JP2019112711A - 黒鉛鋼用鋼材および被削性が向上した黒鉛鋼 - Google Patents

黒鉛鋼用鋼材および被削性が向上した黒鉛鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、熱処理時間を大幅に短縮しながらも、微細黒鉛粒が基地内に規則的な形状で均一に分布する黒鉛鋼用鋼材および被削性が向上した黒鉛鋼を提供する。【解決手段】本発明の黒鉛鋼用鋼材は、重量%で、C:0.60〜0.90%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.1〜0.6%、Al:0.01〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%、N:0.0030〜0.0100%、P:0.015%以下(但し、0%は除く)、S:0.030%以下(但し、0%は除く)、残部Fe、及び不可避な不純物からなることが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、黒鉛鋼用鋼材および被削性が向上した黒鉛鋼に係り、より詳しくは、微細黒鉛粒が基地内に規則的な形状で均一に分布する黒鉛鋼用鋼材および被削性が向上した黒鉛鋼に関する。
一般的に、被削性が要求される機械部品などの素材としては、Pb、Bi、Sなどの被削性付与元素を添加した快削鋼が用いられる。最も代表的な快削鋼であるPb添加快削鋼の場合には、切削作業時に有毒性フューム(fume)等の有害物質を排出するので、人体に非常に有害であり、鋼材のリサイクルに非常に不利であるという問題がある。従って、これを代替するためにS、Bi、Te、Snなどの添加が提案されたが、Biを添加した鋼材は、製造時に亀裂の発生が起こり易く加工が非常に難しいという問題があり、S、Te、及びSnなども、熱間圧延時に亀裂の発生を引き起こすという点から問題がある。
前記のような問題を解決するために提案された鋼が黒鉛鋼である。黒鉛鋼は、フェライト基地あるいはフェライト及びパーライト基地の内部に微細黒鉛粒を含む鋼であって、内部の微細黒鉛粒が切削時にクラック供給源として作用してチップブレーカーの役割をすることにより、被削性の良好な性質を有している鋼である。
ところが、このような黒鉛鋼の長所にもかかわらず、現在も黒鉛鋼は商用化されていない。これは、鋼に炭素を添加すれば、黒鉛が安定相であるにもかかわらず、準安定相であるセメンタイトとして析出するので、別途の10時間以上の長時間の熱処理なしには黒鉛を析出させることが困難であり、このような長時間の熱処理過程で脱炭が起こり、最終製品の性能に悪影響を及ぼすという弊害が発生するからである。
それだけでなく、黒鉛化熱処理を通じて黒鉛粒を析出させたとしても、鋼の基地内の黒鉛が粗大に析出した場合は、亀裂が発生する可能性が高くなり、また、球形でなく、不規則な形状で不均一に分布している場合には、切削時に物性分布が不均一で、チップ断片性や表面粗度が悪くなり、工具寿命も短縮されて黒鉛鋼の長所を得るのが難しい。
従って、熱処理時間を大幅に短縮しながらも、熱処理時に微細黒鉛粒が基地内に規則的な形状で均一に分布するようにすることができる、黒鉛鋼用鋼材及びこれから導き出された被削性が向上した黒鉛鋼が要求されている。
特許第5954484号公報
本発明の一態様は、熱処理時間を大幅に短縮しながらも、熱処理時に微細黒鉛粒が基地内に規則的な形状で均一に分布することができる黒鉛鋼用鋼材を提供することである。
本発明の他の態様は、被削性に優れた黒鉛鋼を提供することである。
本発明の一実施例による黒鉛鋼用鋼材は、重量%で、C:0.60〜0.90%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.1〜0.6%、Al:0.01〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%、N:0.0030〜0.0100%、P:0.015%以下(但し、0%は除く)、S:0.030%以下(但し、0%は除く)、残部Fe及び不可避な不純物からなる。
また、本発明の一実施例によれば、前記黒鉛鋼用鋼材は、下記の式(1)を満たす。
式(1):−0.01≦[Ti]−3.43×[N]≦0.01
(ここで、[Ti]及び[N]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。)
また、本発明の一実施例によれば、前記黒鉛鋼用鋼材は、下記の式(2)を満たす。
式(2):400≦3.1+169.0×[Si]+127.7×[Mn]≦500
(ここで、[Sn]、[Mn]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。)
本発明の一実施例による被削性が向上した黒鉛鋼は、重量%で、C:0.60〜0.90%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.1〜0.6%、Al:0.01〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%、N:0.0030〜0.0100%、P:0.015%以下(但し、0%は除く)、S:0.030%以下(但し、0%は除く)、残部Fe及び不可避な不純物からなり、フェライト基地に、面積分率で2.0%以上の黒鉛粒を含み、黒鉛粒の平均縦横比が2.0以下でありうる。
ここで、黒鉛粒の縦横比は、一つの黒鉛粒内最長軸と最短軸の比を意味する。
また、本発明の一実施例によれば、前記被削性が向上した黒鉛鋼は、下記の式(1)を満たす。
式(1):−0.01≦[Ti]−3.43×[N]≦0.01
(ここで、[Ti]及び[N]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。)
また、本発明の一実施例によれば、前記被削性が向上した黒鉛鋼は、下記の式(2)を満たす。
式(2):400≦3.1+169.0×[Si]+127.7×[Mn]≦500
(ここで、[Si]及び[Mn]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。)
また、本発明の一実施例によれば、前記黒鉛粒の平均結晶粒のサイズは、5μm以下でありうる。
また、本発明の一実施例によれば、前記黒鉛粒の単位面積当たり個数は、1000〜5000個/mmでありうる。
また、本発明の一実施例によれば、前記黒鉛鋼の硬度は、70〜80HRBでありうる。
本発明による黒鉛鋼は、被削性に優れていて、産業機械または自動車などの機械部品の素材に適用が可能である。
本発明の、発明を実施するための最良の形態の一実施例による黒鉛鋼用鋼材は、重量%で、C:0.60〜0.90%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.1〜0.6%、Al:0.01〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%、N:0.0030〜0.0100%、P:0.015%以下(但し、0%は除く)、S:0.030%以下(但し、0%は除く)、及び残部Fe及び不可避な不純物からなる。
以下の実施例は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に本発明の思想を十分に伝達するために提示するものである。本発明は、ここで提示した実施例のみに限定されず、他の形態で具体化されることもできる。図面は、本発明を明確にするために説明と関係ない部分の図示を省略し、理解を助けるために構成要素のサイズを多少誇張して表現することができる。
明細書全体において、或る部分が任意の構成要素を「含む」という時、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができことを意味する。
単数の表現は、文脈上明白に例外がない限り、複数の表現を含む。
以下では、黒鉛化熱処理時に微細黒鉛粒が基地内に規則的な形状で均一に分布するようにすることができる鋼材について記述する。
以下では、本発明による実施例を添付の図面を参照して詳細に説明する。まず、黒鉛鋼用鋼材について説明した後、被削性が向上した黒鉛鋼について説明する。
本発明の一態様による黒鉛鋼用鋼材は、重量%で、C:0.60〜0.90%、Si:2.0〜2.5%、Mn:0.1〜0.6%、Al:0.01〜0.05%、Ti:0.005〜0.02%、N:0.0030〜0.0100%、P:0.015%以下(但し、0%は除く)、S:0.030%以下(但し、0%は除く)、残部Fe及び不可避な不純物からなる。
以下、本発明の実施例においての合金成分の含量の数値限定理由について説明する。以下では、特別な言及がない限り単位は重量%である。
Cの含量は、0.60〜0.90%である。
炭素(C)は、黒鉛粒を形成するために必須の元素である。炭素の含量が0.60重量%未満である場合は、被削性の向上効果が不十分であり、黒鉛化の完了時にも黒鉛粒の分布が不均一である。他方、その含量が多すぎる場合には、黒鉛粒が粗大に生成され、縦横比が大きくなって、被削性、特に表面粗度が低下するという問題があるから、その上限を0.80重量%に限定することができる。
Siの含量は、2.0〜2.5%である。
ケイ素(Si)は、溶鋼の製造時の脱酸剤として必要な成分であり、鋼中のセメンタイトを不安定にして、炭素が黒鉛として析出され得るようにする黒鉛化促進元素であって、2.0重量%以上添加することが好ましい。但し、その含量が多すぎる場合には、その効果が飽和されるだけでなく、固溶強化効果によって硬度が増加して切削時に工具の摩耗が加速され、非金属介在物の増加による脆性を誘発し、熱間圧延時に過度な脱炭を誘発するという問題があるので、その上限を2.5重量%に限定することができる。
Mnの含量は、0.1〜0.6%である。
マンガン(Mn)は、鋼材の強度及び衝撃特性を向上させ、鋼中で硫黄と結合してMnS介在物を形成して被削性の向上に寄与するので、0.1重量%以上添加することが好ましい。但し、その含量が多すぎる場合には、黒鉛化を阻害して黒鉛化の完了時間が遅延されるおそれがあり、また強度及び硬度を上昇させて、工具の耐久性を低下させるという問題があるので、その上限を0.6重量%に限定することができる。
Alの含量は、0.01〜0.05%である。
アルミニウム(Al)は、強力な脱酸元素であって、単に脱酸に寄与するだけでなく、更に黒鉛化を促進させる有用な元素である。また、黒鉛化の熱処理時にセメンタイトの分解を促進すると同時に、窒素と結合してAlNを形成することにより、セメンタイトの安定化を妨害して黒鉛化を促進する役割をする。それだけでなく、アルミニウムの添加により形成されるアルミニウム酸化物は、黒鉛の析出核になって、黒鉛の結晶化を促進する点においても効果的であるから、0.01重量%以上添加することが好ましい。但し、その含量が多すぎる場合には、その効果が飽和されるだけでなく、熱間変形性が顕著に低下するという問題がある。また、Alが多すぎれば、オーステナイト粒界にAlNが生成して、これを核とする黒鉛が粒界に不均一に分布するという問題があるので、その上限を0.05重量%に限定することができる。
Tiの含量は、0.005〜0.02%である。
チタン(Ti)は、ホウ素、アルミニウムなどのように窒素と結合してTiN、BN、AlNなどの窒化物を生成するが、このような窒化物は、恒温熱処理時に黒鉛生成の核として作用する。しかし、BN、AlNなどは、生成温度が低いため、オーステナイトが形成された後に、粒界に不均一に析出するのに対し、TiNは、生成温度がAlNやBNより高いため、オーステナイト生成が完了する前に晶出するので、オーステナイト粒界及び粒内に均一に分布する。従って、TiNを核として生成された黒鉛粒も、微細ながらも均一に分布する。このような効果を示すためには、Tiを0.005重量%以上含ませることが好ましいが、その含量が多すぎる場合には、粗大な炭窒化物になって、黒鉛の形成に必要な炭素を消耗することにより、黒鉛化を阻害するという問題があるから、その上限を0.02重量%に限定することができる。
Nの含量は、0.0030〜0.0100%である。
窒素(N)は、チタン、ホウ素、アルミニウムと結合してTiN、BN、AlNなどを生成するが、特にBN、AlNなどの窒化物は、主にオーステナイト粒界に形成される。黒鉛化の熱処理時にこのような窒化物を核として黒鉛が形成されるので、黒鉛の不均一な分布を引き起こすことがあるので、適正量の添加が必要である。窒素の添加量が多すぎて窒化物形成元素と結合せずに固溶窒素として鋼中に存在すると、強度を高め、セメンタイトを安定化させて、黒鉛化を遅延させるという有害な作用をする。従って、黒鉛核の生成源として作用する窒化物を形成させるのに消耗され、固溶窒素としては残らないようにするために、本発明では、下限を0.0030重量%、上限を0.0100重量%に制限した。
Pの含量は、0.015%以下である。
リン(P)は、不可避に含有される不純物である。たとえ、リンが鋼の粒界を脆弱にして被削性をある程度助けることがあるにしても、その固溶強化効果によってフェライトの硬度を増加させ、鋼材の靭性及び遅延破壊抵抗性を減少させ、表面欠陥の発生を亢進させるので、その含量を可能な限り低く管理することが好ましい。理論上、リンの含量は、0重量%に制御することが有利であるが、製造工程上、必然的に含有される。従って、その上限を管理することが重要であり、本発明では、その上限を0.015重量%で管理する。
Sの含量は、0.030%以下である。
硫黄(S)は、不可避に含有される不純物である。硫黄は、鋼中炭素の黒鉛化を大きく阻害するだけでなく、結晶粒界に偏析して靭性を低下させ、低融点の硫化物を形成して、熱間圧延性を阻害するので、その含量を可能な限り低く管理することが好ましい。Sが多すぎる場合、MnSの生成で被削性の向上効果があるが、圧延により延伸されたMnSに起因して機械的な異方性が現れる。本発明では、機械的な異方性を起こすことなく、被削性を向上させるのに寄与できる範囲内でSを添加してMnSの生成を誘導した。硫黄の含量は0重量%に制御することが有利ではあるが、製造工程上、必然的に含有される。従って、その上限を管理することが重要であり、本発明では、その上限を0.030重量%で管理する。
本発明の残りの成分は、鉄(Fe)である。但し、通常の製造過程では、原料または周囲環境から意図しない不純物が不可避に混入され得るので、これを排除することはできない。これらの不純物は、通常の製造過程の技術者なら誰でも知っているものであるから、本明細書ではそのすべての内容に言及はしない。
本発明の一実施例によれば、前述した合金組成を満たす黒鉛鋼用鋼材は、下記の式(1)を満たすことができる。
式(1):−0.01≦[Ti]−3.43×[N]≦0.01
ここで、[Ti]、[N]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。
上記式(1)において、[Ti]−3.43×[N]値が−0.01未満である場合は、TiNを生成して残る過多な窒素が鋼中に固溶してセメンタイトを安定化し、黒鉛化を遅延させる恐れがある。従って、前記[Ti]−3.43×[N]値が−0.01以上であることが好ましい。反対に[Ti]−3.43×[N]値が大きすぎる場合には、TiNとして生成されない余剰のTiが鋼中に過多に存在する。余剰のTiは、粗大な炭窒化物を形成することにより、黒鉛を形成するべき炭素が消耗されて、黒鉛分率を減らしたり、粗大な黒鉛が生成する可能性があるので、式(1)の[Ti]−3.43×[N]の値は、0.01以下であることが好ましい。
また、本発明の一実施例によれば、前述した合金の組成を満たす黒鉛鋼用鋼材は、下記の式(2)を満たすことができる。
式(2):400≦3.1+169.0×[Si]+127.7×[Mn]≦500
ここで、[Si]、[Mn]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。
黒鉛化熱処理された鋼材、即ち黒鉛鋼において、硬度、引張強度、及び軟性は、Si、Mnの添加量によって影響を受けるので、チップ断片性、表面粗度及び工具摩耗度の側面で満足できるほどの被削性を得るためには、3.1+169.0×[Si]+127.7×[Mn]値が400以上500以下の範囲を満たすことが好ましい。
式(2)の3.1+169.0×[Si]+127.7×[Mn]値が400未満の場合には、引張強度が低くなり、軟質材の特性上、切削時に表面粗度が不良になるか、チップの断片性が低下し、また、その値が500を超過する場合には、硬度の値が高くなって、切削時に工具の摩耗が進行し得る。
開示した実施例による黒鉛鋼用鋼材は、730〜770℃で300分間の黒鉛化熱処理後、黒鉛化率を99%以上に到達させることができる。
黒鉛化率とは、鋼に添加された炭素含量対黒鉛状態で存在する炭素含量の比を意味するものであり、下記の式(3)で表現され得る。
式(3):黒鉛化率(%)=(鋼中に黒鉛状態で存在する炭素の含量/鋼中の炭素の含量)×100
99%以上黒鉛化したというのは、添加された炭素が全部黒鉛を生成するのに消耗されたという意味であり(フェライト内固溶炭素量は、極微量であるので考慮しない)、即ち、未分解のパーライトが存在せず、フェライト基地に黒鉛粒が分布する微細組織を有するものを意味する。
以上で説明した本発明の黒鉛鋼用鋼材は、多様な方法によって製造され得るが、本発明では、特にその方法を制限しない。例えば、前記の成分範囲を有するインゴットを鋳造した後、1100〜1300℃で5〜10時間均質化熱処理し、1000〜1100℃で熱間圧延した後、空冷して製造することができる。
以下、本発明の他の態様である被削性が向上した黒鉛鋼について詳細に説明する。
開示した実施例による黒鉛鋼は、前述した黒鉛鋼用鋼材と同じ合金組成及び成分範囲を有し、合金元素の含量の数値限定理由に関する説明は、前述した通りである。
即ち、開示された実施例による黒鉛鋼は、下記の式(1)又は式(2)を満たすことができる。
式(1):−0.01≦[Ti]−3.43×[N]≦0.01
式(2):400≦3.1+169.0×[Si]+127.7×[Mn]≦500
ここで、[Ti]、[N]、[Si]、[Mn]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。
本発明の一実施例によれば、被削性が向上した黒鉛鋼は、フェライト基地に、面積分率で2.0%以上の黒鉛粒を含むことができる。黒鉛粒の面積分率が高いほど被削性が向上するから、その上限は特に限定しない。
本発明の一実施例によれば、前記黒鉛粒の平均縦横比は、2.0以下でありうる。黒鉛粒の縦横比は、一つの黒鉛粒内の最長軸と最短軸の比を意味する。このように黒鉛粒が球状化した場合には、加工時の異方性が低減して被削性及び冷間鍛造性が顕著に向上する。
本発明の一実施例によれば、前記黒鉛粒の平均結晶粒のサイズが5μm以下でありうる。黒鉛粒の平均結晶粒のサイズとは、黒鉛鋼の一断面を観察して検出した粒子の平均円相当直径(equivalent circular diameter)を意味し、平均結晶粒のサイズが小さいほど被削時の表面粗度に有利であるので、その下限については特に限定しない。
本発明の一実施例によれば、前記黒鉛粒の単位面積当たり個数は、1000〜5000個/mmでありうる。より具体的には、平均結晶粒のサイズが3μm以下である黒鉛粒の単位面積当たり個数は、1200〜3500個/mmでありうる。
このように黒鉛鋼内微細黒鉛粒が均一に分散する場合には、形成された黒鉛粒が切削摩擦を減少させ、クラック開始サイトとして作用することにより、被削性を顕著に向上させることができる。
本発明の一実施例によれば、前記黒鉛鋼の硬度は、70〜80HRB範囲を満たす。
以上で説明した本発明の黒鉛鋼は、多様な方法で製造することができ、その製造方法は、特に制限されないが、例えば、黒鉛鋼用鋼材を730〜770℃で600分間以上黒鉛化熱処理(恒温熱処理後に空冷)することにより製造することができる。前記の温度領域は、等温変態曲線で黒鉛生成曲線ノーズ(nose)の近くに該当する温度領域であって、熱処理時間を短縮させることができる温度領域に該当する。
以下、本発明の好ましい実施例を通じてより詳細に説明することとする。
実施例
下記表1のように各成分の含量を変更しつつ、インゴット(Ingot)を鋳造して1250℃で8時間均質化熱処理した。
次に、仕上げ温度を1000℃として27mmの厚さで熱間圧延し、空冷して、黒鉛鋼用鋼材を生産した。
Figure 2019112711
次に、前記黒鉛鋼用鋼材を750℃で5時間黒鉛化熱処理して黒鉛鋼を得た。但し、比較例17及び18の場合には、黒鉛化熱処理温度をそれぞれ700℃及び800℃として熱処理温度による黒鉛化程度を比較した。
次に、画像分析器(image analyzer)を利用して黒鉛化熱処理された鋼材を対象として黒鉛粒の面積分率、黒鉛粒の平均サイズ及び黒鉛粒の平均縦横比を測定した。
黒鉛粒の面積分率、平均サイズ及び平均縦横比の測定方法は、次のとおりである。各試験片を一定のサイズで切断してエッチングはせずに研磨のみをした状態で光学顕微鏡を利用して200倍の倍率下でイメージを撮影した。このように得たイメージは、基地と黒鉛が明確なコントラスト差異によって明確に区分が可能であるので、画像分析ソフトウェアを使用して分析を進めた。また、分析の信頼性を高めるために、試験片当たり15枚ずつのイメージを撮影して分析に使用した。
一方、黒鉛の面積分率は、観察された総面積のうち黒鉛が占める面積の割合で定義され、黒鉛の平均サイズ及び縦横比は、それぞれ平均円相当直径(equivalent circular diameter)及び一つの黒鉛粒内で最長軸と最短軸の比を意味する。
Figure 2019112711
次に、被削性の評価のために部品を加工した後、チップ断片性、工具の摩耗程度、及び表面粗度、即ち切削加工面の粗度(roughness)を測定した。このために、まず、板形状の鋼を表2の黒鉛化熱処理温度で5時間黒鉛化熱処理した後、直径25mmの棒状に加工し、これをもってCNC自動旋盤で切削加工を行った。チップ断片性の評価時にチップが2巻以下で分断される場合は優秀、3〜6巻で分断される場合は普通、7巻以上の場合を不良と判定した。
工具の摩耗程度は、直径25mmであり長さが200mmである200個の棒状部品を、直径15mmになるまで加工した後、加工前後に工具刃の深さを比較して摩耗程度を求めた。この際、切削条件は、100mm/minの切削速度、0.1mm/revの移送速度、1.0mmの切削深さの条件で、切削油を使用して実施した。
Figure 2019112711
表1、2に示すように、本発明で提案する成分組成及び製造条件を全部満たす発明例1〜9は、微細組織がパーライト及び黒鉛からなり、黒鉛の面積分率が2%以上、黒鉛粒の平均縦横比が2.0以下、黒鉛粒の密度が1000個/mm以上を示した。また、表3に示すように、開示した実施例による黒鉛鋼は、チップ断片性、表面粗度、工具寿命特性が良好であることを確認することができる。
表2に示すように、黒鉛化面積分率は、一般的に、添加された炭素量に比例することが分かる。従って、比較例10の場合は、C含量が高いために黒鉛面積分率は本発明の範囲を満たしたが、粗大な黒鉛粒が形成されて縦横比が相対的に高かった。そのため、表3から分かるように、切削面の表面粗度が相対的に劣ることを確認することができる。
反対に、比較例11の場合は、C含量が低いため十分な量の黒鉛が生成されず黒鉛の面積分率が低く測定され、そのために工具の摩耗程度が増進するだけでなく、チップ断片性に劣ることを確認することができる。
比較例12〜15は、MnとSi量が式(2)を外れた範囲で添加された鋼材であって、硬度測定結果も本発明で提示された硬度値の範囲を外れることが分かる。具体的には、比較例13及び14の場合は、硬度がそれぞれ89.2及び82.3であって、80を超過して、工具の摩耗が進行したことを確認することができる。
反対に、比較例12及び15の場合は、硬度がそれぞれ61.3及び66.3であって70に達しないので、表面粗度特性に劣ることを確認することができる。
比較例16及び19の場合は、Ti添加量に比べてN添加量が多すぎるので、式(1)を満足せず、その結果、TiNを形成しないまま鋼中に残っている固溶窒素が多すぎるので、与えられた熱処理時間の間に完全に黒鉛化が進行せずにパーライトが一部残っていて、そのため硬度が82.6であって、80を超過し、工具の摩耗が進行したことを確認することができる。
比較例17の場合は、黒鉛化熱処理温度が700℃と低いために、黒鉛化の熱処理時にパーライトが完全に黒鉛化されず、微細組織にパーライトの存在が観察された。そのため、硬度が83.1であって、80を超過して増加し、工具の摩耗が進行したことを確認することができる。
比較例18の場合は、黒鉛化熱処理温度が800℃と高いため、オーステナイトに相変態して、冷却時に更にパーライトが生成したものであって、そのため、硬度が94.3と高いため、工具の摩耗が進行したことを確認することができる。
比較例20の場合、N添加量に比べて添加されたTiが多すぎるので、式(1)を満たさず、そのため、粗大な黒鉛粒を形成して、表面粗度が相対的に劣ることを確認することができる。
本発明の一実施例による黒鉛鋼は、黒鉛粒が基地内に十分に形成され、また、微細な黒鉛粒を規則的な形状で均一に分布することによって被削性を向上させることができる。
以上、本発明の例示的な実施例を説明したが、本発明は、これに限定されず、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、下記に記載する特許請求範囲の概念と範囲を逸脱しない範囲内で多様な変更及び変形が可能であることが理解できる。
本発明の実施例による黒鉛鋼用鋼材及び黒鉛鋼は、機械部品素材などに適用可能であるという産業上の利用可能性がある。

Claims (9)

  1. 重量%で、C:0.60%乃至0.90%、Si:2.0%乃至2.5%、Mn:0.1%乃至0.6%、Al:0.01%乃至0.05%、Ti:0.005%乃至0.02%、N:0.0030%乃至0.0100%、P:0.015%以下(但し、0%は除く)、S:0.030%以下(但し、0%は除く)、残部Fe及び不可避な不純物からなることを特徴とする黒鉛鋼用鋼材。
  2. 下記の式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の黒鉛鋼用鋼材。
    式(1):−0.01≦[Ti]−3.43×[N]≦0.01
    (ここで、[Ti]及び[N]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。)
  3. 下記の式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の黒鉛鋼用鋼材。
    式(2):400≦3.1+169.0×[Si]+127.7×[Mn]≦500
    (ここで、[Si]及び[Mn]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。)
  4. 重量%で、C:0.60%乃至0.90%、Si:2.0%乃至2.5%、Mn:0.1%乃至0.6%、Al:0.01%乃至0.05%、Ti:0.005%乃至0.02%、N:0.0030%乃至0.0100%、P:0.015%以下(但し、0%は除く)、S:0.030%以下(但し、0%は除く)、残部Fe及び不可避な不純物からなり、
    フェライト基地に、面積分率で2.0%以上の黒鉛粒を含み、
    前記黒鉛粒の平均縦横比が2.0以下であることを特徴とする被削性が向上した黒鉛鋼。
    (ここで、黒鉛粒の縦横比は、一つの黒鉛粒内最長軸と最短軸の比を意味する。)
  5. 下記の式(1)を満たすことを特徴とする請求項4に記載の被削性が向上した黒鉛鋼。
    式(1):−0.01≦[Ti]−3.43×[N]≦0.01
    (ここで、[Ti]及び[N]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。)
  6. 下記の式(2)を満たすことを特徴とする請求項4に記載の被削性が向上した黒鉛鋼。
    式(2):400≦3.1+169.0×[Si]+127.7×[Mn]≦500
    (ここで、[Si]及び[Mn]は、それぞれ当該元素の重量%を意味する。)
  7. 前記黒鉛粒の平均結晶粒のサイズが5μm以下であることを特徴とする請求項4に記載の被削性が向上した黒鉛鋼。
  8. 前記黒鉛粒の単位面積当たり個数は、1000乃至5000個/mmであることを特徴とする請求項4に記載の被削性が向上した黒鉛鋼。
  9. 前記黒鉛鋼の硬度は、70乃至80HRBであることを特徴とする請求項4に記載の被削性が向上した黒鉛鋼。
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