に、鋼No.1b〜16bは本発明で定める黒鉛の面積
率と最大粒径、および好ましい化学成分を満たしている
ため、高レベルの疲労強度を維持しつつ高い内部摩擦が
得られており、優れた制振性を有していることが分か
る。
黒鉛の面積率が規定範囲に達しておらず、内部摩擦が小
さくて制振性が不足する。鋼No.21b〜22bは、
黒鉛の最大粒径が規定範囲を超えているため疲労強度が
劣り、また鋼No.23b〜24bは、鋼材中のC量が
多くて黒鉛の最大粒径が規定範囲を超えているため、疲
労強度が低くなっている。鋼No.25b〜26bは、
鋼中のB量が不足するため黒鉛の安定性が低下し、黒鉛
の面積率が規定範囲外となって内部摩擦(制振性)が低
下している。
を溶製してから直径30mmの棒状に鍛造(または圧延)
し、黒鉛化処理(700℃×20Hr→空冷)した後、
機械加工により図11に示す回転曲げ疲労試験片と、幅
4mm×厚さ0.7mm×長さ105mmの内部摩擦試
験片を作製した。
(T℃×t分→60℃油冷)を施し、回転曲げ疲労試験
および内部摩擦試験を行った。内部摩擦試験は、ねじり
振り子型内部摩擦測定装置を用い、歪振幅1×10-3、
周波数1.3Hzで行った。また、浸炭層における黒鉛
の面積率と最大粒径は、各供試材の表面下0.1mmの
位置を光学顕微鏡で写真撮影(×400、3視野)した
後、画像解析によって求めた。結果を表6および図7〜
9に示す。
に、鋼No.1c〜16cは本発明で定める黒鉛の面積
率および最大粒径と好ましい化学成分を満たしているた
め、優れた疲労強度を有すると共に、内部摩擦も高くて
優れた制振性を有していることが分かる。
黒鉛の面積率が好適範囲に達しておらず、内部摩擦が低
くて制振性が不十分であり、鋼No.21c〜22c
は、黒鉛の最大粒径が規定値を超えているため疲労強度
が低下している。鋼No.23c〜24cは、鋼材のC
量が好適範囲を超えているため黒鉛の最大粒径が規定値
を超えており、疲労強度が低くなっている。また鋼N
o.25c〜26cは、鋼材中のB量が不足するため黒
鉛の安定性が低下し、黒鉛の面積率が規定範囲に満たな
くなって内部摩擦が低く、制振性向上の目的が果たせな
い。
ましくは鋼材の成分組成を規定することによって、鋼組
織中の黒鉛の面積率と最大粒径を特定範囲に制御するこ
とにより、機械構造用鋼素材として、あるいは更にこれ
を焼入れ焼戻し処理あるいは表面硬化処理した後の機械
部品としても、高レベルの強度特性を維持しつつ優れた
制振性を確保し得ることになった。
と内部摩擦(制振性)の関係を示すグラフである。
と疲労強度の関係を示すグラフである。
径と疲労強度の関係を示すグラフである。
積率と内部摩擦(制振性)の関係を示すグラフである。
積率と疲労強度の関係を示すグラフである。
大粒径と疲労強度の関係を示すグラフである。
の面積率と内部摩擦(制振性)の関係を示すグラフであ
る。
の面積率と疲労強度の関係を示すグラフである。
の最大粒径と疲労強度の関係を示すグラフである。
す図である。
を示す図である。
Claims (7)
- 【請求項1】 鋼組織中に占める黒鉛の面積率が2〜1
5%であり、且つ黒鉛の最大粒径が30μm以下である
ことを特徴とする疲労特性と制振性に優れた機械構造用
鋼。 - 【請求項2】 鋼の成分組成が、質量%で、 C :0.1〜2.0%、 Si:3.0%以下、 Mn:3.0%以下、 P :0.03%以下、 S :0.1%以下、 B :0.0003〜0.015%、 Al:0.5%以下、 N:0.001〜0.03%、 残部:Feおよび不可避的不純物 を満たすものである請求項1に記載の機械構造用鋼。
- 【請求項3】 鋼が、他の元素として、Cu:2.0%
以下、Ni:3.0%以下、Cr:2.5%以下、M
o:1.0%以下、V:1.0%以下、Ca:0.01
%以下、Zr:0.2%以下、Ti:0.1%以下、N
b:0.1%以下、Co:0.5%以下、W:0.1%
以下よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を
含むものである請求項2に記載の機械構造用鋼。 - 【請求項4】 鋼が、更に他の元素として、Pb:0.
4%以下、Bi:0.3%以下、Te:0.3%以下、
Se:0.3%以下、Rem:0.2%以下よりなる群
から選択される少なくとも1種の元素を含むものである
請求項2または3に記載の機械構造用鋼。 - 【請求項5】 焼入れ焼戻し処理後の状態で、鋼組織中
に占める黒鉛の面積率が2〜15%であり、且つ黒鉛の
最大粒径が30μm以下であることを特徴とする疲労特
性と制振性に優れた機械構造用鋼部品。 - 【請求項6】 表面硬化処理後の状態で、表面硬化層に
おける黒鉛の面積率が2〜15%であり、且つ黒鉛の最
大粒径が30μm以下であることを特徴とする疲労特性
と制振性に優れた機械構造用鋼部品。 - 【請求項7】 鋼材が、請求項2〜4のいずれかに記載
の成分組成を満たすものである請求項5または6に記載
の機械構造用鋼部品。
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JP12633199A JP4156747B2 (ja) | 1999-05-06 | 1999-05-06 | 疲労特性と制振性に優れた機械構造用鋼部品 |
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JP12633199A JP4156747B2 (ja) | 1999-05-06 | 1999-05-06 | 疲労特性と制振性に優れた機械構造用鋼部品 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP12633199A Expired - Lifetime JP4156747B2 (ja) | 1999-05-06 | 1999-05-06 | 疲労特性と制振性に優れた機械構造用鋼部品 |
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1999
- 1999-05-06 JP JP12633199A patent/JP4156747B2/ja not_active Expired - Lifetime
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