JP2000244035A - 圧電体薄膜素子の製造方法 - Google Patents
圧電体薄膜素子の製造方法Info
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Abstract
現する。 【解決手段】 本発明の圧電体薄膜素子の製造方法は、
アモルファス状態の圧電体膜前駆体(41〜44)を成
膜する圧電体膜前駆体成膜工程と、100nm乃至35
0nm程度の波長の紫外線照射又はアルカリ水溶液処理
により圧電体膜前駆体(41〜44)中の残留有機物を
一部除去する脱脂工程と、水熱処理により圧電体膜前駆
体(41〜44)を結晶化させて圧電体膜(40)を得
る結晶化工程とを備える。このような製造工程を備える
ことで、紫外線照射又はアルカリ水溶液処理による脱脂
工程は室温下又は80℃以下で行うことができ、圧電体
薄膜素子(5)の全体の製造工程温度の上限を水熱処理
に必要な温度(例えば、200℃)以下に設定すること
ができるため、製造プロセスの低温化を実現することが
できる。
Description
造技術に係わり、特に、圧電体膜前駆体の脱脂工程温度
を低温環境下で行う圧電体薄膜素子の製造技術に関わ
る。
吐出の駆動源として機能する圧電体薄膜素子を備えてい
る。圧電体薄膜素子は電気機械変換機能を呈する素子で
あり、ペロブスカイト(perovskite)結晶構造を有する
セラミックスはこの作用を顕著に示すものが多いため、
圧電体膜の材料に用いられている。この圧電体薄膜素子
は、圧電体膜と、この圧電体膜を挟む上部電極及び下部
電極を備えている。
ン酸ジルコン酸鉛(以下、「PZT」という場合があ
る。)を主成分とする二成分系、又は、この二成分系に
PZTの第三成分を加えた三成分系の組成を有する。こ
の圧電体膜の成膜法として、ゾル・ゲル法が知られてい
る。ゾル・ゲル法は、PZT系圧電体膜の金属成分の水
酸化物の水和錯体(ゾル)を下部電極上に塗布/乾燥/
脱脂をして圧電体膜前駆体(ゲル)とし、この圧電体膜
前駆体を加熱焼成して無機酸化物(圧電体膜)を調整す
る方法である。この方法によれば、PZT系圧電体膜の
前駆体を所望の厚みとなるまで数回の塗布/乾燥/脱脂
を繰り返すことにより成膜できるため、組成制御に優れ
ており、圧電体膜の厚みの調整に好適である。また、フ
ォトエッチング工程を用いたパターニングも可能であ
り、インクジェット式記録ヘッドへの応用も実用化され
ている。例えば、ゾル・ゲル法で1μm程度の厚みを有
するPZT膜を成膜する場合、PZT膜のゾルをスピン
コートし、乾燥/脱脂を行う工程を数工程行い、その
後、アルカリ水溶液を処理液とした水熱処理で圧電体膜
前駆体を結晶化させていた。
は水熱処理温度を200℃以下で行うことが可能である
のに対し、熱処理による脱脂工程の温度は350℃前後
に設定されており、圧電体膜の製造工程全体としてみれ
ば、低温環境下(200℃以下)での製造を実現するこ
とができなかった。製造工程における温度が高いと、膜
内部に生じる残留応力が高くなり、製造過程においてク
ラックが生じる場合がある。また、圧電体薄膜素子の圧
電特性の変動により、インク吐出スピード、インク吐出
量が不安定になる場合がある。
工程における温度環境を低温に設定し、製造工程全体を
低温に設定することのできる圧電体薄膜素子の製造方法
を提供することを課題とする。また、製造工程全体の温
度を低温環境下に設定できるインクジェット式記録ヘッ
ドの製造方法及びこの製法で得られたインクジェット式
記録ヘッドを備えたインクジェットプリンタを提供する
ことを課題とする。
の製造方法は、アモルファス状態の圧電体膜前駆体を成
膜する圧電体膜前駆体成膜工程と、紫外線照射により前
記圧電体膜前駆体中の残留有機物を一部除去する脱脂工
程と、水熱処理により前記圧電体膜前駆体を結晶化させ
て圧電体膜を得る結晶化工程とを備える。
線照射による脱脂工程は室温下で行うことができ、圧電
体薄膜素子の全体の製造工程温度の上限を水熱処理に必
要な温度(例えば、200℃)以下に設定することがで
き、製造プロセスの低温化を実現することができる。ま
た、脱脂工程で照射する紫外線の波長は100nm乃至
350nmであることが好ましい。紫外線照射によりア
モルファス状の圧電体膜前駆体中の残留有機物の一部を
除去することができる。
モルファス状態の圧電体膜前駆体を成膜する圧電体膜前
駆体成膜工程と、所定条件下のアルカリ水溶液処理によ
り前記圧電体膜前駆体中の残留有機物を一部除去する脱
脂工程と、水熱処理により前記圧電体膜前駆体を結晶化
させて圧電体膜を得る結晶化工程とを備える。
行うことで、アモルファス状の圧電体膜前駆体中の残留
有機物の一部を除去することができる。この場合、脱脂
工程におけるアルカリ水溶液処理は、大気圧下で行うこ
とが好ましい。また、脱脂工程におけるアルカリ水溶液
処理は、室温以上80℃以下で行い、処理液は0.05
M以上0.5M以下の濃度に調整された、水酸化バリウ
ム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化鉛水溶液又は
これらの混合水溶液が好ましい。脱脂温度を80℃以下
に設定することで、圧電体薄膜素子の製造プロセスの低
温化を実現することができる。
むゾルを下電極上に塗布し、乾燥及び脱脂してアモルフ
ァス状態の圧電体膜前駆体を成膜することが好ましい。
また、圧電体膜の組成は、チタン酸鉛(PbTi
O3)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)
O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛
ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チ
タン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)
O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン
酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)のうち
何れかの圧電性セラミックスが好ましい。
造方法は、基板の一面に振動板膜を成膜する工程と、本
発明の圧電体薄膜素子の製造方法により振動板膜上に圧
電体薄膜素子を製造する工程と、基板を加工し、圧電体
薄膜素子の駆動による振動板膜の変位を伝達可能な箇所
に加圧室を形成する工程とを備える。本発明のインクジ
ェットプリンタは、本発明の製造方法により製造された
インクジェット式記録ヘッドを備える。
を参照して本実施の形態について説明する。図1にイン
クジェットプリンタの構成図を示す。インクジェットプ
リンタは、主にインクジェット式記録ヘッド100、本
体102、トレイ103、ヘッド駆動機構106を備え
て構成されている。インクジェット式記録ヘッド100
は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの計4色の
インクカートリッジ101を備えており、フルカラー印
刷が可能なように構成されている。また、このインクジ
ェットプリンタは、内部にCPU、メモリ、インタフェ
ース回路等を含み、コネクタを介してネットワークに接
続されている各クラアントからの印刷データを受け取
る。CPUはこの印刷データをメモリにバッファリング
し、ページ記述言語で記述されたプリントイメージを所
定アドレスに展開する。そして、CPUはプリントイメ
ージを基に、インクジェット式記録ヘッド100のイン
ク吐出タイミング、及び、ヘッド駆動機構106の走査
を制御する。また、本体102は背面にトレイ103を
備えるとともに、その内部にオートシートフィーダ(自
動連続給紙機構)105を備え、用紙107を自動的に
送り出し、正面の排出口104から用紙107を排紙す
る。
斜視図を図2に示す。ここではインクの共通通路が加圧
室基板内に設けられるタイプを示す。同図に示すよう
に、インクジェット式記録ヘッドは加圧室基板1、ノズ
ルプレート2及び基体3から構成される。加圧室基板1
はシリコン単結晶基板がエッチング加工された後、各々
に分離される。加圧室基板1には複数の短冊状の加圧室
10が設けられ、全ての加圧室10にインクを供給する
ための共通通路12を備える。加圧室10の間は側壁1
1により隔てられている。加圧室基板1の基体3側には
圧電体薄膜素子が設けられている。また、各圧電体薄膜
素子からの配線はフレキシブルケーブルである配線基板
4に収束され、基体3の外部回路と接続される。ノズル
プレート2は加圧室基板1に貼り合わされる。ノズルプ
レート2における加圧室10の対応する位置にはインク
滴を吐出するためのノズル21が形成されている。ノズ
ル21間のピッチは印刷精度に応じて適宜設定され、例
えば、400dpi等の解像度が設定されている。基体
3はプラスチック、金属等で形成されており、加圧室基
板1の取付台となる。
原理について説明する。同図は、インクジェット式記録
ヘッドの主要部の断面図である。この図は加圧室の長手
方向に直角な面で当該主要部を切断した断面形状を示し
ている。同図中、図2と同一構造については同一記号で
示し、その説明を省略する。シリコン単結晶基板から構
成される基板1上には振動板膜20を介して圧電体薄膜
素子5が形成されている。圧電体薄膜素子5は上部電極
50と下部電極30に挟まれた圧電体膜40を備える。
同図では、下部電極30を各圧電体薄膜素子の共通電極
として用いる場合を示している。この圧電体薄膜素子5
に所望の電圧を印加することで、圧電体膜40が変形
し、振動板膜20を介して加圧室10内に充填されるイ
ンクを加圧する。すると、加圧室10内に充填されてい
るインクはノズル21から吐出し、所定の記録紙に付着
することで印字等が可能になる。
方法を圧電体薄膜素子の製造方法と併せて説明する。図
3はインクジェット式記録ヘッドの製造工程断面図であ
り、同図(A)〜同図(D)が圧電体薄膜素子の製造方
法と共通する。同図(A)、(B)に示すように、基板
1上に振動板膜20、下部電極30、圧電体膜前駆体4
1〜44を順次成膜する。基板1として、例えば、厚さ
220μmのシリコン単結晶基板を用いる。インクジェ
ット式記録ヘッドをラインプリンタ用に用いる場合は、
細長く成形されたシリコン単結晶基板を用い、その厚み
は側壁の高さが高くなりすぎないように、例えば、20
0μm程度とする。熱酸化法により膜厚1.0μmの二
酸化珪素から成る振動板膜20を成膜する。この工程で
は、酸素或いは水蒸気を含む酸素雰囲気中で高温処理す
る。この振動板膜20は、圧電体薄膜素子の変形を加圧
室に伝え、加圧室内のインク圧を高める機能を有する。
二酸化珪素膜に限られず、酸化ジルコニウム膜、酸化タ
ンタル膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜でもよ
く、さらに、振動板自体をなくして下部電極自体に振動
板膜の役割を兼ねてもよい。また、振動板膜20の成膜
は、熱酸化法に限らず、CVD法でもよい。
膜する。例えば、スパッタ法でチタンを100nmの膜
厚で振動板膜20上に成膜し、下部電極30を得る。ま
た、下部電極30が白金である場合、振動板膜20と下
部電極30間の密着力を向上させるためにチタン、クロ
ム等の密着層(図示せず)を介在させてもよい。この密
着層は、例えば、スパッタ法で50nmの膜厚でチタン
を成膜すればよい。
1〜44を成膜する。圧電体膜としては圧電特性を有す
る圧電性セラミックスを用いる。例えば、PZT系圧電
性材料や、この系にニオブ酸、ニッケル又はマグネシウ
ム等の金属酸化物を添加したもの等が圧電体膜として好
適である。具体的には、チタン酸鉛(PbTiO3)、
ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O3:PZ
T)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛
ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン酸チ
タン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)
O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン
酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3:PZT
―PMN)等が好適である。
て、Pb(Zr0.56Ti0.44)O3を用い、圧電体膜前
駆体41〜44をゾル・ゲル法で成膜する場合を説明す
る。ゾル・ゲル法で成膜する場合は、圧電体膜を形成可
能な金属成分の水酸化物の水和錯体、即ち、ゾルを下電
極上に塗布し脱脂処理して圧電体膜前駆体とし、この圧
電体膜前駆体を水熱処理で結晶化して無機酸化物(圧電
体膜)を得る。具体的には、ジルコン酸鉛とチタン酸鉛
とのモル混合比が56%:44%となるようなアモルフ
ァス状態のPZT系圧電体膜前駆体を、最終的な膜厚が
0.4μmとなるまで所望の回数の塗布/乾燥/脱脂を
繰り返して成膜する。まず、下電極30上に塗布するゾ
ルを調製する。例えば、2−n−ブトキシエタノールを
主溶媒として、これにチタニウムテトライソプロポキシ
ド、テトラ−n−プロポキシジルコニウムを混合し、室
温下で20分間攪拌する。次いで、ジエタノールアミン
を加えて室温で更に20分間攪拌する。更に酢酸鉛を加
え、80℃に加熱する。加熱した状態で20分間攪拌
し、その後、室温になるまで自然冷却する。この工程で
ゾルが得られる。このゾルを下部電極30上に0.1μ
mの厚さでスピンコーティングする。ゾルの膜厚を均一
にするために最初は500rpmで30秒間、次に15
00rpmで30秒間、最後に500rpmで10秒
間、スピンコーティングする。この段階で圧電体膜を構
成する各金属原子は有機金属錯体として分散している。
ゾルを下部電極30に塗布した後、例えば、180℃で
10分間乾燥させる。
乃至350nmの紫外線、特に好ましくは、波長180
nmの紫外線を10分間照射し、膜内の有機物を一部除
去することで圧電体膜前駆体を脱脂する。乾燥/脱脂は
ゾルを塗布する毎に行う。同図(B)では、圧電体膜前
駆体44の脱脂工程を図示している。紫外線照射による
脱脂工程で得られた圧電体膜前駆体中の残留有機物の量
は従来の脱脂工程(350℃前後の熱処理)で得られる
圧電体膜前駆体中の残留有機物よりも多くなることが確
認された。膜内部に残留している有機物量が多くなる
と、圧電体膜前駆体内の隙間が多くなるため、後述する
水熱処理工程において処理液が膜内部までに侵入し、結
晶化をより促進させることができる。ゾルの塗布/乾燥
/脱脂を4回繰り返すことで、圧電体膜前駆体41、4
2、43及び44を積層する。このように、圧電体膜前
駆体を多層化することでクラックの発生を防止しながら
厚膜化することができる。尚、圧電体膜前駆体を成膜す
る工程は上述のゾル・ゲル法の他に、RFスパッタ法、
イオンビームスパッタ法、MOD法(Metal OrganicDe
composition Process)、電子ビーム蒸着法等で成膜す
ることもできる。
で圧電体膜前駆体を結晶化させる。処理液6として、水
酸化バリウム水溶液(Ba(OH)2)を調製する。処
理液6の濃度は0.05M〜1M程度とする。水酸化バ
リウムは水酸化カリウムと比較してシリコン基板に対す
る食刻が少ないため基板1の材質の自由度が広がる利点
がある。この処理液6を水槽7に満たす。上述の工程で
得られた圧電体膜前駆体41〜44を基板1ごと水槽7
に浸漬し、オートクレーブ中で結晶化を促進させる。こ
のときの水熱処理の温度は120℃〜200℃の範囲に
設定する。この範囲より低い温度では結晶化が促進され
ず、この範囲より高い温度では圧電体膜前駆体や基板1
がエッチングされる不都合が生じるからである。特に、
130℃の処理温度が好適である。処理圧力は2気圧以
上で10気圧以下に設定することで良質な結晶を得るこ
とができる。特に、4気圧の処理圧力が好適である。処
理時間は30分〜120分の範囲とし、特に、90分程
度が好ましい。処理時間が短いと十分な結晶を得ること
ができず、処理時間が必要以上に長いと基板がエッチン
グされてしまうからである。この水熱処理工程で圧電体
膜前駆体41〜44を結晶化させることができる。結晶
化した圧電体膜前駆体41〜44は、圧電体膜40にな
る。
40上に上部電極50を成膜する。電子ビーム蒸着法、
スパッタ法等の薄膜積層技術を用いて、圧電体膜40の
上に白金を200nm成膜し、上部電極50とする。上
部電極50の材質は白金に限らず、イリジウム、白金と
イリジウムの合金、酸化イリジウム、アルミニウム等で
もよい。
出駆動源となる圧電体薄膜素子を各加圧室毎に対応して
分離させる。上部電極50上にレジスト(図示せず)を
スピンコーティングし、加圧室が形成されるべき位置に
合わせて露光・現像し、パターニングする。このレジス
トをマスクとしてイオンミリング、あるいはドライエッ
チング法等を適用して、上部電極50及び圧電体膜40
から成る積層構造をエッチングする。この工程で加圧室
が形成されるべき位置に合わせて圧電体薄膜素子5が分
離される。
圧室10を形成し、ノズルプレート2を接合する。平行
平板型反応性イオンエッチング等の活性気体を用いた異
方性エッチングを用いて、加圧室10が形成される空間
をエッチングする。エッチングされずに残された基板部
分が側壁11になる。エッチング終了後、基板1にノズ
ルプレート2を接合する。このとき、各ノズル21が加
圧室10の各々の空間に対応して配置されるよう位置合
せする。加圧室10が形成された基板1を基体3に取り
付ければ、インクジェット式記録ヘッドが完成する。
尚、ノズルプレート2と基板1を一体的にエッチングし
て形成する場合は、ノズルプレート2の接合工程は不要
である。
の温度で熱処理をしていた脱脂工程の温度を、水熱処理
工程の温度よりも下げることが可能になる。即ち、圧電
体膜前駆体の脱脂工程を室温環境下で行うことができる
ため、圧電体薄膜素子の製造工程全体の温度を200℃
以下に設定することができる。この結果、圧電体薄膜素
子の製造工程全体の低温化により、膜内部に生じる残留
応力を低減することができ、製造工程におけるクラック
の発生防止、歩留りの向上、製造コストの低下を図るこ
とができる。また、圧電体薄膜素子の圧電特性の変動を
抑えることができるため、本実施の形態で製造した圧電
体薄膜素子をインク吐出駆動源とするインクジェット式
記録ヘッドは、インク吐出スピード、インク吐出量が安
定した特性を備えることができる。従って、このインク
ジェット式記録ヘッドを備えるインクジェットプリンタ
は印字品質を安定させることができる。また、圧電体薄
膜素子の大型化が可能であるため、ラインプリンタのよ
うな大面積に印刷ができるプリンタを提供することがで
きる。
体膜前駆体中の残留有機物量を相対的に多く存在させる
ため、水熱処理による圧電体膜前駆体の結晶化を促進さ
せることができる。即ち、膜内部に残留している有機物
量が多くなると、圧電体膜前駆体内の隙間が多くなるた
め、水熱処理工程(圧電体膜前駆体結晶化工程)におい
て処理液が膜内部までに侵入し、処理液と圧電体膜前駆
体の相互作用により、結晶化をより促進させることがで
きる。
て、実施の形態1と異なる点を中心に説明する。本実施
の形態の圧電体薄膜素子の製造工程中、圧電体膜前駆体
の脱脂工程はアルカリ水溶液処理で行う。本明細書にお
いて、アルカリ水溶液処理による脱脂処理をアルカリ脱
脂というものとする。アルカリ脱脂に使用する処理液と
して、0.05M〜0.5M濃度に調整された水酸化バ
リウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化鉛水溶液
又はこれらの混合水溶液を用いる。圧電体膜前駆体を塗
布/乾燥後、処理液で満たされた水槽中に基板ごと圧電
体膜前駆体を浸漬し、大気圧の下で温度を室温以上80
℃以下に設定し、処理時間を約30分間に設定する。
中の有機物が一部除去され、圧電体膜前駆体中の残留有
機物量を相対的に多く存在させる。膜内部に残留してい
る有機物量が多くなると、圧電体膜前駆体内の隙間が多
くなるため、水熱処理工程(圧電体膜前駆体結晶化工
程)において処理液が膜内部までに侵入し、処理液と圧
電体膜前駆体の相互作用により、結晶化をより促進させ
ることができる。また、アルカリ脱脂温度は室温以上8
0℃以下に設定されるため、圧電体薄膜素子の製造工程
全体の低温化(200℃以下)により、膜内部に生じる
残留応力を低減することができ、製造工程におけるクラ
ックの発生防止、歩留りの向上、製造コストの低下を図
ることができる。
膜素子は、インクジェット式記録ヘッドのインク吐出駆
動源としての他、マイクロアクチュエータ、フィルタ、
遅延線、リードセレクタ、音叉発振子、音叉時計、トラ
ンシーバ、圧電ピックアップ、圧電イヤホン、圧電マイ
クロフォン、SAWフィルタ、RFモジュレータ、共振
子、遅延素子、マルチストリップカプラ、圧電加速度
計、圧電スピーカ等に応用することができる。
れば、製造工程全体の温度を下げることができ、膜内部
に生じる残留応力の低減、クラックの発生防止、製造コ
ストの低下を実現することができる。
造方法によれば、圧電特性の変動の少ない圧電体薄膜素
子をインク吐出駆動源とすることができるため、インク
吐出スピードやインク吐出量の安定を図ることができ
る。
ば、高品質の印字を可能にできる。
る。
である。
Claims (11)
- 【請求項1】 上部電極と下部電極に挟まれた圧電体膜
を備える圧電体薄膜素子の製造方法において、 アモルファス状態の圧電体膜前駆体を成膜する圧電体膜
前駆体成膜工程と、 紫外線照射により前記圧電体膜前駆体中の残留有機物を
一部除去する脱脂工程と、 水熱処理により前記圧電体膜前駆体を結晶化させて圧電
体膜を得る結晶化工程と、 を備える圧電体薄膜素子の製造方法。 - 【請求項2】 前記脱脂工程は室温下で行うことを特徴
とする請求項1に記載の圧電体薄膜素子の製造方法。 - 【請求項3】 前記脱脂工程で照射する紫外線の波長は
100nm乃至350nmであることを特徴とする請求
項1に記載の圧電体薄膜素子の製造方法。 - 【請求項4】 上部電極と下部電極に挟まれた圧電体膜
を備える圧電体薄膜素子の製造方法において、 アモルファス状態の圧電体膜前駆体を成膜する圧電体膜
前駆体成膜工程と、 所定条件下のアルカリ水溶液処理により前記圧電体膜前
駆体中の残留有機物を一部除去する脱脂工程と、 水熱処理により前記圧電体膜前駆体を結晶化させて圧電
体膜を得る結晶化工程と、 を備える圧電体薄膜素子の製造方法。 - 【請求項5】 前記脱脂工程におけるアルカリ水溶液処
理は、室温以上80℃以下で行うことを特徴とする請求
項4に記載の圧電体薄膜素子の製造方法。 - 【請求項6】 前記脱脂工程におけるアルカリ水溶液処
理は、大気圧下で行うことを特徴とする請求項4に記載
の圧電体薄膜素子の製造方法。 - 【請求項7】 前記脱脂工程で使用するアルカリ処理液
は、0.05M以上0.5M以下の濃度に調整された、
水酸化バリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化
鉛水溶液又はこれらの混合水溶液であることを特徴とす
る請求項4に記載の圧電体薄膜素子の製造方法。 - 【請求項8】 前記圧電体膜前駆体成膜工程は、有機金
属を含むゾルを下電極に塗布し脱脂してアモルファス状
態の圧電体膜前駆体を成膜する工程であることを特徴と
する請求項1乃至請求項7のうち何れか1項に記載の圧
電体薄膜素子の製造方法。 - 【請求項9】 前記圧電体膜の組成は、チタン酸鉛(P
bTiO3)、ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Zr,T
i)O3)、ジルコニウム酸鉛(PbZrO3)、チタン
酸鉛ランタン((Pb,La),TiO3)、ジルコン
酸チタン酸鉛ランタン((Pb,La)(Zr,Ti)
O3)又は、マグネシウムニオブ酸ジルコニウムチタン
酸鉛(Pb(Zr,Ti)(Mg,Nb)O3)のうち
何れかの圧電性セラミックスであることを特徴とする請
求項1乃至請求項8のうち何れか1項に記載の圧電体薄
膜素子の製造方法。 - 【請求項10】 基板の一面に振動板膜を成膜する工程
と、 請求項1乃至請求項9のうち何れか1項に記載の圧電体
薄膜素子の製造方法により前記振動板膜上に圧電体薄膜
素子を製造する工程と、 前記基板を加工し、前記圧電体薄膜素子の駆動による前
記振動板膜の変位を伝達可能な箇所に加圧室を形成する
工程と、 を備えるインクジェット式記録ヘッドの製造方法。 - 【請求項11】 請求項10に記載の製造方法により製
造されたインクジェット式記録ヘッドを備えるインクジ
ェットプリンタ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP4094199A JP3722262B2 (ja) | 1999-02-19 | 1999-02-19 | 圧電体薄膜素子の製造方法及びインクジェット式記録ヘッドの製造方法及びインクジェットプリンタ |
Applications Claiming Priority (1)
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