JP4857464B2 - 超音波センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、超音波センサに関し、特に、たとえばガス流量計などに用いられる超音波センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来の超音波センサの一例を示す図解図である。超音波センサ1は、圧電素子2を含む。圧電素子2の一方面側には、音響整合層3が形成される。また、圧電素子2の他方面側には、圧電素子2の他方面から放出される音波を吸収するためのバッキング層4が形成される。このような超音波センサ1では、圧電素子2に信号を入力することにより、圧電素子2が振動し、音響整合層3を介して超音波が放出される。また、音響整合層3を介して受信した超音波により、圧電素子2から信号が出力される。なお、音響整合層3は、超音波センサ外部の超音波が伝播する媒質との音響インピーダンスの整合をとるために形成されている。
【0003】
このような超音波センサ1を用いてガス流量などを測定する場合、図9に示すように、流路に対して斜めとなるようにして、ガス配管5に2つの超音波センサ1が対向して取り付けられる。そして、一方の超音波センサ1から超音波が放出され、他方の超音波センサ1によって受信される。反対に、他方の超音波センサ1から超音波が放出され、一方の超音波センサ1によって受信される。これらの2方向の超音波の送受信に要する時間の差から、ガス流量が測定される。
【0004】
ガス流量計のように高い精度を要求される用途においては、Qが低く、広帯域にわたって安定で、応答性に優れ、かつ相互の特性ばらつきの小さい超音波センサが要求される。そのための方法として、圧電振動子に負荷を与えることによってQを低くしたり、音響整合層の表面を曲面にすることで音響整合層のQを低下させたり、圧電素子の複数の振動モードを使用するという方法が採用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧電振動子に負荷を与える方法では、負荷による損失の増大により、感度の低下が著しいという問題がある。また、音響整合層の表面を曲面にしたり、圧電素子の複数の振動モードを使用する方法では、センサ間で特性ばらつきが生じ、ピークの周波数が揃わず、センサ相互の感度差が生じて正確な測定を行うことができない。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、高感度で、Qが低く、かつ広帯域な周波数特性を有する超音波センサを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、圧電素子と、天面を有する筒状に形成された音響インピーダンスの調整のための音響整合層とを含む超音波センサにおいて、感度を有する周波数帯域内に、圧電素子の1つの共振モードと、音響整合層の複数の共振モードとが存在し、音響整合層の共振モードとして音響整合層の天面の厚み振動モードと音響整合層全体の撓み振動モードとを使用したことを特徴とする、超音波センサである。
このような超音波センサにおいて、音響整合層の共振周波数が、圧電素子の共振周波数の0.8〜1.2倍の範囲内に存在することが好ましい。
特に、音響整合層の共振周波数が、圧電素子の共振周波数の0.8〜0.9倍の範囲内と、圧電素子の共振周波数の1.1〜1.2倍の範囲内に1つずつ存在することが好ましい。
さらに、音響整合層の天面の端部にテーパ部が形成されてもよい。
また、音響整合層の材料として、エポキシ樹脂にガラスバルーンを混合した材料を用いることができ、その比重が0.5以下であることが好ましい。
このような超音波センサにおいて、圧電素子の振動モードとして、広がり振動モードを使用することができる。
【0008】
超音波センサの感度を有する周波数帯域内に複数の振動モードが存在することより、それぞれの振動モードによる感度が互いに重なり合い、全体として損失が少なく、広い周波数帯域を有する超音波センサとすることができる。
このような超音波センサにおいて、複数の振動モードの共振周波数の位置を適当に配置することにより、感度特性にピークをもたず、応答性に優れ、特性ばらつきが小さく、高感度で低残響の超音波センサを得ることができる。このような振動モードの共振周波数の配置としては、圧電素子の共振周波数の0.8〜1.2倍の範囲内に、音響整合層の複数の共振周波数が存在するときに、このような効果を得ることができる。
特に、圧電素子の共振周波数の0.8〜0.9倍の範囲内と、圧電素子の共振周波数の1.1〜1.2倍の範囲内に、音響整合層の共振周波数が1つずつ存在するときに、顕著にこのような効果が現れる。
音響整合層としては、天面を有する筒状のものを使用することができ、音響整合層の天面の厚み振動モードと、音響整合層全体の撓み振動モードとを用いることができる。そして、これらの振動モードを上述のような範囲内に配置することにより、感度特性にピークをもたず、応答性に優れ、特性ばらつきが小さく、高感度で低残響の超音波センサを得ることができる。
音響整合層の天面の厚み振動モードの共振周波数は、天面の厚みを調整することにより調整することができる。また、音響整合層全体の撓み振動モードの共振周波数は、音響整合層の天面端部にテーパ部を形成し、このテーパ部の大きさによって調整することができる。
音響整合層の材料としては、エポキシ樹脂にガラスバルーンを混合した材料を用いることができ、その比重を0.5以下にしたときに高効率の超音波センサを得ることができる。
また、圧電素子の振動モードとして厚み振動を利用することもできるが、Qを低くするために圧電体を細長くする必要があるため、薄板状の圧電体を用いた圧電素子の広がり振動を利用したほうが、設計が容易で、小型化が可能である。
【0009】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明の実施の形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の超音波センサの一例を示す図解図である。超音波センサ10は、圧電素子12を含む。圧電素子12は、たとえば円板状の圧電体基板を含み、この圧電体基板の両面に電極が形成されたものである。この超音波センサ10では、たとえば圧電素子12の広がりモードの振動が利用される。圧電素子12の広がりモードの共振周波数は、圧電体基板の径によって決まる。そこで、使用する周波数帯の中央付近に共振周波数が存在するように、圧電体基板の径が決定される。
【0011】
圧電素子12の一方面は、音響整合層14の内側に取りつけられる。音響整合層14は、圧電素子12と、外部の媒質との音響インピーダンスのマッチングをとるために用いられる。音響整合層14は、たとえばエポキシ樹脂にガラスバルーンを混合して硬化することにより形成され、比重が0.5以下となるように形成される。音響整合層14は、天面を有する円筒状に形成され、天面の端部にテーパ部16が形成される。さらに、音響整合層14の天面の反対側において、圧電素子12の他方面側にバッキング層18が形成される。バッキング層18は、圧電素子12の他方面側から放出される超音波を吸収するためのものである。
【0012】
このような形状の音響整合層14では、天面の厚み振動モードと、音響整合層14全体の撓み振動モードとが存在する。音響整合層14の厚み振動モードの共振周波数は、図2(1)(2)に示すように、天面の厚みによって調整することができる。また、音響整合層14全体の撓み振動モードの共振周波数は、図3(1)(2)に示すように、天面端部に形成されたテーパ部16の大きさによって調整するのが最も容易である。この超音波センサ10では、図4に示すように、音響整合層14の厚み振動モードが、圧電素子12の共振周波数の0.8〜0.9倍の周波数となるように調整される。また、音響整合層14全体の撓み振動モードは、圧電素子12の共振周波数の1.1〜1.2倍の周波数となるように調整される。なお、周波数が適正に設定されるのであれば、必ずしもテーパ部が形成される必要はない。
【0013】
この超音波センサ10では、圧電素子12の共振周波数と音響整合層14の共振周波数の両方が存在するため、図5に示すように、それぞれの振動モードによる感度が重なり合って、全体として広帯域の周波数特性を有し、高感度でかつ高応答性を有する超音波センサとすることができる。
【0014】
なお、圧電素子12の共振周波数に対する音響整合層14の共振周波数の比率や順序が変化しても、広帯域化の効果を得ることができる。しかしながら、各共振周波数の位置関係や順序によっては、超音波センサのQが上昇し、感度特性にピークが生じる場合がある。これらの共振周波数の関係を調べたところ、音響整合層14の振動モードの共振周波数が、圧電素子12の共振周波数の0.8〜1.2倍の範囲にあるときに、良好な特性が得られることがわかった。特に、音響整合層14の厚み振動モードの共振周波数が圧電素子12の共振周波数の0.8〜0.9倍の範囲にあり、音響整合層14全体の撓み振動モードの共振周波数が圧電素子12の共振周波数の1.1〜1.2倍の範囲にあるときに、最も広帯域で安定した超音波センサが得られることがわかった。また、この場合、感度特性にほとんどピークが生じないため、複数の超音波センサ10の間において、感度特性のばらつきを小さくすることができる。たとえば、図6に示すように、矩形波状の超音波を受信したとき、従来の超音波センサでは中央部にピークを有する信号が出力されるが、この発明の超音波センサ10では、受信波形に近い形状の信号が出力される。
【0015】
また、音響整合層14の比重は0.5以下であるときに最も効率がよくなるが、音響整合層14の音響インピーダンスが圧電素子12の音響インピーダンスと、超音波が伝播する媒質の音響インピーダンスとの間にあれば、効率のよい超音波センサを得ることができる。
【0016】
圧電素子12の共振モードとしては、広がり振動以外に、厚み振動を利用することもできる。ただし、厚み振動を用いた場合、図7に示すように、Qを低くするために圧電体を長くする必要がある。したがって、薄板状の圧電体基板の広がり振動を利用したほうが、設計が容易で、かつ小型化が可能である。
【0017】
また、音響整合層14の共振モードは、厚み振動や広がり振動以外、たとえば高次の振動モードを用いてもよい。さらに、圧電素子12から放出される超音波を吸収するためのバッキング層18は必ずしも形成される必要はないが、バッキング層18を形成することにより、超音波センサ10の応答性を改善することができる。
【0018】
【発明の効果】
この発明によれば、圧電素子の振動モードによる感度と音響整合層の複数の振動モードによる感度とが重なり合うことにより、高感度で、高応答性、広帯域、低残響な超音波センサを得ることができる。さらに、超音波センサのQが低いため、感度にピークが発生せず、超音波センサ間における特性ばらつきを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の超音波センサの一例を示す図解図である。
【図2】音響整合層の厚みと共振周波数との関係を示すグラフである。
【図3】テーパ部の大きさと共振周波数との関係を示すグラフである。
【図4】この発明の超音波センサの周波数特性を示すグラフである。
【図5】この発明の超音波センサと従来の超音波センサの感度特性を示すグラフである。
【図6】この発明の超音波センサと従来の超音波センサについて、矩形波状の超音波を受信したときの出力信号を示す波形図である。
【図7】圧電素子の厚み振動を利用した場合と広がり振動を利用した場合の圧電素子の形状を示す図解図である。
【図8】従来の超音波センサの一例を示す図解図である。
【図9】超音波センサをガス流量計として用いた場合を示す図解図である。
【符号の説明】
10 超音波センサ
12 圧電素子
14 音響整合層
16 テーパ部
18 バッキング層
Claims (6)
- 圧電素子と、天面を有する筒状に形成された音響インピーダンスの調整のための音響整合層とを含む超音波センサにおいて、
感度を有する周波数帯域内に、前記圧電素子の1つの共振モードと、前記音響整合層の複数の共振モードとが存在し、前記音響整合層の共振モードとして前記音響整合層の天面の厚み振動モードと前記音響整合層全体の撓み振動モードとを使用したことを特徴とする、超音波センサ。 - 前記音響整合層の共振周波数が、前記圧電素子の共振周波数の0.8〜1.2倍の範囲内に存在することを特徴とする、請求項1に記載の超音波センサ。
- 前記音響整合層の共振周波数が、前記圧電素子の共振周波数の0.8〜0.9倍の範囲内と、前記圧電素子の共振周波数の1.1〜1.2倍の範囲内に1つずつ存在することを特徴とする、請求項2に記載の超音波センサ。
- 前記音響整合層の天面の端部にテーパ部を形成したことを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の超音波センサ。
- 前記音響整合層の材料として、エポキシ樹脂にガラスバルーンを混合した材料が用いられ、その比重が0.5以下であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の超音波センサ。
- 前記圧電素子の振動モードとして、広がり振動モードが使用される、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の超音波センサ。
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