JP2000275651A - 液晶素子 - Google Patents

液晶素子

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JP2000275651A
JP2000275651A JP8371399A JP8371399A JP2000275651A JP 2000275651 A JP2000275651 A JP 2000275651A JP 8371399 A JP8371399 A JP 8371399A JP 8371399 A JP8371399 A JP 8371399A JP 2000275651 A JP2000275651 A JP 2000275651A
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transmittance
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Yasushi Asao
恭史 浅尾
Masahiro Terada
匡宏 寺田
Takeshi Togano
剛司 門叶
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カイラルスメクチック液晶素子において、階
調性と同時にフリッカを抑制して鮮明な画像表示を行
う。 【解決手段】 電圧無印加時に単安定状態を有し、印加
する電圧の極性に応じて異なる角度β1、β2でチルト
するカイラルスメクチック液晶素子において、互いにス
メクチック層法線方向が異なり、β1>β2であるD1
領域とβ2>β1であるD2領域を走査ライン毎に互い
違いに配置し、アクティブ素子を用いてフレーム反転駆
動する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はフラットパネルディ
スプレイ、プロジェクションディスプレイ、プリンター
等に用いられるライトバルブに使用される液晶素子に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ネマチック液晶素子におい
て、画素毎にトランジスタ(例えば薄膜トランジスタ
(TFT))のようなアクティブ素子を配置した、アク
ティブマトリクスタイプの液晶素子の開発が行われてい
る。現在、このアクティブマトリクスタイプの液晶素子
に用いられるネマチック液晶のモードとしては、例えば
M.シャット(M.Schadt)とW.ヘルフリッヒ
(W.Helfrich)著、Applied Phy
sics Letters、第18巻、第4号(197
1年2月15日発行)第127頁〜第128頁において
示されたツイステッドネマチック(Twisted N
ematic)モードが広く用いられている。また、最
近では横方向電圧を利用したインプレインスイッチング
(In−Plain Switching)モードが発
表されており、ツイステッドネマチックモード液晶ディ
スプレイの欠点であった視野角特性の改善がなされてい
る。
【0003】その他、上述したTFT等のアクティブ素
子を用いない、ネマチック液晶素子の代表例として、ス
ーパーツイステッドネマチックモードがある。このよう
に、ネマチック液晶を用いた液晶素子は様々なモードが
存在するが、そのいずれのモードの場合にも液晶の応答
速度が数十ミリ秒以上かかってしまうという問題があっ
た。
【0004】上記のような従来型のネマチック液晶素子
の応答速度を改善するものとして、クラーク(Clar
k)及びラガウェル(Lagerwall)により提案
された表面安定化型強誘電性液晶素子(特開昭56−1
07216号公報、米国特許第4367924号明細
書)がある。この素子においては液晶分子の自発分極に
より反転スイッチングを行うため、非常に速い応答速度
が得られることから、高速表示素子、或いはライトバル
ブとして適していると考えられる。さらにこの素子は、
明状態を複屈折を利用して光を透過させるのが一般的で
あり、比較的広い視野角特性を有することも特徴となっ
ている。
【0005】一方、最近では液晶が3安定状態を示す反
強誘電性液晶が注目されている。この反強誘電性液晶も
強誘電性液晶同様に、液晶分子の自発分極への作用によ
り分子の反転スイッチングがなされるため、非常に速い
応答速度が得られる。この液晶材料は、電圧無印加時に
は液晶分子が互いに自発分極を打ち消し合うような分子
配列構造をとるため、電圧を印加しない状態では自発分
極は存在しないことが特徴となっている。
【0006】こうした自発分極による反転スイッチング
を行う強誘電性液晶や反強誘電性液晶は、いずれもカイ
ラルスメクチック液晶相を示す液晶(カイラルスメクチ
ック液晶)である。即ち、従来ネマチック液晶が抱えて
いた応答速度の関する問題点を解決できるという意味に
おいて、スメクチック液晶を用いた液晶表示素子の実現
が期待されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、高速応
答性能など次世代のディスプレイ等に自発分極を有する
スメクチック液晶が期待されているが、特に上述の双安
定性状態や、3安定状態を用いるモードでは、一画素内
での階調表示の実現が原理的に困難であった。
【0008】そこで、近年、カイラルスメクチック液晶
を用いて階調制御を行うモードとして、「ショートピッ
チタイプの強誘電性液晶」、「高分子安定型強誘電性液
晶」、「無しきい値反強誘電性液晶」などが提案されて
いるが、いずれも実用に十分なレベルに至っているもの
ではない。そこで、本発明者等は、高温側より、等方相
(Iso)−コレステリック相(Ch)−カイラルスメ
クチックC相(SmC*)、或いは、Iso−SmC*
相転移系列の材料に着目し、鋭意検討した結果、高速
性、量産性等の実用レベルに近い特性を得ることができ
た。
【0009】以下に、上記Iso−Ch−SmC*或い
はIso−SmC*の相転移系列を示す液晶材料を用い
た素子について概略を説明する。上記液晶材料を一軸配
向規制されたセル中に注入して配向させた場合、スメク
チック層法線方向が一軸配向処理方向からずれた方向に
形成される。そこで、このスメクチック層のズレ方向を
一方向に制御することにより、SmC*相において基板
に平行になりうる2状態のち一方のみが一軸配向規制方
向と実質的に一致した方向へと配向する。これにより、
分子が一方向に単安定化され、且つ印加電圧に応じた中
間調状態を取ることができる、高速応答の液晶素子を得
ることができる。
【0010】しかしながら、こうした優れた特徴を有す
る液晶素子ではあるが、本素子を交流駆動した場合、一
方の極性では印加電圧量に応じた表示状態が得られるも
のの、逆の極性については相対的に暗い状態となるよう
な表示特性を示す。従って、入力映像信号のフレーム周
波数が例えば60Hzであった場合も、実際に表示され
るフレーム周波数は30Hzとなってしまい、フリッカ
が顕著になるという問題が発生していた。
【0011】この問題に対する解決策として、(1)表
示フレーム周波数を2倍にする方法、(2)1H反転駆
動を用いる方法、などが考えられる。しかしながら、
(1)については、フレームメモリ分のコストアップ
や、ゲート選択期間が半減することによる波形遅延が新
たな問題として発生する。一方、(2)については前記
(1)のような問題は発生しないものの、1H反転駆動
を行うと、映像信号をサンプリングする毎に、セグメン
トドライバのサンプリングコンデンサに充電する電圧の
極性が変わるため、特にCS−onゲート駆動及びソー
ス反転駆動を行う場合は、データ線(情報信号線)から
画素電極に印加する電圧とは逆極性の電圧を対向電極に
印加することができない。そのため、液晶に印加する電
圧をサンプリングコンデンサにそのまま充電しなければ
ならない。その結果、サンプリングコンデンサに充電す
る電圧が映像信号のサンプリング毎に大きく変化するた
め、サンプリングに要する時間が長くなり、結局、サン
プリングコンデンサに十分な充電が行えず、鮮明な画像
が得られなくなる。
【0012】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたも
のであり、その課題とするところは、フリッカを抑制
し、且つ高い階調再現性及び鮮明な画像を表示しうる液
晶素子を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記本発明の課題は以下
の構成によって達成される。
【0014】本発明は、複数画素を個々に制御して画像
を表示する液晶素子であり、カイラルスメクチック液晶
と、該液晶を狭持して対向すると共に少なくとも一方の
液晶との界面に一軸配向処理が施された一対の基板と、
画素毎に液晶を駆動する電極及び該電極に接続されたア
クティブ素子と、少なくとも一方の基板の外側に配置し
た偏光板と、を備え、アナログ階調表示を行う液晶素子
であって、電圧無印加時には、上記液晶の平均分子軸が
単安定化された第一の状態を示し、第一の極性の電圧印
加時には、上記液晶の平均分子軸が印加電圧値に応じた
角度で上記第一の状態から一方の側にチルトし、上記第
一の極性とは逆極性の第二の極性の電圧印加時には、上
記液晶の平均分子軸が印加電圧値に応じた角度で上記第
一の状態から上記第一の極性の電圧印加時にチルトした
側とは逆側にチルトし、上記第一の極性の電圧印加時と
第二の極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の、上記単
安定化された第一の状態の位置を基準とした最大チルト
状態のチルト角をそれぞれβ1,β2としたとき、素子
内に、互いにスメクチック層法線方向が異なる、β1>
β2となるD1領域の画素とβ1<β2となるD2領域
の画素が走査ライン毎に互い違いに存在することを特徴
とする。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の液晶素子においては、図
15に模式的に示すように、D1領域とD2領域が走査
ライン(ゲート線G1〜G2)毎に互い違いに存在する。
即ち、例えば偶数行ラインG2、G4の画素にはD1領域
を形成し、奇数行ラインG1、G3の画素にはD2領域を
形成する。さらに、D1領域における暗状態を示す分子
位置BL1が当該領域の層法線方向から時計回りに回転
した位置、D2領域における暗状態を示す分子位置BL
2が当該領域の層法線方向から反時計回りに回転した位
置であり、BL1及びBL2の平均分子軸が一軸配向処
理方向と若干ずれた方向に配向している。また、電圧を
印加した場合に、D1における明状態を示す位置WH1
は例えば正極性の電圧を印加した時にBL1から反時計
回りに回転した位置、D2における明状態を示す分子位
置WH2は負極性の電圧を印加した時にBL2から時計
回りに回転した位置に存在する。
【0016】こうした素子に対し、例えばフレーム反転
駆動を行うと、正極性印加フレームではD1領域内の液
晶分子が十分応答し、D2領域内の液晶分子はD1領域
内の液晶分子の数分の1から数十分の1程度のチルト角
でスイッチングする。一方、負極性印加フレームではD
2領域内の液晶分子が十分に応答し、D1領域内の液晶
分子はD2領域内の液晶分子の数分の1から数十分の1
程度のチルト角でスイッチングする。これにより、正極
性印加フレームでは偶数行ラインが主に応答し、負極性
印加フレームでは奇数行ラインが主に応答するため、実
質的に1H反転駆動を行った場合と同じ表示状態を得る
ことができる。そのため、1H反転駆動による弊害を受
けることなく、1H反転駆動を行った場合と同じ表示状
態を得ることができ、フリッカを抑制することが可能と
なる。
【0017】以下、本発明の液晶素子におけるカイラル
スメクチック液晶の配向状態及びスイッチング過程につ
いて、従来型のSSFLCタイプと対比しながら図面に
沿って説明する。
【0018】尚、以下に説明するモデルにおいては、液
晶分子と該液晶分子の位置の範囲となり得る仮想コー
ン、スメクチック層法線、平均一軸配向処理軸の関係に
基づいて説明しているが、当該液晶分子は液晶素子内で
は複数存在し、例えば基板法線方向である程度ツイスト
しており、光学的には(例えば偏光顕微鏡観察によれ
ば)平均分子軸の挙動として観察される。即ち、上述し
た本発明で規定する平均分子軸は実質的には単独の液晶
分子の挙動に相応する。
【0019】SSFLCでは、SmC*相(カイラルス
メクチックC相)において、液晶分子を2状態に安定化
させることによって、双安定性即ちメモリ性を発現させ
ている。このメモリ状態に関して図1及び図2に示すモ
デルを用いて説明する。
【0020】図1はSSFLCタイプの素子における液
晶分子及び液晶の層構造(スメクチック層の構造)につ
いて模式的に示した図である。当該素子においては、図
1(a)及び(b)に示すように、基板11及び12間
に狭持された液晶13の部分において、液晶分子14
は、基板11または12の界面付近では各基板の一軸配
向処理方向Rに沿って基板から所定のプレチルト角αで
立ち上がり(本例では両基板の一軸配向処理方向Rが平
行であり且つ同方向、即ち基板に対して同方向に液晶分
子を立ち上がらせるような設定とした)、基板11及び
12間で基板法線に対して傾斜角δをなすシェブロン構
造のスメクチック層16を形成している。
【0021】一方、液晶分子14は、電圧印加により2
Θ(Θ:液晶材料に固有の物性であるコーン角)の頂角
を有する仮想コーン15の壁面の2位置間でスイッチン
グし且つ電圧無印加の状態で、当該2位置の近傍で安定
的に存在する。尚、同図(a)及び(b)に示すスメク
チック層16がシェブロン構造をなす配向状態は、それ
ぞれ、基板間の液晶分子14のプレチルトの方向とスメ
クチック層16のシェブロン構造の折れ曲がり方向の関
係により種別されるもので、(a)の配向状態をC1配
向、(b)の配向状態をC2配向と呼ぶ。
【0022】ここで、図1に示すSSFLCの配向状態
では、C1配向状態及びC2配向状態共に一般的にΘ>
δの関係を満たすことで、電圧無印加時に基板11及び
12間でシェブロン構造のスメクチック層16のキンク
位置(基板間中央の折れ曲がり部分)を含むほぼ全厚み
方向で、液晶分子14が仮想コーン15内で安定的に2
位置をとることができ、双安定状態が発現する。
【0023】図2(a)及び(b)は、それぞれ図1
(a)及び(b)に示すC1配向状態とC2配向状態の
それぞれにおける仮想コーン15の底面17上への液晶
分子の射影を示すものであり、液晶分子が14a及び1
4bの双安定状態(射影18a、18b)をとることを
示している。
【0024】液晶が上記のような双安定性の配向状態を
呈する素子では、一対のクロスニコル下の偏光板のう
ち、双安定状態の一方の平均分子軸(液晶分子の位置)
に偏光軸を合わせて、双安定状態間のスイッチングを行
い、黒(暗状態)及び白(明状態)の表示を行う。この
スイッチングは、例えば一方の状態から他方の状態のド
メインの生成により、即ちドメインウォールの生成及び
消滅を伴ってなされる。但し、このようなスイッチング
メカニズムを用いて表示を行う場合、基本的には黒及び
白の2値表示しかできず、黒白間の階調(中間調)の表
示は困難である。
【0025】これに対し、本発明の液晶素子において
は、カイラルスメクチック液晶を用いた素子において階
調表示を実現すべく、図1及び図2に示すようなメモリ
性(双安定性)を消失させ、印加電圧によって液晶分子
の位置が連続的に可変となるようにしたものである。こ
の設定のため、本発明においては好ましくは等方相(I
so)−コレステリック相(Ch)−SmC*、或い
は、Iso−SmC*の相転移系列を示す液晶材料を用
いる。
【0026】図3(a)に、液晶素子において、少なく
とも降温下でCh−SmA−SmC*相転移系列を示す
液晶材料の層(スメクチック層)構造の形成過程を、図
3(b)に少なくとも降温下でCh−SmC*相転移系
列を示す液晶材料の層構造形成過程を示す。同図におい
て、矢印Rは素子における平均一軸配向処理軸の方向で
ある。液晶分子14は、電圧を印加した際に仮想コーン
15域の壁面に沿ってスイッチングし得ることとする。
【0027】ここで、”平均一軸配向処理軸”とは、素
子を構成する両基板の液晶に接する面において一軸配向
処理が施され、その方向(例えばラビング方向)が平行
で同一方向であるか互いに逆方向(反平行)である場
合、並びに一方の基板にのみ一軸配向処理が施されてい
る場合では、その一軸配向処理の軸自体に相当し、両基
板において一軸配向処理が施された方向(例えばラビン
グ方向)が互いにクロスしている場合には、両方の一軸
配向処理軸の中心方向の軸、即ちクロス角の1/2の方
向に相当する。また、平均一軸配向処理軸の”方向”と
は、例えば当該配向処理がなされた基板近傍における液
晶分子の基板に対して立ち上がっている、即ちプレチル
トを生じる側への方向であり、一方の基板にのみ一軸配
向処理が施されている場合及び両基板において一軸配向
処理が施され、その方向(例えばラビング方向)が平行
で同一方向である場合は、その処理方向自体であり、両
基板に互いに平行で逆方向の処理が施されている(反平
行)場合、いずれか一方の基板での処理方向であり、両
基板において一軸配向処理が施された方向(例えばラビ
ング方向)が互いにクロスしている場合では、その中心
軸の方向である。
【0028】図3(a)に示すように、相転移系列中に
SmA相を有する液晶材料の場合、SmA相においてス
メクチック層法線方向(紙面横方向矢印LN)と一軸配
向処理方向が一致するように液晶分子14が配列しスメ
クチック層構造を形成する。そして、SmC*相では、
液晶分子14はスメクチック層法線方向LNからチルト
し、仮想コーン15のエッジ近傍もしくはその若干内側
の位置で安定化する。
【0029】一方、本発明で好適に用いられる図3
(b)に示すようにSmA相を含まない相転移系列で
は、例えばCh相からSmC*相に相転移する過程で、
液晶分子14はスメクチック層法線方向LNに対して傾
くように、且つ平均一軸配向処理方向Rから若干傾くよ
うに配列しスメクチック層構造が形成される。
【0030】そして本発明では、液晶分子14がSmC
*相内の使用温度域で、仮想コーン15のエッジ部より
内側の位置で安定化するように調整される。ここで「仮
想コーン15のエッジより内側の位置で安定化」する場
合として、スメクチック層がシェブロン構造または斜め
ブックシェルフ構造等となる傾斜角を有する構造が考え
られるが、完全なブックシェルフ構造であった場合でも
プレチルト角が高い場合や、基板界面の極性相互作用が
強くバルク分子がねじれている場合等はコーンエッジの
内側で安定化することがある。また、エレクトロクリニ
ック効果が顕著な材料では、電界によって仮想コーンエ
ッジのさらに外側にまで分子が傾斜することになるが、
本発明の液晶素子は、電界印加時の分子配向方向と層法
線方向とのズレ角が、電界無印加時の分子配向と層法線
方向とのズレ角より大きいこと、即ち例えば電界無印加
時の液晶分子の方向とクロスニコルの一方の偏光軸とを
一致させ最暗状態とした場合、正負いずれの極性の電圧
の印加時においても液晶の光軸がずれ、複屈折を発現さ
せていることを特徴とするため、こうした電圧印加によ
って液晶分子が仮想コーンのエッジの外側にまで分子が
傾斜する材料に関しても、本発明では適用可能である。
【0031】ここで、本発明の一態様として、シェブロ
ン構造または斜めブックシェルフ等の層傾斜角を有する
場合に関して、モデルを利用して図4を用いて詳述す
る。図4(a)は図3(b)と同様にSmA相を含まな
い相転移系列における液晶分子の配列の変化を示してお
り、例えばCh相からSmC*相に相転移する過程で
(特にSmC*相への転移温度直下で)、液晶分子14
はスメクチック層法線方向LNに対して傾くように配列
しスメクチック層構造が形成される。
【0032】但し、図4(a)ではSmC*相内の、例
えば高温側(TEMP1)と低温側(TEMP2)におい
てコーン角Θ(仮想コーン15の頂角の1/2)に違い
が存在する。
【0033】ここで、高温側TEMP1におけるコーン
角をΘ1、低温側TEMP2におけるコーン角をΘ2
し、Θ1<Θ2なる関係を満たすような材料を用いる時、
通常の場合、これら各温度におけるスメクチック層の層
間隔d1及びd2間にはd1>d2なる関係が成立する。従
って、仮に温度TEMP1においてブックシェルフ構造
の層構造を有しているとした場合、温度TEMP2では
少なくとも関係式δ=cos-1(d2/d1)を満たす層
傾斜角δを有することになる。
【0034】よって、温度TEMP2においてはシェブ
ロン構造または斜めブックシェルフ構造を形成すること
になる。これらのうちシェブロン構造をとる場合の層構
造及びc−ダイレクタの様子及び仮想コーン底面への射
影を図4(b)及び(c)に示す(符号は図2と同
様)。同図に示されるとおり、通常の双安定型SSFL
Cと同様に、ラビング方向と層傾斜角の関係からC1,
C2を定義することができる。以上述べた原理により、
液晶分子14が、仮想コーン15のエッジより内側の位
置で安定化するように調整される。
【0035】図3(a)及び(b)、図4(a)のいず
れの場合も、例えば図1及び図2に示すような液晶分子
14がシェブロン構造の双安定配向状態、即ち基板と実
質的に平行な2状態で安定になるべきであるが、図3
(b)、図4(a)に示す場合、一軸配向処理の束縛力
が強くなり、この2状態のうちの一方のみが安定とな
り、メモリ性が消失することになる。また、図3
(b)、図4(a)に示すCh−SmC*相転移の際
(SmC*相への転移温度直下)、図5に示すように2
通りの異なった層法線方向(LN1及びLN2)を示すス
メクチック層構造が形成することが考えられる。この
時、カイラルスメクチック液晶を狭持するセルの上下一
対の基板の一軸配向処理の状態(処理方向等の条件、配
向材料等)が完全に対称であれば上記図5に示すような
2つのスメクチック層構造が均等な割合で形成される。
本発明では一方をD1領域、他方をD2領域としてこの
2つの領域を素子内に共存させることに特徴を有する。
【0036】即ち、各領域において、平均一軸配向処理
軸とスメクチック層法線方向のズレ方向が一定となるよ
うにし、図4(b)または(c)に示すように電圧無印
加の状態で液晶分子14を仮想コーン15の一エッジの
内側に安定化させ、そのメモリ性を消失させたSmC*
相の配向状態を得ている。
【0037】次いで、本発明の液晶素子のD1領域、即
ち図5に示すようなSmC*相での層構造の一方を優先
的に形成した配向状態を有するセルにおいて、電圧に対
する液晶分子21の反転挙動のモデル(素子の上面、側
面、コーン底面への射影)について図6を参照して説明
する。尚、図6ではパラレルラビングセル(両基板に平
行且つ同一方向のラビング処理を施したセル)における
C2配向状態を用いて電界に対する反転挙動を説明する
が、C1配向、斜めブックシェルフ配向、アンチパラレ
ルセルでの配向等も同様の考え方で議論することができ
る。
【0038】図6では、電圧印加の状態における、セル
上方から見た場合の挙動(I)、セル断面方向での挙動
(II)、SmC*相での仮想コーン底面への射影(I
II)のそれぞれを示している。Iの場合は、セル断面
方向の液晶分子の平均的な分子軸を示していることにな
る。
【0039】先ず、図6(b)に示すように電圧無印加
時においては液晶分子14(仮想コーンの底面17での
射影18は平均一軸配向処理方向(矢印R)とは若干ず
れて配向している。液晶の自発分極19は基板間で実質
的に略同様の方向を向いているここで、電圧無印加時の
液晶分子の位置に偏光軸の一方(P)を一致させたクロ
スニコル(d)下にセルを配置し、液晶を透過する光量
を最低の状態(最小透過率)にして暗状態(黒状態)を
表示する。
【0040】そして、この配向状態に対し、電圧を印加
した時には図6(a),(c)に示すように、液晶分子
14は、電圧無印加時の位置に対して電圧Eの極性に応
じた方向に自発分極19が揃いチルト(スイッチング)
する。電圧無印加時の液晶分子位置を基準したチルトの
角度(IIを参照)は印加電圧の大きさ(電圧の絶対
値)に応じたものとなるが、図6(a),(c)に示す
ように一方の極性の電圧を加えた場合(正極性の電圧印
加の場合)のチルトの角度(β1)と、他方の極性の電
圧を加えた場合(負極性の電圧印加の場合)のチルトの
角度(β2)は、電圧の極性が逆であれば同じ電圧絶対
値であっても大きく異なっている。
【0041】ここで、D1領域において、電圧無印加の
状態での透過率を第一の透過率、液晶に第一の極性の電
圧を加えた場合に液晶が呈する透過率を第二の透過率、
液晶に第二の極性の電圧を加えた場合に液晶が呈する透
過率を第三の透過率、とする。尚、本発明において「透
過率」とは「光透過率」を示すものである。
【0042】図6の場合、電圧を印加していない場合に
おいて既に分子はスメクチック層法線方向からは傾いた
方向に位置して単安定化しており、且つ正負それぞれに
十分大きな電界を印加した場合には、図6(a)或いは
(c)の状態からさらに基板界面近傍分子の自発分極の
向きもバルク部分同様に電界方向を向くよう分子配列し
ようとする結果、ほぼ全てのセル中分子がコーンエッジ
上に存在することとなり電圧無印加時の位置を基準とし
て最大のチルト状態が得られる。それにより、層法線軸
を対称軸とした分子位置にほぼねじれのないユニフォー
ムな配向状態が形成される。そして、液晶分子の最大チ
ルト状態は、一方の極性の電圧印加による電圧無印加時
の位置を基準とした最大チルトの状態におけるチルトの
角度と、他方の極性の電圧印加による最大チルトの状態
におけるチルトの角度が異なるように、図6では正極性
電圧印加時での最大チルト状態での角度が負極性電圧印
加時での最大チルト状態での角度より大きくなるように
調整される。即ち、D1領域においてはβ1>β2であ
る。
【0043】ここで、例えば液晶の有する屈折率異方性
Δn、セル厚をdとし、Δndを可視光の2分の1波長
近傍に設定した場合、図6(c)に示すような正極性の
印加電圧時には、電圧(絶対値)が大きくなるに伴い、
液晶素子からの出射光量、即ち素子を透過する光量が連
続的に変化して大きくなり、同図のような配向状態とな
り所定のチルト状態が得られる。そして、当該チルト状
態(第二の透過率の最大値状態)で電圧無印加時の透過
光量と最も異なる(正極性の電圧印加の範囲で最も異な
る)光量、最大透過光量を得ることができる。
【0044】一方、図6(a)に示すように、負の電圧
を印加した時には、液晶素子を透過する光量は上昇する
が、その光学応答量は微小であり、所定の電圧(正極性
の電圧側と同じ絶対値の電圧)で液晶分子が所定のチル
ト状態となった際(第三の透過率の最大値状態)に、電
圧無印加時の透過光量と最も異なる(負極性の電圧印加
の範囲で最も異なる)透過光量、即ち最大透過光量とな
る。但し、当該負極性電圧印加時の最大透過光量と図6
(b)に示す電圧無印加時の透過光量との差は、図6
(c)の場合の正極性電圧印加時の最大透過光量と圧無
印加時の透過光量との差に比較して小さく、即ち正極性
の電圧印加時に、当該液晶素子における最大の透過光量
を得ることができる。
【0045】ここで、例えば図6(d)に示すような一
対の偏光板を用いる場合、正極性電圧印加時における液
晶分子14の最大チルトの状態における、電圧無印加時
の液晶分子14の位置を基準としたチルトの角度が45
°以下である場合には、液晶分子14が仮想コーン15
のエッジにある時、即ち最大チルトの状態(第一の透過
率の最大値状態)において、正極性電圧印加時での最大
透過光量が得られる。一方、上記チルトの角度が45°
より大きい場合には、液晶分子14が仮想コーン15の
エッジの内側にある時において、正極性電圧印加の際の
最大透過光量が得られる。負極性電圧印加時は、上記い
ずれの場合でも最大チルト状態(第二の透過率の最大値
状態)で負極性電圧印加の際の最大透過光量が得られ
る。
【0046】上述したような液晶分子のスイッチング挙
動を示す素子の電圧(V)−光透過率(T)特性の例、
特に正極性電圧印加の際に液晶分子が最大チルト状態と
なるときに最大透過率が得られる場合の素子の例を図7
に示す。正極性の電圧印加時にはその電圧値に沿って液
晶分子のチルトにより透過率が上昇し、電圧V1以上で
最大透過率T1を示す。一方、負極性の電圧印加時に
は、その電圧値に沿って液晶分子がチルトし、若干の透
過率が上昇するが、電圧−V1以下でT1より遙かに小さ
い最大透過率T2に飽和する。
【0047】一方、本発明の液晶素子のD2領域におけ
る液晶分子は、上記D1領域の液晶分子とは印加電圧の
極性が逆である以外は全く同じ反転挙動を示す。即ち、
第一の極性(例えば正極性)の電圧印加によるチルト角
β1が第二の極性(例えば負極性)の電圧印加によるチ
ルト角β2よりも小さく、上記第一の極性の電圧印加で
上記第三の透過率を、第二の極性の電圧印加によって上
記第二の透過率を示し、該第二の透過率の最大値が当該
領域の最大透過率、即ち素子の最大透過率となる。
【0048】特に、D1領域におけるβ1とβ2、D2
領域におけるβ2とβ1の比については好ましくは5以
上とし、そしてD1領域における第一の極性(正極性)
の電圧印加時における液晶分子(平均分子軸)の所定の
チルト状態での液晶素子からの最大透過光量(例えば図
7の特性でのT1における透過光量)と、第二の極性
(負極性)の電圧印加時における液晶分子(平均分子
軸)の最大チルト状態での液晶素子からの最大透過光量
(例えば図7の特性でのT2における透過光量)の比、
及び、D2領域における第二の極性(負極性)の電圧印
加時における液晶分子の所定のチルト状態での液晶素子
からの最大透過光量と、第一の極性(正極性)の電圧印
加時における液晶分子の最大チルト状態での液晶素子か
らの最大透過光量の比、について好ましくは5以上に調
整する(即ち、第三の透過率の最大値と第一の透過率と
の差が第二の透過率の最大値と第一の透過率との差の1
/5以下)ことで、実質的に1H反転駆動表示とする効
果が最も顕著に得られる。
【0049】次いで、本発明の液晶素子の配向状態にお
ける液晶分子の反転メカニズムについて説明する。
【0050】図1及び図2に示すSSFLCでの液晶分
子の配向状態では、液晶分子14が双安定状態間をスイ
ッチングするためには、所定の高さのエネルギー障壁を
超えることが必要であり、このエネルギー障壁の存在が
双安定性の起源となっている。これに対し、本発明の液
晶素子における、例えば図5に示すような配向状態で
は、液晶分子14がSSFLCでの双安定ポテンシャル
の一方側に近い位置で極端に安定化された状態となって
いる。これにより、安定状態が一つしか存在せず、印加
電圧の大きさに応じた安定状態がアナログ的に存在し、
且つ印加電圧と安定な分子位置が一対一で対応するた
め、連続的且つドメインの生成を伴わない反転が実現で
きる。
【0051】上記エネルギー障壁(ポテンシャル)の状
態のモデルを図8及び図9に示す。
【0052】図8(a)及び(b)はSSFLCにおけ
る双安定配向状態でのポテンシャルの状態をC1配向状
態、C2配向状態のそれぞれについて示したものであ
る。A1及びA2は双安定状態のそれぞれの状態のポテ
ンシャルを示す。これらの図より明らかなように、C1
配向、C2配向によって上記ポテンシャルの状態が若干
異なってくる。SSFLCにおいてC1配向である場
合、液晶−基板界面での液晶分子の開き角はC2配向で
ある場合よりも大きくなるため(図2(a)及び(b)
における基板界面付近の射影参照)、エネルギー障壁の
高さも高くなる。
【0053】一方、図9(a)及び(b)には、本発明
の液晶素子における配向状態でのポテンシャルの状態を
C1配向状態、C2配向状態のそれぞれについて示した
ものである。B1は、電圧無印加での液晶分子のポテン
シャル(図6(b)の場合)、B2は一方の極性の電圧
の印加による最大チルトでの液晶分子のポテンシャル
(図6(c)の場合)を、B3は他方の極性の電圧の印
加による最大チルトでの液晶分子のポテンシャル(図6
(a)の場合)を示す。
【0054】上述のSSFLCの場合で示したようなC
1配向、C2配向という双安定状態間のエネルギー障壁
の高さが異なる配向状態のそれぞれに対し、双安定状態
の一方を安定化させた場合にはそれぞれの駆動特性が異
なったものになってしまう。特にエネルギー障壁の高い
C1配向状態においては、図9(a)に示すように、双
安定ポテンシャルの一方(B1)が極端に安定化された
状態とした場合においても、双安定状態が2つ残ったま
ま、或いは一方が準安定状態(B2もポテンシャルのレ
ベルは高いが周囲に比して安定)となってしまう状態が
発生する。これにより電圧印加による応答の際、ある一
定のポテンシャルに達するまでは印加電圧の大きさに応
じた安定状態がアナログ的に存在し、且つ印加電圧と安
定な分子位置が一対一で対応するため、連続的且つドメ
インの生成を伴わない反転が実現できるものの、ある一
定のポテンシャルを超えた際に不連続な配向状態を形成
する、即ちドメインウォールの生成を伴った不連続な反
転挙動となることがある。
【0055】これに対し、C2配向状態では、双安定の
SSFLCである場合のエネルギー障壁が低いことか
ら、図9(b)に示すように、一方(B1)が極端に安
定化された状態とした場合にもB2の状態まで連続的且
つドメインの生成を伴わない反転が実現できている。さ
らに、これらの図からC1配向の方が駆動電圧が高くな
り易いことが理解できる。
【0056】以上述べた点から、本発明の液晶素子にお
ける配向状態については、アナログ階調性能及び低駆動
電圧化の観点から、平行ラビングしたセルにおいてはC
2配向を用いることが望ましい。或いは、C1配向及び
C2配向が混在している配向状態の場合は、これらの特
性ばらつきを最小限に抑えるためにもプレチルト角が低
いことが望ましい。或いは、反平行ラビングであること
が望ましい。
【0057】上述したような図6(a)〜(c)、図9
に示すような、電圧無印加の状態で液晶分子14を仮想
コーン15の一エッジの内側に安定化させ、そのメモリ
性を消失させたSmC*相での配向状態及び電圧印加時
のスイッチング挙動を示し、図7に示すような光学応答
特性を示す液晶素子は、例えば適切な液晶材料を用い、
セルの設計を調整し、さらに液晶材料のCh−SmC*
相転移の過程においてセル内の内部電位に偏りを持たせ
るような処理を施すことによって実現される。
【0058】上記カイラルスメクチック液晶材料として
は、例えばそれらがフェニルピリミジン骨格、ビフェニ
ル骨格、フェニルシクロヘキサンエステル骨格を有する
炭化水素系の液晶材料のようにカイラルスメクチック相
の温度範囲の中でスメクチック層の層間隔dが変化し
(カイラルスメクチック相の上限温度での層間隔dtc
最大の値である(d<dtc、d:カイラルスメクチック
相の温度範囲内での層間隔))、セル内でのシェブロン
構造を有する材料の場合は、3°<δ<Θ(δ:液晶材
料のセル内での基板法線に対するスメクチック層の傾斜
角、Θ:前述した液晶材料固有のコーン角、即ち仮想コ
ーンの頂角の1/2)となるように成分を適宜選択して
配合した液晶組成物を用いることもできる。
【0059】また、ナフタレン骨格を有する炭化水素系
の液晶材料やポリフッ素系の液晶材料のようにカイラル
スメクチック相の温度範囲の中で層間隔dがほぼ一定で
あり、セル内でδ≦3°となる材料であって、高温側か
らカイラルスメクチック相への相転移温度直下でのΘに
対しカイラルスメクチック相の温度範囲の中での温度降
下に伴いΘが大きくなるような成分配合を行った液晶組
成物を用いる。
【0060】液晶材料のカイラルスメクチック相でのΘ
は、スイッチングによる最大光量の状態と最小光量の状
態間のコントラスト、例えば図7に示すような特性下で
の最大透過率T1をより高くするために22.5°以上
となることが理想的である。また、Θが非常に大きい場
合には、逆極性への電界印加による単安定状態からのチ
ルト、即ち図6(a)の側へのチルトも大きな角度にな
り、例えば図7の逆極性電圧印加の際の最大透過率T2
も大きくなり、実質的な時間開口率が100%になって
しまう恐れがある。従って、Θは30°未満が好まし
い。また、Θの温度による変化が大きいと、クロスニコ
ル下の偏光板間で設定された最暗状態が一定に保たれな
い恐れがある。このため、液晶素子の駆動温度範囲でΘ
の温度による最大変化幅は3°以下に設定することが好
ましい。
【0061】尚、一般のSmC*相を示す材料と同様に
液晶分子がスメクチック層の法線からチルトすることに
よって層間隔が減少する、即ち低温側ほどコーン角Θが
大きくなる材料の場合、低温になるに連れて層間隔の減
少要因が大きくなるのであるが、例えばポリフッ素系液
晶材料の場合のように自発的にブックシェルフ層構造を
とる液晶材料であった場合、低温側ほどバルクで測定さ
れる層間隔が長くなるというこの材料固有の特徴によっ
て層間隔dの変化が極めて小さくなることが、シェブロ
ン構造をとりづらい理由と考えられている。この場合、
界面分子は一軸配向規制力によってラビング方向を向
き、バルクの分子はチルト角の温度特性に応じてラビン
グ方向からずれた方向へと配向する場合がある。この時
電界印加によって界面近傍分子もラビング方向からずれ
た方向へと配向する。
【0062】一方、D1領域及びD2領域をそれぞれ、
図5に示すように発現される2つの層構造のうちの一方
の層構造のみに揃え、即ち各領域において平均一軸配向
処理軸とスメクチック層法線方向のズレ方向が一定で且
つD1領域とD2領域では該ズレ方向が逆となるように
するための素子内の内部電位の偏りの持たせ方として、 1)Ch−SmC*相転移の際、またはIso−SmC*
相転移の際に一対の基板間に正負いずれかのDC電圧を
印加する。 2)上下一対の基板に異なる材料からなる配向膜(配向
制御膜)を用いる。 3)上下一対の基板の配向膜の処理法(膜の形成条件、
ラビング強度、UV照射等の処理条件)を変える。 4)上下一対の基板の配向膜の下地に設ける層の膜種ま
たは膜厚を変える。 など、様々な方法が考えられるが、いずれの手段を用い
ても良い。
【0063】特に1)によるDC印加条件としては、D
Cを長時間印加することによって配向膜自体が永久双極
子を有する変化(エレクトレット化)を避けるために、
DCはCh−SmC*相転移近傍において、層方向を一
方向に揃えるのに必要且つ最小限の印加時間にとどめて
おくことが好ましい。具体的には100mV以上10V
以下の範囲でのDC電圧を印加することが好ましい。
【0064】上述したような液晶材料及び上記2)〜
4)で設定される配向膜及び液晶材料中のイオンはTF
T駆動に悪影響を及ぼさないよう極力低減しておくこと
が望ましい。
【0065】本発明の液晶素子において、電圧無印加時
の液晶分子(平均分子軸)の単安定化のためには一軸配
向規制力が大きいことが必要となる。この配向規制力に
関して、コレステリック液晶を用いて配向規制力を評価
する方法が内田ら(Liquid Crystals,
5,p.1127(1989))によって提案されてい
る。即ち、コレステリック相でのらせんピッチと配向規
制力とのトルクバランスによって決定される「実効ねじ
れ角」を評価することにより配向規制力が評価できる。
本発明でもこの考えを用いてこの一軸配向規制力を以下
のように定義する。
【0066】本発明の液晶素子においてCh相が存在す
る場合、Ch相におけるコレステリックピッチをp、及
びセル厚をdgとすると、配向規制力が存在しない場
合、セル内でのねじれ角をφとすると、dg/p=φ/
2πの関係となる。また、上下基板において平行に一軸
配向規制されており、配向規制力が無限大である場合に
はφはゼロになる。尚、このφの値は内田等の報告と同
様に、偏光顕微鏡下において旋光性を測定することによ
り容易に評価できる。すなわち、セル中では配向規制力
によって本来のピッチpより大きい仮想ピッチp*(=
2π・dg/φ)を有しており、p*=pの時配向規制力
はゼロ、p*=無限大の時配向規制力も無限大であると
言い換えることができる。
【0067】本発明では単安定化のためには少なくとも
*≧2×pとなることが好ましい。p*≧10×pとな
ることがより好ましい。これらの値となるようなことを
考慮して上記2)〜4)の条件で、一軸配向処理条件
(ラビング条件等)、配向膜厚、配向膜種、焼成条件等
を適宜調整することが好ましい。
【0068】本発明の液晶素子では、三角波印加時の電
圧−透過率曲線を求めた場合においてヒステリシスが存
在する場合がある。しかしながら、本発明の液晶素子は
フレーム反転駆動されるため、白状態から中間調状態へ
と連続的に光学変調されることはないため、特に問題に
なることはない。即ち、印加される極性に応じて常に白
黒の反転をしながら光学変調されることから、例えば白
から中間調へと光学変調される際には、白状態から黒の
配向状態を経由した後中間調の配向状態へと変調される
ため、前状態の履歴の影響をかなりの程度抑制すること
ができる。
【0069】以下、本発明の液晶素子の実施形態を挙げ
てその構成を説明する。図10は本発明の液晶素子の一
実施形態の1画素の構成を模式的に示す断面図である。
同図に示す液晶素子80は、一対のガラス、プラスチッ
ク等透明性の高い材料からなる基板81a,81b間に
液晶層85、好ましくはカイラルスメクチック液晶を狭
持してなる。
【0070】基板81a,81bには、それぞれ液晶層
85に電圧を印加するためのIn23、ITO等の材料
からなる電極82a、82bが設けられている。本発明
の液晶素子は、アクティブマトリクスタイプであり、一
方の基板に画素毎に画素電極をドット状に配置し、各画
素電極にTFTやMIM(Metal−Insulat
or−Metal)等のアクティブ素子(スイッチング
素子)を接続し、他方の基板には一面或いは所定のパタ
ーン状に共通電極を設けてアクティブマトリクス電極構
造を形成する。
【0071】電極82a,82b上には、必要に応じて
これらの電極間でのショートを防止する等の機能を持た
せたSiO2、TiO2、Ta25等の材料からなる絶縁
膜83a、83bがそれぞれ設けられる。
【0072】さらに、絶縁膜83a,83b上には、液
晶層85に接し、その配向状態を制御するべく機能する
配向膜84a,84bが設けられている。かかる配向膜
84a、84bの少なくとも一方には一軸配向処理が施
されている。かかる膜としては、例えば、ポリイミド、
ポリイミドアミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール
等の有機材料を溶液塗工した膜の表面にラビング処理を
施したもの、或いはSiO等の酸化物、窒化物を基板に
対し斜め方向から所定の角度で蒸着した無機材料の斜法
蒸着膜を用いることができる。
【0073】尚、配向膜84a,84bについては、そ
の材料の選択、処理(一軸配向処理等)の条件等によ
り、液晶層85の液晶分子のプレチルト角(液晶分子の
配向膜付近で膜面に対してなす角度)が調整される。
【0074】尚、配向膜84a,84bがいずれも一軸
配向処理がなされた膜である場合、それぞれの膜の一軸
配向処理方向(特にラビング方向)を、用いる液晶材料
に応じて平行、反平行、或いは45°以下の範囲でクロ
スするように設定することができる。
【0075】また、本発明の液晶素子においては、一対
の基板の少なくとも一方の液晶との界面に一軸配向処理
が施されていれば良く、上記配向膜に限定されるもので
はない。
【0076】基板81a,81bは、スペーサー86を
介して対向している。かかるスペーサー86は、基板8
1a,81bの間の距離(セルギャップ)を決定するも
のであり、シリカビーズ等が用いられる。ここで決定さ
れるセルギャップについては、液晶材料の違いによって
最適範囲及び上限値が異なるが、均一な一軸配向性、ま
たは電圧無印加時に液晶分子の平均分子軸をほぼ配向処
理軸の平均方向の軸と実質的に同一にする配向状態を発
現させるべく、0.3〜10μmの範囲に設定すること
が好ましい。
【0077】スペーサー86に加えて、基板11a及び
11b間の接着性を向上させ、カイラルスメクチック液
晶の耐衝撃性を向上させるべく、エポキシ樹脂等の樹脂
材料等からなる接着粒子を分散配置することもできる
(図示せず)。
【0078】上記構造の液晶素子80では、液晶層85
としてカイラルスメクチック液晶を用いる場合について
は、その材料の組成を調整し、さらに液晶材料の処理や
素子構成、例えば配向膜84a及び84bの材料、処理
条件等を適宜設定することにより、前述の図6に示すよ
うに、電圧無印加時では、該液晶の平均分子軸(液晶分
子)が単安定化されている配向状態を示し、駆動時では
一方の極性(第一の極性)の電圧印加時に印加電圧の大
きさに応じて平均分子軸の単安定化される位置を基準と
したチルト角が連続的に変化し、他方の極性(第二の極
性)の電圧印加時には液晶の平均分子軸は、印加電圧の
大きさに応じた角度でチルトし、且つ第一の極性の電圧
印加による最大チルト角が、第二の極性の電圧印加によ
る最大チルト角より大きいような特性を示すようにす
る。好ましくは、カイラルスメクチック液晶材料とし
て、降温下でIso−Ch−SmC*の相転移系列、或
いはIso−SmC*の相転移系列を示すものを用い、
前述した1)〜4)の処理によりSmC*でメモリ性を
消失させた状態を形成する。
【0079】そして、カイラルスメクチック液晶として
は、前述のような特性(液晶材料固有の物性値であるコ
ーン角Θ、スメクチック層の層間隔d、傾斜角δについ
ての特性)を示すようなビフェニル骨格やフェニルシク
ロヘキサンエステル骨格、フェニルピリミジン骨格等を
有する炭化水素系液晶材料、ナフタレン系液晶材料、ポ
リフッ素系液晶材料を適宜選択して調整した組成物を用
いる。
【0080】このような特性下において、基板81a及
び81bの少なくとも一方の外側に偏光板を設け、電圧
無印加の状態で最暗状態となるようにセルを配置し、電
圧印加時には上記したようなチルト角の連続的な変化に
伴う透過率変化によって、例えば図7に示すような特性
で素子の透過光量をアナログ的に制御することができ
る。
【0081】当該液晶素子には、基板81a及び81b
の一方に少なくとも、R(赤)、G(緑)、B(青)の
カラーフィルタを設け、カラー液晶素子とすることもで
きる。
【0082】尚、本発明の液晶素子は、基板81a及び
81bの両側に偏光板(図示せず)を設けた透過型の素
子、即ち基板81a及び81bのいずれも透光性基板で
あり、一方の基板側からの入射光(例えば外部光源によ
る光)を変調し、他方側に出射するタイプの素子、或い
は、少なくとも一方の基板側に偏光板を設けた反射型の
液晶素子、即ち基板81a及び81bの少なくとも一方
の側に反射板を設けるかもしくは一方の基板自体または
基板に別途設ける部材として反射性の材料を用いること
によって、入射光及び反射光を変調し、入射側に光を出
射するタイプの素子、のいずれにも適用することができ
る。
【0083】本発明の液晶素子には、階調信号を供給す
る駆動回路を接続し、上述したような電圧の印加により
液晶の平均分子軸の単安定位置からの連続的なチルト角
の変化及び素子からの透過光量が連続的に変化する特性
を利用し、階調表示を行うことができる。即ち、液晶素
子の一方の基板を前述したようなTFT等を備えたアク
ティブマトリクス基板とし、駆動回路で振幅変調による
アクティブマトリクス駆動を行うことでアナログ階調表
示が可能となる。
【0084】以下に本発明の液晶素子の一実施形態を挙
げ、図11〜図13を参照して説明する。
【0085】図11は、本発明の液晶素子の一実施形態
に駆動手段を接続した形で、一方の基板(アクティブマ
トリクス基板)の構成を中心に模式的に示した平面図で
ある。
【0086】図11に示す構成では、液晶素子に相当す
るパネル部90において、駆動手段である走査信号ドラ
イバ91に接続された走査信号線に相当する図面上水平
方向のゲート線G1、G2、…と、駆動手段である情報信
号ドライバ92に接続された情報信号線に相当する図面
上縦方向のソース線S1、S2、…が互いに絶縁された状
態で直交するように設けられており、その各交点の画素
に対応してアクティブ素子(スイッチング素子)である
薄膜トランジスタ(TFT)94及び画素電極95が設
けられている。尚、図11では便宜上、5×5画素の領
域のみを示す。スイッチング素子としては、TFTの他
に、MIM素子も用いることができる。
【0087】ゲート線G1、G2、…はTFT94のゲー
ト電極(図示せず)に接続され、ソース線S1、S2、…
はTFT94のソース電極(図示せず)に接続され、画
素電極95はTFT94のドレイン電極(図示せず)に
接続されている。
【0088】かかる構成において、走査信号ドライバ9
1によりゲート線G1、G2、…が例えば線順次に走査選
択されてゲート電圧が供給され、このゲート線の走査選
択に同期して情報信号ドライバ92から、各画素に書き
込み情報に応じた情報信号電圧がソース線S1、S2、…
に供給され、TFT94を介して各画素電極に印加され
る。
【0089】図12は、図11に示したようなパネル構
成における各画素部分(1ビット分)の断面構造の一例
を示す模式図である。同図に示す構造では、TFT94
及び画素電極95を備えたアクティブマトリクス基板2
0と共通電極42を備えた対向基板40間に、自発分極
を有する液晶層49が狭持され、液晶容量(Clc)31
が構成されている。
【0090】図11のアクティブマトリクス基板20に
ついては、TFT94としてアモルファスSiTFTを
用いた例を示している。TFT94はガラス等からなる
基板上に形成され、図11に示すゲート線G1、G2、…
に接続されたゲート電極22上に窒化シリコン(SiN
x)等の材料からなる絶縁膜(ゲート絶縁膜)23を介
してa−Siからなる半導体層24が設けられており、
該半導体層24上に、それぞれn+a−Siからなるオ
ーミックコンタクト層25,26を介してソース電極2
7、ドレイン電極28が互いに離間して設けられてい
る。ソース電極27は図11に示すソース線S1、S2
…に接続され、ドレイン電極28はITO等の透明導電
膜からなる画素電極95に接続されている。また、TF
T94における半導体層24上をチャネル保護膜29が
被覆している。このTFT94は、該当するゲート線が
走査選択された期間においてゲート電極22にゲートパ
ルスが印加されオン状態となる。
【0091】さらに、アクティブマトリクス基板20に
おいては、画素電極95と、該電極の基板21側に設け
られた保持容量電極30により絶縁膜23(ゲート電極
22上の絶縁膜と連続的に設けられた膜)を狭持した構
造により保持容量(Cs)32が液晶容量31と並列の
形で設けられている。保持容量電極30はその面積が大
きい場合、開口率を低下させるため、ITO膜等の透明
導電膜により形成される。
【0092】また、アクティブマトリクス基板20のT
FT94及び画素電極95上には液晶の配向状態を制御
するための例えばラビング処理等の一軸配向処理が施さ
れた配向膜43aが設けられている。一方、対向基板4
0では、ガラス等の基板41上に、全面同様の厚みで共
通電極42、及び液晶の配向状態を制御するための配向
膜43bが積層されている。尚、本発明においては、一
対の基板の少なくとも一方の液晶との界面に一軸配向処
理が施されていれば良く、上記配向膜に限定されるもの
ではない。
【0093】尚、上記セル構造は、互いに偏光軸が直交
した関係にある一対の偏光板(図示せず)間に狭持され
て用いられる。
【0094】上記構造のセルの画素部分において、液晶
層49としては、図10で説明したように、自発分極を
有するカイラルスメクチック液晶が用いられ、図6に示
すようなスイッチング動作及び図7に示す光学特性を示
すように設定される。
【0095】尚、図11、図12に示したTFT94と
しては、多結晶Si(p−Si)TFTを用いることも
できる。
【0096】図12のパネルの画素部分の等価回路を図
13に、駆動波形の一例を図14に示し、本発明の液晶
素子におけるアクティブマトリクス駆動について説明す
る。
【0097】本発明の液晶素子におけるアクティブマト
リクス駆動では、フレーム毎に液晶に印加される電圧の
極性を反転させる。図14は、同じソース線に接続され
た隣接する2画素にかかる駆動波形である。
【0098】図14(a−1)、(a−2)は、同じソ
ース線に接続された任意の隣り合う2画素に着目した際
に、当該2画素にそれぞれ接続された走査信号線となる
ゲート線に印加される電圧を示す。図11、図12に示
された構造の液晶素子では、各フレーム毎にゲート線G
1、G2、…が例えば線順次で選択され、一ゲート線には
選択期間Tonにおいて所定のゲート電圧Vgが印加さ
れ、ゲート電極22に電圧Vgが加わり、TFT94が
オン状態となる。他のゲート線が選択されている期間に
相当する非選択期間Toffにはゲート電極22に電圧が
加わらずTFT94は高抵抗状態(オフ状態)となる。
【0099】図14(b)は、当該2画素の情報信号線
(ソース線)に印加される電圧Vsを示す。図14(a
−1)、(a−2)で示すように各フレームで選択期間
onでゲート電極22にゲート電圧が印加された際、こ
れに同期して当該画素に接続されたソース線S1、S2
…からソース電極27に、所定のソース電圧(情報信号
電圧)Vs(基準電位を共通電極42の電位Vcとする)
が印加される。
【0100】ここで、当該画素に書き込まれる情報、例
えば用いる液晶に応じた図7に示すような電圧−透過率
特性を基に当該画素で得ようとする光学状態または表示
情報(透過率)に応じたVx或いは−Vx(基準電位を共
通電極42の電位Vcとする)のソース電圧(情報信号
電圧)が各画素の液晶に印加される。この時、TFT9
4がオン状態である画素においては、上記ソース電極2
7に印加される電圧Vx或いは−Vxがドレイン電極28
を介して画素電極95に印加され、液晶容量(Cls)3
1及び保持容量(Cs)32に充電がなされ、画素電極
95の電位が情報信号電圧Vx或いは−Vxになる。続い
て当該画素の属するゲート線の非選択期間Toffにおい
てTFT94は高抵抗(オフ状態)となるため、この非
選択期間には、液晶容量(Clc)31及び保持容量(C
s)32では選択期間Tonで充電された電荷が蓄積され
た状態を維持し、電圧Vx或いは−Vxが保持される。そ
して、当該画素における液晶層49に1フレーム期間を
通して電圧Vx或いは−Vxが印加され、当該画素の液晶
部分ではこの電圧値に応じた光学状態(透過光量)が得
られる。
【0101】図14(c−1)、(c−2)は、上述し
たような画素の液晶容量及び保持容量に実際に保持され
液晶層49に印加される電圧値Vpix1(D1領域)及び
pix2(D2領域)を、図14(d−1)、(d−2)
は当該画素での液晶の実際の光学応答(透過型液晶素子
とした場合での光学応答)を模式的に示す((d−1)
はD1領域、(d−2)はD2領域))。
【0102】本発明の液晶素子においては、D1領域及
びD2領域のそれぞれにおいて印加される電圧の極性に
応じて示される透過率の大きさが逆になる。従って、D
1領域においては正極性印加フレームでは例えば図7に
示す特性に基づいてVxに応じた階調表示状態(透過光
量)が得られるが、負極性印加フレームでは、例えば図
7に示すような特性によれば実際にはわずかな透過光量
の変化しか得られず、透過光量Txより小さく、0レベ
ルに近いTyとなる。またD2領域では上記D1領域と
は逆に、負極性印加フレームで−Vxに応じた階調表示
状態が得られ、正極性印加フレームでは0レベルに近い
yとなる。
【0103】このように、各フレームにおいて1走査ラ
イン毎に実質的に0レベルに近い表示が行われるため、
実質的に1H反転駆動と同じ表示状態が得られる。
【0104】
【実施例】〔液晶セルの作製〕透明電極として厚さ70
0ÅのITO膜を形成した厚さ1.1mmの一対のガラ
ス基板を用意した。該基板の透明電極上に、下記の繰り
返し単位PI−aを有するポリイミド前駆体をスピンコ
ート法により塗布し、その後、80℃で5分間の前乾燥
を行った後、200℃で1時間加熱焼成を施し、膜厚2
00Åのポリイミド被膜を得た。
【0105】
【化1】
【0106】続いて、当該基板上のポリイミド膜に対し
て一軸配向処理としてナイロン布によるラビング処理を
施した。ラビング処理の条件は、直径10cmのロール
にナイロン(帝人社製「NF−77」)を貼り合わせた
ラビングロールを用い、押し込み量0.3mm、送り速
度10cm/s、回転数1000rpm、送り回数4回
とした。
【0107】次いで、一方の基板上にスペーサーとし
て、平均粒径2.0μmのシリカビーズを散布し、各基
板のラビング処理方向が互いに反平行(アンチパラレ
ル)となるように対向させ、均一なセルギャップのセル
(単画素の空セル)を得た。
【0108】〔アクティブマトリクスセルの作製〕上記
同様の材料、及び条件の透明電極、ポリイミド配向膜を
用い、さらに、一方の基板をゲート絶縁膜として窒化シ
リコン膜を備えたa−SiTFTを有するアクティブマ
トリクス基板とし、他方の基板にR、G、Bのカラーフ
ィルタを形成し、図12に示す画素構造のアクティブマ
トリクスセル(パネル)を作製した。尚、TFTにおけ
る保持容量(Cs)はそれぞれの液晶の容量(Clc)の
5倍となるように設定した。画面サイズは10.4イン
チ、画素数は800×600×RGBとした。
【0109】〔液晶組成物の調製〕下記液晶性化合物を
混合して液晶組成物LC−1を調製した。構造式に併記
した数値は混合の際の重量比率である。
【0110】
【化2】
【0111】上記液晶組成物LC−1の物性パラメータ
を以下に示す。
【0112】
【化3】
【0113】上記のプロセスで作製した単画素セル及び
アクティブマトリクスセルのそれぞれに液晶組成物LC
−1をIso相の温度で注入し、液晶をカイラルスメク
チック相を示す温度まで冷却し、この冷却の際、Ch−
SmC*相転移前後においてオフセット(直流)電圧を
印加して冷却する処理を施し、液晶素子サンプルを作製
した。サンプルは、上記冷却時に−5VのDCオフセッ
ト電圧を印加した単画素のサンプルA及びアクティブマ
トリクス素子サンプルB、及び、アクティブマトリクス
パネルのm行n列の画素への電圧印加方法として、mが
偶数の画素には+5VのDCオフセット電圧を、mが奇
数の画素には−5VのDCオフセット電圧を印加したア
クティブマトリクス素子サンプルCを作製した。かかる
サンプルについて下記の評価を行った。
【0114】1−1.配向状態 素子サンプルAの液晶の配向状態について偏光顕微鏡観
察を行った。
【0115】その結果、30℃では、電圧無印加で最暗
軸がラビング方向と若干ずれた状態であり、且つ層法線
方向がセル全体で一方向しかないほぼ均一な配向状態が
観測された。
【0116】1−2.配向状態 素子サンプルCの液晶の配向状態について偏光顕微鏡観
察を行った。
【0117】その結果、各画素については30℃では、
電圧無印加で最暗軸がラビング方向と実質的に一致した
方向であり、且つ層法線方向が同一行内では一方向しか
ないほぼ均一な配向状態が観測された。また、隣り合っ
た行では層法線方向が互いに異なる配向状態となってい
た。
【0118】2.光学応答 液晶素子が示す電気光学応答を測定するために、素子サ
ンプルAについてセルをクロスニコル下でフォトマルチ
プライヤー付き偏光顕微鏡に、偏光軸を電圧無印加状態
で暗視野となるように配置した。
【0119】これに30℃において±5V、0.2Hz
の三角波を印加した際の光学応答を観測すると、正極性
の電圧印加に対しては、印加電圧の大きさに応じて徐々
に透過光量(透過率)が増加していった。一方、負極性
の電圧印加の際の光学応答の様子は、電圧レベルに対し
て透過光量が変化しているものの、その最大光量は、正
極性電圧印加の際の最大透過率と比較すると1/10程
度であった。
【0120】3.矩形波応答 素子サンプルAについて、三角波応答と同様の装置を用
いて、60Hz、±5Vの矩形波電圧を印加して電圧値
を変化させながら光学レベルを測定した。
【0121】その結果、正極性の電圧には十分光学応答
し、その光学応答は前状態には依存せずに安定した中間
調状態が得られることが確認できた。また、負極性の電
圧に対しても同じで且つ絶対値の正極性電圧印加の場合
の1/10程度の光学応答が確認され、正負の電圧に対
する光学応答の平均値は前状態に依存せず安定した中間
調が得られることが確認できた。
【0122】4−1.フリッカ特性評価 TFTを用いたアクティブマトリクスパネルであるサン
プルBを用いてフリッカ特性評価を行った。この時、1
H反転駆動を行わずフレーム反転駆動を行った。その結
果、フリッカが顕著に観測された。
【0123】4−2.フリッカ特性評価 TFTを用いたアクティブマトリクスパネルであるサン
プルBを用いてフリッカ特性評価を行った。この時、1
H反転駆動を行ない、且つフレーム反転駆動を行った。
その結果、フリッカは観測されなかったものの、中間調
の色再現性が悪く、鮮明な画像が得られなかった。
【0124】4−3.視野角特性評価 TFTを用いたアクティブマトリクスパネルであるサン
プルCを用いてフリッカ特性評価を行った。この時、1
H反転駆動を行わずフレーム反転駆動を行った。その結
果、フリッカは観測されず、且つ中間調の色再現性の良
い、鮮明な画像を得ることができた。
【0125】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
カイラルスメクチック液晶素子において、高速応答と階
調制御が可能であり、同時に、フリッカの発生が防止さ
れ鮮明な画像の優れた液晶素子が安価に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】SSFLCタイプの液晶素子における液晶配向
状態での液晶分子及び液晶層構造を示す模式図である。
【図2】図1の液晶配向状態における液晶分子の仮想コ
ーン底面への射影を示す模式図である。
【図3】SSFLCタイプの液晶素子及び本発明の液晶
素子の一実施形態の各液晶相での配向状態を示す模式図
である。
【図4】本発明の液晶素子の一実施形態におけるカイラ
ルスメクチック液晶相での配向状態を示す模式図であ
る。
【図5】カイラルスメクチックC相での配向状態を示す
模式図である。
【図6】本発明の液晶素子の一実施形態におけるカイラ
ルスメクチック液晶相での電圧印加による液晶分子の反
転挙動を示す模式図である。
【図7】本発明の液晶素子における電圧−透過率特性の
一例を示す図である。
【図8】SSFLCにおける双安定配向状態でのポテン
シャルの状態を示す模式図である。
【図9】本発明の液晶素子における配向状態でのポテン
シャルの状態を示す模式図である。
【図10】本発明の液晶素子の一実施形態の一画素の構
造を模式的に示す断面図である。
【図11】本発明の液晶素子の構成例を示す平面模式図
である。
【図12】本発明の液晶素子の一画素の構成例を示す断
面模式図である。
【図13】図12に示した素子構造の等価回路を示す図
である。
【図14】本発明の液晶素子をアクティブマトリクス駆
動する際の駆動波形及び光学応答の一例を示す図であ
る。
【図15】本発明の液晶素子におけるD1領域とD2領
域の配置を示す平面模式図である。
【符号の説明】
11,12 基板 13 液晶 14,14a,14b 液晶分子 15 コーン 16 スメクチック層 17 コーン底面 18,18a,18b 液晶分子の仮想コーン底面への
射影 19 自発分極 20 アクティブマトリクス基板 21 基板 22 ゲート電極 23 ゲート絶縁膜 24 半導体層 25,26 オーミックコンタクト層 27 ソース電極 28 ドレイン電極 29 チャネル保護膜 30 保持容量電極 31 液晶容量 32 保持容量 40 対向基板 41 基板 42 共通電極 43a,43b 配向膜 49 液晶層 50 自発分極 80 液晶素子 81a,81b 基板 82a,82b 電極 83a,83b 絶縁膜 84a,84b 配向膜 85 液晶層 86 スペーサー 90 パネル部 91 走査信号ドライバ 92 情報信号ドライバ 94 TFT 95 画素電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 門叶 剛司 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H088 EA02 FA02 FA10 GA04 HA03 HA04 HA06 HA08 HA21 JA19 KA12 KA14 KA15 KA16 KA20 KA21 KA25 LA04 LA06 LA07 LA08 MA01 MA10 MA13 2H090 HA03 HB02X HB02Y HB03X HB03Y HB08Y HC05 KA14 LA04 LA20 MA11 MA16 MB01 MB13 MB14 2H092 JA03 JA26 JB07 JB09 JB66 KA04 KA05 KA07 NA01 NA05 PA02 PA06 QA13

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 複数画素を個々に制御して画像を表示す
    る液晶素子であり、カイラルスメクチック液晶と、該液
    晶を狭持して対向すると共に少なくとも一方の液晶との
    界面に一軸配向処理が施された一対の基板と、画素毎に
    液晶を駆動する電極及び該電極に接続されたアクティブ
    素子と、少なくとも一方の基板の外側に配置した偏光板
    と、を備え、アナログ階調表示を行う液晶素子であっ
    て、電圧無印加時には、上記液晶の平均分子軸が単安定
    化された第一の状態を示し、第一の極性の電圧印加時に
    は、上記液晶の平均分子軸が印加電圧値に応じた角度で
    上記第一の状態から一方の側にチルトし、上記第一の極
    性とは逆極性の第二の極性の電圧印加時には、上記液晶
    の平均分子軸が印加電圧値に応じた角度で上記第一の状
    態から上記第一の極性の電圧印加時にチルトした側とは
    逆側にチルトし、上記第一の極性の電圧印加時と第二の
    極性の電圧印加時の液晶の平均分子軸の、上記単安定化
    された第一の状態の位置を基準とした最大チルト状態の
    チルト角をそれぞれβ1,β2としたとき、素子内に、
    互いにスメクチック層法線方向が異なる、β1>β2と
    なるD1領域の画素とβ1<β2となるD2領域の画素
    が走査ライン毎に互い違いに存在することを特徴とする
    液晶素子。
  2. 【請求項2】 D1領域においてはβ1≧5×β2、D
    2領域においてはβ2≧5×β1である請求項1記載の
    液晶素子。
  3. 【請求項3】 上記D1領域及びD2領域において、ス
    メクチック層法線方向が各領域内で一方向である異なる
    請求項1または2に記載の液晶素子。
  4. 【請求項4】 電圧無印加時に各画素の液晶が第一の透
    過率を呈し、D1領域における第二の極性の電圧印加及
    びD2領域における第一の極性の電圧印加によって、各
    画素の液晶が第二の透過率を呈し、D1領域における第
    一の極性の電圧印加及びD2領域における第二の極性の
    電圧印加によって各画素の液晶が第三の透過率を呈し、
    印加される電圧の大きさにより、液晶の平均分子軸の上
    記単安定化された位置からのチルトの角度を変化させる
    ことで、上記第二の透過率の最大値と第一の透過率との
    間で透過率を連続的に変化させる請求項1〜3のいずれ
    かに記載の液晶素子。
  5. 【請求項5】 上記第一の透過率が素子における最小透
    過率であり、上記第二の透過率の最大値が素子の最大透
    過率である請求項4記載の液晶素子。
  6. 【請求項6】 上記カイラルスメクチック液晶の相転移
    系列が、高温側より、等方相−コレステリック相−カイ
    ラルスメクチックC相、或いは、等方相−カイラルスメ
    クチックC相である請求項1〜5いずれかに記載の液晶
    素子。
  7. 【請求項7】 上記カイラルスメクチック液晶のバルク
    状態でのらせんピッチがセル厚の2倍より長い請求項1
    〜6のいずれかに記載の液晶素子。
  8. 【請求項8】 透過型液晶素子である請求項1〜7のい
    ずれかに記載の液晶素子。
  9. 【請求項9】 反射型液晶素子である請求項1〜7のい
    ずれかに記載の液晶素子。
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