JP2000302692A - コロナウイルス感染症に対するdnaワクチン - Google Patents
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Abstract
が困難であったFIPV等のコロナウイルス感染症に対
する有効な予防/治療手段を開発することであり、特に
は、防御が困難であったFIPVの予防、発症の防御、
及び治療ができるDNAワクチン提供すること。 【解決手段】 ネコ伝染性腹膜炎ウイルスにおけるヌク
レオカプシドタンパク質をコードするDNAを含む発現
ベクターと生理食塩水とを含むコロナウイルス感染症に
対するDNAワクチン。
Description
(Feline infectious perito
nitis; FIP)を引き起こすウイルス(FIP
V)等のコロナウイルス感染症に対する予防/治療に有
効なDNAワクチンに関するものである。
infectious peritonitis;以
下、「FIP」という)という病気がある。FIPは、
コロナウイルス科コロナウイルス属に属するネコ伝染性
腹膜炎ウイルス(FIPV)によって引き起こされるネ
コの致死性疾患である。FIPは6ケ月齢から5歳まで
のネコあるいは純血種のネコで起こりやすいことが知ら
れている(Scott,1991,Pedersen
et al.,1983)。罹患ネコの口腔及び気道の
分泌物、糞便並びに尿などからウイルスが排出され、経
口感染すると考えらている。経口的に感染したウイルス
は、咽頭や腸管上皮で増殖し、粘膜のバリヤーを通過
後、血中のマクロファージに感染して全身に広がる(H
ayashi et al.1983:Scott,1
989)。FIPを発症したネコは、最初は発熱、食欲
不振、不活発、体重減少、嘔吐、下痢、脱水、貧血のよ
うな非特異的かつ非限局性の症状を呈する。症状が進行
するにつれて滲出型(wet type)と非滲出型
(dry type)、あるいはそれらの混合型のFI
Pに典型的な症状を呈するようになる。
通常無痛性の腹部の膨満が確認できる。浸出液が胸腔に
著しく貯留した場合は呼吸困難を伴う。一方、非滲出型
は、肝臓、腎臓、脾臓などの腹部臓器、眼、中枢神経系
及び肺のような様々な器官に化膿性肉芽腫性炎と壊死性
血管炎を呈することを特徴とする。一般に滲出型FIP
の場合は臨床経過が急性であるのに対して、非滲出型F
IPにおいては慢性あるいは潜行性の経過をとりはっき
りしないことがある。しかし、いずれの場合も臨床症状
が発現した場合、ほとんど進行性かつ致死性である。
であり、エンペロープを有しその内側には螺旋状のヌク
レオカプシド構造を持っている。その主要な構造蛋白と
しては、エンペロープから突出した糖蛋白(スパイク
(S)蛋白)、膜蛋白であるM蛋白、ヌクレオカプシド
蛋白であるN蛋白などが拳げられる。それ以外にもFI
PVウイルスゲノム上にはORF1a,1b(RNAp
olymerase)、ORF3a,3b,3c,3
d、small membrane蛋白、ORF7a,
7bなどの遺伝子が存在する。しかし、FIPV感染細
胞の抽出液をFIPV感染ネコ血清を用いてimmun
oblot解析を行うと、S蛋白(分子量180〜20
5kDa)、M蛋白(分子量25〜30kDa)、N蛋
白(分子量43〜50kDa)の3種類が検出される。
そのため、これら3種類が免疫系による主要な標的とな
っていると考られている。
染増強(Antibody−dependent en
hancement;ADE)が挙げられる(Cora
piet al,1992;Houdatsu et
al., 1991;Olsen et al.,19
92)。ADEとは本来、異物を排除するための生体の
防御機構である抗体が、逆にFIPVのマクロファージ
への感染を促進させ、症状を悪化させることである。こ
のため従来の抗体を誘導する不活化ワクチンや弱毒生ワ
クチンなどでは、逆に症状を悪化させることが知られて
いる。このADE作用のため、致死性であるにも関わら
ずFIPに対する有効なワクチンは未だ開発されていな
い。現在、FIPワクチンとして唯一存在するのは、弱
毒化生ウイルスの温度感受性株を用いた鼻腔内ワクチン
(Primucell FIP;Smith Klin
e Beecham)である。このワクチンは、温度感
受性なので鼻咽頭では増殖するが、全身的な増殖がな
く、鼻及び腸の局所粘膜免疫、唾液免疫グロブリンA
(IgA)及び細胞性免疫を促進する。さらに、FIP
Vの多くの株を交差防御するという特徴を持つ。
てワクチン接種後6ケ月若しくはそれ以前に感染攻撃し
た場合、生存率は接種群が71〜85%である。ワクチ
ン非接種群の生存率は17〜20%である。鼻腔内ワク
チンの効果は、ウイルス株とウイルス感染量によって異
なることが報告されている(Scott,et a
l.,1992)。ウイルスの暴露量が少量であれば、
50%のネコをFIPVから防御できるが、大量(10
5TCID50以上)の暴露ではほとんど防御できず、却
ってFIPの感染増強すら見られた。また、他のデータ
でも野外のネコでワクチン接種群と非接種群のFIP発
症と死亡率の有意差を示すことが出来なかったことが報
告されている(Fanton,1991)。また、生ワ
クチンの欠点である病原性復帰の可能性なども考えられ
る。結局、未だ有効なワクチンはないと言える。
は、致死性でありながら今まで実質的に有効なワクチン
がなく、防御が困難であったFIPV等のコロナウイル
スに対する有効な予防手段を開発することであり、具体
的には、防御が困難であったFIPV等のコロナウイル
ス感染症の予防、発症の防御、及び発症後の治療ができ
るDNAワクチンを提供することである。
性に留意し鋭意検討した結果、本発明の目的が以下の構
成によって達成されることを見出し、本発明に到達し
た。即ち、本発明は、下記構成である。 (1) ネコ伝染性腹膜炎ウイルスにおけるヌクレオカプ
シドタンパク質をコードするDNAを含み、該タンパク
質を適用動物内で発現させることができる発現ベクター
と、生理食塩水とを含むことを特徴とするコロナウイル
ス感染症に対するDNAワクチン。 (2) ネコ伝染性腹膜炎ウイルスにおけるヌクレオカプ
シドタンパク質をコードするDNAが、配列表の配列番
号1に記載のDNA配列を有するか、あるいは配列表の
配列番号1に記載のDNA配列との相同性が95%以上
であり、適用動物に対して免疫を付与できるヌクレオカ
プシドタンパク質をコードするDNA配列を有すること
を特徴とする前記(1)に記載のコロナウイルス感染症
に対するDNAワクチン。 (3) ネコ伝染性腹膜炎ウイルスにおけるヌクレオカ
プシドタンパク質をコードするDNAが、配列表の配列
番号1に記載のDNA配列を有することを特徴とする前
記(1)に記載のコロナウイルス感染症に対するDNA
ワクチン。
PVの79−1146株のM−タンパク質又はN−タン
パク質をコードするヌクレオチド配列が開示され、その
M−タンパク質又はN−タンパク質のいずれもワクチン
として使用できることが示唆されている。しかしなが
ら、該公報には、実質的には上記株のM−タンパク質又
はN−タンパク質をコードするヌクレオチド配列のみが
開示され、該タンパク質のワクチンとしての実際の効果
は示されていない。H.Vennema, et al., Virology, 18
1, 327-335には、FIPVの79−1146株のM−タ
ンパク質又はN−タンパク質をコードする遺伝子をワク
シニアウイルスに組み込んだ組み換えワクシニアウイル
スワクチンを作成し、ワクチンとしての効果を検討して
いる。この文献によると、M−タンパク質の遺伝子を組
み込んだ組み換えワクチンでは、強毒株の攻撃に対して
ある程度効果があり、N−タンパク質の遺伝子を組み込
んだ組み換えワクチンではその効果がないと記載されて
いる。
を付与できるタンパク質を種々検討した結果、そのタン
パク質のうちN−タンパク質に着目し、それをDNAワ
クチンという特有の構成とすることにより、従来感染予
防が困難であったFIPを防御できるワクチンの開発に
成功した。後述するように、上記文献で効果があると記
載されたM−タンパク質では、意外なことに、DNAワ
クチンとしては効果がなく、逆にADE様活性を誘発し
た。
症の予防/治療に最も有効であるが、このコロナウイル
ス感染症以外にも、豚伝染性胃腸炎ウイルス感染症、豚
流行性下痢ウイルス感染症、イヌコロナウイルス感染
症、ネコ腸内コロナウイルス感染症等のコロナウイルス
感染症にも、これらの原因ウイルスが抗原的に非常に近
似しているので有効である。本発明のDNAワクチン
は、ネコ、イヌ、ヒト、ブタ等のコロナウイルスが感染
する哺乳動物に適用できるが、中でもネコに有効であ
る。本発明におけるDNAワクチンは、感染症が発症し
ている場合でも該DNAワクチンを投与することで下記
の如く宿主免疫系、特に細胞性免疫を誘導することで病
気の回復が期待できることから治療にも有効である。
によってDNAは細胞内に取り込まれ、コードする蛋白
(抗原)が細胞内で合成されるというワクチンは、19
90年代になって報告がなされた(Hasset an
d Whitton,1996;Ulmer et a
l,1993,1996;Johnet al.,19
97)。プラスミドDNAから発現される蛋白は抗原プ
ロセッシングを受けた後、MHC class I及び
MHC class II拘束性抗原提示により細胞性
免疫、液性免疫両方を誘導できることが報告されている
(Clemiket al.,1996;Tang e
t al.,1992)。また、DNAワクチンは、従
来の生ワクチン、不活化ワクチンと比較して生物学的に
安全であると考えられており、感染症に対する新たなワ
クチン法として期待されているものである。
るが、本発明はこれに限定されない。本発明において、
FIPVにおけるヌクレオカプシドタンパク質(N−タ
ンパク質ともいう)をコードする遺伝子(DNA)とし
ては、従来のFIPVの各種の株から分離、クローニン
グでき、そのN−タンパク質によりネコにおいてはFI
PVとネコ腸内コロナウイルス、豚においては豚伝染性
胃腸炎ウイルスと豚流行性下痢ウイルス、イヌにおいて
はイヌコロナウイルスに対する免疫を付与できるものが
使用できる。N−タンパク質をコードする遺伝子は例え
ば以下の方法でクローニングすることができる。従来の
方法で増殖させたFIPVからRNAを抽出し、そのR
NAから逆転写酵素によりcDNAを作成し、そのcD
NAを鋳型として所定のプライマー(例えば、FIPV
NF、FIPV NR等)を用いてPCR法(詳しく
はRT−PCR法)により該遺伝子を増幅し、これを所
定のクローニングベクターに組み入れてクローニングす
ることができる。
ドする遺伝子は、配列表の配列番号1に記載のDNA配
列を有するか、あるいは配列表の配列番号1に記載のD
NA配列との相同性が95%以上であり、ネコ、イヌ、
豚に対して免疫を付与できるヌクレオカプシドタンパク
質をコードするDNA配列を有するものであることが好
ましい。より好ましくは配列表の配列番号1に記載のD
NA配列である。
動物体内で発現できるように、上記N−タンパク質をコ
ードするDNAを挿入できる部位と、その上流にプロモ
ーターやSD配列を有するものが使用できる。また、宿
主でその発現ベクターが増殖できないものがよく、例え
ば、複製開始点(ori)として原核細胞由来のものを
使用することで達成される。発現ベクターの具体例とし
ては、プラスミドpME18S、pCAGGS等の真核
細胞での発現プロモーターを有するプラスミドが挙げら
れる。
としては、上記クローニングしたN−タンパク質をコー
ドする遺伝子と、発現ベクターを各々制限酵素で切断
し、各々末端修飾したのち、DNAリガーゼで両者を結
合させて、N−タンパク質をコードする遺伝子が導入さ
れた発現ベクターを得ることができる。上記N−タンパ
ク質をコードする遺伝子が導入された発現ベクターは、
生理食塩水中に添加されてワクチンとして使用する。そ
のベクターのワクチン中の添加量としては目安として1
00μg/ml〜300μg/mlが挙げられる。ま
た、添加剤としては、アジュバント、サイトカイン、サ
イトカイン発現プラスミド等が挙げられるが、副作用を
考えると、無添加が好ましい。
は、注射等の手段を用いて各種組織、例えば筋肉組織に
接種できる。また、上記発現ベクターを表面に覆った金
粒子を生理食塩水に溶解したものを接種することもでき
る。これにより、上記発現ベクターを取り込む細胞が非
選択的となる。また、接種回数としては、目安として1
回〜3回接種でき、その各接種間の間隔としては、1週
間〜3週間を挙げることができる。1回の接種での投与
量としては100μg/1頭〜300μg/1頭が挙げ
られる。
するが、本発明の内容がこれにより限定されるものでは
ない。 〈ワクチンの製造〉FIPV M91−267株のN遺
伝子とM遺伝子をクローニングし、プラスミドDNAと
インサートDNAのライゲーション反応物を作成した。 1.遺伝子クローニング 実験には、ネコ由来培養細胞であるfeline ma
crophage−like Feline catu
s whole fetus(fcwf−4)細胞を用
いた。fcwf−4細胞は、Dulbecco’s M
odifiedEagle’s Medium(DME
M)(シグマ、ケミカル)に、10%(v/v)非働化
牛胎児血清(FCS)と抗生物質(100U/mlペニ
シリン、100U/mlストレプトマイシン)を加えた
ものを増殖培地として、5%炭酸ガス培養器中で培養し
た。
37℃で60分間、15分毎に優しく混和しながらイン
キユべートすることにより細胞へウィルスを吸着した。
ウイルスは、強毒FIPVであるM91−267株を用
いた〔Mochizukiet al.,J.Vet.
Med.Sci.,59(4);253〜258(19
97)〕。その後、ウイルス液を吸引し、DMEMでf
cwf−4細胞を2回洗浄後、FCS非添加のDMEM
で維持した。細胞変性効果(CPE)が細胞全体に見ら
れたときに上清を回収し、−80℃でしばらく保存し
た。
以下の方法で感染価の測定を行った。プラークassa
yを行ってウイルス感染価を求めた。簡単に述べると、
fcwf−4細胞を直径35mmシヤーレで90%co
nfluentになるまで増殖させ、DMEMで10倍
階段希釈したウイルス液を200μlずつ接種し、60
分間15分毎にやさしく混和しながら37℃でインキユ
ベートした。DMEMで2回細胞を洗浄し、2%FCS
と1%アガロース添加のDMEMを1シャーレ当たり2
m1ずつ重層した。2日間37℃のCO2インキユベー
ターで培養し、ホルマリン固定後、0.05%クリスタ
ルバイオレットで染色し、ブラーク数を数え、plaq
ue−forming unit(PFU)値を算出し
た。
M遺伝子をクローニングするため、該ウイルス株を35
mmシャーレに感染後、CPEが全面に広がったところ
で細胞を回収し、RNeasy Mini Kit(Q
IAGEN社製)によりRNAを抽出した。得られた1
μgのRNAをAMV由来Reverse−trans
criptaseにより逆転写して、cDNAを作製し
た。このcDNAを鋳型として5’−ggatccat
ggccacacagggacaa−3’(FIPVN
F)と5’−ggatccttagttcgtaacc
tcatc−3’(FIPVNR)を用いて、LA T
aq polymeraseによりPCR(92℃
1’、45℃ 1’、72℃ 2’、35cycle
s)を行ってN蛋白遺伝子を増幅した。
atgatgcctata−3’(FIPVMF)と
5’−ggatccttacaccatatgtaat
aa−3’(FIPVMR)を用いて、LA Taq
polymeraseによりPCR(92℃ 1’、4
5℃ 1’、72℃ 2’;35cycles)を行っ
てM蛋白遺伝子を増幅した。
ルムで抽出し、エタノール中で沈殿させて精製し、その
後、PCR産物のdirectクローニング用のベクタ
ーpUC118TA(制限酵素XcmI切断部位を2つ
有する)に組み込んで、以下の実験に用いた。
成 インサートフラグメントの調製 FIPVのN蛋白をコードする遺伝子を含むプラスミド
pUC118TA−NをBamHIで切断し、FIPV
N遺伝子を含む1.2kbp断片をGeneClea
n II(BIO−101社)により回収した。切断し
て得られた断片をKlenow 酵素により平滑末端に
し、フェノール/クロロホルムで抽出した。その後、そ
の抽出物をエタノールで沈殿し、沈殿物を80%エタノ
ールで洗浄し、乾燥後、適当量の滅菌水で溶解した。
伝子を含むプラスミドpUC118TA−MをBamH
Iで切断し、FIPV−M遺伝子を含む0.9kbpを
Gene Clean II(BIO−101社)によ
り回収した。これをKlenow酵素により平滑末端に
し、フェノール/クロロホルム抽出し、その後、その抽
出物をエタノール沈殿し、沈殿物を80%エタノールで
洗浄、乾燥後、適当量の滅菌水で溶解した。
実証するために、一つの例として、SimianVir
us40のoriと、サイトメガロウイルスのエンハン
サーと、鶏ベーターアクチンプロモーターと、ウサギベ
ーターグロブリン3’フランキング配列とを、pUC1
3に組み込んだプラスミドpCAGGS(Niwa e
t.al.,1991)を用いてみた。本プラスミドを
EcoRIで切断し、Gene Clean II(B
IO−101社)を使用して回収した。切断したプラス
ミドpCAGGSを、Klenow酵素により平滑末端
にし、フェノール/クロロホルム抽出した。その後、エ
タノール沈殿し、沈殿物を80%エタノールで洗浄し、
乾燥後、適当量の滅菌水で溶解した。これをCIAP
(Calf intestinal alkaline
phosphatase)で処理し、その後、フェノ
ール−クロロホルム処理、エタノール沈殿処理を行い、
その後、80%エタノールで洗浄し、次いで乾燥した
後、適当量の滅菌水に溶解した。
1:3−5のモル比で混ぜ、10〜20μlとなるよう
に等量のDNA Ligation KitVersi
on 2 Solution I(宝酒造製)を加え、
混和後16℃で12〜15時間反応させることにより、
N/pCAGGSとM/pCAGGSとを構築した。構
築したN/pCAGGSとM/pCAGGSとは、制限
酵素で切断されることで目的のプラスミドであることを
確認した(図3、図9)。
接種群、M/pCAGGS接種群、pCAGGS接種群
(コントロール群)の3群に配分し、滅菌水と市販の餌
で飼育した。QIAGENメガキット(QIAGEN社
製)を用い、大量精製したDNAを猫1頭あたり200
μg右後肢の大腿二頭筋に筋肉接種し、2週間隔で3回
接種した。その最終接種から2週間後に、1頭あたり1
×106PFUのFIPVM91−267株を腹腔内接
種した。
2回頚静脈から採血し、MICROCELL COUN
TER F−800(Sysmex)により赤血球数、
白血球数、ヘモグロビン値、ヘマトクリット値を測定
し、FUJI DRI−CHEM5500S(富士メデ
ィカルシステム株式会社)により血中の尿素窒素(BU
N)、クレアチニン(CRE)、アラニンアミノ転移酵
素(GPT)、アスパレートアミノ転移酵素(GOT)
を測定した。また、塗末標本より白血球百分比(分葉好
中球、桿状好中球、リンパ球好酸球、単球)を測定し
た。別に分注した血液を、室温、15000rpm、1
5分間遠心して血漿を回収し、56℃,30分で非働化
後、中和抗体価の測定とウエスタンブロット(West
ern blotting)解析を行った。
後は毎日、体温、体重、摂食量を測定し、便の状態、沈
鬱、神経症状を観察した(下記表2〜9)。臨床症状
は、表1に示した基準に従って、スコアリングを行っ
た。実験ネコは瀕死の状態になったとき、致死量のケタ
ミン投与と心採血により安楽死させ、剖検を行った。上
記結果を下記表−2〜9と、図4〜8、図10〜14に
示す。
をサンプルバッファー(6.25mM tris−HC
l、2.0%SDS、5.0%メルカプトエタノール、
20%グリセロール、0.001%プロモフェノールプ
ルー)と混和し、100℃で2分加熱し、12%SDS
−PAGEゲル(Laemmli et.a1.,19
70)で泳動した。ポリビニリデンジフルオライド(P
oly vinylidene difluorid
e)(Millipore社製)膜をあらかじめ100
%エタノールと転写バッファー(25mM Tris、
192mMグリシン、20%メタノール)に浸してお
き、陽極側から、3MMペーパー、膜、アクリルアミド
ゲル、3MMぺーパーの順に並ベ、10Vで1時間転写
した(Towbin et.al.,1979)。
e、Bio Rad)添加TBS(0.5M NaC
l、0.02M Tris[pH7.5])でブロッキ
ング後、TTBS(0.05%Tween−TBS)で
三回洗浄した。次に、10倍希釈になるようにネコ血漿
を加えた1%ゼラチンTTBSを加え、37℃1時間反
応させ、その後TTBSで三回洗浄した。二次抗体とし
てぺルオキシダーゼ標識山羊抗ネコIgGを500倍希
釈したものをもちいて、37℃30分反応させた。TT
BS、TBSでそれぞれ三回洗浄した後、ジアミノベン
ジン四酸塩錠(和光)を1錠(10mg)とH2O2を3
3μlのTBSに加え、室温で反応させた。
6穴プレートに入れ、50μlのFlPV M91−2
67株(1穴当たり100PFU)を加えた。37℃で
60分反応させた後、24穴プレートで90%conf
luenceになるまで増殖させたfcwf−4細胞に
加え、15分毎に穏やかに混和しながら、37℃、1時
間反応させた。その後は、感染価の測定と同様の操作を
行い、プラーク数を算定した。75%プラークが減少す
る血漿の最高希釈倍率の逆数を中和抗体価とした。
ラスミドpUC118TA−NをBg1 IIで切断
し、0.6kbp、0.5kbpの二つの断片をGen
e Clean II(BIO−101社)により回収
した。FIPVのN−タンパク質をコードする遺伝子
は、Bg1 IIにより二カ所が切断されるため、0.
6kbpと0.5kbpの中間部分の約20bpのシー
クエンスを行うために、別にpUC118TA−NをP
stIで切断し、3.9kbpを切り出して、セルフラ
イゲーションした。同様にFIPVのM−タンパク質を
コードする遺伝子を含むプラスミドpUC118TA−
MをBg1 IIで切断し、0.5kbp、0.4kb
pの二つの断片をGene Clean II(BIO
−101社)により回収した。ベクターに、pBlue
script SK(+)を用い、これをBamHIで
切断し、フェノール/クロロホルムで抽出した後、エタ
ノールで沈殿させ、得られた沈殿物を80%エタノール
で洗浄し、乾燥後、適当量の滅菌水に溶解し、アルカリ
フオスファターゼ(CIAP;CalfIntesti
ne Alkaline Phosphatase)処
理後、Gene Clean II(BlO−101
社)により回収した。調整したインサートDNAとベク
ターは、DNAワクチン用プラスミド作成時と同様の手
技によりライゲーション反応を行い、シークエンス用ク
ローンを構築した。
t Dye Primer Cycle Sequen
cing Ready Reaction(PERKI
N−ELMER,Great Britain)を用い
て行い、DNA塩基配列の決定は、ABI prism
377 autosequencer(PERKIN
−ELMER,Foster CA,U.S.A)を用
いて行った。
基配列の決定 日本で望月ら(1997)によりFIP症状を呈して死
亡したネコより分離され、腹腔内接種によりネコにFI
Pを引き起こすことが知られているM91−267株よ
りRNAを抽出後、RT−PCRによりN遺伝子とM遺
伝子を増幅した結果、それぞれ1146bpと882b
pが検出された。これをTAベクター(制限酵素Xcm
I切断pUC118TA)にクローニングし、塩基配列
を決定した。N遺伝子は376アミノ酸残基をコードす
る1131塩基よりなっていた(配列表の配列番号
1)。N遺伝子の構造遺伝子は1〜1128番目であ
る。また、M遺伝子は289アミノ酸残基をコードする
870塩基よりなっていた(配列表の配列番号3)。M
遺伝子の構造遺伝子は1〜867番目である。
ナウイルスのものと比較した結果、N蛋白においては7
9−1146株のものと93.4%の最も高い相同性を
有しており、犬コロナウイルス(CCV)とは76.4
%、豚伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)とは75.9
%の相同性を有していた。M蛋白においては79−11
46株のものと90.5%の最も高い相同性を有してお
り、犬コロナウイルス(CCV)とは84.7%、豚伝
染性胃腸炎ウイルス(TGEV)とは88.6%、豚流
行性下痢ウイルス(PEDV)とは52.3%、ヒトコ
ロナウイルス(HCoV)の229E株とは45.7
%、ウシコロナウイルス(BCoV)とは42.9%、
七面鳥コロナウイルス(TCoV)とは42.3%、ヒ
トコロナウイルス(HCoV)のOC43株とは39.
8%、マウス肝炎ウイルスとは39.3%、鶏伝染性気
管支炎ウイルス(IBV)とは27.4%の相同性を有
していた。加えて、系統樹を作成した結果、従来の報告
通りネココロナウイルス間では他の動物種由来のコロナ
ウイルスよりも近縁であることが示された(図1、図
2)。
定結果を示した表−1〜9を示す。尚、表−2は、M群
の検体番号1の結果、表−3はM群の検体番号2の結
果、表−4はコントロール群の検体番号3の結果、表−
5はコントロール群の検体番号4の結果、表−6はコン
トロール群の検体番号5の結果、表−7はN群の検体番
号6の結果、表−8はN群の検体番号7の結果、表−9
はN群の検体番号8の結果を示す。
温、Htはヘモトクリット値、Hbはヘモグロビンを各
々表す。 2 FIPVのN−タンパク質をコードする遺伝子を用
いたDNAワクチンの検討 RT−PCRによりクローニングされたN遺伝子を、p
CAGGSに組み込んだ(N/pCAGGS)。生理食
塩水に溶かしたプラスミドDNAをSPFネコの大腿二
頭筋に一匹当たり200μg接種した。さらに2週間間
隔で計3回の免疫を行った。この間、臨床症状はみられ
なかった。最終免疫より2週間後に強毒ウイルス株であ
るM91−267株を1×106PFU/1ml/1匹
に腹腔内接種した。
では接種後1日目から体重が減少し始め、検体番号3
(表−4に示す)では8〜22日目の間で、検体番号5
(表−6に示す)では5〜10日目の間で10%以上の
減少がみられた。2頭共その後いったん回復したが、検
体番号3で25日目、検体番号5で24日目以降、ふた
たび10%以上の減少を示した(図5参照)。体温は検
体番号3で15、19〜21、22〜26日目に、検体
番号4(表−5に示す)で19、20、22、25日目
に、検体番号5で15〜17、19、21日目に40℃
以上の発熱を示した。
でそれぞれ攻撃後3、7、10日目から25%以下に減
少し、検体番号4と3はそれぞれ24と28日目に回復
したが、検体番号5では以後25%以上に回復すること
はなかった(図7)。白血球数は、検体番号3で7、1
0、18、24日目に、検体番号4で3,14〜24日
目に、検体番号5で3、18、24日目に6000/μ
l以下であった(図6)。白血球百分比は、分葉好中球
が80%以上となったのは、検体番号3で14,24〜
31日目、検体番号4で31〜43日目、検体番号5で
10〜26日目であった。単球は3頭共7日目に10%
以上に増加し、好酸球は検体番号3で10,14,2
8,31日目に、検体番号4で31〜43日目に、検体
番号5で7,18〜26日目に1%以下に減少した(表
−4〜6)。
番号4で9日目に見られた。食欲不振は、検体番号3で
4日目以降ずっと続き、28日目以降は摂食量がほぼ0
gとなった。検体番号4でも4日目以降食欲不振となっ
たが、10〜21日の間いったん食欲が回復していた。
しかし、28日目以降の摂食量はほぼ0gになった。検
体番号5では接種後1日目からほぼ毎日食欲不振を示し
た。沈鬱は、検体番号3で5〜19日、検体番号4で4
〜43日、検体番号5で19〜26日の間でみられた。
神経症状は検体番号4ではみられなかったが、検体番号
3では15〜18,20日目に後肢のふらつき、旋回運
動がみられ、検体番号5では24〜26日に後肢麻痺、
発作がみられた。
種後1日目から3頭中2頭で、他の1頭は4日目から体
重の減少がみられた。その後は回復と減少を繰り返した
が、コントロール群で10%以上の体重減少を示した日
がのべ31日間あったのに対して、N群では最も大きい
減少を示した検体番号7でも最大9%の減少にとどま
り、10%以上は減少しなかった(図5、表−8)。体
温は検体番号7(表−8に示す)で15〜20,22,
23日目に、検体番号8(表−9に示す)で14,16
〜18,21,22,25〜28日目に40℃以上に発
熱した。検体番号6(表−7に示す)では発熱はみられ
ず、他の2頭では発熱に関してコントロール群との差は
なかった。
番号8で7日目に6000/μl以下に減少したが、す
ぐに回復し、検体番号8では18日目に再び減少した
が、21日目には回復した。検体番号7は7,10,1
8〜24日目に6000/μl以下の値を示した。N群
ではコントロール群と比較して、白血球数が6000/
μl以下に減少し始める時期は同じであったが、一時的
に回復するのが早かった(図6,表−7〜9)。ヘマト
クリット値では、25%以下に減少したのは検体番号6
で10日目、検体番号7で7〜24日目、検体番号8で
7〜18日目であった。N群とコントロール群でヘマト
クリット値が25%以下に減少する時期はほぼ等しく、
差はみられなかったが、N群の1頭では明らかに回復が
早かった(図7)。白血球百分比では、検体番号7,8
ではコントロールとの差がみられなかったが、検体番号
6ではほとんど異常値がみられなかった。下痢は検体番
号6もしくは検体番号7で5,6,10,19日目にみ
られた。検体番号6,7は22日目まで同ケージに収容
していたため下痢がどちらにおこっていたのかは不明で
ある。18,20〜22日目は検体番号6,7共に下痢
をしていた。検体番号8では10,20〜22日目に下
痢を起こした。下痢はN接種群でコントロール群よりも
頻繁にみられた(表−7〜9)。
号7で21,22〜26日にみられたが、先に述べた理
由により検体番号7で食欲不振が正確にはいつからおこ
っていたのか不明である。検体番号8では6,7日目に
いったん摂食量が減少したが、すぐに回復した。検体番
号8が再び食欲不振を起こすのは18日目以降で特に2
6日目以降は摂食量がほぼ0gとなった。沈鬱は検体番
号7で16日目以降、検体番号8で20日目以降、死亡
するまで続いた。神経症状は、検体番号7のみでみら
れ、16〜18日目、22〜25日目に後肢麻痺がみら
れ、26日目には横臥して動けない状態であった。上記
の臨床症状を表−1に従ってスコア化した結果(図
4)、接種後3,7,10,14日目でN群のポイント
は、コントロール群の平均より低く、このうち10日目
では、有意差が見られた(p<0.05)。コントロー
ル群でスコアが上昇し始める3日目にはN群のスコアは
0ポイントで臨床症状の発現が遅くなった。14日目以
降は、N群の検体番号7でコントロール群と同じか、若
しくはそれ以上に高いポイントとなったが、他の2頭で
はコントロール群の平均より低かった。N群の検体番号
7は26日目に、検体番号8は32日目に瀕死となり、
そのため28日と35日のN群のスコアが高くなってい
る。検体番号6は常に1ポイント以内の低い値を示して
おり、25日以降は0ポイントとなった。以上より、N
群ではコントロール群よりもスコアが上昇し始めるのが
遅く、また臨床スコアが低いという結果になった。
〜2%の減少が見られた。コントロール群では、いった
ん回復したが、再び減少し始め、8日目までに接種前と
比べて10.7%減少した。その後、検体番号3(表−
4)では接種後17日目までにさらに5%減少したがそ
の後、増加を始め、21日目には接種前と比べて4%の
減少となった。検体番号4,5は9日目以降増加した
が、検体番号5は18日目を境に減少し始め、その後回
復は見られなかった。検体番号4は21日目までに8%
回復した。コントロール群全体では、接種前と比べて接
種後21日目に平均7%減少した。N群では2日目以降
検体番号7が2%以内で増減を繰り返しながらも一定の
値を保ち、さらに検体番号6,8では増加を示し、N群
全体の平均では接種後21日目に接種前と比べて8.7
%の増加をしめした。6〜19日の間コントロール群と
の間に有意差があった(p<0.05)。結果として、
N/pCAGGS群はコントロール群よりも体重の減少
が有意に軽減されていることが示された。
000/μl以下に減少し、検体番号3は7日目に30
00/μl以下に減少した。検体番号4,5は7日目に
は10000/μl以上に回復したが、検体番号4は1
4日目、検体番号5は18日目にふたたび5000/μ
l以下に減少した。N群では検体番号6で3日目に60
00/μl以下に減少し、検体番号7,8では7日目に
減少した。しかし3頭共に14日目には10000/μ
l以上に回復し、検体番号6では以後6000/μl以
下に減少することはなかった。検体番号7,8はふたた
び18日目に5000/μl以下に減少し、検体番号7
では以後回復は見られなかった。検体番号8は21日目
に、10000/μl以上に回復し、以後6000/μ
1以下に減少することはなかった。このようにコントロ
ール群で10000/μl以下であった14日目にN接
種群で平均して17600/μlに増加しており、N/
pCAGGS接種により白血球数の回復が早まる結果と
なった。
平均5%減少した。その後も減少を続け、検体番号5で
は3日目、検体番号3は10日目に25%以下となっ
た。検体番号4は14日目にさらに18%に減少した
が、18日目以降は20%以上に増加した。検体番号5
と検体番号3は7日目と14日目にそれぞれ20%以下
に減少し、21日目までに20%以上に回復することは
なかった。これに対し、N群では3日目にはほとんど減
少が見られず、25%以下となったのは、検体番号7,
8が7日目、検体番号6が10日目であったが、検体番
号6では14日目には27%に回復し、その後も増加し
て21日目には35%となった。検体番号7は10日目
に19%に減少したが、14日目には22%に回復し、
21日目までに20%以下に再び減少することはなかっ
た。検体番号8は、21日目に25%に回復した。N群
ではコントロール群と比ぺてヘマトクリット値の減少が
遅く、その程度も低く、かつ回復が早い結果となった。
4/μlの減少を示した。このうち検体番号5は7日目
990×104/μl、検体番号4は10日目に134
8×104/μlに回復したが、14日目には再び検体
番号4で650×104/l以下、検体番号5で500
×104/l以下に減少した。検体番号3は7日目から
減少を始め、21日目には550×104/μl以下と
なった。N群では接種後3日目にはコントロール群ほど
の著しい減少はみられなかったが、検体番号7が7日目
に、検体番号6が10日目に、検体番号8が14日目に
大きく減少し、550×104/μ1以下となった。し
かし3頭共にその後回復を示した。このようにN群は3
日目から減少したが、減少の程度はコントロール群より
も小さいものであり、14日目以降著しく減少するコン
トロール群に対し、N群では増加がみられた。
番号4が43日目、検体番号5が26日目に死亡してお
り、生存期間の平均は33.3日である。これに対し、
N群では検体番号7が26日、検体番号8が31日目と
コントロール群との差はみられないが、検体番号6は1
50日以上生存しており、N/pCAGGS接種により
発症防御に成功した。
タンプロット解析 採取した血漿を用いてウイルス中和試験を行った。pC
AGGS接種群(コントロール群)ではウイルス接種後
14日目から上昇し始めたが、N接種群では18日目か
らウイルス中和抗体価が上昇し始めた。両群とも接種前
には中和抗体は存在しなかった(図15)。接種前の抗
体価はウエスタンプロットでも検出できなかった。
クチン(比較例) N遺伝子と同様にRT−PCRによりクローニングされ
たM遺伝子を、pCAGGSに組み込んだ(M/pCA
GGS)(図9)。生理食塩水に溶かしたプラスミドD
NAをSPFネコの大腿二頭筋に一匹当たり200μg
接種した。さらに2週間間隔で計3回の免疫を行った。
この間、臨床症状はみられなかった。最終免疫より2週
間後に強毒ウイルス株であるM91−267株を1×1
06PFU/1ml/1匹に腹腔内接種した。攻撃試験
後の結果を項目別に以下に示す。
ル群より遅かったが、コントロール群でみられた回復が
M群ではみられず、またコントロール群での減少が最大
18%であったのに対し、M群では最大22%の減少を
示した(図11,表−2、3)。体温は検体番号1で
3,5,10〜20日目、検体番号2で10〜16日目
に40℃以上の発熱をおこし、コントロール群よりも早
い時期に発熱がおこった(表−2、3参照)。白血球数
はコントロール群で6000/μl以下に減少したのが
3日目であったのに対し、M群では10日目以降と遅か
ったが、コントロールでみられた回復がM群ではみられ
なかった(図12、表−2、3)。ヘマトクリット値で
は検体番号1,2共に7〜21日目に25%以下に減少
し、コントロールとの差はみられず(図13,表−2、
3)、また白血球百分比でも、コントロールとの差はみ
られなかった。下痢はみられなかったが、食欲不振は5
日目以降続き、回復することはなかった。沈鬱は検体番
号1で12日目以降、検体番号2で4日目以降続いた
(表−2、3)。
番号2で、14〜16日目に後肢のふらつきが、17,
19〜21日目にはそれに加えて発作もみられた。22
日目には横臥、痙撃し全く動けない状態であった。検体
番号1では17日目に後肢麻痺、旋回、発作がおこっ
た。以上の臨床症状を表−1に従ってスコア化した結果
(図10)、接種後3〜7日間はコントロール群よりも
M群のポイントの方が低いが、10日目ではM群の方が
高くなった。その後、M群ではコントロール群の平均を
常に上回り、21日目では有意にコントロール群より高
いポイントを示した(P<0.05)。接種後、22日
目に検体番号2が、23日目に検体番号1が死亡したた
め、24日目のM群のポイントが著しく上昇している。
このようにM接種群では7日目まで臨床症状の発症が抑
制されているが、その後の上昇はコントロール群より早
かった。
て、M群では、接種後7日目までは10000/μl以
上を示していた。M群で減少し始めたのは、10日目以
降であった。検体番号1では10日目に4200/μl
まで減少し、その後回復することはなかった。検体番号
2では10日目に7600/μlに減少し、4日目にい
ったん12500/μlに回復したが18日目には42
00/μlに減少した。このようにごく初期の段階では
M/pCAGGS接種により白血球数の減少が抑えられ
ている可能性が示されたが、減少し始めてからの減少の
程度はM群の方が大きく、またコントロール群では21
日目に3頭中2頭で6000/μl以上に回復している
のに対してM群では回復がみられなかった。
の減少がみられたが、M群でも同様に4.5%の減少が
みられた。M群では7日目に検体番号1,2ともに25
%以下に減少し、さらに検体番号1が10日目に、検体
番号2が14日目に20%以下となった。検体番号2は
21日目に20%に回復したが、検体番号1はさらに減
少が続き、21日目には15%まで減少した。M群では
ヘマトクリット値の減少がコントロール群と同程度にお
こっている。
が、M群でも同様に接種後3日目には接種前と比較して
150×104/μl減少した。コントロール群ではそ
の後一度回復がみられたが、M群ではその後も減少が続
き、検体番号1では10日目に474×104/μlと
なり、21日目には257×104/μlに減少した。
検体番号2では14日目に552×104/μlに減少
し、その後も600×104/μl以上に回復すること
はなかった。このように、M群ではコントロール群でみ
られた一時的な回復がみられなかった。
のに対して、M群では検体番号1が23日、検体番号2
が22日と10日も短くなった。これは、M/pCAG
GS接種による生存期間の延長はおこらず、かえって死
期を早めたことを示している。 ウイルス中和試験(図15)及びウエスタンプロッ
ト解析 M及びコントロール群においては攻撃試験後14日目か
ら中和抗体の上昇がみられ、コントロール群と比較して
M群の方がより高い中和抗体価の上昇を示した(図1
5)。またM群においては4倍希釈した血清を用いても
攻撃試験前の中和抗体を検出できなかった。接種前の抗
体価はウエスタンプロットでも同様に検出できなかっ
た。なお一連の実験に用いたネコ(検体番号1〜8)
は、病理解剖され、その病理所見より典型的なFlP症
状を呈して死亡したことを確認した。
果、感染を増強するADE活性を有するため、既存のワ
クチンによる液性免疫の誘導は、かえって感染を増強す
ることになる。このため、FIPVに対する防御には細
胞性免疫の誘導が重要となるが、従来のワクチン法で
は、強い細胞性免疫を誘導することは困難であった。そ
こで今回、新しいワクチン法としてDNAワクチンによ
るFIP発症防御試験を試みた。N/pCAGGS接種
群では、臨床スコアの値がコントロール群より低く、体
重変化、白血球数、赤血球数、ヘマトクリット値は、い
ったんは減少したものの3頭中2頭で回復した。
おり、体重、体温、血液検査値、食欲等も正常で、FI
Pの発症防御に成功したといえる。さらに、最終的には
死亡したものの、N群のうちの他の1頭は発症後いった
んは、体重、血液検査値が回復している。これは、今回
のN/pCAGGS接種によりFIPVの初期感染が防
御できていたことを示している。一方、N/pCAGG
S接種群での結果とは対照的に、M/pCAGGS接種
群では臨床スコア、体重、白血球数、赤血球数、ヘマト
クリット値など全てのデータにおいてコントロール群と
有意な差がない、若しくはコントロール群よりも悪化を
示す結果となった。この理由としてFIPV構造蛋白M
がADEを起こすウイルス側の因子の一つであり、今回
M/pCAGGSを接種することによりFIPVの感染
が増強した可能性が考えられる。しかし、ワクシニアウ
イルスを用いたM蛋白の免疫実験では感染防御に成功し
ていることから、M蛋自に関してはDNAワクチンとし
ては使用できない。
GGS接種群における抗体価の上昇が他の群と比較して
遅かったことは、N/pCAGGS接種により初期の感
染防御には成功したが、1×106PFUという大量の
ウイルスで攻撃したため宿主免疫系によって排除しきれ
なかったウイルスが増殖したために、抗体価の上昇が遅
れたと考えられる。N/pCAGGS接種群より攻撃前
に回収された血清を用いたウエスタンプロット解析でも
検出できなかったことは、液性免疫より細胞性免疫が主
に感染防御に関与していると考えられる。一方、M/p
CAGGS接種群ではウイルス中和抗体価の上昇がコン
トロール群と比較して急激であった。中和抗体価として
は検出できなかったものの、M/pCAGGS接種によ
り若干の中和抗体の誘導があり、記億免疫が成立してい
たことが示唆される。また、DNAワクチン接種による
抗体の誘導がADE様感染を引き起こした可能性も考え
られる。
S接種群で完全にはFIPV防御が出来なかった理由と
して、1×106PFUという大量のウイルスでの攻
撃、腹腔内投与により、生体内への直接的なウイルス
の感染、が挙げられる。これらの結果、ウイルスに対す
る免疫が生じていても、免疫系によるウイルスの排除が
ウイルスの増殖速度に追いつかなかった可能性がある。
しかし、自然界においてはこれほど大量のウイルスが一
度に生体内に感染することは考えにくく、初期感染の防
御に効果があるFIPVのNタンパクをコードする遺伝
子を組み込んだDNAワクチンは、自然感染に似た最適
な接種量、接種方法とすることにより、十分効果がある
と考えられる。
発明のDNAワクチンは、防御が困難であったFIPV
等のコロナウイルス感染症に対して有効に予防/治療で
きる。
す図である。
す図である。
を示す図である。
す図である。
る。
である。
を示す図である。
である。
を示す図である。
化を示す図である。
ある。
図である。
化を示す図である。
図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 ネコ伝染性腹膜炎ウイルスにおけるヌク
レオカプシドタンパク質をコードするDNAを含み、該
タンパク質を適用動物内で発現させることができる発現
ベクターと、生理食塩水とを含むことを特徴とするコロ
ナウイルス感染症に対するDNAワクチン。 - 【請求項2】 ネコ伝染性腹膜炎ウイルスにおけるヌク
レオカプシドタンパク質をコードするDNAが、 配列表の配列番号1に記載のDNA配列を有するか、あ
るいは配列表の配列番号1に記載のDNA配列との相同
性が95%以上であり、適用動物に対して免疫を付与で
きるヌクレオカプシドタンパク質をコードするDNA配
列を有することを特徴とする請求項1に記載のコロナウ
イルス感染症に対するDNAワクチン。 - 【請求項3】 ネコ伝染性腹膜炎ウイルスにおけるヌク
レオカプシドタンパク質をコードするDNAが、配列表
の配列番号1に記載のDNA配列を有することを特徴と
する請求項1に記載のコロナウイルス感染症に対するD
NAワクチン。
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JP4160201B2 (ja) | 2008-10-01 |
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