JP2000239380A - ポリコハク酸イミドの製造方法 - Google Patents

ポリコハク酸イミドの製造方法

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JP2000239380A
JP2000239380A JP11371467A JP37146799A JP2000239380A JP 2000239380 A JP2000239380 A JP 2000239380A JP 11371467 A JP11371467 A JP 11371467A JP 37146799 A JP37146799 A JP 37146799A JP 2000239380 A JP2000239380 A JP 2000239380A
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polysuccinimide
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JP11371467A
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English (en)
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Katsuhiko Machida
勝彦 町田
Susumu Fukawa
進 府川
Shinji Ogawa
伸二 小川
Toshio Kato
敏雄 加藤
Makoto Sukegawa
誠 助川
Yoshihiro Irisato
義広 入里
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Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
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  • Macromolecular Compounds Obtained By Forming Nitrogen-Containing Linkages In General (AREA)
  • Biological Depolymerization Polymers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡便な装置により実施でき、かつ高度の粘性
相生成、過度の泡沫形成、及び反応物の凝固塊生成等の
問題を生じない高分子量のポリコハク酸イミドの製造方
法を提供する。 【解決手段】 アスパラギン酸と酸性触媒を、混合、加
熱し、液体状低分子量ポリマー混合物を製造する工程
1、液体状低分子量ポリマー混合物から、酸性触媒を適
度に分離することにより、ポリマーが含有される相を液
相から固相へ直接相変化させ、固体状低分子量ポリマー
混合物を製造する工程2、得られた固体状低分子量ポリ
マー混合物について固相重合を実施する工程3を含んで
構成される、重量平均分子量4万以上を有する高分子量
のポリコハク酸イミドの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリコハク酸イミ
ドの製造方法に関し、更に詳しくは、酸性触媒を用いて
アスパラギン酸の重合を行うポリコハク酸イミドの製造
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】[ポリコハク酸イミド及びその製造方法
の技術的背景]ポリコハク酸イミドは、ポリアスパラギ
ン酸等のポリアミノ酸誘導体の製造において、好適な前
駆体又は中間体である。ポリコハク酸イミド、ポリアス
パラギン酸等のポリアミノ酸誘導体は、生分解性を有す
ることが知られており、環境に適合するポリマーとして
極めて有用である。また、ポリコハク酸イミドの誘導体
である架橋ポリアスパラギン酸塩は、生分解性と共に吸
水性をも有し、極めて有用なポリマーである。
【0003】アスパラギン酸を酸性触媒の存在下で反応
させることにより、ポリコハク酸イミドを製造する技術
として、例えば、以下に挙げる従来技術(i)〜(ii
i)がある。
【0004】(i)米国特許5,142,062号 ここでは、第1段階として、アスパラギン酸とリン酸類
の混合物を、温度100〜250℃、圧力1bar未満
の真空系で反応させ、重量平均分子量1万〜10万のポ
リコハク酸イミドを含有する固体反応混合物を製造し、
第2段階として、第1段階で得た固体反応混合物を0.
001〜2mmの粒子サイズに粉砕し、さらに第1段階
の温度・圧力範囲から選択した条件下で重縮合を行うこ
とによって、重量平均分子量10万〜20万のポリコハ
ク酸イミドを製造する技術が開示されている。
【0005】その実施例1では、アスパラギン酸50g
(0.38mol)と85%リン酸25g(リン酸0.2
2mol)を混合し[モル比(リン酸/アスパラギン
酸)=0.58]、真空系において200℃下、4時間
重合を行い、ポリコハク酸イミドとリン酸からなる粗生
成物を製造している。この粗生成物の一部について、リ
ン酸を洗浄後、分子量を評価し、重量平均分子量(M
w)8.6万であることが開示されている。実施例2で
は、実施例1の粗生成物について、さらに、粒子サイズ
が0.001〜2.0mmとなるように粉砕後、再度、真
空系(1mbar)において200℃、4時間重合を行
い、Mw12.4万のポリコハク酸イミドを得ている。
【0006】また、実施例1及び実施例3より、反応物
は、反応の進行に伴い流動体から固体へと性状が変化し
ていくことが開示されている。この技術では、粉砕操作
を行うことで、高いMwを有するポリコハク酸イミドを
製造できるという特徴がある。しかし、通常、反応物の
固化を伴う反応に適宜対応しつつ、工業的な製造を実施
しようとする為には、特殊な反応装置が要求され、装置
設計が困難である。特に、反応物の性状が、反応の進行
に伴い流動体から固体へと連続的に変化していく場合、
これに対応し得る連続式の反応装置を設計するのは困難
である。
【0007】なお、この従来技術においては、アスパラ
ギン酸に対するリン酸のモル比は反応開始から終了ま
で、一定である。
【0008】(ii)米国特許第5,457,176号(特
開平7−216084号対応) ここでは、アミノ酸と酸性触媒の混合物を加熱し、アミ
ノ酸ポリマーを製造する方法が開示されている。特に、
カラム2の15〜16行には、最大重量平均分子量6万
以下のアミノ酸ポリマーを製造することが、この技術の
目的の1つであることが明らかにされている。
【0009】また、実施例3には、アスパラギン酸80
0g(6.01モル)、85%オルトリン酸200g
(リン酸1.73モル)を混合して得た湿潤粘着性白色
粉末の反応混合物を、ステンレス鋼パン上にて層状とし
て加熱した例が開示されている。実施例3において、湿
潤粘着性粉末の反応混合物は、240℃、1時間の加熱
によって、外側が硬く中心部が粘着性である固体の塊へ
変化したことが開示されている。この固体の塊を、乳鉢
と乳棒を用いて粉砕後、さらに240℃で6時間加熱を
行い、Mw1.55万のポリコハク酸イミドが得られて
いる。
【0010】しかし、粘着性を有する状態から固体の塊
状物へと変化していく反応に適宜対応しつつ工業的な製
造を実施する為には、特殊な反応装置が必要になり、装
置設計が極めて困難である。特に、リン酸の存在下で、
かつ高温下において特殊な機構を有する反応装置が必要
になるが、これを設計するのは困難である。
【0011】また、実施例に開示されたポリコハク酸イ
ミドのMwの最大値は2.4万であり、分子量6万以下
のアミノ酸ポリマーを製造するという目的と一致してい
る。なお、この従来技術においても、アスパラギン酸に
対するリン酸のモル比は反応開始から終了まで一定であ
る。
【0012】(iii)米国特許第5,688,903号
(特開平8−231710号対応) 重合触媒としてのリン酸、五酸化リン又はポリリン酸の
存在下で、アミノ酸を塊状熱重縮合し、次いで随意に加
水分解することによる、アミノ酸の重縮合物又はそのポ
リペプチド加水分解物の製造方法が開示されている。こ
の技術は、アミノ酸1分子当たりに、0.005〜0.2
5モルの触媒が均一に分散された微粉状の原料を製造
し、重縮合操作を実施することを特徴とする。
【0013】実施例には、真空系及び常圧系での反応例
が開示されており、アスパラギン酸とリン酸を均一に混
合した原料を、微粉砕機によって粉砕して微粉状原料と
し、反応が実施されている。
【0014】リン酸、五酸化リン又はポリリン酸の使用
量を前記範囲とし、微粉状原料を用いて反応を行うこと
により、重合過程での泡沫相形成、重合後の凝集塊生成
等の問題を解決している。しかし、ポリコハク酸イミド
をDMF溶液として評価した粘度指数値をMwに換算す
ると、例4はMw約1.9万、例8はMw約2.8万であ
り、得られたポリコハク酸イミドはMw3万未満の低分
子量に限られており、高分子量のポリコハク酸イミドを
製造する方法としては十分でない。
【0015】一方、リン酸量を、前記範囲を超える使用
量とした例10(比較例)では、Mw約7.6万のポリ
コハク酸イミドが生成している。即ち、例10(比較
例)の方が、粘性相の形成、反応物の凝固は生じるもの
の、前記の例4、例9よりも高いMwを有するポリコハ
ク酸イミドが得られることが明らかにされている。ま
た、この従来技術においても、アスパラギン酸に対する
リン酸のモル比は反応開始から終了まで一定である。
【0016】上述したように、従来技術(i)及び(i
i)のように、反応物の固化を生じ、粉砕操作を要する
重合操作は、連続かつ大量の製造を実施しようとする場
合には装置設計が困難である。特に、リン酸の存在下
で、かつ高温下において特殊な機構を有する反応装置が
必要になり、これを設計するのは困難である。一方、従
来技術(iii)では、リン酸量を所定の範囲に設定した
微粉状反応原料を使用することにより、粘性相の形成、
反応物の凝固塊生成は防止できるものの、生成するポリ
コハク酸イミドの重量平均分子量は低い。
【0017】即ち、従来技術では、高い重量平均分子量
を有するポリコハク酸イミドの製造と、粘性相生成、泡
沫形成および反応物の凝固塊生成の防止とは、両立する
ことができなかった。
【0018】また、固相重合を常圧系で実施した場合
に、高い重量平均分子量を有するポリコハク酸イミドを
製造する方法は無かった。
【0019】
【問題が解決しようとする課題】本発明の目的の一つ
は、高い重量平均分子量を有するポリコハク酸イミドを
製造することにある。
【0020】本発明の目的の他の一つは、より簡便な装
置によりポリコハク酸イミドを製造することにある。
【0021】本発明の目的の他の一つは、従来技術によ
る製造の過程で生じていた、極めて高度の粘性相の生
成、過度の泡沫形成、及び、反応物の凝固塊生成等を解
決し、連続かつ大量の製造に好適な、高い重量平均分子
量を有するポリコハク酸イミドを製造することにある。
【0022】本発明の目的の他の一つは、固相重合によ
り、高い重量平均分子量を有するポリコハク酸イミドを
製造することにある。
【0023】本発明の目的の他の一つは、常圧系の固相
重合により、高い重量平均分子量を有するポリコハク酸
イミドを製造することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成すべく、高分子量のポリコハク酸イミドの製造方
法について鋭意検討した結果、(1)アスパラギン酸と
酸性触媒を、混合、加熱し、液体状低分子量ポリマー混
合物を製造する工程、(2)この液体状低分子量ポリマ
ー混合物から、酸性触媒を適度に分離することにより、
ポリマーが含有される相を、液相から固相へ、直接相変
化させ、固体状低分子量ポリマー混合物を製造する工
程、(3)この固体状低分子量ポリマー混合物について
固相重合を実施する工程の3段階の工程を、連続式及び
/又は回分式操作で行なう製造方法により、重量平均分
子量4万以上を有する高分子量のポリコハク酸イミドが
製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0025】すなわち本発明は、工程1として、アスパ
ラギン酸重量と酸性触媒重量WA1の合計重量を基準と
した酸性触媒の重量濃度C1が下記数式(1)で示され
るアスパラギン酸と酸性触媒を含有する混合物を、80
〜350℃で重縮合させて、下記数式(2)で示される
重量平均分子量Mw1を有する低分子量ポリコハク酸イ
ミドと酸性触媒を含有する液体状低分子量ポリマー混合
物を製造する工程; 20[重量%] ≦ C1 ≦ 99[重量%] (1) 1.0×104 ≦ Mw1 ≦ 2.0×105 (2) 工程2として、工程1で製造された液体状低分子量ポリ
マー混合物から、低分子量ポリコハク酸イミド重量と酸
性触媒重量WA2の合計重量を基準とした酸性触媒の重
量濃度C2が下記数式(3)で示され、酸性触媒重量W
A2が下記数式(4)で示され、重量平均分子量Mw2
が下記数式(5)で示され、かつ下記工程3の反応条件
において溶融することのない固体状低分子量ポリマー混
合物を製造する工程;及び、 5[重量%] ≦ C2≦ 55[重量%] (3) WA2 < WA1 (4) 1.0×104 ≦ Mw2 ≦ 2.0×105 (5) 工程3として、工程2で製造された固体状低分子量ポリ
マー混合物を、120〜350℃で固相重合させて、下
記数式(6)、(7)及び(8)を同時に満たす重量平
均分子量Mw3を有する高分子量ポリコハク酸イミドと
酸性触媒を含有する、固体状高分子量ポリマー混合物を
製造する固相重合工程; 4.0×104 ≦ Mw3 ≦ 1.0×106 (6) Mw1 < Mw3 (7) Mw2 < Mw3 (8) を含む高分子量ポリコハク酸イミドの製造方法である。
【0026】
【発明の実施の形態】[1]アスパラギン酸 本発明で使用するアスパラギン酸は、L体、D体、DL
体の何れであってもよい。
【0027】[2]酸性触媒 本発明で使用する酸性触媒は、特に限定されるものでは
ないが、例えば、リン酸素酸が好ましい。リン酸素酸類
の具体例としては、オルトリン酸(分子量98.0
0)、ピロリン酸、ポリリン酸、及び、五酸化リン等が
挙げられる。本発明においては、これらからなる群から
選択された少なくとも一種のリン酸素酸類を使用するこ
とが好ましい。
【0028】使用する酸性触媒は、溶媒(例えば、水、
アルコール、ケトン等の極性溶媒)で希釈された状態で
あってもよい。例えば、リン酸を使用する場合には、8
5重量%のリン酸と、15重量%の水からなる混合物を
使用してもよい。通常は、好ましくは10重量%以上、
より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重
量%以上、最も好ましくは85重量%以上の酸性触媒濃
度で重合に使用する。酸性触媒濃度が低すぎると、一般
に、重合操作の過程で除去しなければならない溶媒の量
が多くなり、エネルギーを余計に使用することになる。
【0029】[3]ポリコハク酸イミド 本発明の方法に従って得られるポリコハク酸イミドの構
造は、線状構造であっても、分岐状構造を有するもので
あってもよい。
【0030】[4]不活性ガス 本発明では、少なくとも1つ以上の工程に、不活性ガス
を使用することが好ましい。不活性ガスの組成は特に限
定されないが、反応に悪影響を与えないガスが好まし
い。具体的には、窒素、二酸化炭素、アルゴン等が好ま
しい。なお、不活性ガスは、1種類のガスを用いても、
複数種類のガスを混合して用いても構わない。
【0031】また、不活性ガスは、伝熱用媒体としても
利用できる。連続かつ大量の製造を実施する場合におい
ても、加熱用媒体として反応混合物を効率よく均一に加
熱することが可能であり、品質(例えば重量平均分子量
等)のばらつきが少ないポリコハク酸イミドを製造する
ことができる。
【0032】不活性ガスは、通常、再生処理を経て、再
使用することが好ましい。再生処理は、一般に不活性ガ
ス中に含有される、水分及び/又は不純物(反応副生成
物、固体状低分子量ポリマー混合物の一部等)の濃度を
低減するために実施される。
【0033】具体的操作としては、通常、吸着操作、吸
収操作、冷却操作、加熱操作、集塵操作等から選択され
る少なくとも一つ以上の操作を実施し、水分及び/又は
不純物の濃度を低減することが好ましい。ここで吸着操
作においては、ゼオライト類や、親水性架橋樹脂類(例
えば、イオン交換樹脂等)等、を吸着剤に用いることが
できる。
【0034】不活性ガスを用いる際、不活性ガス中の水
分濃度が高いと、通常、得られるポリコハク酸イミドの
重量平均分子量は低くなることがある。逆に、水分濃度
が0%の場合には、ポリマーには影響が無いが、一般
に、不活性ガスの再生処理に関係するコストが過大とな
らないように考慮する必要が有る。
【0035】また、水分濃度の別の基準としては、不活
性ガスの露点を用いることもできる。本発明では、不活
性ガスの露点は、通常は−20℃以下、好ましくは−3
0℃以下、より好ましくは−40℃以下、特に好ましく
は−50℃以下、最も好ましくは−60℃以下である。
【0036】また、不純物濃度が高いと、場合により、
ポリコハク酸イミドの着色、変性等が生じることが有
る。逆に、不純物濃度が0%の場合には、ポリマーには
影響が無いが、一般に、不活性ガスの再生処理に関係す
るコストが過大とならないように考慮する必要が有る。
【0037】[5]本発明の工程の概要 以下、図1に基づき本発明の概要を説明する。ただし、
図1は、本発明の工程の概要を示す一例に過ぎず、必ず
しも本発明の内容を限定するものではない。
【0038】図1では、一例として、オルトリン酸(図
1中には「リン酸」と表記する。分子量98.00)を
酸性触媒に用いたケースを示す。また、図1では、酸性
触媒重量濃度を、アスパラギン酸(分子量133.1
0)に対する酸性触媒のモル比に換算して取り扱う。モ
ル比に換算する場合、アスパラギン酸がポリコハク酸イ
ミドに転化した場合でも、ポリマーの単位構造の分子量
(ポリコハク酸イミド単位構造の分子量97.07)を
用いて、モル比として評価することにより、アスパラギ
ン酸、及び/又は、ポリコハク酸イミドに対する酸性触
媒のモル比が算出される。
【0039】なお、リン酸を酸性触媒に用いる場合に
は、反応過程でリン酸自体の縮合が生じ、リン酸の分子
量が変化する場合がある。そこで、リン酸を酸性触媒に
用いる場合は、リンのモル数にて評価する。
【0040】また、図1には、反応時のリン酸量と重量
平均分子量との関係で、相状態の一例も併せて示す。図
中、実線で描かれた曲線は、反応温度200℃下、真空
系の重合操作を、20時間実施した場合の重量平均分子
量である。
【0041】図1中、一点鎖線にて、重合操作の容易
な、比較的粘性の低い液状となる領域(『L』)と、比
較的粘性が高い液状であり、反応条件の設定次第では発
泡等の生じる領域(『G/L』)との境界を示す。ま
た、点線にて、比較的粘性が高い液状であり、反応条件
の設定次第では発泡等の生じる領域(『G/L』)と、
固体状となる領域(『S』)との境界を示す。
【0042】図1を用いて説明すると、本発明の製造方
法は、主として、次に説明するような3つの工程(図1
中の→→→)からなる。
【0043】(1)工程1(液体状低分子量ポリマー混
合物製造工程:→)では、アスパラギン酸に対する
酸性触媒のモル比がM1であるアスパラギン酸と酸性触
媒を含有する混合物(図中)を、80〜350℃にお
いて重縮合し、重量平均分子量Mw1を有する低分子量
ポリコハク酸イミドと酸性触媒をモル比M1で含有する
液体状低分子量ポリマー混合物(図中)を製造する。
この工程1(→)では、好ましくは酸性触媒が溶媒
としての機能をも有し、液体状低分子量ポリマー混合物
が得られる。酸性触媒を重量濃度で評価する場合、アス
パラギン酸の重縮合に伴い生成する縮合水が反応系から
分離されると、相対的に酸性触媒の重量濃度は増大する
が、図1では、前述のようにモル比で評価した場合を示
しているため酸性触媒のモル比は一定である。
【0044】(2)工程2(固体状低分子量ポリマー混
合物製造工程:→)として、工程1で製造された液
体状低分子量ポリマー混合物(図中)から、溶媒とし
ても機能している酸性触媒を適度に分離することによっ
て、重量平均分子量Mw2を有するポリコハク酸イミド
と酸性触媒をモル比M2で含有し、かつ、工程3の反応
条件において液化(溶融)することのない固体状低分子
量ポリマー混合物(図中)を製造する。図中に示され
るように、工程2の前後(と)におけるポリコハク
酸イミドの重量平均分子量Mw1とMw2には大きな変
動は無い。
【0045】(3)工程3(固相重合工程:→)と
して、工程2で製造された固体状低分子量ポリマー混合
物を、120〜350℃において固相重合を行って、重
量平均分子量Mw3を有する高分子量ポリコハク酸イミ
ドと酸性触媒を含有する、固体状高分子量ポリマー混合
物(図中)を製造する。
【0046】このような工程を有する本発明の製造方法
によれば、従来の技術の重合操作の過程で生じていた、
極めて高度の粘性相の生成、過度の泡沫形成、及び、反
応物の凝固塊生成等の課題を、各工程での酸性触媒濃度
及び重量平均分子量の適度な設定により解決し、高い重
量平均分子量を有するポリコハク酸イミドを製造するこ
とができる。
【0047】以下、各工程1〜3について更に詳細に説
明する。
【0048】[6]工程1(液体状低分子量ポリマー混
合物製造工程) 工程1(液体状低分子量ポリマー混合物製造工程)は、
連続式、及び/又は、回分式の操作にて実施することが
できる。
【0049】この工程1は、アスパラギン酸重量と酸性
触媒重量WA1の合計重量を基準とした酸性触媒の重量
濃度C1が下記数式(1)で示されるアスパラギン酸と
酸性触媒を含有する混合物を、80〜350℃で重縮合
させて、下記数式(2)で示される重量平均分子量Mw
1を有する低分子量ポリコハク酸イミドと酸性触媒を含
有する液体状低分子量ポリマー混合物を製造する工程で
あれば、特に限定されない。 20[重量%] ≦ C1 ≦ 99[重量%] (1) 1.0×104 ≦ Mw1 ≦ 2.0×105 (2)。
【0050】ここで、得られる低分子量ポリマー混合物
が『液体状』であるとは溶液状態、分散状態、水飴状
態、ペースト状態などを包含する意味である。
【0051】1)酸性触媒量 工程1において、酸性触媒は、アスパラギン酸の重縮合
反応の触媒としての機能を有するものである。また、反
応物に対する溶媒の機能をも有する酸性触媒を用いるこ
とが好ましい。
【0052】本発明では、数式(1)の範囲の酸性触媒
濃度C1において、液体状低分子量ポリマー混合物を製
造する。酸性触媒の使用量が、数式(1)の範囲よりも
少なすぎる場合、重合過程で、ポリコハク酸イミドの分
子量が増大するのに伴い、反応物の粘性が増大し、発泡
が生じて重合操作が困難となる場合がある。さらに反応
を進めると、反応物が発泡した状態のまま塊状で固化
し、場合によっては反応装置に固着し、操作を継続する
ことが極めて困難になることがある。逆に、数式(1)
の範囲を超える過剰量の酸性触媒の使用は、酸性触媒の
分離や、再使用に必要なエネルギーを増大させるため、
一般に、不経済である。
【0053】本発明では、アスパラギン酸重量と酸性触
媒重量WA1の合計重量を基準とした酸性触媒の重量濃
度C1が、さらに下記数式(1−1)で示される範囲で
あることが好ましく、下記数式(1−2)で示される範
囲であることがより好ましく、下記数式(1−3)で示
される範囲であることが特に好ましい。 30[重量%] ≦ C1 ≦ 94[重量%] (1−1) 37[重量%] ≦ C1 ≦ 88[重量%] (1−2) 40[重量%] ≦ C1 ≦ 80[重量%] (1−3)。
【0054】2)工程1(液体状低分子量ポリマー混合
物製造工程)の操作 工程1における原料(アスパラギン酸、酸性触媒)の混
合操作は、通常、直接混合することで実施するが、場合
によっては、溶媒(水、アルコール、ケトン等の極性溶
剤)に、アスパラギン酸、及び/又は、酸性触媒を、溶
解又は分散させて実施してもよい。ただし、水以外の溶
媒は、副反応を防止するために反応開始前に十分に系内
から除去されることが好ましく、反応開始前に水以外の
溶媒濃度が0重量%となるまで系内から除去されること
がより好ましい。
【0055】また、酸性触媒との混合後には、アスパラ
ギン酸の縮合により水が生成する場合がある。生成する
水を利用して、酸性触媒とアスパラギン酸を混合する操
作をより効率的に実施することもできる。
【0056】工程1の操作を行う温度は、好ましくは5
〜400℃、より好ましくは80〜350℃、さらに好
ましくは100〜250℃、特に好ましくは130〜2
00℃の範囲である。主として、アスパラギン酸、酸性
触媒からなる原料混合物は、酸性触媒量や加熱温度等の
反応条件により、スラリー状、ペースト状等の種々の性
状を示し、その後、さらに加熱することにより液体状へ
と変化する。温度が低すぎると、通常、数式(2)の範
囲の重量平均分子量を有する液体状低分子量ポリマー混
合物を製造するために要する反応時間が長くなり、大型
の反応装置が必要となるため装置設計が困難である。逆
に温度が高すぎると、通常、酸性触媒とアスパラギン酸
が十分に混合される前に、不均一な状態で重合が開始
し、一部に不均一な反応物が形成される虞がある。
【0057】工程1の圧力は、適宜選択される。加熱操
作を行う温度下で、効率よく系内の水分を低減できる圧
力とする。圧力は、好ましくは0.000001〜50
MPa、より好ましくは0.00001〜10MPa、
特に好ましくは0.0001〜1MPaである。圧力が
低すぎると、通常、液体状低分子量ポリマー混合物を製
造する過程で、水分が蒸発する際に著しい発泡が生じる
ため、容積効率が低下する。圧力が高すぎると、通常、
高耐圧性の反応器が必要となり、大量の製造を行う場合
には、装置設計が困難になる。
【0058】工程1に要する時間は、特に限定されない
が、一般的には1秒〜20時間、好ましくは10秒〜5
時間、より好ましくは1分〜3時間、特に好ましくは5
分〜2時間である。加熱操作時間は、適度な時間とする
ことで、顕著な着色や変性が生じていない液体状低分子
量ポリマー混合物が得られる。液体状低分子量ポリマー
混合物は、前記時間範囲を含む任意の時間、必要に応じ
貯蔵・保持しても構わない。
【0059】工程1の操作は、系内の酸素濃度が低減さ
れた条件下、又は、酸素濃度が0%である条件下で実施
することが好ましく、前記の不活性ガス中で実施するこ
とが好ましい。
【0060】3)製造装置 工程1における液体状低分子量ポリマー混合物の製造
は、連続式操作、回分式操作の何れで実施してもよい。
液体状低分子量ポリマー混合物を製造するための装置
は、特に限定されず、前記のような原料の混合操作及び
加熱操作が実施できる装置であればよい。また、原料の
混合処理と、加熱処理を、2つ以上の装置に分割して行
ってもよい。具体的には、例えば攪拌槽、遊星運動攪拌
装置付反応機、1軸又は2軸混練機等、任意の装置を用
いることができる。液体状低分子量ポリマー混合物の性
状(例えば、粘性等)に応じて、均一な攪拌状態が得ら
れる反応装置を選択すればよい。
【0061】液体状低分子量ポリマー混合物製造工程で
の加熱操作は、反応物を、間接及び/又は直接、加熱媒
体と接触させて行うことができる。
【0062】また、本発明の液体状低分子量ポリマー混
合物の製造に用いられる装置としては、『改訂六版 化
学工学便覧』(編者:社団法人 化学工学会、発行所:
丸善株式会社、1999年)の『7 攪拌』(421〜
454頁)、『6 伝熱・蒸発』(343〜420頁)
に記載されている装置を包含する。
【0063】4)重量平均分子量 工程1では、重量平均分子量Mw1が前記数式(2)で
示される分子量を有するポリコハク酸イミドを含有した
液体状低分子量ポリマー混合物を製造する。この重量平
均分子量Mw1が、数式(2)の範囲よりも低すぎる
と、通常、後工程における操作が困難になることがあ
る。具体的には、工程2(固体状低分子量ポリマー混合
物製造工程)において、固体状低分子量ポリマー混合物
が得られない場合があったり、工程3(固相重合工程)
において、固体状低分子量ポリマー混合物の溶融・融着
が生じる場合がある。逆に、重量平均分子量Mw1が、
数式(2)の範囲よりも高すぎると、通常、液体状低分
子量ポリマー混合物を製造する装置での非常に長い滞留
時間が要求され、副反応を生じる虞がある。
【0064】本発明では、工程1で製造する液体状低分
子量ポリマー混合物中のポリコハク酸イミドの重量平均
分子量Mw1が、さらに下記数式(2−1)で示される
範囲であることが好ましく、下記数式(2−2)で示さ
れる範囲であることがより好ましく、下記数式(2−
3)で示される範囲であることが特に好ましい。 1.5×104 ≦ Mw1 ≦ 1.2×105 (2−1) 2.0×104 ≦ Mw1 ≦ 9.0×104 (2−2) 2.5×104 ≦ Mw1 ≦ 7.0×104 (2−3)。
【0065】[7]工程2(固体状低分子量ポリマー混
合物製造工程) 工程2(固体状低分子量ポリマー混合物製造工程)は、
連続式、及び/又は、回分式の操作にて実施することが
できる。
【0066】この工程2は、工程1で製造された液体状
低分子量ポリマー混合物から、低分子量ポリコハク酸イ
ミド重量と酸性触媒重量WA2の合計重量を基準とした
酸性触媒の重量濃度C2が下記数式(3)で示され、酸
性触媒重量WA2が下記数式(4)で示され、重量平均
分子量Mw2が下記数式(5)で示され、かつ工程3の
反応条件において溶融(液化)することのない固体状低
分子量ポリマー混合物を製造する工程であれば、特に限
定されない。 5[重量%] ≦ C2≦ 55[重量%] (3) WA2 < WA1 (4) 1.0×104 ≦ Mw2 ≦ 2.0×105 (5)。
【0067】工程2の好ましい態様は、工程1で製造さ
れた液体状低分子量ポリマー混合物に、低分子量ポリコ
ハク酸イミドを実質的に溶解せずかつ酸性触媒を少なく
とも一部溶解する機能を有する抽出溶媒を加えて、液体
状低分子量ポリマー混合物に含有される酸性触媒の少な
くとも一部を抽出溶媒相に移行せしめ、酸性触媒含有量
が低減された低分子量ポリコハク酸イミドを含有する固
体状低分子量ポリマー混合物と、抽出された酸性触媒及
び抽出溶媒を含んでなる抽出溶液とからなるスラリーを
製造する工程2−1;及び、工程2−1で製造されたス
ラリーを、酸性触媒含有量が低減された低分子量ポリコ
ハク酸イミドを含有する固体状低分子量ポリマー混合物
と、抽出された酸性触媒及び抽出溶媒を含んでなる抽出
溶液とに分離する固液分離工程2−2;を含む工程であ
る。
【0068】さらに、工程2の別の好ましい態様は、工
程2−1及び工程2−2と共に、工程2−2で製造され
た固体状低分子量ポリマー混合物を乾燥することによ
り、実質的に抽出溶媒を含有しない固体状低分子量ポリ
マー混合物を製造する乾燥工程2−3を更に含む工程で
ある。
【0069】これら、工程2−1(スラリー製造工
程)、工程2−2(固液分離工程)、工程2−3(乾燥
工程)も、連続式、及び/又は、回分式の操作にて実施
することができる。
【0070】工程2で得られる低分子量ポリマー混合物
が『固体状』であるとは、固体状態のみならず、ゴム状
固体(弾性体)状態、粒子が独立の形状を有する状態な
どを包含する意味である。
【0071】1)酸性触媒量 工程2では、工程1で製造された液体状低分子量ポリマ
ー混合物から、低分子量ポリコハク酸イミド重量と酸性
触媒重量WA2の合計重量を基準とした酸性触媒の重量
濃度C2が前記数式(3)で示される固体状低分子量ポ
リマー混合物を製造する。酸性触媒濃度C2が、数式
(3)の範囲よりも少なすぎると、工程3(固相重合工
程)を経て最終的に製造されるポリコハク酸イミドの分
子量が小さくなる。逆に、酸性触媒濃度C2が、数式
(3)の範囲を超え、過剰量の酸性触媒が残存すると、
後工程(例えば工程3)において固体状態を維持できな
くなる場合がある。
【0072】本発明では低分子量ポリコハク酸イミド重
量と酸性触媒重量WA2の合計重量を基準とした酸性触
媒の重量濃度C2が、さらに下記数式(3−1)で示さ
れる範囲であることが好ましく、下記数式(3−2)で
示される範囲であることがより好ましく、下記数式(3
−3)で示される範囲であることが特に好ましい。
【0073】 9[重量%] ≦ C2 ≦ 53[重量%] (3−1) 23[重量%] ≦ C2 ≦ 50[重量%] (3−2) 33[重量%] ≦ C2 ≦ 48[重量%] (3−3)。
【0074】2)工程2−1(スラリー製造工程) 工程2−1(スラリー製造工程)は、工程1で製造され
た液体状低分子量ポリマー混合物から、酸性触媒の少な
くとも一部を抽出溶媒を用いて抽出する工程である。
【0075】この工程2−1では、低分子量ポリコハク
酸イミドを実質的に溶解せず、かつ、酸性触媒を少なく
とも一部溶解する機能を有する溶媒を使用する。例え
ば、有機溶剤、有機溶剤と水及び/又は酸性触媒との混
合物、水、水および酸性触媒との混合物のうち少なくと
も一つを使用することができる。抽出溶媒は、主に、酸
性触媒に対する抽出能力、抽出を行う際の温度及び圧力
条件、溶媒自体の安定性を考慮して選択すればよい。
【0076】抽出溶媒の抽出能力の目安としては、比誘
電率εr値が挙げられる。本発明では、25℃での比誘
電率が、好ましくは2以上、より好ましくは10以上、
特に好ましくは15以上、最も好ましくは19以上であ
る抽出溶媒を使用する。
【0077】抽出溶媒に用いる有機溶剤の具体例として
は、炭素原子数1〜20のアルコール類、炭素原子数3
〜20のケトン類、炭素原子数3〜20のエーテル類、
炭素原子数3〜20の酢酸エステル類が挙げられる。さ
らに具体的には、メタノール、エタノール、イソプロピ
ルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、i−
ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1−ペンタ
ノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、イソア
ミルアルコール、4−メチル−2−ペンタノール、1−
ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、
シクロヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノ
ール、1−オクタノール等のアルコール類;アセトン、
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘ
キサノン、3−ヘキサノン、2−ペンタノン、3−ペン
タノン等のケトン類;ジイソプロピルエーテル等のエー
テル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸
ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル等の酢酸エステル
類;等が挙げられる。これらのうち、好ましい有機溶剤
は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコー
ル、1−ブタノール、2−ブタノール、i−ブチルアル
コール、t−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2
−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノ
ール、1−オクタノール、アセトン、メチルイソブチル
ケトン、ジイソプロピルエーテル、酢酸ブチルである。
より好ましい有機溶剤は、メタノール、エタノール、イ
ソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノー
ル、i−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、1
−ペンタノール、2−ペンタノール、アセトン、ジイソ
プロピルエーテルである。特に好ましい有機溶剤は、メ
タノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、
2−ブタノール、i−ブチルアルコール、アセトン、ジ
イソプロピルエーテルである。最も好ましい有機溶剤
は、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトンで
ある。
【0078】抽出溶媒として、水と共沸混合物を形成す
る有機溶剤を使用する場合は、その共沸組成の水を含有
した混合物を用いてもよい。
【0079】また、抽出を行う温度および圧力条件下で
飽和溶解度分の水を含有する有機溶剤混合物を用いるこ
ともでき、逆に、抽出を行う温度および圧力条件下で飽
和溶解度分の有機溶剤を含有する水混合物を用いること
もできる。さらに、水と完全に混合する有機溶剤の場合
には、任意の割合で水と有機溶剤を混合して用いること
もできる。また抽出溶媒中には、酸性触媒が含有されて
いてもよい。その酸性触媒の含有量は、ポリマー中の酸
性触媒の残存量が前記の範囲に調整できるよう、抽出溶
媒の抽出能力をあまり低下させない量にすればよい。抽
出溶媒中の酸性触媒量は、一般的には90重量%以下、
好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは40重量
%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましく
は10重量%以下である。抽出溶媒中の酸性触媒濃度が
高すぎると、固体状ポリマー混合物製造工程で、前記の
酸性触媒重量濃度の範囲に設定することが困難となる。
【0080】工程2−1において、このような抽出溶媒
を用い、液体状低分子量ポリマー混合物に対して酸性触
媒の適度な分離を行なうことで、混合物中で不連続に相
が変化し、固体状低分子量ポリマー混合物相を含むスラ
リーが得られる。
【0081】工程2−1で用いる装置としては、例え
ば、撹拌槽、固定床型抽出器、移動床型抽出器、ロトセ
ル抽出機等が挙げられる。また、『改訂六版 化学工学
便覧』(編者:社団法人 化学工学会、発行所:丸善株
式会社、1999年)の『12抽出・液液反応』(63
7〜688頁)、『7 攪拌』(421〜454頁)、
『6 伝熱・蒸発』(343〜420頁)に記載されて
いる装置及び方法を包含する。
【0082】工程2−1の具体的な操作方法例として
は、前記の抽出溶媒を攪拌槽に仕込み、攪拌下、液体状
低分子量ポリマー混合物を導入する方法、あるいは、液
体状低分子量ポリマー混合物を攪拌槽に仕込み、攪拌
下、抽出溶媒を導入する方法が挙げられる。
【0083】工程2−1で行われる抽出操作は、1段あ
るいは多段抽出で実施する。多段抽出では抽出溶媒を向
流式あるいは並流式で使用するが、抽出溶媒の使用量が
抑えられる点で、特に向流式が好ましい。多段抽出操作
においては酸性触媒を含有する抽出溶媒を、少なくとも
一部の段において使用してもよい。
【0084】抽出溶媒の使用量は、本工程で製造される
固体状低分子量ポリマー混合物中の酸性触媒濃度を決定
する。固体状低分子量ポリマー混合物中の酸性触媒濃度
は、数式(3)の範囲内で設定する。適度な酸性触媒濃
度に調整することで、固相重合工程にて固体状を維持
し、かつ、目的とする重量平均分子量を有するポリコハ
ク酸イミドを製造することができる。より具体的には、
液体状低分子量ポリマー混合物中に含有される酸性触媒
量、及び、抽出溶媒中に含有される酸性触媒量の合計量
に対する、有機溶剤、及び/又は、水の使用量により、
所望の値に調整することができる。
【0085】抽出溶媒の使用量は、通常、前記の酸性触
媒合計重量1重量部当たり、好ましくは0.1〜100
重量部、より好ましくは0.3〜50重量部、特に好ま
しくは0.5〜20重量部、最も好ましくは1〜10重
量部である。抽出溶媒を過剰に用いると、抽出液中の酸
性触媒濃度が低くなるので、抽出後、酸性触媒と抽出溶
媒を分離する際の効率が悪くなる。一方、抽出溶媒が少
な過ぎると、抽出液中の酸性触媒濃度が増加するので、
固体状低分子量ポリマー混合物に残存する酸性触媒の濃
度が増大する。抽出溶媒の使用量をより少なくし、効率
良く抽出操作を行うには、多段向流型の抽出操作が好ま
しい。また、多段抽出を行う場合には、各段の間で、固
体状低分子量ポリマー混合物と、抽出液とを可能な限り
分離した後、次の段の操作を行うことが好ましい。具体
的には、固体状低分子量ポリマー混合物100重量部当
たりに含有される抽出液が、一般的には50重量部以
下、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重
量部以下、特に好ましくは5重量部以下、最も好ましく
は1重量部以下となるまで分離を行う。
【0086】抽出液と固体状低分子量ポリマー混合物と
の分離は、具体的には、濾過機、遠心分離機、沈降分離
装置、浮上分離装置あるいはそれらを組み合わせた工程
により実施できる。なお、固体状低分子量ポリマー混合
物と抽出液を分離した後、さらに、同じ種類あるいは異
なる種類の抽出溶媒を用いて、固体状低分子量ポリマー
混合物に含まれる抽出液の置換洗浄を行ってもよい。置
換洗浄操作1回当たりに用いる抽出溶媒量は、固体状低
分子量ポリマー混合物1重量部当たり、通常、好ましく
は0.01〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重
量部、特に好ましくは0.1〜2重量部である。
【0087】固体状低分子量ポリマー混合物を製造する
際の温度は、5〜300℃が好ましい。この温度が5℃
未満であると、固体状低分子量ポリマー混合物の酸性触
媒残存濃度が高くなる。一方、300℃を超えると、固
体状低分子量ポリマー混合物の一部が変性し、分子量が
低下し、場合によっては着色し、ポリマーの品質低下を
招く。この温度は、通常、10〜200℃が好ましく、
15〜150℃がより好ましく、20〜100℃が特に
好ましい。
【0088】工程2−1での圧力は特に限定されない。
好ましくは、工程2−1での圧力は、使用する抽出溶媒
の物性で決定される。例えば、抽出操作を行う温度が、
抽出溶媒の臨界温度より低い場合は、少なくとも一部に
液相が存在する圧力とすることが好ましい。例えば、窒
素、二酸化炭素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で抽
出を行う場合は、そのガスにより、抽出温度での抽出溶
媒の飽和蒸気圧以上に加圧するとよい。抽出操作を行う
温度が、抽出溶媒の臨界温度より高い場合は、酸性触媒
の少なくとも一部が抽出溶媒に溶解する圧力とすること
が好ましい。
【0089】多段抽出を行う場合には、各段における温
度及び/又は圧力を、前記の範囲内で異なる値に設定し
てもよい。
【0090】工程2−1での抽出時間は、一般的には
0.5秒〜12時間、好ましくは1秒〜5時間、より好
ましくは3秒〜3時間、特に好ましくは5秒〜2時間、
最も好ましくは10秒〜60分である。ここで、抽出時
間とは、抽出を行う温度下で、ポリマーと抽出溶媒及び
/又は抽出液が接触している時間とする。抽出に長時間
を要すると、大型の装置が必要になり、装置設計が困難
である。一方、抽出時間が短すぎると、工程2−1によ
る酸性触媒濃度の調整が十分に実施できない虞がある。
【0091】3)工程2−2(固液分離工程) 工程2−2における分離操作としては、先に述べた多段
抽出の各段の間で行う分離操作と同様な方法が挙げられ
る。すなわち、具体的には、濾過機、遠心分離機、沈降
分離装置、浮上分離装置あるいはそれらを組み合わせた
工程により分離操作を実施できる。
【0092】4)工程2−3(乾燥工程) 工程2−2(固液分離工程)で得られた固体状低分子量
ポリマー混合物については、さらに乾燥操作を行っても
構わない。この工程2−3(乾燥工程)では、固体状低
分子量ポリマー混合物に含有される抽出溶媒を乾燥する
ことにより、実質的に溶媒を含有しない固体状低分子量
ポリマー混合物を製造することができる。
【0093】乾燥操作は、真空系、常圧系、加圧系のう
ち少なくとも1つ以上の圧力条件下において実施するこ
とができる。具体的には、例えば、熱風移送型乾燥器、
材料攪拌型乾燥器(流動層乾燥機等)、材料搬送及び静
置型乾燥器、円筒乾燥器、赤外線乾燥器、マイクロ波乾
燥器、過熱蒸気乾燥器からなる群より選択される、少な
くとも一つの装置を用いて、連続式又は回分式の乾燥操
作を行うことができる。
【0094】また、工程2−3に用いられる装置及び方
法としては、『改訂六版 化学工学便覧』(編者:社団
法人 化学工学会、発行所:丸善株式会社、1999
年)の『14 調湿・水冷却・乾燥』(735〜788
頁)、『7 攪拌』(421〜454頁)、『6 伝熱
・蒸発』(343〜420頁)に記載されている装置及
び方法を包含する。
【0095】乾燥操作は、固体状低分子量ポリマー混合
物の着色や変性を防止するため、通常、系内の酸素濃度
が低減された条件下、又は、酸素濃度が0%である条件
下で実施することが好ましく、前記の不活性ガス中で実
施することが好ましい。
【0096】乾燥操作を行う際の、固体状低分子量ポリ
マー混合物の温度は、5〜300℃となるように乾燥操
作を行なうことが好ましい。温度が5℃未満であると、
固体状低分子量ポリマー混合物の乾燥に長時間を要す
る。一方、300℃を超えると、抽出溶媒を含有してい
ることによって、固体状低分子量ポリマー混合物の一部
が変性し、分子量が低下し、場合によっては着色し、ポ
リマーの品質低下を招く。この温度は、10〜200℃
が好ましく、20〜150℃がより好ましく、30〜1
20℃が特に好ましい。
【0097】5)固体状低分子量ポリマー混合物の重量
平均分子量 工程2では、前記数式(5)で示される範囲の重量平均
分子量Mw2を有する固体状低分子量ポリマー混合物を
製造する。工程2を経て得られる固体状低分子量ポリマ
ー混合物の重量平均分子量Mw2は、液体状低分子量ポ
リマー混合物の重量平均分子量Mw1から、大幅な低下
が生じないように実施されることが好ましく、かつ、工
程3(固相重合工程)にて溶融(液化)が生じない重量
平均分子量に設定されることが好ましい。
【0098】本発明では、工程2で製造する固体状低分
子量ポリマー混合物中のポリコハク酸イミドの重量平均
分子量Mw2が、さらに下記数式(5−1)で示される
範囲であることが好ましく、下記数式(5−2)で示さ
れる範囲であることがより好ましく、下記数式(5−
3)で示される範囲であることが特に好ましい。 1.5×104 ≦ Mw2 ≦ 1.2×105 (5−1) 2.0×104 ≦ Mw2 ≦ 9.0×104 (5−2) 2.5×104 ≦ Mw2 ≦ 7.0×104 (5−3)。
【0099】7) 粒子サイズ 工程2において、粒子サイズを把握する方法としては、
例えば、標準ふるいを用いた方法がある。標準ふるい
を、例えば、機械式振とう機とともに使用し、乾式又は
湿式でふるい分けを行い、粒径分布の測定や、最大粒子
直径の規定を行なうことができる。
【0100】粒子サイズを把握する他の方法としては、
レーザー回折・散乱法による測定方法がある。この方法
では、通常、測定対象物中に含有される成分に対しての
貧溶媒中で、粒子を分散させ、レーザー回折・散乱法に
より粒径分布を測定することができる。具体的な装置と
しては、例えば、リーズ&ノースラップ社製・粒度分析
測定装置(モデル;9320−X100)が挙げられ
る。この装置では、粒子体積Vi、粒子径diを用い、
下記数式(15)で定義される、体積平均直径を測定す
ることができる。 体積平均直径 = Σ(Vi×di) / Σ(Vi) (15)。
【0101】また、粒子が球形であると仮定し、下記数
式(16)で定義される、個数平均直径を測定すること
もできる。 個数平均直径=(Σ(Vi)/di2)/(Σ(Vi)/di3) (16)。
【0102】工程2では、液体状低分子量ポリマー混合
物から、最大粒子直径が、一般的には10mm以下、好
ましくは3mm以下、より好ましくは1mm以下、特に
好ましくは700μm以下、最も好ましくは400μm
以下、を有する粒子が得られる。
【0103】[8]工程3(固相重合工程) 工程3(固相重合工程)は、連続式、及び/又は、回分
式の操作にて実施することができる。この工程3は、工
程2で製造された固体状低分子量ポリマー混合物を、1
20〜350℃で固相重合させて、下記数式(6)、
(7)及び(8)を同時に満たす重量平均分子量Mw3
を有する高分子量ポリコハク酸イミドと酸性触媒を含有
する、固体状高分子量ポリマー混合物を製造する固相重
合工程であれば、特に限定されない。 4.0×104 ≦ Mw3 ≦ 1.0×106 (6) Mw1 < Mw3 (7) Mw2 < Mw3 (8)。
【0104】本発明では、工程2で得た固体状低分子量
ポリマー混合物が抽出溶媒等を含有した状態である場合
には、前記の工程2−3(乾燥操作)も兼ねて工程3
(固相重合工程)を実施しても構わない。本発明では、
前記所定範囲の重量平均分子量、酸性触媒濃度に設定さ
れた固体状低分子量ポリマー混合物を固相重合すること
で、固相重合の間に、溶融による液状化、融着による塊
状固化等を生じることなく、通常、外観上(例えば、粒
子サイズ等)、固体状低分子量ポリマー混合物とほとん
ど変化のないまま、固体状高分子量ポリマー混合物を製
造することができる。
【0105】1)固相重合工程の操作 工程3では、固体状低分子量ポリマー混合物製造工程で
得られた固体状低分子量ポリマー混合物を加熱し、固体
状を維持したままで重合を行う。
【0106】固相重合操作は、生成物の着色や変性を防
止するため、通常、系内の酸素濃度が低減された条件
下、又は、酸素濃度が0%である条件下で実施すること
が好ましく、前記の不活性ガス中で実施することが好ま
しい。
【0107】固相重合操作は、反応系に、不活性ガスを
連続的に供給して実施することが好ましい。不活性ガス
は、固体状低分子量ポリマー混合物と、向流式あるいは
並流式で接触させて使用する。不活性ガスを加熱用媒体
として用い、直接、反応物と接触させて加熱を行うこと
もできる。
【0108】固相重合を行う温度は、一般的には120
〜350℃、好ましくは140〜320℃、より好まし
くは160〜300℃、特に好ましくは170〜280
℃、最も好ましくは180〜260℃とする。温度が低
すぎると、通常、得られるポリコハク酸イミドの重量平
均分子量は低くなる。逆に、温度が高すぎると、通常、
ポリマーが着色、あるいは変性し、場合によっては分解
する。固相重合は、前記不活性ガス中において実施す
る。本発明において、圧力は、真空系、常圧系、加圧系
の何れでも構わない。圧力は、好ましくは0.0000
01〜50MPa、より好ましくは0.00001〜1
0MPa、さらに好ましくは0.0001〜5MPaの
範囲とする。圧力が高すぎると、高耐圧の反応器が必要
となる。一方、圧力が低すぎると、高真空に対応する装
置の設計が困難になる。
【0109】反応時間は、温度・圧力等の反応条件や、
装置条件等によって変わるが、一般に、高温下ほど短い
反応時間となる。反応時間は、好ましくは1秒〜50時
間、より好ましくは1分〜20時間、特に好ましくは1
0分〜8時間、最も好ましくは30分〜5時間とする。
反応時間が短すぎると、通常、ポリコハク酸イミドは十
分に高分子量化していないことがある。逆に、反応時間
が長すぎると、通常、ポリコハク酸イミドの着色や変性
が経時的に顕著となる。
【0110】1−1)真空系の固相重合操作 真空系で固相重合を行う場合、反応系の圧力は、実質的
に固相重合反応が進行し、目的とする重量平均分子量を
有するポリコハク酸イミドが得られれば、特に制限され
ない。
【0111】真空系の固相重合では、反応系の圧力は、
重合時間や、固相重合により到達する重量平均分子量
(Mw)等を考慮して設定される。より具体的には、圧
力は、前記の圧力範囲内において、0.1MPa未満の
圧力が選択される。
【0112】1−2)常圧系の固相重合操作 常圧系の固相重合操作とは、具体的には、前記の圧力範
囲から選択される、0.1MPa近傍(より具体的に
は、0.01〜1.0MPa)の圧力下で実施する操作で
ある。
【0113】常圧系の固相重合操作は、不活性ガスを流
通させて実施する。不活性ガスの使用量は、単位時間、
固体状低分子量ポリマー混合物の重量当たりの流量[N
l/{(時間)・(g−固体状低分子量ポリマー混合
物)}]として、一般的には0.0001〜100、好
ましくは0.001〜60、より好ましくは0.01〜4
0、特に好ましくは0.05〜30、最も好ましくは0.
5〜20の範囲とする。ここで、Nlは、標準状態にお
けるガスの体積[リットル]とする。流量が小さすぎる
と、通常、得られるポリコハク酸イミドの重量平均分子
量は低くなる。逆に、流量が大きすぎると、通常、固体
状低分子量ポリマー混合物を取り扱う操作が困難にな
る。
【0114】一方で、反応装置内での不活性ガスの線速
[cm/sec]は、一般的には0.01〜1000、
好ましくは0.05〜500、より好ましくは0.1〜1
00、特に好ましくは0.3〜60、最も好ましくは0.
5〜30の範囲とする。線速が小さすぎると、通常、得
られるポリコハク酸イミドの重量平均分子量は低くな
る。逆に、線速が大きすぎると、通常、固体状低分子量
ポリマー混合物を取り扱う操作が困難になる。
【0115】1−3)加圧系の固相重合操作 加圧系で固相重合を行う場合、反応系の圧力は、実質的
に固相重合反応が進行し、目的とする重量平均分子量を
有するポリコハク酸イミドが得られれば、特に制限され
ない。
【0116】加圧系の固相重合では、反応系の圧力は、
重合に要する時間や、重縮合により生成した水を除去す
る効率等を考慮して決定する。より具体的には、前記の
圧力範囲から選択される、0.1MPaより高い圧力と
する。
【0117】2)粒子サイズ 工程2(固体状低分子量ポリマー混合物製造工程)と工
程3(固相重合工程)の間で、及び/又は、工程3(固
相重合工程)の途中段階で、必要に応じ、固体状低分子
量ポリマー混合物、及び/又は、固体状高分子量ポリマ
ー混合物に対して、粉砕、分級のうち少なくとも1つの
機能を有する装置を用いて、微粉状反応混合物を製造
し、固相重合を実施しても構わない。
【0118】本発明による微粉状反応混合物の製造は、
製造される固体状高分子量ポリマー混合物に含有され
る、ポリコハク酸イミドの重量平均分子量の増大に寄与
することがある。また、本発明による微粉状反応混合物
の製造は、特に、常圧系、及び、加圧系の固相重合によ
る固体状高分子量ポリマー混合物の重量平均分子量の増
大に寄与することがある。
【0119】本発明では、必要に応じ、前記の体積平均
直径が、好ましくは1〜500μm、より好ましくは5
〜300μm、特に好ましくは10〜200μm、最も
好ましくは30〜100μmの範囲内である微粉状反応
混合物を製造してもよい。
【0120】本発明では、もう一つの条件として、必要
に応じ、前記の個数平均直径が、好ましくは0.01〜
500μm、より好ましくは0.1〜200μm、特に
好ましくは0.5〜100μm、最も好ましくは1〜5
0μmの範囲内である微粉状反応混合物を製造してもよ
い。
【0121】体積平均直径及び/又は個数平均直径が小
さすぎる場合には、通常、微粉体を取り扱う操作が困難
になる。逆に、体積平均直径及び/又は個数平均直径が
大きすぎる場合には、通常、固相重合工程後に得られる
ポリコハク酸イミドの分子量分布が大きくなることがあ
る。
【0122】本発明では、必要に応じ、前記範囲の体積
平均直径及び/又は個数平均直径を有する微粉状反応混
合物を製造するために、粉砕操作及び/又は分級操作を
実施してもよい。
【0123】粉砕は、乾式及び/又は湿式の粉砕装置を
用いて、連続式あるいは回分式操作で行うことができ
る。分級は、乾式及び/又は湿式の分級装置を用いて、
連続式あるいは回分式操作で行うことができる。また、
粉砕機構と分級機構を併せ持った装置を用いてもよい。
【0124】なお、微粉状反応混合物の体積平均直径及
び/又は個数平均直径が、前記範囲より小さい場合に
は、自足造粒系及び/又は強制造粒系の造粒操作を行っ
て、前記範囲内となるように調整しても構わない。
【0125】3)反応装置 工程3は、連続式又は回分式操作で実施することができ
る。固相重合工程は、固相重合を実施する反応条件(温
度・圧力条件等)により、適切な反応装置を選択するこ
とができる。具体的には、例えば、熱風移送型乾燥器、
材料攪拌型乾燥器(流動層乾燥機等)、材料搬送及び静
置型乾燥器、円筒乾燥器、赤外線乾燥器、マイクロ波乾
燥器、及び、過熱蒸気乾燥器からなる群より選択される
少なくとも一つの装置を用いて、連続式又は回分式の乾
燥操作を行うことができる。
【0126】また、工程3に用いられる装置及び方法と
しては、『改訂六版 化学工学便覧』(編者:社団法人
化学工学会、発行所:丸善株式会社、1999年)の
『14 調湿・水冷却・乾燥』(735〜788頁)、
『7 攪拌』(421〜454頁)、『6 伝熱・蒸発』
(343〜420頁)に記載されている装置及び方法を
用いてもよい。
【0127】また、工程3は、流動層反応器、移動層反
応器、固定層反応器、撹拌乾燥機型反応機等から選択さ
れる少なくとも一つの装置を用いて、連続式あるいは回
分式操作で実施することもできる。
【0128】工程3では、固体状低分子量ポリマー混合
物を、直接、及び/又は、間接的に加熱用媒体と接触さ
せて実施することができる。
【0129】4)重量平均分子量 工程3(固相重合工程)では、前記諸条件を適宜選択す
ることで、前記数式(6)〜(8)を同時に満たす重量
平均分子量Mw3を有する高分子量ポリコハク酸イミド
を製造する。本発明では、この高分子量ポリコハク酸イ
ミドの重量平均分子量Mw3が、さらに下記数式(6−
1)で示される範囲であることが好ましく、下記数式
(6−2)で示される範囲であることがより好ましく、
下記数式(6−3)で示される範囲であることが特に好
ましい。 6.0×104 ≦ Mw3 ≦ 1.0×106 (6−1) 8.0×104 ≦ Mw3 ≦ 1.0×106 (6−2) 1.0×105 ≦ Mw3 ≦ 1.0×106 (6−3)。
【0130】また、下限値と上限値について別々に述べ
ると、Mw3の下限値を、4.0×104以上、好ましく
は6.0×104以上、より好ましくは8.0×104
上、特に好ましくは1.0×105以上、最も好ましくは
1.2×105以上とすることで、品質、及び/又は、性
能の良好な誘導体(例えば、吸水性ポリマー、ポリアス
パラギン酸塩、等)を製造することができる。一方、M
w3の上限値を、1.0×106以下、好ましくは7.0
×105以下、より好ましくは5.0×105以下、特に
好ましくは3.0×105以下、最も好ましくは2.0×
105以下とすることで、固相重合工程に長い反応時間
を要することなく、固体状高分子量ポリマー混合物の製
造を実施することができる。
【0131】[9]後処理工程 1)固体状高分子量ポリマー混合物の精製操作 固相重合後、ポリコハク酸イミド中に含有される酸性触
媒は、ポリコハク酸イミドに対しての貧溶媒である前記
抽出溶媒を用い、10〜300℃において洗浄操作を実
施し、除去してもよい。酸性触媒を含有した洗浄液は、
必要に応じ精製操作を行った後、又は、精製操作を経る
ことなく、スラリー製造工程での抽出溶媒として使用す
ることもできる。
【0132】また、固相重合後、ポリコハク酸イミド中
に含有される酸性触媒は、ポリコハク酸イミドに対して
の良溶媒[ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチル
スルホキシド等]に一旦溶解後、ポリコハク酸イミドに
対しての貧溶媒[メタノール、イソプロパノール、アセ
トン、水等]で再沈し、濾過を行い、さらに必要があれ
ば貧溶媒でリンスを行って、洗浄、除去してもよい。
【0133】また、固相重合後、ポリコハク酸イミドを
加水分解することで、ポリアスパラギン酸(塩)を製造
することもできる。加水分解操作は、ポリコハク酸イミ
ドから酸性触媒を除去後に行ってもよく、また、酸性触
媒を含有したままの状態で行って、酸性触媒の中和も兼
ねて同時に行ってもよい。
【0134】ポリコハク酸イミド中に含有される酸性触
媒量は、通常、元素分析、蛍光X線分析等の手段で評価
することができる。精製操作は、ポリコハク酸イミド中
に含有される酸性触媒濃度が、一般的には5重量%以
下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重
量%以下、特に好ましくは0.2重量%以下、最も好ま
しくは0.1重量%以下まで低減されるように実施する
ことが好ましい。具体的には、精製操作を繰り返し実施
することにより、あるいは、洗浄操作に用いる溶媒量を
増加させて精製操作を行う。
【0135】2)酸性触媒、及び/又は、抽出溶媒の回
収、リサイクル 固体状低分子量ポリマー混合物製造工程や、前記の固体
状高分子量ポリマー混合物の精製操作からは、酸性触媒
を含有する溶液(抽出液や洗浄液)が回収される。本発
明では、必要に応じ、酸性触媒を含有する溶液から、溶
媒を分離し、再度、酸性触媒、及び/又は、溶媒をポリ
コハク酸イミドの製造に再使用しても構わない。
【0136】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。ただし、本発明は実施例に限定されるものではな
い。また実施例中の各物性等は、次の方法に従い測定し
た。
【0137】1)リン酸濃度 リン酸の重量濃度は、リン(P)元素の、元素分析値を
基にオルトリン酸として評価した。
【0138】2)分子量 反応混合物(液体状低分子量ポリマー混合物、固体状低
分子量ポリマー混合物、固体状高分子量ポリマー混合
物)には酸性触媒が含有されるため、25℃まで冷却し
た後、大過剰の冷メタノール(5℃)中に入れて1時間
攪拌し、濾過を行って固体状ポリマーを回収し、さらに
ガラス製カラムに充填し、メタノール(30℃)を連続
的に流通させ酸性触媒を分離した。次いで、濾過により
固体状のポリマーを回収し、真空乾燥を行った。ポリマ
ー中のリン酸分が100ppm未満であることを確認
後、秤量し、分子量測定用DMF(臭化リチウム0.0
1mol/リットル含有)に溶解、GPC分析を行っ
て、ポリスチレンを標準物質に用い、重量平均分子量及
び数平均分子量を評価した。
【0139】3)粒子サイズ 固体状低分子量ポリマー混合物、及び、固体状高分子量
ポリマー混合物の体積平均直径は、リーズ&ノースラッ
プ社製・粒度分析測定装置(モデル;9320−X10
0)を用いて測定した。
【0140】4)生成物の分析 実施例で得られたポリマーは、1H−NMR、13C−
NMRより、ポリコハク酸イミドであることを確認し
た。
【0141】5)吸水量 実施例中の吸水量は、以下のティーバッグ法にて測定し
た。ティーバッグ法による吸水量の測定は、蒸留水、及
び、生理食塩水を対象として行った。乾燥した吸水性ポ
リマー(粒子直径100〜500μm)0.02gを不
織布製のティーバッグ(80mm×50mm)に入れ、
過剰の対応する溶液中(生理食塩水、又は、蒸留水)に
浸して、吸水性ポリマーを40分膨潤させた後、ティー
バッグを引き上げて10秒間水切りを行い、さらに24
枚重ねのティッシュペーパー上で10秒間水切りを行な
い、膨潤した樹脂を含むティーバッグの重量を測定し
た。その重量から、同様な操作をティーバッグのみで行
った場合のブランク重量と、乾燥時の吸水性樹脂の重量
を減じた値を、吸水性樹脂の重量で除した値、即ち、吸
水性樹脂の単位重量当たり吸水重量(g/g−吸水性樹
脂)を評価した。なお、生理食塩水は、0.9重量%塩
化ナトリウム水溶液である。
【0142】[実施例1] <液体状低分子量ポリマー混合物の製造工程(工程1)
の例>まず500mlフラスコ中に、85重量%リン酸
173.2g(リン酸1.50mol)、L−アスパラギ
ン酸50.0g(0.38mol)を順次仕込み、窒素雰
囲気の常圧下、90℃で20分間攪拌して混合操作を行
い、透明な均一溶液を得た[リン酸、アスパラギン酸の
二成分系でのリン酸濃度:74.7wt%、(リン酸/
アスパラギン酸)モル比=4.0]。
【0143】次いで、圧力を500〜10mmHg
(0.0667〜0.0013MPa)で調整しながら、
180℃まで20分を要して昇温した。180℃まで昇
温後、攪拌を行いながら、10mmHg(0.0013
MPa)下で90分間加熱した。この加熱の間、反応物
は発泡等を生じることなく、溶液状で反応が進行した。
加熱終了後、やや粘性を有し、わずかに茶色味のある透
明な均一溶液として、液体状低分子量ポリマー混合物1
83.4gを得た。
【0144】この液体状低分子量ポリマー混合物の一部
を取り出し、前記の方法に従い、含有されるポリコハク
酸イミドの分子量を評価した。その重量平均分子量は
4.5万、数平均分子量は3.1万であった。
【0145】[実施例2] <固体状低分子量ポリマー混合物の製造工程(工程2)
の例(I)>まず、実施例1(工程1)で得た液体状低
分子量ポリマー混合物のうち一部を取り出し、30℃に
加温した抽出溶媒(メタノール)198g中に、攪拌
下、5分を要して導入した。導入された液体状低分子量
ポリマー混合物は、58.7gであった。
【0146】液体状低分子量ポリマー混合物を導入後、
30℃下、30分間攪拌を継続し、白色の粒子を含有す
るスラリーを得た。スラリーを室温まで冷却後、濾過を
行って、粉状の固体状低分子量ポリマー混合物を回収し
た。さらに50℃にて真空乾燥を行い、乾燥した粉状の
固体状低分子量ポリマー混合物18.8gを得た。
【0147】粉砕操作等を行うことなく、固体状低分子
量ポリマー混合物の体積平均直径を評価した結果、11
0μmであった。元素分析により、この固体状低分子量
ポリマー混合物中には、オルトリン酸に換算して、3
8.5重量%の酸性触媒が含有されていることを確認し
た。これは、(リン酸/ポリコハク酸イミド)=0.6
2モル比に相当する。
【0148】固体状低分子量ポリマー混合物の一部を取
り出し、前記の方法に従い、含有されるポリコハク酸イ
ミドの分子量を評価した。重量平均分子量は4.5万、
数平均分子量は3.1万でであった。
【0149】[実施例3] <固体状低分子量ポリマー混合物の製造工程(工程2)
の例(II)>まず、実施例1(工程1)で得た液体状低
分子量ポリマー混合物のうち一部(60.5g)を取り
出し、30℃に加温したメタノール及びリン酸からなる
抽出溶媒(リン酸濃度:2.5重量%)240gを加
え、5分間攪拌した。
【0150】30℃下、30分間攪拌を継続し、白色の
粒子を含有するスラリーを得た。スラリーを室温まで冷
却後、濾過を行って、粉状の固体状低分子量ポリマー混
合物を回収した。さらに、50℃にて真空乾燥を行い、
乾燥した粉状の固体状低分子量ポリマー混合物19.2
gを得た。
【0151】粉砕操作等を行うことなく、固体状低分子
量ポリマー混合物の体積平均直径を評価した結果、14
1μmであった。元素分析により、この固体状低分子量
ポリマー混合物中には、オルトリン酸に換算して、3
8.1重量%の酸性触媒が含有されていることを確認し
た。これは、(リン酸/ポリコハク酸イミド)=0.6
1モル比に相当する。
【0152】固体状低分子量ポリマー混合物の一部を取
り出し、前記の方法に従い、含有されるポリコハク酸イ
ミドの重量平均分子量を評価した。重量平均分子量は、
4.4万であった。
【0153】[実施例4] <固相重合工程(工程3)の例(I)>まず、円筒型容
器が回転する機構を有した小型乾燥機に、実施例2(工
程2)で得られた固体状低分子量ポリマー混合物のうち
5.8gを、粉砕等を行うことなく、そのまま仕込ん
だ。
【0154】少量の窒素流通下、円筒型容器を回転(1
分間当たり10回転)させながら、220℃、1mmH
g(0.00013MPa)の条件下で、4時間、真空
系の固相重合操作を行った。固相重合の間、反応物は、
融着等を生じることなく固体状を維持したままであっ
た。室温まで冷却後、外観上は仕込み時の固体状低分子
量ポリマー混合物と変化のない粉状の固体状高分子量ポ
リマー混合物5.7gが回収された。
【0155】固体状高分子量ポリマー混合物の一部につ
いて、粉砕操作等を行うことなく、固体状高分子量ポリ
マー混合物の体積平均直径を評価した結果、134μm
であった。また、元素分析により、この固体状高分子量
ポリマー混合物中には、オルトリン酸に換算して、3
8.8重量%の酸性触媒が含有されていることを確認し
た。
【0156】一方、回収した固体状高分子量ポリマー混
合物のうち4.4gについて、前記の方法に従い酸性触
媒を分離し、含有されるポリコハク酸イミド2.6gを
回収し、分子量を評価した。重量平均分子量は15.4
万、数平均分子量は9.2万でであった。ポリコハク酸
イミドの収率は、原料のアスパラギン酸から算出される
ポリコハク酸イミドの理論量を基準にすると、96%で
あった。
【0157】[実施例5] <固相重合工程(工程3)の例(II)>まず、円筒型容
器が回転する機構を有した小型乾燥機に、実施例3(工
程2)で得られた固体状低分子量ポリマー混合物のうち
6.0gを、粉砕等を行うことなく、そのまま仕込ん
だ。
【0158】少量の窒素流通下、円筒型容器を回転(1
分間当たり10回転)させながら、200℃、1mmH
g(0.00013MPa)の条件下で、8時間、真空
系の固相重合操作を行った。固相重合の間、反応物は、
融着等を生じることなく固体状を維持したままであっ
た。室温まで冷却後、外観上は仕込み時の固体状低分子
量ポリマー混合物と変化のない粉状の固体状高分子量ポ
リマー混合物5.9gが回収された。
【0159】固体状高分子量ポリマー混合物の一部につ
いて、粉砕操作等を行うことなく、固体状高分子量ポリ
マー混合物の体積平均直径を評価した結果、167μm
であった。また、元素分析により、この固体状高分子量
ポリマー混合物中には、オルトリン酸に換算して、3
8.5重量%の酸性触媒が含有されていることを確認し
た。
【0160】回収した固体状高分子量ポリマー混合物の
うち4.5gについて、前記の方法に従い酸性触媒を分
離し、含有されるポリコハク酸イミド2.7gを回収
し、重量平均分子量を評価した。重量平均分子量は、1
6.2万であった。
【0161】ポリコハク酸イミドの収率は、原料のアス
パラギン酸から算出されるポリコハク酸イミドの理論量
を基準にすると、96%であった。
【0162】[実施例6] <固相重合工程(工程3)の例(III)>まず、実施例
3(工程2)で得られた固体状低分子量ポリマー混合物
のうち4.0gを、SUS316製管型反応器(内径1
cm)に仕込み、空気恒温槽中に設置した。反応管出口
側の流路が大気圧下に開放された状態で、流量0.5
[Nl/分]で、窒素を流通させた。恒温槽を昇温し、
220℃下で、4時間、常圧系固定層型の固相重合操作
を行った。
【0163】室温まで冷却後、外観上は仕込み時の固体
状低分子量ポリマー混合物と変化のない、粉状の固体状
高分子量ポリマー混合物を回収した。
【0164】固体状高分子量ポリマー混合物の一部につ
いて、粉砕操作等を行うことなく、固体状高分子量ポリ
マー混合物の体積平均直径を評価した結果、177μm
であった。回収した固体状高分子量ポリマー混合物につ
いて、前記の方法に従い酸性触媒を分離し、含有される
ポリコハク酸イミドを回収し、重量平均分子量を評価し
た。重量平均分子量は、10.0万であった。
【0165】[実施例7] <固相重合工程(工程3)の例(IV)>まず、実施例3
(工程2)で得られた固体状低分子量ポリマー混合物の
一部を乾式粉砕し、体積平均直径が62μmの微粉状の
固体状低分子量ポリマー混合物4.0gを得た。この固
体状低分子量ポリマー混合物をSUS316製管型反応
器(内径1cm)に仕込み、空気恒温槽中に設置した。
反応管出口側の流路が大気圧下に開放された状態で、流
量0.5[Nl/分]で、窒素を流通させた。恒温槽を
昇温し、220℃下で、4時間、常圧系固定層型の固相
重合操作を行った。室温まで冷却後、外観上は仕込み時
の固体状低分子量ポリマー混合物と変化のない、粉状の
固体状高分子量ポリマー混合物を回収した。
【0166】固体状高分子量ポリマー混合物の一部につ
いて、粉砕操作等を行うことなく、固体状高分子量ポリ
マー混合物の体積平均直径を評価した結果、94μmで
あった。回収した固体状高分子量ポリマー混合物につい
て、前記の方法に従い、酸性触媒を分離し、含有される
ポリコハク酸イミドを回収し、重量平均分子量を評価し
た。重量平均分子量は、12.2万であった。
【0167】[比較例1] <ポリコハク酸イミドの製造例(I)>500mlフラ
スコ中に、50重量%リン酸22.1g(リン酸0.11
mol)、L−アスパラギン酸50.0g(0.38mo
l)、を順次仕込み、窒素雰囲気の常圧下、90℃で2
0分間攪拌して混合操作を行った(リン酸、アスパラギ
ン酸の二成分系でのリン酸濃度:18.1重量%、〔リ
ン酸/アスパラギン酸〕モル比=0.3)。
【0168】次いで、圧力を500〜5mmHg(0.
0667〜0.000667MPa)で調整しながら、
200℃まで30分を要して昇温した。200℃まで昇
温後、5mmHg(0.000667MPa)下で加熱
した。加熱の間、反応物は、部分的に高度の粘性を呈
し、また、一部には発泡を生じ、不均一な状態であっ
た。4時間の加熱後、固体状の反応物が攪拌翼やフラス
コに固着し、十分な攪拌を行うことが困難であったため
加熱を止め、反応を中断した。
【0169】室温まで冷却後、反応物を粗粉砕すること
によってフラスコから取り出し、前記の方法に従いポリ
コハク酸イミドの重量平均分子量を評価するための精製
操作を行った。ポリマーを分子量測定用DMFに溶解さ
せようとしたが、不溶分が、6重量%存在した。溶解し
た部分の重量平均分子量は、2.2万であった。
【0170】[比較例2] <ポリコハク酸イミドの製造例(II)>500mlフラ
スコ中に、L−アスパラギン酸50.0g(0.38mo
l)を仕込み、窒素雰囲気の常圧下、200℃まで30
分を要して昇温した。200℃まで昇温後、5mmHg
(0.000667MPa)下、4時間加熱した。加熱
の間、反応物は、粉状のまま変化がなかった。
【0171】室温まで冷却後、反応物をフラスコから取
り出し、ポリマーを分子量測定用DMFに溶解させよう
としたが、不溶分が、10重量%存在した。溶解した部
分の重量平均分子量は、0.9万であった。
【0172】[比較例3] <固体状高分子量ポリマー混合物の製造例>180℃下
での加熱時間を5分に変更した以外は、実施例1(工程
1)と同様の操作を繰り返し、重量平均分子量0.7万
のポリコハク酸イミドを含有する液体状低分子量ポリマ
ー混合物を得た。さらに、実施例2(工程2)と同様の
操作を繰り返し、重量平均分子量0.7万のポリコハク
酸イミドを含有する固体状低分子量ポリマー混合物(リ
ン酸濃度40.2重量%)を得た。
【0173】この固体状低分子量ポリマー混合物につい
て、実施例4(工程3)と同様に固相重合を試みたが、
220℃まで昇温する過程で、固体状低分子量ポリマー
混合物は溶融し、液状に変化したため、固相重合操作を
実施できなかった。
【0174】[比較例4] <固体状低分子量ポリマー混合物の製造例(I)>加熱
温度を175℃に変更した以外は、実施例1(工程1)
と同様の操作を繰り返し、重量平均分子量2.9万のポ
リコハク酸イミドを含有する液体状低分子量ポリマー混
合物183.7gを得た。この液体状低分子量ポリマー
混合物のうち一部を取り出し、30℃に加温した抽出溶
媒(メタノール)80g中に、攪拌下、5分を要して導
入した。導入された液体状低分子量ポリマー混合物は、
60.6gであった。
【0175】液体状低分子量ポリマー混合物を導入後、
30℃下、30分間攪拌を継続し、白色の粒子を含有す
るスラリーを得た。スラリーを室温まで冷却後、濾過を
行って、粉状の固体状低分子量ポリマー混合物が回収さ
れた。さらに、50℃にて真空乾燥を行い、乾燥した粉
状の固体状低分子量ポリマー混合物29.9gを得た。
元素分析により、この固体状低分子量ポリマー混合物中
には、オルトリン酸に換算して、60.1重量%の酸性
触媒が含有されていることを確認した。これは、(リン
酸/ポリコハク酸イミド)=1.49モル比に相当す
る。
【0176】固体状低分子量ポリマー混合物の一部を取
り出し、前記の方法に従い、含有されるポリコハク酸イ
ミドの重量平均分子量を評価した。重量平均分子量は、
2.9万であった。
【0177】この固体状低分子量ポリマー混合物につい
て、実施例4(工程3)と同様に固相重合を試みたが、
220℃まで昇温する過程で、固体状低分子量ポリマー
混合物は溶融し、液状に変化したため、固相重合操作を
実施できなかった。
【0178】[比較例5] <固体状低分子量ポリマー混合物の製造例(II)>比較
例4で得た液体状低分子量ポリマー混合物のうち一部を
取り出し、30℃に加温した抽出溶媒(メタノール)3
60g中に、攪拌下、5分を要して導入した。導入され
た液体状低分子量ポリマー混合物は、44.0gであっ
た。
【0179】液体状低分子量ポリマー混合物を導入後、
30℃下、30分間攪拌を継続し、白色の粒子を含有す
るスラリーを得た。スラリーを室温まで冷却後、濾過を
行い、大過剰のメタノールでリンスを行った後、粉状の
固体状低分子量ポリマー混合物が回収された。さらに、
50℃にて真空乾燥を行い、乾燥した粉状の固体状低分
子量ポリマー混合物9.0gを得た。元素分析により、
この固体状低分子量ポリマー混合物中には、オルトリン
酸に換算して、3.9重量%の酸性触媒が含有されてい
ることを確認した。これは、(リン酸/ポリコハク酸イ
ミド)=0.04モル比に相当する。
【0180】固体状低分子量ポリマー混合物の一部を取
り出し、前記の方法に従い、含有されるポリコハク酸イ
ミドの重量平均分子量を評価した。重量平均分子量は、
3.0万であった。
【0181】この固体状低分子量ポリマー混合物につい
て、実施例4(工程3)と同様に固相重合を実施した
が、得られたポリコハク酸イミドの重量平均分子量は
3.2万であった。
【0182】[実施例8] <固相重合工程(工程3)の例(V)>まず、円筒型容
器が回転する機構を有した小型乾燥機に、実施例2(工
程2)で得られた固体状低分子量ポリマー混合物のうち
10.0gを、粉砕等を行うことなく、そのまま仕込ん
だ。以降、実施例4(工程3)と同様の操作を繰り返
し、粉状の固体状高分子量ポリマー混合物9.9gが回
収された。
【0183】この固体状高分子量ポリマー混合物を、S
US316製抽出器に充填し、高圧用ポンプを用いてメ
タノールを連続的に供給し、150℃、2MPaにて、
リン酸の分離を行った。次いで、固体状のポリマーを回
収し、真空乾燥を行った結果、重量平均分子量14.6
万を有するポリコハク酸イミド6.0gを得た。
【0184】一方、固体状高分子量ポリマー混合物から
分離されたリン酸を含有するメタノール溶液142.6
gが得られた。このメタノール溶液のリン酸濃度は、
2.7重量%であった。
【0185】[実施例9] <固体状低分子量ポリマー混合物の製造工程(工程2)
の例(III)>実施例1(工程1)で得た液体状低分子
量ポリマー混合物のうち一部を取り出し、実施例8で得
たメタノール溶液(リン酸濃度:2.7重量%)115.
5g中に、30℃下、攪拌を行いながら5分を要して導
入した。導入された液体状低分子量ポリマー混合物は、
28.9gであった。
【0186】液体状低分子量ポリマー混合物を導入後、
30℃下、30分間攪拌を継続し、白色の粒子を含有す
るスラリーを得た。スラリーを室温まで冷却後、濾過を
行って、粉状の固体状低分子量ポリマー混合物が回収さ
れた。さらに、0℃にて真空乾燥を行い、乾燥した粉状
の固体状低分子量ポリマー混合物9.2gを得た。
【0187】粉砕操作等を行うことなく、固体状低分子
量ポリマー混合物の体積平均直径を評価した結果、17
1μmであった。
【0188】元素分析により、この固体状低分子量ポリ
マー混合物中には、オルトリン酸に換算して、38.3
重量%の酸性触媒が含有されていることを確認した。こ
れは、(リン酸/ポリコハク酸イミド)=0.61モル
比に相当する。固体状低分子量ポリマー混合物の一部を
取り出し、前記の方法に従い含有されるポリコハク酸イ
ミドの重量平均分子量を評価した。重量平均分子量は、
4.4万であった。
【0189】[実施例10] <固相重合工程(工程3)の例(VI)>円筒型容器が回
転する機構を有した小型乾燥機に、実施例9(工程2)
で得られた固体状低分子量ポリマー混合物のうち6.0
gを、粉砕等を行うことなく、そのまま仕込んだ。少量
の窒素流通下、円筒型容器を回転(1分間当たり10回
転)させながら、230℃、1mmHg(0.0001
3MPa)、の条件下で、3.5時間、真空系の固相重
合操作を行った。固相重合の間、反応物は、融着等を生
じることなく固体状を維持したままであった。
【0190】室温まで冷却後、外観上は仕込み時の固体
状低分子量ポリマー混合物と変化のない粉状の固体状高
分子量ポリマー混合物5.9gが回収された。固体状高
分子量ポリマー混合物の一部について、粉砕操作等を行
うことなく、固体状高分子量ポリマー混合物の体積平均
直径を評価した結果、180μmであった。
【0191】また、元素分析により、この固体状高分子
量ポリマー混合物中には、オルトリン酸に換算して、3
9重量%の酸性触媒が含有されていることを確認した。
回収した固体状高分子量ポリマー混合物のうち4.7g
について、前記の方法に従い酸性触媒を分離し、含有さ
れるポリコハク酸イミド2.8gを回収した。重量平均
分子量は、15.1万であった。
【0192】ポリコハク酸イミドの収率は、原料のアス
パラギン酸から算出されるポリコハク酸イミドの理論量
を基準にすると、96%であった。
【0193】[実施例11] <ポリコハク酸イミドからの吸水性ポリマー製造例>撹
拌装置を備えたフラスコに、DMF8.0gと、実施例
4(工程3)で得たポリコハク酸イミド(重量平均分子
量15.4万)のうち2.0g(0.021モル)とを装
入し、均一なポリマー溶液を得た。
【0194】窒素気流下に、架橋剤溶液1.5g[L−
リジン塩酸塩0.56g(0.0031モル)と蒸留水
0.8gからなる混合溶液を水酸化ナトリウム0.15g
(0.0037モル)で塩酸を中和した液]を、25℃
下、30秒かけて導入した。架橋剤溶液添加から5分後
に、反応マスは架橋物特有のゲル状になり、撹拌を停止
した。架橋物は、25℃下で20時間静置した。次い
で、蒸留水80gとメタノール80gからなる混合液を
ミキサーに装入し、撹拌下に架橋物を裁断した。その
後、25〜30℃で水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナ
トリウム濃度:25重量%)を、pH11.5〜12に
維持されるように添加し、架橋物を加水分解したとこ
ろ、粘性のあるゲル状物となった。加水分解後、7%塩
酸溶液でpH7まで中和し、ゲル状物を大過剰のメタノ
ール中に導入し、固化させた。次いで濾過を行って固体
を回収し、乾燥して、架橋ポリアスパラギン酸3.0g
(収率97%)を得た。ここで得られたポリマーの蒸留
水に対する吸水量は、620[g/g−ポリマー](4
0分後)、生理食塩水に対する吸水量は、50[g/g
−ポリマー](40分後)であった。
【0195】[比較例6] <ポリコハク酸イミドからの吸水性ポリマー製造例>撹
拌装置を備えたフラスコに、DMF8.0gと、比較例
5で得たポリコハク酸イミド(重量平均分子量3.2
万)のうち2.0g(0.021モル)とを装入し、均一
なポリマー溶液を得た。窒素気流下に、架橋剤溶液1.
5g[L−リジン塩酸塩0.56g(0.0031モル)
と蒸留水0.8gからなる混合溶液を水酸化ナトリウム
0.15g(0.0037モル)で塩酸を中和した液]
を、25℃下、30秒かけて導入した。架橋剤溶液添加
から20時間経過しても、反応マスは架橋物特有のゲル
状にはならなかった。次いで、実施例11と同様に加水
分解操作を行ったが、吸水性ポリマーは得られず、水溶
性ポリマーが生成した。
【0196】[実施例12] <高分子量ポリコハク酸イミドの製造例>液体状低分子
量ポリマー混合物を製造する際の反応条件を、150
℃、10mmHg(0.0013MPa)に変更し、1
0時間、加熱を行なったこと以外は、実施例1(工程
1)と同様の操作を繰り返した。加熱終了後、やや粘性
を有し、ごくわずかに黄色味のある透明な均一溶液とし
て、液体状低分子量ポリマー混合物(含有されるポリコ
ハク酸イミドの重量平均分子量:3.8万)を得た。
【0197】この液体状低分子量ポリマー混合物につい
て、実施例2(工程2)と同様の操作を行い、オルトリ
ン酸に換算して、38.2重量%の酸性触媒が含有され
た白色の固体状低分子量ポリマー混合物(含有されるポ
リコハク酸イミドの重量平均分子量:3.8万)を得
た。さらに、この固体状低分子量ポリマー混合物につい
て、実施例4(工程3)と同様の操作を行い、固相重合
による固体状高分子量ポリマー混合物の製造を実施し
た。
【0198】得られた淡黄色のポリコハク酸イミドの重
量平均分子量は、16.0万であった。また、ポリコハ
ク酸イミドの収率は、原料のアスパラギン酸から算出さ
れるポリコハク酸イミドの理論量を基準にすると、98
%であった。
【0199】[実施例1〜12と比較例1〜6の比較・
考察]比較例1では、酸性触媒を18重量%で含有する
反応物に対して反応操作を行ったが、反応状態は不均一
であり、生成したポリコハク酸イミドの分子量は低かっ
た。反応過程において、反応物は、部分的に高度の粘性
を呈し、また、一部には発泡を生じ、不均一な状態であ
った。さらに、反応物の反応容器や攪拌翼への固着が生
じたため、反応操作の継続は極めて困難であった。
【0200】比較例2では、酸性触媒を用いずにアスパ
ラギン酸の重合を試みた。反応物は、粘性を生じること
なく、粉体状のままで加熱されたが、得られたポリコハ
ク酸イミドの分子量は低かった。
【0201】比較例3では、液体状低分子量ポリマー混
合物中に含有されるポリコハク酸イミドの重量平均分子
量が低いため、固体状低分子量ポリマー混合物製造工程
を経て実施された固相重合工程において、固体状低分子
量ポリマー混合物の溶融が生じ、液状に変化したため、
固相重合操作を実施できなかった。
【0202】比較例4では、固体状低分子量ポリマー混
合物中のリン酸濃度が高すぎたため、固相重合工程にお
いて、固体状低分子量ポリマー混合物の溶融が生じ、液
状に変化したため、固相重合操作を実施できなかった。
【0203】比較例5では、固体状低分子量ポリマー混
合物中のリン酸濃度が低すぎたため、固相重合操作は支
障なく実施できたが、得られたポリコハク酸イミドの分
子量は低かった。
【0204】比較例6では、重量平均分子量3.2万を
有するポリコハク酸イミドを用いて、吸水性ポリマーの
製造を試みたが、重量平均分子量が低いため、吸水性ポ
リマーは得られなかった。
【0205】対照的に、実施例1においては、リン酸濃
度を所定の範囲内として液体状低分子量ポリマー混合物
の製造を行った結果、良好な均一溶液として液体状低分
子量ポリマー混合物が得られた。また液体状低分子量ポ
リマー混合物の製造過程においても、高度の粘性相や、
発泡状態を生じることなく、安定した製造が実施でき
た。
【0206】実施例2では、メタノールを抽出溶媒に用
い、リン酸濃度、及び、含有されるポリコハク酸イミド
の重量平均分子量が、所定範囲に調整された固体状低分
子量ポリマー混合物を得た。この固体状低分子量ポリマ
ー混合物について、実施例4において真空系の固相重合
操作を行なった結果、反応過程では、反応物の溶融や融
着を生じることなく、粉体状のままで、高い重量平均分
子量のポリコハク酸イミドを有する固体状高分子量ポリ
マー混合物が得られた。実施例1、2、4より、ポリコ
ハク酸イミドを高収率で製造できることが確認された。
【0207】実施例3では、リン酸を含有するメタノー
ルを抽出溶媒に用いて、リン酸濃度、及び、含有される
ポリコハク酸イミドの重量平均分子量が、所定範囲に調
整された固体状低分子量ポリマー混合物を得た。この固
体状低分子量ポリマー混合物について、実施例5におい
て真空系の固相重合操作を行なった結果、反応過程にお
いて、反応物の溶融や融着を生じることなく、粉体状の
ままで、高い重量平均分子量のポリコハク酸イミドを有
する固体状高分子量ポリマー混合物が得られた。実施例
1、3、5より、ポリコハク酸イミドを高収率で製造で
きることが確認された。
【0208】実施例6及び7では、常圧系の固相重合操
作を実施し、反応過程では、反応物の溶融や融着を生じ
ることなく、粉体状のままで、高い重量平均分子量のポ
リコハク酸イミドを有する固体状高分子量ポリマー混合
物が得られた。粒子サイズをより小さくした実施例7で
は、実施例6よりも、さらに高い重量平均分子量を有す
るポリコハク酸イミドが得られた。
【0209】実施例8〜10では、固体状低分子量ポリ
マー混合物製造工程で用いる抽出溶媒として、固体状高
分子量ポリマー混合物から高い重量平均分子量を有する
ポリコハク酸イミドを分離する際に生じたリン酸含有メ
タノール溶液を再使用し、固体状低分子量ポリマー混合
物製造工程、及び、固相重合工程について検討した結
果、高い重量平均分子量を有するポリコハク酸イミド
が、高収率で得られた。
【0210】実施例11では、本発明の方法により製造
された高い重量平均分子量を有するポリコハク酸イミド
を用いて、吸水性ポリマーの合成を行なった結果、良好
な吸水性を有する吸水性ポリマーを、高収率で得ること
ができた。
【0211】実施例12では、高い重量平均分子量を有
するポリコハク酸イミドが高収率で得られた。
【0212】
【発明の効果】以上の通り、本発明によって、高い重量
平均分子量を有するポリコハク酸イミドを、より簡便な
装置を用いて、例えば常圧系の固相重合により製造でき
る。また、従来の技術による重合操作の過程で生じてい
た、極めて高度の粘性相生成、過度の泡沫形成、及び、
反応物の凝固塊生成等の課題を、各工程での酸性触媒濃
度および重量平均分子量の適度な設定により解決し、連
続かつ大量の製造に好適な、高い重量平均分子量を有す
るポリコハク酸イミドを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の工程の概要、及び、反応時の相状態の
一例を示す図である。
フロントページの続き (72)発明者 小川 伸二 千葉県袖ヶ浦市長浦字拓二号580番32 三 井化学株式会社内 (72)発明者 加藤 敏雄 千葉県袖ヶ浦市長浦字拓二号580番32 三 井化学株式会社内 (72)発明者 助川 誠 千葉県袖ヶ浦市長浦字拓二号580番32 三 井化学株式会社内 (72)発明者 入里 義広 千葉県袖ヶ浦市長浦字拓二号580番32 三 井化学株式会社内

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 工程1として、アスパラギン酸重量と酸
    性触媒重量WA1の合計重量を基準とした酸性触媒の重
    量濃度C1が下記数式(1)で示されるアスパラギン酸
    と酸性触媒を含有する混合物を、80〜350℃で重縮
    合させて、下記数式(2)で示される重量平均分子量M
    w1を有する低分子量ポリコハク酸イミドと酸性触媒を
    含有する液体状低分子量ポリマー混合物を製造する工
    程; 20[重量%] ≦ C1 ≦ 99[重量%] (1) 1.0×104 ≦ Mw1 ≦ 2.0×105 (2) 工程2として、工程1で製造された液体状低分子量ポリ
    マー混合物から、低分子量ポリコハク酸イミド重量と酸
    性触媒重量WA2の合計重量を基準とした酸性触媒の重
    量濃度C2が下記数式(3)で示され、酸性触媒重量W
    A2が下記数式(4)で示され、重量平均分子量Mw2
    が下記数式(5)で示され、かつ下記工程3の反応条件
    において溶融することのない固体状低分子量ポリマー混
    合物を製造する工程;及び、 5[重量%] ≦ C2≦ 55[重量%] (3) WA2 < WA1 (4) 1.0×104 ≦ Mw2 ≦ 2.0×105 (5) 工程3として、工程2で製造された固体状低分子量ポリ
    マー混合物を、120〜350℃で固相重合させて、下
    記数式(6)、(7)及び(8)を同時に満たす重量平
    均分子量Mw3を有する高分子量ポリコハク酸イミドと
    酸性触媒を含有する、固体状高分子量ポリマー混合物を
    製造する固相重合工程; 4.0×104 ≦ Mw3 ≦ 1.0×106 (6) Mw1 < Mw3 (7) Mw2 < Mw3 (8) を含む高分子量ポリコハク酸イミドの製造方法。
  2. 【請求項2】 工程2(固体状低分子量ポリマー混合物
    を製造する工程)が工程2−1として、工程1で製造さ
    れた液体状低分子量ポリマー混合物に、低分子量ポリコ
    ハク酸イミドを実質的に溶解せずかつ酸性触媒を少なく
    とも一部溶解する機能を有する抽出溶媒を加えて、液体
    状低分子量ポリマー混合物に含有される酸性触媒の少な
    くとも一部を抽出溶媒相に移行せしめ、酸性触媒含有量
    が低減された低分子量ポリコハク酸イミドを含有する固
    体状低分子量ポリマー混合物と、抽出された酸性触媒及
    び抽出溶媒を含んでなる抽出溶液とからなるスラリーを
    製造する工程、及び、 工程2−2として、工程2−1で製造されたスラリー
    を、酸性触媒含有量が低減された低分子量ポリコハク酸
    イミドを含有する固体状低分子量ポリマー混合物と、抽
    出された酸性触媒及び抽出溶媒を含んでなる抽出溶液と
    に分離する固液分離工程、 を含む請求項1記載の高分子量ポリコハク酸イミドの製
    造方法。
  3. 【請求項3】 工程2(固体状低分子量ポリマー混合物
    を製造する工程)が工程2−3として、工程2−2で製
    造された固体状低分子量ポリマー混合物を乾燥すること
    により、実質的に抽出溶媒を含有しない固体状低分子量
    ポリマー混合物を製造する乾燥工程を更に含む請求項2
    記載の高分子量ポリコハク酸イミドの製造方法。
  4. 【請求項4】 工程3(固相重合工程)が、 工程2で製造された固体状低分子量ポリマー混合物を乾
    燥する操作を含む請求項1記載の高分子量ポリコハク酸
    イミドの製造方法。
  5. 【請求項5】 工程3(固相重合工程)が、 工程2で製造された固体状低分子量ポリマー混合物に含
    有される抽出溶媒を乾燥する操作を含む請求項1記載の
    高分子量ポリコハク酸イミドの製造方法。
  6. 【請求項6】 工程1(液体状低分子量ポリマー混合
    物を製造する工程)の重縮合反応の少なくとも一部の過
    程が、下記数式(9)で表される圧力P1−1で行われ
    る請求項1記載の高分子量ポリコハク酸イミドの製造方
    法。 0.1[MPa] ≦ P1−1 ≦ 10[MPa] (9)
  7. 【請求項7】 工程1(液体状低分子量ポリマー混合物
    を製造する工程)の重縮合反応の少なくとも一部の過程
    が、下記数式(10)で表される圧力P1−2で行われ
    る請求項1記載の高分子量ポリコハク酸イミドの製造方
    法。 0.00001[MPa] ≦ P1−2 < 0.1[MPa] (10)
  8. 【請求項8】 工程3(固相重合工程)の固相重合反応
    の少なくとも一部の過程が、下記数式(11)で表され
    る圧力P2−1で行われる請求項1記載の高分子量ポリ
    コハク酸イミドの製造方法。 0.1[MPa] ≦ P2−1 ≦ 10[MPa] (11)
  9. 【請求項9】 工程3(固相重合工程)の固相重合反応
    の少なくとも一部の過程が、下記数式(12)で表され
    る圧力P2−2で行われる請求項1記載の高分子量ポリ
    コハク酸イミドの製造方法。 0.00001[MPa] ≦ P2−2 < 0.1[MPa] (12)
  10. 【請求項10】 工程3(固相重合工程)で製造された
    固体状高分子量ポリマー混合物が、固体状高分子量ポリ
    マー重量と酸性触媒重量(WA3)の合計重量を基準と
    した酸性触媒の重量濃度C3が、下記数式(13)で示
    されるものである請求項1記載の高分子量ポリコハク酸
    イミドの製造方法。 5[重量%] ≦ C3 ≦ 55[重量%] (13)
  11. 【請求項11】 工程2−1(スラリー製造工程)で用
    いる抽出溶媒が、有機溶剤及び/又は水を含んでなるも
    のである請求項2記載の高分子量ポリコハク酸イミドの
    製造方法。
  12. 【請求項12】 有機溶剤が、(i)炭素原子数1〜2
    0のアルコール、(ii)炭素原子数3〜20のケトン、
    (iii)炭素原子数3〜20のエーテル、及び(iv)炭
    素原子数3〜20の酢酸エステル、からなる群より選択
    された少なくとも一種の溶剤を含んでなるものである請
    求項11記載の高分子量ポリコハク酸イミドの製造方
    法。
  13. 【請求項13】 有機溶剤が、メタノール、イソプロピ
    ルアルコール、及び、アセトンからなる群より選択され
    た少なくとも一種の有機溶剤を含んでなるものである請
    求項11記載の高分子量ポリコハク酸イミドの製造方
    法。
  14. 【請求項14】 酸性触媒が、リン酸素酸を含むもので
    ある請求項1記載の高分子量ポリコハク酸イミドの製造
    方法。
  15. 【請求項15】 工程3(固相重合工程)の前後におけ
    る、Mw2とMw3の関係が、下記数式(14)で表さ
    れる請求項1記載の高分子量ポリコハク酸イミドの製造
    方法。 Mw3−Mw2≧1.0×104 (14)
  16. 【請求項16】 全工程の少なくとも一部が、不活性雰
    囲気下で行なわれる請求項1に記載の高分子量ポリコハ
    ク酸イミドの製造方法。
  17. 【請求項17】 全工程の少なくとも一部が、連続式に
    行われる請求項1記載の高分子量ポリコハク酸イミドの
    製造方法。
  18. 【請求項18】 請求項1記載の製造方法により得られ
    た高分子量ポリコハク酸イミド。
  19. 【請求項19】 請求項18記載の高分子量ポリコハク
    酸イミドを加水分解して得られた高分子量ポリアスパラ
    ギン酸(塩)。
  20. 【請求項20】 請求項18記載の高分子量ポリコハク
    酸イミドに対し、架橋反応及び加水分解反応を含む操作
    を実施して得られた吸水性ポリマー。
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