JP3955414B2 - 酒類の製造方法 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、酒類の製造法に関する。さらに具体的には、分枝アミノ酸トランスポーター遺伝子の発現レベルを高めることにより、分枝アミノ酸の取り込みが強化された酵母を育種し、当該酵母を用いて高級アルコール等の香気成分の組成が変化した酒類の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イソアミルアルコール(3-メチルブタノール)、活性アミルアルコール(2-メチルブタノール)、イソブタノールなどの高級アルコールおよびその酢酸エステルは酒類の重要な香味成分であり、その組成比によって酒類の香味に大きな変化が生じるので、酒類製造においては最も注目すべき物質である。そのため、高級アルコールを増加させること、あるいはその組成比を変えることによって、香味のバランスの異なる酒類を製造することが研究されてきた。
【0003】
酵母(Saccharomyces cerevisiae)において、高級アルコールは生合成経路とエーリッヒ経路の2つから生成する。生合成経路では分枝アミノ酸生合成経路の中間体であるケト酸が脱炭酸・還元されて高級アルコールが生成し、エーリッヒ経路では培地中から取り込まれた分枝アミノ酸が脱アミノ化されてケト酸となり、やはり脱炭酸・還元されて高級アルコールに変換される(図1)。従って、高級アルコール生成量を制御するには、生合成経路を制御する方法と、エーリッヒ経路を制御する方法の2種類が考えられる。
【0004】
生合成経路を制御するための従来の技術としてよく知られているのは、分枝アミノ酸アナログ耐性株の中から、後述のフィードバック阻害が解除された変異株を取得する方法である。より具体的に述べると、分枝アミノ酸生合成経路の幾つかの酵素は、生合成経路の最終産物である分枝アミノ酸、あるいは培地中から取り込まれた分枝アミノ酸によってフィードバック阻害を受けることが知られているが、分枝アミノ酸アナログ耐性変異株の中には、しばしばこのフィードバック阻害の解除されたものが存在するのである。
【0005】
例えば、Asida らは、清酒酵母よりロイシンのアナログである5,5,5-トリフルオロロイシンの耐性変異株の中から、ロイシン生合成系酵素であるα―イソプロピルリンゴ酸シンターゼのロイシンによるフィードバック阻害の解除された変異株を取得し、その株がイソアミルアルコールとその酢酸エステルを高生産することを報告している (Agric. Biol. Chem., 51, 2061-2065,1987)。Watanabeらは、ロイシンないしはバリンのアナログであるアザロイシンの耐性変異株の中から2 種類の変異株を分離した。一方の変異株は、ロイシン生合成系酵素であるα―イソプロピルリンゴ酸シンターゼのロイシンによるフィードバック阻害の解除された株で、イソアミルアルコールとその酢酸エステルを高生産した。他方はバリン生合成系酵素であるαーアセトヒドロキシ酸シンターゼのバリンによるフィードバック阻害の解除された株で、イソブタノールとその酢酸エステルを高生産することを報告している (Appl. Microbiol. Biotech., 34,154-159,1990)。また、Fukudaらは2ーチアゾリルアラニン耐性変異株の中からイソアミルアルコールとイソブタノールを両方同時に高生産する株を取得している(Agric. Biol. Chem., 54,2445-2446,1990)。
【0006】
一方でFukushige らは、分枝アミノ酸生合成系の酵素をコードしている幾つかの遺伝子(ILV1, ILV2, LEU2)の破壊株をウィスキー酵母から作成し、それぞれの遺伝子破壊が高級アルコール生成量に影響を及ぼすことを明らかにしているが、これらの株は親株に対して著しい発酵速度の低下が観察され、実用的ではない(醸造協会誌 93, 37-41,1998)。
【0007】
しかしながら、上記の分枝アミノ酸アナログ耐性株からフィードバック阻害が解除された変異株を得る方法、あるいは分枝アミノ酸生合成経路の遺伝子破壊株を得る方法の問題点は、醸造用酵母の染色体倍数性が高いことにある。すなわち、例えば醸造用酵母が2倍体であった場合、フィードバック阻害が解除された変異と同一の変異を対立遺伝子にも起こす必要があるが、そのような変異の確率は非常に低く、目的とする変異株を取得することは非常に困難である。醸造用酵母は2倍体以上であることが多く、そのような高次倍数性の酵母からすべての対立遺伝子においてフィードバック阻害が解除された変異を起こした株、あるいは全ての対立遺伝子の破壊株を取得することは、実質的には不可能である。
【0008】
また、エーリッヒ経路を制御して高級アルコール生成量を制御する方法としては、古くから培地中の窒素源の影響が研究されている(発酵工学,59,9-16,1981 、醸造協会誌,81, 626 1986)。しかしながら培地組成の変更は、発酵速度の低下や高級アルコール以外の香味成分の変動など、好ましくない醸造特性の変化をもたらしたり、分枝アミノ酸の添加などコスト面において現実的でない場合が多い。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、発酵能などの醸造特性を劣化させることなく、酒類中の高級アルコールおよびその酢酸エステルの含量および組成比を変化させて、特徴ある香気成分の組成比を有する酒類の、安価で簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、従来の方法と全く異なるアプローチとして、分枝アミノ酸の酵母細胞内への取り込み能を制御することによって、細胞内分枝アミノ酸レベルを制御し、該細胞内アミノ酸から生じる高級アルコール、およびその酢酸エステルの組成を変化させる方法を開発した。
【0011】
なお本明細書においては、分枝アミノ酸とは、ロイシン、バリン、イソロイシンのことを意味する。
酵母(例えばSaccharomyces cerevisiae)では、分枝アミノ酸は少なくとも3種類のトランスポーターによって取り込まれる。すなわちすべてのアミノ酸を基質として取り込むことができるGeneral Amino Acid Permease (GAP1p )、分枝アミノ酸に特異的な高親和性トランスポーター、および分枝アミノ酸に特異的ではあるが低親和性のトランスポーターである。これらのうちGAP1p は外界の窒素源によってmRNAへの転写レベル、タンパク質への翻訳後のレベルでも非常に厳格な調節を受けている(J. Bacteriol. 177,94-102, 1995)から、GAP1p 遺伝子の発現調節、ひいてはGAP1p によって分枝アミノ酸取り込み能の調節を行うことは非常に困難である。また、GAP1p の特異性は非常に低いために、GAP1p を制御することによって分枝アミノ酸の取り込みだけを特異的に促進させることはできない。
【0012】
そこで本発明者らは、構成的に発現する遺伝子のプロモーター・ターミネーターの制御下に置いた高親和性分枝アミノ酸トランスポーター遺伝子からなる発現カセットを含有する醸造酵母を作製して、当該酵母を用いて製造した酒類中の高級アルコール含量が増加すること、および高級アルコールの組成が変化して香味に特徴のある酒類を製造できることを確認して本発明を完成した。高親和性分枝アミノ酸トランスポーター遺伝子の制御による高級アルコール生成量制御の研究例は、これまで報告されていない。
【0013】
【発明の実施の形態】
分枝アミノ酸の取り込み能を強化するために用いることができる高親和性分枝アミノ酸トランスポーターをコードしている遺伝子の例は、Grauslund ら(Biochimi. Biophys. Acta 1269 p275-280 1995)が報告しているBAP2遺伝子である。BAP2のプロモーター領域にはGeneral amino acid controlに関与するGCN4p の結合部位とロイシン合成系酵素の転写因子であるLEU3pの結合部位があり、Didionら(J. Bacteriol. P2025-2029, 1996)によって、培地中のロイシンによってBAP2の転写が一時的に誘導されることが観察されている。本発明者らが、ビール酵母中でのBAP2の転写レベルを調べたところ、BAP2 mRNAのレベルは、発酵もろみ中の分枝アミノ酸濃度が高い発酵初期にも比較的低いことが明らかになり、転写の誘導は起こっていないと判断された。そこで、発酵の全期間を通して分枝アミノ酸の取り込みを強化するために、構成的に発現をする遺伝子のプロモーター・ターミネーターの制御下に置いた分枝アミノ酸トランスポーター(BAP2)を含有する醸造酵母を作成した。さらに該酵母を用いて麦汁を発酵させたところ、分枝アミノ酸の資化が促進され、該分枝アミノ酸から生成する高級アルコールの組成に特徴のある酒類の製造ができた。
【0014】
本明細書で、高親和性分枝アミノ酸トランスポーターとは、分枝アミノ酸に対する親和性が、低親和性トランスポーターに比較して高いものをいい、該高親和性トランスポーターにより培地中の分枝アミノ酸濃度が低くとも、効率よく細胞内に取り込むことができる。従って、酵母のBAP2遺伝子以外にも、高親和性分枝アミノ酸トランスポーターをコードする種々の他起源由来の遺伝子が存在することは当業者に取って明らかであり、本発明はそれらのいずれを用いてもよい。当該遺伝子は、酒類製造に用いる酵母由来であってもよく、他の酵母由来のものでもよい。
【0015】
また、本発明においては、発酵初期から分枝アミノ酸を酵母細胞内に取り込ませるために、高親和性分枝アミノ酸トランスポーターをコードする遺伝子は、構成的に発現させることが好ましい。そのためのプロモーター・ターミネーターとしては、醸造用酵母中で機能するとともに、もろみ中のアミノ酸濃度の影響を受けなければ任意のプロモーター・ターミネーターの組み合わせでよい。例えば、Saccharomyces 酵母由来のものであればいずれも利用可能で、グリセルアルデヒド3ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH 遺伝子のプロモーター・タミネーター(Hollandら、J. Biol. Chem.254, 9839,1976) 、3フォスフォグリセレートキナーゼ(PGK) 遺伝子のプロモーター・タミネーター(Tuiteら、EMBO J. vol.1, p603 1982) 等が利用可能である。
【0016】
分枝アミノ酸取り込み能が強化された酵母を作製するための宿主酵母としては、醸造に使用可能な任意の酵母があげられる。例えばビール酵母、例えばサッカロミセス・セレビシエー(Saccharomyces cerevisiae)のBH225、IFO1951、IFO1952、IFO1953、IFO1954などが使用できる。さらに、ウイスキー酵母(例えばサッカロミセス・セレビシエーNCYC 90 など)、ワイン酵母(例えば協会酵母ぶどう酒用1号、3号、4号等)、清酒酵母(例えば協会酵母清酒用7号、9号等)も同様に使用できる。
【0017】
酵母に導入する際に用いるベクターとしては、多コピー型(YEp型) 、単コピー型(YCp型) 、染色体DNA 組み込み型(YIp型) のいずれもが利用可能である。染色体DNA 組み込み型(YIp型) のベクターの使用は、形質転換された酵母を管理しやすいという点で好ましい。
【0018】
形質転換の際に用いられる選択マーカーとしては、醸造用酵母の場合は栄養要求性マーカーが利用できないので、G418耐性遺伝子[G418r] (Oka ら、J. Mol. Biol. 147,217, 1981 )、銅耐性遺伝子(Marin. M.ら、Proc. Nati. Acad. Sci. USA. Vol.81,p337 1984) 、セルレニン耐性遺伝子[fas2m] (猪腰淳嗣ら、生化学、64巻、p660 1992)、多剤薬剤耐性遺伝子[PDR4](Hussain. M. ら、Gene vol.101, P149 1991 )等が利用可能である。
【0019】
また、本発明で使用する、分枝アミノ酸取り込み能が増強された醸造酵母は、生産する高級アルコールの含量および組成だけが変化し、酵母の増殖や発酵能においては親株の酵母を用いた場合と変化はない。従って、原料、製造設備、製造管理等は従来法と全く同一でよい。このことは、本発明の重要な特徴である。しかしながら、所望により、分枝アミノ酸の資化をさらに促進するため、もろみ中の分枝アミノ酸の量や他のアミノ酸との比率を変化させたり、発酵時間を変化させる等、発酵条件を種々変化させてよいことはいうまでもない。
【0020】
本発明の方法においては、もろみ中のアミノ酸濃度の影響を受けない、構成的に発現をする遺伝子のプロモーター・ターミネーターの制御下に分枝アミノ酸トランスポーター遺伝子が導入された醸造酵母を使用するので、発酵初期より分枝アミノ酸の資化が促進され、高級アルコール及びその酢酸エステルからなる香気成分及び組成が、通常の方法で生じる酒類と比べて変化している。とりわけ、高級アルコールのうちイソアミルアルコール及びそのエステルは特異的に増加し、このことによって高級アルコール組成に特徴のある酒類を製造することができる。高級アルコールの組成比の指標として一般的に用いられているのはイソアミルアルコール/イソブタノール比(A/B比)であるが、本発明の方法では、A/B比を2倍程度に高めることが可能である。
【0021】
本発明において、分枝アミノ酸取り込み能が増強された醸造酵母を用いた酒類製造方法においては、上記の如く高級アルコールの含量および組成だけが変化し、酵母の増殖や発酵能においては親株の酵母を用いた場合と変化はない。従って、原料、製造設備、製造管理等は従来法と全く同一でよく、高級アルコール組成に特徴のある酒類を製造するための、コストの増加はない。
【0022】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1. BAP2 遺伝子構成的発現株の作製
BAP2遺伝子は既にクローニングされており、その塩基配列が報告されている (Grauslund et. al. Biochimi. Biophys. Acta 1269, 275-280 1995) ため、その塩基情報を基にBAP2遺伝子の一部の配列を含むDNAを2種類化学合成し、該DNAをプライマーとしてPCRによって増幅した。増幅されたDNA 断片をプローブとして、研究室酵母X2180-1A株由来のジーンバンクをコロニーハイブリダイゼーションによってスクリーニングした。ハイブリダイズするコロニーからプラスミドを抽出し、遺伝子の全長を含む約9KbのDNA 断片を得た。
【0023】
上記の約9KbのDNA 断片を、制限酵素処理、エキソヌクレアーゼ処理によって削り、BAP2構造遺伝子を含む約2Kbの断片を含むプラスミドpBAP2ORF#4(図2)を作成した。YI p型のベクターpUP3GLP (図2)は、酵母染色体相同組み換え部位URA3, ガラクトース誘導性のガラクトキナーゼGAL1のプロモーター(PGAL1) 、多剤薬剤耐性遺伝子(PDR4)を含んでいる。これらの遺伝子を含むDNA 断片は、それぞれS. cerevisiae X2180-1A株の染色体DNA を鋳型としてPCRで増幅して調製した。構成的発現に用いたプロモーターおよびターミネーターは、グリセルアルデヒド3ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH) 遺伝子のプロモーターおよびターミネーターをプラスミドpYE22m( 特開平4-228078)より切り出した。これらの DNA断片を連結して、図2に示すpUP3GLP を作成した。
【0024】
pBAP2ORF#4より、約2.0Kb のBAP2構造遺伝子断片をEcoRI 部分消化とSalI消化によって切り出し、EcoRI +SalIで完全消化したpUP3GLP の断片とライゲーションを行い、pUP3BAP2を作成した( 図2) 。
【0025】
上記のプラスミドpUP3BAP2を制限酵素NcoIで切断して、ビール酵母BH225 株を特開平7-303475に記載された方法で形質転換し、BAP2遺伝子を構成的に発現する形質転換株を2株得、その一方をIB1株とした。
【0026】
実施例2.ビール試験醸造における分枝アミノ酸の資化および高級アルコール、エステル生成量の解析
親株のビール酵母BH225 株、ならびに形質転換株IB1株を用いた発酵試験を以下の条件下で行った。
【0027】
【表1】
麦汁エキス濃度 11.66 %
麦汁容量 2L
麦汁溶存酸素濃度 約 9 ppm
発酵温度 12℃一定
酵母投入量 10 g湿酵母菌体 / 2L 麦汁
発酵中の酵母増殖量、エキス消費経過を調べたところ、図3に示すように親株BH225 株と形質転換株IB1株では差が認められなかった。
【0028】
発酵もろみを経時的に採取し、以下の方法で分枝アミノ酸濃度および高級アルコール濃度を測定した。
発酵もろみ10mlを遠心によって酵母菌体を除いた後、上清をアミノ酸分析機(CCP&8000、東ソー社製)で分析し、発酵もろみ中のアミノ酸濃度を測定した。図4に示すようにバリン、イソロイシン、ロイシンのいずれの分枝アミノ酸も、形質転換株IB1株では細胞内への取り込み(資化)が促進されていた。
【0029】
遠心で酵母菌体を除いた発酵もろみについて、高級アルコール類はパックドカラム(1-1812、スペルコ社製)を装着したガスクロマトグラム(5890、Hewlett Packard社製)で、イソアミルアルコール酢酸エステル(酢酸イソアミル)はキャピラリーカラム(125-7032、J&W Scientific社製)を装着したガスクロマトグラム(8700、Perkin Elmer社製)で分析した。図5-a, b, cに示すようにイソアミルアルコールのみが約2倍に増加し、イソブタノール、活性アミルアルコールの量にはほとんど変化がなかった。従ってA/B比(V/V) も親株では3.8 であったものが、形質転換株では、7.5 に増加していた。また図5-dに示すように、イソアミルアルコールの酢酸エステルである酢酸イソアミルも形質転換株IB1株では、親株の約2.5 倍に増加していた。
【0030】
以上の結果から、本発明によって開示された分枝アミノ酸トランスポーターを構成的に発現させて、分枝アミノ酸の取り込み能が強化された酵母では、発酵工程や発酵期間を変えることなく、酒類の香味成分であるイソアミルアルコールと酢酸イソアミルを特異的に増加させることができた。また、イソアミルアルコール対イソブタノールの比率を変化させることにより香味に特徴のある酒類を製造することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、分枝アミノ酸の生合成経路およびエーリッヒ経路による、高級アルコール、エステルの生成経路を示す図である。
【図2】 図2は、プラスミドpBAP2ORF#4とYI 型のベクターpUP3GLP から、プラスミドpUP3BAP2の作製経路を示す図である。
記号:URA3、ウラシル要求性回復遺伝子。PGAL1 、ガラクトキナーゼGAL1プロモーター。PDR4、多剤薬剤耐性遺伝子。PGAPDH、TGAPDH、グリセルアルデヒド3ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH) 遺伝子のプロモーター、ターミネーター。
【図3】 図3はビール試験醸造における発酵中の酵母増殖量(図3-a)およびエキスの消費経過(図3-b)を示すグラフである。
【図4】 図4はビール試験醸造における発酵もろみ中の分枝アミノ酸濃度を示す図で、a はバリンの、b はイソロイシンの、c はロイシンの資化経過を示すグラフである。
【図5】 図はビール試験醸造における発酵もろみ中の高級アルコール等の濃度を示す図で、a はイソアミルアルコールの、b はイソブタノールの、c は活性アミルアルコールの、d は酢酸イソアミルの生成経過を示すグラフである。

Claims (4)

  1. BAP2遺伝子の発現レベルを高めることにより、分枝アミノ酸の取り込みが強化された酵母を用いることを特徴とする、イソアミルアルコールおよびその酢酸エステルの含量が増加した酒類の製造方法。
  2. BAP2遺伝子の発現レベルを高めることにより、分枝アミノ酸の取り込みが強化された酵母が、BAP2遺伝子を構成的に発現するように形質転換された酵母である請求項1に記載の酒類製造方法。
  3. BAP2の発現レベルを高めることにより、分枝アミノ酸の取り込みが強化された酵母を用いることを特徴とする、酒類におけるイソアミルアルコールおよびその酢酸エステルの含量を増加させる方法。
  4. BAP2遺伝子を構成的に発現するように形質転換されることにより、分枝アミノ酸の取り込みが強化された醸造用酵母であって、イソアミルアルコールおよびその酢酸エステルの含量が増加した酒類の製造に用いるためのサッカロミセス属に属する醸造用酵母。
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