JP2000239741A - ばねの表面処理方法 - Google Patents
ばねの表面処理方法Info
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Abstract
向上させること。 【解決手段】 ばねの表層を窒化処理する。次に、窒化
処理されたばねの表面へ、硬さHv600以上であるが
ばね表面硬さと同等以下の硬さを有する粒径20〜10
0μmの多数の硬質金属粒子を、70〜200m/se
cの衝突速度で投射する。このとき、ショットによるば
ね表面の瞬間的昇温限界を、加工硬化と窒素原子による
歪時効と有効に起こさせるが、母地の回復再結晶が起こ
る温度よりは低温となるように、ショットの速度等を制
御しつつ投射する。
Description
グの前の窒化処理と、ビッカース硬さがHv600以上
であり、かつ、窒化処理されたばねの最表層硬さ(最表
面から5ミクロン程度の深さ位置でのマイクロビッカー
ス硬さ。以下同じ。)と同等以下の硬さを有する、粒径
100μm以下の微細金属粒子による高速ショットピー
ニング処理(以下「SS処理」という)とを組合わせ
た、ばねの耐久性を向上させる表面処理方法に関する。
用クラッチに使用するクラッチばね等のコイルばね又は
平板形状の各種ばね等には、通常、粒径0.2〜0.8
mmのショット粒によるショットピーニングが施され
る。
しては、金属微粒子の高速投射によってA3変態点以上
の温度に加熱した後急冷する方法(特公平2−1760
7号「金属製品の表面加工熱処理法」)や、回復再結晶
温度以下であって150℃以上の温度で金属微粒子を高
速投射して耐久性を高める方法(特開平9−27922
9号「鋼製ワークの表面処理方法」)などが提案されて
いる。
ピーニングする技術も知られている。
ばねの耐久性向上のための技術として、窒化処理とショ
ットピーニングの組み合わせ技術や、窒化に適したばね
材料を使用して窒化とショットピーニングの最適化を追
求した技術などがある。また、窒化した後に超硬微粒子
を投射する技術も最近提案されている(特開平10−1
18930号)。
ング技術によってある程度のばねの耐久性や耐疲労破壊
性能は得られる。しかし、従来の例えば窒化を組合わせ
たショットピーニングでも、表層残留応力や疲労強度な
いしコスト面で必ずしも十分なものは得られていないの
が実状である。
記の技術(特開平10−118930号)では次のよう
な問題がある。すなわち、超硬微粒子がワークに衝突す
ると、この時の衝突エネルギーによってワーク表層部に
弾性変形及び塑性変形が短時間で起り、被衝突部近傍で
は瞬間的ではあるがかなりの温度上昇が生じる。このた
め、ワークの被衝突部近傍の降伏点は粒子衝突前に比べ
て瞬間的ではあるが低下し、ショットピーニングによる
ワークの塑性変形が起る。ショット粒子が比較的軟らか
いと、ショット粒子自体も弾性変形と塑性変形を受けて
変形しつつ衝突する。ところが、ショット粒子が超硬粒
子のようにHv1200程度以上となり、ワーク表面よ
りはるかに硬さがアップすると、衝突時の塑性変形は被
加工材に集中して起ることになり、衝突エネルギー(E
=mv2 /2)は同じであっても、超硬粒子の場合では
被加工材表面のへこみが大きくなって表面粗さが増大
し、そのため、化合物層の破壊によるミクロクラックや
断熱せん断帯が生じやすいのである。また、超硬粒子は
鋼製微粒子に比べて非常に高価であり、メーカーも少な
く、入手が非常に困難であるなどの多くの問題を抱えて
いる。
折損防止の観点から窒化前の表面粗さを制御して、窒化
後の表面粗さや窒化・ショットピーニング後の表面粗さ
が5μm以下となるような制御が行われる場合もある
が、このような表面粗さの制御をすると処理工程が複雑
になる。
理による耐久性、特に耐疲労破壊性能を比較的低コスト
で向上させることを目的とし、具体的には、前述した表
面粗さを特別厳格に管理しなくても十分な耐疲労破壊性
能を実現できるように、極表層〜数10μm深さまでの
圧縮残留応力を最大にするとともに、断熱せん断帯の発
生防止と、オーバーピーニングになることがなくてオー
バーピーニングによる表層のミクロクラック発生で疲労
強度が低下することのない、ばねの表面処理方法を提供
するものである。
本発明の第1の処理方法は、(A)ばねの表層を窒化処
理する工程と、(B)窒化処理されたばねの表面へ、硬
さHv600以上、かつ、窒化処理されたばねの最表層
硬さ(最表面から5ミクロン程度の深さ位置でのマイク
ロビッカース硬さ。以下同じ。)と同等以下の硬さを有
する、比重が7.5〜9.0、粒径が20μm〜100
μmの硬質金属粒子を、70m〜200m/secの衝
突速度であって、かつ、衝突によるばね表面窒化層の鉄
地(窒素化合物層を除外)の瞬間的昇温限界を、窒素原
子による歪時効と加工硬化を起こさせるが、ばね表面層
の回復再結晶による軟化が起こるよりは低温に制御しつ
つ投射することを特徴とする。
ねの表層を窒化処理する工程と、(B)窒化処理された
ばねの表面へ、硬さHv500〜800であって、か
つ、窒化処理されたばねの最表層硬さよりも軟らかく、
粒径500〜900μmの硬質金属粒子を50m/se
c〜90m/secで投射し、これにより表層ミクロク
ラックの発生を防止しつつ圧縮残留応力をばねの比較的
内部にまで付与する工程と、(C)前記(B)工程の後
のばねの表面へ、硬さHv600以上、かつ、(B)工
程後のばね最表層硬さと同等以下の硬さを有する、粒径
20〜100μm、比重7.5〜9.0の微細金属粒子
を、70m/sec〜200m/secの衝突速度であ
って、かつ、粒子衝突による窒化されたばね表層鉄地の
瞬間的昇温限界を窒素原子による歪時効と加工硬化を起
こさせるが、回復再結晶による軟化が起こるよりは低温
に制御しつつ投射する工程とを有することを特徴とす
る。
ばねの表層を窒化処理する工程と、(B)窒化処理され
たばねの表面へ、硬さHv500〜800であって、か
つ、窒化処理されたばねの最表層硬さよりも軟らかい、
粒径500〜900μmの硬質金属粒子を、50m〜9
0m/secで投射し、これにより表層ミクロクラック
の発生を防止しつつ圧縮残留応力をばねの比較的内部に
まで付与する工程と、(C)前記(B)工程の後のばね
の表面へ、硬さが(B)工程後の最表層硬さと同等以下
の硬さを有する、粒径0.2〜0.4mm径の硬質金属
粒子を投射して圧縮残留応力と硬さを増大させる工程
と、(D)前記(C)工程の後のばねの表面へ、硬さH
v600以上、かつ、(C)工程後の最表層硬さと同等
以下の硬さを有する、粒径20〜100μm、比重7.
5〜9.0の微細金属粒子を、70m〜200m/se
cの衝突速度であって、かつ、粒子衝突によるばね表層
部の瞬間的昇温限界を窒素原子による歪時効と加工硬化
を起こさせるが、窒化されたばね表層部の回復再結晶に
よる軟化が起こるよりは低温に制御しつつ投射する工程
と、を有することを特徴とする。
は第3の処理方法の工程(B)と(C)の間、又は第3
の処理方法の工程(C)と(D)の間に、ばねを150
゜Cから250゜Cの温度に保持して歪時効硬化を起こ
させる工程を挿入したことを特徴とする。
1〜第4の処理方法において、ばねの最表層硬さを、H
v800〜1100となるように窒化処理したことを特
徴とする。
1〜第5の処理方法で製造したばねを、無負荷または静
負荷のもとで、150〜250゜Cの温度に保持して歪
時効硬化を起こさせることを特徴とする。
さは、新品での硬さを指すものとする。
段階の説明を交えて説明する。 (実施形態1)窒化によって弁ばね、クラッチばね等の
耐久性、特に耐疲労強度を向上させるため、次のような
工程が従来より採用されている。
線という)→ばね成型(冷間コイリング)→残留応力除
去焼鈍→座面研磨→表面スケール除去→窒化処理→ショ
ットピーニング→低温焼鈍 ここで、窒化後のショットピーニングとして、通常、一
段ショットの場合は粒径0.5〜0.9mm程度のHv
500〜800の鋼球、またはカットワイヤ等の多数の
硬質金属粒子を投射する。また二段ショットの場合は、
粒径0.5〜0.9mm程度の多数の鋼球のショット後
に、粒径0.2〜0.4mm程度の多数の金属粒子を投
射する。
について種々の条件で試験を実施した。そして窒化後、
(1)従来と同様に粒径0.5〜0.9mmの硬質カッ
トワイヤ、鋼粒子等を、速度v=50〜90m/sec
で投射し、カバレージ80%以上、望ましくは100%
以上とした後、さらに、(2)硬さHv600以上、か
つ、ばねの最表層硬さと同等以下の硬さを有し、粒径2
0〜100μmの高炭素鋼微粒子や高速度鋼微粒子など
の硬質金属粒子を、速度v=70m/sec以上、20
0m/sec以下、カバレージ95%以上で投射するこ
とによって、単に(1)のみの工程によるものと比較し
て、表面から10〜30μmの深さにおける極表面部の
残留応力を大きく改善できることを見出した。
温焼鈍によってショットの影響層(表層150〜200
μm)における転位固着を確実にすることによって、耐
疲労性及び耐へたり性において、従来の(1)のみによ
っては得ることができなかった非常に良好な耐久性を有
するばねを得ることができた。
ね最表層硬さと同等以下の硬さを有する、粒径20〜1
00μmの高炭素鋼微粒子などの金属粒子をワークに投
射する場合は、速度がv=150m/secであって
も、局所的変形である疲労寿命を損なうせん断変形帯
(adiavatic shear band)を殆ど発生せず、耐久性向上
効果が大きいことが分かった。投射速度はv=70m/
secよりもさらに高速にした方が残留応力等の付与効
果は大きいが、130〜150m/secを越えると次
第に効果は小さくなる。投射エネルギーはショット粒子
の質量と速度の二乗に比例するので、より密度の高い粒
子で、かつ、速度は100〜120m/secよりも1
50m/sec、150m/secよりも180〜20
0m/secの方がばね表面への単位面積当りの投射エ
ネルギーが大きくなる。しかし、個々の粒子の投射エネ
ルギーが大きくなり過ぎると、ばね表層部への悪影響を
生じて疲労寿命向上効果が十分発揮されなくなることが
分かった。
硬さがHv1300〜1600の比較的高価な超硬合金
製の微粒子を使用することなく、Hv600〜1000
程度の安価な炭素鋼、低合金鋼や高速度鋼などの鉄系な
どの金属合金微粒子を速度70m/sec以上で投射し
て、表層における圧縮残留応力を高いレベルで付与する
と共に、疲労寿命を阻害する表面のミクロクラックや局
所的せん断変形帯を防止するものである。
め、投射すると、衝突を受けたばね表面部の不均一変形
を助長し、また表面粗さを増大させ、表面部にミクロの
鋭利なへこみができやすい。あるいは、短時間投射でも
オーバーピーニングとなって表層が脆くなり、疲労強度
・寿命向上効果はあるものの、限界があることが分かっ
た。
50の鋼粒子を約70m/secでカバレッジ100%
以上で予めショットピーニングして最表層硬さをHv9
30に調整したワークに対して、Hv900、粒径50
μm、比重約8.2の高速度鋼粒子を実験的に投射した
場合(SS処理)の圧縮残留応力とショット速度との関
係について説明する。
は重量割合でC:0.60%、Si:1.45%、M
n:0.68、Ni:0.28%、Cr:0.85%、
V:0.07%である。
ね表面窒化層の鉄地(窒素化合物層を除外)の瞬間的昇
温限界を、窒素原子による歪時効と加工硬化を起こさせ
るが、ばね表面層の回復再結晶による軟化が起こるより
は低温に制御しつつ投射した。このような温度制御がな
されていることの確認は、ショット後の試料ワークの表
層の、マイクロビッカース硬さ測定や電子顕微鏡にる高
倍率組織観察などの手法でなされる。
化」について若干説明することとする。窒化されたばね
鋼材表面には、イプシロン鉄窒化物などの鉄系窒素化合
物が形成されることがある。さらにその内部には、鋼中
に拡散浸透した窒素原子の一部によって比較的微細な鉄
窒化物が形成されて硬さ上昇に寄与する。しかし、これ
ら以外にも鉄地中には固溶した窒素が存在し、この固溶
窒素はそれ自体で硬さ上昇と圧縮残留応力向上に寄与す
る。この固溶窒素は、SS処理の時には塑性変形に対す
る抵抗となるが、ワーク表層が塑性変形を開始すると、
転位が運動すると共に発熱の影響を受けて、窒素原子の
鉄中の拡散速度が上昇する過程で、転位の少なくとも一
部を固着する。これがいわゆる窒素による歪時効であ
る。これによって、ばね使用時の表層の繰返し応力によ
るすべり変形帯の発生を防止し、その結果として疲労破
壊の微小亀裂生成を防止すると考えられる。窒素は炭素
に比較してその固溶度ははるかに大きく、しかも鋼中の
マンガンやシリコンなどとの共存によってその固溶度は
鉄−窒素二元系の場合の固溶度よりもはるかに大きくな
ると考えられる。この点からもばね鋼に対する窒化とそ
の後のSS処理は、ばね特性向上のために非常に有効で
あるといえる。
に、速度v=90〜152m/secの間で、表層近傍
(10μm深さ)の最大圧縮残留応力値は1800N/
mm 2 を超え、良好な分布を示した。特に、v=90m
/secの条件では最表面の圧縮残留応力はほぼ200
0N/mm2 となり、分布も良好で、疲労強度向上効果
が大きいことが分かる。すなわち、v≦152m/se
c、寸法50μmの高速度鋼粒子投射では、ワーク表面
近傍に局部的な断熱せん断帯や窒化化合物層のクラック
などの、疲労寿命を阻害する可能性のある欠陥は殆ど発
生しないのである。
交差する点におけるショット速度は95m/secであ
るが、この交差点の前後20%のショット速度(76〜
114m/sec)では表層圧縮残留応力が1800N
/mm2 以上となり、比較的厚い表層範囲で大きな圧縮
残留応力を形成可能であることが分かる。
圧縮残留応力がほぼ一定であるので、表層20〜30μ
m深さ辺りが本発明による表面処理の作用の限界と思わ
れる。
度を色々と変えて実験した結果、ばねの最表層硬さがH
v800〜1100となるように窒化した場合が、その
後のショットピーニングによる圧縮残留応力の形成状態
が比較的厚い表層範囲で大きな値が得られて最も良好で
あった。
0m/sec程度を越えると、表面近傍に微細クラック
や強変形帯が出現するとともに、残留応力もより低速の
場合より低下する。
層にもともと存在した窒素化合物層が部分的に剥離また
は割れてミクロクラックを生じるとともに、残留応力も
v=90〜152m/secの場合よりもやや低下気味
となる。
ると表層残留応力はさらに小さくなるとともに表層のミ
クロクラックも顕著になり、表面改質の効果が小さくな
る。
上限を200m/secとした。
とし、粒径は同じ50μmとした鋼粒子を使用して前記
と同様の実験を行った。この結果、速度190m/se
cの場合、高速度鋼粒子投射と同様、化合物層のミクロ
クラック発生と一部剥落が認められた。また、速度v=
90m/secから150m/secの場合、表層近傍
の最大圧縮残留応力は上記の高速度鋼粒子投射のときよ
りやや小さいものの1700N/mm2 程度を示し、耐
久性向上に大きな効果が期待できることが分かった。こ
の時使用した供試の窒化ばねの表面の硬さはHv930
程度である。微細粒子投射完了後のばね表層硬さは微増
のHv950程度に止まったが、上述のように、ワーク
最表層硬さと同等以下の硬さの粒子投射でワーク表層に
大きな圧縮残留応力が形成されることが確認された。
硬さHv550の鋼粒子を事前投射してからSS処理を
したが、線径や板厚が大きくても1〜2mm程度のワー
クの場合には、このような事前投射をしても利点は少な
く、むしろ窒化後直ちにSS処理を行った方が、とりわ
け線径や板厚が1mm以下のワークについては、耐疲労
性をはじめとする性能面やコスト面で有利である。
ークに対しては、窒化後に0.2〜0.4mm径でワー
ク最表層硬さより軟質の鉄系粒子を50〜90m/se
cで投射してから前記SS処理を行うと、窒化後直ちに
SS処理を行った場合よりも耐疲労性等の性能面が改善
されることが確認された。
はワークと同程度の硬さの粒子(以下、「軟質粒子」と
いう。)の投射で有効な結果が得られるのは次の理由に
よるものと考えられる。 窒化処理したまま、又は窒化処理後、0.9mm〜
0.2mm径の前述のショット投射をした硬いワークの
表面に、いきなり超硬微粒子を投射すると、ミクロクラ
ックが発生したり表面粗さが増大して耐久性が低下する
おそれがあるが、軟質粒子を投射すると、ワークの塑性
変形よりも粒子の塑性変形が割合として大きく、これに
よってミクロクラックの発生が抑制されると共に表面粗
さの増大を回避することができる。そして軟質粒子の投
射を続行する間に、粒子衝突による瞬間発熱によってワ
ーク表層およびその直下の、深さおよそ50μmまでの
窒素添加(窒化)領域で温度上昇による変形抵抗の低下
が起こり、そのために塑性変形が起こること、 塑性変形で生成した転位の少なくとも一部が拡散した
窒素原子によって固着されること、 ワークの極表層では降伏強さも高く、粒子衝突による
変形は主として弾性変形であるが、わずかに内部に入っ
た領域では降伏点が深さと共に低下するため塑性変形が
起こること、及び、 繰返し衝突で投射粒子自身が徐々に加工硬化して硬さ
が増加し、それまでの投射による温度上昇で変形抵抗が
程よく低下したワーク表層を、前記のように硬さが増加
した軟質粒子によって、ミクロクラックを発生させない
で効果的に塑性変形させることができる。
軟質粒子を投射した場合は、ワーク表層の比較的厚い範
囲で大きな圧縮残留応力を形成することができるのであ
る。
し、その結果、表層直下約50μm深さまでの硬さの上
昇も認められる。粒子投射中に回復再結晶が起こるほど
ワーク温度が上昇すると、投射を受けた表層部は粒子投
射で軟化を起こし、残留応力も低下してしまうので、投
射を受けたワークの温度は回復再結晶による軟化が起こ
るよりは低温に制御しなければならないことが分かる。
00、比重8.2とし、投射のエアー圧を0.6気圧で
一定として、投射粒子寸法を変化させて圧縮残留応力と
の関係を図2にプロットした。対象ワークはばね材料で
あり、成分は重量割合でC:0.60%、Si:1.4
5%、Mn:0.68、Ni:0.28%、Cr:0.
85%、V:0.07%である。このばね材料は弁ばね
用高強度オイルテンパー線であり、これを冷間でばね成
形後デスケールし、さらに435℃で一定時間窒化し
た。引続き、0.6mm径の硬さHv550の鋼粒子を
十分に投射した。これを供試材とした。
くなるにつれて、表面残留応力は低下する傾向が認めら
れた。特に、粒子寸法が200μmを超えると表層近傍
の改善効果は少ないことを確認した。投射粒子寸法が5
0μmでは、100μmよりも表層残留応力は大きくな
り、疲労耐久性も優れる。100μmより投射粒子径が
大きくなると、表層の残留応力付与の効果は認められる
が、100μm以下の場合と比較してその効果は少なく
なるので、本願発明では、微粒子の最大寸法として10
0μmを限度とした。また、微粒子寸法が20μmより
小さくなると空気抵抗に妨げられて残留応力付与の効果
が出ない。
と、粒子の摩耗が激しくなり、また、ワーク表層への改
質効果も少なくなる。 (実施形態2)次に、本発明の別の実施形態2について
述べる。ばね表面を窒化後、(3)速度v=50〜90
m/sec、硬さHv500〜900の鉄系硬質金属粒
子(粒径0.5〜0.9mm)を十分に投射したのち
(カバーレージ80〜100%以上)、(4)ばね素材
の成分に応じた150〜250℃程度の温度で、数分な
いし1時間加熱して転位を固着する。この後、さらに
(5)ばねを冷却した後、もしくは低温焼鈍加熱された
温間のばねに対して、粒径が20〜100μmの金属粒
子を、速度v=70m/sec以上200m/sec以
下の高速で投射し(カバレージ95%以上、望ましくは
100%以上)、表層部の硬さと圧縮残留応力を十分に
高める。これによって、前記実施形態1に述べた方法よ
りも高い表層硬さと高い圧縮残留応力を得ることができ
る。なお、このときの温度制御は実施形態1と同様であ
る。
と硬さを大幅に改善でき、これにより特に繰り返し応力
振幅の比較的大きい場合でも表面からの疲労折損を防止
できて、高応力における疲労寿命を大幅に改善できる。
Claims (9)
- 【請求項1】(A)ばねの表層を窒化処理する工程と、
(B)窒化処理されたばねの表面へ、硬さHv600以
上、かつ、窒化処理されたばねの最表層硬さ(最表面か
ら5ミクロン程度の深さ位置でのマイクロビッカース硬
さ。以下同じ。)と同程度又はそれ以下の硬さを有す
る、比重が7.5〜9.0、粒径が20μm〜100μ
mの硬質金属粒子を、70m〜200m/secの衝突
速度であって、かつ、衝突によるばね表面窒化層の鉄地
(窒素化合物層を除外)の瞬間的昇温限界を、窒素原子
による歪時効と加工硬化を起こさせるが、ばね表面層の
回復再結晶による軟化が起こるよりは低温に制御しつつ
投射することを特徴とするばねの表面処理方法。 - 【請求項2】(A)ばねの表層を窒化処理する工程と、
(B)窒化処理されたばねの表面へ、硬さHv500〜
800であって、かつ、窒化処理されたばねの最表層硬
さよりも軟らかく、粒径500〜900μmの硬質金属
粒子を50m/sec〜90m/secで投射し、これ
により表層ミクロクラックの発生を防止しつつ圧縮残留
応力をばねの比較的内部にまで付与する工程と、(C)
前記(B)工程の後のばねの表面へ、硬さHv600以
上、かつ、(B)工程後のばね最表層硬さと同等以下の
硬さを有する、粒径20〜100μm、比重7.5〜
9.0の微細金属粒子を、70m/sec〜200m/
secの衝突速度であって、かつ、粒子衝突による窒化
されたばね表層鉄地の瞬間的昇温限界を窒素原子による
歪時効と加工硬化を起こさせるが、回復再結晶による軟
化が起こるよりは低温に制御しつつ投射する工程とを有
することを特徴とするばねの表面処理方法。 - 【請求項3】(A)ばねの表層を窒化処理する工程と、
(B)窒化処理されたばねの表面へ、硬さHv500〜
800であって、かつ、窒化処理されたばねの最表層硬
さよりも軟らかい、粒径500〜900μmの硬質金属
粒子を、50m〜90m/secで投射し、これにより
表層ミクロクラックの発生を防止しつつ圧縮残留応力を
ばねの比較的内部にまで付与する工程と、(C)前記
(B)工程の後のばねの表面へ、硬さが(B)工程後の
最表層硬さと同等以下の硬さを有する、粒径0.2〜
0.4mm径の硬質金属粒子を投射して圧縮残留応力と
硬さを増大させる工程と、(D)前記(C)工程の後の
ばねの表面へ、硬さHv600以上、かつ、(C)工程
後の最表層硬さと同等以下の硬さを有する、粒径20〜
100μm、比重7.5〜9.0の微細金属粒子を、7
0m〜200m/secの衝突速度であって、かつ、粒
子衝突によるばね表層部の瞬間的昇温限界を窒素原子に
よる歪時効と加工硬化を起こさせるが、窒化されたばね
表層部の回復再結晶による軟化が起こるよりは低温に制
御しつつ投射する工程と、を有することを特徴とするば
ねの表面処理方法。 - 【請求項4】請求項2又は3の工程(B)と(C)の
間、又は請求項3の工程(C)と(D)の間に、ばねを
150゜Cから250゜Cの温度に保持して歪時効硬化
を起こさせる工程を挿入したことを特徴とするばねの表
面処理方法。 - 【請求項5】ばねの最表層硬さがHv800〜1100
となるように窒化処理した請求項1から4のいずれか記
載のばねの表面処理方法。 - 【請求項6】請求項1から5のいずれかの方法で製造し
たばねを、無負荷または静負荷のもとで、150〜25
0゜Cの温度に保持して歪時効硬化を起こさせることを
特徴とするばねの表面処理方法。 - 【請求項7】(A)ばねの表層を窒化処理する工程と、
(B)窒化処理されたばねの表面へ、硬さHv600以
上、かつ、窒化処理されたばねの最表層硬さ(最表面か
ら5ミクロン程度の深さ位置でのマイクロビッカース硬
さ。以下同じ。)と同等以下の硬さを有する、比重が
7.5〜9.0、粒径が20μm〜100μmの硬質金
属粒子を、95m/sec±20%(76〜114m/
sec)の衝突速度であって、かつ、衝突によるばね表
面窒化層の鉄地(窒素化合物層を除外)の瞬間的昇温限
界を、窒素原子による歪時効と加工硬化を起こさせる
が、ばね表面層の回復再結晶による軟化が起こるよりは
低温に制御しつつ投射することを特徴とするばねの表面
処理方法。 - 【請求項8】(A)ばねの表層を窒化処理する工程と、
(B)窒化処理されたばねの表面へ、硬さHv500〜
800であって、かつ、窒化処理されたばねの最表層硬
さよりも軟らかく、粒径500〜900μmの硬質金属
粒子を50m/sec〜90m/secで投射し、これ
により表層ミクロクラックの発生を防止しつつ圧縮残留
応力をばねの比較的内部にまで付与する工程と、(C)
前記(B)工程の後のばねの表面へ、硬さHv600以
上、かつ、窒化処理されたばねの最表層硬さ(最表面か
ら5ミクロン程度の深さ位置でのマイクロビッカース硬
さ。以下同じ。)と同等以下の硬さを有する、比重が
7.5〜9.0、粒径が20μm〜100μmの硬質金
属粒子を、95m/sec±20%(76〜114m/
sec)の衝突速度であって、かつ、衝突によるばね表
面窒化層の鉄地(窒素化合物層を除外)の瞬間的昇温限
界を、窒素原子による歪時効と加工硬化を起こさせる
が、ばね表面層の回復再結晶による軟化が起こるよりは
低温に制御しつつ投射する工程とを有することを特徴と
するばねの表面処理方法。 - 【請求項9】(A)ばねの表層を窒化処理する工程と、
(B)窒化処理されたばねの表面へ、硬さHv500〜
800であって、かつ、窒化処理されたばねの最表層硬
さよりも軟らかい、粒径500〜900μmの硬質金属
粒子を、50m〜90m/secで投射し、これにより
表層ミクロクラックの発生を防止しつつ圧縮残留応力を
ばねの比較的内部にまで付与する工程と、(C)前記
(B)工程の後のばねの表面へ、硬さが(B)工程後の
最表層硬さと同等以下の硬さを有する、粒径0.2〜
0.4mm径の硬質金属粒子を投射して圧縮残留応力と
硬さを増大させる工程と、(D)前記(C)工程の後の
ばねの表面へ、硬さHv600以上、かつ、窒化処理さ
れたばねの最表層硬さ(最表面から5ミクロン程度の深
さ位置でのマイクロビッカース硬さ。以下同じ。)と同
等以下の硬さを有する、比重が7.5〜9.0、粒径が
20μm〜100μmの硬質金属粒子を、95m/se
c±20%(76〜114m/sec)の衝突速度であ
って、かつ、衝突によるばね表面窒化層の鉄地(窒素化
合物層を除外)の瞬間的昇温限界を、窒素原子による歪
時効と加工硬化を起こさせるが、ばね表面層の回復再結
晶による軟化が起こるよりは低温に制御しつつ投射する
工程と、を有することを特徴とするばねの表面処理方
法。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019124135A (ja) * | 2018-01-12 | 2019-07-25 | 富士電機株式会社 | 蒸気タービン翼及びその製造方法 |
JP2020159098A (ja) * | 2019-03-27 | 2020-10-01 | ヤマダインフラテクノス株式会社 | 鋼橋の予防保全工法 |
-
1999
- 1999-02-19 JP JP04186599A patent/JP3431066B2/ja not_active Expired - Lifetime
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JP2019124135A (ja) * | 2018-01-12 | 2019-07-25 | 富士電機株式会社 | 蒸気タービン翼及びその製造方法 |
JP7015468B2 (ja) | 2018-01-12 | 2022-02-03 | 富士電機株式会社 | 蒸気タービン翼及びその製造方法 |
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