JP2000287673A - 微生物を用いる塩素化グリセリドの分解方法 - Google Patents

微生物を用いる塩素化グリセリドの分解方法

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利雄 鈴木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塩素化グリセリドを分解する方法。 【解決手段】 塩素化グリセリドに、その分解活性を有
する微生物、例えばシュードモナス(Pseudomonas)sp.
OS-K-29株(FERM BP-994)を作用させることを特徴とす
る該塩素化グリセリドを分解する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は下記式(1)で表さ
れる塩素化グリセリドを簡便に分解する方法に関するも
のである。
【化5】 (式中、X1〜X3は後掲と同じものを意味する。) これらの塩素化グリセリドは、肉類、魚肉、大豆などの
脂肪を含む食物を塩酸分解して各種のスープ、ペース
ト、醤油などを製造する際に副生するものであり、生体
に好ましい影響を与えないと考えられている。
【0002】
【従来の技術】塩素化グリセリドの生成に関する報告は
いくつかされている(Velisek, JanらSb. Vys. Sk. Che
m-Technol. Praze, Postraviny 1982, E53, 55-65;Vel
isek,Janら J. Agric. Food. Chem.,(1980), 28, 1142-
1144)。また、植物蛋白質プロセス中にできるクロロヒ
ドリン類の石灰による分解も報告されている(Hirsbrun
ner, Pierreら WO 97-15353)。一方、クロロプロパノ
ールに関する分解は、本発明者らによって報告されてい
る(特公平 1-55879、Agric. Biol. Chem., 54, 3185-31
90(1990)、 J. Mol. Catalysis B, Enzymatic 4 (1998)
237-252)。しかしながら、塩素化グリセリド分解、特
にここで問題となるステアリン酸のような長鎖脂肪酸の
塩素化グリセリドに関する分解例は報告されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】塩素化グリセリドは好
ましくない物質であるにも拘わらず、その温和で簡便な
分解あるいは除去方法が知られていないばかりか、生体
への影響や環境汚染問題などからその除去の必要性が高
まっている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは塩素化グリ
セリドにクロロプロパノール分解菌、例えばシュードモ
ナス(Pseudomonas)sp. OS-K-29(FERM BP-994)を作
用させ、その分解を試みた。その結果、塩素化グリセリ
ドは、脂肪酸エステル部分を加水分解しながら、クロロ
プロパノールと脂肪酸を与え、さらにクロロプロパノー
ルは脱クロル化されることが判明し、本発明を完成する
に至った。
【0005】すなわち、本発明は一般式(1)
【化6】 (式中、X1〜X3のうち、少なくとも1個はOR基、少
なくとも1個はクロル原子であり、そして他はヒドロキ
シ基でもよい。ただし、Rは不飽和結合を有していても
よい脂肪酸残基を意味する。)で表される塩素化グリセ
リドにその分解活性を有する微生物、その微生物培養物
またはその微生物由来の酵素を作用させることを特徴と
する該塩素化グリセリドを分解する方法に関する。
【0006】本発明は、さらに具体的には下記式
(2)、(3)、(4)
【化7】
【化8】
【化9】 (上記式中、Rは不飽和結合を有していてもよい脂肪酸
残基を意味する。)で表されるいずれかの塩素化グリセ
リドに脂肪酸分解活性とクロロプロパノール分解活性を
有する微生物、その微生物培養物またはその微生物由来
の酵素を作用させことを特徴とする該塩素化グリセリド
を分解する方法に関する。上記式中のRで表される不飽
和結合を有していてもよい脂肪酸残基は、炭素数2以上
のものであり、好ましい具体例としてはパルミチン酸、
ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸
などの炭素数8以上の長鎖脂肪酸残基を挙げることがで
きる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明は常法にしたがって実施さ
れる。すなわち、式(1)の塩素化グリセリドに、その
分解活性を有する微生物、その微生物培養物またはその
微生物由来の酵素をその酵素の至適pH溶液中で作用さ
せればよい。なお、反応が進行するに従い遊離する塩素
イオンにより反応液のpHが徐々に低下するが、適当な
アルカリ、例えば炭酸カルシウム溶液、水酸化ナトリウ
ム溶液、炭酸ナトリウム溶液、アンモニア水等通常、酸
を中和させるためのものを利用して反応液のpHの範囲
に保つのがよい。本発明に使用される微生物としては、
脂肪酸エステル分解活性と塩素化グリセリド(1)の塩
素を分解あるいは脱離しうる活性、例えばクロロプロパ
ノール分解活性を有するものであればよく、好ましくは
シュードモナス属に属する菌株、殊にシュードモナス(P
seudomonas)sp.OS-K-29株(FERM BP-994)である。
【0008】本発明に係る微生物を培養するための培地
組成としては、通常この微生物が生育する培地であれ
ば、特に制限されない。例えば、炭素原としてグルコー
ス、ガラクトース、シュークロース等の炭水化物、グリ
セロール、ラセミ体3−ハロゲノ−1,2−プロパンジ
オール、RあるいはS体3−ハロゲノ−1,2−プロパ
ンジオール、ラセミ体2,3−ジクロロ−1−プロパノ
ール、R体2,3−ジクロロ−1−プロパノール等のア
ルコール類、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、
フマル酸、グルコン酸などの有機酸またはその塩、ある
いはそれらの混合物を、窒素源として硫酸アンモニウ
ム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機窒
素化合物、尿素、ペプトン、カゼイン、酵母エキス、肉
エキス、コーンスチープリカー等の有機窒素化合物とそ
れらの混合物を挙げることができる。その他、リン酸
塩、マグネシウム塩、カリウム塩、マンガン塩、鉄塩、
亜鉛塩、銅塩等の無機塩、さらに必要に応じてビタミン
類を加えてもよい。
【0009】また、高酵素活性を持った菌体を得るため
に、該菌株を培養する際に上記培地およびペプトン培
地、ブイヨン培地等の栄養培地にラセミ体3−ハロゲノ
−1,2−プロパンジオール、RもしくはS体3−ハロ
ゲノ−1,2−プロパンジオール、ラセミ体2,3−ジ
クロロ−1−プロパノールまたはR体2,3−ジクロロ
−1−プロパノールを添加してもよい。ラセミ体2,3
−ジクロロ−1−プロパノール、R体2,3−ジクロロ
−1−プロパノールまたはラセミ体3−ハロゲノ−1,
2−プロパンジオールを単一炭素源とする完全合成培地
で培養するのも有効である。
【0010】本発明に係る微生物の培養も常法によれば
よく、例えば、pHを6〜9、好ましくは6.5〜7.
5、培養温度は20〜40℃、好ましくは25〜37℃
の範囲で好気的に10〜96時間行うことが好ましい。
本発明に係る微生物を塩素化グリセリドに作用させ分解
するには、上記培養方法により得た微生物の1)培養液
に基質を加え反応させるか、あるいは2)遠心分離等に
より得た菌体およびその菌体処理物(菌体破砕物または
菌体抽出液)、または3)それらを常法により固定化し
たものを緩衝液等に混合し、これに基質を加え反応させ
ればよい。なお、本発明にはこの様な菌のみならず、そ
れが産生する酵素を用いてもよい。
【0011】反応温度は15〜50℃が好ましく、反応
pHは6〜9で行なうのが好ましい。反応液中の基質濃
度は0.1〜15%(v/v)が好ましく、基質は初期に
一括して加えてもよいし、分割添加してもよい。反応は
通常撹拌あるいは振盪しながら行い、反応時間は基質濃
度、微生物菌体量などにより異なるが、好ましくはガス
クロマトグラフィーあるいは塩素イオン分析等の分析に
より、残存基質量あるいは遊離させた塩素イオン濃度を
測定しながら終点を決定するのがよい。本発明は、塩素
化グリセリドのバイオ分解の基本を示すものであり、本
発明に係る微生物の脂肪酸エステル分解活性と脱クロル
活性を利用して、実際的に食品分野を中心とするこの種
の化合物の分解に利用できうるものである。以下に実施
例を挙げて本発明を説明するが、本願発明はこれらに限
定して解釈されるものではない。
【0012】
【実施例】実施例1.ポリペプトン1%w/v、酵母エキス1
%w/v、グリセリン1%w/v 初発pH7.0からなる培地100ml
を500ml容フラスコに入れ常法どおり、121℃10分間
加圧蒸気滅菌したのち、シュードモナス(Pseudomona
s)sp.OS-K-29株を28.7mg湿重菌体/ml植菌し、30℃、12
5回転で20時間振盪培養した。培養終了後、この培養液
を遠心分離し、蒸留水で2回洗浄し、洗浄菌体とした。
次いで、洗浄菌体は、0.5M燐酸バッファー(pH7.0)、
100ml懸濁し、1-ステアロイルオキシ-2,3-ジクロロプロ
パン0.3gを加え、500ml容フラスコ中で45℃、125回転
で5時間振盪させた。脱クロル活性は、塩素イオン計に
より測定した。その結果、1時間あたり22マイクロモル
の塩素遊離を認めた。すなわち、5時間では、1-ステア
ロイルオキシ-2,3-ジクロロプロパンの7.2モル%が脱塩
素化されたことを示した。
【0013】実施例2.実施例1と同様にし、塩素化グ
リセリドを2-ステアロイルオキシ-1,3-ジクロロプロパ
ンに変え脱クロル化活性を調べた。その結果、1時間あ
たり85マイクロモルの塩素遊離を認めた。
【0014】実施例3.実施例1と同様にし、塩素化グ
リセリドを1-ステアロイルオキシ-3-クロロ-2-プロパノ
ールに変え脱クロル化活性を調べた。その結果、1時間
あたり3マイクロモルの塩素遊離を認めた。
【0015】実施例4.実施例1と同様にし、塩素化グ
リセリドを1-ブチリルオキシ-2,3-ジクロロプロパンに
変え脱クロル化活性を調べた。その結果、1時間あたり1
98マイクロモルの塩素遊離を認めた。 実施例5.実施例1と同様にし、塩素化グリセリドを1-
オレオイルオキシ-2,3-ジクロロプロパンに変え脱クロ
ル化活性を調べた。その結果、1時間あたり17マイクロ
モルの塩素遊離を認めた。
【0016】実施例6.実施例1と同様にし、塩素化グ
リセリドを2-オレオイルオキシ-1,3-ジクロロプロパン
に変え脱クロル化活性を調べた。その結果、1時間あた
り31マイクロモルの塩素遊離を認めた。
【0017】
【発明の効果】本発明を実施することにより簡単に塩素
化グリセリドを分解することができ極めて有益である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 9/18 B09B 3/00 ZABA //(C12N 1/20 C12R 1:38) (C12N 9/02 C12R 1:38) (C12N 9/18 C12R 1:38) (72)発明者 井戸垣 秀聡 兵庫県尼崎市大高洲町9番地 ダイソー株 式会社内 Fターム(参考) 4B050 CC08 DD02 EE02 LL05 4B065 AA41X AC20 BB06 BD14 BD30 CA28 CA31 CA41 CA56 4D004 AA02 AB06 CA18 CC07

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式(1) 【化1】 (式中、X1〜X3のうち、少なくとも1個はOR基、少
    なくとも1個はクロル原子であり、そして他はヒドロキ
    シ基でもよい。ただし、Rは不飽和結合を有していても
    よい脂肪酸残基を意味する。)で表される塩素化グリセ
    リドに、その分解活性を有する微生物、その微生物培養
    物またはその微生物由来の酵素を作用させることを特徴
    とする該塩素化グリセリドを分解する方法。
  2. 【請求項2】 微生物がシュードモナス(Pseudomona
    s)属に属する微生物である請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 式(2) 【化2】 (式中、Rは不飽和結合を有していてもよい炭素数8以
    上の長鎖脂肪酸残基を意味する。)で表される塩素化グ
    リセリドに脂肪酸エステル分解活性とクロロプロパノー
    ル分解活性を有する微生物、その微生物培養物またはそ
    の微生物由来の酵素を作用させ分解する方法。
  4. 【請求項4】 式(3) 【化3】 (式中、Rは不飽和結合を有していてもよい炭素数8以
    上の長鎖脂肪酸残基を意味する。)で表される塩素化グ
    リセリドに脂肪酸エステル分解活性とクロロプロパノー
    ル分解活性を有する微生物、その微生物培養物またはそ
    の微生物由来の酵素を作用させ分解する方法。
  5. 【請求項5】 式(4) 【化4】 (式中、Rは不飽和結合を有していてもよい炭素数8以
    上の長鎖脂肪酸残基を意味する。)で表される塩素化グ
    リセリドに脂肪酸エステル分解活性とクロロプロパノー
    ル分解活性を有する微生物、その微生物培養物またはそ
    の微生物由来の酵素を作用させ分解する方法。
  6. 【請求項6】 微生物がシュードモナス(Pseudomona
    s)に属する微生物である請求項3−5のいずれかにに
    記載の方法。
  7. 【請求項7】 微生物がシュードモナス(Pseudomona
    s)sp.OS-K-29株(FERM BP-994)である請求項1−5の
    いずれかに記載の方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006159132A (ja) * 2004-12-09 2006-06-22 Ohbayashi Corp 汚染土壌・汚染水の浄化方法及び添加剤
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