JP2000316559A - 酒類の製造方法 - Google Patents

酒類の製造方法

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文彦 大村
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Toshihiko Ashikari
俊彦 芦刈
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  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Alcoholic Beverages (AREA)
  • Distillation Of Fermentation Liquor, Processing Of Alcohols, Vinegar And Beer (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【目的】 分枝アミノ酸取り込み能が強化された醸造酵
母を用いた、高級アルコール等の香気成分の組成に特徴
のある酒類製造法、および該製造法に用いる醸造酵母の
提供。 【構成】 構成的に発現をする遺伝子のプロモーターお
よびターミネーターの制御下に、分枝アミノ酸トランス
ポーター(BAP2)の構造遺伝子を設置した発現カセット
を作成し、該発現カセットで形質転換した醸造酵母を用
いた、高級アルコール等の香気成分の組成に特徴のある
酒類の製造方法、および該製造法に用いる醸造用酵母。 【効果】 該酒類製造方法を用いることにより、高級ア
ルコール等の酒類成分組成に特徴のある酒類を製造でき
るので、酒質の多様化が可能になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、酒類の製造法に関す
る。さらに具体的には、分枝アミノ酸トランスポーター
遺伝子の発現レベルを高めることにより、分枝アミノ酸
の取り込みが強化された酵母を育種し、当該酵母を用い
て高級アルコール等の香気成分の組成が変化した酒類の
製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】イソアミルアルコール(3-メチルブタノ
ール)、活性アミルアルコール(2-メチルブタノー
ル)、イソブタノールなどの高級アルコールおよびその
酢酸エステルは酒類の重要な香味成分であり、その組成
比によって酒類の香味に大きな変化が生じるので、酒類
製造においては最も注目すべき物質である。そのため、
高級アルコールを増加させること、あるいはその組成比
を変えることによって、香味のバランスの異なる酒類を
製造することが研究されてきた。
【0003】酵母(Saccharomyces cereviseae)におい
て、高級アルコールは生合成経路とエーリッヒ経路の2
つから生成する。生合成経路では分枝アミノ酸生合成経
路の中間体であるケト酸が脱炭酸・還元されて高級アル
コールが生成し、エーリッヒ経路では培地中から取り込
まれた分枝アミノ酸が脱アミノ化されてケト酸となり、
やはり脱炭酸・還元されて高級アルコールに変換される
(図1)。従って、高級アルコール生成量を制御するに
は、生合成経路を制御する方法と、エーリッヒ経路を制
御する方法の2種類が考えられる。
【0004】生合成経路を制御するための従来の技術と
してよく知られているのは、分枝アミノ酸アナログ耐性
株の中から、後述のフィードバック阻害が解除された変
異株を取得する方法である。より具体的に述べると、分
枝アミノ酸生合成経路の幾つかの酵素は、生合成経路の
最終産物である分枝アミノ酸、あるいは培地中から取り
込まれた分枝アミノ酸によってフィードバック阻害を受
けることが知られているが、分枝アミノ酸アナログ耐性
変異株の中には、しばしばこのフィードバック阻害の解
除されたものが存在するのである。
【0005】例えば、Asida らは、清酒酵母よりロイシ
ンのアナログである5,5,5-トリフルオロロイシンの耐性
変異株の中から、ロイシン生合成系酵素であるα―イソ
プロピルリンゴ酸シンターゼのロイシンによるフィード
バック阻害の解除された変異株を取得し、その株がイソ
アミルアルコールとその酢酸エステルを高生産すること
を報告している (Agric. Biol. Chem., 51, 2061-2065,
1987)。Watanabeらは、ロイシンないしはバリンのアナ
ログであるアザロイシンの耐性変異株の中から2 種類の
変異株を分離した。一方の変異株は、ロイシン生合成系
酵素であるα―イソプロピルリンゴ酸シンターゼのロイ
シンによるフィードバック阻害の解除された株で、イソ
アミルアルコールとその酢酸エステルを高生産した。他
方はバリン生合成系酵素であるαーアセトヒドロキシ酸
シンターゼのバリンによるフィードバック阻害の解除さ
れた株で、イソブタノールとその酢酸エステルを高生産
することを報告している (Appl. Microbiol. Biotech.,
34,154-159,1990)。また、Fukudaらは2ーチアゾリル
アラニン耐性変異株の中からイソアミルアルコールとイ
ソブタノールを両方同時に高生産する株を取得している
(Agric. Biol. Chem., 54,2445-2446,1990)。
【0006】一方でFukushige らは、分枝アミノ酸生合
成系の酵素をコードしている幾つかの遺伝子(ILV1, ILV
2, LEU2)の破壊株をウィスキー酵母から作成し、それぞ
れの遺伝子破壊が高級アルコール生成量に影響を及ぼす
ことを明らかにしているが、これらの株は親株に対して
著しい発酵速度の低下が観察され、実用的ではない(醸
造協会誌 93, 37-41,1998)。
【0007】しかしながら、上記の分枝アミノ酸アナロ
グ耐性株からフィードバック阻害が解除された変異株を
得る方法、あるいは分枝アミノ酸生合成経路の遺伝子破
壊株を得る方法の問題点は、醸造用酵母の染色体倍数性
が高いことにある。すなわち、例えば醸造用酵母が2倍
体であった場合、フィードバック阻害が解除された変異
と同一の変異を対立遺伝子にも起こす必要があるのが、
そのような変異の確率は非常に低く、目的とする変異株
を取得することは非常に困難である。醸造用酵母は2倍
体以上であることが多く、そのような高次倍数性の酵母
からすべての対立遺伝子においてフィードバック阻害が
解除された変異を起こした株、あるいは全ての対立遺伝
子の破壊株を取得することは、実質的には不可能であ
る。
【0008】また、エーリッヒ経路を制御して高級アル
コール生成量を制御する方法としては、古くから培地中
の窒素源の影響が研究されている(発酵工学,59,9-16,1
981、醸造協会誌,81, 626 1986)。しかしながら培地組
成の変更は、発酵速度の低下や高級アルコール以外の香
味成分の変動など、好ましくない醸造特性の変化をもた
らしたり、分枝アミノ酸の添加などコスト面において現
実的でない場合が多い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、発酵能など
の醸造特性を劣化させることなく、酒類中の高級アルコ
ールおよびその酢酸エステルの含量および組成比を変化
させて、特徴ある香気成分の組成比を有する酒類の、安
価で簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するため、従来の方法と全く異なるアプローチ
として、分枝アミノ酸の酵母細胞内への取り込み能を制
御することによって、細胞内分枝アミノ酸レベルを制御
し、該細胞内アミノ酸から生じる高級アルコール、およ
びその酢酸エステルの組成を変化させる方法を開発し
た。
【0011】なお本明細書においては、分枝アミノ酸と
は、ロイシン、バリン、イソロイシンのことを意味す
る。酵母(例えばSaccharomyces cereviseae)では、分
枝アミノ酸は少なくとも3種類のトランスポーターによ
って取り込まれる。すなわちすべてのアミノ酸を基質と
して取り込むことができるGeneral Amino Acid Permeas
e (GAP1p )、分枝アミノ酸に特異的な高親和性トランス
ポーター、および分枝アミノ酸に特異的ではあるが低親
和性のトランスポーターである。これらのうちGAP1p は
外界の窒素源によってmRNAへの転写レベル、タンパク質
への翻訳レベルでも非常に厳格な調節を受けている(J.
Bacteriol. 177,94-102, 1995)から、GAP1p 遺伝子の発
現調節、ひいてはGAP1p によって分枝アミノ酸取り込み
能の調節を行うことは非常に困難である。また、GAP1p
の特異性は非常に低いために、GAP1p を制御することに
よって分枝アミノ酸の取り込みだけを特異的に促進させ
ることはできない。
【0012】そこで本発明者らは、構成的に発現する遺
伝子のプロモーター・ターミネーターの制御下に置いた
高親和性分枝アミノ酸トランスポーター遺伝子からなる
発現カセットを含有する醸造酵母を作製して、当該酵母
を用いて製造した酒類中の高級アルコール含量が増加す
ること、および高級アルコールの組成が変化して香味に
特徴のある酒類を製造できることを確認して本発明を完
成した。高親和性分枝アミノ酸トランスポーター遺伝子
の制御による高級アルコール生成量制御の研究例は、こ
れまで報告されていない。
【0013】
【発明の実施の形態】分枝アミノ酸の取り込み能を強化
するために用いることができる高親和性分枝アミノ酸ト
ランスポーターをコードしている遺伝子の例は、Grausl
und ら(Biochimi. Biophys. Acta 1269 p275-280 1995)
が報告しているBAP2遺伝子である。BAP2のプロモーター
領域にはGeneral amino acid controlに関与するGCN4p
の結合部位とロイシン合成系酵素の転写因子であるLEU3
pの結合部位があり、Didionら(J. Bacteriol. P2025-20
29, 1996)によって、培地中のロイシンによってBAP2の
転写が一時的に誘導されることが観察されている。本発
明者らが、ビール酵母中でのBAP2の転写レベルを調べた
ところ、BAP2 mRNAのレベルは、発酵もろみ中の分枝ア
ミノ酸濃度が高い発酵初期にも比較的低いことが明らか
になり、転写の誘導は起こっていないと判断された。そ
こで、発酵の全期間を通して分枝アミノ酸の取り込みを
強化するために、構成的に発現をする遺伝子のプロモー
ター・ターミネーターの制御下に置いた分枝アミノ酸ト
ランスポーター(BAP2)を含有する醸造酵母を作成し
た。さらに該酵母を用いて麦汁を発酵させたところ、分
枝アミノ酸の資化が促進され、該分枝アミノ酸から生成
する高級アルコールの組成に特徴のある酒類の製造がで
きた。
【0014】本明細書で、高親和性分枝アミノ酸トラン
スポーターとは、分枝アミノ酸に対する親和性が、低親
和性トランスポーターに比較して高いものをいい、該高
親和性トランスポーターにより培地中の分枝アミノ酸濃
度が低くとも、効率よく細胞内に取り込むことができ
る。従って、酵母のBAP2遺伝子以外にも、高親和性分枝
アミノ酸トランスポーターをコードする種々の他起源由
来の遺伝子が存在することは当業者に取って明らかであ
り、本発明はそれらのいずれを用いてもよい。当該遺伝
子は、酒類製造に用いる酵母由来であってもよく、他の
酵母由来のものでもよい。
【0015】また、本発明においては、発酵初期から分
枝アミノ酸を酵母細胞内に取り込ませるために、高親和
性分枝アミノ酸トランスポーターをコードする遺伝子
は、構成的に発現させることが好ましい。そのためのプ
ロモーター・ターミネーターとしては、醸造用酵母中で
機能するとともに、もろみ中のアミノ酸濃度の影響を受
けなければ任意のプロモーター・ターミネーターの組み
合わせでよい。例えば、Saccharomyces 酵母由来のもの
であればいずれも利用可能で、グリセルアルデヒド3ホ
スフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH )遺伝子のプロモ
ーター・タミネーター(Hollandら、J. Biol. Chem.254,
9839,1976) 、3フォスフォグリセレートキナーゼ(PG
K) 遺伝子のプロモーター・タミネーター(Tuiteら、EMB
O J. vol.1,p603 1982) 等が利用可能である。
【0016】分枝アミノ酸取り込み能が強化された酵母
を作製するための宿主酵母としては、醸造に使用可能な
任意の酵母があげられる。例えばビール酵母、例えばサ
ッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevise
ae)のBH225、IFO1951、IFO1952、
IFO1953、IFO1954などが使用できる。さ
らに、ウイスキー酵母(例えばサッカロミセス・セレビ
シエーNCYC 90 など)、ワイン酵母(例えば協会酵母ぶ
どう酒用1号、3号、4号等)、清酒酵母(例えば協会
酵母清酒用7号、9号等)も同様に使用できる。
【0017】酵母に導入する際に用いるベクターとして
は、多コピー型(YEp型) 、単コピー型(YCp型) 、染色体
DNA 組み込み型(YIp型) のいずれもが利用可能である。
染色体DNA 組み込み型(YIp型) のベクターの使用は、形
質転換された酵母を管理しやすいという点で好ましい。
【0018】形質転換の際に用いられる選択マーカーと
しては、醸造用酵母の場合は栄養要求性マーカーが利用
できないので、G418耐性遺伝子[G418r] (Oka ら、J. M
ol.Biol. 147,217, 1981 )、銅耐性遺伝子(Marin. M.
ら、Proc. Nati. Acad. Sci.USA. Vol.81,p337 1984)
、セルレニン耐性遺伝子[fas2m] (猪腰淳嗣ら、生化
学、64巻、p660 1992)、多剤薬剤耐性遺伝子[PDR4](Hu
ssain. M. ら、Gene vol.101, P149 1991 )等が利用可
能である。
【0019】また、本発明で使用する、分枝アミノ酸取
り込み能が増強された醸造酵母は、生産する高級アルコ
ールの含量および組成だけが変化し、酵母の増殖や発酵
能においては親株の酵母を用いた場合と変化はない。従
って、原料、製造設備、製造管理等は従来法と全く同一
でよい。このことは、本発明の重要な特徴である。しか
しながら、所望により、分枝アミノ酸の資化をさらに促
進するため、もろみ中の分枝アミノ酸の量や他のアミノ
酸との比率を変化させたり、発酵時間を変化させる等、
発酵条件を種々変化させてよいことはいうまでもない。
【0020】本発明の方法においては、もろみ中のアミ
ノ酸濃度の影響を受けない、構成的に発現をする遺伝子
のプロモーター・ターミネーターの制御下に分枝アミノ
酸トランスポーター遺伝子が導入された醸造酵母を使用
するので、発酵初期より分枝アミノ酸の資化が促進さ
れ、高級アルコール及びその酢酸エステルからなる香気
成分及び組成が、通常の方法で生じる酒類と比べて変化
している。とりわけ、高級アルコールのうちイソアミル
アルコール及びそのエステルは特異的に増加し、このこ
とによって高級アルコール組成に特徴のある酒類を製造
することができる。高級アルコールの組成比の指標とし
て一般的に用いられているのはイソアミルアルコール/
イソブタノール比(A/B比)であるが、本発明の方法
では、A/B比を2倍程度に高めることが可能である。
【0021】本発明において、分枝アミノ酸取り込み能
が増強された醸造酵母を用いた酒類製造方法において
は、上記の如く高級アルコールの含量および組成だけが
変化し、酵母の増殖や発酵能においては親株の酵母を用
いた場合と変化はない。従って、原料、製造設備、製造
管理等は従来法と全く同一でよく、高級アルコール組成
に特徴のある酒類を製造するための、コストの増加はな
い。
【0022】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細
に説明する。実施例1.BAP2遺伝子構成的発現株の作製 BAP2遺伝子は既にクローニングされており、その塩基配
列が報告されている (Grauslund et. al. Biochimi. Bi
ophys. Acta 1269, 275-280 1995) ため、その塩基情報
を基にBAP2遺伝子の一部の配列を含むDNAを2種類化学合
成し、該DNAをプライマーとしてPCRによって増幅した。
増幅されたDNA 断片をプローブとして、研究室酵母X218
0-1A株由来のジーンバンクをコロニーハイブリダイゼー
ションによってスクリーニングした。ハイブリダイズす
るコロニーからプラスミドを抽出し、遺伝子の全長を含
む約9KbのDNA 断片を得た。
【0023】上記の約9KbのDNA 断片を、制限酵素処
理、エキソヌクレアーゼ処理によって削り、BAP2構造遺
伝子を含む約2Kbの断片を含むプラスミドpBAP2ORF#4
(図2)を作成した。YI p型のベクターpUP3GLP (図
2)は、酵母染色体相同組み換え部位URA3, ガラクトー
ス誘導性のガラクトキナーゼGAL1のプロモーター(PGAL
1)、多剤薬剤耐性遺伝子(PDR4)を含んでいる。これらの
遺伝子を含むDNA 断片は、それぞれS. cerevisiae X218
0-1A株の染色体DNA を鋳型としてPCRで増幅して調製
した。構成的発現に用いたプロモーターおよびターミネ
ーターは、グリセルアルデヒド3ホスフェートデヒドロ
ゲナーゼ(GAPDH) 遺伝子のプロモーターおよびターミネ
ーターをプラスミドpYE22m( 特開平4-228078)より切り
出した。これらの DNA断片を連結して、図2に示すpUP3
GLP を作成した。
【0024】pBAP2ORF#4より、約2.0Kb のBAP2構造遺伝
子断片をEcoRI 部分消化とSalI消化によって切り出し、
EcoRI +SalIで完全消化したpUP3GLP の断片とライゲー
ションを行い、pUP3BAP2を作成した( 図2) 。
【0025】上記のプラスミドpUP3BAP2を制限酵素NcoI
で切断して、ビール酵母BH225 株を特開平7-303475に記
載された方法で形質転換し、BAP2遺伝子を構成的に発現
する形質転換株を2株得、その一方をIB1株とした。
【0026】実施例2.ビール試験醸造における分枝ア
ミノ酸の資化および高級アルコール、エステル生成量の
解析 親株のビール酵母BH225 株、ならびに形質転換株IB1
株を用いた発酵試験を以下の条件下で行った。
【0027】
【表1】 麦汁エキス濃度 11.66 % 麦汁容量 2L 麦汁溶存酸素濃度 約 9 ppm 発酵温度 12℃一定 酵母投入量 10 g湿酵母菌体 / 2L 麦汁 発酵中の酵母増殖量、エキス消費経過を調べたところ、
図3に示すように親株BH225 株と形質転換株IB1株で
は差が認められなかった。
【0028】発酵もろみを経時的に採取し、以下の方法
で分枝アミノ酸濃度および高級アルコール濃度を測定し
た。発酵もろみ10mlを遠心によって酵母菌体を除いた
後、上清をアミノ酸分析機(CCP&8000、東ソー社製)で分
析し、発酵もろみ中のアミノ酸濃度を測定した。次に発
酵もろみ中の分枝アミノ酸の濃度を調べたところ、図4
に示すようにバリン、イソロイシン、ロイシンのいずれ
の分枝アミノ酸も、形質転換株IB1株では細胞内への
取り込み(資化)が促進されていた。
【0029】遠心で酵母菌体を除いた発酵もろみについ
て、高級アルコール類はパックドカラム(1-1812、スペ
ルコ社製)を装着したガスクロマトグラム(5890、Hewlet
t Packard社製)で、イソアミルアルコール酢酸エステル
(酢酸イソアミル)はキャピラリーカラム(125-7032、J
&W Scientific社製)を装着したガスクロマトグラム(870
0、Perkin Elmer社製)で分析した。図5-a, b, cに示す
ようにイソアミルアルコールのみが約2倍に増加し、イ
ソブタノール、活性アミルアルコールの量にはほとんど
変化がなかった。従ってA/B比(V/V) も親株では3.8
であったものが、形質転換株では、7.5 に増加してい
た。また図5-dに示すように、イソアミルアルコールの
酢酸エステルである酢酸イソアミルも形質転換株IB1
株では、親株の約2.5 倍に増加していた。
【0030】以上の結果から、本発明によって開示され
た分枝アミノ酸トランスポーターを構成的に発現させ
て、分枝アミノ酸の取り込み能が強化された酵母では、
発酵工程や発酵期間を変えることなく、酒類の香味成分
であるイソアミルアルコールと酢酸イソアミルを特異的
に増加させることができた。また、イソアミルアルコー
ル対イソブタノールの比率を変化させることにより香味
に特徴のある酒類を製造することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、分枝アミノ酸の生合成経路およびエ
ーリッヒ経路による、高級アルコール、エステルの生成
経路を示す図である。
【図2】 図2は、プラスミドpBAP2ORF#4とYI p型の
ベクターpUP3GLP から、プラスミドpUP3BAP2の作製経路
を示す図である。 記号:URA3、ウラシル要求性回復遺伝子。PGAL1 、ガラ
クトキナーゼGAL1プロモーター。PDR4、多剤薬剤耐性遺
伝子。PGAPPDH、TGAPPDH、グリセルアルデヒド3ホスフ
ェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH) 遺伝子のプロモータ
ー、ターミネーター。
【図3】 図3はビール試験醸造における発酵中の酵母
増殖量(図3-a)およびエキスの消費経過(図3-b)を
示すグラフである。
【図4】 図4はビール試験醸造における発酵もろみ中
の分枝アミノ酸濃度を示す図で、a はバリンの、b はイ
ソロイシンの、c はロイシンの資化経過を示すグラフで
ある。
【図5】 図はビール試験醸造における発酵もろみ中の
高級アルコール等の濃度を示す図で、a はイソアミルア
ルコールの、b はイソブタノールの、c は活性アミルア
ルコールの、d は酢酸イソアミルの生成経過を示すグラ
フである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/19 C12N 1/19 15/09 C12P 21/02 C C12P 21/02 C12N 15/00 A //(C12N 15/09 C12R 1:645) (72)発明者 宮島 啓爾 大阪府三島郡島本町若山台1丁目1番1号 サントリー株式会社基礎研究所内 (72)発明者 芦刈 俊彦 大阪府三島郡島本町若山台1丁目1番1号 サントリー株式会社基礎研究所内 Fターム(参考) 4B015 AG17 BA01 CG17 GG17 NG17 NP01 4B024 AA05 BA77 BA80 CA01 CA09 CA20 DA12 EA04 FA02 FA07 HA13 HA14 4B064 AG01 CA06 CA19 CC01 CC24 DA10 4B065 AA72Y AA80X AB01 AC14 AC16 AC20 BA02 BB26 BC01 BC03 BC12 BD15 BD50 CA05 CA12 CA24 CA42

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分枝アミノ酸の取り込み能が変化した酵
    母を用いることを特徴とする、高級アルコールおよびそ
    の酢酸エステルの香気成分含量および組成が変化した酒
    類の製造方法。
  2. 【請求項2】 分枝アミノ酸の取り込み能が変化した酵
    母が、分枝アミノ酸の高親和性トランスポーター遺伝子
    を構成的に発現するように形質転換された酵母である請
    求項1に記載の酒類製造方法。
  3. 【請求項3】 香気成分がイソアミルアルコールである
    請求項1または2に記載の酒類製造方法。
  4. 【請求項4】 香気成分がイソアミルアルコール酢酸エ
    ステルである請求項1または2に記載の酒類製造方法。
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