JP2000309891A

JP2000309891A - 金属帯の連続酸洗装置および酸洗方法

Info

Publication number: JP2000309891A
Application number: JP11813099A
Authority: JP
Inventors: Shinichiro Iida; 真一郎飯田; Yoshiaki Takeishi; 芳明武石
Original assignee: Sumitomo Metal Industries Ltd
Current assignee: Nippon Steel Corp
Priority date: 1999-04-26
Filing date: 1999-04-26
Publication date: 2000-11-07

Abstract

(57)【要約】【課題】金属帯表面の脱スケールする際の生産効率を
高めること、さらには酸洗設備をコンパクトにすること
が可能な酸洗設備及び酸洗方法を提供する。【解決手段】減圧可能な酸洗槽で、液密度ρ(kg/m
³ )、蒸気圧Ｐv (Pa)の酸液で満たされた前記酸洗槽中
を速度Ｖs (m/s) で走行する金属帯に対し、金属帯近傍
の酸液の圧力Ｐ(Pa)がＰv ＜Ｐ＜１０⁵Paとなるように
酸洗槽を減圧し、移動体を金属帯近傍に沿って金属帯と
逆方向に速度Ｖt (m/s) で移動させ、かつ下記式で表さ
れるキャビテーション係数ｋが１．５未満となるように
する。【数４】

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、鋼帯等の金属帯表
面のスケールを効率的に除去する金属帯の連続酸洗装置
及び酸洗方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】普通鋼およびステンレス鋼等の熱間圧延
鋼帯（熱延鋼帯ともいう）の表面には、厚さ数百ｎｍ〜
数十μｍのスケールが生成している。この熱延鋼帯表面
に生成したスケールは、酸液を満たした酸洗槽中を熱延
鋼帯が走行中に溶解・除去される。従来の酸洗装置に
は、酸液使用量を削減するために、酸洗槽内の酸液の深
さを浅くした横型の酸洗槽が多く用いられている。

【０００３】図１は従来方式の鋼板用酸洗装置の横型酸
洗槽の要部を模式的に示す縦断面図である。走行する金
属帯１（例えば、熱延鋼帯）はデフレクタロール１０お
よびサポートロール３で支持されつつ、酸洗槽２内の酸
液４中を走行する。

【０００４】酸洗槽２の底面には金属帯１が酸洗槽２の
底面と接触するのを防止するために、天然石や磁器、耐
酸れんが等の耐食性及び耐摩耗性に優れる複数のスキッ
ド７が設置されることもある。酸洗槽は複数の槽が連続
的に設置されており、槽の合計長さは１００ｍ以上に達
する場合もある。

【０００５】金属帯表面のスケールは酸液との化学反応
および反応生成物の拡散により溶解・除去される。溶解
速度の主たる決定因子は、金属帯表面の物質移動速度で
ある。しかし、酸液中を金属帯が走行すると、表面に境
界層が発達し、この境界層は物質移動速度が遅いため、
スケールの溶解反応が低下し酸洗速度向上の阻害要因と
なる。

【０００６】表面の境界層を効率的に破壊し金属帯表面
への酸液の供給速度を向上させる目的で、これまで各種
の酸洗方法が検討されてきた。

【０００７】例えば、特開昭６１−４１７８３号公報あ
るいは特開平１−２４６３８５号公報には、酸洗槽内に
設けた平坦な、もしくは凹凸を有するエンドレスベルト
を回転移動することで、金属帯表面に成長する境界層を
薄くし、酸洗効率を向上する技術が開示されている。ま
た、特開平３−２６７３８８号公報には、同様の目的で
通常の酸洗槽底に設置するスキッド等よりもさらに金属
帯に接近した堰状の部材を設置し、金属帯の走行に伴う
酸液の随伴流によって境界層を薄くする技術が開示され
ている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】前記公報に開示された
ような境界層を破壊する手段により、酸洗速度は向上す
るが、さらなる酸洗速度の高速化が望まれている。前記
公報に開示された技術は境界層を崩壊するため流体の流
動による乱流を利用しているが、これのみでは、酸洗速
度向上効果に限界がある。

【０００９】本発明の目的は、上記の境界層を効率的に
破壊し、酸洗速度を向上して生産効率を高めること、さ
らには酸洗槽の長さを短くし、設備コストの大幅削減を
図る酸洗装置および酸洗方法を提供することにある。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明者らは境界層の破
壊挙動に関する基礎研究を重ね、金属帯表面近傍の酸液
にキャビテーションを発生させ、高密度の音圧エネルギ
を発生させ、効率的に境界層を破壊することにより、物
質移動速度を高め、スケール溶解反応を高めることによ
って、効率的に脱スケールできることを見出した。さら
に、効率的にキャビテーションを発生させる条件を明ら
かにした。

【００１１】本発明は上記の知見に基づいて完成したも
のであり、その要旨は、以下の(1)および(2) にある。

【００１２】(1) 酸洗槽中に金属帯を走行させ、金属帯
表面のスケールを除去する連続酸洗装置であって、槽内
雰囲気が減圧可能な酸洗槽と、金属帯表面近傍に沿って
金属帯と逆方向に移動するキャビテーション形成用の移
動体とを備えたことを特徴とする金属帯の連続酸洗装
置。

【００１３】(2) 減圧可能な構造と、金属帯表面近傍に
沿って金属帯と逆方向に移動するキャビテーション形成
用の移動体とを有する酸洗槽を用い、液密度ρ(kg/m
³ )、蒸気圧Ｐv (Pa)の酸液を満たした前記酸洗槽中を
速度Ｖs (m/s) で走行する金属帯に対し、金属帯近傍の
酸液の圧力Ｐ(Pa)がＰv ＜Ｐ＜１０⁵Paとなるように酸
洗槽の槽内雰囲気を減圧し、前記移動体を金属帯近傍に
沿って金属帯と逆方向に速度Ｖt (m/s) で移動させ、か
つ下記式で表されるキャビテーション係数ｋが１．５未
満となるようにすることを特徴とする金属帯の酸洗方
法。

【００１４】

【数２】

【００１５】

【発明の実施の形態】本発明においては、熱延鋼板等、
酸液中を走行する金属帯の近傍でキャビテーションを発
生させ、このとき発生する高密度の音圧エネルギを利用
して脱スケールする。

【００１６】図２はキャビテーションの発生過程を模式
的に示す概要図である。同図に示すように、液体２４と
突起２１との相対速度Ｖの増加とともに、突起２１の下
流で流速が増加して液体の圧力が低下し、液体２４の蒸
気圧以下まで低下したときに、液体中に蒸気泡２３が形
成される。この現象をキャビテーションといい、さらに
下流側では静圧が上昇し、蒸気泡２３が崩壊する。この
とき、高密度の音圧が発生し、突起２１あるいは被処理
表面２２の表面を衝撃する。これにより、物体の表面が
破壊される。キャビテーションによって装置が破壊され
る場合は有害であるが、これを酸洗に利用すると酸洗効
率を向上でき有益である。

【００１７】図３は本発明の酸洗装置例の酸洗槽部分の
概要を示す縦断面図である。同図において酸洗槽２には
酸液４が満たされている。金属帯１は入側と出側のデフ
レクタロール１０、サポートロール３に支持されつつ、
酸液中を走行する。

【００１８】キャビテーションは前記のように、流速が
増大して酸液の圧力が低下し、酸液の蒸気圧以下まで低
下したときに気泡が発生することによるが、元の酸液の
圧力が低ければ気泡が発生しやすい。従って、本発明法
では酸液を減圧する。

【００１９】酸洗槽２内を減圧するため、装置全体を排
気可能な室に収納することでもよいが、多大の費用を要
するおそれがある。図３の例では、酸洗槽の部分だけを
減圧する構造となっている。酸洗槽２には密閉構造の槽
蓋９が設けられており、金属帯１を通す開口部１１に
は、排気室１２が設けられている。排気室１２は排気管
１７を介して排気ブロア１８に接続されており、酸洗槽
２を減圧できる。排気効率を高めるため、排気室開口部
１６は極力隙間を小さくするのが望ましい。そのほか、
開口部１１の酸洗槽２側から排気室１２に向かって吸引
ノズル１９を配置し、圧縮空気２０を噴出することによ
って酸洗槽２内の雰囲気ガスを吸引する方法を併用して
もよい。酸洗槽２内の圧力は後述のように、１０kPa 程
度まで減圧できるのが望ましい。

【００２０】金属帯１を挟んで両側には移動体支持ベル
ト１４に支えられたキャビテーション形成用の移動体１
３が金属帯と接近している。移動体１３は、移動体支持
ベルト１４を介し、図示しない駆動装置と結合された移
動体支持ローラ１５によって金属帯１の走行方向とは逆
方向に移動される。移動体の形状は金属帯の最大幅以上
の長さを有する角棒状または三角棒状のもので、エッジ
部が鋭いほど下流側に高速の渦が生じ、キャビテーショ
ンが発生しやすい。後述のように、移動体と金属帯との
間を流体引き込み効果によって隙間を保つようにするに
は、移動体は金属帯に対向する面が金属帯に平行、また
は下流側に沿って間隔が狭くなる傾斜を持つようにする
のがよい。

【００２１】図３は、金属帯１の両面に移動体１３ない
し移動体支持ベルト１４を配置した例を示しているが、
金属帯上面のみに移動体を設置し、下面を図１のような
スキッドを設けてもよい。

【００２２】次にキャビテーションの発生条件について
説明する。図４は、金属帯と移動体間の流速分布を示す
模式図である。同図に示すように金属帯と移動体間の流
速が直線的に変化しているとみなせば、金属帯１と移動
体の間の代表速度Ｖは、移動体の移動速度をＶt (m/s)
、金属帯の走行速度Ｖs (m/s) としたとき、Ｖ＝（Ｖt
＋Ｖs ）／２となる。このときのキャビテーション係
数ｋは、移動体近傍の酸液の液密度をρ(kg/m³ )、酸
液の圧力をＰ(Pa)、酸液蒸気圧Ｐv (Pa)とするとき、

【００２３】

【数３】

【００２４】となる。

【００２５】後述するように、キャビテーション係数ｋ
が減少するほどキャビテーションは発生しやすくなり、
キャビテーション係数ｋが１．５未満のときに十分な酸
洗性が得られる。

【００２６】上記式の右辺分子が負、すなわちＰ≧Ｐv
となると、酸液が減圧下で沸騰し、本発明の目的である
金属帯１近傍で蒸気泡を発生させることができない。従
って、Ｐ＜Ｐv とする。

【００２７】通常、酸液は７０℃以上に加熱され、蒸気
圧Ｐv はおよそ１０kPa であるので、酸洗槽は１０kPa
程度まで減圧できればよい。一方、ｋを小さくするに
は、金属帯近傍での酸液の圧力Ｐを小さくする方が有利
であり、酸洗槽を大気圧（１００kPa ＝１０⁵Pa）より
低くする。なお、上記式のＰは厳密には金属帯のパスラ
イン近傍での酸液圧力で定義されたものであるが、横型
酸洗槽であれば、酸液上部空間の雰囲気圧とみなしても
よい。

【００２８】次に、金属帯と移動体の先端との距離およ
び移動体の突起の幅の形状について検討した。

【００２９】図５は金属帯と移動体の突起先端との距離
Ｈおよび移動体の突起幅Ｗが、金属帯と移動体との衝突
に及ぼす影響を示すグラフである。同図に示すように、
境界線の上側では移動体が金属帯に衝突する恐れがあ
る。境界線下側の適用領域では移動体の突起と金属帯間
に引き込まれた酸液の動圧によって、金属帯と移動体間
の間隔が適度に維持され、金属帯に損耗を受けない。従
って、この適用領域内で移動体の突起幅および金属帯と
の距離の初期値を決定することが望ましい。

【００３０】なお、本発明のキャビテーションを利用し
た酸洗方法は、酸洗への適用のみではなく、アルカリ脱
脂、水洗など、金属帯の表面の洗浄にも適用可能であ
る。

【００３１】

【実施例】本発明の効果を確認するため、酸洗試験装置
で熱延鋼板を試験酸洗した。試片の普通鋼熱延鋼板
（Ｃ：０．０５重量％、Ｍｎ：１．２重量％、Ｓｉ：
０．１重量％）の寸法は、板厚２．３mm、板幅３００m
m、スケール厚さは１０μｍであった。酸洗槽の長さは
３０ｍ、酸液は塩酸７％、浴温７０℃であった。

【００３２】移動体および移動体支持ベルトはガラス繊
維強化体にテフロン（登録商標）コートコートしたもの
である。移動体は移動体支持ベルトに３０cm間隔で設け
られた、３０mm×３０mm×３５０mm長さの角棒状であ
る。試片の走行速度は３００〜４００m/s 、移動体の移
動速度は試片鋼板と逆方向に１００〜３００m/s とし
た。

【００３３】図６はキャビテーション係数ｋと酸洗速度
比との関係を示すグラフである。酸洗速度比とは、移動
体の移動速度０m/s 、酸洗槽を減圧しないとき（従来
法）に、試験片鋼帯を完全に脱スケールするのに必要な
酸浸漬時間を確保するための鋼帯の走行速度（最大値）
を１としたときの速度比である。酸洗槽は２０kPa に減
圧し、移動体の移動速度でキャビテーション係数を変化
させた。

【００３４】図６に示すように、酸洗速度比は、キャビ
テーション係数が小さいほど増大し、特にキャビテーシ
ョン係数が１．５以下になると酸洗速度増加の効果が大
きいことがわかった。

【００３５】一方、上記の結果から酸洗速度が一定とし
た場合、酸洗槽の長さがどの程度短縮可能かを検討し
た。

【００３６】図７は従来法の酸洗槽長さと本発明の酸洗
方法を適用した場合の酸洗槽長さを比較したグラフであ
る。同図のように、キャビテーション係数ｋを１程度に
すれば、酸洗槽長さは従来法の１／５程度に短縮できる
ことがわかった。

【００３７】上記のｋ値を得るには、酸洗槽の圧力を２
７kPa 程度まで減圧し、移動体速度を３００m/s 、金属
帯走行速度を４００m/s 程度とすればよい。

【００３８】

【発明の効果】本発明により、酸洗速度が向上し、酸洗
槽の槽長さおよび槽数を減少できるので、酸洗方法の省
スペース化ができ、あるいはライン速度を増加できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来方式の鋼板用酸洗装置の横型酸洗槽の要部
を模式的に示す縦断面図である。

【図２】キャビテーションの発生過程を模式的に示す概
要図である。

【図３】本発明の酸洗装置の酸洗槽部分の概要を示す縦
断面図である。

【図４】金属帯と移動体間の流速分布を示す模式図であ
る。

【図５】金属帯と移動体の突起先端との距離Ｈおよび移
動体の突起幅Ｗが、金属帯と移動体との衝突に及ぼす影
響を示すグラフである。

【図６】キャビテーション係数ｋと酸洗速度比との関係
を示すグラフである。

【図７】従来法の酸洗槽長さと本発明の酸洗方法を適用
した場合の酸洗槽長さを比較したグラフである。

【符号の説明】

１：金属帯２：酸洗槽３：サポートロール４：酸液７：スキッド９：槽蓋１０：デフレクタロール１１：開口部１２：排気室１３：移動体１４：移動体支持ベルト１５：移動体支持ローラ１６：排気室開口部１７：排気管１８：排気ブロア１９：吸引ノズル２０：圧縮空気２１：突起２２：被処理表面２３：蒸気泡２４：液体

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続きＦターム(参考） 3B201 AA08 AB13 AB37 AB42 BB02 BB82 BB96 CB01 CD11 4K053 PA02 PA12 QA01 RA19 SA19 TA02 TA16 XA11 YA04 YA23

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】酸洗槽中に金属帯を走行させ、金属帯表
面のスケールを除去する連続酸洗装置であって、槽内雰
囲気が減圧可能な酸洗槽と、金属帯表面近傍に沿って金
属帯と逆方向に移動するキャビテーション形成用の移動
体とを備えたことを特徴とする金属帯の連続酸洗装置。
【請求項２】減圧可能な構造と、金属帯表面近傍に沿
って金属帯と逆方向に移動するキャビテーション形成用
の移動体とを有する酸洗槽を用い、液密度ρ(kg/m³ )、
蒸気圧Ｐv (Pa)の酸液を満たした前記酸洗槽中を速度Ｖ
s (m/s) で走行する金属帯に対し、金属帯近傍の酸液の
圧力Ｐ(Pa)がＰv ＜Ｐ＜１０⁵Paとなるように酸洗槽の
槽内雰囲気を減圧し、前記移動体を金属帯近傍に沿って
金属帯と逆方向に速度Ｖt (m/s) で移動させ、かつ下記
式で表されるキャビテーション係数ｋが１．５未満とな
るようにすることを特徴とする金属帯の酸洗方法。【数１】