JP4756268B2 - コレステリック液晶化合物 - Google Patents

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本発明は室温で安定なガラス性コレステリック相を示し、かつ、良好なホール伝導性を示すコレステリック液晶化合物およびこれを含有する薄膜ならびにこの薄膜を利用した発光素子に関する。
近年、実用レベルに達した有機LEDを始めとして、薄膜トランジスター、太陽電池など有機半導体の光電子デバイスへの展開が盛んに検討されている。有機半導体のメリットとしては、一般に安価であり薄膜形成が容易であることが挙げられ、その柔軟性を利用して高分子基板上にデバイスを構築するプラスティックエレクトロニクスへの試みが為されている。
液晶は液体的な流動性を持つため、液晶セルを利用する事により大面積の薄膜を容易に得る事ができる事に加え、その分子配向性や層状構造が機能発現の場になるため、従来にない高次の光電子機能を持った材料になることが期待される。
液晶材料の中でも、コレステリック液晶は光の波長程度の周期の螺旋構造を持ち、一方の円偏光を選択的に透過もしくは反射するため、可視光の選択反射による干渉色を利用した温度計や表示材料が検討されている。
近年は、コレステリック液晶に色素を添加し、光励起による円偏光発光素子やレーザーへの応用が検討されている。このようなコレステリック液晶においては蛍光を発するクロモフォアが螺旋状に配列するため、選択反射バンドと蛍光波長が重なる領域では、蛍光はコレステリック液晶の螺旋のねじれを反映した円偏光になる。
また、コレステリック相での周期構造は1次元のフォトニッククリスタルとみなすことができる。そのため、試料外部から入射した光に関しては、螺旋構造に一致する円偏光を選択的に反射する一方で、試料の内部での発光に対しては、螺旋周期に一致する波長の光を閉じ込めることができるため、レーザーの共振器として作用する(非特許文献1)。
従来公知のコレステリック液晶は、電気的に不活性なコレステロール誘導体やキラリティーを持つ比較的低分子量の芳香族化合物であった。前者は電気伝導に必要不可欠なπ電子共役系が含まれておらず、基本的に絶縁体であり、電子デバイスへ応用することはできない。後者においては、π電子共役系の広がりが小さいため、分子間の電荷移動が円滑に進行せず、不純物によるイオン伝導が優先して進行するという問題があった(非特許文献2)。
本発明者等は、先に、大きなπ共役系を導入したコレステリック液晶において、分子間の分子軌道の重なりが大きくなることにより分子間の電荷移動が円滑に進行し、コレステリック相においても電子伝導が実現できる、新規なコレステリック液晶化合物を提案した(非特許文献3)。
この論文は、従来はイオン伝導しか進行し得ないとされていたコレステリック液晶の有機半導体としての可能性を明らかにしたもので、コレステリック相の選択反射などのユニークな光学的な性質を電気伝導と組み合わせることにより、電気励起による有機半導体レーザーや円偏光発光可能な電界発光素子などの、従来にない新しいタイプの光電子デバイスの応用が可能となるものであった。
しかしながら、その後の本発明者らの検討によれば、この液晶化合物は、室温付近で結晶化し、コレステリック液晶特有の光学的な性質を、室温を含む広い温度領域で保持できる特性に欠けることが判明した。
すなわち、円偏光発光可能な電界発光素子や電気励起による有機半導体レーザーなどの実用的な光電子デバイスを実現するには、室温よりも高い温度領域でコレステリック相からコレステリックガラス相にガラス転移し、ガラス転移点以下で準安定なコレステリックガラス相を示し、室温付近でもコレステリック相を示すことが必要とされるが、残念ながら、非特許文献3に記載の液晶化合物はこれらの特性を満足するものではなかった。
また、液晶化合物をレーザー発振や円偏光発光のデバイス材料とするためには、選択反射バンドと蛍光スペクトルが重なる必要があるが、非特許文献3に記載の液晶化合物は螺旋周期が7 mmと、光の波長に比べて非常に長いため、可視光の波長域に選択反射を示さず、また、選択波長バンドと蛍光スペクトルが重なっていないので、この材料をレーザーや円偏光発光素子に応用するには、螺旋周期を短くすることにより、選択波長バンドを可視光の波長域にシフトさせる必要があった。
一方、電気伝導可能な液晶材料としてはこれまで層状構造を持つスメクティック液晶が検討されてきたが(非特許文献4)、この材料においては液晶相の構造はrigidであり、螺旋構造を導入するのは困難とされている。
S. Furumi and Y. Sakka, Adv. Mater., 18, 775 (2006). K. Yoshino, N. Tanaka, and Y. Inuishi, Jpn. J. Appl. Phys., 15, 735 (1976). M. Funahashi and N. Tamaoki, ChemPhysChem.,in early view on the web site(http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/fulltext/112606976/PDFSTART.)(2006). 舟橋正浩、機能材料 2005年12月号 p.7
本発明は、高いガラス転移温度を有し、室温付近で安定なコレステリック薄膜が形成可能であり、かつ、可視光波長域に選択反射バンドを有し、有機半導体としての電気伝導性を示す新規なコレステリック液晶化合物およびこのものを含有する薄膜更にはこの薄膜を利用した蛍光体や発光素子を提供することを目的とする。
本発明者は、円偏光発光可能な電界発光素子や電気励起による有機半導体レーザーとして有用なコレステリック液晶化合物を鋭意検討した結果、キラル化合物である(S)-ビナフトール、あるいは、(R)-ビナフトールに大きなπ電子共役系をもつフェニルオリゴチオフェン部位を二個結合させたキラル二量体が高いガラス転移温度を有するため、室温付近で安定なコレステリック薄膜を形成でき、可視光の波長域に選択反射を示すこと、選択反射バンドと蛍光スペクトルが重なる領域で良好な品位の円偏光を発すること、および、良好なホール輸送性を示すことを知見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉 下記一般式(1)で示されるコレステリック液晶化合物。
(式中、Rは炭素数1〜6の直鎖アルキル基を示す。式中、nは1〜8の整数である。)
〈2〉 下記一般式(2)で示される、S体のコレステリック液晶化合物。
(式中、Rは炭素数1〜6の直鎖アルキル基を示す。式中、nは1〜8の整数である。)
〈3〉 下記一般式(3)で示される、R体のコレステリック液晶化合物。
(式中、Rは炭素数1〜6の直鎖アルキル基を示す。式中、nは1〜8の整数である。)
〈4〉上記〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載のコレステリック液晶化合物を含む溶液から得られる薄膜。
〈5〉上記〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載のコレステリック液晶化合物を含有するコレステリック半導体薄膜。
〈6〉上記〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載のコレステリック液晶化合物を含有するコレステリック蛍光体薄膜。
〈7〉上記〈4〉〜〈6〉のいずれかに記載の薄膜を備えた電界発光素子。
本発明に係る前記一般式(1)〜(3)で示されるコレステリック液晶化合物は、光の波長程度の螺旋構造を持ちながら、電子伝導に基づく良好なホール移動度を示すことに加え、黄色の強い蛍光を示すことから、円偏光発光可能な蛍光体や、円偏光電界発光素子、有機半導体レーザーへの応用が期待されるものである。
また、本発明に係る前記一般式(1)〜(3)で示されるコレステリック液晶化合物は高いガラス転移温度を有するため室温付近で安定なコレステリック薄膜を形成することができる。そのため、電荷移動特性が均一で大面積の有機半導体素子および有機半導体装置、さらには有機エレクトロルミネッセンス素子および有機エレクトロルミネッセンス装置を形成することができる。
本発明に係るコレステリック液晶化合物は、下記一般式(I)で表される。
(式中、Rは炭素数1〜6の直鎖アルキル基を示す。式中、nは1〜8の整数である。)
この一般式(1)で示される液晶化合物には、光学異性体である、下記一般式(2)で示されるS体と下記一般式(3)で示されるR体が含まれる。
(式中、Rは炭素数1〜6の直鎖アルキル基を示す。式中、nは1〜8の整数である。)
上記一般式(1)〜(3)において、Rは炭素数1〜6の直鎖アルキル基を示す。具体的には、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられるが、プロピル基が好ましい。
nは1〜8の整数であり、好ましくは3以下である。
本発明に係る一般式(1)〜(3)で示されるコレステリック液晶化合物は、 例えば、下記の反応式にしたがって合成することができる。
すなわち、ターチオフェン誘導体1を臭素化して得られるブロモターチオフェン誘導体2に、2-ブロモ-3−メチルチオフェンより調製したグリニャール試薬を作用させることにより側方置換基としてメチル基が導入されたクゥオーターチオフェン誘導体3が得られる。この化合物3をTHF中、n-ブチルリチウムで処理しトリメチルホウ酸誘導と反応させる。ついで、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオールを作用させて得られたオリゴフェニルホウ酸エステル4と、ビス(p-ヨードフェニルオキシアルキルオキシ)−(S)−ビナフトール誘導体7とを、好ましくはPd(PPh3)4触媒、および、Na2CO3存在下、THF中で還流することにより得られる反応混合物をTHFで抽出し、溶媒を留去して得られた粗生成物をシリカゲル(展開溶媒は加熱したヘキサン)のカラムクロマトグラフィーで精製し、シクロヘキサンより再結晶することにより目的とする(S)-ビナフチル誘導体5が得られる。
原料であるオリゴチオフェン誘導体1は公知物質であり、たとえば、M.Funahashi et al., Adv. Mater., 17, 594 (2005).に記載された方法で合成でき、また、ビス(p-ヨードフェニルオキシエチルオキシ)−(S)−ビナフトール誘導体7も、たとえば、日本化学会編第4版実験科学講座有機合成II p.188の方法によって合成することができる。原料のビナフトールは(S)体も(R)体も市販されているため、同様の方法により(S)-5も(R)−5も得ることができる。
本反応は、合成出発原料のひとつであるビナフトールがラセミ体のみならず、(S)体、および、(R)体がともに市販で入手可能であるため、容易に、二種類の光学活性体((R)体、(S)体)を容易に合成することができる。
本発明に係る前記液晶化合物は、160℃以下でコレステリック相を示し、70℃度付近でガラス転移し、室温付近では、安定なガラス性コレステリック相を示す。更にコレステリック相において、電子伝導に基づく高いキャリア移動度、および、良好な蛍光性を示す。
すなわち、本発明で提供される液晶化合物は、光学活性なビナフチル部位を有するため、液晶相においてコレステリック相特有の螺旋構造に基づくグランジャン組織やフィンガープリント組織を示すと共に、非対称な分子構造により結晶化が阻害される一方で、分子量が大きくなるため、分子運動が抑制されるため、比較的高い温度でガラス転移し、室温付近では安定なガラス性コレステリック相を示す。この性質のため、本液晶材料を液晶セル中に注入して試料を作成する、あるいは、溶液中からキャスト法で薄膜を作製しても、室温付近で安定なガラス性コレステリック薄膜を作製できる。この性質は、実用的な光・電子デバイスを室温付近で駆動する上で必要不可欠である。
また、π電子共役系が大で分子間のπ軌道の重なりの大きいオリゴチオフェン骨格を持ことにより電子伝導性が促進され、有機半導体としての電気伝導性を示す。具体的には、Time-of-Flight法により液晶相でのキャリア移動度を測定すると、正キャリアに関して、通常の有機アモルファス半導体と同程度の2X10-5 cm2/Vsの値を示す。また、大きく広がったπ電子共役系を持つことから、コレステリック相において良好な蛍光性を示す。ちなみに、ビナフチル部位を持たない光学活性なオリゴチオフェン誘導体8(非特許文献3)は室温では結晶化し、安定なコレステリック薄膜を作製できない。また、螺旋周期が長いため、コレステリック相において可視光の波長域に選択反射を示さない。そのため、蛍光スペクトルと反射スペクトルは全く重ならないため、紫外光で励起しても円偏光蛍光を得ることはできない。
したがって、本発明に係る液晶化合物は、たとえば、これを液晶セルに封入し、旋光能を有する薄膜とすることで、円偏光発光素子やレーザーなどに応用することができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
参考例1(反応中間体の合成)
[クウォーターチオフェニルホウ酸エステル4(R = C3H7)の合成]
2−プロピル−3’’’−メチルクウォーターチオフェン3 3.0 g (7.0 mmol)をTHF 100mlに溶かし、-78度において、n-ブチルリチウム 1.6 Mヘキサン溶液(5 ml, 8.0 mmol)を滴下する。0度に昇温して30分攪拌後、再度-78度に冷却し、トリメチルホウ酸のTHF溶液(1.04 g, 10 mmol/THF 10 ml)を5分かけて滴下する。徐々に室温まで昇温して30分攪拌の後、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(1.04 g, 10 mmol)を加え、1時間攪拌する。その後、水を加えて、分液した後、THF層を硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を留去してシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し(展開溶媒シクロヘキサン/THF(3:1))、さらに、シクロヘキサン-THF混合溶媒から再結晶する。収量2.2 g(4.5 mmol, 64 %)。
実施例1
[ビナフチル誘導体5(R = C3H7, n = 3)の合成]
クウォーターチオフェニルホウ酸エステル4 (0.52 g, 1.0 mmol)、(S)-ビナフトール誘導体7(n= 3) (0.41 g, 0.49 mmol)、 Pd(PPh3)4 58 mg (0.05 mmol)をジメトキシエタン(DME) 50 mlに溶解し、10 wt% 炭酸ナトリウム水溶液 50 mlを加え1時間還流する。やがて生成物が沈殿してくる。冷却後、有機層を留去しろ過して沈殿を濾別する。得られた沈殿をTHFに溶かし、ろ過して不溶物を除いた後、濾液を濃縮する。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する(展開溶媒は加熱したシクロヘキサン/THF(5:1)混合溶媒)。シクロヘキサン/THF(5:1)混合溶媒より再結晶することにより、橙色結晶0.21g(収率 15%)を得る(一般式(2)において、R:プロピル,n:3)
実施例2[ビナフチル誘導体5(R = C3H7, n = 1)の合成]
クウォーターチオフェニルホウ酸エステル4 (0.52 g, 1.0 mmol)、(S)-ビナフトール誘導体7(n = 1) (0.39 g, 0.5 mmol)、 Pd(PPh3)4 44 mg (0.04 mmol)をジメトキシエタン(DME) 50 mlに溶解し、10 w% 炭酸ナトリウム水溶液 50 mlを加え1時間還流する。やがて生成物が沈殿してくる。冷却後、有機層を留去しろ過して沈殿を濾別する。得られた沈殿をTHFに溶かし、ろ過して不溶物を除いた後、濾液を濃縮する。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製する(展開溶媒はシクロヘキサン/THF混合溶媒)。シクロヘキサン/THF混合溶媒より再結晶することにより、橙色結晶.0.32g(収率 24%)を得る(一般式(2)において、R:プロピル,n:1)
実施例3 [液晶相の同定、ガラス化温度の測定]
実施例1で得た液晶化合物5(R=C3H7, n= 3)の液晶相の同定を以下のようにして行った。
実施例1で得た液晶化合物を200℃に融解し、厚さ10μmの二枚のITO電極ガラス基板からなる液晶セルに毛管現象を利用して浸透させた。この液晶セルを120℃において偏光顕微鏡により光学組織を観察した。電場を印加しない場合にはプレーナー配向したコレステリック相に特有のGranjan組織が観測された。電場を100V以上印加しても分子の配向状態は変化しなかった。130℃から90度においては、コレステリック相特有の選択反射が見られた。反射色は130℃で赤色、120℃で橙色、110℃で黄色、100℃で緑色、90℃で青色であった。徐冷した試料においては室温では可視域に反射色を認めることはできなかったが、加熱した試料を液体窒素に浸して急冷した場合には、室温においてもプレーナー配向が保持され、各温度での反射色を室温で固定することができた。
また、実施例1で得た液晶化合物の相転移温度を示差型走査熱分析(DSC)によって測定した(図1(a))。157 ℃の等方性液体相からコレステリック相への転移を示すピークに加えて、53 ℃付近にガラス転移を示すキンク点が見られる。
実施例2で得た液晶化合物5(R=C3H7, n= 1)においても、同様に偏光顕微鏡観察下、液晶相でコレステリック相特有のGranjan組織がみられた。また、反射バンドと吸収バンドが重なるため、液晶相では可視域に選択反射バンドは見られなかったが、後述するように、低分子液晶を混合した系では、高温側で青、低温側で赤色の反射色が認められた。DSC測定においては、163℃の等方性液体相からコレステリック相への転移を示すピークに加えて、72℃付近にガラス転移を示すキンク点が見られる(図1(b))。
以上の結果から、実施例1〜2で得られた液晶化合物は室温付近で安定なコレステリックガラス状態を示すものと判断された。
実施例4 [電荷輸送特性]
実施例1、2で得た液晶化合物5の電荷輸送特性(キャリア移動特性)をTime-of- Flight法により測定した。本法においては、光伝導性を示すサンドイッチ型の試料に直流電圧を印加し、パルスレーザーを照射することにより、試料の片側に光キャリアを発生させ、そのキャリアが試料中を走行する際に外部回路に誘起される変位電流(過渡光電流)の時間変化を測定する。光キャリアの走行により一定の電流が生じ、キャリアが対向電極に到達すると電流は0に減衰する。過渡光電流の減衰が始まる時間がキャリアは試料を走行するのに要した時間(トランジットタイム)に対応する。試料の厚さをd (cm)、印加電圧をV (volt)、トランジットタイムをtT とすると、移動度m (cm2/Vs)は、
で表される。照射側電極を正にバイアスした場合には正キャリアの、負にバイアスした場合には負キャリアの移動度が求められる。
実施例1で得た液晶化合物5(R=C3H7, n= 3)を200℃に融解し、厚さ10μmの二枚のITO電極ガラス基板からなる液晶セルに毛管現象を利用して浸透させた。実施例3において作製した液晶セルをホットステージ上で加熱し、試料に電圧を印加しながら、パルスレーザー(Nd:YAGレーザー、THG:波長356nm、パルス幅1ns)を照射し、その際に誘起される変位電流をデジタルオシロスコープによって測定した。図2(a)に照射側電極を正にバイアスした場合のコレステリック相での典型的な過渡光電流測定の測定結果を示す。本試料は良好な光伝導性を示すため、十分な強さの電流信号を得ることができた。電圧を変化させるとそれに対応して、減衰の始まる時間(トランジットタイムタイム)が変化しており、得られた過渡光電流がキャリアの走行に対応していることがわかる。正キャリアの移動度は室温において、1X10-5cm2/Vsであり、一般に電界発光素子に用いられるホール輸送材料と同程度の値を示した。
また、実施例2において得られた液晶化合物5(R=C3H7, n= 1)についても、同様に液晶セルを作製し、キャリア移動度を測定した。結果を図2(b)に示す。室温付近の正キャリアの移動度は5X10-5 cm2/Vsであり、同じオーダーの値が得られた。
実施例5 [コレステリック液晶化合物の反射スペクトル]
実施例1において得られた液晶化合物5(R=C3H7, n=3)を、ポリイミドを塗布したガラス基板上で200℃に加熱し融解させた後、ポリイミドを塗布した硝子基板をその上に乗せ、冷却して試料を作製した。150℃から90℃においては、コレステリック相特有の選択反射が見られた。反射色は150℃から90℃の温度領域で赤から青に変化した。加熱した試料を液体窒素に浸して急冷した場合には、室温においてもプレーナー配向が保持され、各温度での反射色を室温で固定することができた。また、選択反射バンドは温度のみならず、長い螺旋ピッチを有するオリゴチオフェン誘導体8[非特許文献3]を混合することによっても、変調することが可能であった。
液晶化合物5(R=C3H7, n=3)に下記液晶化合物8を1:1で混合した試料においては、反射色は130℃で赤色、120℃で橙色、110℃で黄色、100℃で緑色、90℃で青色であった。この液晶試料に白色光を照射し、その反射スペクトルを測定した。結果を図3に示す。
また、実施例2において得られた液晶化合物5(R=C3H7, n= 1)を用いて同様に、液晶試料を作製し、反射スペクトルを測定した。この化合物の場合は、選択反射バンドと紫外-可視光吸収バンドが重なるため、液晶相においては可視域に反射色は認められない。しかし、この材料に、長い螺旋ピッチを有するオリゴチオフェン誘導体8[非特許文献3]を混合することにより、反射波長帯を可視域にシフトさせることが可能である。混合比を10:0.5から10:2に変化させることにより反射波長帯を500nmから800nmにまで変調することができた。
実施例6 [コレステリック相での蛍光、および、円偏光発光]
実施例1において得られた液晶化合物5(R=C3H7, n=3)を用いて、実施例5に示した方法で液晶試料を作成し、蛍光スペクトルを測定した。液晶試料をホットステージ上で102.5℃に加熱し、水銀ランプの360nmの輝線を、光学フィールターを通して照射し、その蛍光スペクトルを測定した。その際に、試料とプローブの間に1/4波長板と偏光子を配置してスペクトルを測定した。その結果を図4に示す。1/4波長板の角度により観察されるスペクトル強度が異なっていることから、試料の蛍光が円偏光であることがわかる。基板表面にポリイミドを塗布して配向状態の良い試料を作成した場合に、円偏光の二色パラメーターは1.3を超えており、高品位の円偏光を得ることができた。
実施例7 [コレステリック液晶化合物の薄膜作成法]
実施例1で得た液晶化合物5(R=C3H7, n=3)10mgをクロロベンゼン1mlに溶解し、ガラス基板上にキャストスして一晩放置することにより厚さ2mmのコレステリックガラス状態の薄膜を作成した。得られたフィルムの写真を図5(a)に、偏光顕微鏡写真を図5(b)に示す。
(a)は実施例1で得られた化合物のDSC曲線である。(b)は実施例2で得られた化合物のDSC曲線である。 (a)は実施例1で得たコレステリック液晶の電荷移動度を、対向電極基板対の試料構成にしてTOF法によって測定したグラフである(27℃)。(b)は実施例2で得たコレステリック液晶の電荷移動度を、対向電極基板対の試料構成にしてTOF法によって測定したグラフである(70℃)。 実施例4で得たコレステリック液晶試料(5(R=C3H7,n= 3):8 1:1混合物)の反射スペクトルの温度変化である。 実施例5で得たコレステリック液晶試料(5(R=C3H7,n= 3):8 1:1混合物)の102.5℃における円偏光蛍光スペクトル、および、円偏光二色性パラメーターである。 (a)は実施例7で得られたコレステリック液晶薄膜の室温での写真である。(b)は実施例7で得られたコレステリック液晶薄膜の室温での偏光顕微鏡写真である。

Claims (7)

  1. 下記一般式(1)で示されるコレステリック液晶化合物。
    (式中、Rは炭素数1〜6の直鎖アルキル基を示す。式中、nは1〜8の整数である。)
  2. 下記一般式(2)で示される、S体のコレステッリク液晶化合物。
    (式中、Rは炭素数1〜6の直鎖アルキル基を示す。式中、nは1〜8の整数である。)
  3. 下記一般式(3)で示される、R体のコレステリック液晶化合物。
    (式中、Rは炭素数1〜6の直鎖アルキル基を示す。式中、nは1〜8の整数である。)
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のコレステリック液晶化合物を含む溶液から得られる薄膜。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載のコレステリック液晶化合物を含有するコレステリック半導体薄膜。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載のコレステリック液晶化合物を含有するコレステリック蛍光体薄膜。
  7. 請求項4〜6のいずれかに記載の薄膜を備えた電界発光素子。
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