JP2000228799A - ステレオ再生用のオーディオ信号の再生音をスピーカ外に音像定位させる方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課 題】 至って簡潔なハードウエア構成によっ
て、左右のスピーカ外での音像定位を可能とするステレ
オ再生用のオーディオ信号の処理，制御を行い、この制
御されたオーディオ信号を再生して左，右のスピーカ外
に再生音の音像を定位させる方法を提供すること。 【解決手段】 ステレオ再生用に適宜媒体に収録された
左右チャンネルのオーディオ信号1L，1Rを再生すると
き、そのオーディオ信号1L，1Rの位相特性を、周波数が
増すごとに周波数特性を変えることなく遅らせることに
より、受聴者の聴覚が有する方向感の要素を強調する処
理を加えてから左右チャンネルのスピーカ7L，7Rを駆動
する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、いわゆるステレオ
再生を目的として作成されたＣＤなどのステレオ再生用
のオーディオソース（記録媒体）に収録されたオーディ
オ信号を左，右のスピーカにより再生するとき、その再
生音の音像が前記スピーカの外側に、具体的には、左右
のスピーカを結ぶ線上から再生音による音像を上，下さ
せたり、遠，近させたり、左，右スピーカの外側に定位
させるための方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、再生用に左，右のスピーカを
設置したステレオ受聴における音像定位の手法として
は、様々な手法が提案され、或は、試みられて来た。

【０００３】一般に人はその両耳によって音を聴くこと
により、聴いた音の音源の位置、つまり、聴者からみた
音源の上，下、左，右、前，後に関する位置を知覚する
といわれている。このため、ステレオ再生において、左
右のスピーカから発される再生音を、あたかも実音源か
らの音のように聴感させるには、所要の伝達関数により
任意に入力した音源のオーディオ信号を実時間の畳み込
み演算処理を施して再生すれば、左，右のスピーカから
再生される音によって音源を知覚上定位させることがで
きる、とされている。

【０００４】上記のステレオ受聴における音像定位方式
は、擬似音源を入力する小型マイクの出力電気情報を示
す式と、イヤホンの出力信号を示す式から、あたかも実
音源がある場所において聴取しているような聴覚上の頭
外音像定位を得るための伝達関数を作り、この伝達関数
により任意の入力音信号を実時間の畳み込み演算処理を
して再生出力することによって、任意の場所において入
力された音源の音をステレオ受聴用の再生音によっても
知覚上で定位させることができるとする考え方に基づい
た方式であるが、この方式はその演算処理のためのソフ
トウエアの量やハードウエアの規模が膨大かつ大がかり
になるという問題がある。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な従来のステレオ受聴における音像定位の手法ではソフ
トウエアの量が膨大になり、また、ハードウエアの規模
も大がかりになるという難点に鑑み、そのような難点の
ない至って簡潔なハードウエア構成によって、左右のス
ピーカ外での音像定位を可能とするステレオ再生用のオ
ーディオ信号の処理，制御を行い、この制御されたオー
ディオ信号を再生して左，右のスピーカ外に再生音の音
像を定位させる方法を提供することを、その課題とする
ものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
を目的としてなされた本発明方法の第一の構成は、ステ
レオ再生用に適宜媒体に収録された左右チャンネルのオ
ーディオ信号を再生するとき、そのオーディオ信号の位
相特性を、周波数が増すごとに周波数特性を変えること
なく遅らせることにより、受聴者の聴覚が有する方向感
の要素を強調する処理を加えてから左右チャンネルのス
ピーカを駆動することを特徴とするものである。

【０００７】本発明において、オーディオ信号の周波数
特性を変えることなく遅らせるオーディオ信号の位相特
性は、周波数の低域から高域に沿って位相遅れを大きく
するｎ次曲線或は折れ線を描くように位相制御する。

【０００８】また、上記課題を解決することができる本
発明方法のより具体的な構成は、ステレオ再生用に適宜
媒体に収録された左右チャンネルのオーディオ信号に付
与されている音量差又は音量差と時間差に加え、上記方
法により位相制御される位相差を加えることを特徴と
し、更に、左，右チャンネルの再生オーディオ信号に位
相差を加えるとき、前記オーディオ信号を低中域と高
域、又は、低域と中高域、若しくは、低域と中域と高域
の周波数帯域に分け、制御する位相差が、低域側から高
域側に沿って二次曲線を描いて大きくなるか、又は、各
帯域の境界近傍において折れ線を描いて位相遅れが生じ
るように位相制御し、この制御されたオーディオ信号に
より左，右両チャンネルのスピーカを駆動することを特
徴とするものである。

【０００９】

【発明の実施の形態】次に本発明方法の実施の形態例に
ついて、図を引用しつつ説明する。従来技術でも、スピ
ーカによる再生音の左，右両耳聴取において音像定位を
得るために様々な手法を講じていた。本発明は、ステレ
オ再生用にＣＤ等の記録媒体に収録されているオーディ
オ信号を再生するとき、制御系のハード，ソフト両面の
構成が膨大でなくても、従来手法に比べ、より高度なレ
ベルでスピーカ外での音像定位を実現できるように、前
記オーディオ信号を処理することを要旨とする。

【００１０】このため本発明では、ＣＤ等の適宜媒体に
収録されているステレオ再生用の左，右チャンネルのオ
ーディオ信号を再生するとき、そのオーディオ信号をこ
こでは一例として左，右チャンネルごと低，中，高各周
波数の３つの帯域に分け、両チャンネルにおける各帯域
のオーディオ信号ごとに、音像をスピーカ外に定位させ
るための要素を制御する処理を施す。この処理の趣旨
は、実際の左右スピーカの前に受聴者が居るという前提
で、例えば、左，右のスピーカの外側からその受聴者の
左，右の両耳に再生音が伝播して来るような聴感を得ら
れるように、ステレオ再生用のオーディオ信号を処理す
ることにある。本発明において、再生するオーディオ信
号の帯域分けは、上記例に限られず、中低域と高域，低
域と中高域，低域と高域、或は、これらを更に細分した
帯域に分けるなど、２つ又は４つ以上の帯域に分けるこ
ともある。

【００１１】人の聴覚特性のうち、耳に入る音量はその
左右の耳に感じる音量差から音像の左右の方向感を得、
同時に耳に入る減衰音や反射音の音量差に基づいて前記
音像の距離感を知覚するとされている。

【００１２】このような人の聴覚特性に着目して受聴者
の前方の左，右に置いた２つのスピーカから出される音
量のバランスによって前記２つのスピーカの間に音源を
定位させるように制御するのが従来公知のいわゆるステ
レオ方式である。

【００１３】しかし、従来のステレオ方式では、例えば
左，右の耳に対して音量差が最大になるように、再生時
にバランスコンロトールしても、再生音は音量を最大に
したスピーカ側から聴えるまでで、そのスピーカの外側
（例えば、左スピーカであれば、それよりさらに左方の
外側）や、スピーカから受聴者までの距離を変えたよう
に聴えるステレオ再生は不可能であった。

【００１４】本発明は、再生時の左，右の耳に入る上記
の音量差をも利用して、左，右のスピーカの外側に音像
を定位させようとするものである。一般に、人がその人
の右側又は左側におかれた音源の音をその人の耳で聴く
とき、右又は左の耳に入る前記音源の音の左，右の耳で
の音量差は、ステレオ収録されたオーディオ信号をステ
レオ再生するときに左，右バランス調整によって作られ
る右側に定位させた音像と、左側に定位させた音像とに
よる音量差よりも小さい。ステレオ録音では、再生時に
最も右、又は、最も左に音像を定位させようとすると
き、右又は左の片側のスピーカからだけ目的の音が再生
されるように収録をするが、前記の目的とする音が左，
右いずれか一方のスピーカから再生されても、受聴者は
その再生音を一方のみの耳で聴取する訳ではない。つま
り、他方の耳にも前記再生音は入る（届く）のである。

【００１５】本発明は、ステレオ収録のとき、左，右チ
ャンネルに音量差を付けて収録し再生時に音像が右側又
は左側に偏って定位されるように収録されているオーデ
ィオ信号について、前記音量差以外の、再生音の音像位
置に作用をする聴覚上の要素を付加して再生をすれば、
スピーカの外側に音像を定位させることができるとの新
たな知見を得て本発明を完成した。なお、ステレオ録音
においては、再生時に受聴者の右方に定位させる音、或
は、受聴者の左方に定位させる音は、録音時にすでにミ
ックスされてしまうため、その再生音が左右の耳に入る
時間差の要素を、スピーカ外へ音像を定位させるための
要素として利用することはできない。

【００１６】本発明は上記の観点から、左，右の耳に入
る音量差に加え、オーディオ信号の周波数に応じて当該
オーディオ信号に位相差を付ける制御を加えて再生する
と、スピーカ外への音像定位に効果的であることを知得
した。

【００１７】即ち、本発明者らは、音が人の耳に届くま
でに、音源が耳から左，右のいずれかの方向に離れるほ
ど、再生音の低域に比べ高域の位相が遅れる傾向にある
ことを、実験を通して知得した。これは人の頭部を音が
回析するとき、高い音（高周波数）ほど頭の平断面形状
により、通過する距離が長くなることによる。

【００１８】本発明では、上記の時間遅れを、オーディ
オ信号に位相差を付ける制御をすることにより、模擬的
に再現してスピーカ外に音像を定位させようとするもの
である。

【００１９】次に、本発明方法の実施の一形態を図１に
より説明する。1L，1Rは、それぞれ左，右チャンネルの
ステレオ再生用に収録されたオーディオ信号で、ＣＤや
磁気テープ，ディスク等の適宜媒体に記録され、記録方
式に応じたピックアップやヘッド等の検出手段（図示せ
ず）により検出されるものである。

【００２０】2L，2Rは、上記の左，右のチャンネルオー
ディオ信号1L，1Rを、各チャンネルごと周波数帯域に応
じた位相制御を行う位相器である。各位相器2L，2Rは、
夫々に入力されるオーディオ信号1L，1Rに、その周波数
帯域に応じて、図２に模式的に示すように位相差を付け
る位相制御を行う。図２においてＡは、周波数が高くな
るにつれて二次曲線的に位相おくれが大きくなるように
位相制御する制御パターンの例、Ｂは各帯域の境界近傍
で周波数が高くなるにつれて位相おくれが大きくなる折
れ線を描くように位相制御する制御パターンの例であ
る。

【００２１】具体的には、例えば1000Hz以下の低域帯域
については、位相遅れを生じさせないか、或は、中，高
域に比べ少し位相進みになる制御を加え、中域帯域につ
いては、周波数が大きくなるに従って位相差が大きくな
る位相遅れの制御を加え、高域帯域については中域より
も更に位相遅れが周波数に従って大きくなる制御を加え
るのである。

【００２２】3L，3Rは、左，右の位相器2L，2Rで帯域ご
と位相差を付けるように位相制御されたオーディオ信号
のうち、その中に入っているそれぞれ反対側のチャンネ
ルの成分についてのみ逆方向の位相制御をかける逆位相
器、4L，4Rは、夫々のチャンネルの信号の混合器（ミキ
サー）で、この混合器4Lと4Rには、夫々に、そのままの
オーディオ信号1Lと1R、位相制御された信号LphとRph、
逆位相器で逆向きの位相制御が加えられたLph′とRph′
が、供給されるように接続されている。

【００２３】この結果、左チャンネルの混合器4Lでは、
位相制御が加えられていないチャンネルのオーディオ信
号1Lと、位相器2Lで帯域ごとに位相制御が加えられた信
号Lphと、右チャンネルの逆位相器3Rで逆方向の位相制
御が加えられた左チャンネル成分Lph′とがミックスさ
れ、また、右チャンネルの混合器4Rでは、位相制御され
ない右チャンネルのオーディオ信号1Rと、位相器2Rで帯
域ごとの位相制御が加えられた信号Rphと、左チャンネ
ルの逆位相器3Lで逆位相の制御が加えられた右チャンネ
ル成分Rph′とが、ミックスされ、それぞれにイコライ
ザー部５に供給される。

【００２４】イコライザー部５を経由した各チャンネル
の位相制御された信号1L′，1R′は、左，右チャンネル
のアンプ6L，6Rによって増幅され左，右のスピーカ7L，
7Rを駆動して、位相制御を加えた各チャンネルのオーデ
ィオ信号1L′，1R′がスピーカ7L，7Rから再生される。

【００２５】本発明では、中，高域にいくに従って位相
差が大きくなるように位相制御が加えられたオーディオ
信号1L′，1R′のスピーカ7L，7Rからの再生音は、前述
のように各帯域ごとに位相差が付加されていることによ
り、定置した左右のスピーカ7L，7Rの外側に音像を定位
することができる。

【００２６】本発明では、上記の位相差の付け方を、位
相器2L，2R、3L，3Rにおいて、夫々独立して可変にして
おくことにより、スピーカ外に定位させようとする音像
の位置を任意にコントロール、つまり、音像を定位させ
る位置をスピーカ外の左，右、上，下、前，後において
任意に変更することが可能になる。即ち、本発明では、
上記の位相制御に併せて左右チャンネルの音量をコント
ロールすることにより、スピーカ外の左右においても制
御される音像定位をスピーカの前後や上下においても制
御することが可能になる。

【００２７】

【発明の効果】本発明は以上の通りであって、従来のス
テレオ再生における音像定位の手法は、モノラル又はス
テレオマイクロフォンから入力されたオーディオ信号を
左，右の耳用に再生してステレオ聴受するとき、頭外音
像定位のために頭部伝達関数を用いた再生信号の制御処
理を行うものであったが、本発明は適宜記録媒体に収録
されたステレオ再生用のオーディオ信号を再生すると
き、そのオーディオ信号の位相特性を、周波数が増すご
とに周波数特性を変えることなく遅らせることにより、
受聴者の聴覚が有する方向感の要素を強調する処理を加
えてから、左，右のスピーカを駆動させるようにしたの
で、音像定位に優れた再生音を得ることが可能であるこ
とは勿論のこと、左，右のスピーカの外側（左右，前
後，上下）において、再生音の音像を定位させることが
できるという、従来のステレオ再生手法では得られなか
った音像定位を実現できる。また、この本発明を実施す
るためのソフトウエア、即ち、ＣＤ等のオーディオソー
スは従来品で足り、制御系のハードウエアも至って簡潔
な構成で済むという利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明方法を実施するための一例の機能ブロッ
ク図。

【図２】位相制御における制御パターンの例を模式的に
示す線図。

【符号の説明】

1L，1R 左，右チャンネルの再生用オーディオ信号 2L，2R 左，右チャンネルの位相器 3L，3R 左，右チャンネルの逆位相器 4L，4R 左，右チャンネルのミキサー ５ イコライザー 1L′，1R′本発明方法による制御処理が施されたオーデ
ィオ信号 6L，6R アンプ 7L，7R 左，右のスピーカ

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ステレオ再生用に適宜媒体に収録された
   左右チャンネルのオーディオ信号を再生するとき、その
   オーディオ信号の位相特性を、周波数が増すごとに周波
   数特性を変えることなく遅らせることにより、受聴者の
   聴覚が有する方向感の要素を強調する処理を加えてから
   左右チャンネルのスピーカを駆動することを特徴とする
   ステレオ再生用のオーディオ信号の再生音をスピーカ外
   に音像定位させる方法。
2. 【請求項２】 オーディオ信号の周波数特性を変えるこ
   となく遅らせるオーディオ信号の位相特性は、周波数の
   低域から高域に沿って位相遅れが大きくなるｎ次曲線或
   は折れ線を描くように位相制御する請求項１のステレオ
   再生用のオーディオ信号の再生音をスピーカ外に音像定
   位させる方法。
3. 【請求項３】 制御する再生音の方向感の要素は、ステ
   レオ再生用に媒体に収録されている左，右チャンネルの
   オーディオ信号に付与されている音量差、又は、音量差
   と時間差に、位相制御による位相差を加える請求項１又
   は２のステレオ再生用のオーディオ信号の再生音をスピ
   ーカ外に音像定位させる方法。
4. 【請求項４】 ステレオ再生用にＣＤ等の媒体に収録さ
   れたオーディオ信号の左，右チャンネルの音量差と時間
   差を、制御する再生音の方向感の要素に利用する請求項
   ３のステレオ再生用のオーディオ信号の再生音をスピー
   カ外に音像定位させる方法。
5. 【請求項５】 位相制御は、再生用オーディオ信号の低
   中域と高域、又は、低域と中高域、若しくは、低域と中
   域と高域における周波数帯域の境界近傍において折れ線
   を描いて遅らせる請求項２〜４のいずれかのステレオ再
   生用のオーディオ信号の再生音をスピーカ外に音像定位
   させる方法。
6. 【請求項６】 中域帯域は、約1000〜4000Hzである請求
   項５の方法。
7. 【請求項７】 低域帯域は、約1000Hz以下の帯域である
   請求項５又は６の方法。
8. 【請求項８】 高域帯域は、約4000Hz以上の帯域である
   請求項５〜７のいずれかの方法。