JP2000304603A - 赤外線検出器 - Google Patents

赤外線検出器

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JP2000304603A
JP2000304603A JP11112763A JP11276399A JP2000304603A JP 2000304603 A JP2000304603 A JP 2000304603A JP 11112763 A JP11112763 A JP 11112763A JP 11276399 A JP11276399 A JP 11276399A JP 2000304603 A JP2000304603 A JP 2000304603A
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infrared
film
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Yukihiko Shirakawa
幸彦 白川
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TDK Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、製造工程の単純化や低コスト化、
製造時間の短縮や高歩留まり化が可能な赤外線検出器を
提供する。 【解決手段】 基板1上には、赤外線反射膜2と赤外線
吸収効果を有する絶縁性支持構造体層3とが積層され、
また感熱抵抗体膜5および電極4が形成される。さら
に、絶縁性支持構造体層9は基板1の全面に形成され
る。絶縁性支持構造体層3、9には開口部6が形成さ
れ、開口部6からの異方性エッチングによって空洞部8
が形成される。絶縁性支持構造体層3、9は、成膜中の
基板温度を室温以上400゜C以下に保持し、アルゴン
と窒素の混合ガス中で0.7Pa以上1Pa以下の圧力
でシリコンターゲットを反応性スパッタリングすること
によって形成されるアモルファス窒化シリコン膜であ
り、その合計膜厚は1μm以上4μm以下である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、感熱抵抗素子を用
いた熱型赤外線検出器に関する。
【0002】
【従来の技術】入射した赤外線を熱に変換し、その熱を
検出することによって間接的に赤外線を検知する熱型の
赤外線検出器として焦電センサ、サーモパイル、感熱抵
抗型ボロメータなどが知られているが、電磁波である赤
外線を量子効果により直接的に検出する半導体赤外線検
出器と比較して冷却処理が不要であることから、低コス
トな検出器として広く用いられている。
【0003】このような赤外線検出器の中で、感熱抵抗
素子を用いたボロメータ、特にサーミスタを用いたサー
ミスタボロメータは、他の熱型の赤外線検出器と比較し
て、直流出力が可能であるために機械的なチョッパが不
要であり、かつ高感度であるため、非接触の温度計測な
どに適した検出器である。
【0004】このようなボロメータは、例えば特開平7
−318420号公報や特開平8−97444号公報に
開示されている。すなわち、このボロメータにおいて
は、シリコンなどの基板上に絶縁薄膜からなる構造体層
を形成し、その構造体層上に薄膜サーミスタなどからな
る感温抵抗体膜と取り出し電極を形成し、さらに赤外線
吸収膜を形成して赤外線検出素子を構成している、な
お、このボロメータは、赤外線検出素子が形成されてい
る基板の一部をエッチングなどで除去して空洞部を形成
することにより熱分離構造としたいわゆるマイクロエア
ブリッジ構造を有している。
【0005】このマイクロエアブリッジ構造により、赤
外線検出素子は外部から入射した赤外線に応じてより敏
感に温度上昇するが、この温度上昇を赤外線検出素子を
構成する感温抵抗体膜の抵抗変化などを読み出すことで
検出し、これにより赤外線を検知する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
従来のボロメータにおいては以下に示すような問題があ
る。
【0007】まず、第一に、従来の赤外線検出器はマイ
クロエアブリッジ構造を形成するため、赤外線検出素子
を構成する薄膜の内部応力などにより赤外線検出素子に
歪みや破壊が生じる。
【0008】例えば特開平8−97444号公報では、
このような歪みや破壊が生じることを避けるために、基
板に形成する空洞部の形状を鋭角のない構造にするなど
の対策が施された赤外線検出器が開示されている。
【0009】しかしながら、このような構造を実現する
ためには、基板に空洞部を形成する時のエッチング条件
を厳密に制御し、また、膜厚が厚い酸化シリコンまたは
多結晶シリコンの形状形成用犠牲層を新たに設ける必要
があるが、これにより赤外線検出素子の作製工程が複雑
化し、赤外線検出器の歩留まりの低下や高コスト化を招
いていた。
【0010】第二に、従来の赤外線検出器においては、
赤外線検出素子の赤外線吸収率が悪く、入射した赤外線
に対する感度が不十分であるため、赤外線吸収層、基板
反射板、赤外線反射膜などを別途形成する必要があっ
た。
【0011】例えば特開平8−97444号公報には、
窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜からなる熱絶
縁膜上に感熱抵抗体素子である薄膜抵抗体を一対の電極
で挟んで形成し、この薄膜抵抗体上に酸化シリコン膜ま
たは窒化シリコン膜の赤外線吸収膜を堆積し、この赤外
線吸収膜を薄膜抵抗体と略同一形状にパターニングした
赤外線検出器が開示されている。
【0012】また、特開平7−318420号公報に
は、絶縁薄膜上に感熱抵抗体素子である感温薄膜を形成
し、この感温薄膜上に絶縁薄膜をさらに形成することに
よって構成される赤外線検出素子の表裏両面に金黒など
の赤外線吸収薄膜を形成し、この赤外線吸収薄膜を感温
薄膜と略同一形状にパターニングし、さらに基板裏面に
赤外線反射板を取り付けた赤外線検出器が開示されてい
る。
【0013】このように、従来の赤外線検出器では、赤
外線検出素子の赤外線吸収効率の不足を補うために赤外
線吸収膜を別途成膜してパターニングするなどの煩雑な
工程が必要であり、赤外線検出器の歩留まりの低下や高
コスト化を招いていた。
【0014】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので
あり、本発明の目的は、製造工程の単純化や低コスト
化、製造時間の短縮や高歩留まり化が可能な赤外線検出
器を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1に記載の発明は、赤外線吸収効果を有する
支持構造体層によって構成される赤外線検出素子と、こ
の赤外線検出素子が形成される基板とを備えた熱分離構
造の赤外線検出器において、前記赤外線検出素子の赤外
線の入射面とは反対側の面に赤外線反射膜が形成され、
前記支持構造体層は、反応性スパッタリング法によって
形成された少なくとも1層の窒化シリコン膜を含み、前
記窒化シリコン膜の厚さが合計1μm以上4μm以下で
あることを特徴とする。
【0016】上記課題を解決するために、請求項2に記
載の発明は、赤外線吸収効果を有する支持構造体層によ
って構成される赤外線検出素子と、この赤外線検出素子
が形成される基板とを備えた熱分離構造の赤外線検出器
において、前記赤外線検出素子の赤外線入射面とは反対
側の面に赤外線反射膜が形成され、前記支持構造体層
は、成膜中の基板温度を400゜C以下に保持し、0.
7Pa以上1Pa以下の圧力、アルゴンと窒素の混合ガ
ス中でシリコンターゲットをスパッタリングする反応性
スパッタリング法によって形成された少なくとも1層の
窒化シリコン膜を含み、前記窒化シリコン膜の厚さが合
計1μm以上4μm以下であることを特徴とする。
【0017】上記課題を解決するために、請求項3に記
載の発明は、赤外線吸収効果を有する支持構造体層によ
って構成される赤外線検出素子と、この赤外線検出素子
が形成される基板とを備えた熱分離構造の赤外線検出器
において、前記赤外線検出素子の赤外線入射面とは反対
側の面に赤外線反射膜が形成され、前記赤外線反射膜
は、前記支持構造体層と同一形状にパターニングされる
ことを特徴とする。
【0018】上記課題を解決するために、請求項4に記
載の発明は、赤外線吸収効果を有する支持構造体層によ
って構成される赤外線検出素子と、この赤外線検出素子
が形成される基板とを備えた熱分離構造の赤外線検出器
において、前記赤外線検出素子の赤外線入射面とは反対
側の面に前記支持構造体層と同一形状にパターニングさ
れている赤外線反射膜が形成され、前記支持構造体層
は、反応性スパッタリング法によって形成された少なく
とも1層の窒化シリコン膜を含み、前記窒化シリコン膜
の厚さが合計1μm以上4μm以下であることを特徴と
する。
【0019】上記課題を解決するために、請求項5に記
載の発明は、赤外線吸収効果を有する支持構造体層によ
って構成される赤外線検出素子と、この赤外線検出素子
が形成される基板とを備えた熱分離構造の赤外線検出器
において、前記赤外線検出素子の赤外線入射面とは反対
側の面に前記支持構造体層と同一形状にパターニングさ
れている赤外線反射膜が形成され、前記支持構造体層
は、成膜中の基板温度を400゜C以下に保持し、0.
7Pa以上1Pa以下の圧力、アルゴンと窒素の混合ガ
ス中でシリコンターゲットをスパッタリングする反応性
スパッタリング法によって形成された少なくとも1層の
窒化シリコン膜を含み、前記窒化シリコン膜の厚さが合
計1μm以上4μm以下であることを特徴とする。
【0020】上記請求項1から5のいずれかに記載の発
明の赤外線検出器において、請求項6に記載の発明は、
前記赤外線反射膜は、クロム、タングステン、モリブデ
ン、ニオブ、またはタンタルのいずれかから選ばれる金
属またはその合金膜から構成され、その膜厚は5nm以
上50nm以下であることを特徴とする。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。
【0022】(実施の形態1)図1は本発明の第1の実
施の形態の赤外線検出器の構成を示す図であり、図1
(a)はその平面図、図1(b)は図1(a)の線AA
´に沿った断面図を示している。
【0023】図1に示す本発明の第1の実施の形態の赤
外線検出器において、シリコン単結晶などからなる基板
1上に、所定の形状にパターニングされた赤外線反射膜
2と、赤外線吸収効果を有する第1の絶縁性支持構造体
層3とが積層される。
【0024】なお、赤外線反射膜2は、赤外線を反射す
る金属で構成すればよく、基板1に空洞部8を形成する
時に用いられるエッチング液に対して耐エッチング性を
有することが望ましい。このような赤外線反射膜2とし
ては、例えばクロム、タングステン、モリブデン、チタ
ンや、金、白金などの貴金属が用いられる。また、赤外
線反射膜2の膜厚は、赤外線反射効率が十分得られるよ
うな膜厚であればよく、10nm以上100nm以下で
あることが望ましい。
【0025】絶縁性支持構造体層3上には所定の形状に
パターニングされた感熱抵抗体膜5と、感熱抵抗体膜5
の抵抗値を読み出すための電極4とが形成され、電極4
は図示しない外部読み出し端子に接続される。なお、電
極4としては熱伝導率の低い金属を用いることが望まし
く、例えばチタン、クロム、ニッケル、ニオブ、タンタ
ルなどの金属やその合金が用いられる。
【0026】さらに、第2の絶縁性支持構造体層9が基
板1の全面に形成される。
【0027】絶縁性支持構造体層3、9には、基板1の
表面側からRIE(リアクティブイオンエッチング)法
などによるエッチングによって同一パターンで一括して
開口部6が形成され、これにより赤外線検出素子7を構
成する。
【0028】基板1には開口部6から異方性エッチング
などを行うことによって空洞部8が形成され、これによ
り赤外線検出素子7はマイクロエアブリッジ構造とな
る。
【0029】絶縁性支持構造体層3、9としては、十分
な赤外線吸収特性を有し、かつ空洞部8を形成する時の
エッチング液に対して耐エッチング性を有し、さらに熱
伝導率が低く、内部応力が小さいことが必要である。
【0030】このような特性を有する膜は、本発明者の
研究によれば、成膜中の基板温度を室温以上400゜C
以下に保持し、アルゴンと窒素の混合ガス中で0.7P
a以上1Pa以下の圧力でシリコンターゲットを反応性
スパッタリングすることによって形成される窒化シリコ
ン膜によって達成される。なお、この混合ガス中の窒素
の含有率は、5%以上90%以下の範囲内、好ましくは
5%以上50%以下の範囲内である。
【0031】上記の成膜条件下で反応性スパッタリング
法によって得られた窒化シリコン膜は、減圧CVD(C
hemical Vapor Deposition)
法によって形成される化学式Si3N4で表される窒化
シリコン膜とは異なり、SiNx組成で示される非化学
量論的組成のアモルファス窒化シリコン膜である。ま
た、このようなSiNx組成の窒化シリコン膜は、Si
3N4組成の窒化シリコン膜がSiO2膜よりも10倍
の熱伝導率を有し、かつ高温で形成されるために強い圧
縮応力を有するのに対して、低応力であり、かつ熱伝導
率が低い。
【0032】また、このSiNx組成の窒化シリコン膜
は、プラズマCVD法によって比較的低温である300
゜C程度で形成されるアモルファス水素化窒化シリコン
膜(化学式SiNx:Hで示される)と比較して化学的
耐性がはるかに強い。すなわち、プラズマCVD法で形
成される窒化シリコン膜のエッチング液に対する耐エッ
チング性は一般にSiO2膜と同程度しか得られない。
【0033】図2は本発明の第1の実施の形態の赤外線
検出器の製造において反応性スパッタリング法を用いて
形成した窒化シリコン膜の膜内部応力(GPa)とその
成膜時のガス圧力(Pa)との関係を示す図である。ま
た、図3は本発明の第1の実施の形態の赤外線検出器の
製造において反応性スパッタリング法を用いて形成した
窒化シリコン膜の成膜時のガス圧力(Pa)と各ガス圧
力(Pa)で成膜した窒化シリコン膜の濃フッ酸に対す
るエッチング速度(μm/mim)との関係を示す図で
ある。なお、図3においては、各ガス圧力で成膜した熱
酸化膜(ここでは、SiO2膜)の濃フッ酸に対するエ
ッチング速度(μm/mim)も示している。
【0034】ここで、窒化シリコン膜のエッチング速度
に関しては、本来、基板に空洞部を形成する時に用いる
エッチング液である水酸化カリウム(KOH)やフッ硝
酸に対するエッチング速度と比較することが望ましい。
しかし、本発明の第1の実施の形態において用いた窒化
シリコン膜はこれらのエッチング液に対して耐エッチン
グ性が強いので、正確なエッチング速度を測定すること
が困難である。そのため、これらのエッチング液よりも
はるかに腐食性(エッチング性)の強い濃フッ酸を用
い、この濃フッ酸に対するエッチング速度で代用して比
較を行っている。
【0035】SiO2膜を例にとれば、KOHやフッ硝
酸によるエッチング速度は濃フッ酸によるエッチング速
度の約1/1000であり、窒化シリコン膜に関しては
これらのエッチング速度の差がさらに大きくなる。従っ
て、窒化シリコン膜が濃フッ酸に対して高い耐エッチン
グ性を有していれば、KOHやフッ硝酸のようなエッチ
ング液に対する窒化シリコン膜の耐エッチング性は十分
に保証されることになる。
【0036】図2および図3から明らかなように、反応
性スパッタリング法によって形成された窒化シリコン膜
では、その成膜時のガス圧力が0.7Pa以上1.0P
a以下である場合にその内部応力が小さくなり、かつそ
のエッチング速度もSiO2膜のエッチング速度の1/
6以下と低くなっている。
【0037】なお、窒化シリコン膜を反応性スパッタリ
ング法で形成する際の基板温度が室温以上であれば、上
述した特性が得られる。しかし、基板温度が400゜C
よりも高くなると、窒化シリコン膜において圧縮性の熱
応力が強くなるので好ましくない。
【0038】また、上述した窒化シリコン膜によってそ
れぞれ構成される絶縁性支持構造体層3と9の合計膜厚
は1μm以上であることが望ましいが、より好ましくは
1μm以上4μm以下である。
【0039】絶縁性支持構造体層3と9の合計膜厚が1
μmより小さい場合には赤外線吸収率が不足するので、
赤外線検出器として十分な感度を得ることができない。
逆に、その合計膜厚が4μmより大きい場合には赤外線
吸収率は一定値となるので、赤外線検出器の感度の向上
に寄与しないばかりか、赤外線検出素子と基板を接続す
る絶縁性支持構造体層3、9の熱抵抗が不必要に低下し
て赤外線の検出感度に悪影響を及ぼし、また絶縁性支持
構造体層3、9の内部応力の積算値が過大となって赤外
線検出素子に歪みや破壊が起こりやすくなる。
【0040】本発明の第1の実施の形態の赤外線検出器
は、従来の赤外線検出器と比較して赤外線吸収特性を有
する絶縁性支持構造体層によって赤外線検出素子が構成
される。従って、赤外線吸収のみを目的とした赤外線吸
収層が不要であるので、赤外線吸収層の形成およびパタ
ーニング工程を省略し、赤外線検出器の製造工程の単純
化や低コスト化を図ることができる。
【0041】また、絶縁性支持構造体層としては、赤外
線吸収特性を有し、かつ基板に空洞部を形成する場合に
用いられるエッチング液に対して耐エッチング性を有
し、さらに熱伝導率が低く、内部応力が小さい反応性ス
パッタリング法によって形成された窒化シリコン膜を用
いている。そのため、作製時の赤外線検出素子における
歪みや破壊を避けることが可能であり、赤外線検出器の
製造時間の短縮や高歩留まり化を図ることができる。
【0042】さらに、絶縁性支持構造体層に入射した赤
外線のうち絶縁性支持構造体層で吸収されずに透過した
赤外線は赤外線反射膜で反射され、絶縁性支持構造体層
で再度吸収されるので、赤外線吸収効率が良好になる。
このため、従来の赤外線検出器において必要としていた
赤外線吸収膜や基板の裏面に取り付けられていた赤外線
反射板が不要になる。
【0043】(実施の形態2)図4は本発明の第2の実
施の形態の赤外線検出器の構成を示す図であり、図4
(a)はその平面図、図4(b)は図4(a)の線BB
´に沿った断面図を示している。
【0044】図4に示すような本発明の第2の実施の形
態の赤外線検出器は以下のようにして製造される。すな
わち、まず、(100)面方位のシリコン単結晶などか
らなる基板41を1100゜Cの拡散炉中に設置し、ウ
ェット酸化法によって膜厚600nmの熱酸化膜42を
基板41の全面に形成して基板保護層とする。
【0045】次に、スパッタリング法により基板41の
表面に膜厚50nmのクロム薄膜を形成した後、フォト
エッチング法によりこのクロム薄膜を300μm角の形
状にパターニングして赤外線反射膜43とする。
【0046】また、反応性スパッタリング法を用い、シ
リコンターゲットをアルゴンと窒素の混合ガス中、圧力
0.8Paでスパッタリングすることにより、窒化シリ
コン膜44を基板41の全面に形成して第1の絶縁性支
持構造体層とする。
【0047】さらに、スパッタリング法によって第1の
絶縁性支持構造体層である窒化シリコン膜44上に膜厚
100nmの炭化珪素膜を形成し、さらにフォトエッチ
ング法によりこの炭素珪素膜を200μm角の形状にパ
ターニングして感熱抵抗体膜46を構成する。なお、こ
の炭化珪素膜のエッチング方法としては、SF6などの
フッ化物系ガスを用いたRIE法を用いている。
【0048】その後、スパッタリング法により膜厚10
0nmのクロム薄膜を形成し、さらに、フォトエッチン
グ法によりこのクロム薄膜を所定の形状にパターニング
して電極膜45を構成する。
【0049】また、窒化シリコン膜44と同様の条件
で、第2の絶縁性支持構造体層として窒化シリコン膜4
7を基板41の全面に形成する。
【0050】次に、フォトエッチング法により基板41
に対して開口部48を形成する。開口部48は、フォト
リソグラフィにより開口部48以外の部分をフォトレジ
ストで保護した後、SF6などのフッ化物系ガスを用い
たRIE法により窒化シリコン膜47、44と熱酸化膜
42を一括してエッチングして形成する。
【0051】開口部48は、赤外線検出素子50が約3
20μm角でその対角位置の角部からコ字状で基板41
に対し支持部が設けられるように形成する。なお、角形
の赤外線検出素子50の方向が基板41の(100)面
方位と一致するように開口部48を形成すれば、次に行
う異方性エッチング時において空洞部49が赤外線検出
素子50の全面を囲むように形成されることになる。
【0052】開口部48を形成した後、基板41を70
゜CのKOHの異方性エッチング液中に浸して約4時間
の異方性エッチングを行うことによって空洞部49が形
成され、これによりマイクロエアブリッジ構造の赤外線
検出素子50を構成する。なお、この時の異方性エッチ
ングによって、基板保護層である熱酸化膜42は、約5
00nm程度エッチングされ、赤外線検出素子50の熱
酸化膜42cの膜厚は約100nmであった。
【0053】最後に、バッファードフッ酸を用いたエッ
チングにより赤外線検出素子50の熱酸化膜42cを完
全に除去する。
【0054】以上の製造工程を用いて、第1および第2
の絶縁性支持構造体層の合計膜厚が異なる複数の赤外線
検出器を製造し、その赤外線検出特性を評価した。さら
に、比較のために、赤外線反射膜が形成されていない赤
外線検出素子によって構成される赤外線検出器を同様に
製造し、同じくその赤外線検出特性を評価した。
【0055】また、本発明の第2の実施の形態の製造方
法で形成した窒化シリコン膜の熱伝導性と赤外線吸収特
性を他の材料と比較するために、第1の絶縁性支持構造
体層として上記窒化シリコン膜(膜厚1μm)を用い、
第2の絶縁性支持構造体層としてスパッタリング法で形
成したSiO2膜(膜厚3.0μm)を用いた赤外線検
出素子によって構成される赤外線検出器を製造し、その
赤外線検出特性を評価した。
【0056】なお、上記赤外線検出器においては、空洞
部48の形成時の異方性エッチングとその後のバッファ
ードフッ酸による赤外線検出素子の熱酸化膜のエッチン
グによって、第2の絶縁性支持構造体層であるSiO2
膜がその表面からエッチングされ、空洞部48の形成時
にはその膜厚が2.0μmとなり、第1の絶縁性支持構
造体層と合わせて計3μmの膜厚となっている。
【0057】赤外線検出特性の評価方法は、ホイートス
トン抵抗ブリッジの1つの素子として上記のように製造
した赤外線検出器を組み込み、10Vの電圧を印加した
状態で黒体板に対向配置して黒体板の温度を25゜Cか
ら100゜Cに変化させた時のブリッジ出力の差を読み
取ることにより行う。
【0058】図5はその赤外線検出特性の評価結果を示
している。図5から、赤外線反射膜が有る(形成されて
いる)赤外線検出器は赤外線反射膜が無い(形成されて
いない)赤外線検出器と比較して、ブリッジ出力が大幅
に増大しており、赤外線反射膜の存在による赤外線検出
器の感度の向上が図られていることは明らかである。
【0059】窒化シリコン膜の合計膜厚が4μmよりも
厚くなると、赤外線反射膜を形成した赤外線検出器のブ
リッジ出力は増大しなくなり、窒化シリコン膜の膜厚を
厚くすることによる効果がなくなってしまう。また、4
μmよりも厚い合計膜厚では、窒化シリコン膜中に蓄積
された内部応力が大きくなるので、赤外線検出素子に生
じる歪みが大きくなり、また空洞部の形成のための異方
性エッチング時に赤外線検出素子が破壊しやすくなる。
【0060】逆に、窒化シリコン膜の合計膜厚が1μm
より薄い場合、赤外線反射膜の存在による赤外線検出器
の感度の増大の効果は明らかであるが、ブリッジ出力の
絶対値自体は小さいので、実用性に乏しい。また、薄い
膜厚の窒化シリコン膜で構成された絶縁性構造体層では
機械的強度が弱くなり、空洞部の形成のための異方性エ
ッチング時において赤外線検出素子は破壊しやすくなる
ため、合計膜厚が1μmより薄い窒化シリコン膜は適当
ではない。
【0061】また、比較のために形成した絶縁性支持構
造体層としてのSiO2膜(膜厚2μm)と窒化シリコ
ン膜(膜厚1μm)を積層した赤外線検出器では、窒化
シリコン膜(膜厚3μm)が形成されている赤外線検出
器とほぼ同程度のブリッジ出力が得られている。また、
本発明の実施の形態の赤外線検出器において用いた窒化
シリコン膜がCVD法などで形成されたSi3N4膜で
ある場合と比較して、熱伝導率がSiO2膜と同程度に
低く、また赤外線吸収特性がSiO2膜と同程度である
ことがわかる。なお、上記SiO2と窒化シリコンの積
層膜を用いた赤外線検出器では、SiO2膜の異方性エ
ッチング時におけるエッチング液に対する耐エッチング
性が弱いため、SiO2膜の膜厚管理が難しく、エッチ
ング時において赤外線検出素子に破損や歪みが生じやす
く、製造が困難である。
【0062】なお、本発明の第2の実施の形態の赤外線
検出器において用いた基板保護層である熱酸化膜は高温
で形成されるために通常強い圧縮応力を有しているが、
この圧縮応力が赤外線検出素子の歪みや破壊の原因にな
る。そのため、この熱酸化膜は異方性エッチング時にお
いて基板の保護ができるだけの膜厚であればよい。
【0063】すなわち、この熱酸化膜は異方性エッチン
グ中にエッチングによってなくならない(完全に除去さ
れない)程度の膜厚であり、かつエッチング後に例えば
100nm程度またはそれ以下の膜厚となっていること
が望ましい。熱酸化膜の膜厚がこの程度であれば、本発
明の第2の実施の形態の赤外線検出器の赤外線検出特性
に影響を与えることはなく、内部応力によって赤外線検
出素子の変形や破壊などを招くこともない。また、熱酸
化膜の膜厚が厚く残ってしまう場合には、異方性エッチ
ング後にバッファードフッ酸などを用いて熱酸化膜を完
全に除去してもよい。
【0064】以上の結果から明らかなように、本発明の
第2の実施の形態の赤外線検出器は、従来の赤外線検出
器と比較して、赤外線吸収効果を有する絶縁性支持構造
体層によって赤外線検出素子が構成される。従って、赤
外線吸収のみを目的とした赤外線吸収層が不要であるの
で、赤外線吸収層の形成およびパターニング工程を省略
し、赤外線検出器の製造工程の単純化、低コスト化を図
ることができる。
【0065】また、絶縁性支持構造体層としては、赤外
線吸収特性を有し、かつ基板に空洞部を形成する場合に
用いられるエッチング液に対して耐エッチング性を有
し、さらに熱伝導率が低く、内部応力が小さい反応性ス
パッタリング法によって形成された窒化シリコン膜を用
いている。そのため、作製時の赤外線検出素子における
歪みや破壊を避けることが可能であり、赤外線検出器の
製造時間の低減や高歩留まり化を図ることができる。
【0066】さらに、絶縁性支持構造体層に入射した赤
外線のうち絶縁性支持構造体層で吸収されずに透過した
赤外線は赤外線反射膜で反射され、絶縁性支持構造体層
で再度吸収されるので、赤外線吸収効率が良好になる。
このため、従来の赤外線検出器において必要としていた
赤外線吸収膜や基板の裏面に取り付けられていた赤外反
射板が不要になる。
【0067】(実施の形態3)図6は本発明の第3の実
施の形態の赤外線検出器の構成を示す図であり、図6
(a)はその平面図、図6(b)は図6(a)の線CC
´に沿った断面図を示している。
【0068】図6に示す本発明の第3の実施の形態の赤
外線検出器において、シリコン単結晶などからなる基板
18上に、基板全面に形成された第1の絶縁性支持構造
体層19と、赤外線反射膜20と、第2の絶縁性支持構
造体層21とが積層される。
【0069】赤外線反射膜20は、赤外線を反射し、か
つ熱伝導率の低い金属であればよいが、空洞部26を形
成する工程で用いられるエッチング液に対して耐エッチ
ング性を有することが望ましく、クロム、タングステ
ン、モリブデン、チタンなどやその合金が用いられる。
また、赤外線反射膜20の膜厚は、十分な赤外線反射効
率が得られ、かつ熱抵抗が小さくなりすぎないように設
定すればよく、好ましくは5nm以上50nm以下であ
る。
【0070】なお、第1の絶縁性支持構造体層19を形
成する主目的は、空洞部26をエッチングによって形成
する時に基板18および赤外線反射膜20を保護するこ
と、および基板18と赤外線反射膜20の間の電気的短
絡を防ぐことである。従って、第1の絶縁性支持構造体
層19は、空洞部26の形成のためのエッチング中に完
全に除去されなければよく、空洞部26の形成後に別途
エッチングによって除去してもよい。また、赤外線反射
膜20が空洞部26を形成する時に用いられるエッチン
グ液に対して耐エッチング性を有し、さらに基板18と
赤外線反射膜20の間の電気的短絡を防止する必要がな
い場合には、第1の絶縁性支持構造体層19の省略可能
である。
【0071】第2の絶縁性支持構造体層21上には所定
の形状にパターニングされた感熱抵抗体膜23と感熱抵
抗体膜23の抵抗値を読み出すための電極22とが形成
され、電極22は図示しない外部読み出し端子に接続さ
れる。なお、電極22としては熱伝導率の低い金属が望
ましく、チタン、クロム、ニッケル、ニオブ、タンタル
などの金属やその合金が用いられる。
【0072】感熱抵抗体膜23上には第3の絶縁性支持
構造体層24が基板全面に形成される。
【0073】絶縁性支持構造体層19、21、24およ
び赤外線反射膜20は、基板18の表面側からRIE法
などの手法によって同一パターンで一括してエッチング
される。これにより、開口部25が形成され、赤外線検
出素子27が構成される。また、開口部25から異方性
エッチングなどを行うことにより基板18に空洞部26
が形成され、これにより、赤外線検出素子27はマイク
ロエアブリッジ構造となる。
【0074】絶縁性支持構造体層19、21、24とし
ては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリ
コン膜、酸化シリコンと窒化シリコンの積層膜などを用
いることができるが、赤外線吸収特性を有し、空洞部2
6を形成する時に用いられるエッチング液に対して耐エ
ッチング性を有し、熱伝導率が低くかつ内部応力が小さ
いことが少なくとも必要である。
【0075】このような特性を有する膜は、上述したよ
うに、アルゴンと窒素の混合ガス中、0.7Pa以上1
Pa以下の圧力でシリコンターゲットを反応性スパッタ
リングすることによって得られる窒化シリコン膜によっ
て達成される。従って、少なくとも第2および第3の絶
縁性支持構造体層21、24は、上述の窒化シリコン膜
によって構成されることが好ましい。
【0076】なお、絶縁性支持構造体層19、21、2
4の合計膜厚は1μm以上4μm以下であることが好ま
しい。
【0077】絶縁性支持構造体19、21、24の合計
膜厚が1μmより小さい場合には赤外線吸収率が不足す
るので、赤外線検出器として十分な感度を得ることがで
きない。逆に、その合計膜厚が4μmより大きい場合に
は赤外線吸収率は一定値となるので、赤外線検出器の感
度の向上に寄与しないばかりか、赤外線検出素子と基板
を接続する絶縁性支持構造体層の熱抵抗が不必要に低下
して赤外線の検出感度に悪影響を及ぼし、また絶縁性支
持構造体層の内部応力の積算値が過大となって、赤外線
検出素子に歪みや破壊が起こりやすくなる。
【0078】本発明の第3の実施の形態の赤外線検出器
の製造工程では、赤外線反射膜20は基板全面に形成さ
れ、そのパターニングは絶縁性支持構造体層19、2
1、24のパターニングと一括して行われる。従って、
赤外線反射膜20によって基板18と赤外線検出素子2
7の間の熱抵抗は一定程度低下することが考えられる
が、上述した金属材料とその膜厚を任意に選択すること
により赤外線検出器の実際の感度の低下はほぼ無視しう
る範囲内に抑えることが可能である。
【0079】さらに、赤外線反射膜20は絶縁性支持構
造体層19、21、24と一括してパターニングされる
ため、赤外線反射膜20のフォトリソグラフィによるパ
ターニング行程を省略することができる。
【0080】特に、赤外線反射膜20をクロム、タング
ステン、モリブデン、ニオブ、タンタルのいずれかから
選択される金属またはその合金膜とすれば、開口部25
を形成する工程の途中でウエットエッチングなどにより
赤外線反射膜20のみをエッチングする工程が不要とな
る。従って、赤外線反射膜20をRIE法によって絶縁
性支持構造体層19、21、24と一括してエッチング
することが可能であり、さらに赤外線検出器の製造工程
を単純化することができる。
【0081】以上のように、本発明の第3の実施の形態
の赤外線検出器は、従来の赤外線検出器と比較して、赤
外線吸収特性を有する絶縁性支持構造体層によって赤外
線検出素子が構成される。従って、赤外線吸収のみを目
的とした赤外線吸収層が不要であるので、赤外線吸収層
の形成およびパターニング工程を省略し、赤外線検出器
の製造工程の単純化、低コスト化を図ることができる。
【0082】また、絶縁性支持構造体層に入射した赤外
線のうち絶縁性支持構造体層で吸収されずに透過した赤
外線は赤外線反射膜で反射され、絶縁性支持構造体層で
再度吸収されるので、赤外線吸収効率が良好になる。こ
のため、従来の赤外線検出器において必要としていた赤
外線吸収膜や基板の裏面に取り付けられていた赤外反射
板が不要になる。
【0083】さらに、赤外線反射膜は絶縁性支持構造体
層と同一のパターンで同一の工程で一括してパターニン
グすることが可能であるので、赤外線反射膜のみのパタ
ーニング工程を省略することが可能になる。
【0084】このため、赤外線検出器の製造工程の簡略
化、歩留まりの改善、およびコストの削減がさらに可能
となる。
【0085】(実施の形態4)図7は本発明の第4の実
施の形態の赤外線検出器の構成を示す図であり、図7
(a)はその平面図、図7(b)は図7(a)の線DD
´に沿った断面図を示している。
【0086】図7に示すような本発明の第4の実施の形
態の赤外線検出器は以下のようにして製造される。すな
わち、まず、(100)面方位のシリコン単結晶などか
らなる基板51を1100゜Cの拡散炉中に設置し、ウ
ェット酸化法によって膜厚600nmのSiO2膜であ
る熱酸化膜52を基板51の全面に形成して基板保護層
とする。
【0087】次に、スパッタリング法により基板51の
表面にクロム薄膜を形成し、パターニングせずに赤外線
反射膜53とする。
【0088】また、反応性スパッタリング法を用い、シ
リコンターゲットをアルゴンと窒素の混合ガス中、圧力
0.8Paでスパッタリングすることにより、膜厚1μ
mの窒化シリコン膜54を基板51の全面に形成して第
1の絶縁性支持構造体層とする。
【0089】さらに、スパッタリング法によって第1の
絶縁性支持構造体層である窒化シリコン膜54上に膜厚
100nmの炭化珪素膜を形成し、さらにフォトエッチ
ング法によりこの炭化珪素膜を200μm角の形状にパ
ターニングして感熱抵抗体膜56を構成する。なお、こ
の炭化珪素膜のエッチング方法としては、SF6などの
フッ化物系ガスを用いたRIE法を用いている。
【0090】その後、スパッタリング法により膜厚10
0nmのクロム薄膜を形成し、さらに、フォトエッチン
グ法によりこのクロム薄膜を所定の形状にパターニング
して電極膜55を構成する。
【0091】この後、窒化シリコン膜54と同様の条件
で、第2の絶縁性支持構造体層として膜厚2μmの窒化
シリコン膜57を基板51の全面に形成する。
【0092】次に、フォトエッチング法により基板51
に対して開口部58を形成する。開口部58は次のよう
にして形成する。すなわち、フォトレジストにより開口
部58を形成する部分以外の部分を保護した後、SF6
などのフッ化物系ガスを用いたRIE法により窒化シリ
コン膜54、57をエッチング除去してその一部を開口
する。次に、硝酸第2セリウムアンモニウムと過塩素酸
混合溶液によって開口部58の位置に相当する赤外線反
射膜53をエッチング除去する。最後に、開口部58の
位置に相当する熱酸化膜52をバッファードフッ酸によ
ってエッチング除去する。
【0093】開口部58は、本発明の第2の実施の形態
と同様に、赤外線検出素子60が約320μm角でその
対角位置の角部から基板51に対して支持部が設けられ
るように形成する。なお、角形の赤外線検出素子60の
方向が基板51の(100)方位と一致するように開口
部58を形成すれば、次に行う異方性エッチング時にお
いて空洞部59が赤外線検出素子60の全面を囲むよう
に形成されることになる。
【0094】開口部58を形成した後、基板51を70
゜CのKOHの異方性エッチング液中に浸して約4時間
の異方性エッチングを行うことによって空洞部59が形
成され、これによりマイクロエアブリッジ構造の赤外線
検出素子60を構成する。なお、この時の異方性エッチ
ングによって、熱酸化膜52cは、約500nm程度エ
ッチングされ、赤外線検出素子60の熱酸化膜52cの
膜厚は約100nmになった。
【0095】最後に、バッファードフッ酸を用いたエッ
チングにより赤外線検出素子60の熱酸化膜52cを完
全に除去する。
【0096】以上の製造工程を用いて、赤外線反射膜5
3の膜厚が異なる複数の赤外線検出器を製造し、その赤
外線検出特性を評価した。さらに、比較のために、膜厚
10nmのクロム薄膜で構成される赤外線反射膜を本発
明の第2の実施の形態のように予めパターニングした赤
外線検出器を同様に製造し、同じくその赤外線検出特性
を評価した。赤外線検出特性の評価方法は本発明の第2
の実施の形態の場合と同様である。
【0097】図8はその赤外線検出特性の評価結果を示
している。図2から、赤外線反射膜が形成されている赤
外線検出器は赤外線反射膜が形成されていない赤外線検
出器と比較して、ブリッジ出力が増大しており、赤外線
反射膜の存在による赤外線検出器の感度の向上が図られ
ていることは明らかである。
【0098】また、赤外線反射膜の膜厚が10nm以上
では、ブリッジ出力が低下する傾向にあることを示して
いる。これは、本発明の第4の実施の形態では、赤外線
反射膜がパターニングされておらず、赤外線検出素子6
0と基板51を接続する部分にも赤外線反射膜が形成さ
れているため、赤外線反射膜の膜厚を増大させると、こ
の部分の熱抵抗が低下してブリッジ出力の低下を招いて
いると考えられる。
【0099】さらに、パターニングされている膜厚10
nmの赤外線反射膜を有する赤外線検出器(比較例)と
本発明の第4の実施の形態の赤外線検出器を比較する
と、赤外線反射膜の膜厚を50nmとしても、この比較
例の95%以上のブリッジ出力が得られている。また、
赤外線反射膜の膜厚が10nmである場合には、本発明
の第4の実施の形態の赤外線検出器の方がブリッジ出力
が大きい。
【0100】これは、本発明の第4の実施の形態では、
赤外線吸収膜を特に設けることなく絶縁性支持構造体層
自体で赤外線吸収を行うため、赤外線検出素子と基板を
接続する部分にも赤外線吸収が生じて赤外線検出特性に
寄与し、さらに赤外線反射膜がこの部分にも形成される
ために赤外線吸収効率が改善され、これにより赤外線反
射膜を形成することによる熱抵抗の低下に伴うブリッジ
出力の減少の効果を上回ったためと考えられる。
【0101】以上の結果から明らかなように、本発明の
第4の実施の形態の赤外線検出器は、従来の赤外線検出
器と比較して、赤外線吸収効果を有する絶縁性支持構造
体層によって赤外線検出素子が構成される。従って、赤
外線吸収のみを目的とした赤外線吸収層が不要であるの
で、赤外線吸収層の形成およびパターニング工程を省略
し、赤外線検出器の製造工程の単純化、低コスト化を図
ることができる。
【0102】また、絶縁性支持構造体層が赤外線吸収特
性を有し、さらにこの絶縁性支持構造体層に入射した赤
外線のうち絶縁性支持構造体層で吸収されずに透過した
赤外線を反射して絶縁性支持構造体層に再度吸収させる
ための赤外線反射膜が赤外線入射面の反対側の面に形成
されているため、赤外線吸収効率が良好で高感度な赤外
線検出器を得ることができる。
【0103】さらに、赤外線反射膜は空洞部形成用の開
口部と同時にパターニングされるため、赤外線検出器の
製造工程を大幅に単純化できる。
【0104】本発明の第4の実施の形態では、赤外線反
射膜としてクロム薄膜を用いているが、赤外線反射膜と
してはこれに限られず、チタン、ニッケル、ニオブ、タ
ンタル、タングステン、モリブデンなどの金属やこれら
の合金を用いてもほぼ同様の特性が得られる。
【0105】なお、クロム薄膜で構成される赤外線反射
膜をエッチング除去する方法としてSF6などのフッ化
物系ガスを用いたRIE法によって窒化シリコン膜5
4、57を開口除去した後、さらにエッチングガスとし
て四塩化炭素ガスを用いたRIE法によってエッチング
除去し、再度SF6などのフッ化物系ガスを用いたRI
E法により熱酸化膜52をエッチング除去してもよい。
この方法によれば、開口部58の形成時において同一の
RIE装置を用い、エッチングガスを交換するのみで連
続的にエッチングを行うことが可能である。従って、エ
ッチング溶液を用いたウエットエッチング工程を省略す
ることにより赤外線検出器の製造工程をさらに簡略化、
低コスト化することができる。
【0106】さらに、赤外線反射膜をタングステン、モ
リブデン、ニオブ、タンタルまたはこれらの金属の合金
膜とすれば、開口部58を形成する時にSF6などのフ
ッ化物系ガスを用いたRIE法によってこれらの金属を
同時にエッチングすることが可能になる。また、開口部
58の形成時において同一のRIE装置を用い、エッチ
ングガスを交換することなく連続的にエッチングを行う
ことが可能である。従って、赤外線検出器の製造工程を
さらに簡略化、低コスト化することができる。
【0107】なお、本発明の第4の実施の形態の赤外線
検出器において用いた基板保護層である熱酸化膜は高温
で形成されるために通常強い圧縮応力を有しているが、
この圧縮応力が赤外線検出素子の歪みや破壊の原因にな
る。そのため、基板と赤外線反射膜の間の電気的接触が
生じることが望ましくない場合、この熱酸化膜は、電気
的短絡を防ぐだけの絶縁性が保持され、さらに異方性エ
ッチング時において基板の保護ができるだけの膜厚であ
ればよい。
【0108】すなわち、この熱酸化膜は異方性エッチン
グ中にエッチングによってなくならない程度の膜厚であ
り、かつエッチング後に例えば100nm程度またはそ
れ以下の膜厚となっていることが望ましい。熱酸化膜の
膜厚がこの程度であれば、本発明の第4の実施の形態の
赤外線検出器の赤外線検出特性に影響を与えることはな
く、内部応力によって赤外線検出素子の変形や破壊など
を招くこともない。また、赤外線検出素子の熱酸化膜以
外の熱酸化膜は、絶縁性支持構造体層によってエッチン
グから保護されるために当初の膜厚が保持され、赤外線
反射膜と基板の間の絶縁性は完全に確保することができ
る。
【0109】また、熱酸化膜の膜厚が厚く残ってしまう
場合には、異方性エッチング後にバッファードフッ酸な
どを用いて熱酸化膜を完全に除去してもよい。
【0110】
【発明の効果】以上、本発明によれば、製造工程の単純
化や低コスト化、製造時間の短縮や高歩留まり化が可能
な赤外線検出器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の赤外線検出器の構
成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の赤外線検出器の製
造において反応性スパッタリング法を用いて形成した窒
化シリコン膜の膜内部応力とその成膜時のガス圧力との
関係を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態の赤外線検出器の製
造において反応性スパッタリング法を用いて形成した窒
化シリコン膜の成膜時のガス圧力と各ガス圧力で成膜し
た窒化シリコン膜の濃フッ酸に対するエッチング速度と
の関係を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態の赤外線検出器の構
成を示す図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の赤外線検出器にお
ける赤外線検出特性の評価結果を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態の赤外線検出器の構
成を示す図である。
【図7】本発明の第4の実施の形態の赤外線検出器の構
成を示す図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態の赤外線検出器にお
ける赤外線検出特性の評価結果を示す図である。
【符号の説明】
1、18、41、51 基板 2、20、43、53 赤外線反射膜 3、9、19、21、24 絶縁性支持構造体層 4、22 電極 5、23、46、56 感熱抵抗体膜 6、25、48、58 開口部 7、27、50、60 赤外線検出素子 8、26、49、59 空洞部 42、42c、52、52c 熱酸化膜 44、47、54、57 窒化シリコン膜 45、55 電極膜

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 赤外線吸収効果を有する支持構造体層に
    よって構成される赤外線検出素子と、この赤外線検出素
    子が形成される基板とを備えた熱分離構造の赤外線検出
    器において、 前記赤外線検出素子の赤外線入射面とは反対側の面に赤
    外線反射膜が形成され、 前記支持構造体層は、反応性スパッタリング法によって
    形成された少なくとも1層の窒化シリコン膜を含み、 前記窒化シリコン膜の厚さが合計1μm以上4μm以下
    であることを特徴とする赤外線検出器。
  2. 【請求項2】 赤外線吸収効果を有する支持構造体層に
    よって構成される赤外線検出素子と、この赤外線検出素
    子が形成される基板とを備えた熱分離構造の赤外線検出
    器において、 前記赤外線検出素子の赤外線入射面とは反対側の面に赤
    外線反射膜が形成され、 前記支持構造体層は、成膜中の基板温度を400゜C以
    下に保持し、0.7Pa以上1Pa以下の圧力、アルゴ
    ンと窒素の混合ガス中でシリコンターゲットをスパッタ
    リングする反応性スパッタリング法によって形成された
    少なくとも1層の窒化シリコン膜を含み、 前記窒化シリコン膜の厚さが合計1μm以上4μm以下
    であることを特徴とする赤外線検出器。
  3. 【請求項3】 赤外線吸収効果を有する支持構造体層に
    よって構成される赤外線検出素子と、この赤外線検出素
    子が形成される基板とを備えた熱分離構造の赤外線検出
    器において、 前記赤外線検出素子の赤外線入射面とは反対側の面に赤
    外線反射膜が形成され、 前記赤外線反射膜は、前記支持構造体層と同一形状にパ
    ターニングされることを特徴とする赤外線検出器。
  4. 【請求項4】 赤外線吸収効果を有する支持構造体層に
    よって構成される赤外線検出素子と、この赤外線検出素
    子が形成される基板とを備えた熱分離構造の赤外線検出
    器において、 前記赤外線検出素子の赤外線入射面とは反対側の面に前
    記支持構造体層と同一形状にパターニングされている赤
    外線反射膜が形成され、 前記支持構造体層は、反応性スパッタリング法によって
    形成された少なくとも1層の窒化シリコン膜を含み、 前記窒化シリコン膜の厚さが合計1μm以上4μm以下
    であることを特徴とする赤外線検出器。
  5. 【請求項5】 赤外線吸収効果を有する支持構造体層に
    よって構成される赤外線検出素子と、この赤外線検出素
    子が形成される基板とを備えた熱分離構造の赤外線検出
    器において、 前記赤外線検出素子の赤外線入射面とは反対側の面に前
    記支持構造体層と同一形状にパターニングされている赤
    外線反射膜が形成され、 前記支持構造体層は、成膜中の基板温度を400゜C以
    下に保持し、0.7Pa以上1Pa以下の圧力、アルゴ
    ンと窒素の混合ガス中でシリコンターゲットをスパッタ
    リングする反応性スパッタリング法によって形成された
    少なくとも1層の窒化シリコン膜を含み、 前記窒化シリコン膜の厚さが合計1μm以上4μm以下
    であることを特徴とする赤外線検出器。
  6. 【請求項6】 前記赤外線反射膜は、クロム、タングス
    テン、モリブデン、ニオブ、またはタンタルのいずれか
    から選ばれる金属またはその合金膜から構成され、その
    膜厚は5nm以上50nm以下であることを特徴とする
    請求項1から5のいずれかに記載の赤外線検出器。
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