JP2000226628A - アルミニウム放熱部材およびその製造方法 - Google Patents
アルミニウム放熱部材およびその製造方法Info
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Abstract
アルミニウム合金板を少ない工程で製造し、ひいては放
熱性と強度とを兼ね備えるアルミニウム放熱部材を製造
する。 【解決手段】 放熱部材材料として、Si:0.2〜
0.8wt%、Mg:0.3〜0.9wt%、Fe:0.3
5wt%以下およびCu:0.20wt%以下を含有し、残
部Alおよび不可避不純物からなるAl−Mg−Si系
合金を用いる。また、放熱部材は、前記合金鋳塊を均質
化処理し、熱間粗圧延の任意のパス工程において、パス
前の材料温度を350〜440℃とするとともに、上が
り板厚を10mm以下とし、次いで熱間仕上げ圧延を経て
圧下率を30%以上で冷間圧延した合金板を所要形状に
加工することにより製造する。
Description
気・電子機器に使用される放熱板、ヒートパイプ、熱拡
散板、半導体の放熱板等のアルミニウム放熱部材および
その製造方法に関する。
純なプレート状のものだけでなく、ヒートパイプやヒー
トシンクに加工したもの、熱拡散板と称されているもの
等、放熱あるいは排熱を目的としたものを包括するもの
であり、形状や呼称に限定されない。
U、CD−ROMドライブ、ハードディスクドライブ等
の数多くの発熱デバイスが組込まれており、長時間にわ
たって正常な動作を維持するために、発生した熱を排出
してこれらのデバイスを冷却する必要がある。このた
め、これらの機器には上述のような各種放熱部材が用い
られている。
であり且つ軽量で加工性の良いアルミニウムが用いられ
ることが多く、従来より純アルミニウムやJIS 50
52が用いられている。
ミニウムに比べると熱伝導性が30%以上低いという欠
点がある。一方、熱伝導性の良い純アルミニウムは著し
く強度が低い上に、切削性に劣り切削加工後のバリ取り
が不可欠であり、仕上がり表面の外観も悪いという欠点
がある。従って、純アルミニウムやJIS 5052は
いずれも放熱部材の材料として満足できるものではなか
った。
l−Mg−Si合金が知られており、特開平2−200
750号や特開平1−162754号に導電性部材とし
て用いられるAl−Mg−Si合金が記載されている。
2−200750号に記載のAl−Mg−Si合金は押
出材であり、圧延材に比べると幅広で板厚精度の良い薄
板の製造が困難である。そのため、各種形状の放熱部材
を製作するために、薄板を折曲げ加工や絞り加工する放
熱部材材料には適さない。
Al−Mg−Si合金は、圧延材であり熱伝導性にも優
れているが、薄板に圧延した後に連続焼鈍炉で溶体化−
焼入れ処理する必要があり、製造工程が複雑であるとい
う問題点がある。
優れた熱伝導性と強度と加工性を兼ね備えたアルミニウ
ム合金板を少ない工程で製造し、ひいては放熱性と強度
とを兼ね備えるアルミニウム放熱部材およびその製造方
法の提供を目的とする。
放熱部材は、前記目的を達成するために、Al−Mg−
Si系合金鋳塊を均質化処理し、熱間粗圧延および熱間
仕上げ圧延した後に冷間圧延した合金板を所要形状に加
工して製造された放熱部材であって、前記Al−Mg−
Si系合金は、Si:0.2〜0.8wt%、Mg:0.
3〜0.9wt%、Fe:0.35wt%以下およびCu:
0.20wt%以下を含有し、残部Alおよび不可避不純
物からなることを特徴とするものである。
ス工程において、パス前の材料温度を350〜440℃
とするとともに、上がり板厚を10mm以下とし、前記冷
間圧延の圧下率を30%以上とすることが好ましく、あ
るいはさらに前記合金板の製造工程において、冷間圧延
後に180℃以下で最終焼鈍を行うことが好ましい。
法は、Si:0.2〜0.8wt%、Mg:0.3〜0.
9wt%、Fe:0.35wt%以下およびCu:0.20
wt%以下を含有し、残部Alおよび不可避不純物からな
るAl−Mg−Si系合金鋳塊を均質化処理した後、熱
間粗圧延の任意のパス工程において、パス前の材料温度
を350〜440℃とするとともに上がり板厚を10mm
以下に圧延し、次いで熱間仕上げ圧延し、さらに30%
以上の圧下率で冷間圧延して合金板を製造し、前記合金
板を所要形状に加工することを特徴とする。
なるAl−Mg−Si合金組成について、各元素の添加
意義および含有量の限定理由は次のとおりである。
である。Mg含有量が0.3wt%未満、あるいはSi含
有量が0.2wt%未満では十分な強度を得ることができ
ない。一方、Mg含有量が0.9wt%、Si含有量が
0.8wt%を超えると、熱間圧延での圧延負荷が高くな
って生産性が低下するとともに、耳割れが大きくなって
途中工程でトリミングが必要となる。Mg含有量の好ま
しい下限値は0.35wt%、上限値は0.55wt%であ
る。また、Si含有量の好ましい下限値は0.32wt
%、上限値は0.60wt%である。
性が低下して合金板としての実用性に欠けるため、含有
量をFe:0.35wt%以下、Cu:0.20wt%以下
に規制する必要がある。好ましいFe含有量は0.25
wt%以下、好ましいCu含有量は0.10wt%以下であ
る。
ムと同等の優れた熱伝導性を有する。また、切削、折曲
げ、絞り、穴明け等の成形加工性、あるいは溶接、摩擦
攪拌接合、超音波接合等の接合加工性に優れる。
工程において、均質化処理後に所定の条件で圧延するこ
とによりMg2 Siを微細かつ均一に析出させ、溶体化
処理および焼入れしたと同等の効果を得ることができ
る。
従って500℃以上で2時間以上行うことが好ましい。
所定の温度条件で圧延する間の温度降下により焼入れと
同等の効果を得る。従って、パス前の材料温度は,溶体
化処理に準じてMgおよびSiが固溶された状態を保持
しうる温度が必要であり、350〜440℃とする。3
50℃未満ではこの時点でMg2 Siが粗大析出物とな
り、その後の焼入れ効果が得られない。また、温度が低
いためにその後のパスの圧延性が著しく悪くなるととも
に、パス上がり温度が低くなり過ぎて表面品質が低下す
る。一方、440℃を超えるとパス上がりで材料温度が
十分低下せず焼入れの効果が不足する。パス前温度の好
ましい下限値は380℃であり、好ましい上限値は42
0℃である。また、焼入れ効果を得るために、パス間の
冷却速度は50℃/min 以上が好ましく、パス上がり温
度は250〜340℃が好ましい。なお、パス上がり温
度を上記温度範囲内とするためには、熱間粗圧延上がり
で、直ちに高圧シャワー水冷等の強制冷却を行っても良
い。また、パス圧延速度は、50m/min 以上が好まし
い。さらに、このパス間に焼入れと同等の冷却効果を得
るために、上がり板厚が10mm以下となるようにする必
要がある。10mmを超えると水冷工程を加えても上述し
た焼入れに十分な温度にまで冷却することが困難なため
である。好ましい板厚は8mm以下である。
うが、焼入れ効果を得るための上記条件でのパスはどの
段階で行っても良い。しかし、パス上がり板厚が10mm
以下とすることを要件としているため、最終パスに行う
ことが多くなる。次いで、最終パスの前のパスが多くな
る。但し、最終パス以外で行う場合、その後のパスの圧
延条件は、材料温度250〜340℃で行う必要があ
る。250℃未満では圧延の負荷が大きくなって圧延が
しにくくなるとともに、温度が低くなるとAlと水分が
反応して表面が腐食する等変質するためである。
段の粗圧延により溶体化−焼入れ処理がなされているた
め、仕上がり温度や圧延速度などの条件は特に限定され
ない。常法に従い最終製品の板厚に応じて圧延を行う。
を得るために圧下率30%以上とする必要がある。圧下
率を30%以上とすることにより、JIS 5052合
金に匹敵する200N/mm2 以上の強度を得ることがで
きる。好ましい圧下率は50%以上である。
80℃以下で最終焼鈍する。低温での熱処理を行うこと
により、時効硬化させてさらに強度を向上させるととも
に、伸びも向上させて加工性を向上させることができ
る。また機械的諸性質を安定させる効果もある。特に好
ましい焼鈍温度は130〜150℃である。
は、適宜所要寸法に切断して平板状の放熱部材として使
用するほか、切削、折曲げ、絞り、穴明けあるいはロー
ルボンド等により種々の形状に成形加工、あるいは溶
接、摩擦攪拌接合、超音波接合等により接合加工して放
熱部材を製作する。加工方法は限定されない。また、放
熱部材の形状も、平板、フィンを有するヒートシンク、
冷媒を封入したヒートパイプ等を例示でき、特に限定さ
れない。
なるAl−Mg−Si系合金板は、その合金組成により
熱伝導性および加工性が良く、さらにその製造過程にお
いて、所定の条件で熱間粗圧延を行うことにより、溶体
化処理および焼入れしたと同等の効果が得られ、かつ高
い圧下率での冷間加工によってさらに高い強度が得られ
る。そのため、この合金板を加工して所要形状に製造さ
れた放熱部材は、放熱性と強度ととを兼ね備える。
質〕後掲の表1に示す各組成の合金連鋳スラブについ
て、面削後580℃×10時間の均質化処理し、熱間粗
圧延および熱間仕上げ圧延した後冷間圧延して合金板を
製作した。熱間粗圧延は、最終パスの圧延条件を規定す
るものとし、最終パス前、即ち最終パス開始時の材料温
度を表1に示す温度に設定し、圧延速度80m/min で
行い、熱間粗圧延の最終パス上がりの板厚を表1に示す
厚さとした。そして、熱間粗圧延を行った材料は、さら
に熱間仕上げ圧延を行ってコイルに巻き取った。次に、
巻き取った材料を表1に示す圧下率で冷間圧延した。冷
間圧延後、発明例No.2についてはさらに表1に示す
条件で最終焼鈍を行った。また、比較例3、4,5,6
では、通常の処理により、それぞれ5052−H32
材,5052−H34材、1100−H32材、110
0−H34材を製造した。
引張強さ、耐力、伸びおよび熱伝導度を測定した。これ
らの結果を表1に併せて示す。
圧延および冷間圧延することにより、純アルミニウムに
匹敵する高い熱伝導性と、JIS5052合金に匹敵す
る高い強度とを兼ね備えたアルミニウム合金板を得られ
ることを確認できた。また、最終焼鈍を加えることによ
り強度を向上させることができた。
2.4.6の3種を供試体として加工性を評価した。加
工試験項目は、次の方法により切削、曲げ、穴明け、絞
りの4項目とした。
に、幅0.5mm×深さ0.5mmの溝を切削により形成し
た。そして、切削部のむしれの状態により相対的に評価
した。
90°曲げ試験を実施した。曲げRを種々変更し、曲げ
部のクラックを相対的に評価した。
き、直径8mmのパンチを用い、パンチングプレスにて穴
明けを実施した。穴明け後のカエリの程度を相対的に評
価した。
て、直径33mm、肩R4mmのポンチを用い、深絞り試験
を実施した。各合金のブランク径を変え、限界絞り比
(L.D.R)で相対的に評価した。
1の引張強さおよび耐力の測定結果に基づき、強度を相
対的に評価した。
明)、No.4(5052)の2種を供試体として、下
記の方法により、放熱部材としての放熱性および熱拡散
性を評価した。
6mmおよび1.0mmで幅200mm×長さ100mmのプレ
ート(11)を供試体とし、プレート(11)の裏面中
央に半導体を想定した10mm×10mmのヒーター(1
2)を密着させるとともに、表面の中央および四隅にシ
ース熱電対(Pc、P1,P2,P3、P4)を貼り付
けた。そして、30℃の恒温室内でヒーター(12)を
加熱した時の各位置の表面温度(TPc、TP1,TP2,T
P3,TP4)を測定した。
Pc)の時間経過を示すとともに、図2に板厚0.6mmの
プレート、図3に板厚1.0mmのプレートにおける中央
温度(TPc)の時間経過を示す。また、表面温度が一定
した定常状態において、中央温度(TPc)と四隅の温度
(TPc、TP1,TP2,TP3,TP4)の平均値との差ΔT
を表3に示す。
(本発明)のプレートは、ヒーターの反対面において、
No.4(5052)よりも1.0mmプレートで10℃
以上の温度差があり、放熱性に優れていることがわか
る。また、周囲との温度差が、No.2(本発明)はN
o.4(5052)よりも約7℃小さいことから熱拡散
性にも優れていることがわかる。
くの発熱デバイスが配置されるために、高度の排熱性を
要求されるノートパソコンにおいて、キーボードのベー
ス基板およびCPU取付板として放熱部材を組み込んだ
場合について、本発明の放熱部材と従来の放熱部材とを
比較した。
ンを模した装置(20)を使用した。この実験装置(2
0)では、多数のキーキャップ(K1〜K9)を備える
キーボード(21)の裏にベース基板(24)が取付け
られているとともに、CPU取付板(25)の裏面にヒ
ートスプレッダー(26)を介して疑似CPU(27)
が取付けられている。そして、前記ベース基板(24)
とCPU取付板(25)との間に0.5mmの隙間を設け
て、これらが筺体(28)内に重ねて装填されている。
また、前記筺体(28)の一隅にはファン(29)を取
付けて排熱を促している、なお。図4ではノートパソコ
ンのディスプレイ部を省略して本体部のみを示してい
る。
ス基板(24)およびCPU取付板(25)の材料とし
て、表1のNo.2(本発明のAl−Mg−Si合金)
およびNo.4(5052)の材料で形成した板厚0.
6mmの2種類の平板を用意した。また、疑似CPU(2
7)は発熱量12Wのものを使用し、ファンは最大風量
1.4CFMのものを使用し、ヒートスプレッダー(2
6)として、JIS1100からなり31mm角で厚さ1
mmのものを使用した。
IIの2種類の実験装置(20)を作製した。
いて、ファン(29)をONまたはOFFの2つ条件下
で、疑似CPU(27)に電源投入30分後にキーキャ
ップ(K1〜K9)、ベース基板(24)、CPU取付
板(25)、およびヒートスプレッダー(26)の温度
を測定した。キーキャップ(K1〜K9)の温度測定位
置はキャップ上面とし、ベース基板(24)の測定位置
(B1〜B9)は、前記各キーキャップ(K1〜K9)
の真裏の対応位置とした。ベース基板(24)における
温度測定位置(B1〜B9)を図5に示すとともに、こ
れらの測定位置に対応するキーを表5に示す。また、図
5に示すように、CPU取付板(25)の温度測定位置
(T1〜T5)は上面の中央および四隅とし、ヒートス
プレッダー(26)の温度測定位置をT6とした。
取付板として本発明の放熱部材を使用したキーボードI
は、放熱性に優れ、キーキャップにおける均温性にも優
れていることを確認できた。
ニウム放熱部材の材料であるAl−Mg−Si系合金
は、その組成を、Si:0.2〜0.8wt%、Mg:
0.3〜0.9wt%、Fe:0.35wt%以下およびC
u:0.20wt%以下を含有し、残部Alおよび不可避
不純物からなるため、熱伝導性および加工性に優れてい
る。そして、このAl−Mg−Si系合金鋳塊を均質化
処理し、熱間粗圧延および熱間仕上げ圧延した後に冷間
圧延する合金板の製造方法であって、前記熱間粗圧延の
任意のパス工程において、パス前の材料温度を350〜
440℃とするとともに、上がり板厚を10mm以下と
し、前記冷間圧延の圧下率を30%以上とするから、熱
間粗圧延の間に溶体化処理−焼入れしたと同等の効果が
得られ、かつ高い圧下率での冷間加工によって高い強度
が得られる。従って、圧延以外の別工程で熱処理するこ
となしに、高い熱伝導性と強度と加工性とを兼ね備えた
合金板を少ない工程で製造することができ、かつこのよ
うな合金板を容易に所要形状に加工することができ、優
れた放熱性と強度とを兼ね備えるアルミニウム放熱部材
を低コストで製造することができる。
間加工後に180℃以下で最終焼鈍することにより、さ
らに合金板の強度を向上させるとともに、伸びも向上さ
せて加工性を向上させ、かつ機械的諸性質を安定させる
ことができ、これらの点でより一層優れたアルミニウム
放熱部材となし得る。
視図である。
フである。
フである。
分解斜視図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 Al−Mg−Si系合金鋳塊を均質化処
理し、熱間粗圧延および熱間仕上げ圧延した後に冷間圧
延した合金板を所要形状に加工して製造された放熱部材
であって、 前記Al−Mg−Si系合金は、Si:0.2〜0.8
wt%、Mg:0.3〜0.9wt%、Fe:0.35wt%
以下およびCu:0.20wt%以下を含有し、残部Al
および不可避不純物からなることを特徴とするアルミニ
ウム放熱部材。 - 【請求項2】 前記合金板の熱間粗圧延の任意のパス工
程において、パス前の材料温度を350〜440℃とす
るとともに、上がり板厚を10mm以下とし、前記冷間圧
延の圧下率を30%以上とする請求項2に記載のアルミ
ニウム放熱部材。 - 【請求項3】 前記合金板の製造工程において、冷間圧
延後に180℃以下で最終焼鈍を行う請求項1または2
に記載のアルミニウム放熱部材。 - 【請求項4】 Si:0.2〜0.8wt%、Mg:0.
3〜0.9wt%、Fe:0.35wt%以下およびCu:
0.20wt%以下を含有し、残部Alおよび不可避不純
物からなるAl−Mg−Si系合金鋳塊を均質化処理し
た後、熱間粗圧延の任意のパス工程において、パス前の
材料温度を350〜440℃とするとともに上がり板厚
を10mm以下に圧延し、次いで熱間仕上げ圧延し、さら
に30%以上の圧下率で冷間圧延して合金板を製造し、 前記合金板を所要形状に加工することを特徴とするアル
ミニウム放熱部材の製造方法。
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