JP2000319234A - フォトリフラクティブ材料組成物およびその組成物に用いる化合物 - Google Patents

フォトリフラクティブ材料組成物およびその組成物に用いる化合物

Info

Publication number
JP2000319234A
JP2000319234A JP11126302A JP12630299A JP2000319234A JP 2000319234 A JP2000319234 A JP 2000319234A JP 11126302 A JP11126302 A JP 11126302A JP 12630299 A JP12630299 A JP 12630299A JP 2000319234 A JP2000319234 A JP 2000319234A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
formula
compound
group
photorefractive
electron
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP11126302A
Other languages
English (en)
Inventor
Shiyoukun Boku
商勲 朴
Kenji Ogino
賢司 荻野
Hisaya Sato
壽彌 佐藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Resonac Holdings Corp
Original Assignee
Showa Denko KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Showa Denko KK filed Critical Showa Denko KK
Priority to JP11126302A priority Critical patent/JP2000319234A/ja
Publication of JP2000319234A publication Critical patent/JP2000319234A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Holo Graphy (AREA)
  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【解決課題】 実用的な応答速度を有し、経時安定性及
び熱的安定性に優れ、かつ、実用的な機械強度を有する
フォトリフラクティブ材料組成物、及びそのようなフォ
トリフラクティブ材料組成物に用い得る製造容易な低分
子化合物を提供する。 【解決手段】 正孔輸送性機能を有する基と非線形光学
性基を有する式(I): 【化1】 〔式中、R1〜R8及びR10〜R12は、同一でも異なって
もよく、各々水素原子、C1〜C6のアルキル基または
アルコキシ基を表わし、R9はC2〜C20の2価の脂
肪族炭化水素基(1以上の非芳香環を含んでもよい。)
を表わし、Aは電子吸引性置換基を表わす。〕で示され
る化合物、あるいは式(I)で示される化合物が直接ま
たはシクロヘキサン環を介して結合した低分子化合物、
及びこれらの構造を有する化合物を用いたフォトリフラ
クティブ材料組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フォトリフラクテ
ィブ材料組成物及びその組成物に用いる新規化合物に関
する。さらに詳しくいえば、本発明は、正孔輸送機能を
有する構造部分と電気光学的に活性な発色団とを分子中
に併せ持つ低分子量(非ポリマー)の化合物を機能性成
分として含むフォトリフラクティブ材料組成物及び当該
化合物に関する。
【0002】本発明による組成物は、フォトリフラクテ
ィブ効果を利用した光記録、特にホログラフィックな記
録のための媒体や光情報処理用の各種素子の構成要素と
して利用される。
【0003】
【従来の技術】照射した光強度パターンに応じてその物
質の屈折率パターンが変化するフォトリフラクティブ効
果は、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)やチタン酸バ
リウム(BaTiO3)、珪酸ビスマス(Bi12SiO
20)などの無機結晶においてよく知られている。しか
し、これらの無機結晶は感度と応答速度がトレードオフ
の関係にあり、両者を共に向上させることが困難であ
り、また成形性、加工性に劣るという欠点を有してい
る。
【0004】そこで、これらの無機結晶の欠点を克服す
るものとして有機系のフォトリフラクティブ材料が提案
されている。有機系フォトリフラクティブ材料として
は、非線形光学性(non-linear optical properties;以
下、NLOと略記することがある。)、電荷輸送性(cha
rge transport properties;以下、CTと略記すること
がある。)及び電荷発生作用(charge generating effe
ct;以下、CGと略記することがある。)を有すること
が条件となる。
【0005】これらの機能は、一種類の化合物により、
あるいは複数の化合物の組み合わせにより実現すること
が可能であり、それに応じて有機系フォトリフラクティ
ブ材料は、単一系と分散系に大別される。単一系(実質
的に単一系とみなしうるものも含む。)及び分散系のフ
ォトリフラクティブ材料としては、それぞれ以下のタイ
プのものが一般的である。
【0006】(a)単一系 (a-1) NLO、CT及びCGの機能の全てを1種類の分
子(ポリマーまたは低分子化合物)が有するもの。 (a-2) NLOとCTの機能を1種類の分子(ポリマーま
たは低分子化合物)が有し、これにCG機能を有する少
量の低分子化合物を加えたもの。
【0007】(b)分散系 (b-1) 不活性のベースポリマー中にNLO、CT、CG
の機能を有する低分子化合物それぞれを分散させたも
の。 (b-2) CT機能を有するポリマー中にNLO、CGの機
能を有する低分子化合物それぞれを分散させたもの。 (b-3) NLO機能を有するポリマー中にCT、CGの機
能を有する低分子化合物それぞれを分散させたもの。 (b-4) 不活性のベースポリマー中にCT及びNLO機能
を有する低分子化合物とCG機能を有する低分子化合物
を分散させたもの。
【0008】以上のうち、単一系フォトリフラクティブ
材料は、1種類の分子からなるため相分離が発生しない
という大きな特長を有するが、特に上記(a-1)のタイプ
は、3種の機能に対応する構造部分を1分子中に組み込
む必要があるため合成が難しい。また、単一系フォトリ
フラクティブ材料では、従来、分散系のフォトリフラク
ティブ材料以上の特性を示すものが得られていない。こ
のため、現在では、主に分散系フォトリフラクティブ材
料が検討されている。
【0009】分散系フォトリフラクティブ材料は、単一
系よりも優れたフォトリフラクティブ特性を示す場合が
多く、また、単一系に比較すると製造が容易である。し
かし複数の化合物を好ましくは分子レベルで均一に分散
させることに伴う困難があり単一系に比較して相分離が
起こりやすく、フォトリフラクティブ特性や機械的強度
の低下の原因となる。
【0010】特にNLO低分子化合物分子を含む場合
は、その結晶化や凝集あるいは昇華等に起因して、経時
安定性・熱安定性の低下が起こりやすい。そこで、NL
OとCTの機能を1分子中に有し、結晶化しない、つま
り、アモルファスを形成する低分子化合物が種々提案さ
れている。
【0011】例えば、P.M.Lundquistらは、NLOとC
Tの機能を有する化合物として、N−2−ブチル−2,
6−ジメチル−4H−ピリドン−4−イリデンシアノメ
チルアセテートを提案している(P.M.Lundquist et a
l., Science, Vol.274, p.1182(1996))。この化合物は
室温付近で安定なアモルファスを形成する(ガラス転移
点Tg=25℃)が、応答速度が遅いという問題があ
る。PMMA(ポリメチルメタクリレート)等のポリマ
ードーパントの添加により応答速度の改善が見られる旨
の記載もあるが、その場合においても、応答速度〔2,
4,7−トリニトロ−9−フルオレノン(TNF)をC
G機能成分として添加したフォトリフラクティブ材料の
四光波混合における回折効率立ち上がりの時定数〕は、
記録光強度1W/cm2、印加電界40V/μmの条件
下で83秒という結果が示されている。
【0012】また、L.Wangらは、ジシアノビニル基を有
するカルバゾール三量体(共役鎖)を提案している(L.
Wang et al., Appl. Phys. Lett., Vol. 69, No.6, p.
728(1996))。この化合物は、カルバゾールに二分子の
6−シアノビニルカルバゾールがエチニレン基を介して
結合した構造を有するものであり、後者がNLOとして
機能し、全体のπ−共役構造がCTとして機能するとい
うものである。CGとしてTNFを添加した組成物が、
アモルファス(Tg=29℃)なフォトリフラクティブ
材料となることが確認されているが、応答速度は測定さ
れていない。
【0013】さらに、H.J.Bolinkらは、光導電性分子で
あるN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(4−メチ
ルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−
ジアミンにジシアノビニル基を結合させた次式(IV)
【0014】
【化10】
【0015】で示される二官能性フォトリフラクティブ
化合物の特性について述べている(H.J.Bolink et al.,
Chem.Mater., Vol. 9, Νo.6,1407(1997))。この化合
物もアモルファスを形成するが(Tg=77℃)、得ら
れるアモルファス膜は極めて脆いため、薄膜化して素子
として実用化する上で問題がある。
【0016】また、Yue Zhangらは、次式(V)
【0017】
【化11】 で示される4−(N,N′−ジフェニルアミノ)−β−
ニトロスチレンが二官能性フォトリフラクティブ材料と
して有用であると述べている(Y.Zhang et al., J.Appl.
Phys., 79(12), 8920(1996))。ここでは、電子供与性の
基(アミノ基)が電子受容性の基(ニトロ基)と共役す
ることにより電気光学応答性(二次の非線形光学応答
性)が発生し、また、トリフェニルアミン部分から電子
輸送性が生じる。
【0018】これらの化合物は、アモルファスを形成す
るため結晶化に起因する問題は少ない。しかし、それぞ
れについて上述した問題点がある上、応答速度も十分な
水準ではない。すなわち、低分子でアモルファスとなる
フォトリフラクティブ材料であって、応答速度が速く、
かつ機械的強度にも優れた材料は得られていない。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、実用的な応
答速度(遅くとも数秒以下)を有し、経時安定性及び熱
的安定性に優れ、かつ、実用的な機械強度を有するフォ
トリフラクティブ材料組成物、及びそのようなフォトリ
フラクティブ材料組成物に用い得る、電荷輸送性(C
T)と非線形光学性(NLO)を備え、かつフォトリフ
ラクティブ性能その他の特性に優れた製造容易な低分子
化合物を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するべく種々検討した結果、CT機能を有する
構造部分とNLO機能を有する構造部分がエステル結合
を含む炭素鎖を介して結合した特定構造の化合物がフォ
トリフラクティブ材料として優れた特性を有することを
見出し本発明を完成するに至った。
【0021】すなわち、本発明は、以下の新規化合物、
及びその化合物を少なくとも1種含有するフォトリフラ
クティブ材料組成物を提供する。 (1)式(I)
【0022】
【化12】 (式中、R1〜R8及びR10〜R12は、同一でも異なって
もよく、各々水素原子、C1〜C6のアルキル基または
アルコキシ基を表わし、R9はC2〜C20の2価の脂
肪族炭化水素基(1以上の非芳香環を含んでもよい。)
を表わし、Aは−CN、−NO2、−CHO、−C
(O)CF3(トリフルオロアセチル基)、−CH=C
(CN)2(ジシアノビニル基)及び−CH=CHNO2
(ニトロビニル基)からなる群より選択される電子吸引
性置換基、aはトリフェニルアミン骨格の窒素原子を基
準としてオルト、パラ、メタいずれかの置換位置を表わ
す。)、式(II)
【0023】
【化13】 (式中、R1〜R5、R7〜R12、A及びaは前記と同じ
意味を表わし、bはトリフェニルアミン骨格の窒素原子
を基準としてオルト、パラ、メタいずれかの置換位置を
表わす。)、または式(III)
【0024】
【化14】 (式中、R1〜R5、R7〜R12、A及びaは前記と同じ
意味を表わし、cはトリフェニルアミン骨格の窒素原子
を基準としてオルト、パラ、メタいずれかの置換位置を
表わす。)で示される化合物。 (2)式(I)で示される前記1に記載の化合物。 (3)式(I)において、R1及びR6が水素原子または
C1〜C3のアルキル基、R2〜R5、R7、R8、R11
びR12が水素原子、R9がC2、C4またはC6のアル
キレン基、R10がC1〜C3のアルキル基であり、Aが
窒素原子に対しパラ位に結合した−CN、−NO2、−
CHO、−C(O)CF3、−CH=C(CN)2及び−
CH=CHNO2からなる群より選択される電子吸引性
置換基であり、aの結合位置がパラ位である下記式(I
A)で示される前記2に記載の化合物。
【0025】
【化15】 (4)式(II)で示される前記1に記載の化合物。 (5)式(II)において、R1が水素原子または1〜C
3のアルキル基、R2〜R 5、R7、R8、R11及びR12
水素原子、R9がC2、C4またはC6のアルキレン
基、R10がC1〜C3のアルキル基であり、Aが窒素原
子に対しパラ位に結合した−CN、−NO2、−CH
O、−C(O)CF3、−CH=C(CN)2及び−CH
=CHNO2からなる群より選択される電子吸引性置換
基であり、a及びbの結合位置がパラ位である下記式
(IIA)で示される前記4に記載の化合物。
【0026】
【化16】 (6)式(III)で示される前記1に記載の化合物。 (7)式(III)において、R1が水素原子または1〜C3
のアルキル基、R2〜R5、R7、R8、R11及びR12が水
素原子であり、R9がC2、C4またはC6のアルキレ
ン基であり、R10がC1〜C3のアルキル基であり、A
が窒素原子に対しパラ位に結合した−CN、−NO2
−CHO、−C(O)CF3、−CH=C(CN)2及び
−CH=CHNO2からなる群より選択される電子吸引
性置換基であり、a及びcの結合位置がパラ位である下
記式(IIIA)で前記6に記載の化合物。
【0027】
【化17】 (8)式(IB)
【0028】
【化18】 (式中、R1〜R12は前記1と同じ意味を表わし、A1
電子吸引性置換基を表わす。)、式(IIB)
【0029】
【化19】 (式中、R1〜R5、R7〜R12及びA1は前記と同じ意味
を表わす。)または、式(IIIB)
【0030】
【化20】 (式中、R1〜R5、R7〜R12及びA1は前記と同じ意味
を表わす。)で示される化合物を少なくとも1種含むこ
とを特徴とするフォトリフラクティブ材料組成物。 (9) 前記A1が、超分子分極率(β)5.0×10
-30esu以上の電子吸引性置換基である前記8に記載
のフォトリフラクティブ材料組成物。 (10)前記式(IB)、式(IIB)または式(III
B)中のA1が−CN、−NO2、−CHO、−C(O)
CF3、−CH=C(CN)2及び−CH=CHNO2
らなる群より選択される電子吸引性置換基である化合物
を少なくとも1種含む前記8または9に記載のフォトリ
フラクティブ材料組成物。 (11)前記式(IB)、式(IIB)または式(III
B)で示される化合物を少なくとも1種含み、その重量
割合が全体の50重量%以上を占める前記10に記載の
フォトリフラクティブ材料組成物。 (12)前記式(IB)、式(IIB)または式(III
B)で示される化合物を少なくとも1種含み、その重量
割合が全体の90%以上を占める前記10に記載のフォ
トリフラクティブ材料組成物。
【0031】
【発明の実施の態様】(I)フォトリフラクティブ化合
物 上述の通り、本発明の化合物は、フォトリフラクティブ
効果を示す化合物が、CT機能を有する構造部分とNL
O機能を有する構造部分がエステル結合を含む炭素鎖を
介して結合した構造を有する化合物である。具体的に
は、トリフェニルアミン(TPA)ユニットとアニリン
ユニットがエステル結合を含む炭素鎖を介して結合し
た、以下の基本骨格を有する低分子量(非ポリマー)化
合物である。
【0032】
【化21】 (式中の符号の意味は前記式(I)と同様であるが、以
下に詳述する。)
【0033】上記式において、トリフェニルアミン(T
PA)ユニットは、正孔輸送機能(CT)を有するもの
であり、TPAユニットを構成する各ベンゼン環は、上
記機能を害しない限りにおいて置換されていてもよい。
このような置換基の例としては、C1〜C6のアルキル
基またはアルコシキ基が挙げられる。従って、上記式に
おいて、R1〜R8は、水素原子、C1〜C6のアルキル
基またはアルコキシ基からなる群から選択される。正孔
輸送能からはR1〜R6の少なくとも一つがNに対してp
−位またはo−位のアルキル基が好ましく、さらに体積
密度(つまり、かさ張らないこと)を考慮するとメチル
基が好ましい。また、アモルファス形成能からはR1
6の少なくとも一つがNに対してm−位のアルキル基
またはアルコキシ基が好ましく、さらに体積密度を考慮
するとメチル基またはメトキシ基が好ましい。
【0034】一方、アニリンユニットは電気光学的に活
性な発色団として機能するものであり、置換基Aは電子
吸引性置換基であり、これにより非線形光学性(NL
O)が付与される。本発明におけるフォトリフラクティ
ブ化合物には、置換基Aが−CN、−NO2、−CH
O、−C(O)CF3等の電子吸引性置換基、−CH=
C(CN)2及び−CH=CHNO2等のビニル基に電子
吸引性置換基が結合した置換基、またはこれらと同等以
上の電子吸引性を有する化合物が含まれる。
【0035】置換基Aの置換位置はo−、m−、p−の
いずれでもよいが、非線形光学性を付与する観点からは
パラ位が好ましい。また、アニリンユニットは、非線形
光学性を害しない限りにおいて置換されていてもよい。
このような置換基の例としては、C1〜C6のアルキル
基またはアルコシキ基が挙げられる。従って、上記式に
おいて、R11及びR12は、それぞれ独立して水素原子、
C1〜C6のアルキル基またはアルコキシ基からなる群
から選択される。その置換位置は限定されないが、置換
基Aがp−位に位置することが好ましいため、これらの
置換基を導入する場合は、m−位またはo−位が好まし
い。また、R10はC1〜C3程度のアルキル基またはア
ルコキシ基が好ましい。
【0036】本発明においては、これらのTPAユニッ
ト及びアニリンユニットが、2つのエステル結合を含む
フレキシブルなスペーサ部を介して相互に結合される。
フレキシブルなスペーサ部を配することにより、アモル
ファスな分子ガラスを形成できるだけでなく、電場印加
によりNLO部分を容易に配向させることができる。ま
た、本発明の化合物では、フォトリフラクティブ組成物
を形成した際に従来よりも高い応答速度が実現される
が、これは、従来のフォトリフラクティブ材料化合物
(例えば、化学式(IV)あるいは(V)等。これらの化
合物では、CTとNLOが共役鎖を形成している。)と
異なり、CTとNLOとが非共役の構造を有しているこ
とによるものと考えられる。
【0037】フレキシブルなスペーサ部は、具体的には
ジカルボン酸のエステルを含む。ジカルボン酸を構成す
る2価の置換基R9は、C2〜C20の飽和または不飽
和の脂肪族炭化水素鎖であり、その一部に1以上の非芳
香環を含んでもよい。炭素数が2未満では十分な柔軟性
を付与することができない。炭素数が20以上では、十
分な回折効率が期待できない。好ましくはC2〜C1
0、さらに好ましくはC2〜C6のアルキレンである。
なお、TPAユニット上におけるスペーサ部の置換位置
aは特に限定されないが、合成上の観点からはTPAの
窒素原子から見てパラ位が好ましい。このタイプの化合
物としては、例えば、以下の化合物が含まれる。
【0038】
【化22】
【0039】また、以下の化合物も例として挙げられ
る。
【0040】
【化23】
【0041】さらに、本発明には、前記式(I)で表さ
れる化合物2分子が直接結合した構造を有する式(II)の
化合物:
【0042】
【化24】 も含まれる。式中の符号は上記と同様であり、結合位置
bはo−、m−、p−のいずれでもよいが合成上の観点
からはTPAの窒素原子から見てパラ位が好ましい。こ
のタイプの化合物としては、例えば、以下の化合物が含
まれる。
【0043】
【化25】
【0044】また、以下の化合物も例として挙げられ
る。
【0045】
【化26】
【0046】さらにまた、本発明には、前記の化合物の
ほか、上記の化合物2分子が脂肪環を介して結合した構
造を有する式(III)の化合物:
【0047】
【化27】 も含まれる。式中の符号は上記と同様であり、結合位置
cはo−、m−、p−のいずれでもよいが合成上の観点
からはTPAの窒素原子から見てパラ位が好ましい。こ
のタイプの化合物としては、例えば、以下の化合物が含
まれる。
【0048】
【化28】
【0049】また、以下の化合物も例として挙げられ
る。
【0050】
【化29】
【0051】なお、ここで具体例として挙げた化合物
は、本発明の典型例ではあるが、上述した範囲内で他の
置換基の組み合わせにより形成される化合物も、本発明
に従いフォトリフラクティブ化合物として用いることが
できる。
【0052】(II)フォトリフラクティブ化合物の合成 上記化合物は、種々の経路で合成可能である。式(I)
の化合物は、以下の反応スキームにより合成できる。
【0053】
【化30】
【0054】工程1〜2は、トリフェニルアミンまたは
そのベンゼン環に置換基を有する化合物(以下、ベンゼ
ン環上に置換基を有する化合物を含めTPAと略記す
る。)に−CH2OHを導入する工程であり、例えば、
アルデヒド基の導入(ホルミル化;工程1)後、カルボ
ニルを還元する(工程2)ことにより行なう。工程1の
反応としてはフィルスマイヤー反応が挙げられ、反応試
薬としてはDMF−塩化ホスホリル(POCl3)等が
挙げられる。工程2の還元剤の例としてはNaBH4
挙げられる。これらの工程は置換基の種類に応じ、既知
の他の方法により行なってもよい。なお、TPAは、例
えば、ジフェニルアミンとハロゲン化アリール(例え
ば、R1がメチルの場合、ヨードトルエン)を反応させ
ることにより製造できる。
【0055】一方、工程3〜4は、アニリンユニットに
スペーサ部を結合する工程であり、例えば、フッ化物に
塩基の存在下、ヒドロキシエチルアミンを反応させ(工
程3)、しかる後、ジカルボン酸〔R9(COOH)2
を反応させる(工程4)。ジカルボン酸は酸無水物(例
えば、R9が炭素数2個のアルキレンの場合は無水コハ
ク酸)が好ましい。得られたカルボン酸(NA−COO
H)と工程2で得たTPA−CH2OHとのエステルを
形成することにより、式(I)の化合物が得られる(工
程5)。
【0056】なお、上記の反応スキームは、例えば、工
程2で得たTPA−CH2OHをジカルボン酸と反応さ
せてエステルとし、これを工程3で得たヒドロキシエチ
ルアミン誘導体と反応させる等の種々の変更が可能であ
る。そのほか、個別の工程あるいはいくつかの工程を複
合した工程に既知の他の反応を用いて合成を行なうこと
ができる。
【0057】式(II)の化合物は、上記の反応スキーム
において、出発物質のTPAをN,N,N',N'−テト
ラフェニル−(1,1'−ビフェニル)−4,4'−ジア
ミンまたはそのベンゼン環に置換基を有する化合物(以
下、ベンゼン環上に置換基を有する化合物を含めTPD
と略記する。):
【0058】
【化31】 に代えることにより同様に合成できる。なお、TPD
は、例えば、N,N'−ジフェニル−(1,1'−ビフェ
ニル)−4,4'−ジアミンとハロゲン化アリール(例
えば、R1がメチルの場合、ヨードトルエン)を反応さ
せることにより製造できる。
【0059】また、式(III)の化合物は、上記の反応
スキームにおいて、出発物質であるTPAを1,1'−
ビス−(ジフェニルアミノフェニル)シクロヘキサンま
たはそのベンゼン環に置換基を有する化合物(以下、ベ
ンゼン環上に置換基を有する化合物を含めTDPACH
と略記する。):
【0060】
【化32】 に代えることにより同様に合成できる。なお、TDPA
CHは、例えば、ジフェニルアミン2分子とシクロヘキ
サノンをメタンスルホン酸のような触媒存在下に反応さ
せることによりにより製造できる。 (III)フォトリフラクティブ材料組成物 本発明は、前記式(I)〜(III)のいずれかのタイプの
構造を有する化合物をCT−NLO成分として用いたフ
ォトリフラクティブ材料組成物を提供する。但し、電子
吸引性置換基Aは特に限定されず、電子吸引性基であれ
ばよく、好ましくは、置換基を下記の分子:
【0061】
【化33】 における置換基Xとして用いた場合における当該分子の
超分子分極率(β)が5.0×10-30esu以上となる
ものであればよい。β値が上記値未満であると、NLO
性が不十分となり、本発明によるフォトリフラクティブ
材料としての十分な効果が得られない。
【0062】ここで、超分子分極率(β)は、光の電界
Eに対し分子に誘起される分極Δμを、Δμ=α・E+
β・E2+γ・E3+……と表したときのβとして定義さ
れる値である。ここで、βの値としては、実測値(DC e
lectric field induced second-harmonic generation
法による)と計算値(分子軌道法による)のいずれをも
用いることができる。このような置換基の例としては、
表1に示すように、−CN、−NO2、−CHO、−C
(O)CF3等の電子吸引性置換基、−CH=C(C
N)2及び−CH=CHNO2等のビニル基に電子吸引性
置換基が結合した置換基が含まれる。
【0063】
【表1】表1:置換基と超分子分極率β
【0064】すなわち、本発明は、式(IB)
【0065】
【化34】 (式中、R1〜R12は請求項1と同じ意味を表わし、A1
は電子吸引性置換基を表わす。)、式(IIB)
【0066】
【化35】 (式中、R1〜R5、R7〜R12及びA1は前記と同じ意味
を表わす。)または、式(IIIB)
【0067】
【化36】 (式中、R1〜R5、R7〜R12及びA1は前記と同じ意味
を表わす。)で示される化合物を少なくとも1種含むこ
とを特徴とするフォトリフラクティブ材料組成物、好ま
しくはA1が5.0×10-30esu以上であるフォトリ
フラクティブ性能に優れたフォトリフラクティブ材料組
成物、特に置換基A1が−CN、−NO2、−CHO、−
C(O)CF3、−CH=C(CN)2または−CH=C
HNO2から選択される化合物であるフォトリフラクテ
ィブ材料組成物を提供する。
【0068】上述のように、フォトフォトリフラクティ
ブ材料組成物は、フォトリフラクティブ化合物のみから
なる単一系フォトリフラクティブ材料組成物(但し、C
Gの添加量は少量であるので、これを添加した組成物も
単一系に含む。)とフォトリフラクティブをポリマー中
に分散して用いた分散系フォトリフラクティブ材料組成
物に大別されるが、本発明の上記化合物はいずれにも適
用可能であり、本発明のフォトリフラクティブ材料組成
物は、単一系及び分散系のフォトリフラクティブ材料組
成物のいずれをも含む。
【0069】(a)分散系フォトリフラクティブ材料組成
物 本発明による分散系フォトリフラクティブ材料組成物
は、式(IB)〜(IIIB)で示される化合物と電荷発生
剤とを不活性ポリマー中に分散させたものである。
【0070】電荷発生剤は光照射により電荷を発生する
化合物であり、ポリマー中への分散性が良好なものであ
れば特に限定されない。このような化合物の例として
は、C 60やC70等のフラーレン、2,4,7−トリニト
ロ−9−フルオレノン等のトリニトロフルオレノン等が
挙げられる。電荷発生剤の添加量は特に限定されない
が、通常は組成物全量を基準として0.01〜3重量%
程度である。
【0071】不活性ポリマーは、使用する波長域におい
て吸収がないポリマーであれば特に限定されない。この
ようなポリマーの例としては、ポリスチレン、ポリカー
ボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、
ポリアミド、ポリウレタン等が挙げられる。ポリマーの
添加により、分子の再配向が容易になるため、応答速度
が改善される。また、本発明の化合物は単独でも結晶化
しないため、不活性ポリマーとの混合物としても相分離
の問題は生じない。
【0072】組成物中における、式(IB)〜(IIIB)
で示される化合物の配合量は50重量%〜90重量%で
ある。50重量%未満では十分な効果が得られない。9
0重量%以上では、単一系フォトリフラクティブ材料と
して有用であるが、分散系材料としての特長が十分に発
揮されない。
【0073】本発明の分散系フォトリフラクティブ材料
組成物は、上記の基本成分以外の成分を含んでもよい。
例えば、可塑剤、電荷トラップ剤等が挙げられる。可塑
剤としては、使用波長領域での透明性等に影響を及ぼさ
ない限り、種類、配合量は特に限定されない。
【0074】本発明の組成物はそれ自体で電荷のトラッ
プ機能を有しているが、必要に応じて電荷トラップ剤を
添加することによりトラップ機能を増強することが可能
である。本発明の組成物においては輸送される電荷が正
孔であることから、トラップ剤としては正孔輸送剤であ
るトリフェニルアミン誘導体よりも低い酸化電位を有す
る分子を添加すればよい。本組成物へトラップ剤を添加
する場合には0〜約10%添加する。各成分のポリマー
中への分散操作は、慣用の方法により行なえばよい。
【0075】(b)単一系フォトリフラクティブ組成物 さらに、本発明によるフォトリフラクティブ材料組成物
は、不活性ポリマーの添加量を低く抑え、実質的にフォ
トリフラクティブ化合物のみからなる単一系フォトリフ
ラクティブ材料としても用いることが可能である。フォ
トリフラクティブ化合物の濃度をできるだけ高くするこ
とにより、より優れた効果を発揮する。従来技術の低分
子化合物では、ポリマードーパントを添加せずに、本発
明に匹敵するフォトリフラクティブ性能を示す物質は知
られていない。
【0076】単一系組成物中における、式(IB)〜(I
IIB)で示される化合物の配合量は90重量%以上であ
る。残部は電荷発生剤等であり、不活性ポリマーを含ん
でもよい。電荷発生剤は上記の分散系と同様である。不
活性ポリマーを用いる場合、その種類は上記の分散系と
同様である。電荷トラップ剤や可塑剤を添加してもよ
い。
【0077】(4)フォトリフラクティブ素子 本発明のフォトリフラクティブ材料組成物を用いて、慣
用の方法によりフォトリフラクティブ素子を製造するこ
とができる。
【0078】その方法や形状等は特に限定されないが、
最も一般的な方法としては、上述の材料組成物またはこ
れを適当な溶媒に溶かしたものを透明板上に塗布し、所
望の厚みのスペーサを介してさらに透明板を重ねること
により、板状の素子を形成する方法が挙げられる。透明
板としては、ITO等の透明電極基板を用いることがで
きる。
【0079】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、これらは例示であって本発明を限定するものでは
ない。 実施例1:フォトリフラクティブ化合物(TPA−N
A)の合成 以下の手順により、式(I)で表されるタイプに属し電
子吸引性置換基としてニトロ基を含む化合物(TPA−
NA):
【0080】
【化37】 を合成した。 (1)TPA−CHOの合成
【0081】
【化38】
【0082】内容量100mlの三つ口丸底フラスコ
に、窒素雰囲気下、20mlのDMFを仕込み、POC
3 12.5g(81.5mmol)を氷浴中で滴下し
た。溶液の色が赤紫色に変化(フィルスマイヤー錯体の
形成)したのを確認した後、トリフェニルアミン(TP
A)20gとDMF50mlを加え、80℃で6時間反
応させた。
【0083】反応終了後、フラスコの内容物を氷水中に
投入し、酢酸ナトリウム水溶液を用いて中和し冷蔵庫で
一晩冷却した。その後、沈殿物を濾過し、水で3回洗浄
を繰り返し、真空乾燥後、カラムクロマトグラフィー
(SiO2,トルエン:ヘキサン=4:1)により精製
し薄い黄色の粉末20.1gを得た。収率90.2%。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:-CHO(s, H, 9.79pp
m),芳香族プロトン(m, 14H, 6.97−7.35ppm) (2)TPA−CH2OHの合成
【0084】
【化39】
【0085】200mlの三つ口フラスコにTPA−C
HO10.0g(36.5mmol)とベンゼン:エタノ
ール(1:1)混合溶媒160mlを仕込み、NaBH
4 1.72g(45.6mmol)を加え、室温で6時間
反応させた。反応終了後、溶媒を留去しベンゼン20m
lに再溶解した。無機塩を除去するためにベンゼン溶液
を水で3回洗浄しMgSO4で乾燥した。溶媒留去後、
ヘキサンを加えることによって薄い黄色の粉末7.03
gを得た(収率70%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:-OH(s, H, 1.75ppm),-
CH2-(s, 2H, 4.58ppm),芳香族プロトン(m, 14H, 6.95−
7.29ppm) (3)NA−OHの合成
【0086】
【化40】
【0087】200mlの三つ口フラスコに4−フルオ
ロニトロベンゼン10.05g(71.2mmol)、N
−メチルエタノールアミン5.36g(71.2mmo
l)、NaHCOH3 5.98g(71.2mmol)及
びジメチルスルホキシド(DMSO)30mlを仕込
み、90℃で8時間反応させた。反応終了後、反応物を
200mlの水に役入し、沈殿物をろ過し水で3回洗浄
し真空乾燥した。その後、ベンゼンで再結晶することに
よって黄色の結晶13.124gを得た(収率:94
%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:-NCH3-(s, 3H, 3.18pp
m), -NCH2CH2-(t, 4H,3.62ppm, 3.89ppm), 芳香族プロ
トン(d, 4H, 6.63ppm, 8.04ppm) (4)NA−COOHの合成
【0088】
【化41】
【0089】三角フラスコに、NA−OH2.0g(1
0.2mmol)、無水コハク酸2.04g(20.4m
mol)、4−ジメチルアミノピリジン0.052g
(NA−OHに対して4mol%)及びTHF20ml
を仕込み、室温で二日間反応させた。反応終了後THF
を留去し、200mlの水に反応物を投入し、沈殿物を
濾過した。さらに熱水で2回洗浄しベンゼンで再結晶す
ることにより黄色の粉末2.76gを得た(収率:90.
1%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:-CH2CH2COOH(m, 4H,
2.58ppm, 2.62ppm), -NCH 3(s, 3H, 3.1ppm), -NCH2CH2O
-(t, 4H, 3.72ppm, 4.35ppm), 芳香族プロトン(d,4H,
6.67ppm, 8.1ppm)
【0090】(5)TPA−NAの合成200mlの三
つ口フラスコにTPA−CH2OH、NA−COOH、
DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド)、DMAP
(4−ジメチルアミノピリジン)を下記の量、仕込み、
室温で48時間反応させた。
【0091】 TPA−CH2OH 1.50g(5.46mmol) NA−COOH 1.62g(5.46mmol) DCC 1.14g(5.46mmol) DMAP 2mol%(TPA−CH2OHに対して) THF 30ml
【0092】反応終了後、生成されたエステルを濾過
し、溶媒を留去した後、カラムクロマトグラフィ(Si
2,クロロホルム/テトラヒドロフラン)により精製
して黄色の粉末1.44gを得た(収率:47.6%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:TPA-CH3O-(s, 2H, 5.0
8ppm), -OOCCH2CH2COO-(m, 4H, 2.58〜2.62ppm), -NCH3
(s, 3H, 3.1ppm), -NCH2CH2O-(t, 4H, 3.69ppm,4.30pp
m),NAユニットの芳香族プロトン(d, 4H, 6.65, 8.10p
pm),TPAユニットの芳香族プロトン(m, 14H, 6.90〜
7.15ppm)
【0093】実施例2:フォトリフラクティブ化合物
(TPA−DCVA)の合成 以下の手順により、式(I)で表されるタイプに属し電
子吸引性置換基としてジシアノビニル基を含む化合物
(TPA−DCVA):
【0094】
【化42】 を合成した。 (1)DCVA−OHの合成
【0095】
【化43】
【0096】(a)200mlIの三つ口フラスコに4−
フルオロベンズアルデヒド15.0g(121mmo
l)、マロンニトリル9.98g(151mmol)、
酢酸アンモニウム0.47g(6.1mmol)及びエタ
ノール100mlを仕込み、室温で8時間反応させた。
反応終了後、沈殿物をろ過し、エタノールで3回洗浄し
真空乾燥し白色の結晶16.2gを得た(収率:78
%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:芳香族プロトン(d, 4
H, 7.12, 7.95ppm), -CH=C-(CN)2(s, 1H, 7.75ppm)
【0097】(b)200mlの三つ口フラスコに(a)で得
た化合物10.0g(58.1mmol)、N−メチルエ
タノールアミン5.45g(72.6mmol)、NaH
COH 3 6.11g(72.6mmol)及びDMSO1
00mlを仕込み、70℃で3時間反応させた。反応終
了後、反応物を冷却し300mlの水に投入した。その
後、沈殿物をろ過し水で3回洗浄し真空乾燥した。得ら
れた粉末をベンゼンで再結晶することによって黄色の結
晶5.14gを得た(収率:39%)。1H−NMR〔CD
Cl3;δ(ppm)〕:-N(CH2CH2OH)(brs,1H,1.83ppm),-N(C
H3)(s,3H,3.18ppm),-N(CH2CH2OH)(t,4H,3.62ppm,3.88pp
m),芳香族プロトン (d, 4H, 6.79ppm, 7.78ppm),-CH=C-
(CN)2(s,1H,7.40ppm)) (2)DCVA−COOHの合成
【0098】
【化44】 三角フラスコに、DCVA−OH3.0g(13.2mm
ol)、無水コハク酸2.64g(26.4mmol)、
4−ジメチルアミノピリジン0.065g(DCVA−
OHに対して4mol%)及びTHF20mlを仕込
み、室温で二日間反応させた。
【0099】反応終了後、THFを留去し200mlの
水に反応物を投入し、沈殿物をろ過した。さらに熱水で
2回洗浄しベンゼンで再結晶することにより黄色の粉末
3.16gが得られた(収率:73%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:-CH2CH2COOH(M, 4H,
2.57ppm, 2.64PPM), -NCH 3(s, 3H, 3.12ppm,), -NCH2CH
2O(t, 4H, 3.73ppm, 4.33ppm), 芳香族プロトン(d, 4H,
6.65ppm, 7.81ppm), -CH=C-(CN)2(s, 1H, 7.47ppm)
【0100】(3)TPA−DCVAの合成 200mlの三つ口フラスコに下記の試薬を仕込み、5
0℃で6時間反応させた。 TPA−CH2OH 1.50g(5.46mmol) DCVA−COOH 1.78g(5.46mmol) DCC 1.15g(5.46mmol) DMAP 2mol%(TPA−CH2OHに対して) THF 20ml
【0101】反応終了後、反応液を冷却し、生成した固
形物を濾過し、溶媒を留去した後、カラムクロマトグラ
フィ(SiO2,クロロホルム/テトラヒドロフラン)
により精製して黄色の粉末1.02gを得た(収率:3
2%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:TPA-CH2O(s, 2H, 5.05
ppm), -OOCCH2CH2COO(m,4H, 2.58〜2.62ppm), -NCH
3(S, 3H, 3.1ppm),-NCH2CH2O-(t, 4H, 3.70ppm, 4.26p
pm),DCVAユニットの芳香族プロトン(d, 4H, 6.74,
7.80ppm),TPAユニットの芳香族プロトン(m, 14H, 6.
97〜7.26ppm),-CH=C-(CN)2(s, 1H, 7.44ppm)
【0102】実施例3:フォトリフラクティブ化合物
(TPD−NA)の合成 以下の手順により、式(II)で表されるタイプに属し電
子吸引性置換基としてニトロ基を含む化合物(TPD−
NA):
【0103】
【化45】 を合成した。 (1)TPD〔N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス
(4−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−
4,4′−ジアミン〕の合成
【0104】
【化46】
【0105】メカニカルスターラーとリービッヒ冷却管
を取り付けた内容量500mlの三つ口丸底フラスコに
N,N′−ジフェニル−[1,1′−ビフェニル]−
4,4′−ジアミン20g(59.5mmol)、p−
ヨードトルエン311g(1.43mol)、無水炭酸
カリウム36.5g(264mmol)、ヨウ化第1銅
30.4g(160mmol)及び5.55g(21mm
ol)の18−クラウン−6を仕込み、窒素雰囲気、2
00℃で24時間反応させた。反応中に生成する水は分
留により反応系から除去した。
【0106】反応終了後、フラスコ内にトルエンを加
え、濾過することにより不溶物を除去した。トルエン及
び未反応のp−ヨードトルエンを減圧留去し、得られた
生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO2,トルエ
ン:ヘキサン=1:1)を用いて精製した。得られた薄
い黄色の粘性固体にn−ヘキサンを加え、白色粉末2
5.0gを得た(収率:80.7%)1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:-CH3(s, 6H, 2.3pp
m)、芳香族プロトン(m, 26H, 6.95-7.4ppm)
【0107】(2)TPD−2CHO〔N,N′−ビス
(4−ホルミルフェニル)−N,N′−ビス(4−メチ
ルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,4′−
ジアミン〕の合成
【0108】
【化47】
【0109】反応装置については上記(1)と同じであ
る。窒素下で30mlのDMFを仕込み、POCl37.
13ml(78.57mmol)を水浴中で滴下した。
溶液の色が赤紫色に変化したのを確認した後、TPD
9.0g(17.5mmol)及び20mlのDMFを加
え、90℃で12時間反応させた。
【0110】反応終了後、フラスコの内容物を氷水中に
投入し、水酸化ナトリウム水溶液でpH6〜7に中和し
た。その後、沈殿物を濾過し、水で数回洗浄を繰り返
し、濾過、乾燥後、トルエンに溶解させ無水硫酸マグネ
シウムで脱水した。トルエンを留去して得られた黒色粘
性固体を、カラムクロマトグラフィー(SiO2,トル
エン)により精製し、蛍光黄色粉末8.5gを得た(収
率89.3%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:-CH3(s, 6H, 2.4ppm),
-CHO( s, 2H, 9.8ppm),芳香族プロトン(m, 24H, 7.02-
7.7ppm)
【0111】(3)TPD−2CH2OH〔N,N′−
ビス(4−ヒドロキシメチルフェニル)−N,N′−ビ
ス(4−メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]
−4,4′−ジアミン〕の合成
【0112】
【化48】
【0113】200mlの三つ口フラスコにTPD−2
CHO8.0g(14mmol)とベンゼン:エタノー
ル(1:1)混合溶媒100mlを仕込み、NaBH4
1.33g(35mmol)を加え、40℃で15時間
反応させた。
【0114】反応終了後、溶媒を留去しベンゼンに再溶
解した。無機塩を除去するためにベンゼン溶液を水で3
回洗浄しMgSO4で乾燥した。その後、溶媒を留去
し、ヘキサンに加えることによって薄い黄色の粉末7.
9gを得た(収率97.5%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:-CH3(s, 6H, 2.38pp
m), -OH(s, 2H, 1.76ppm),-CH2-(s, 4H, 4.6ppm),芳香
族プロトン(m, 24H, 6.98-7.42ppm)
【0115】(4)TPD−NAの合成 TPA−CH2OHをTPD−2CH2OHに代え、各試
薬の仕込み量を TPD−2CH2OH 2.0g(3.46mmol) NA−COOH 2.05g(6.92mmol) DCC 1.43g(6.92mmol) DMAP 2mol%(TPD−2CH2OHに対して) THF 30ml に変更したほかは実施例1の(5)と同様にして黄色粉
末1.37gを得た。収率35%。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕: TPDユニット:-CH3(s, 6H, 2.33ppm),芳香族プロトン
(m, 24H, 6.9〜7.4ppm),-OOCCH2CH2COO(m, 8H, 2.58〜
2.62ppm), -NCH3(s, 6H, 3.1ppm),-NCH2CH2O-(t,8H,
3.69ppm, 4.30ppm) NAユニット:芳香族プロトン(d, 8H, 6.65, 8.10ppm)
【0116】実施例4:フォトリフラクティブ化合物
(TDPACH−NA)の合成 以下の手順により、式(III)で表されるタイプに属し
電子吸引性置換基としてニトロ基を含む化合物(TDP
ACH−NA):
【0117】
【化49】 を合成した。(1)TDPA〔4−メチルトリフェニル
アミン〕の合成メカニカルスターラーとリービッヒ冷却
管を取り付けた内容量500mlの三つ口丸底フラスコ
にジフェニルアミン20g(118mmol)、p−ヨ
ードトルエン311g(1.43mol)、無水炭酸カ
リウム36.5g(264mmol)、ヨウ化第1銅3
0.4g(160mmol)及び5.55g(21mmo
l)の18−クラウン−6を仕込み、窒素雰囲気、20
0℃で24時間反応させた。反応中に生成する水は分留
により反応系から除去した。
【0118】反応終了後、フラスコ内に200mlのト
ルエンを加え、濾過することにより不溶物を除去した。
トルエン及び未反応のp−ヨードトルエンを減圧留去
し、得られた生成物をカラムクロマトグラフィー(Si
2,トルエン:ヘキサン=1:2)を用いて精製し、
再結晶することによって20gの白色粉末を得た(収
率:65%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:-CH3(s, 3H, 2.3ppm),
芳香族プロトン(m, 13H, 6.9-7.2ppm)
【0119】(2)TDPACH〔1,1'−ビス−
(ジフェニルアミノフェニル)シクロヘキサン〕の合成
【0120】
【化50】
【0121】リービッヒ冷却管を取り付けた100ml
の三つ口丸底フラスコにTDPA4.0g(15.4mm
ol)、シクロヘキサノン0.76g(7.71mo
l)、メタンスルホン酸0.4g、及び酢酸10mlを
仕込み、窒素雰囲気、57℃で10時間反応させた。
【0122】反応終了後、フラスコの内容物を50ml
の水中に投入し、メタノールで洗浄した。乾燥後、カラ
ムクロマトグラフィー(SiO2,トルエン:ヘキサン
=1:3)を用いて精製し、1.79gの白色粉末を得
た(収率:38.7%)1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:シクロヘキシルの2位
及び6位のプロトン(t, 4H, 2.2ppm),シクロヘキシルの
3位及び5位の(t, 4H, 1.55ppm),シクロヘキシルの4
位の(t, 2H, 1.5ppm),-CH3(s, 6H, 2.3ppm),芳香族プロ
トン(m, 26H, 6.9-7.2ppm)
【0123】(3)TDPACH−2CHO〔1,1′
−ビス(4−ホルミルフェニル−4′−メチルフェニル
アミノフェニル)シクロヘキサン〕の合成
【0124】
【化51】
【0125】反応装置については上記(2)と同じであ
る。窒素下で1.29mlのDMFを仕込み、POCl3
0.768g(0.47ml)(5mmol)を水浴中で
滴下した。溶液の色が赤紫色に変化したのを確認した
後、TDPACH0.91g(1.67mmol)及び7
mlのDMFを加え、80℃で10時間反応させた。
【0126】反応終了後、フラスコの内容物を氷水中に
投入し、水酸化ナトリウム水溶液でpH6〜7に中和し
た。その後、沈殿物を濾過し、水で数回洗浄を繰り返
し、濾過、乾燥後、トルエンに溶解させ無水硫酸マグネ
シウムで脱水した。トルエンを留去して得られた黒色粘
性固体を、カラムクロマトグラフィー(SiO2,トル
エン)により精製し、TDPACH−2CHO粉末0.
50gを得た(収率50%)。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:シクロヘキシルの2位
及び6位のプロトン(t, 4H, 2.4ppm),シクロヘキシルの
3位及び5位のプロトン(t, 4H, 1.6ppm),シクロヘキシ
ルの4位のプロトン(t, 2H, 1.53ppm), -CH3(S, 6H, 2.
4ppm), -CHO(s,2H, 9.8ppm),芳香族プロトン(m, 24H,
6.93-7.23ppm)
【0127】(4)TDPACH−2CH2OH〔1,
1′−ビス(4−ヒドロキシメチルフェニル−4′−メ
チルフェニルアミノフェニル)シクロヘキサン〕の合成
【0128】
【化52】
【0129】50mlの三つ口フラスコにTDPACH
−2CHO0.5g(0.7635mmol)及びベンゼ
ン:エタノール(1:1)混合溶媒6mlを仕込み、7
0mg(1.85mmol)のNaBH4を加え、室温で
6時間反応させた。
【0130】反応終了後、溶媒を留去しベンゼンに再溶
解した。無機塩を除去するためにベンゼン溶液を水で3
回洗浄しMgSO4で乾燥した。その後、溶媒を留去
し、ヘキサンに加えることによって薄い黄色の粉末0.
35gを得た(収率70%)。
【0131】1H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕:シクロヘ
キシルの2位及び6位のプロトン(t, 4H, 2.4ppm),シク
ロヘキシルの3位及び5位のプロトン(t, 4H, 1.6ppm),
シクロヘキシルの4位のプロトン(t, 2H, 1.53ppm),-CH
3(s, 6H, 2.4ppm),-OH(s, 2H, 1.76ppm),-CH2-(s, 4H,
4.6ppm),芳香族プロトン(m, 24H, 6.93-7.23ppm)
【0132】(5)TDPACH−NAの合成 TPD−2CH2OHをTDPACH−2CH2OHに代
え、各試薬の仕込み量を TDPACH−2CH2OH 1.5g(2.3mmol) NA−COOH 1.54g(5.2mmol) DCC 1.07g(5.2mmol) DMAP 2mol%(TDPACH−2CH2OHに対して) THF 30ml に変更したほかは実施例3の(4)と同様にして黄色粉
末1.03gを得た。収率37%。1 H−NMR〔CDCl3;δ(ppm)〕: TDPACHユニット:-CH3(s, 6H, 2.33ppm), 芳香族
プロトン(m, 24H, 6.9〜7.25ppm), シクロヘキシル環プ
ロトン(m, 10H, 2.24ppm, 1.55ppm),-OOCCH2CH2COO(m,
8H, 2.58〜2.62ppm), -NCH3(s, 6H, 3.1ppm), -NCH2CH
2O-(t, 8H, 3.69ppm, 4.30ppm) NAユニット:芳香族プロトン(d, 8H, 6.65, 8.10ppm)
【0133】試験例:フォトリフラクティブ化合物の物
性 (1)紫外線吸収スペクトル 実施例1〜2で得たフォトリフラクティブ化合物TPA
−NAとTPA−DCVAについて、紫外〜可視光域で
の吸収スペクトルを測定した。結果を図1に示す(破
線:TPA−NA、実線:TPA−DCVA)。
【0134】約303nmに位置する吸収ピークはTP
Aユニットによるものであり、382nmと424nm
における吸収はそれぞれNAとDCVAユニットによる
ものである。これまでに報告されている2機能性TPA
誘導体では、TPAユニットは、電子吸引性基で直接に
置換されており、これにより分子に非線形光学性が付与
されている(式(IV)または(V)参照)。しかし、こ
のような構造ではTPAユニット(N−フェニル基)の
電子密度が減少するため、光導電性は犠牲になる。これ
に対し、図1に示す本発明化合物の吸収スペクトルは、
TPAユニットとNLOユニットそれぞれのスペクトル
を重ね合わせたものとほぼ同じであり、従って少なくと
も基底状態においては、TPAユニットとNLOユニッ
トとの間に電気的な相互作用は存在しないと考えられ
る。すなわち、TPAユニットとNLOユニットが脂肪
鎖により結合されている本発明の化合物では、NLOユ
ニットの導入にも関わらずTPAユニット(N−フェニ
ル基)の電子密度は実質上低下していないことが、上記
の吸収スペクトルによって示唆される。
【0135】(2)熱的特性 実施例1〜2の各化合物について示差熱分析を行ない、
融点(Tm)及びガラス転移点(Tg)を測定した。結
果を表2に示す。なお、示差熱分析では、結晶化温度の
有無についても調べ、これらの化合物は結晶化しないこ
とを確認した。表2には、紫外線吸収スペクトルのピー
ク波長(λmax)及び吸光係数(α)も示した。ピーク波
長(λmax)及び吸光係数(α)は、後述する厚さ100
μmのPR素子試料について測定したものであり、吸光
係数(α)は波長633nmでの値である。
【0136】
【表2】表2:フォトリフラクティブ化合物の物性値
【0137】これらの結果に示されるように、いずれの
分子についても結晶化は観察されておらず、また、ガラ
ス転移点が十分に低いため、本発明のフォトリフラクテ
ィブ化合物は安定なアモルファスフィルムを形成する能
力を有することがわかる。実施例5:フォトリフラクテ
ィブ材料組成物及びこれを用いたフォトリフラクティブ
素子の製造
【0138】実施例1で製造したTPA−NA99.8
mgを0.02wt%のC60溶液(溶媒:トルエン)1m
lに溶解し、0.5μmフィルターで濾過し、試料溶液
を得た。これを2枚のITO基板に垂らしてキャスト
し、室温で24時間乾燥し、さらに溶媒を完全に除去す
るために60℃で24時間乾燥した。得られたITO−
フォトリフラクティブ(PR)材料の積層体をITO基
板を下側にしてホットプレート上に載置し加熱した。プ
レートの温度がPR材料のガラス転移点(Tg)に達し
PR材料がアモルファスになった時点でITO−PR積
層体をプレートから取り上げ、PR材料層が重なるよう
に、厚さ100μmのテフロン(登録商標)スペーサー
を介して2枚の積層体を張り合わせた。その後、荷重を
かけて室温で放置し、PR層の厚みが100μmのPR
素子試料1を製造した。同様にして、TPA−DCV
A、TPD−NA、TDPACH−NAを用いたPR素
子試料2〜4を製造した。
【0139】実施例6:フォトリフラクティブ素子の特
性評価 以下の方法により、フォトリフラクティブ素子の特性評
価を行なった。 (1)結合利得係数 フォトリフラクティブ素子の特性値の一つとして二光波
結合による結合利得係数が挙げられる。
【0140】すなわち、フォトリフラクティブ素子に2
つの光ビームを照射すると、媒質中に光強度分布の周期
構造(干渉縞)が形成されるが、ここで外部電場を印加
すると、キャリアがドリフトするため、光強度分布とは
位相差を有する屈折率の周期構造(屈折率格子)が形成
される。この結果、各ビームの直進波と回折波の間には
位相差が生じるため、2つのビームの間で非対称なエネ
ルギー交換が起こる。結合利得係数の測定は、図2に概
略を示す構成により行なった。
【0141】He−Neレーザー1の光路上にミラー2
及びビームスプリッタ3を設け、これにより出射ビーム
(633nm)を等強度(130mW/cm2)の2本
のビームA1とA2に分け、ミラー4と5及び光路上に
設けたレンズ(図示していない。)を用いて試料6内で
交差するようにした。具体的には、それぞれのビームの
試料への入射角はビームA1を40°、ビームA2を6
0°とした(交差角は20°)。
【0142】試料7は、上述のようにその表裏面にIT
O電極を有しているが、これに電圧を印加した状態で、
ビームA2(ポンプ光)をONした状態と、OFFした
ときのビームA1(プローブ光)の透過光強度をそれぞ
れ測定する。透過光強度はフォトダイオード7、8によ
り測定した。
【0143】結合利得係数Γは次の計算式により求めら
れる。
【0144】
【数1】Γ=(cosθ/d)[ln(γ0ξ)−ln
(ξ+1−γ0)] ξ:入射ビーム(ポンプ光A2とプローブ光A1)の強
度比 γ0=P/P0(P0:ポンプ光がないときのA1透過光
強度、P:ポンプ光があるときのA1透過光強度) θ:ビームA1またはビームA2の内部入射角 d:試料の厚さ
【0145】1.0×107V/m(すなわち、10V/
μm)〜約9×107V/m(すなわち、90V/μ
m)の範囲の印加電圧にて実験を繰り返し、結合利得係
数を求めた。
【0146】(2)回折効率 回折効率の測定は、図3に光学系の概略を示す四光波混
合法(FWM)により行なった。He−Neレーザ11
から出射される633nmのビームは偏光板12でs−
偏光(図面に垂直な方向の偏光)とした後、ビームスプ
リッタ14により2本に分けた(光強度は各々150m
W/cm2)。このうち一方のビームはミラー15で反
射した後、ビームスプリッタ16、さらに偏光ビームス
プリッタ17を透過した後、第1の書き込みビーム18
として試料19に入射させた。ビームスプリッタ14で
分けたもう一方のビームはミラー20で反射した後、第
2の書き込みビーム21として試料19に入射させた。
ここで第1の書き込みビーム18と第2の書き込みビー
ム21は試料19内で交差するように入射させ、交差角
は20°とした。また、それぞれのビームの試料19へ
の入射角は第1の書き込みビーム18を60°、第2の
書き込みビーム21を40°とした。一方、ビームスプ
リッタ16で反射したビームはミラー22で反射した
後、1/2波長板23、さらに偏光板24を透過してp
−偏光(図面に平行な方向の偏光)とし、ミラー25で
反射して第2の書き込みビーム21と対向するようにし
て読み出しビーム26(光強度:0.9mW/cm2)と
して試料19に入射させた。ここで、第1の書き込みビ
ーム18の方向に出射される回折ビーム27を偏光ビー
ムスプリッタ17で反射させてフォトダイオード28で
受光した。試料19へ電界を印加したときの(回折ビー
ム27の光強度/読み出しビーム26の光強度)×10
0を回折効率(%)として算出した。回折効率(応答シ
グナル強度)は図4に示すように経時的に変化した。
【0147】(3)応答時間 応答時間は、上記(2)の測定において、第2の書き込
みビーム21とONにし、一定時間後これをOFFにし
たときの回折ビーム27の光強度(応答シグナル強度)
の経時変化を測定し(代表的な測定結果を図4に示
す。)、この回折効率の立ち上がりの部分を下記式に最
小二乗法によりフィッティングして求めた。
【0148】
【数2】η(t)=A[1−exp(−t/τ)]+B (式中、η(t)は回折効率(シグナル強度)、τは応
答時間である。)
【0149】PR素子試料1(TPA−NA)及び試料
2(TPA−DCVA)について、以上の方法により測
定した結合利得係数、回折効率及び応答時間の結果を図
5、図6及び図7に示す。また、PR素子試料1(TP
A−NA)、試料2(TPA−DCVA)、試料3(T
PD−NA)及び試料4(TDPACH−NA)それぞ
れについての応答時間(τ)、回折効率(η)及び利得
係数(Γf)の測定結果を表3に示す。
【0150】
【表3】
【0151】なお、表3において、応答時間(τ)、回
折効率(η)及び利得係数(Γf)の値は、いずれの試
料についても、電界強度60V/μmでの測定値であ
る。
【0152】これらの結果に示されるように、本発明の
PR化合物のうち式TPA−NA及びTPA−DCVA
を用いて作製した試料素子では、応答時間は印加電圧4
0〜90V/μmの範囲で2〜10秒である。この結果
は、Zhangらによって報告された前記の共役二官能性材
料〔4−(N,N′−ジフェニルアミノ)−β−ニトロ
スチレン〕に比べ、1桁速い速度である。さらに、TP
D−NA及びTDPACH−NAでは、500ms〜
2.7sの範囲であり、CT−NLO非共役構造の本発
明のPR化合物は共役分子よりも大きく応答速度が速い
ことが確認された。また、実質的に単一系とみなされる
濃度で二官能性分子を用い得ることから、回折効率、最
大利得が従来のPR材料を大きく上回る結果となってい
る。
【0153】
【発明の効果】本発明の化合物は、電荷輸送性を示す構
造部分と非線形光学特性を示す構造部分とが非共役な関
係にあるため、各構造部分が単独で有するそれぞれの特
性を損なうことなくフォトリフラクティブ特性が発揮さ
れる。従って、本発明の化合物を含むフォトリフラクテ
ィブ材料組成物を用いることにより、高速応答性を有
し、安定に使用できる実用的なフォトリフラクティブ材
料を得ることができ、書き込み速度の速い光記録材料、
光情報処理用の高速素子材料などに応用可能であり動画
表示用素子としての可能性も有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 フォトリフラクティブ材料の構成を模式的に
示す説明図。
【図2】 二光波混合法による結合利得係数の測定系の
構成を示す概略図。
【図3】 四光波混合法による回折シグナル測定系の構
成を示す概略図。
【図4】 回折シグナルの経時変化パターンを示すグラ
フ。
【図5】 本発明のフォトリフラクティブ材料を用いて
得られる素子の結合利得特性(印加電圧−結合利得)を
示すグラフ。
【図6】 本発明のフォトリフラクティブ材料を用いて
得られる素子の回折効率特性(印加電圧−回折効率係
数)を示すグラフ。
【図7】 本発明のフォトリフラクティブ材料を用いて
得られる素子の応答速度(印加電圧−応答速度)を示す
グラフ。
【符号の説明】
1 レーザー光源、 2,4,5 ミラー、 3 ビームスプリッタ、 6 試料、 7,8 フォトダイオード、 11 レーザ光源、 12,24 偏光板、 14,16 ビームスプリッタ、 15,20,22,25 ミラー、 17 偏光ビームスプリッタ、 18 第1の書き込みビーム、 19 試料、 21 第2の書き込みビーム、 23 1/2波長板、 26 読み出しビーム、 27 回折ビーム、 28 フォトダイオード。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 壽彌 東京都小金井市中町2−24−16 東京農工 大学内 Fターム(参考) 2K002 AA01 AB12 AB29 AB40 BA01 CA06 GA10 HA16 HA31 2K008 AA04 DD12 4H006 AA01 AB92 4H056 EA10 FA05

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(I) 【化1】 〔式中、R1〜R8及びR10〜R12は、同一でも異なって
    もよく、各々水素原子、C1〜C6のアルキル基または
    アルコキシ基を表わし、R9はC2〜C20の2価の脂
    肪族炭化水素基(1以上の非芳香環を含んでもよい。)
    を表わし、Aは−CN、−NO2、−CHO、−C
    (O)CF3(トリフルオロアセチル基)、−CH=C
    (CN)2(ジシアノビニル基)及び−CH=CHNO2
    (ニトロビニル基)からなる群より選択される電子吸引
    性置換基、aはトリフェニルアミン骨格の窒素原子を基
    準としてオルト、パラ、メタいずれかの置換位置を表わ
    す。〕、式(II) 【化2】 (式中、R1〜R5、R7〜R12、A及びaは前記と同じ
    意味を表わし、bはトリフェニルアミン骨格の窒素原子
    を基準としてオルト、パラ、メタいずれかの置換位置を
    表わす。)、または式(III) 【化3】 (式中、R1〜R5、R7〜R12、A及びaは前記と同じ
    意味を表わし、cはトリフェニルアミン骨格の窒素原子
    を基準としてオルト、パラ、メタいずれかの置換位置を
    表わす。)で示される化合物。
  2. 【請求項2】 式(I)で示される請求項1に記載の化
    合物。
  3. 【請求項3】 式(I)において、R1及びR6が水素原
    子またはC1〜C3のアルキル基、R2〜R5、R7
    8、R11及びR12が水素原子、R9がC2、C4または
    C6のアルキレン基、R10がC1〜C3のアルキル基で
    あり、Aが窒素原子に対しパラ位に結合した−CN、−
    NO2、−CHO、−C(O)CF3、−CH=C(C
    N)2及び−CH=CHNO2からなる群より選択される
    電子吸引性置換基であり、aの結合位置がパラ位である
    下記式(IA)で示される請求項2に記載の化合物。 【化4】
  4. 【請求項4】 式(II)で示される請求項1に記載の化
    合物。
  5. 【請求項5】 式(II)において、R1が水素原子また
    は1〜C3のアルキル基、R2〜R5、R7、R8、R11
    びR12が水素原子、R9がC2、C4またはC6のアル
    キレン基、R10がC1〜C3のアルキル基であり、Aが
    窒素原子に対しパラ位に結合した−CN、−NO2、−
    CHO、−C(O)CF3、−CH=C(CN)2及び−
    CH=CHNO2からなる群より選択される電子吸引性
    置換基であり、a及びbの結合位置がパラ位である下記
    式(IIA)で示される請求項4に記載の化合物。 【化5】
  6. 【請求項6】 式(III)で示される請求項1に記載の化
    合物。
  7. 【請求項7】 式(III)において、R1が水素原子または
    C1〜C3のアルキル基、R2〜R5、R7、R8、R11
    びR12が水素原子、R9がC2、C4またはC6のアル
    キレン基、R10がC1〜C3のアルキル基であり、Aが
    窒素原子に対しパラ位に結合した−CN、−NO2、−
    CHO、−C(O)CF3、−CH=C(CN)2及び−
    CH=CHNO2からなる群より選択される電子吸引性
    置換基であり、a及びcの結合位置がパラ位である下記
    式(IIIA)で示される請求項6に記載の化合物。 【化6】
  8. 【請求項8】 式(IB) 【化7】 (式中、R1〜R12は請求項1と同じ意味を表わし、A1
    は電子吸引性置換基を表わす。)、式(IIB) 【化8】 (式中、R1〜R5、R7〜R12及びA1は前記と同じ意味
    を表わす。)または、式(IIIB) 【化9】 (式中、R1〜R5、R7〜R12及びA1は前記と同じ意味
    を表わす。)で示される化合物を少なくとも1種含むこ
    とを特徴とするフォトリフラクティブ材料組成物。
  9. 【請求項9】 前記A1が、超分子分極率(β)5.0×
    10-30esu以上の電子吸引性置換基である請求項8
    に記載のフォトリフラクティブ材料組成物。
  10. 【請求項10】 前記式(IB)、式(IIB)または式
    (IIIB)中のA1が−CN、−NO2、−CHO、−C
    (O)CF3、−CH=C(CN)2及び−CH=CHN
    2からなる群より選択される電子吸引性置換基である
    化合物を少なくとも1種含む請求項8または9に記載の
    フォトリフラクティブ材料組成物。
  11. 【請求項11】 前記式(IB)、式(IIB)または式
    (IIIB)で示される化合物を少なくとも1種含み、そ
    の重量割合が全体の50重量%以上を占める請求項10
    に記載のフォトリフラクティブ材料組成物。
  12. 【請求項12】 前記式(IB)、式(IIB)または式
    (IIIB)で示される化合物を少なくとも1種含み、そ
    の重量割合が全体の90%以上を占める請求項10に記
    載のフォトリフラクティブ材料組成物。
JP11126302A 1999-05-06 1999-05-06 フォトリフラクティブ材料組成物およびその組成物に用いる化合物 Pending JP2000319234A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11126302A JP2000319234A (ja) 1999-05-06 1999-05-06 フォトリフラクティブ材料組成物およびその組成物に用いる化合物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP11126302A JP2000319234A (ja) 1999-05-06 1999-05-06 フォトリフラクティブ材料組成物およびその組成物に用いる化合物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2000319234A true JP2000319234A (ja) 2000-11-21

Family

ID=14931847

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP11126302A Pending JP2000319234A (ja) 1999-05-06 1999-05-06 フォトリフラクティブ材料組成物およびその組成物に用いる化合物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2000319234A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100471399B1 (ko) * 2001-03-22 2005-03-07 한국과학기술원 상안정성이 우수한 광굴절 고분자 조성물 및 그 제조 방법
US7297449B2 (en) 2001-04-18 2007-11-20 Kabushiki Kaisha Toshiba Optical recording medium and optical recording apparatus
US8618241B2 (en) 2007-11-15 2013-12-31 Gigoptix, Inc. Stabilized electro-optic materials and electro-optic devices made therefrom
US8934741B2 (en) 2007-11-16 2015-01-13 Brphotonics Produtos Optoelectronicos LTDA Integrated circuit with optical data communication

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100471399B1 (ko) * 2001-03-22 2005-03-07 한국과학기술원 상안정성이 우수한 광굴절 고분자 조성물 및 그 제조 방법
US7297449B2 (en) 2001-04-18 2007-11-20 Kabushiki Kaisha Toshiba Optical recording medium and optical recording apparatus
US8618241B2 (en) 2007-11-15 2013-12-31 Gigoptix, Inc. Stabilized electro-optic materials and electro-optic devices made therefrom
US8934741B2 (en) 2007-11-16 2015-01-13 Brphotonics Produtos Optoelectronicos LTDA Integrated circuit with optical data communication

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6090332A (en) Process of changing the refractive index of a composite containing a polymer and a compound having large dipole moment and polarizability and applications thereof
Würthner et al. ATOP dyes. Optimization of a multifunctional merocyanine chromophore for high refractive index modulation in photorefractive materials
Shettigar et al. Crystal growth and characterization of new nonlinear optical chalcone derivative: 1-(4-Methoxyphenyl)-3-(3, 4-dimethoxyphenyl)-2-propen-1-one
JP5774104B2 (ja) 可視光スペクトルの範囲にある複数のレーザー波長に応答する光屈折性組成物
JP4456603B2 (ja) フォトリフラクティブ組成物
JPH10333195A (ja) フォトリフラクティブ材料組成物
JP2000319234A (ja) フォトリフラクティブ材料組成物およびその組成物に用いる化合物
Kalinin et al. Quadratic nonlinear optical response of composite polymer materials based on push–pull quinoxaline chromophores with various groups in the aniline donor moiety
Thelakkat et al. Fast and stable photorefractive systems with compatible photoconductors and bifunctional NLO-dyes
Traskovskis et al. Stereoselective synthesis and properties of 1, 3-bis (dicyanomethylidene) indane-5-carboxylic acid acceptor fragment containing nonlinear optical chromophores
Simokaitiene et al. Synthesis and properties of glass-forming phenothiazine and carbazole adducts
JP2001255566A (ja) フォトリフラクティブ材料組成物及びこれを用いたフォトリフラクティブ素子及びホログラム
Moon et al. Synthesis and optical properties of benzocarbazole-substituted polysiloxanes for polymeric photorefractive materials
Belfield et al. Synthesis of polyurethanes and polyimides for photorefractive applications
JP2000256320A (ja) フォトリフラクティブ材料組成物、その組成物に用いる化合物及びポリマー
Getautis et al. Hole-drift mobility in phenylenediamine derivatives possessing methyl substituents
JP4756268B2 (ja) コレステリック液晶化合物
Shi et al. Synthesis and characterization of a series of carbazole-based monolithic photorefractive molecules
Jeong et al. Synthesis and characterization of low molecular weight photorefractive materials with thioxanthene unit
JP4105446B2 (ja) 重合性化合物およびそのマトリックスを用いた光学素子
Zhang et al. Photorefractive effect in triphenylamine-based monolithic molecular glasses with low Tg
JP4334726B2 (ja) トリインドール誘導体からなるポリマー及び光学素子
JP4534536B2 (ja) 機能性有機化合物
JP2004210693A (ja) 有機光導電性化合物及びこれを用いたフォトリフラクティブ材料
Bubniene et al. Synthesis of new hole-transporting molecular glasses with pendant carbazolyl-based hydrazone moieties