JP2000298045A5 - - Google Patents

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JP2000298045A5
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【発明の名称】超音波振動子とそれを用いた超音波流量計
【特許請求の範囲】
【請求項1】天部と側壁部を有するケースと、前記天部の内壁側に固定され電気信号と機械的振動を相互に変換する圧電体と、前記天部の外壁側に固定される整合層とを備え、前記圧電体の不要振動モードの共振周波数と前記ケースの共振周波数が異なる周波数である超音波振動子。
【請求項2】圧電体の縦振動の共振周波数又は広がり振動する共振周波数を不要振動モードの周波数とした請求項1記載の超音波振動子。
【請求項3】ケースの内壁側面又は外壁側面に制振体を固定した請求項1記載の超音波振動子。
【請求項4】制振体が剛体からなる請求項3記載の超音波流量計。
【請求項5】制振体が弾性体からなる請求項3記載の超音波流量計。
【請求項6】ケースの側壁部に折り曲げ部を設けた請求項1記載の超音波流量計。
【請求項7】ケースの天部が圧電体の形状に類似した形状である請求項1記載の超音波振動子。
【請求項8】被測定流体が流れる流量測定部と、この流量測定部に設けられ超音波を送受信する請求項1ないし7のいずれか一項記載の一対の超音波振動子と、一方の前記超音波振動子を駆動する駆動回路と、他方の前記超音波振動子に接続され超音波パルスを検知する受信検知回路と、前記超音波パルスの伝搬時間を測定するタイマと、前記駆動回路と前記タイマを制御する制御部と、
前記タイマの出力より流量を演算によって求める演算部とを備えた超音波流量計。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波により気体や液体の流量や流速の計測を行う超音波流量計に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来この種の超音波流量計には、例えば特開平9−133561号公報が知られており、標準状態の非測定流体の温度(T0)と使用状態の非測定流体の温度情報(Tsv)からT0/Tsvを補正係数として流量の測定精度を高めていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の超音波流量計では、流れが無い状態の測定結果(以降ゼロ点とする)が温度変化によって0以外の値となった場合、動作補償温度範囲全体を補正係数だけで0にすることは困難で、温度変化によるゼロ点の安定性が得られないという課題を有していた。
【0004】
本発明では上記課題を解決するもので、超音波振動子の構成により温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、圧電体の不要振動モードとケースの共振周波数が異なる周波数となるように構成したものである。
【0006】
上記発明によれば、圧電体とケースが共振することを阻害でき、一対の超音波振動子で送受信する超音波パルスに対する不要振動の影響が低減できる。このため温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の形態の超音波振動子は、電気信号と機械的振動を相互に変換する圧電体と、前記圧電体の外側にケースと、整合層とを備え、前記圧電体は前記ケースの天部の内壁側に固定され、前記整合層は前記ケースの外壁側に固定され、前記圧電体の不要振動モードの共振周波数と前記ケースの共振周波数が異なる周波数であるように超音波振動子を構成したため、不要振動モードの影響を温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0008】
本発明の第2の形態の超音波振動子は、第1の形態の超音波振動子において、圧電体は縦振動及び広がり振動する構成とし、縦振動の共振周波数又は広がり振動する共振周波数を不要振動モードの周波数である構成としたため、温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0009】
本発明の第3の形態の超音波振動子は、第1の形態の超音波流量計において、ケースの内壁側面又は外壁側面に制振体を固定したため、不要振動モードの影響を温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0010】
本発明の第4の形態の超音波振動子は、第3の形態の超音波流量計において、制振体が剛体からなるように構成したため、不要振動モードの影響を低減でき温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0011】
本発明の第5の形態の超音波振動子は、第3の形態の超音波流量計において、制振体が弾性体からなるよう構成したため、不要振動モードの影響を低減でき温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0012】
本発明の第6の形態の超音波振動子は、第1の形態の超音波流量計において、ケースの側壁部に折り曲げ部を設けたため、不要振動モードの影響を低減でき温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0013】
本発明の第7の形態の超音波流量計は、第1の形態の超音波流量計において、ケースの天部が圧電体の形状に類似した形状であるため、圧電体の方向がわかるようになり超音波流量計への取付が容易となる。
【0014】
本発明の第8の形態の超音波流量計は、被測定流体が流れる流量測定部と、この流量測定部に設けられ超音波を送受信する第1ないし7のいずれかの形態の一対の超音波振動子と、一方の前記超音波振動子を駆動する駆動回路と、他方の前記超音波振動子に接続され超音波パルスを検知する受信検知回路と、前記超音波パルスの伝搬時間を測定するタイマと、前記駆動回路と前記タイマを制御する制御部と、前記タイマの出力より流量を演算によって求める演算部とを備えた超音波流量計であるため、不要振動モードの影響を低減でき温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。なお図面中で同一符号を付しているものは同一なものであり、詳細な説明は省略する。
【0016】
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の超音波流量計を示すブロック図である。図1において、1は被測定流体が流れる流量測定部、2、3は流量測定部1の流れの方向に対し斜めに対向して配置された超音波振動子、4は超音波振動子2、3の使用周波数を発信する発振回路、5は発振回路4に接続され超音波振動子2、3を駆動する駆動回路、6は送受信する超音波振動子を切り替える切替回路、7は超音波パルスを検知する受信検知回路、8は超音波パルスの伝搬時間を計測するタイマ、9はタイマ8の出力より流量を演算する演算部、10は駆動回路5とタイマ8に制御信号を出力する制御部である。
【0017】
まず動作、作用について説明する。例えば非測定流体を空気、超音波振動子2、3の使用周波数には約500kHzを選択する。発振回路4は例えばコンデンサと抵抗で構成され約500kHzの方形波を発信し、駆動回路7では発振回路4の信号から超音波振動子2を駆動するため方形波が3波のバースト信号からなる駆動信号を出力可能とする。また測定手段には測定流量の分解能を向上するため、例えばシングアラウンド法を用いる。
【0018】
制御部10では駆動回路5に送信開始信号を出力すると同時に、タイマ8の時間計測を開始させる。駆動回路5は送信開始信号を受けると超音波振動子2を駆動し、超音波パルスを送信する。送信された超音波パルスは流量測定1内を伝搬し超音波振動子3で受信される。受信された超音波パルスは超音波振動子3で電気信号に変換され、受信検知回路7に出力される。受信検知回路7では受信信号の受信タイミングを決定し、制御部10に受信検知信号を出力する。制御部10では受信検知信号を受けると、あらかじめ設定した遅延時間td経過後に再び駆動回路5に送信開始信号を出力し、2回目の計測を行う。この動作をN回繰返した後、タイマ8を停止させる。演算部10ではタイマ8で測定した時間を測定回数のNで割り、遅延時間tdを引いて伝搬時間t1を演算する。
【0019】
引き続き切替回路6で駆動回路5と受信回路7に接続する超音波振動子を切り替え、再び制御部10では駆動回路5に送信開始信号を出力すると同時に、タイマ8の時間計測を開始させる。伝搬時間t1の測定と逆に、超音波振動子3で超音波パルスを送信し、超音波振動子2で受信する計測をN回繰返し、演算部9で伝搬時間t2を演算する。
【0020】
ここで、超音波振動子2と超音波振動子3の中心を結ぶ距離をL、空気の無風状態での音速をC、流量測定部1内での流速をV、非測定流体の流れの方向と超音波振動子2と超音波振動子3の中心を結ぶ線との角度をθとすると、伝搬時間t1、t2は、
t1=L/(C+Vcosθ) (1)
t2=L/(C−Vcosθ) (2)
で示される。(1)(2)式より音速Cを消去して、流速Vを求めると
V=L/2cosθ(1/t1−1/t2) (3)
が得られる。L、θは既知であるのでt1とt2を測定すれば流速Vが求められる。この流速Vと流量測定部1の面積をS、補正係数をKとすれば、流量Qは
Q=KSV (4)
で演算できる。
【0021】
次に流れが無い状態での流量計測における不要振動モードの影響を考える。一般的にシングアラウンド法では、超音波振動子2から送信された超音波パルスの残響時間や超音波パルスを受信した超音波振動子3の振動時間が伝搬時間t1よりも長い場合、時間計測においてこれら振動の影響を受ける。そこでこれら振動に使用周波数以外の周波数成分が含まれていると仮定し、温度によるゼロ点の変動を計算する。使用する周波数をf1、不要振動の周波数をf2とし、計算を簡易にするためf1、f2は連続する正弦波とし、不要振動の振幅をAとする。なおf2には周波数のずれが存在し、その周波数差をdf2とする。また空気の流れは無いので、温度をTとすると超音波振動子間を伝搬する時間Ptは、
Pt=L/(331+0.6・T) (5)
で示される。
【0022】
ここで超音波振動子2で送信する場合を、
R1=sin{2π・f1・(tーPt)}+Asin(2π・f2・t) (6)
超音波振動子3で送信する場合を、
R2=sin{2π・f1・(tーPt)}+Asin{2π・(f2+df2)・t} (7)
とする。(6)、(7)式より温度Tを変えたときのR1、R2が5回目にゼロと交差する時間t1、t2を求め、(3)式を用いて流量を算出する。f1を500kHz、f2を200kHz、Aを−60dBとして、df2が0kHz、1kHz、5kHzでの計算結果を図2〜4に示す。
【0023】
図2のように、f2にずれが無い場合は、温度によるゼロ点の変動は見られない。一方df2が1kHz、5kHzである図3と図4では、温度によりゼロ点が周期的な変動している。またdf2の大きさによって、振幅に変化が見られる。以上の計算結果から、不要振動モードの影響で温度によりゼロ点が周期的な変動をすることが推定できる。
【0024】
そこで超音波振動子の構成と使用周波数、不要振動周波数の関係を示す。超音波振動子11の構成の一例を図5、この超音波振動子11に用いる圧電体を図6、7に示す。超音波振動子11は圧電体12とケース13と整合層14、裏ぶた15からなる。ケース13には厚み0.2mmのステンレスを用い、深さが約3mmとなるよう成形加工する。このケース13に裏ぶた15だけを取り付けた形状の振動解析を有限要素法を用いて行うと、約200kHz付近に共振モードが存在する。超音波振動子11に用いる圧電体12は、電極面の1辺が約8mmの正方形で、高さが約2.7mmとする。この形状の圧電体12は縦振動できないので、図6のように圧電体16に縦の溝17を3本、図7のように圧電体18に縦横の溝19を各3本設け、縦振動可能な構成とする。これら構成の圧電体16、圧電体18のインピーダンス特性を図8、図9に示す。図8のインピーダンス特性では200kHz付近に不要振動モードの共振が見られる。これに対し図9のインピーンダス特性では200kHz付近の不要振動モードの共振がほぼ見られない。
【0025】
圧電体16、圧電体18を用いた超音波振動子を構成し、温度変化によるゼロ点の変動を測定した実験結果を図10、図11に示す。図10では温度変化によりゼロ点が周期性的な変動を示している。これに対し図11では温度変化によるゼロ点の変動に周期的な現象が見られない。
【0026】
上記結果より、圧電体12の不要振動モードの共振周波数とケース13の共振周波数が近い値のとき温度変化によりゼロ点が周期的な変動し、圧電体12の不要振動モードの共振周波数とケース13の共振周波数が異なる周波数となるように圧電体12を構成すると温度変化に依存せずゼロ点が安定することがわかる。
【0027】
なお実施例1では流量計測にシングアラウンド法を用いるとしたが、上記条件に限定されるわけでなく、1回だけの計測でも、周期的な計測をN回行いその平均値を測定する方法に用いてもよい。また非測定流体を空気としたが、空気以外のLPガスや都市ガスのような気体でも、水やガソリンのような液体でも構わない。
【0028】
また一対の超音波振動子を流れに対して斜めに対向するように配置したが、流れに対して平行に配置しても構わないし、流量測定部の内壁面での反射を利用するような位置に配置しても構わない。また超音波振動子の使用周波数を500kHz、不要振動の周波数を200kHzとしたが、上記条件に限定されるわけでなく、使用周波数は気体であれば10kHz〜1MHz、液体であれば100kHz〜10MHz程度の範囲が一般的である。また圧電体の電極面の1辺が8mmの正方形で高さが2.7mmの直方体としたが、上記寸法以外の直方体でも、薄い円板、円柱、多角形の柱でも構わない。
【0029】
(実施例2)
以下、本発明の実施例2について、図面を参照しながら説明する。図12は実施例2の超音波振動子の断面図である。20は超音波振動子、22はケース、23は整合層、24は裏ぶたで、以上は図5の構成と同様なものである。図5の構成と異なるのは、圧電体12を円柱状とした点である。なお動作原理は実施例1と同様なので省略する。
【0030】
例えば直径1.5mm、高さが2.7mmの円柱状の9本の圧電体21と、整合層23をケース22の天部に接着固定して、裏ぶた24をケース22に電気溶接する。圧電体21では広がり振動の共振周波数のほうが縦振動の共振周波数より高周波に存在する。このため広がり振動を不要振動とすれば、圧電体21の不要振動モードの共振周波数とケース22の共振周波数が異なる周波数となるため、不要振動モードの影響が低減でき実施例1と同様に温度変化に依存せずゼロ点が安定する。
【0031】
なお実施例2では円柱状の圧電体の縦振動を用いるとしたが、多角形の柱状圧電体の縦振動でも構わないし、薄い円板の広がり振動でも構わない。また圧電体21を9本設けるとしたが、必要な数量を用いればよく、1本以上なら何本でも構わない。
【0032】
(実施例3)
以下、本発明の実施例3について、図面を参照しながら説明する。図13は実施例3の超音波振動子の断面図である。25は超音波振動子、26は圧電体、27はケース、29は整合層、30は裏ぶたで、以上は図5の構成と同様なものである。図5の構成と異なるのは、ケース27の内壁側面に制振体27を設けた点である。なお動作原理は実施例1と同様なので省略する。
【0033】
例えば厚みが0.3mmで幅が2.5mmのステンレス製リングからなる制振体27をケース28の内壁側面に接着固定する。圧電体26は制振体28に接触すると特性が劣化するので、圧電体26と制振体27は接触しないように構成する。整合層23と裏ぶた30を取り付けて、超音波振動子25を構成する。圧電体26の不要振動モードの共振周波数は図8に示すように約200kHzである。ケース28は制振体27が接着されたため、質量が増加し、共振周波数が200kHzよりも低周波側にシフトする。さらに剛性も向上するため、振動しにくくなる。
【0034】
上記構成の超音波振動子25を用いた超音波流量計で温度変化によるゼロ点の変動を測定した実験では、実施例1の図11とほぼ等しい結果が得られた。以上のように圧電体26には200kHzの不要振動モードがあっても、ケース28に剛体からなる制振体27を設けて圧電体26の不要振動モードの周波数と異なる共振周波数となるようにすれば、温度変化に依存せずゼロ点が安定することがわかる。さらに制振体27はケース28に内包されているため、非測定流体に直接触れることがほとんど無いため非測定流体による腐食が防止でき、長期信頼性も向上できる。
【0035】
なお実施例3では制振体27は厚みが0.3mmで幅が2.5mmのステンレス製リングとしたが、寸法、材質、形状を変更してよく、複数の棒や板でも構わない。また制振体27をケース28の内壁側面に接着固定するとしたが、接着以外の手段で固定しても良いし、外壁側面に設けてもよい。
【0036】
(実施例4)
以下、本発明の実施例4について、図面を参照しながら説明する。図14は実施例4の超音波振動子の断面図である。31は超音波振動子、32は圧電体、34はケース、35は整合層、36は裏ぶたで、以上は図5の構成と同様なものである。図5の構成と異なるのは、ケース34の外壁側面に制振体33を設けた点である。なお動作原理は実施例1と同様なので省略する。
【0037】
例えば厚みが50μmのポリイミドと25μmのシリコン系の接着剤からなるカプトンテープを制振体33として用いる。シリコン系接着剤は低温でも硬度が変化しにくいので広い温度範囲で弾性体として用いることが可能である。またポリイミドは制振体33の質量を増加させて、制振効果を増加させる作用を有す。ケース34に圧電体32と整合層35を接着し、裏ぶた36を電気溶接したのち、ケース34の外壁側面にカプトンテープを数周巻付けて制振体33を構成する。超音波振動子31の200kHz付近の共振は、制振体33を設けることにより共振が少しだけ弱められることを確認した。これは弾性体である制振体33がケース34の振動エネルギを吸収、損失させ、機械的Qを低減したためと考えられる。
【0038】
上記構成の超音波振動子31を用いた超音波流量計で温度変化によるゼロ点の変動を測定した実験では、実施例1の図11とほぼ等しい結果が得られた。以上のように圧電体32とケース34は200kHzの不要振動モードがあっても、ケース34に弾性体からなる制振体33を設けて超音波振動子31の共振を弱めれば、温度変化に依存せずゼロ点が安定することがわかる。さらに制振体33は非常に薄いため、超音波振動子31をあまり大きくすることなくゼロ点の安定性が向上できる。
【0039】
なお実施例4では制振体33はポリイミドとシリコン系接着剤からなるカプトンテープをケース33の外壁に巻付けて構成するとしたが、カプトンテープ以外のテープでも構わないし、筒状やリング状のゴム成形品をケース33の外壁や内壁にはめ込む構成や、ケース34の外壁や内壁にゴムあるいは制振塗料などを塗布して構成しても構わない。
【0040】
(実施例5)
以下、本発明の実施例5について、図面を参照しながら説明する。図15は実施例5の超音波振動子の断面図である。37は超音波振動子、38は圧電体、39はケース、41は整合層、42は裏ぶたで、以上は図5の構成と同様なものである。図5の構成と異なるのは、ケース39の側壁にケース39の剛性を高めるため天部と同心円状の折り曲げ部40を設けた点である。なお動作原理は実施例1と同様なので省略する。
【0041】
厚み0.2mmのステンレス板から天部を有するケース39を成型加工する。このとき、側壁には天部と同心円状の折り曲げ部40を同時に成型加工する。天部の内壁側に圧電体38、外壁側に整合層41を接着固定し、裏ぶた42を電気溶接して超音波振動子37を組み立てる。ケース39は実施例1のケース13とほぼ同じ構成をしているが、折り曲げ部40が設けられたため剛性が増大し側壁部は振動しにくくなる。またケース39の共振周波数は200kHzよりも高周波側にシフトし、圧電体38の不要振動モードの周波数とは異なる周波数となる。このように圧電体38に200kHzの不要振動モードが存在しても、折り曲げ部40を設けてケース39の剛性を増大させれば、ケース39に制振体などの部品を取り付けたり、大きさを変えたりしなくても容易に温度変化に依存しない安定したゼロ点が得られる。
【0042】
なお実施例5では折り曲げ部40を天部と同心円状に構成するとしたが、折り曲げ部40は2ケ所以上設けても良く、例えば図16に示すように、複数のビード43や、図17に示すように縦方向に折り曲げ部44を設けても構わない。また圧電体が例えば四角形の場合、図18のように天部45が四角形に類似した形状となるよう成型加工するとケースに内包された圧電体の方向がわかるようになり、流量測定部1への取付が容易となる。なお圧電体が四角形以外の多角形の場合、少なくとも天部の形状は圧電体の形状に合わせて変化させればいいということは言うまでもない。
【0043】
なお、実施例1、3〜5ではケースがステンレスとしたが、非測定流体中で使用可能な材料ならなんでも良い。またケースの厚みを0.2mmとしたが、この厚みよりも厚くても薄くても構わないし、ケース全体の厚みを同一にする必要もない。また圧電体の使用周波数を500kHz、不要振動周波数を200kHzとしたが、使用する圧電体の形状や振動モードのより使用周波数や不要振動周波数が変化することは言うまでもない。
【0044】
以上のように各実施例によれば、次の効果が得られる。
【0045】
第1の超音波振動子は、電気信号と機械的振動を相互に変換する圧電体と、前記圧電体の外側にケースと、整合層とを備え、前記圧電体は前記ケースの天部の内壁側に固定され、前記整合層は前記ケースの外壁側に固定され、前記圧電体の不要振動モードの共振周波数と前記ケースの共振周波数が異なる周波数であるように超音波振動子を構成したため、不要振動モードの影響を温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0046】
第2の超音波振動子は、第1の形態の超音波振動子において、圧電体は縦振動及び広がり振動する構成とし、縦振動の共振周波数又は広がり振動する共振周波数を不要振動モードの周波数である構成としたため、温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0047】
第3の形態の超音波振動子は、第1の形態の超音波流量計において、ケースの内壁側面又は外壁側面に制振体を固定したため、不要振動モードの影響を温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0048】
第4の超音波振動子は、第3の形態の超音波流量計において、制振体が剛体からなるように構成したため、不要振動モードの影響を低減でき温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0049】
第5の超音波振動子は、第3の形態の超音波流量計において、制振体が弾性体からなるよう構成したため、不要振動モードの影響を低減でき温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0050】
第6の超音波振動子は、第1の形態の超音波流量計において、ケースの側壁部に折り曲げ部を設けたため、不要振動モードの影響を低減でき温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0051】
第7の超音波流量計は、第1の形態の超音波流量計において、ケースの天部が圧電体の形状に類似した形状であるため、圧電体の方向がわかるようになり超音波流量計への取付が容易となる。
【0052】
第8の超音波流量計は、被測定流体が流れる流量測定部と、この流量測定部に設けられ超音波を送受信する第1ないし7のいずれかの一対の超音波振動子と、一方の前記超音波振動子を駆動する駆動回路と、他方の前記超音波振動子に接続され超音波パルスを検知する受信検知回路と、前記超音波パルスの伝搬時間を測定するタイマと、前記駆動回路と前記タイマを制御する制御部と、前記タイマの出力より流量を演算によって求める演算部とを備えた超音波流量計であるため、不要振動モードの影響を低減でき温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【0053】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明の超音波振動子によれば次の効果が得られる。
【0054】
第1の超音波振動子は、電気信号と機械的振動を相互に変換する圧電体と、前記圧電体 の外側にケースと、整合層とを備え、前記圧電体は前記ケースの天部の内壁側に固定され、前記整合層は前記ケースの外壁側に固定され、前記圧電体の不要振動モードの共振周波数と前記ケースの共振周波数が異なる周波数であるように超音波振動子を構成したため、不要振動モードの影響を温度変化によるゼロ点の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における超音波流量計のブロック図
【図2】同流量計において周波数差df2が0kHzの場合について計算した特性図
【図3】同流量計において周波数差df2が1kHzの場合について計算した特性図
【図4】同流量計において周波数差df2が5kHzの場合について計算した特性図
【図5】同流量計における超音波振動子の断面図
【図6】同流量計における超音波振動子の断面図
【図7】同流量計における圧電体(縦横溝)の外観斜視図
【図8】同流量計における圧電体(縦溝)のインピーダンス特性図
【図9】同流量計における圧電体(縦横溝)のインピーダンス特性図
【図10】同流量計において縦溝の圧電体を用いて測定した特性図
【図11】同流量計において縦横溝の圧電体を用いて測定した特性図
【図12】本発明の実施例2における超音波振動子の断面図
【図13】本発明の実施例3における超音波振動子の断面図
【図14】本発明の実施例4における超音波振動子の断面図
【図15】本発明の実施例5における超音波振動子の断面図
【図16】同超音波振動子の変形例1の断面図
【図17】同超音波振動子の変形例2の側面図
【図18】同超音波振動子の変形例3の外観図
【符号の説明】
1 流量測定部
2、3、20、25、31、37 超音波振動子
5 駆動回路
7 受信検知回路
8 タイマ
9 演算部
10 制御部
12、21、26、32、38 圧電体
13、22、28、34、39 ケース
27、33 制振体
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