JP2000239801A - 鉄−ニッケル系合金部材およびガラス封止部品 - Google Patents

鉄−ニッケル系合金部材およびガラス封止部品

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Abstract

(57)【要約】 30℃から200℃〜400℃までの温度間における熱
膨張係数が低融点ガラスとほぼ同等であり、かつRa、
Sm、Sm/Raを規定することにより、新規の低融点
ガラスの封止用鉄−ニッケル系合金部材を得る。 【課題】 熱サイクルに伴うクラックが発生せず、また
封止の信頼性の高い封止部材を提供する。 【解決手段】 封止するガラスの30〜400℃までの
熱膨張係数と±5%以内の熱膨張係数を有し、かつRa
が0.20μm以下、Smが5〜100μm、Sm/R
aが100以上である鉄−ニッケル系合金部材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はガラスからなる部材
を封止する鉄−ニッケル系合金部材およびガラスを鉄−
ニッケル系合金部材で封止したガラス封止部品に関し、
さらに詳しくは新規に用いられるガラスを封止するのに
好適な鉄−ニッケル系合金部材およびこの鉄−ニッケル
系合金部材で封止したガラス封止部品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来光素子センサや半導体レーザ装置な
どのガラス封止部品に用いられるガラスは、その熱膨張
係数が30℃から30℃を超え400℃までの任意の温
度間における熱膨張係数が45×10-7/℃から55×
10-7/℃程度であり、このガラスの封止に用いられる
金属(合金)材としては、この熱膨張係数に近似するも
のが用いられてきた。この合金材としては、主として4
2アロイといわれるFe−42Ni(重量%、以下同)
やコバールといわれるFe−29Ni−17Coが用い
られてきた。これらの合金材は、30℃から30℃を超
え400℃までの任意の温度間における熱膨張係数がお
およそ50×10-7/℃程度であり、封止されるガラス
材と近似した熱膨張係数を有するために、有用な封止材
料であった。
【0003】しかしながら、近年封止されるガラスに検
討が加えられるようになり、従来用いられることのなか
ったはんだガラスなどの低融点ガラスが実用化されつつ
ある。
【0004】ところがこの低融点ガラスは、従来用いら
れていたガラスよりも熱膨張係数が高い傾向にあり、そ
のまま封止しようとしても、十分な封止は達成されな
い。そこで例えば特開平7−176825号公報に示さ
れているような手段を用いて上記課題を解決することが
試みられている。
【0005】すなわち、Fe−29Ni−17Co合金
を加熱処理して酸化膜を形成し、この酸化膜と低融点ガ
ラスとの良好な密着性を利用して封止し、この後電解ニ
ッケルめっきなどを施すというものである。
【0006】しかしながら良好な密着性を利用するとい
っても元々が熱膨張係数に差のある二部材を密着させる
ものであり、この熱膨張係数の差が熱サイクルなどによ
り封止の信頼性を低下させていた。
【0007】またこの公報には、ニッケル成分が49〜
52%である鉄−ニッケル合金(52アロイ)を用いて
封止することにより、上記課題を解決しようとしている
が、52アロイの熱膨張係数はおよそ90×10-7/℃
程度とやはり低融点ガラスの熱膨張係数60×10-7
℃〜75×10-7/℃とは合致せず、上記Fe−29N
i−17Co合金を加熱処理するものと同様の課題を残
している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、新規
の低融点ガラスをFe−29Ni−17Co合金を加熱
処理したものを用いたり、また52アロイを用いて封止
しようとしても、根底にある熱膨張係数の差に起因して
熱サイクルに伴うクラックの発生、封止の信頼性の低
さ、などの課題は何等解決されていない。上記課題を鑑
みて本発明では、熱サイクルに伴うクラックの発生が発
生せず、また封止の信頼性の高い封止部品の提供を目的
とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明者は、まず鉄−ニッケル系合金部材が封止する
新規の低融点ガラスと30℃から200℃ないし400
℃までの任意の温度間における熱膨張係数がほぼ同等で
あることをまず規定し、かつ封止の接合に寄与するパラ
メータとしてJIS B 0601-1994 に規定する算
術平均粗さRaおよびJIS B 0601-1994 に規
定する凹凸の平均間隔SmおよびSm/Raを規定する
ことにより、新規の低融点ガラスの封止用鉄−ニッケル
系合金部材が得られることを見出した。
【0010】すなわち本発明の鉄−ニッケル系合金部材
は、ガラスからなる部材を封止する鉄−ニッケル系合金
部材であって、ガラスの30℃から30℃を超え400
℃までの任意の温度間における熱膨張係数が60×10
-7/℃以上75×10-7/℃以下であり、鉄−ニッケル
系合金部材の30℃から200℃ないし400℃までの
任意の温度間における熱膨張係数がガラスの熱膨張係数
と±5%以内であり、かつ鉄−ニッケル系合金部材のJ
IS B 0601-1994 に規定する算術平均粗さRa
が0を超え0.20μm以下であり、また鉄−ニッケル
系合金部材のJIS B 0601-1994 に規定する凹
凸の平均間隔Smが5μm以上100μm以下であっ
て、さらにSm/Raが100以上であることを特徴と
する。
【0011】ここで鉄−ニッケル系合金部材とガラスと
の熱膨張係数との差が30℃から200℃ないし400
℃までの任意の温度間において±5%以内と規定したの
は、完全に一致することが理想的ではあるものの異なる
材質の二者が全く同一の熱膨張係数となることは不可能
に近く、また上記課題、すなわち熱サイクルによるクラ
ックの発生や封止の信頼性の低下を招来しなければ十分
であることから、±5%を上限とした。なお、±5%を
超える熱膨張係数の差が上記範囲内で発生したた場合に
は、その温度を往復する熱サイクルがかかった際には、
クラックの発生や封止の信頼性の低下という課題が解消
されない。また200℃ないし400℃と規定したの
は、封止の対象となる低融点ガラスが300℃〜400
℃の間に熱膨張係数の極大点が存在すること、および2
00℃未満では、多少の熱膨張係数の差が存在したとし
ても実際の温度差に伴う伸び(熱膨張係数×温度差)の
絶対値が小さく、上記課題が発生しにくいためである。
【0012】また算術平均粗さRaが0.20μmを超
える場合は、鉄−ニッケル系合金部材が全体にわたって
凹凸を有している状態であり、ガラスとの密着性が低下
するため好ましくない。なお、Raが0.05μmない
し0.15μmであれば、ガラスとの密着性が良好であ
り、特に好ましい。
【0013】さらに平均間隔Smが5μm未満または1
00μmを超える場合は、凹凸の間隔が狭すぎたり、逆
に広すぎたりしてやはりガラスとの密着性が低下するた
め好ましくない。なお、Smが10μmないし50μm
であれば、ガラスとの密着性が良好であり、特に好まし
い。
【0014】さらに本発明においては特にSm/Raの
値が重要な数値であることが本発明者の研究により明ら
かとなった。すなわちRaとSmを規定しただけでは上
記課題を解決できない場合があり、この点を鋭意研究の
結果、Sm/Raが100以上でなければ、Ra,Sm
の値がそれぞれ上記範囲にあったとしても、十分な信頼
性を得られないことが明らかとなった。なお、Sm/R
aが200以上であれば、特に好ましい。
【0015】さらに本発明においては、43〜48%N
i−Feの鉄−ニッケル合金が好適である。この組成は
熱膨張係数が上記範囲になるとともに、Ra,Smも上
記範囲とすることができる。なお、鉄の一部をチタン、
ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タン
タル、クロム、モリブデン、タングステンから選ばれた
1種または2種以上の総量で0を超え5%以下とする組
成では、細部の熱膨張係数を調整することが可能となる
とともに、部材の強度の向上にも寄与する。
【0016】そしてこのような鉄−ニッケル系合金部材
によりガラスを封止することにより得られるガラス封止
部品は、熱サイクルによるクラックの発生や信頼性の低
下などのない良好なものである。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施
例に基いて具体的に説明する。まず封止されるガラスと
してはんだガラスを、また封止部材として本発明にかか
るFe−45Ni合金、比較例としてFe−29Ni−
17Co合金からなる板材を作成し、それぞれの熱膨張
係数を測定した。なお熱膨張係数は、30℃の時を基準
として、30℃と100℃、30℃と150℃というよ
うに500℃まで50℃ごとに測定した。その結果を表
1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】表1の結果から明らかなように、本発明に
かかるFe−45Ni合金では30℃と200℃の間か
ら30℃と400℃の間までその熱膨張係数の差はいず
れも±5%以内にあるが、Fe−29Ni−17Co合
金はいずれの範囲においても±5%を超える熱膨張係数
の差を示していた。
【0020】次に本発明にかかるFe−45Ni合金お
よびFe−45Ni−2Nb合金からなる板材を作成
し、そのRaとSmを測定した。そしてFe−45Ni
合金からRa,Sm,Sm/Raがいずれも本発明の範
囲にあるものを実施例1、Raのみ本発明の範囲から外
れるものを実施例2、Smのみ本発明の範囲から外れる
ものを実施例3、Sm/Raのみ本発明の範囲から外れ
るものを実施例4とした。また、請求項3に記載の発明
に相当するニオブを2重量%含有するFe−45Ni−
2Nb合金からなり、Ra,Sm,Sm/Raがいずれ
も本発明の範囲にあるものを実施例5とした。これら実
施例それぞれにつき、試験片を100個ずつとり、はん
だガラスにニッケルめっきを施したものを封止し、その
封止の状態を観察した。また同時にFe−29Ni−1
7Co合金から試験片を100個とり、はんだガラスに
ニッケルめっきを施したものを封止し、その封止の状態
を観察した(比較例1)。これらの結果をまとめて表2
に示す。
【0021】
【表2】
【0022】表2より明らかなように、封止するはんだ
ガラスと熱膨張係数の大きく異なるFe−29Ni−1
7Co合金ではめっきのはがれやはんだガラスの欠けが
発生するなど封止の信頼性が低く、また熱膨張係数が近
似するFe−45Ni合金であっても、Ra,Sm,S
m/Raが本発明の規定する範囲から逸脱する場合に
は、十分な封止の信頼性がなかった。
【0023】
【発明の効果】本発明によれば、新規なガラスを封止す
るのに好適な鉄−ニッケル系合金部材を提供することが
でき、この鉄−ニッケル系合金部材で封止したガラス封
止部品は、封止の信頼性の高いものであった。またFe
−29Ni−17Coと比較して、高価かつ希少なコバ
ルトを用いないため、省資源やコストの低下という二次
的な効果も併せて達成できた。

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ガラスからなる部材を封止する鉄−ニッ
    ケル系合金部材であって、前記ガラスの30℃から30
    ℃を超え400℃までの任意の温度間における熱膨張係
    数が60×10-7/℃以上75×10-7/℃以下であ
    り、前記鉄−ニッケル系合金部材の30℃から200℃
    ないし400℃までの任意の温度間における熱膨張係数
    が前記ガラスの熱膨張係数と±5%以内であり、かつ前
    記鉄−ニッケル系合金部材のJIS B 0601
    -1994 に規定する算術平均粗さRaが0を超え0.20
    μm以下であり、また前記鉄−ニッケル系合金部材のJ
    IS B0601-1994 に規定する凹凸の平均間隔Sm
    が5μm以上100μm以下であって、さらにSm/R
    aが100以上であることを特徴とする鉄−ニッケル系
    合金部材。
  2. 【請求項2】 前記鉄−ニッケル系合金部材がニッケル
    43重量%以上48重量%以下、残部鉄および不可避不
    純物からなる合金である請求項1記載の鉄−ニッケル系
    合金部材。
  3. 【請求項3】 前記鉄−ニッケル系合金部材がニッケル
    43重量%以上48重量%以下、チタン、ジルコニウ
    ム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロ
    ム、モリブデン、タングステンから選ばれた1種または
    2種以上の総量で0を超え5重量%以下、残部鉄および
    不可避不純物からなる合金である請求項1記載の鉄−ニ
    ッケル系合金部材。
  4. 【請求項4】 前記鉄−ニッケル系合金部材のJIS
    B 0601-1994 に規定する算術平均粗さRaが0.
    05μm以上0.15μm以下である請求項1記載の鉄
    −ニッケル系合金部材。
  5. 【請求項5】 前記鉄−ニッケル系合金部材のJIS
    B 0601-1994 に規定する凹凸の平均間隔Smが1
    0μm以上50μm以下である請求項1記載の鉄−ニッ
    ケル系合金部材。
  6. 【請求項6】 前記鉄−ニッケル系合金部材のSm/R
    aが200以上である請求項1記載の鉄−ニッケル系合
    金部材。
  7. 【請求項7】 前記鉄−ニッケル系合金部材のゆがみS
    kが−1以上1以下である請求項1ないし6いずれか1
    項に記載の鉄−ニッケル系合金部材。
  8. 【請求項8】 30℃から30℃を超え400℃までの
    任意の温度間における熱膨張係数が60×10-7/℃以
    上75×10-7/℃以下であるガラスを、30℃から2
    00℃ないし400℃までの任意の温度間における熱膨
    張係数が前記ガラスの熱膨張係数と±5%以内であり、
    かつJIS B 0601-1994 に規定する算術平均粗
    さRaが0を超え0.20μm以下であり、またJIS
    B 0601-1994 に規定する凹凸の平均間隔Smが
    5μm以上100μm以下であって、さらにSm/Ra
    が100以上である鉄−ニッケル系合金部材により封止
    してなることを特徴とするガラス封止部品。
  9. 【請求項9】 前記鉄−ニッケル系合金部材がニッケル
    43重量%以上48重量%以下、残部鉄および不可避不
    純物からなる合金である請求項8記載のガラス封止部
    品。
  10. 【請求項10】 前記鉄−ニッケル系合金部材がニッケ
    ル43重量%以上48重量%以下、チタン、ジルコニウ
    ム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロ
    ム、モリブデン、タングステンから選ばれた1種または
    2種以上の総量で0を超え5重量%以下、残部鉄および
    不可避不純物からなる合金である請求項8記載のガラス
    封止部品。
  11. 【請求項11】 前記鉄−ニッケル系合金部材のJIS
    B 0601-1994に規定する算術平均粗さRaが
    0.05μm以上0.15μm以下である請求項8記載
    のガラス封止部品。
  12. 【請求項12】 前記鉄−ニッケル系合金部材のJIS
    B 0601-1994に規定する凹凸の平均間隔Smが
    10μm以上50μm以下である請求項7記載のガラス
    封止部品。
  13. 【請求項13】 前記鉄−ニッケル系合金部材のSm/
    Raが200以上である請求項8記載のガラス封止部
    品。
  14. 【請求項14】 前記鉄−ニッケル系合金部材のゆがみ
    Skが−1以上1以下である請求項8ないし13いずれ
    か1項に記載のガラス封止部品。
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