JP2000268771A - 垂直加速型飛行時間型質量分析計 - Google Patents

垂直加速型飛行時間型質量分析計

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JP2000268771A JP11070790A JP7079099A JP2000268771A JP 2000268771 A JP2000268771 A JP 2000268771A JP 11070790 A JP11070790 A JP 11070790A JP 7079099 A JP7079099 A JP 7079099A JP 2000268771 A JP2000268771 A JP 2000268771A
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ion reservoir
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Abstract

(57)【要約】 【課題】垂直加速型飛行時間型質量分析計において、イ
オンパルスが持つ運動エネルギー幅を従来よりも小さく
抑えることによって質量分解能を向上させる。 【解決手段】イオン溜3にイオンを蓄積する場合には、
押出プレート4は接地電位になされ、中間電極11には
負の電圧VW が印加される。これにより、イオン溜3内
ではイオンビームは、ほぼ収束された状態を保ったまま
y方向に飛行する。従って、イオン溜3の内部でのイオ
ンのz方向の空間的広がりを最小限に抑えることが可能
であり、このことによって、イオン溜3からイオンパル
スとして排出するときのイオンの持つ運動エネルギーの
広がりを最小限に抑えることができ、以て質量分解能を
向上させることができる。また、イオン溜3の入り口側
と出口側に第1、第2のミラー電極を配置し、押出プレ
ート4、グリッド5、中間電極11、第1、第2のミラ
ー電極12、13に最適な電圧を印加すると、イオンビ
ームをイオン溜3内で複数回ジグザグに往復させ、蓄積
させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、垂直加速型飛行時
間型質量分析計に係り、特に分解能を向上させるための
技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、質量分析計として、試料から発生
させたイオンを飛行させることにより、試料のイオンを
質量の大きなイオンと質量の小さなイオンとに分離して
質量分析器に導入し、試料の質量分析を行う飛行時間型
質量分析計(TOFMS)が提案されている。この飛行時間
型質量分析計は、イオンに同一の運動エネルギーを与え
たとき、イオンの質量電荷比(m/e:Mは質量数、e
は素電荷量)が小さいものほど、イオン検出器に早く到
達することを利用している。
【0003】このような飛行時間型質量分析計の一つの
種類として、従来、イオンを連続的に出射する連続イオ
ン化法を用いた垂直加速型飛行時間型質量分析計(Orth
ogonal Acceleration TOFMS。以下、OA/TOFMS と称す)
が提案されている。
【0004】図14は、OA/TOF-MS の一構成例を模式的
に示す図である。図中、1はイオン源、2はビーム規制
スリット、3は長さy0 のイオン溜、4はイオン押出プ
レート、5はイオン溜3のイオン放出口に設けられた、
金属メッシュ電極からなるグリッド、7はTOF-MS分光
部、8はイオン検出器である。
【0005】電圧V1 が印加されているイオン源1から
のイオンは、eV1 の運動エネルギーでイオン規制スリ
ット2を通ってイオン溜3に導入される。そして、この
イオンが長さy0 のイオン溜3に充満された状態におい
て、イオン押出プレート4に高圧パルス電圧(振幅電圧
=VP )を印加すると、第1グリッド5が接地電位また
は接地電位近傍の電位に保持されているので、イオン溜
3内に充満されたイオンは、eVP の運動エネルギーで
イオン溜3内でのイオンの飛行方向と垂直方向(TOFMS
の光軸方向で図14のz方向)に加速され、イオン溜3
のグリッド5から排出される。これがイオンパルスであ
る。このとき、イオンはドリフト方向の長さy0 (イオ
ン溜3の長さ)のビーム長分が排出される。
【0006】イオン溜3から排出されたイオンパルスは
TOFMS分光部7に進入し、TOFMS分光部7内を飛行した
後、イオン検出器8に到達する。このとき、イオンはTO
FMS分光部7内の飛行中に質量分離され、質量の小さい
イオンから順次イオン検出器8に検出される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】ところで、イオン源1
として連続イオン化法によるイオン源を用いた場合、イ
オン源1で生成され、イオン溜3に導入されるイオン
は、通常数十eV程度で加速されるために、図14に示
すように、r0 の空間的な広がりを持つが、このこと
は、イオン溜3から排出されたイオンパルスは、イオン
溜3内での空間的広がりに対応した運動エネルギー幅を
有していることを意味している。
【0008】例えば、図14において、イオン押出プレ
ート4とグリッド5の間の距離(図の2S0)を 6m
m、イオン押出プレート4に印加する高圧パルス電圧V
P を 600Vとすると、イオン溜3内でのイオンビームの
z方向の空間的広がりr0 を 2mmとしても、1.0 mm
当たり 100eVの運動エネルギーの広がりとなるため、
イオンパルスが持つz方向の全運動エネルギー幅は 200
eVに達する。
【0009】このようにイオンパルスが運動エネルギー
幅を持つと、その運動エネルギー幅が大きければ大きい
程、必然的にTOFMS分光系7の高次のエネルギー収差が
増大し、得られるスペクトル幅が非対称になるばかりで
なく、質量分解能の低下を招いてしまうものである。
【0010】このことは、特に、イオン源1として低加
速電子衝突型(EI)イオン源を用いた場合に顕著であ
る。即ち、上述したように、通常はイオン溜3に導入さ
れるイオンは数十eV程度で加速されるのである。その
ために、イオンパルスの持つ運動エネルギー幅の広がり
は大きなものとなるのである。
【0011】本発明は、イオン源としてどのようなもの
を用いた場合においても、イオンパルスが持つ運動エネ
ルギー幅を従来よりも小さく抑えることによって質量分
解能を向上させることができる垂直加速型飛行時間型質
量分析計を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1記載の垂直加速型飛行時間型質量分析計
は、イオン源から出射したイオンビームをイオン溜の入
射端面近傍の位置に収束させる収束レンズと、押出プレ
ートと、イオン放出口に設けられたグリッドと、押出プ
レートとグリッドの間に配置された中間電極とで構成さ
れるイオン溜とを備え、前記中間電極には、イオン溜に
イオンを導入する場合には、イオン溜内でのイオンビー
ムの空間的広がりを抑える電圧が印加され、イオン溜か
らイオンパルスを排出する際には、押出プレートに印加
される電圧を分圧した電圧が印加されることを特徴とす
る。請求項2記載の垂直加速型飛行時間型質量分析計
は、イオン源から出射したイオンビームをイオン溜の入
射端面近傍の位置に収束させる収束レンズと、押出プレ
ートと、イオン放出口に設けられたグリッドと、押出プ
レートとグリッドの間に配置された中間電極とで構成さ
れるイオン溜とを備え、収束レンズ、押出プレート、グ
リッド、及び中間電極には、イオン溜の入出射端に、イ
オン溜に導入されたイオンがイオン溜内を一往復するよ
うな非対称な電位分布が形成される適切な電位が印加さ
れることを特徴とする。請求項3記載の垂直加速型飛行
時間型質量分析計は、イオンビームを所定の入射角度α
でイオン溜に入射する入射手段と、入射手段からのイオ
ンビームをイオン溜の入射端面近傍の位置に収束させる
収束レンズと、押出プレートと、イオン放出口に設けら
れたグリッドと、押出プレートとグリッドの間に配置さ
れた中間電極とで構成されるイオン溜と、イオン溜の入
り口側と出口側に対称に配置された第1、第2のミラー
電極とを備え、押出プレート、グリッド、中間電極、及
び第1、第2のミラー電極に、イオンビームがイオン溜
内で複数回ジグザグに往復するような電圧が印加される
ことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ発明の実
施の形態について説明する。図1は本発明に係る垂直加
速型飛行時間型質量分析計の第1の実施形態を示す図で
あり、イオン溜3近傍の部分のみを示す部分図である。
その他については図14に示すと同じである。図1にお
いて、10は収束レンズ、11は中間電極、SW1 ,S
2 はスイッチを示す。なお、以下の説明においてはイ
オン源1(図1には図示せず)から出射されるイオンは
正イオンであるとする。
【0014】図1は、イオン溜3のy−z平面における
平面図であり、イオン源1とイオン溜3の間には収束レ
ンズ10が配置されている。この収束レンズ10は、ア
インツェルレンズ、または静電4重極レンズ、あるいは
円筒レンズで構成することができるが、ここでは図に示
すように、3つの電極からなるアインツェルレンズで構
成されるものとする。そして、この場合にはイオンが正
イオンであるので、中央電極には正の電圧VL が印加さ
れ、その両側の電極は接地電位となされる。
【0015】ここで重要なことは、収束レンズ10によ
るイオンビームの収束点がイオン溜3の入射側端面近傍
に位置するように電圧VL を設定することである。望ま
しくは収束点をイオン溜3の入射側端面の位置に一致さ
せることである。そのためには、この中央電極に印加す
る電圧VL を、イオン源1に印加される電圧V1 と同極
性で、且つV1 以上の最適な電圧を与えればよい。これ
により、イオンビームをイオン溜3の入射側端面近傍に
収束させることができる。
【0016】従って、図示しないイオン源1から出射し
たイオンビームは、収束レンズ10によってイオン溜3
の入射側端面近傍の位置で収束されてイオン溜3に導入
し、蓄積されることになる。
【0017】イオン溜3は、押出プレート4と、グリッ
ド5、及び中間電極11で構成される。中間電極11
は、押出プレート4とグリッド5の間に配置されてい
る。そして、中間電極11のイオン溜3の入射側は、押
出プレート4とグリッド5との端面とほぼ一致させるよ
うに取り付け支持する。この中間電極11は、押出プレ
ート4とグリッド5の間に配置されていればよく、必ず
しも押出プレート4とグリッド5間の中央でなくてもよ
い。
【0018】この中間電極11に印加する電圧について
は次のようである。イオン溜3にイオンを導入し、蓄積
する場合には、イオンの電荷極性と逆の極性の電圧VW
を印加する。従って、この場合には正イオンであるの
で、VW は負の電圧である。正イオンの運動エネルギー
が数十eVである場合には、VW は通常負の数V〜数十
Vとなされる。
【0019】イオン溜3からイオンパルスを排出する場
合には、中間電極11には高電圧V P を可変抵抗Rで分
圧した電圧VW0を印加する。この電圧VW0は、中間電極
11が押出プレート4とグリッド5の間のどのような位
置に配置されているかによって決まる電圧であり、図1
に示すように押出プレート4とグリッド5間の距離が2
0 (mm)であり、中間電極11がグリッド5からa
(mm)の距離に配置されているとすると、VW0=VP
×(a/2S0 )である。従って、中間電極11が押出
プレート4とグリッド5の間の中央の位置に配置されて
いる場合には、VW0=VP/2である。つまり、中間電
極11が押出プレート4とグリッド5の間のどのような
位置に配置されているかに応じて、可変抵抗Rの値を調
整して、VW0を上記のような電圧に設定するのである。
なお、ここでは便宜的に、中間電極11は、押出プレー
ト4とグリッド5の間の中央の位置に配置されているも
のとする。
【0020】図2に押出プレート4、グリッド5及び中
間電極11の配置状態の斜視図を示すが、この中間電極
11は、図2(a)に示すように1本の金属ワイヤ電極
で構成してもよく、図2(b)に示すように複数本の金
属ワイヤ電極で構成してもよく、あるいは図2(c)に
示すように格子板状のメッシュ電極で構成してもよい。
【0021】スイッチSW1 は、押出プレート4に印加
する電圧を切り換えるためのものであり、イオン溜3に
イオンを導入し、蓄積する場合には図1の実線で示すよ
うに接続される。従って、この場合には押出プレート4
は接地電位になされる。イオン溜3からイオンパルスを
排出する場合には、瞬間的に図1の破線で示すように接
続される。従って、この場合には押出プレート4にはイ
オンの電荷極性と同極性の高電圧VP が印加される。
【0022】スイッチSW2 は、中間電極11に印加す
る電圧を切り換えるためのものであり、上述したよう
に、イオン溜3にイオンを導入し、蓄積する場合には、
図1の実線で示すように接続されて、中間電極11には
負の電圧VW が印加され、また、イオン溜3からイオン
パルスを排出する場合には、図1の破線で示すように接
続されて、中間電極11にはイオンの電荷極性と同極性
の電圧VW0=VP /2が印加される。
【0023】これらの二つのスイッチSW1 ,SW2
図示しない制御手段によって連動して切り換え制御がな
される。これらのスイッチSW1 ,SW2 としては、Q
スイッチやMOSFETスイッチ等の高速のスイッチン
グが可能なものを用いる。
【0024】次に、上述した説明と重複するが、動作に
ついて説明する。まず、イオン溜3にイオンを導入し、
蓄積する場合について説明する。このとき、スイッチS
1 ,SW2 は共に図1の実線で示すように接続される
ので、押出プレート4は接地電位になされ、中間電極1
1には負の電圧VW が印加される。このときのイオンビ
ームの振る舞いをシミュレーションした結果を図3に示
す。このシミュレーションにおいては、収束レンズ10
に入射するイオンビームの運動エネルギーは10eV、そ
の運動エネルギー幅は 1.0eV、イオンビームの入射角
度は±2.0 °、中間電極11に印加される電圧VW は−
20Vである。また、収束レンズ10の中央電極に印加さ
れる電圧VL は+25Vである。
【0025】図3においては収束レンズ10の中央電極
に印加する電圧VL は最適に調整されており、イオンビ
ームは、収束レンズ10によってイオン溜3の入射側端
面とほぼ同じ位置に収束されてイオン溜3に導入し、蓄
積される。そして、イオン溜3内ではイオンビームは、
ほぼ収束された状態を保ったままy方向に飛行してい
る。つまり、イオン溜3の内部でのイオンのz方向の空
間的広がりを最小限に抑えることが可能なのであり、こ
のことによって、イオン溜3からイオンパルスとして排
出するときのイオンの持つ運動エネルギーの広がりを最
小限に抑えることが可能になり、以て質量分解能を向上
させることができるのである。
【0026】これに対して、収束レンズ10の中央電極
に印加する電圧VL が最適でなく、収束レンズ10の収
束点がイオン溜3の手前になった場合のシミュレーショ
ン結果を比較のために図4に示す。このシミュレーショ
ンにおいては、収束レンズ10に入射するイオンビーム
の運動エネルギーは10eV、その運動エネルギー幅は1.
0eV、イオンビームの入射角度は±2.0 °、中間電極
11に印加される電圧VW は−20Vと図3に示す場合と
同じであるが、収束レンズ10の中央電極に印加される
電圧VL は+19Vである。
【0027】図4では、イオン溜3の内部ではイオンビ
ームはz方向に大きく広がっており、従ってイオンの持
つ運動エネルギーの広がりも大きく、質量分解能を向上
させることは非常に難しいものである。
【0028】次に、イオン溜3内のイオンを排出する場
合について説明する。このとき、スイッチSW1 ,SW
2 は共に図1の破線で示すように接続されるので、押出
プレート4には高電圧VP が印加され、中間電極11に
はVW0=VP /2が印加される。これによって、イオン
溜3内のイオンはグリッド5からTOFMS分光部7に排出
される。
【0029】以上のように、この垂直加速型飛行時間型
質量分析計によれば、イオン溜3の内部でのイオンのz
方向の空間的広がりを最小限に抑えることが可能であ
り、このことによって、イオン溜3からイオンパルスと
して排出するときのイオンの持つ運動エネルギーの広が
りを最小限に抑えることが可能になり、以て質量分解能
を向上させることができる。
【0030】また、図3において説明したように、運動
エネルギーが10eV程度のイオンビームであってもイオ
ン溜3の内部で収束した状態を保持できるので、イオン
源1としてEIイオン源を用いた場合にも質量分解能を
向上させることができる。
【0031】以上は、図14に示すようにイオンがイオ
ン溜3からz方向に直進するリニア型のTOFMSを代表例
として説明したが、上述したようにイオン溜3の内部で
のイオンの空間的広がりを最小限に抑えることが可能で
あるということは、特に、セクタ電場を用いたTOFMSに
は大きなメリットがあり、イオンの運動エネルギーの中
心値が同じ場合には、使用する電場電極のエアギャップ
サイズが小さいものが使用できると共に、セクタ電場電
極に常時印加する電圧も小さくできるものである。ま
た、TOFMS分光部7にリフレクトロンを用いた場合は、
反射ミラー部以降のイオンビームの発散幅を狭くでき、
装置の小型化が可能となる。
【0032】次に、本発明に係る第2の実施形態につい
て説明する。図5は本発明に係る垂直加速型飛行時間型
質量分析計の第2の実施形態を示す図であり、イオン溜
3近傍の部分のみを示す部分図である。その他について
は図14に示すと同じである。ここでも、イオン源1
(図5には図示せず)から出射されるイオンは正イオン
であるとする。
【0033】図5は、イオン溜3のy−z平面における
平面図であり、この実施形態においても、イオン源1と
イオン溜3の間には収束レンズ10が配置されており、
イオン溜3は、押出プレート4と、グリッド5、及び中
間電極11で構成されている。収束レンズ10はアイン
ツェルレンズで構成されており、この場合にはイオンが
正イオンであるので、中央電極には正の電圧VL が印加
され、その両側の電極は接地電位となされる。
【0034】中間電極11は、上記の第1の実施形態に
示すと同じであり、押出プレート4とグリッド5の間に
配置されている。中間電極11のイオン溜3の入射側
は、押出プレート4とグリッド5との端面とほぼ一致さ
せるように取り付け支持されている。この中間電極11
は、押出プレート4とグリッド5の間に配置されていれ
ばよく、必ずしも押出プレート4とグリッド5間の中央
でなくてもよい。また、第1の実施形態で説明したよう
に、中間電極11は、1本の金属ワイヤ電極で構成して
もよく、複数本の金属ワイヤ電極で構成してもよく、あ
るいは格子板状のメッシュ電極で構成してもよい。
【0035】ここで重要なことは、収束レンズ10によ
るイオンビームの収束点がイオン溜3の入射側端面近傍
に位置するように電圧VL を設定することである。望ま
しくは収束点をイオン溜3の入射側端面の位置に一致さ
せることである。そのためには、この中央電極に印加す
る電圧VL を、イオン源1に印加される電圧V1 と同極
性で、且つV1 以上の最適な電圧を与えればよい。これ
により、イオンビームをイオン溜3の入射側端面近傍に
収束させることができる。
【0036】以上のように、この実施形態と、図1に示
す第1の実施形態とは、構造的には同じなのであるが、
押出プレート4、グリッド5、及び中間電極11に印加
する電圧が異なる。以下、説明するスイッチSW1 は、
押出プレート4に印加する電圧を切り換えるためのもの
であり、イオン溜3にイオンを導入し、蓄積する場合に
は図5の実線で示すように接続される。従って、この場
合には押出プレート4には電圧VG が印加される。この
電圧VG は、イオン源1に印加される電圧V1 と同極性
で、且つV1 以上の電圧にする。また、イオン溜3から
イオンパルスを排出する場合には、瞬間的に図5の破線
で示すように接続される。従って、この場合には押出プ
レート4にはイオンの電荷極性と同極性の高電圧VP
印加される。
【0037】スイッチSW2 は、中間電極11に印加す
る電圧を切り換えるためのものであり、イオン溜3にイ
オンを導入し、蓄積する場合には、図5の実線で示すよ
うに接続されて、中間電極11には負の電圧VW1が印加
される。イオンが正イオンである場合には、この電圧V
W1は、上記の電圧VG よりも低い電圧である。また、イ
オン溜3からイオンパルスを排出する場合には、図5の
破線で示すように接続されて、中間電極11にはイオン
の電荷極性と同極性の電圧VW0が印加される。この電圧
W0は、電圧VP を可変抵抗Rで分圧した電圧であり、
中間電極11が押出プレート4とグリッド5の間のどの
ような位置に配置されているかによって決まる。図5に
示すように押出プレート4とグリッド5間の距離が2S
0 (mm)であり、中間電極11がグリッド5からa
(mm)の距離に配置されているとすると、VW0=VP
×(a/2S0 )である。従って、中間電極11が押出
プレート4とグリッド5の間の中央の位置に配置されて
いる場合には、VW0=VP/2である。つまり、中間電
極11が押出プレート4とグリッド5の間のどのような
位置に配置されているかに応じて、可変抵抗Rの値を調
整して、VW0を上記のような電圧に設定するのである。
なお、ここでは便宜的に、中間電極11は、押出プレー
ト4とグリッド5の間の中央の位置に配置されているも
のとする。
【0038】スイッチSW3 は、グリッド5に印加する
電圧を切り換えるためのものであり、イオン溜3にイオ
ンを導入し、蓄積する場合には図5の実線で示すように
接続される。従って、この場合にはグリッド5には、押
出プレート4と同じ電圧VGが印加される。また、イオ
ン溜3からイオンパルスを排出する場合には、瞬間的に
図5の破線で示すように接続される。従って、この場合
にはグリッド5は接地電位となされる。
【0039】これらの3つのスイッチSW1 ,SW2
SW3 は図示しない制御手段によって連動して切り換え
制御がなされる。これらのスイッチSW1 ,SW2 ,S
3としては、QスイッチやMOSFETスイッチ等の
高速のスイッチングが可能なものを用いる。
【0040】次に、上述した説明と重複するが、動作に
ついて説明する。図5には図示しないイオン源1から出
射したイオンビームは、収束レンズ10によってイオン
溜3の入射側端面近傍の位置で収束されてイオン溜3に
導入し、蓄積される。
【0041】イオン溜3にイオンを導入し、蓄積する場
合は、スイッチSW1 ,SW2 ,SW3 は何れも図5の
実線で示すように接続されるので、押出プレート4及び
グリッド5には同じ電圧VG が印加され、中間電極11
にはVW1が印加される。このとき、収束レンズ10の中
央電極に印加する電圧VL を適切な値に選択すると、イ
オン溜3の入り口と出口近傍の電位分布を、イオン溜3
の入り口近傍の領域ではイオン源1に印加される電圧V
1 以下の電位を持たせて、イオンビームを反射させるこ
となくイオン溜3の内部に取り込めるように、また、イ
オン溜3の出口近傍ではイオン源1に印加される電圧V
1 よりも高くすることができる。これは即ち、収束レン
ズ10の中央電極に印加する電圧VL によって、イオン
溜3の入り口近傍と出口近傍の電位分布を非対称にする
ことができることを意味している。
【0042】そして、この第2の実施形態では、イオン
溜3の入り口近傍と出口近傍の電位分布が、上述したよ
うに、イオン溜3の入り口近傍の領域ではイオン源1に
印加される電圧V1 以下の電位を持たせてイオンビーム
をイオン溜3の内部に取り込めるように、また、イオン
溜3の出口近傍ではイオン源1に印加される電圧V1
りも高くなるように非対称になるように電圧VL を選択
する。また、この電圧VL は、イオンビームの収束点が
イオン溜3の入射側端面近傍に位置するような電圧でも
あることは上述した通りである。
【0043】図6にシミュレーション例を示す。図6
は、V1 = 5V、VL =10V、VG =10V、VW1= 0V
としたときの電位分布をシミュレーションしたものであ
り、イオン溜3の入り口近傍と出口近傍の電位分布が非
対称になっていることがわかる。なお、図6においてA
はイオンビームの軌道を示す。
【0044】以上のように、この実施形態では、イオン
溜3にイオンを導入し、蓄積する場合には、イオン溜3
の入り口近傍と出口近傍の電位分布は非対称になるので
あり、このときには、イオンビームは、図7に示すよう
にイオン溜3の内部をy方向に一往復する。即ち、イオ
ンビームは、収束レンズ10によってイオン溜3のほぼ
入射側端面に収束されてイオン溜3の内部に入射し、イ
オン溜3の内部を飛行して出口に至り、その出口で反射
して入り口の方向に飛行するのである。図7に示すシミ
ュレーションにおける電圧の条件は図6に示すと同じで
あり、V1 = 5V、VL =10V、VG =10V、VW1= 0
Vである。
【0045】なお、V1 ,VL ,VG 及びVW1の値には
相似法則が成り立ち、VL ,VG 及びVW1の値はV1
値に比例させて増減させれば、イオンビームは同じ軌道
を描いて往復することが確認されている。
【0046】次に、イオン溜3内のイオンを排出する場
合について説明する。このとき、スイッチSW1 ,SW
2 ,SW3 は何れも図5の破線で示すように接続される
ので、押出プレート4には高電圧VP が印加され、中間
電極11にはVW0=VP /2が印加され、グリッド5は
接地電位になされる。これによって、イオン溜3内のイ
オンはグリッド5からTOFMS分光部7に排出される。
【0047】以上のように、この垂直加速型飛行時間型
質量分析計によれば、イオン源1で生成されたイオンビ
ームの運動エネルギーが 5eV程度と低い場合であって
も、イオン溜3の内部でイオンのz方向の空間的広がり
を最小限に抑えた状態で一往復させることができ、この
ことによって、イオン溜3からイオンパルスとして排出
するときのイオンの持つ運動エネルギーの広がりを最小
限に抑えることが可能になり、以て質量分解能を向上さ
せることができる。
【0048】また、イオン溜3の内部でイオンを一往復
させるので、イオン溜3の物理的な長さy0 の範囲に蓄
積できるイオンの量は従来の2倍となるので、イオン源
1で生成されたイオンのTOFMS での検出効率は従来の2
倍となる。
【0049】そして、このことによって、装置の小型化
が可能となる。即ち、イオン溜3に蓄積できるイオンの
量は従来の2倍となるので、イオン溜3の長さy0 を従
来の半分にしても同一量のイオンをイオン溜3に蓄積で
き、同一感度が得られるからである。
【0050】以上は、図14に示したイオンがイオン溜
3からz方向に直進するリニア型のTOFMSを代表例とし
て説明したが、上述したようにイオン溜3の内部でのイ
オンの空間的広がりを最小限に抑えることが可能である
ということは、特に、セクタ電場を用いたTOFMSには大
きなメリットがあり、イオンの運動エネルギーの中心値
が同じ場合には、使用する電場電極のエアギャップサイ
ズが小さいものが使用できると共に、セクタ電場電極に
常時印加する電圧も小さくできるものである。また、TO
FMS分光部7にリフレクトロンを用いた場合にも、反射
ミラー部以降のイオンビームの発散幅を狭くでき、装置
の小型化が可能となる。
【0051】次に、本発明に係る第3の実施形態につい
て説明する。図8は本発明に係る垂直加速型飛行時間型
質量分析計の第3の実施形態を示す図であり、イオン溜
3近傍の部分のみを示す部分図である。その他について
は図14に示すと同じである。ここでも、イオン源1
(図8には図示せず)から出射されるイオンは正イオン
であるとする。
【0052】図8は、イオン溜3近傍のy−z平面にお
ける図であり、この実施形態においても、イオン源1と
イオン溜3の間には収束レンズ10が配置されており、
イオン溜3は、押出プレート4と、グリッド5、及び中
間電極11で構成されている。そして、更に、この実施
形態では、イオン溜3のイオンの入り口側には第1のミ
ラー電極12が配置され、出口側には第2のミラー電極
13が配置されている。
【0053】収束レンズ10は、アインツェルレンズ、
または静電4重極レンズ、あるいは円筒レンズで構成す
ることができるが、ここでは図に示すように、3つの電
極からなるアインツェルレンズで構成されるものとす
る。この場合にはイオンが正イオンであるので、後述す
るように、中央電極には正の電圧VL が印加され、その
両側の電極は接地電位となされる。そして、この電圧V
L は、収束レンズ10によるイオンビームの収束点がイ
オン溜3の入射側端面近傍に位置するように設定され
る。望ましくは収束点をイオン溜3の入射側端面の位置
に一致させることである。そのためには、この中央電極
に印加する電圧VL を、イオン源1に印加される電圧V
1 と同極性で、且つV1 以上の最適な電圧を与えればよ
い。これにより、イオンビームをイオン溜3の入射側端
面近傍に収束させることができる。
【0054】イオン溜3は、押出プレート4と、グリッ
ド5、及び中間電極11で構成される。中間電極11
は、押出プレート4とグリッド5の間に配置されてい
る。中間電極11は、図9の斜視図に示すように、複数
本の金属細線が等間隔に、x軸に平行に簾状に配置され
た構成を有している。そして、これらの中間電極11を
構成する全ての金属細線は同電位になされる。この中間
電極11は、押出プレート4とグリッド5の間に配置さ
れていればよく、必ずしも押出プレート4とグリッド5
間の中央でなくてもよい。なお、図9では第1、第2の
ミラー電極12、13は省略している。
【0055】第1のミラー電極12と第2のミラー電極
13はイオン溜3の入り口側と出口側に対称となるよう
に配置されており、常時同一の一定電位になされてい
る。この電位は、後述するように、イオンビームをイオ
ン溜3内部でジグザグ状に往復運動させることができる
電位、即ち、イオンの加速電圧V1 よりも若干高い電位
となされる。
【0056】図10は、この実施形態のx−y平面の図
であるが、第1のミラー電極12は、図10に示すよう
に、イオン源1(図10には図示せず)からのイオンビ
ームが収束レンズ10を通過してイオン溜3に導入でき
るように、第2のミラー電極13に対して、x方向の長
さの一端はX0 の長さだけカットされて短くなされてい
る。このために、イオン溜3の両端部のこのカット部分
では、第1のミラー電極による電位分布と、第2のミラ
ー電極13による電位分布とは非対称となる。なお、図
10では収束レンズ10は省略している。
【0057】この第1のミラー電極12のカットする長
さX0 は、イオン溜3のy方向の長さをy0 、イオンビ
ームがイオン溜3に入射するときの入射角度をαとする
とき、X0 <(2y0×tanα)となるようにする。
【0058】これに対して、第1のミラー電極12がカ
ットされていない部分では、イオン溜3の両端部には第
1のミラー電極12と、第2のミラー電極13が対称に
配置されているので、電位分布は図11に示すように対
称となる。図11でも収束レンズ10は省略している。
【0059】なお、この実施形態においては、図示しな
いイオン検出器8はイオン溜3のサイズと同等以上の検
出面を持つ2次元の面型の検出器を用いる。
【0060】さて、この実施形態においては、イオンビ
ームをy軸に平行にイオン溜3に入射させるのではな
く、入射手段によって図9及び図10のAで示すよう
に、ある入射角度α(α≠0 )を持たせてイオン溜3に
入射させる。このようにイオンビームを入射角度αでイ
オン溜3に入射させるための入射手段としては、イオン
源1をy軸に対して角度αだけ傾斜させて配置するよう
にしてもよく、あるいはイオン源1からはイオンビーム
をy軸に平行に出射し、そのイオンビームを偏向器によ
りy軸に対して角度αだけ偏向させるようにしてもよ
い。その他の手法を採用してもよい。要するに、イオン
ビームをある入射角度αでイオン溜3に入射させること
ができる入射手段を設ければよいものである。
【0061】次に、押出プレート4、グリッド5、及び
中間電極11に印加する電圧について、図12を参照し
て説明する。スイッチSW1 は、押出プレート4に印加
する電圧を切り換えるためのものであり、イオン溜3に
イオンを導入し、蓄積する場合には図12の実線で示す
ように接続される。従って、この場合には押出プレート
4には電圧VG が印加される。この電圧VG は、イオン
源1に印加される電圧V1 に近い正の電圧となされる。
また、イオン溜3からイオンパルスを排出する場合に
は、瞬間的に図12の破線で示すように接続される。従
って、この場合には押出プレート4にはイオンの電荷極
性と同極性の高電圧VP が印加される。
【0062】スイッチSW2 は、中間電極11に印加す
る電圧を切り換えるためのものであり、イオン溜3にイ
オンを導入し、蓄積する場合には、図12の実線で示す
ように接続されて、中間電極11には電圧VW1が印加さ
れる。イオンが正イオンである場合には、この電圧VW1
は、上記の電圧VG よりも低い電圧である。また、イオ
ン溜3からイオンパルスを排出する場合には、図12の
破線で示すように接続されて、中間電極11にはイオン
の電荷極性と同極性の電圧VW0が印加される。この電圧
W0は、電圧VP を可変抵抗Rで分圧した電圧であり、
中間電極11が押出プレート4とグリッド5の間のどの
ような位置に配置されているかによって決まる。図12
に示すように押出プレート4とグリッド5間の距離が2
0 (mm)であり、中間電極11がグリッド5からa
(mm)の距離に配置されているとすると、VW0=VP
×(a/2S0 )である。従って、中間電極11が押出
プレート4とグリッド5の間の中央の位置に配置されて
いる場合には、VW0=VP/2である。つまり、中間電
極11が押出プレート4とグリッド5の間のどのような
位置に配置されているかに応じて、可変抵抗Rの値を調
整して、VW0を上記のような電圧に設定するのである。
なお、ここでは便宜的に、中間電極11は、押出プレー
ト4とグリッド5の間の中央の位置に配置されているも
のとする。なお、前記電圧VW1は、接地電位でもよく、
また接地電位近傍の負の電圧でもよいものである。
【0063】スイッチSW3 は、グリッド5に印加する
電圧を切り換えるためのものであり、イオン溜3にイオ
ンを導入し、蓄積する場合には図12の実線で示すよう
に接続される。従って、この場合にはグリッド5には、
押出プレート4と同じ電圧V G が印加される。また、イ
オン溜3からイオンパルスを排出する場合には、瞬間的
に図12の破線で示すように接続される。従って、この
場合にはグリッド5は接地電位となされる。
【0064】これらの3つのスイッチSW1 ,SW2
SW3 は図示しない制御手段によって連動して切り換え
制御がなされる。これらのスイッチSW1 ,SW2 ,S
3としては、QスイッチやMOSFETスイッチ等の
高速のスイッチングが可能なものを用いる。
【0065】次に、上述した説明と重複するが、動作に
ついて説明する。イオン源1から出射したイオンビーム
は、収束レンズ10によってイオン溜3の入射側端面近
傍の位置で収束されてイオン溜3に導入し、蓄積され
る。
【0066】イオン溜3にイオンを導入し、蓄積する場
合は、スイッチSW1 ,SW2 ,SW3 は何れも図12
の実線で示すように接続されるので、押出プレート4及
びグリッド5には同じ電圧VG が印加され、中間電極1
1にはVW1が印加される。このとき、上述した電圧の関
係によって、イオン溜3内のz軸方向の電位分布は、z
軸方向の中点、即ち中間電極11の位置において図11
に示すように井戸型となる。
【0067】このときのイオン溜3内におけるイオンビ
ームの振る舞いのシミュレーションの結果を図10、図
13に示す。図13は、y−z平面におけるイオンビー
ムの振る舞いを示しているが、イオン溜3の内部では、
イオンビームはy軸に沿ってほぼ収束された状態を保っ
たまま飛行していることが分かる。つまり、イオン溜3
の内部でのイオンのz方向の空間的広がりを最小限に抑
えることが可能なのであり、このことによって、イオン
溜3からイオンパルスとして排出するときのイオンの持
つ運動エネルギーの広がりを最小限に抑えることが可能
になり、以て質量分解能を向上させることができるので
ある。
【0068】そして、このときのイオンビームの振る舞
いをx−y平面で見ると図10に示すようであり、イオ
ン溜3に入射角度αで入射したイオンビームは、イオン
溜3内を飛行してミラー電極13で反射されて再びイオ
ン溜3内を飛行し、更にミラー電極12で反射されるこ
とを繰り返すので、図10に示すようにジグザグに複数
回往復運動することになる。
【0069】ここで、イオン溜3内でイオンビームを何
往復させるかは、入射角度αにより制御できる。α= 0
°とすると一往復となることは明らかである。入射角度
αを小さく取ると往復回数を多くすることができるが、
イオンビームが中間電極11に衝突して消滅する確率を
考慮すると、5往復程度が有効である。即ち、イオンビ
ームは中間電極11の金属細線に衝突すると電荷を失
い、消滅すると考えられるが、いま、イオン溜3の長さ
をy0 =20mm、金属細線の間隔を 2mm、金属細線の
直径を20μmとすると、イオンビームがイオン溜3を1
回横断する間、即ち、イオンビームがイオン溜3の一端
から他端に到達するまでの間には11本の金属細線があ
ることになり、イオン溜3に入射するイオンの個数を
a、1個のイオンが金属細線に衝突せずにイオン溜3を
通過する確率をrとすると、イオン溜3を1回横断する
ときに金属細線に衝突することなく無事に通過するイオ
ンの個数はa×r11となる。従って、r=0.99とし、イ
オン溜3内で5往復、即ち10回横断させるとすると、
中間電極11の金属細線に衝突することなく飛行できる
イオンの個数は0.33aとなる。
【0070】即ち、n回イオン溜3を横断した場合、中
間電極11の金属細線に一度も衝突せず、イオン溜3へ
の入射時点に有する運動エネルギーeV1 を維持した有
効なイオン溜3内のイオンの個数Iは次式で与えられ
る。 I=a(r+r2+r3+…+r11n)=ar(1−
11n)/(1−r) そして、一例としてn=10、r=0.99とした場合、I=
66.2aとなり、実行横断回数n=10で、有効イオン蓄積
量m(単位は回数)は、m=6.62となる。即ち、この場
合には、イオン溜3には6.62横断回相当分のイオンを蓄
積できることになる。このことから、往復回数は5往復
程度までとするのがよいのである。
【0071】次に、イオン溜3内のイオンを排出する場
合について説明する。このとき、スイッチSW1 ,SW
2 ,SW3 は何れも図12の破線で示すように接続され
るので、押出プレート4には高電圧VP が印加され、中
間電極11にはVW0=VP /2が印加され、グリッド5
は接地電位になされる。これによって、イオン溜3内の
イオンはグリッド5からTOFMS分光部7に排出される。
【0072】以上のように、この垂直加速型飛行時間型
質量分析計によれば、イオン溜3の内部でイオンのz方
向の空間的広がりを最小限に抑えた状態で複数回ジグザ
グに往復させることができ、このことによって、イオン
溜3からイオンパルスとして排出するときのイオンの持
つ運動エネルギーの広がりを最小限に抑えることが可能
になり、以て質量分解能を向上させることができる。
【0073】また、イオン溜3内部でイオンビームを複
数回ジグザグに往復させるので、イオンビームをイオン
溜3内に保持蓄積できる時間が延長でき、TOFMS のデュ
ーティサイクル値を大きく取ることができ、従来より高
感度のOA/TOFMSを提供することができる。
【0074】なお、上述した例では第1、第2のミラー
電極12、13はコ字形のものとしたが、弧状のミラー
電極等のミラー反射機能を持つものであれば使用できる
ものである。また、中間電極11を構成する金属細線は
直径の小さい、細いものが望ましいことは上述したとこ
ろから明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る垂直加速型飛行時間型質量分析
計の第1の実施形態を示す図である。
【図2】 押出プレート4、グリッド5及び中間電極1
1の配置状態を示す斜視図である。
【図3】 第1の実施形態で、収束レンズ10の中央電
極に印加する電圧V L が最適に選択された場合において
イオン溜3にイオンを導入し、蓄積するときのイオンビ
ームの振る舞いのシミュレーション結果を示す図であ
る。
【図4】 第1の実施形態で、収束レンズ10の中央電
極に印加する電圧V L が最適でない場合においてイオン
溜3にイオンを導入し、蓄積するときのイオンビームの
振る舞いのシミュレーション結果を示す図である。
【図5】 本発明に係る垂直加速型飛行時間型質量分析
計の第2の実施形態を示す図である。
【図6】 第2の実施形態において、V1 = 5V、VL
=10V、VG =10V、VW1= 0Vとしたときのイオン溜
3近傍の電位分布のシミュレーション結果を示す図であ
る。
【図7】 第2の実施形態で、イオン溜3にイオンを導
入し、蓄積するときのイオンビームの振る舞いのシミュ
レーション結果を示す図である。
【図8】 本発明に係る垂直加速型飛行時間型質量分析
計の第3の実施形態を示す図である。
【図9】 第3の実施形態における押出プレート4、グ
リッド5及び中間電極11の配置状態を示す斜視図であ
る。
【図10】 第1のミラー電極12、第2のミラー電極
13のx−y平面における構成を示すと共に、イオン溜
3にイオンビームを蓄積するときのイオンビームの振る
舞いを示す図である。
【図11】 第1のミラー電極12がカットされていな
い部分において、イオン溜3近傍の電位分布が対称とな
ることを示す図である。
【図12】 第3の実施形態において、押出プレート
4、グリッド5、及び中間電極11に印加する電圧を説
明するための図である。
【図13】 第3の実施形態において、イオンビームを
イオン溜3に蓄積するときのイオン溜3内におけるイオ
ンビームの振る舞いのシミュレーション結果を示す図で
ある。
【図14】 OA/TOF-MS の一構成例を模式的に示す図で
ある。
【符号の説明】
1…イオン源、2…ビーム規制スリット、3…長さy0
のイオン溜、4…イオン押出プレート、5…グリッド、
7…TOF-MS分光部、8…イオン検出器、10…収束レン
ズ、11…中間電極、12、13…ミラー電極。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】イオン源から出射したイオンビームをイオ
    ン溜の入射端面近傍の位置に収束させる収束レンズと、 押出プレートと、イオン放出口に設けられたグリッド
    と、押出プレートとグリッドの間に配置された中間電極
    とで構成されるイオン溜とを備え、 前記中間電極には、イオン溜にイオンを導入する場合に
    は、イオン溜内でのイオンビームの空間的広がりを抑え
    る電圧が印加され、イオン溜からイオンパルスを排出す
    る際には、押出プレートに印加される電圧を分圧した電
    圧が印加されることを特徴とする垂直加速型飛行時間型
    質量分析計。
  2. 【請求項2】イオン源から出射したイオンビームをイオ
    ン溜の入射端面近傍の位置に収束させる収束レンズと、 押出プレートと、イオン放出口に設けられたグリッド
    と、押出プレートとグリッドの間に配置された中間電極
    とで構成されるイオン溜とを備え、 収束レンズ、押出プレート、グリッド、及び中間電極に
    は、イオン溜の入出射端に、イオン溜に導入されたイオ
    ンがイオン溜内を一往復するような非対称な電位分布が
    形成される適切な電位が印加されることを特徴とする垂
    直加速型飛行時間型質量分析計。
  3. 【請求項3】イオンビームを所定の入射角度αでイオン
    溜に入射する入射手段と、 入射手段からのイオンビームをイオン溜の入射端面近傍
    の位置に収束させる収束レンズと、 押出プレートと、イオン放出口に設けられたグリッド
    と、押出プレートとグリッドの間に配置された中間電極
    とで構成されるイオン溜と、 イオン溜の入り口側と出口側に対称に配置された第1、
    第2のミラー電極とを備え、 押出プレート、グリッド、中間電極、及び第1、第2の
    ミラー電極に、イオンビームがイオン溜内で複数回ジグ
    ザグに往復するような電圧が印加されることを特徴とす
    る垂直加速型飛行時間型質量分析計。
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JP2011003458A (ja) * 2009-06-19 2011-01-06 Tokyo Electron Ltd 荷電粒子選別装置及び荷電粒子照射装置

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JP2005276787A (ja) * 2004-03-26 2005-10-06 Tsutomu Masujima 質量分析装置
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