JP2000271538A - 層間密着性に優れるプレコート金属板 - Google Patents

層間密着性に優れるプレコート金属板

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博康 古川
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 家電製品や建材等に使用される際に成形加工
されても多層塗膜の層間剥離が発生することのない、層
間密着性に優れるプレコート金属板を提供する。 【解決手段】 2層以上の塗膜を有するプレコート金属
板において、接しあう2層の界面から下層側へ3μmの
範囲の塗膜の、C,O,NのXPS強度の合計に対する
NのXPS強度比が7〜25%でかつ、この範囲の塗膜
のメラミン反応率が40〜90%となるようにすること
で、下層中に十分なメラミンが存在しかつ、そのメラミ
ンが十分な反応性を有している状態とし、下層・上層間
の層間密着性を確保する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、家電製品や建材等
に使用される際に成形加工されても塗膜の層間剥離が発
生することのない、層間密着性に優れるプレコート金属
板に関する。
【0002】
【従来の技術】建材、家電、雑貨、自動車などの分野に
おいては、金属板を成形加工後に組立・塗装するという
従来のポストコート方式に代わって、あらかじめ塗装さ
れた金属板(プレコート金属板:PCMと略す)を成形
加工し、接合して製品とするプレコート方式が多く採用
されるようになってきた。その使用により、需要家での
塗装工程が省略でき、塗装廃棄物等による公害・環境問
題の解決が図れ、さらに塗装のためのスペースを他の用
途に転活用できるなどのメリットがあることから、その
需要量は着実にのびてきている。PCMの表面塗装は、
2コート2ベーク以上の仕様が一般的であり、2コート
2ベーク仕様では、主に原板との密着性や耐食性を司る
プライマー層と、硬度や加工性、耐汚染性等の表層機能
を司るトップコート層からなる。PCMを需要家にて成
形加工する際、金型により塗膜が擦れ、最も層間密着性
の低い界面にて塗膜が剥離することがある。2コート2
ベークの仕様では、プライマー−トップコート層界面で
剥離することがある。しかしこれまで、この界面剥離を
起こさないための塗料設計の定量的な指針は存在しなか
ったため、経験や勘に頼った塗料設計や製造条件の設定
を行わざるを得なかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、層間密着性
を確保する方法を確立し、それに基づき層間密着性に優
れるPCMを安定的に提供しようとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めには、層間での密着機能を明らかにする必要があると
考え、先ずポリエステル/メラミン系プライマー及びト
ップコートによる、2コート2ベーク仕様のプレコート
鋼板におけるプライマー・トップコート間でのメラミン
の移動現象について検証した。ポリエステル/メラミン
系プライマー(クリアー)を塗布・乾燥した上に、メラ
ミンフリーポリエステル樹脂(クリアー)を塗布・乾燥
したモデルサンプルについて、トップコート塗膜中への
プライマー層からのメラミンの移動の有無を調べたとこ
ろ、XPSによりトップコート塗膜表面にメラミン起因
のNが検出され、トップコート塗膜の粘着性も失われた
ことから、遊離メラミンのトップコート塗膜中への移動
及びポリエステルとの硬化反応が起こっていることがわ
かった。つまり、下層塗料へメラミンを添加した系で
は、界面の密着には下層メラミンの上層への拡散及び反
応が寄与していることがわかった。この知見から、下層
塗膜へメラミンを添加し、有効的に上層との反応を起こ
させることが層間密着性の向上に役立つと考え、メラミ
ンの添加量、反応条件等について種々検討することによ
り本発明を完成させた。
【0005】本発明は、2層以上の塗膜を有し、接しあ
う2層の界面から下層側へ3μmの範囲の塗膜の、C,
O,NのXPS強度の合計に対するNのXPS強度比が
7〜25%でかつ、この範囲の塗膜のメラミン反応率が
40〜90%であることを特徴とする、層間密着性に優
れるプレコート金属板である。
【0006】
【発明の実施の形態】層間密着性を確保するためには、
下層塗膜中の上層塗膜と接する近傍に、十分なメラミン
が存在し、かつそのメラミンが十分な反応性を有してい
ることが有用である。メラミンの存在量はXPSにより
規定される。界面から下層側へ3μmの範囲の塗膜の、
C,O,NのXPS強度の合計に対するNのXPS強度
比が7〜25%であれば、十分なメラミンが存在してい
るといえる。XPSの測定は、下層のこの範囲内の塗膜
が表面にでるまで塗膜を上層側から研削してから行えば
よい。XPSでのNの強度比は、塗膜中のメラミン存在
量の指標であり、XPSでのNの強度比が高いほど、メ
ラミンの存在率が高いといえる。存在率が100%のと
き、Nの強度比は約25%となる。
【0007】次に、この範囲内の塗膜のメラミン反応率
の測定方法について説明する。この範囲内の塗膜をヤス
リで削りとり粉末を採取し、13C固体NMRの測定(デ
カップリング法)によりメラミン反応率を以下のように
算出する。メラミン中のメチル基の信号(55ppm の位
置に出る)強度S2′及びポリエステルのアルキル基の
信号(15〜45ppm の位置に出る)強度S1′の強度
比S2′/S1′を測定する。通常、硬化前の塗料のメ
ラミン中のメチル基の信号強度S2及びポリエステルの
アルキル基の信号強度S1についてはS2/S1=0.
15であるので、成膜後の塗膜のメラミン反応率は、1
−(S2′/S1′)/(S2/S1)で計算できる。
下層のこの範囲の塗膜中のメラミン反応率が90%を越
えている場合、硬化がすすみすぎており、上層の樹脂と
の反応に供されるメラミン量が不足するため、仮にメラ
ミン存在率が十分に高くても層間密着性は良くない。本
来、層間密着性に寄与するのは、上層を塗布、加熱する
前の下層内でのメラミン反応率であるが、加熱前のメラ
ミン反応率の層間密着性を失わない上限が、加熱後のメ
ラミン反応率の90%に相当するため、上層形成後の塗
膜解析でも層間密着性は推定できる。メラミン反応率が
40%未満の場合は、上層を塗布、加熱する前にはそれ
未満であり、下層の硬化が不十分で、上層塗料を塗布し
たときに溶解するため好ましくない。
【0008】本発明の基材としての金属板は、冷延鋼
板、熱延鋼板、各種めっき鋼板(例えば亜鉛めっき、亜
鉛合金めっき、錫めっき、鉛めっき、アルミニウムめっ
き、クロムめっき鋼板など)、ステンレス板、チタン
板、アルミニウム板などが使用でき、これらをそのまま
あるいは通常の化成処理を施して使用すればよい。ま
た、金属板と塗膜との密着性を向上させるために、金属
板の下塗り塗料として、例えば、ナイロン、ポリアクリ
ル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポ
リウレタン、エポキシ、ポリアミド、フェノール、ポリ
オレフィン等を塗布したものを使用してもよい。金属板
上に形成する塗膜の樹脂としては、エポキシ系樹脂、高
分子ポリエステル樹脂、エポキシ変成ポリエステル樹
脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などが使用でき、硬化
剤としてメラミンを使用する場合は、このメラミン量及
び反応率を条件内に制御すればよく、またメラミンを硬
化剤として使用しない場合には、これらの樹脂にメラミ
ンを添加して使用すれば良い。
【0009】本発明のPCMを製造する方法としては、
通常のPCMを製造するラインにおいて、通常と同様の
方法で製造することができる。
【0010】例えば、樹脂被覆の金属板表面への形成方
法としては、浸漬法、カーテンフロー法、ロールコート
法、バーコート法、静電法、刷毛塗り法、T−ダイ法、
ラミネート法などが用いられる。
【0011】焼き付け方法としては、熱風、常温、近赤
外線、遠赤外線、誘導加熱等が挙げられる。下層皮膜の
焼き付け温度(到達板温度:PMT)は、本発明の条件
を満たす温度に設定する必要がある。なお、本条件を満
たすには、単なる温度設定によるだけでなく、加熱方式
の適切な選択によっても達成しうる。たとえば、原板側
から加熱される誘導加熱方式を使用することによって、
同一のPMTであっても塗膜の表層側のメラミン反応率
を比較的低く抑えることができ、上層塗膜との層間密着
性が確保しやすいことがわかっている。
【0012】
【実施例】以下、本発明について、実施例及び比較例に
て説明する。評価したPCMはすべて、原板として、
0.6mm厚の溶融亜鉛めっき鋼板(YP:19kg/m
m2 ,TS:34kg/mm2 ,EL:45%)を使用し
た。前処理としては、塗布型クロメート処理を施した。
【0013】塗膜構成は、プライマー(下層)、トップ
コート(上層)の2コート2ベークとした。プライマー
としてポリエステル系塗料及びウレタン系塗料に、メラ
ミンとしてヘキサメトキシメチロール化メラミンを添加
し、乾燥膜厚で5μm、バーコートにて塗布し、熱風オ
ーブン及び誘導加熱オーブンで表1に示す温度で焼き付
けた後、その上にトップコートとして表1に示す各種の
塗料を、乾燥膜厚で20μm、バーコートにて塗布し、
熱風オーブンにてPMT230℃で焼き付けた。プライ
マー塗料については、メラミン量、乾燥温度、及び加熱
方式を種々変化させて、N比率、メラミン反応率の異な
るサンプルを作製した。
【0014】層間密着性の評価は以下のようにして行っ
た。サンプルを、30×300mmの短冊状に切断し、裏
面同士が接するように2枚重ね合わせ、2個の金型で挟
む。金型は、一方は平板、他方は8mmφの半円柱型の凸
部を有するビード金型を使用し、押し付け荷重は900
kgとする。その後、2枚重ねのサンプルを、200mm/
分の速度で引き抜き、そのときの凸型金型で擦れた部分
の塗膜剥離状況を観察する。層間剥離の生じているもの
を×、生じていないものを○と評価して、表1に示した
結果を得た。この評価方法は、実際の金型擦れによる塗
膜の層間剥離をよく再現できることがわかっている。
【0015】外観は、上層の塗装を行ったあとの評価を
行った。美麗なものを○、むらが見られるものを×と評
価して、表1に示した結果を得た。
【0016】
【表1】
【0017】実施例1〜18は、N%及びメラミン反応
率が条件を満たしているため、良好な層間密着性が得ら
れている。これらのなかで、実施例4は、メラミン添加
量が20重量部と少なく、比較例2に見られるように熱
風加熱ではN%が低いため層間密着性が得られないとこ
ろが、誘導加熱にすると若干N%が上がり、層間密着性
が得られるようになっている。これは、誘導加熱方式に
よるほうが、若干メラミンが下層の表層に濃縮する傾向
があるためと考えられる。また、実施例11及び12
は、下層のPMTが240℃と高く、比較例5及び6に
見られるように熱風加熱ではメラミン反応率が高いため
層間密着性が得られないところが、誘導加熱にするとメ
ラミン反応率が下がり、層間密着性が得られるようにな
っている。これは、誘導加熱方式では原板側から加熱さ
れるため、塗膜の表層付近の温度が比較的低いためであ
ると考えられる。
【0018】一方、比較例1〜13は層間密着性が劣っ
ている。比較例1〜3,9,10、及び12は下層や上
層の樹脂種類に関わりなく、メラミン添加量が少ないた
めN%が足りず、層間密着性が得られていない。比較例
4,7、及び8は、PMTが低いためメラミン反応率が
低く、上層塗膜中への溶解が起こるため、上層塗装後の
外観が良くない。比較例5,6,11、及び13は、下
層PMTが高いためメラミン反応率が90%を越え、上
層の樹脂種類に関わりなく層間密着性が得られていな
い。
【0019】
【発明の効果】以上示したように、本発明により層間密
着性に優れるプレコート金属板の提供が可能となった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 高橋 彰 千葉県君津市君津1番地 新日本製鐵株式 会社君津製鐵所内 Fターム(参考) 4D075 AE03 CA13 DC01 DC10 DC18 EB51 4F100 AB01A AB18 AK01B AK01C AK36 AK42 AK51 BA03 BA04 BA05 BA07 BA10A BA10C CC01B CC01C CC03B CC03C EH46 EJ42 GB07 GB48 JL11

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 2層以上の塗膜を有し、接しあう2層の
    界面から下層側へ3μmの範囲の塗膜の、C,O,Nの
    XPS強度の合計に対するNのXPS強度比が7〜25
    %でかつ、この範囲の塗膜のメラミン反応率が40〜9
    0%であることを特徴とする、層間密着性に優れるプレ
    コート金属板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006265470A (ja) * 2005-03-25 2006-10-05 Kobe Steel Ltd 接着性に優れた樹脂膜被覆鋼板およびその製造方法
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