JP2000305618A - 車両の異常診断装置 - Google Patents

車両の異常診断装置

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JP2000305618A JP11366399A JP11366399A JP2000305618A JP 2000305618 A JP2000305618 A JP 2000305618A JP 11366399 A JP11366399 A JP 11366399A JP 11366399 A JP11366399 A JP 11366399A JP 2000305618 A JP2000305618 A JP 2000305618A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】一定稼働条件下での稼働パラメータの計測を人
的コストの上昇を招くことなく建設機械の作業効率の低
下を招くことなく行えるようにするとともに、正確なデ
ータを確実に取得できるようにする。 【解決手段】車両50が走行する走行路51上の各地点
または各領域の中から、車両50の稼働条件が特定の稼
働条件となる特定地点Qまたは特定領域Arが予め設定
される。そして車両50が特定地点Qまたは特定領域A
rを通過した時点ts1、ts2、ts3、ts4、…tsnの稼
働パラメータPが取得される。そしてこれら取得された
稼働パラメータPの値(最大値Pmax)に基づいて車両
の異常が診断される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は建設機械などの車両
に生じる故障の診断、寿命の予測などの異常診断を行う
車両の異常診断装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】建設
機械の信頼性を高める上で、エンジンの故障の診断、エ
ンジンの劣化度合いの判断、エンジンの寿命の予測(オ
ーバーホール時期の予測)などの異常診断を行うことは
不可欠である。そして異常診断を行う際には、エンジン
のブローバイ圧、回転数、燃料噴射量など、建設機械の
稼働中に値が変化する稼働パラメータを、同一の稼働条
件下(トルクカーブ上の定格点で稼働されるという条
件)で取得することが必要となる。同一の稼働条件下で
稼働パラメータを取得することができなければ、データ
同士を比較して異常を診断することができないからであ
る。
【0003】従来は以下のようにして稼働パラメータが
取得される。
【0004】(a)まず作業中の建設機械を停止させ、
作業を中断させる。
【0005】(b)そして圧力計、回転計などの測定器
が、測定しようとする稼働パラメータの数だけエンジン
に取り付けられる。
【0006】(c)停止状態で建設機械に負荷をかけト
ルクコンバータをストールさせた状態にしてエンジン回
転数、燃料噴射量を定格点にもっていく。
【0007】(d)稼働パラメータの値がサチュレーシ
ョンし安定したならば、測定器で測定されたデータを読
み取り記録する。
【0008】しかし上記(a)に示すように計測のため
に建設機械を停止させ、作業を中断させることは、作業
効率の低下を招く。
【0009】また上記(b)、(c)、(d)に示すよ
うに計測のために測定器を取り付けたり、建設機械を一
定の稼働条件となるように操作したり、測定データを記
録する作業を行うことは、計測作業に熟練している人間
(サービスマン)を必要とする。また当該人間は計測に
かかりきりになる。このため計測のための人的なコスト
が上昇することになる。
【0010】また上記(c)、(d)に示すように建設
機械を停止させトルクコンバータをストールさせた状態
で稼働パラメータの計測を行うため、トルクコンバータ
で熱が発生する。このため一定の稼働状態を長時間維持
することができない(せいぜい20秒間が限度であ
る)。このためつぎのような問題が招来する。
【0011】図6は従来の稼働パラメータの計測結果を
示す。横軸が時間軸であり縦軸が各稼働パラメータの大
きさを示している。図6はエンジン回転数、ガバナラッ
ク位置(電圧値)、油圧、排気温度、油温、ブローバイ
圧の各稼働パラメータを取得する場合を示している。エ
ンジン回転数、ガバナラック位置(電圧値)が上昇し、
安定した状態(定格点)になると、Sに示すようにブロ
ーバイ圧も安定し、ブローバイ圧を安定した期間S内の
時刻tsで計測することができる。なお図面ではブロー
バイ圧は脈動しているが、ローパスフィルタを通過させ
るなどの信号処理が施されて安定した波形にした上で計
測される。なおガバナラック位置とは、燃料噴射ポンプ
の電気式ガバナのコントロールラック位置を示す電圧値
のことである。
【0012】同図6に示すように、エンジン回転数、ガ
バナラック位置(電圧値)が上昇しきってからの安定期
間Sは、トルクコンバータでの発熱を考慮してわずかし
か得られない。このため排気温度はサチュレーションせ
ず時刻tsでは正確なデータを採取することができな
い。
【0013】以上のように建設機械を停止させた状態で
計測を行う従来方法を採用するときは、稼働パラメータ
の種類によってはサチュレーションせず正確なデータを
採取することができない。
【0014】近年建設機械の稼働パラメータを時系列的
に取得し、取得された時系列データに基づいて異常診断
を行う試みがなされている。このためにはエンジンの稼
働条件を定期的に一定の稼働条件にした上で、稼働パラ
メータを定期的に取得する必要がある。このためには上
記(a)に示すように定期的に建設機械を停止させ作業
を中断せざるを得なく、作業効率の低下はさらに深刻な
ものとなる。
【0015】本発明はこうした実状に鑑みてなされたも
のであり、一定稼働条件下での稼働パラメータの計測を
人的コストの上昇を招くことなく建設機械の作業効率の
低下を招くことなく行えるようにするとともに、正確な
データを確実に取得できるようにすることを第1の解決
課題とするものである。
【0016】また従来よりエンジンのブローバイ圧を検
出し、検出したブローバイ圧の大きさからエンジンの異
常を診断することが行われている。ブローバイ圧はエン
ジンに加えられた被害を定量的に検出するのに有用な稼
働パラメータである。
【0017】本発明は、ブローバイ圧に関するあらたな
稼働パラメータを用いてエンジンの加えられた被害を定
量的に検出して、エンジンの異常をより精度よく診断す
ることを第2の解決課題とするものである。
【0018】
【課題を解決するための手段および効果】そこで本発明
の第1発明は、第1の解決課題達成のために、車両の稼
働中に値が変化する稼働パラメータを、前記車両の特定
の稼働条件下で取得し、該取得された稼働パラメータの
値に基づいて車両の異常を診断する車両の異常診断装置
において、前記車両が走行する走行路上の各地点または
各領域の中から、前記車両の稼働条件が前記特定の稼働
条件となる特定地点または特定領域を予め設定し、前記
車両が前記特定地点または特定領域を通過した時点の稼
働パラメータを取得し、該取得された稼働パラメータの
値に基づいて車両の異常を診断することを特徴とする。
【0019】第1発明によれば、図5に示すように車両
50が走行する走行路51上の各地点または各領域の中
から、車両50の稼働条件が特定の稼働条件となる特定
地点Qまたは特定領域Arが予め設定される。
【0020】そして図11に示すように車両50が特定
地点Qまたは特定領域Arを通過した時点ts1、ts2、
ts3、ts4、…tsnの稼働パラメータPが取得される。
【0021】そして図12に示すように、これら取得さ
れた稼働パラメータPの値(最大値Pmax)に基づいて
車両の異常が診断される。
【0022】第1発明によれば、車両50の走行中に特
定の稼働条件下で稼働パラメータPが取得されるので、
計測のために車両を停止させる必要がない。このため作
業は中断せず作業効率の低下は招来しない。また測定器
を取り付けたり、車両を一定の稼働条件となるように操
作したり、測定データを記録する作業を行う必要がない
ので、計測作業に熟練している人間(サービスマン)は
不要となる。このため人的なコストが上昇することもな
い。
【0023】また車両50の走行中に特定の稼働条件と
なる地点で稼働パラメータを取得することができるの
で、稼働パラメータをサチュレーションさせ安定した状
態で正確なデータを採取することができる。
【0024】以上のように第1発明によれば、一定稼働
条件下での稼働パラメータの計測が人的コストの上昇を
招くことなく車両の作業効率の低下を招くことなく行え
るとともに、正確なデータが確実に取得される。
【0025】また第2発明は、第1の解決課題達成のた
めに、車両の稼働中に値が変化する稼働パラメータを、
前記車両の特定の稼働条件下で取得し、該取得された稼
働パラメータの値に基づいて車両の異常を診断する車両
の異常診断装置において、前記車両が走行する走行路上
の各地点または各領域の中から、前記車両の稼働条件が
前記特定の稼働条件となる特定地点または特定領域を予
め設定する設定手段と、前記車両が前記走行路上を走行
しているときに前記車両の位置を検出する位置検出手段
と、前記位置検出手段で検出された位置が前記特定地点
または特定領域に対応する位置になったときにトリガ信
号を発生するトリガ信号発生手段と、前記トリガ信号が
発生されたことに応じて稼働パラメータを取得する稼働
パラメータ取得手段と、該取得された稼働パラメータの
値に基づいて車両の異常を診断する異常診断手段とを具
えたことを特徴とする。
【0026】第2発明によれば、第1発明によれば、図
2、図5に示すように車両50が走行する走行路51上
の各地点または各領域の中から、車両50の稼働条件が
特定の稼働条件となる特定地点Qまたは特定領域Arが
予め設定される(ステップ101)。
【0027】そして車両50が走行路51上を走行して
いるときに車両50の位置が検出される。
【0028】そして検出された位置が特定地点Qまたは
特定領域Arに対応する位置になったときにトリガ信号
が発生される(ステップ105、106)。
【0029】そしてトリガ信号が発生されたことに応じ
て稼働パラメータが取得される(ステップ107)。
【0030】このようにして図11に示すように車両5
0が特定地点Qまたは特定領域Arを通過した時点ts
1、ts2、ts3、ts4、…tsnの稼働パラメータPが取
得される。
【0031】そしてこれら取得された稼働パラメータP
の値(最大値Pmax)に基づいて車両の異常が診断され
る(ステップ108、109)。
【0032】第2発明によれば、第1発明と同様の効果
が得られる。
【0033】また第3発明は、第1発明または第2発明
において、前記稼働パラメータを、取得された時刻に対
応づけて逐次記憶し、記憶された逐次の稼働パラメータ
の時系列データに基づいて車両の異常を診断することを
特徴とする。
【0034】第3発明によれば、図12に示すように、
稼働パラメータ(最大値Pmax)が、取得された時刻
(τ時間毎)に対応づけて逐次記憶される。そして記憶
された逐次の稼働パラメータの時系列データDTに基づ
いて車両の異常が診断される。
【0035】すなわち第3発明によれば、図11に示す
ように、車両50が特定地点Qまたは特定領域Arを通
過した時点ts1、ts2、ts3、ts4、…tsnの稼働パラ
メータPが取得される。そしてτ時間における稼働パラ
メータPの最大値Pmaxが求められる。そして図12に
示すように稼働パラメータPのτ時間毎の最大値Pmax
が時刻(τ時間毎)に対応づけられて逐次記憶される。
そして記憶された逐次の稼働パラメータ最大値Pmaxの
時系列データDTがしきい値Pc1、Pc2、Pc3と比較さ
れることによって車両の異常が診断される。
【0036】このように第3発明によれば、車両50が
走行している間に定期的に稼働パラメータPが一定の稼
働条件下で取得され時系列データDTが取得される。こ
のため定期的に車両50が停止することが回避される。
これにより定期的な作業の中断による大幅な作業効率の
低下が防止される。
【0037】また第4発明は、第1の解決課題および第
2の解決課題達成のために、車両のエンジンの稼働中に
値が変化するブローバイ圧に関するデータを、前記車両
の特定の稼働条件下で取得し、該取得されたブローバイ
圧に関するデータの値に基づいて車両の異常を診断する
車両の異常診断装置において、前記車両が走行する走行
路上の各地点または各領域の中から、ブローバイ圧が立
ち上がりブローバイ圧がオーバーシュートする特定地点
または特定領域を予め設定し、前記車両が前記特定地点
または特定領域を通過した時点のブローバイ圧のオーバ
ーシュート量を取得し、該取得されたブローバイ圧オー
バーシュート量の値に基づいて車両の異常を診断するこ
とを特徴とする。
【0038】第4発明によれば、図5に示すように車両
50が走行する走行路51上の各地点または各領域の中
から、ブローバイ圧が立ち上がりブローバイ圧がオーバ
ーシュートする特定地点Qまたは特定領域Arが予め設
定される。
【0039】そして図11に示すように車両50が特定
地点Qまたは特定領域Arを通過した時点ts1、ts2、
ts3、ts4、…tsnのブローバイ圧のオーバーシュート
量ΔPが取得される。そして図12に示すように、これ
ら取得されたオーバーシュート量(最大値ΔPmax)に
基づいて車両の異常が診断される。
【0040】第4発明によれば、第1発明と同様の効果
が得られる。さらに第4発明によれば、図9(a)、
(b)、(c)に示すようにブローバイ圧のオーバーシ
ュート量ΔP1、ΔP2、ΔP3の大きさの違いからエン
ジンの摩耗状態(被害量)が定量的に検出される。これ
によりエンジンの異常が、ブローバイ圧に基づき診断し
た場合と比較して、より精度よく診断される。
【0041】また第5発明は、第2の解決課題達成のた
めに、車両のエンジンの稼働中に値が変化するブローバ
イ圧に関するデータを取得し、該取得されたブローバイ
圧に関するデータの値に基づいて車両の異常を診断する
車両の異常診断装置において、ブローバイ圧が立ち上が
りブローバイ圧がオーバーシュートするときのオーバー
シュート量を計測するブローバイ圧オーバーシュート量
計測手段と、該計測されたブローバイ圧オーバーシュー
ト量の値に基づいて車両の異常を診断する異常診断手段
とを具えたことを特徴とする。
【0042】第5発明によれば、図9(a)、(b)、
(c)に示すようにブローバイ圧のオーバーシュート量
ΔP1、ΔP2、ΔP3の大きさの違いからエンジンの摩
耗状態、被害量が定量的に検出される。これによりエン
ジンの異常が、ブローバイ圧に基づき診断した場合と比
較して、より精度よく診断される。
【0043】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明に係る
車両の異常診断装置の実施の形態について説明する。
【0044】図1は実施形態の異常診断装置のブロック
図である。
【0045】本実施形態では、図5に示すように鉱山な
どの広域作業現場における走行路51を走行するダンプ
トラックなどの建設機械50(以下車両50という)を
想定する。
【0046】図1に示すように、実施形態の装置は、大
きくは、車両位置検出用のGPS衛星41、42と、車
両50の車体1内に設けられたエンジン2、コントロー
ラ3と、広域作業現場に設置された監視局30とから構
成されている。なお作業現場とは離れた事務所30を監
視局30の代わりとしてもよい。
【0047】エンジン2には、エンジン2のブローバイ
圧を検出するブローバイ圧センサ4、エンジン2の回転
数の検出する回転数センサ5、エンジン2の冷却水の温
度を検出する水温センサ6、エンジン2を潤滑する油の
油温を検出する油温センサ7、エンジン2の燃料噴射ポ
ンプの電気式ガバナのコントロールラック位置を電圧値
として検出する燃料ポンプラックセンサ8が設けられて
いる。なおエンジン2の異常を診断するに必要なセンサ
(排気温度センサ等)であれば、これ以外にも同様に設
けてもよい。
【0048】コントローラ3は、上記各センサ4〜8の
検出信号を所定のサンプリング間隔で入力して、後述す
る処理を行う。図1に示すコントローラ3の各機能部分
はソフトウエアにより構成してもよく、またハードウエ
アによって構成してもよい。
【0049】車両50の位置は、GPS(グローバル・
ポジショニング・システム)によって計測される。
【0050】すなわちGPS衛星41、42から送られ
た電波は、GPSアンテナ9で受信され、コントローラ
3の通信器10で受信処理される。GPSセンサ11で
は、GPS衛星41、42での送信時と受信時の時間差
に基づいてGPS衛星41、42と受信した車両50と
の疑似距離を求めこれに対して補正を加えることにより
真の距離が演算され、この真の距離から地球上における
車両50の2次元位置が検出される。なお本実施形態で
はGPSによって車両50の位置を検出しているが、車
両50の位置を検出する手段は任意である。たとえば車
両50に車輪の回転数を検出するセンサと、車両の方位
を検出するセンサを設け、これらセンサの出力から車両
50の位置を演算してもよい。また車両50が走行する
現場に、位置が既知の多数のポールを設置して、車両5
0がポールを通過したときのポールの位置を車両50の
現在位置として求めてもよい。
【0051】コントローラ3の後述する処理によって車
両50で異常があることが判断された場合には、警報装
置22に警報信号が出力される。警報装置22は、表示
器、ブザー、ランプなどである。警報装置22に警報信
号が加えられると、ブザーが鳴動し、またはランプが点
灯し、または表示器の表示画面に警報を示す表示がなさ
れる。これにより車両50のオペレータや、周囲の車
両、人間に注意を喚起させることができる。
【0052】コントローラ3で警報信号が生成される
と、通信器20で送信処理がなされた後にアンテナ21
を介して警報信号を示す電波が監視局30に向けて無線
送信される。監視局30のアンテナ31で、車両50か
ら送られた電波が受信され、通信器33で受信処理され
る。そして警報装置32に警報信号が入力されることに
よって警報装置22と同様にしてブザーが鳴動し、また
はランプが点灯し、または表示器の表示画面に警報を示
す表示がなされる。これにより監視局30における管理
者等に注意を喚起させることができる。なお車両50の
コントローラ3から無線通信回線にて監視局30に警報
信号を送るようにしているが、有線の通信回線にて監視
局30に警報信号を送るようにしてもよい。
【0053】本実施形態では図5に示すように、車両5
0が走行する走行路51上の各地点または各領域の中か
ら、車両50の稼働条件が特定の稼働条件となる特定地
点Qまたは特定領域Arが予め設定される。
【0054】ここで特定の稼働条件とは、たとえば車両
50のエンジン2のトルクカーブ上の定格点で稼働して
いるという定格稼働状態のことである。なお必ずしも定
格稼働状態でなくてもよく、定格稼働状態に近い稼働状
態であればよい。
【0055】特定領域Arは登坂路または平坦路であ
る。特定地点Q(X、Y)は登坂路または平坦路上の地
点である。登坂路ではエンジン2が定格稼働状態にな
る。またブローバイ圧が立ち上がりオーバーシュートす
る。登坂路または平坦路のいずれにおいてもエンジン2
の稼働状態が安定して一定の稼働条件になる。特定領域
Arの入口はQ1で出口はQ2である。
【0056】本実施形態では特定地点Qが予め設定され
た場合を想定している。
【0057】つぎに図2に示すフローチャートを併せ参
照しつつコントローラ3で行われる処理について説明す
る。
【0058】まずコントローラ3では、各センサ4〜8
の検出信号をコントローラ3に読み込むサンプリング間
隔が設定されるとともに、上記特定地点Qの位置(X、
Y)が設定される。データの設定はコントローラ3のデ
ータ設定部13で行われる。なおデータの設定はパーソ
ナルコンピュータをコントローラ3に接続してデータを
アップロードしコントローラ3の内部データを書き換え
ることにより行われる。また設定用スイッチをコントロ
ーラ3に設け設定用スイッチの操作により内部データを
書き換えるようにしてもよい。また特定地点Qの位置デ
ータとしては2次元座標位置の代わりに緯度、経度を用
いてもよい(ステップ101)。
【0059】エンジン2がエンジンキースイッチなどの
操作に応じて始動されると(ステップ102)、エンジ
ン2が回転しているか否かが判断される。この判断は回
転数センサ5で検出された回転数が所定のしきい値(0
回転よりも大きくアイドル回転数よりも小さい回転数)
に達したか否かを判断することにより行われる。なおオ
ルタネータなどの発電機の電圧値に基づいてエンジン2
が回転しているか否かを判断してもよい(ステップ10
3)。
【0060】エンジン2が回転していると判断されエン
ジン2が稼働中であると判断された場合には、各センサ
4〜8の検出信号が上記設定されたサンプリング間隔で
読み込まれる。センサ信号をコントローラ3に入力する
処理は、センサ信号入力部14で行われる(ステップ1
04)。
【0061】つぎにGPSセンサ11で検出された車両
50の現在位置が、特定地点Qの位置に一致したか否か
が判断される(ステップ105)。
【0062】GPSセンサ11で検出された車両50の
現在位置が、特定地点Qの位置に一致した場合には、ト
リガ信号が発生される。トリガ信号はコントローラ3の
トリガ信号発生部12で発生される(ステップ10
6)。
【0063】トリガ信号が発生すると、各センサ4〜8
の検出値が特定地点Qにおけるデータとしてメモリ16
に記憶される(ステップ107)。
【0064】つぎにコントローラ3の比較演算部17で
は、メモリ16に記憶された各センサ4〜8の検出値が
基準値以内であるか否かが判断される。基準値は基準値
設定部18で設定される。基準値は各センサ4〜8で検
出される稼働パラメータの値が異常な値であるか否かを
判断するためのしきい値である(ステップ108)。
【0065】この結果メモリ16に記憶された各センサ
4〜8の検出値が基準値より大きいと判断された場合に
は、警報信号が警報出力部19から出力される。これに
応じて車両50の警報装置22で警報を示す表示等がな
される。また監視局30の警報装置32で警報を示す表
示等がなされる(ステップ109)。
【0066】エンジン2が停止したか否かがステップ1
03と同様の検出手段を用いて判断される(ステップ1
10)。エンジン2が停止していない限りはステップ1
04に再び移行され、以下同様の処理が繰り返し実行さ
れる。
【0067】以上のように車両50が特定地点Qを通過
する毎に各センサ4〜8の検出値つまり稼働パラメータ
が取得される。
【0068】図7はエンジン回転数、ブローバイ圧、ガ
バナラック位置の検出信号が時間の経過に応じて変化す
る様子を示す。同図7において時刻ts1、ts2は車両5
0が特定地点Qを通過する時刻を示している。車両50
が特定地点Qを通過した時刻ts1、ts2では、S1、S2
に示すように同一の検出信号の波形が得られている。つ
まり車両50が特定地点Qを通過する毎に車両50の稼
働条件は同じ稼働条件となり、同じ稼働条件の下で稼働
パラメータが取得されていることがわかる。メモリ16
には、車両50が特定地点Qを通過したときの同一稼働
条件の下での稼働パラメータが記憶されている。よって
メモリ16の記憶データから、同じ稼働条件の下でのデ
ータの比較が可能となり、車両50(エンジン2)に生
じた異常あるいは将来生じるであろう異常を正確に診断
することができる。
【0069】なお本実施形態では、車両50が特定地点
Qを通過する毎に稼働パラメータを取得しているが、特
定領域Arを通過する毎に稼働パラメータを取得しても
よい。
【0070】本実施形態によれば、車両50の走行中に
特定の稼働条件下で稼働パラメータが取得されるので、
計測のために車両50を停止させる必要がない。このた
め作業は中断せず作業効率の低下は招来しない。また測
定器を取り付けたり、車両を一定の稼働条件となるよう
に操作したり、測定データを記録する作業を行う必要が
ないので、計測作業に熟練している人間(サービスマ
ン)は不要となる。このため人的なコストが上昇するこ
ともない。
【0071】また車両50の走行中に特定の稼働条件と
なる地点Qで稼働パラメータを取得することができるの
で、稼働パラメータをサチュレーションさせ安定した状
態で正確なデータを採取することができる。
【0072】以上のように本実施形態によれば、一定稼
働条件下での稼働パラメータの計測が人的コストの上昇
を招くことなく車両の作業効率の低下を招くことなく行
えるとともに、正確なデータが確実に取得される。
【0073】なお図2における処理では、稼働パラメー
タの値(各センサ4〜8の検出値)が基準値よりも大き
くなった場合に警報信号を出力しているが、前回の稼働
パラメータの値と今回のパラメータの値の変化率が基準
値よりも大きくなった場合に警報信号を出力させてもよ
い。この場合車両50が前回特定地点Qを通過したとき
の稼働パラメータの値と今回特定地点Qを通過したとき
の稼働パラメータの値との差Δdと、前回特定地点Qを
通過したときの時刻ts1と今回特定地点Qを通過したと
きの時刻ts2との差Δtsから変化率Δd/Δtsが演算
される。
【0074】つぎに車両50が特定地点Qを通過する毎
に取得される稼働パラメータに基づいて時系列データを
生成し、この時系列データから車両50に生じた異常を
診断する実施形態について説明する。この場合の処理手
順を図3にフローチャートとして示す。
【0075】なお本実施形態では稼働パラメータとして
ブローバイ圧センサ4で検出されるブローバイ圧Pを代
表させて説明する。
【0076】ブローバイ圧Pの大きさからエンジン2の
摩耗状態つまりエンジン2に加えられた被害量を定量的
に検出することができ、ブローバイ圧Pの大きさの違い
によってエンジン2の異常を診断することができる。図
10は、エンジン2の稼働時間の積算値(サービスメー
タ値:単位は時間H)が大きくなるに応じてブローバイ
圧Pが変化する様子を示している。
【0077】エンジン2が出荷されてから間もない稼働
時間積算値が小さいときには、エンジン2の摩耗量(ピ
ストンリング、シリンダライナ等の摩耗)は少なく、こ
れに応じてブローバイ圧p1は相対的に小さい。稼働時
間積算値が大きくなるに伴いエンジン2の内部での機械
的なすり合わせ状態が安定し、初期のブローバイ圧p1
と比較してブローバイ圧p2は小さくなる。しかし稼働
時間積算値がある限度を超えると、エンジン2にそれま
でに加えられた被害のために摩耗が急速に進行し、これ
に応じてブローバイ圧p3は上昇していく。よって初期
のブローバイ圧p1よりも大きなしきい値Pcを設定し
て、現在のブローバイ圧Pが上記しきい値Pcよりも大
きいか否かを判断することにより、エンジン2が使用限
度(オーバーホール時期)に達したか否かを判断するこ
とができる。
【0078】図3のステップ201〜207では図2の
ステップ101〜107と同様の処理が実行される。
【0079】以下の演算処理はコントローラ3の演算部
15で実行される。
【0080】図11は車両50が特定地点Qを通過する
時刻ts1、ts2、ts3、ts4、…tsnで逐次取得され、
メモリ16に逐次記憶されていくブローバイ圧Pのデー
タを示している。図11の横軸は時間tであり縦軸はブ
ローバイ圧Pの大きさを示している。車両50が特定地
点Qを時刻ts1で通過すると所定の稼働条件下でブロー
バイ圧Pが取得され、Δts時間経過した時刻ts2で同
一の稼働条件の下でブローバイ圧Pが取得される。
【0081】つぎのステップ208では、車両50が特
定地点Qを通過する毎に、メモリ16に記憶された各ブ
ローバイ圧Pの中から最大値Pmaxを選択する演算処理
が実行される(ステップ208)。エンジン2が停止し
ていない限りは同様の処理が繰り返し実行される(ステ
ップ213)。こうしてτ時間が経過したときの最大値
Pmaxがメモリ16に記憶される。τ時間はたとえば2
0時間である。20時間は車両50の1日の稼働時間に
相当する。つまりメモリ16にはτ時間内の各時刻ts
1、ts2、ts3、ts4、…tsn毎に取得される各ブロー
バイ圧Pの中での最大値Pmaxが記憶されることになる
(ステップ209:図11参照)。
【0082】τ時間が経過する毎に上述した処理が繰り
返し実行される。このためメモリ16には、τ時間毎に
ブローバイ圧最大値Pmaxが逐次記憶されていく。図1
2は、τ時間毎に取得されるブローバイ圧最大値Pmax
の時系列データDTを示している。図12の横軸は時間
tであり縦軸はブローバイ圧最大値Pmaxの大きさを示
している。
【0083】ステップ210では、ブローバイ圧最大値
Pmaxの変化率が演算される。
【0084】図13は図12と同様にブローバイ圧最大
値Pmaxの時系列データDTを示している。同図13に
示すように前回のブローバイ圧最大値と今回のブローバ
イ圧最大値との差Δdと、前回のブローバイ圧最大値が
取得された時刻と今回のブローバイ圧最大値が取得され
た時刻との差Δτ(時間τにほぼ一致する)からブロー
バイ圧最大値Pmaxの変化率Δd/Δτが演算される(ス
テップ210)。
【0085】つぎにコントローラ3の比較演算部17で
は、上記演算された変化率Δd/Δτが基準値以内であ
るか否かが判断される。基準値は基準値設定部18で設
定される。基準値は変化率Δd/Δτの値が異常な値で
あるか否かを判断するためのしきい値である(ステップ
211)。この結果変化率Δd/Δτが基準値より大き
いと判断された場合には、警報信号が警報出力部19か
ら出力される。これに応じて車両50の警報装置22で
警報を示す表示等がなされる。また監視局30の警報装
置32で警報を示す表示等がなされる(ステップ21
2)。
【0086】なお図3の処理ではブローバイ圧最大値P
maxの変化率Δd/Δτを演算し、この変化率Δd/Δτ
が基準値よりも大きくなったときに警報信号を出力して
いるが、かかる変化率の演算を省略してもよい。つまり
ブローバイ圧最大値Pmaxが基準値よりも大きくなった
ときに警報信号を出力してもよい。この場合には図3に
おけるステップ210の処理が省略され、つぎのような
処理がなされる。
【0087】すなわちコントローラ3の比較演算部17
では、τ時間毎に取得されるブローバイ圧最大値Pmax
が基準値以内であるか否かが逐次判断される。基準値は
基準値設定部18で設定される。基準値はブローバイ圧
最大値Pmaxの値が異常な値であるか否かを判断するた
めのしきい値である(ステップ211)。この結果ブロ
ーバイ圧最大値Pmaxが基準値より大きいと判断された
場合には、警報信号が警報出力部19から出力される。
これに応じて車両50の警報装置22で警報を示す表示
等がなされる。また監視局30の警報装置32で警報を
示す表示等がなされる(ステップ212)。
【0088】なお基準値として図12に示すように3段
階のしきい値Pc1、Pc2、Pc3(Pc1<Pc2<Pc3)を
設定してもよい。ブローバイ圧最大値Pmaxの値がしき
い値Pc1以下のレベルにある場合、またしきい値Pc1よ
りも大きくしきい値Pc2以下のレベルにある場合、Pc2
よりも大きくPc3以下のレベルにある場合、Pc3よりも
大きいレベルにある場合のそれぞれに応じて、警報信号
の内容を異ならせることができる。
【0089】また各レベルにエンジン2の異常度合いを
対応づけておくことができる。そして時系列データDT
と各レベルとを比較することで、エンジン2で発生した
異常または発生するであろう異常の診断を正確かつ効率
よく行うことができる。つまりエンジン2の故障の診
断、エンジン2の寿命の予測を的確になし得る。
【0090】なお上述した説明ではブローバイ圧の最大
値Pmaxの時系列データ、ないしはブローバイ圧最大値
Pmaxの変化率Δd/Δτの時系列データを求めて異常診
断を行い、警報信号を出力している。しかし稼働パラメ
ータの種類によっては、稼働パラメータの最小値の時系
列データ、ないしは稼働パラメータの最小値の変化率の
時系列データを求め、これらに基づき異常診断を行い、
警報信号を出力してもよい。また稼働パラメータの平均
値の時系列データ、ないしは稼働パラメータの平均値の
変化率の時系列データを求め、これらに基づき異常診断
を行い、警報信号を出力してもよい。
【0091】最小値の時系列データを求める場合には、
図3のステップ208、209において、τ時間内の各
時刻ts1、ts2、ts3、ts4、…tsnの稼働パラメータ
値の中で、最小値が求められ、メモリ16に記憶され
る。この処理がτ時間ごとに繰り返される。この結果図
12と同様にしてτ時間ごとに稼働パラメータ最小値を
プロットした時系列データDTが取得される。
【0092】平均値の時系列データを求める場合には、
図3のステップ208、209において、τ時間内の各
時刻ts1、ts2、ts3、ts4、…tsnの稼働パラメータ
値の平均値が求められ、メモリ16に記憶される。この
処理がτ時間ごとに繰り返される。この結果図12と同
様にしてτ時間ごとに稼働パラメータ平均値をプロット
した時系列データDTが取得される。
【0093】さて特定地点Qでエンジン2が定格稼働条
件になっている場合にはブローバイ圧センサ4で検出さ
れた値をそのまま定格稼働条件の下でのデータとして採
用することができる。しかし特定地点Qでエンジン2の
定格稼働条件が得られない場合には、センサ4の検出ブ
ローバイ圧を、次式(1)に示す補正演算処理により定
格稼働条件の下でのブローバイ圧に補正することができ
る。
【0094】 Pr=P+k1(Nr−N)+k2(Rr−R)+k3(Ter−Te)…(1) ただしPrは補正ブローバイ圧であり、Pはブローバイ
圧センサ4で検出されたブローバイ圧であり、Nrは定
格点での既知のエンジン回転数であり、Nはエンジン回
転数センサ5で検出されたエンジン回転数であり、Rr
は定格点での既知のラック電圧値であり、Rはラックセ
ンサ8で検出されたラック電圧値であり、Terは定格点
での既知の油温であり、Teは油温センサ7で検出され
た油温であり、k1、k2、k3は既知の定数である。
【0095】この補正演算処理はコントローラ3の演算
部15で実行される。
【0096】また上述した説明では、車両50が特定地
点Qを通過する毎に検出されるブローバイ圧Pを一律に
有効なデータとしてメモリ16に記憶させている。しか
し車両50が特定地点Qを通過したときに検出されたブ
ローバイ圧Pであっても油温センサ7で検出された油温
が規定の温度以上に達していない場合には有効ではない
として採用せず、油温センサ7で検出された油温が規定
の温度以上に達したときに検出されたブローバイ圧のみ
を有効なデータとしてメモリ16に記憶させてもよい。
【0097】つぎにブローバイ圧Pのオーバーシュート
量ΔPを取得し、取得されたブローバイ圧オーバーシュ
ート量ΔPの値に基づいてエンジン2の異常を診断する
実施形態について説明する。この場合の処理手順を図4
にフローチャートとして示す。
【0098】図8はオーバーシュートを説明する図であ
る。横軸は時間であり、縦軸はエンジン2のクランクケ
ース内圧、ブローバイ圧、エンジン回転数の大きさを示
している。エンジン2に負荷がかかり定格点ないしは定
格点に近い稼働条件になると、○印で示すようにブロー
バイ圧Pが立ち上がりブローバイ圧Pがオーバーシュー
トする。
【0099】そこで図5に示すように車両50が走行す
る走行路51上の各地点または各領域の中から、ブロー
バイ圧Pが立ち上がりブローバイ圧Pがオーバーシュー
トする特定地点Qが予め設定される。
【0100】ブローバイ圧オーバーシュート量ΔPの大
きさからエンジン2の摩耗状態つまりエンジン2に加え
られた被害量を定量的に検出することができ、ブローバ
イ圧オーバーシュート量ΔPの大きさの違いによってエ
ンジン2の異常を診断することができる。
【0101】図9(a)、(b)、(c)はブローバイ
圧オーバーシュート量ΔPとエンジン2の異常との関係
を説明する図である。図9の(a)、(b)、(c)
は、エンジン2の稼働時間の積算値(サービスメータ
値:単位は時間H)が大きくなるに応じてブローバイ圧
Pが変化する様子を示している。
【0102】エンジン2が出荷されてから間もない稼働
時間積算値が小さいときには、エンジン2の摩耗量(ピ
ストンリング、シリンダライナ等の摩耗)は少なく、こ
れに応じて図9(a)に示すようにブローバイ圧オーバ
ーシュート量ΔP1は相対的に小さい。稼働時間積算値
が大きくなるに伴いエンジン2の内部での機械的なすり
合わせ状態が安定し、図9(b)に示すように初期のブ
ローバイ圧オーバーシュート量ΔP1と比較してブロー
バイ圧オーバーシュート量ΔP2は小さくなる。しかし
稼働時間積算値がある限度を超えると、エンジン2にそ
れまでに加えられた被害のために摩耗が急速に進行し、
これに応じて図9(c)に示すようにブローバイ圧オー
バーシュート量ΔP3は上昇していく。よって初期のブ
ローバイ圧オーバーシュート量ΔP1よりも大きなしき
い値ΔPcを設定して、現在のブローバイ圧オーバーシ
ュート量ΔPが上記しきい値ΔPcよりも大きいか否か
を判断することにより、エンジン2が使用限度(オーバ
ーホール時期)に達したか否かを判断することができ
る。ブローバイ圧オーバーシュート量ΔPはブローバイ
圧Pと比較して、その変化がエンジン2の摩耗量の変化
に、より忠実に対応している。
【0103】図4のステップ301〜303では図2の
ステップ101〜103と同様の処理が実行される。
【0104】ステップ305では、車両50の現在位置
が特定地点Qに一致したか否かが判断される。この結果
車両50の現在位置が特定地点Qに一致した場合にはト
リガ信号が発生される(ステップ306)。トリガ信号
が発生してから所定時間センサ信号を読み込む処理が繰
り返し実行され(ステップ304、ステップ309)、
オーバーシュート量ΔPが演算される(ステップ31
2)。トリガ信号が発生してから上記所定時間の間にブ
ローバイ圧Pが立ち上がりオーバーシュートする。
【0105】また図5に示すように特定地点Qの代わり
に特定領域Arを設定してもよい。
【0106】この場合には、ステップ305で、車両5
0の現在位置が特定領域Arの入口点Q1から出口点Q2
までの間であるか否かが判断される。この結果車両50
の現在位置が特定領域Arの入口点Q1から出口点Q2ま
での間であると判断されている限りは、センサ信号を読
み込む処理が繰り返し実行され(ステップ304、ステ
ップ309)、オーバーシュート量ΔPが演算される
(ステップ312)。車両50が特定領域Arを通過中
にブローバイ圧Pが立ち上がりオーバーシュートする。
【0107】以下オーバーシュート量ΔPを演算する処
理について説明する。この演算処理はコントローラ3の
演算部15で実行される。
【0108】すなわち前回n−1のサンプリング時に検
出されたブローバイ圧Pn-1と今回nのサンプリング時
に検出されたブローバイ圧Pnとが比較され、Pn-1≦P
nであるか否かが判断される。つまりブローバイ圧Pが
立ち上がり上昇中であるか否かが判断される(ステップ
307)。ブローバイ圧が立ち上がりきって最高圧に達
すると(ステップ307の判断NO)、前回n−1のサ
ンプリング時に検出されたブローバイ圧Pn-1が最高圧
であるとメモリ16に記憶される(ステップ308)。
【0109】つぎに前回n−1のサンプリング時に検出
されたブローバイ圧Pn-1と今回nのサンプリング時に
検出されたブローバイ圧Pnとが比較され、Pn-1≧Pn
であるか否かが判断される。つまりブローバイ圧Pが最
高圧から下降中であるか否かが判断される(ステップ3
10)。ブローバイ圧が下降しきって最低圧に達すると
(ステップ310の判断NO)、前回n−1のサンプリ
ング時に検出されたブローバイ圧Pn-1が最低圧である
とメモリ16に記憶される(ステップ311)。
【0110】そしてステップ308で得られた最高圧と
ステップ311で得られた最低圧との差がオーバーシュ
ート量ΔPとして演算される。たとえば図9(c)に示
すように最高圧P3と最低圧p3との差がオーバーシュー
ト量ΔP3とされる(ステップ312)。つぎにコント
ローラ3の比較演算部17では、オーバーシュート量Δ
Pが基準値ΔPc以内であるか否かが判断される。基準
値は基準値設定部18で設定される(ステップ31
3)。
【0111】この結果オーバーシュート量ΔPが基準値
ΔPcより大きいと判断された場合には、警報信号が警
報出力部19から出力される。これに応じて車両50の
警報装置22で警報を示す表示等がなされる。また監視
局30の警報装置32で警報を示す表示等がなされる
(ステップ314)。
【0112】演算されたブローバイ圧オーバーシュート
量ΔPは特定地点Qまたは特定領域Arを通過する毎に
メモリ16に記憶される(ステップ315)。エンジン
2が停止していない限りはステップ304に再び移行さ
れ、以下同様の処理が繰り返し実行される。
【0113】この結果図11に示すように車両50が特
定地点Qを通過する時刻ts1、ts2、ts3、ts4、…t
snで逐次ブローバイ圧オーバーシュート量ΔPが取得さ
れ、メモリ16に逐次記憶されていく。
【0114】よって前述したブローバイ圧Pと同様にし
て、図12、図13に示すようにブローバイ圧オーバー
シュート量ΔPの最大値、平均値、変化率の時系列デー
タDTが取得される。
【0115】このためブローバイ圧オーバーシュート量
の最大値ΔPmaxの時系列データ、ないしはブローバイ
圧オーバーシュート量最大値ΔPmaxの変化率の時系列
データに基づき異常診断を行うことができる。
【0116】またブローバイ圧オーバーシュート量の平
均値の時系列データ、ないしはブローバイ圧オーバーシ
ュート量の平均値の変化率の時系列データに基づき異常
診断を行うことができる。
【0117】なお以上説明した実施形態では、車両50
が特定地点Qまたは特定領域Arに達する時点でリアル
タイムに稼働パラメータが取得される。しかし本発明と
しては、リアルタイムに稼働パラメータを取得する実施
に限定されるわけではない。車両50の走行中に稼働パ
ラメータをサンプリング間隔毎にすべて採取しておき、
採取したサンプリング間隔毎の稼働パラメータの中から
特定地点Qまたは特定領域Arに対応するサンプリング
時の稼働パラメータを後から抜き出すことにより稼働パ
ラメータを取得する実施も可能である。
【0118】また以上説明した実施形態では、警報信号
を車両50の外部の監視局30(ないしは事務所30)
に送信しているが、時系列データを監視局30(ないし
は事務所30)に送信する実施も可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係る車両の異常診断装置の実施
形態のブロック図である。
【図2】図2はコントローラで行われる処理の手順を示
すフローチャートである。
【図3】図3はコントローラで行われる処理の手順を示
すフローチャートである。
【図4】図4はコントローラで行われる処理の手順を示
すフローチャートである。
【図5】図5は実施形態の車両が走行路上を走行してい
る状態を示す図である。
【図6】図6は従来技術を用いたときの各稼働パラメー
タの波形を示す図である。
【図7】図7は実施形態の技術を用いたときの各稼働パ
ラメータの波形を示す図である。
【図8】図8はブローバイ圧がオーバーシュートする様
子を示す図である。
【図9】図9(a)、(b)、(c)はブローバイ圧の
オーバーシュート量が稼働時間積算値の増加に応じて変
化する様子を説明する図である。
【図10】図10はブローバイ圧が稼働時間積算値の増
加に応じて変化する様子を説明する図である。
【図11】図11は特定地点毎に取得される稼働パラメ
ータを示す図である。
【図12】図12は稼働パラメータの最大値の時系列デ
ータを示す図である。
【図13】図13は時系列データの変化率を説明する図
である。
【符号の説明】
2 エンジン 3 コントローラ 50 車両
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 橋本 晴夫 神奈川県川崎市川崎区中瀬3−20−1 株 式会社小松製作所建機研究所内 (72)発明者 佐藤 文秀 栃木県小山市横倉新田400 株式会社小松 製作所小山工場内 Fターム(参考) 2D015 GA03 GB04 3G084 AA07 CA00 DA03 DA13 DA27 EA05 EA11 EB22 EC01 FA00 FA04 FA13 FA20 FA33 FA36 5H223 AA10 AA15 CC08 DD03 EE06 9A001 HH34 KK29 KK54 LL05

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の稼働中に値が変化する稼働パ
    ラメータを、前記車両の特定の稼働条件下で取得し、該
    取得された稼働パラメータの値に基づいて車両の異常を
    診断する車両の異常診断装置において、 前記車両が走行する走行路上の各地点または各領域の中
    から、前記車両の稼働条件が前記特定の稼働条件となる
    特定地点または特定領域を予め設定し、 前記車両が前記特定地点または特定領域を通過した時点
    の稼働パラメータを取得し、該取得された稼働パラメー
    タの値に基づいて車両の異常を診断することを特徴とす
    る車両の異常診断装置。
  2. 【請求項2】 車両の稼働中に値が変化する稼働パラ
    メータを、前記車両の特定の稼働条件下で取得し、該取
    得された稼働パラメータの値に基づいて車両の異常を診
    断する車両の異常診断装置において、 前記車両が走行する走行路上の各地点または各領域の中
    から、前記車両の稼働条件が前記特定の稼働条件となる
    特定地点または特定領域を予め設定する設定手段と、 前記車両が前記走行路上を走行しているときに前記車両
    の位置を検出する位置検出手段と、 前記位置検出手段で検出された位置が前記特定地点また
    は特定領域に対応する位置になったときにトリガ信号を
    発生するトリガ信号発生手段と、 前記トリガ信号が発生されたことに応じて稼働パラメー
    タを取得する稼働パラメータ取得手段と、 該取得された稼働パラメータの値に基づいて車両の異常
    を診断する異常診断手段とを具えたことを特徴とする車
    両の異常診断装置。
  3. 【請求項3】 前記稼働パラメータを、取得された時
    刻に対応づけて逐次記憶し、記憶された逐次の稼働パラ
    メータの時系列データに基づいて車両の異常を診断する
    ことを特徴とする請求項1または2記載の車両の異常診
    断装置。
  4. 【請求項4】 車両のエンジンの稼働中に値が変化す
    るブローバイ圧に関するデータを、前記車両の特定の稼
    働条件下で取得し、該取得されたブローバイ圧に関する
    データの値に基づいて車両の異常を診断する車両の異常
    診断装置において、 前記車両が走行する走行路上の各地点または各領域の中
    から、ブローバイ圧が立ち上がりブローバイ圧がオーバ
    ーシュートする特定地点または特定領域を予め設定し、 前記車両が前記特定地点または特定領域を通過した時点
    のブローバイ圧のオーバーシュート量を取得し、該取得
    されたブローバイ圧オーバーシュート量の値に基づいて
    車両の異常を診断することを特徴とする車両の異常診断
    装置。
  5. 【請求項5】 車両のエンジンの稼働中に値が変化す
    るブローバイ圧に関するデータを取得し、該取得された
    ブローバイ圧に関するデータの値に基づいて車両の異常
    を診断する車両の異常診断装置において、 ブローバイ圧が立ち上がりブローバイ圧がオーバーシュ
    ートするときのオーバーシュート量を計測するブローバ
    イ圧オーバーシュート量計測手段と、 該計測されたブローバイ圧オーバーシュート量の値に基
    づいて車両の異常を診断する異常診断手段とを具えたこ
    とを特徴とする車両の異常診断装置。
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