JP5555580B2 - 熱伝導性、強度及び成形性に優れたアルミニウム合金およびその製造方法 - Google Patents

熱伝導性、強度及び成形性に優れたアルミニウム合金およびその製造方法 Download PDF

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この発明は、熱伝導性、強度及び成形性に優れたAl−Mg−Si系合金圧延板及びその低コストでの製造方法に関するもので、特にプラズマディスプレイや液晶ディスプレイなどの電子映像機器、パソコンなどの電子情報機器や家庭用電化製品の放熱板、筐体、支持体、基板など熱拡散性を要する部品の素材として好適なAl−Mg−Si系合金圧延板に関するものである。
熱を発生する電子部品を多く用いる電子機器および電化製品で、さらなる高機能化と小型化、薄型化が進められており、内部温度の上昇を防止する熱設計の重要性が増している。
例えば、プラズマディスプレイは薄く、壁に掛けられる構造になっているために映像部品と電子部品とが高密度に集積している。映像部品は発光素子の集合体であり、高電圧が負荷されているために発熱量が多く、電子部品の温度を上昇させるので、ノイズの原因や最悪の場合は故障の原因となる。この故障を防ぐ目的で、映像部品と電子部品の間に放熱板を設置し、熱の分散・拡散機能を設けている。前記放熱板は厚さ0.5〜2.0mm程度の板材から成形されることが多く、その素材必要性能は高熱伝導率、高強度、かつ良好な成形性である。
本来、アルミニウムは鋼材より熱伝導性に優れ、軽量であり、プラズマディスプレイの放熱板を含め、液晶ディスプレイ、パソコン、携帯用電子機器、車載用電子機器などの放熱板、筐体、支持体、基板など熱拡散性が重要な用途に適した性質を持っている。但し、アルミニウム材の中でも純アルミニウム系、すなわちJIS1100、1050、1070合金等に代表される1000系合金では、熱伝導性は高いが、強度が低く、筐体、支持体など成形部品としては強度不足である。
一方、より高い強度を有する材料としてはAl−Mg系のJIS5052合金やAl−Mn系の3003合金等が代表的であるが、これらの熱伝導性は1000系合金と比較すると低く、熱拡散性が特に要求される部品の素材としては適さない。そこで、ますます高機能化と小型化・薄型化が進む電子機器の熱対策には、熱伝達性及び強度ともに良好なアルミニウム合金板材が求められている。加えて、用いられる電子機器が世界的に多く使用されるものであり、板材製造に要するエネルギーやコストの観点から、余分な熱処理工程などを含まない簡略化された工程で、かつ量産に適した工程で、高熱伝達性と強度を実現できることが求められている。
このような高熱伝導性及び高強度をあわせ持つ材料として、Al−Mg−Si系合金の使用が考えられる。一般に、導電率及び熱伝導率間には顕著な正の相関性があり、導電率が高いほど熱伝導性も高い材料と言うことができる。もともとAl−Mg−Si系合金には、高強度電線用のJIS規格合金として導電率に優れた6101合金が存在する。非特許文献1によると、その組成は、Si:0.3〜0.7質量%(以下、合金組成については単に%と記載する。)、Mg:0.35〜0.8%で、Fe:0.5%以下、Cu、Zn:各0.l%以下、Mn、Cr:各0.03%以下、B:0.06%以下と規定されている。
非特許文献2には、溶体化処理及び析出処理を経たT6材で導電率が57%IACSと高く、純アルミニウム系の1100−H18と同等の値を示す合金が開示されている。この合金の通常使用形態は押出あるいは引き抜きされた線であり、板材の強度と単純に置き換えられないが、T6材で221N/mmと純アルミニウム系では達成不可能な高い強度も持つ。このような特性が板材として実現できれば、熱伝導性も良好なため前記のような熱拡散性を必要とする部品の素材として好適と考えられる。
但し、この合金を単純に板材とするには、溶体化処理などコストがかかる熱処理を必要とし、製造工程も複雑となる。強度を上げる析出処理後は成形性が落ちるが、それを避けて成形後に析出処理を行うこともまた煩雑である。
一方、6101合金のような熱伝導率に優れたAl−Mg−Si合金を板材として製造するための技術が、いくつかの公知文献で提案されている。特許文献1に記載の発明は、組成としてSi:0.2〜0.8%、Mg:0.3〜0.9%、Fe:0.35%以下およびCu:0.20%以下を含有したAl−Mg−Si系合金を対象とし、熱間圧延の条件を規制することで優れた熱伝導性と強度を有するAl−Mg−Si系合金圧延板を得る方法を示している。
合金組成自体は、6101合金の範囲を若干広げたに過ぎないが、熱間圧延に溶体化処理と同じ効果を持たせることにより、独立した溶体化処理を省略することを可能とする技術である。しかしながら、熱間粗圧延時の任意パス工程には非常に困難な制約(パス前の材料温度350〜440℃、パス間の冷却速度50℃/min以上、パス上り材料温度250〜340℃、上り板厚10mm以下)があり、これを実施するためには膨大な設備投資費用が必要となる。
また、特許文献2及び3に記載の発明は、特許文献1と同様に6101合金類似の合金組成を対象とし、熱間圧延後の工程で追加的な中間焼鈍を必要とする。また、任意の熱間圧延パス前の材料温度と後の冷却速度を制御する請求項があり、実施例でもこの制御がすべてで行われており、煩雑な工程をとっている。
特許文献4に記載の発明では、組成としてSi:0.2〜1.5%、Mg:0.2〜1.5%、Cr:0.02〜0.1%、Fe:0.3%以下、Ti:0.015%以下のAl−Mg−Si合金についてのもので、Cu0.01〜1%など他の選択元素を添加した場合も記述されている。この特許の工程の一つの形態は、熱間圧延後、冷間圧延途中で500〜570℃の溶体化処理を行い、さらに規定の条件での冷間圧延後にさらに170〜210℃にて加熱焼鈍する煩雑なものである。
特許文献4では、他の形態の工程、すなわち、熱間圧延後、冷間圧延途中で中間焼鈍を行わず、最終板厚まで冷間圧延し、180〜300℃に加熱する焼鈍を行って、導電率53%IACS以上の熱伝導率に優れた板材を得る方法も開示している。これは熱間圧延工程での条件規制、溶体化処理や冷間圧延工程途中での焼鈍なども無く簡単な製造方法と言えるが、この特許方法では、量産に適した大型の材料において安定して高熱伝達と強度を実現するための規定がなされておらず、完成された技術となっていない。
特許文献5に記載の発明では、組成としてSi:0.2〜1.5%、Mg:0.2〜1.5%、Ti:0.015超〜0.2%、さらにMnまたはCrを微量含むAl−Mg−Si系合金を対象とし、Cu0.01〜1%など他の選択元素を添加した場合も記述されている。比較的高い熱伝導性と、優れた強度と成形性を有しているものの、製造工程に連続焼鈍方式による溶体化処理(500〜570℃、冷却速度1.0℃/sec以上)を行っており、やはり高コストになってしまう。
特許文献6、7に記載の発明は、熱間圧延工程での規制、溶体化処理、時効焼鈍なども無く、簡単な製造方法を示している。しかし、記載の成分では更なる高熱伝導化を達成し、具体的には導電率57.5%IACS以上とし、かつ強度にも優れた圧延板とはなせないことがわかった。
特許第3496263号公報 特開2003−321755号公報 特開2009−102737号公報 特開2005−8926号公報 特開2005−264174号公報 特開2008−248297号公報 特開2009−242813号公報
アルミニウムハンドブック第5版 METALS HANDBOOK TENTH EDITION VOL.2
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、放熱用部品としての性能は損なわずに簡便かつ経済的な工程により、熱伝導性と強度、成形性に優れたAl−Mg−Si系合金圧延板及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、上記課題を解決すべき、以下の要件を満足するような簡易かつ低コスト、エネルギー消費の少ない製造方法で熱伝導性、強度及び成形性に優れるAl−Mg−Si系合金圧延板を得るべく鋭意検討を実施した。
・半連続鋳造→面削→予備加熱→熱間圧延→冷間圧延→焼鈍の単純な工程で行われることを前提とし、
・面削の前に独立した均質化処理を必要とせず、
・熱間圧延時に特に複雑な温度制御を要さず、
・中間焼鈍を必要とせず、
・冷間圧延を連続した3パス以内で行い、
・工程のどの時点でも溶体化処理を行わず、
・熱間圧延の予備加熱温度を560℃未満に低温化する。
また、小サイズの鋳塊で良好な特性が出ても、サイズアップして特性が下がるか安定しないような材料設定は、望ましくない。量産規模で熱伝導性と強度、成形性が良好な材料が安定して得られることが必要で、少なくとも厚さが250mm以上の量産規模の鋳塊から製造された板材で良好な特性が得られることが求められる。板材の表面欠陥が無いことも必要条件となる。
本発明は、以上のような前提条件を満足するためになされたものであり、
請求項1記載の第1の発明は、Al−Mg−Si系合金圧延板において、Mgを0.1〜0.34%、Siを0.2〜0.8%、Cuを0.22〜1.0%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、Si/Mg含有量比が1.3以上であり、ファイバー組織を有し、導電率が57.5%IACS以上、引張強度180N/mm以上であることを特徴とする熱伝導性と強度と成形性に優れたAl−Mg−Si系合金圧延板である。
なお、前述のように、一般にアルミニウム合金の熱伝導性と導電率には正相関関係があるので、本発明の熱伝導性は導電率を代替特性として測定することにより評価した。したがって、以下の説明において、「導電率」への効果や影響が記載してあるところは、「熱伝導性」に対して同等の効果や影響があることを示している。
請求項2に記載の第2の発明は、請求項1記載の成分を有するAl−Mg−Si系合金を半連続鋳造で厚さ250mm以上の鋳塊とし、400〜540℃の温度での予備加熱を経て熱間圧延、50〜85%の圧下率で冷間圧延を施した後、140〜280℃の温度で焼鈍をすることを特徴とするAl−Mg−Si系合金板の製造方法である。
本発明によれば、適切な合金成分、製造工程により、熱伝導性、強度及び成形性に優れたAl−Mg−Si系合金圧延板を簡便かつ経済的な製造工程で得ることが可能であり、製造コストを低減することが可能である。また、量産に適した大型鋳塊を用いて、安定的に上記の良好な特性が得られる。
以下、より詳細に本発明内容を説明する。
本発明では、Al−Mg−Si系合金を溶体化処理の無い簡便な工程で板材とし良好な熱伝導性と強度を得るため、従来と異なる材料設計を行っている。導電率を上げるためには、添加元素であるMg、Si、Cuの固溶量を極力下げておく必要がある。これらの元素は、鋳造時には十分な析出時間が無いため、鋳塊中では相当量が固溶している。そのため高導電率の実現には、後の工程でこれらを十分に析出させることが求められる。
次に、この発明における合金成分の限定理由について説明する。
合金中のMg、Si及びCuの量と各々の存在比を種々変化させ、熱伝導性及び強度・成形性が安定して良好になる条件を検討して適正な合金組成を選択した。Mg、Si及びCuについては、単なる添加量だけではなく、それぞれの量比を適正に選ぶ必要がある。
Mg:0.1〜0.34%
Mgはこの合金の強度と成形性の性能の確保に有用な必須添加元素である。ただし、比較的広い固溶限を持ち、また固溶した際に導電率を低下させる作用も大きい。0.34%を超えて含む場合、本発明の簡便な工程を前提とすると導電率の低下が大きく、量産規模材での特性ばらつきも大きくなる問題がある。一方、0.1%未満では強度の確保が難しい。したがって、Mg量の範囲は0.1〜0.34%であり、好ましいMg量の範囲は0.15〜0.3%である。なお、後述するようにMgについてはSi量との比で適正な範囲が存在する。
Si:0.2〜0.8%
Siはこの合金の強度及び成形性の確保のために必須の元素である。0.8%を超えると導電率が低下し、更には他の添加元素と粗大な金属間化合物を生成し成形性の確保が難しくなる。一方で、0.2%未満では強度の確保が難しくなり、更には他元素との金属間化合物を形成せず固溶量が上昇し導電率が低下してしまう。したがってSi量の範囲は0.2〜0.8%とする。但し、ここで言及する金属間化合物とは主に時効処理により得られる強度上昇に寄与する微細化合物ではなく、合金鋳造時に生成した晶出物にあたる。好ましいSi量の範囲は、0.25〜0.7%である。
Cu:0.22〜1.0%
Cuはこの合金の強度を確保するために必須の元素である。1.0%を超えると導電率と成形性の確保が難しい。一方で、0.22%未満では強度の確保が難しい。したがってCu量の範囲は0.22〜1.0%とする。更に好ましいCu量は、0.25〜0.8%である。
Si/Mg含有比:1.3以上
本発明ではMgとSiおよびCuの含有量比を規定しており、この範囲にあれば導電率が高いアルミニウム合金板となせる。Si/Mg比がこれよりも低い値、つまり相対的にSi量が低いと、Mg及びSiを含む金属間化合物の生成量が少ないため最終的な板材中の固溶Mgが多くなることで導電率が低くなる傾向がある。また、この比が低いことで、量産規模材での位置による特性バラツキが大きくなる問題が生じる。これは、本発明の比較的Mg含有量の低い合金組成範囲で、Si/Mg比が低いと速やかな析出が起こりにくいため、量産規模の材料の部位による工程中熱履歴の違いを受けて析出状態が異なる可能性が高くなるためである。
なお、Siも固溶量が増えると導電率を下げる作用を持つが、単位固溶量あたりの導電率低減作用はMgの場合より小さい。このため、Siを相対的に多めに含有することで両元素が若干固溶しても、Mgの固溶が減る効果が大きいため高導電率に対して有利に働く。Siの若干の固溶は強度向上にも寄与する。
また、Si/Mg含有比の上限値は例えば8.0とすることができる。これを超えると、必然的にSiの添加量が上記規定の範囲を超えてしまうことになり、導電率を低下させてしまう結果となる
規定した元素以外で、アルミニウム合金に一般的に添加あるいは含有される元素として、Feがある。Feはアルミニウムスクラップやアルミニウム地金に含有される不純物であり、通常、0.1%程度は含有されている。しかし、多量に含有されていると粗大なAl−Fe系金属間化合物を生成し、成形性が劣化する。また、導電率も低下する。したがってFe量は0.35%以下に規制されるのが望ましい。
他の元素としては、TiやBなどがある。Tiは鋳塊の結晶粒微細化に効果があり、鋳塊割れを防止する。添加量が多すぎるとAlTiが晶出して導電率の低下と成形性が劣化する要因となる。一方で、添加量が少なすぎると微細化の効果が十分に得られない。上記の理由から、Tiの添加量は一般的に0.005〜0.1%程度に規制されている。
また、鋳塊の結晶粒の微細化の効果を高めるためにBをTiと複合添加することも行われている。その場合、Bの添加量が多すぎるとTiBが生成して曲げ性が劣化する。一方で、Bの添加量が少なすぎると結晶粒微細化に効果が十分に得られない。一般的に0.0001〜0.05%程度に規制されている。
上記以外のMn、Zr、Crなどは再結晶粒微細化のために一般的に添加される合金元素であるが、導電率への影響が大きく、添加されないことが望ましい。ただし、一般的な不純物元素の上限値である各々0.05%までの含有であれば、本発明のAl−Mg−Si系合金圧延板の性能を損なうことはない。
次に本発明の諸特性について説明する。本発明においては焼鈍後の導電率を57.5%IACS、引張強度を180N/mm以上に規制している。導電率が57.5%IACSより低いと放熱用部品としての熱伝導性が不十分である。従って、57.5%IACS以上が好ましい。なお、上述したように、熱伝導性を導電率で代替して説明するのは、一般にアルミニウム合金の熱伝導性と導電率には正相関関係があることに起因するものである。
また、引張強度が180N/mmより低いと放熱用部品としての強度が不十分となる。従って、180N/mm以上とした。なお、代表的な純アルミニウム材であるA1100では加工硬化で強度を上げたH18の状態で、導電率が57%IACS、引張強さが165N/mmであり、本発明の規定はこれと同等以上の導電率(熱伝導性)と、純アルミニウムで到達不可能な高強度を意味するものである。
次にこの発明のAl−Mg−Si系合金圧延板の製造方法について説明する。先ず、常法に従い半連続鋳造法により、前記合金成分を有するAl−Mg−Si系合金の厚さ250mm以上の鋳塊を得る。この鋳塊寸法の規定は量産を効率的に行うために必要である。
熱間圧延前には、性能の向上、性能バラツキを少なくする目的で均質化処理を行うことが多いが、本発明においては、鋳塊の面削の前に独立した均質化処理を行わない。上記目的の熱処理は、面削の後に熱間圧延の予備加熱を400〜540℃の温度で実施することにより代わりとする。400℃未満では後の熱間圧延が困難になるため不適当であり、540℃を越えると鋳塊中で局部的な溶融が起こる可能性があり不適当である。熱間圧延の予備加熱温度は560℃未満とすることで、さらにコストおよびエネルギー消費の低減のために望ましく、特性上も問題が無い。
熱間圧延は常法に従った方法で行えばよく、熱間圧延条件に特に制限はない。一般的には熱間仕上げ圧延は板厚10mm以下で300℃以下の終了温度になることが多い。
熱間圧延が終了した後には冷間圧延を行う。これは熱間圧延板に対し加工を加え、強度を向上させるために行う。この冷間圧延は50〜85%の圧延率で行う。経済的な観点から、冷間圧延は3パス以内、望ましくは2パス以内で行い、途中での中間焼鈍は行わない。冷間圧延の圧延率が、50%未満であると高い強度が確保できない。また、85%を超えると、経済的なパス数で実施した場合に、表面模様欠陥のヘリンボンが発生しやすく不適当である。
本発明の合金では最終焼鈍後の組織がファイバー組織になっていることが、組織上の特徴となっている。ファイバー組織とは、熱間圧延あるいは冷間圧延に伴い加えられた塑性加工により伸ばされた結晶粒の中に、転位が高密度に集中した組織である。本発明の合金では、冷間圧延後に部分あるいは完全再結晶が起きないような条件で焼鈍を行うために、焼鈍後にファイバー組織を有しており、高い強度を維持できる。
冷間圧延を行った後は、焼鈍を140〜280℃の範囲で行う。140℃未満の焼鈍では軟化が不十分であり、曲げ性が不足する。280℃を超える温度での焼鈍では軟化が進行しすぎるために強度が不十分となる。また、焼鈍時間は1時間より短い時間では効果が少なく、48時間より長時間では軟化が飽和し経済的に不利になる。
また、前記焼鈍は圧延板を軟化させるために行うものであるが、通常の6000系合金のように時効硬化のために行うわけではない。6000系合金を含む熱処理型アルミニウム合金では、一般的に溶体化処理を施し時効硬化を行い強度と導電率の確保を図る。すなわち、溶体化処理を行うことによって、後の150℃を越えるような熱処理は必然的に時効処理としての作用効果を奏することになる。しかし、本発明においては溶体化処理を行っていないので、後の上述した温度範囲の熱処理は上述したように、単に焼鈍として合金の軟化させるために行うものである。
また、本製造方法では、溶体化処理を行わないことで低コスト化を図ることが可能となる。
表1の合金番号1〜16に示す合金を、常法にて溶解し各々を半連続鋳造法にて厚さ450mm×幅1080mm×長さ2800mmの鋳塊に鋳造した。なお、以下の表ではすべて、本発明規定を外れる条件については、斜体字で表し区別した。
得られた鋳塊は表面の約15mmを面削し、予備加熱して熱間圧延、冷間圧延及び最終焼鈍の工程で板厚1mmあるいは1.5mm、幅1000mmの板材(コイル)とした。表2に製造工程条件を示す。これらの熱延予備加熱温度の保持時間は4〜6hとし、熱延上がり時の材料温度は250〜300℃の範囲に入っていた。冷間圧延はすべて2パスで行なったもので、表2中の圧延率は冷間圧延前の板厚を基準とした総圧下率である。評価用の材料は、コイルの長手および幅の中央から採取した。
Figure 0005555580
No.1〜16は微細化剤成分として他にTi 0.01%, B0.002%を含む。
Figure 0005555580
導電率は圧延方向と平行に板厚×50mm×長さ1000mm(測定基準長さ500mm)の試験片を採取し、ダブルブリッジ法により比抵抗値を測定し、標準銅の比抵抗値を100として算出した。
また引張強度は、JISZ2201に定める5号引張試験片にて圧延方向に直角方向の引張強度を求めた。
本発明の合金は成形をして用いることが多い。そのため、圧延方向に対し直角方向(曲げ性の劣る方向)に切り出したJIS2204に定める3号曲げ試験片にて90°曲げ試験を実施し、その結果を成形性とした。90°曲げ試験は、内側曲げ半径を2.0mmとして行い、10倍のルーペで観察し、割れが発生しなければ合格(○)、割れが発生したものは不合格(×)とした。
導電率、引張強度、成形性の評価結果を表3に示す。
Figure 0005555580
表3において本発明で規定する合金成分かつ製造工程の条件を満足した発明例は、いずれもが導電率が57.5%IACS以上で引張強度180N/mm以上かつ良好な成形性を有しており、導電率即ち熱伝導性と強度と成形性を兼ね備えた材料であることが明らかである。
一方、比較例の1−Gは冷間圧延時の冷間圧延率が不足したために、ファイバー組織を得ることが出来ず、引張強度が低下し、強度を確保できなかった例である。
1−Hは最終焼鈍温度が低すぎたために、回復がほとんど起きずに成形性を確保できなかった例である。
1−Iは最終焼鈍温度が高すぎ、部分或いは完全再結晶が起きてしまい、強度不足した例である。
1−Jは冷間圧延率が高すぎた例で、冷間圧延後の表面で異常な模様(ヘリンボン)が生じたため、後の評価に供さなかった。
1−Kは、熱延予備加熱温度が低すぎた例で、熱間圧延時に材料割れが生じたため、後の評価に供さなかった。また、1−Lは熱間圧延の予備加熱を規定以上の温度で行なった場合であり、鋳塊中で局部的な溶融が生じて均一な組織が得られないため、後の工程に進まず評価に供さなかった。
また10−AはSi量が少なすぎ規定するSi/Mg比も満足していないために、導電率が低下してしまった。
11−AはSi量が多すぎたために、導電率が低下してしまった。また、金属間化合物を多く生成してしまい、曲げ性も低下した。
12−AはMg量が少なすぎたために、強度が低下してしまった。
13−AはMg量が多すぎたために、導電率が低下してしまった。
14−AはCu量が少なすぎたために、強度が低下してしまった。
15−AはCu量が多すぎたために、導電率が低下してしまった。また、曲げ性も低下してしまった。
16−AはSi/Mg含有比が1.00であり、本発明で規定する1.3よりも低い。導電率は57%IACSより低くなっている。
また、比較として市販品A1100P−H18およびA3003P−H18の評価結果も表3に記載した。前者は特に強度が不足し、後者は導電率が不足しているため、どちらも放熱用部品材としての性能が不足している。このことからも、本発明のAl−Mg−Si系合金圧延板は、導電率つまり熱導電性、強度、成形性を兼ね備えた材料であることが明らかである。
表4に合金組成のみをさらに変化させた場合の実施例と比較例を示す。ここでは、量産規模の半連続鋳造装置で作成した400×1080×2500mmの鋳塊を用い、実施例1の工程A(表2)と同様の条件で1mm厚の板材として評価に供した。評価用の材料は、コイルの長手および幅の中央から採取した。
なお、表4中の合金は、表記組成以外に、Fe0.12〜0.14%を含み、鋳造微細化剤由来のTi0.01%、B0.002%を含み、残部がAlと他の不可避的な不純物元素からなる。
Figure 0005555580
発明例は組成規定範囲の上限および下限を含むが、すべて導電率57.5%以上、引張り強さ180N/mm以上の良好な値を示し、優れた導電率即ち熱伝導性と強度を兼ね備えた材料となっている。比較例では、強度か導電率のいずれかで劣る結果になっている。
表5の合金を量産規模の半連続鋳造装置を用い、250×1050×2500mmあるいは400×1050×2500mmの鋳塊とした。これを、表6の製造条件(M、N、O)で熱間圧延、冷間圧延および最終焼鈍して厚さ1mmで幅970mmの板とした。これらの材料の長さ約500mのコイルについて、前端、長さ中央、後端の幅中央、幅端で、導電率と強度の評価を行った。なお、前端、後端の材料とは、端の形状不正および圧延開始および終了の速度非定常域を除いた、通常使用部の前端および後端を意味する。
比較として実験規模の半連続鋳造装置を用い80×200×250mmの鋳塊とし、以降の工程も実験規模装置を用いて厚さ1mmの板を得た(表6、工程P)。これについても約10mの長さの板の各部位で特性の評価を行った。
表7、表8に導電率および強度の評価結果を示す。合金組成が本発明規定の場合、量産規模である250mm厚あるいは400mm厚の鋳塊を用いた場合でも、材料部位によらず安定して優れた導電率即ち熱伝導性と強度を兼ね備えた材料となっている。量産規模の材料では、材料サイズが大きいことから、部位により鋳塊組織や、熱間圧延などの工程中に受ける熱履歴および加工がかなり異なることで、添加元素の固溶、析出の状態の差による部位間特性差が生じやすい。本発明組成では部位間の析出状態の差を抑えることに成功している。本発明規定内のSi、Mg量で、特にSi/Mg比を1.3以上にすることで、Mgの析出を遅滞なく生じ、量産規模材の部位特性差が有効に抑制される。
合金組成が本発明規定を外れMg含有量が高くSi/Mg比の低い比較合金40では、量産規模の工程Oによった場合、材料中の部位により導電率あるいは強度の差異が生じている。特に導電率は、57.5%に達しない部位が存在している。
また、Si,Mg量が本発明規定を超える合金41−Oは、全体に導電率が低く、特性の部位間差異も大きい。
なお、サイズの小さい実験規模の鋳塊を元にする工程Pでは、本発明を外れる合金40でも本発明範囲の合金38と同様に導電率、強度が安定している。このことから、材料の部位間の特性差が課題になるのは、特に量産規模の工程を用いた場合であることがわかる。本発明以前の技術ではこの課題が意識もされていないので、当然そのための解決手段を含んでいない。
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以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
本発明で得られた熱伝導性と強度と成形性に優れたAl−Mg−Si系合金圧延板は、特定の用途での使用に限定されるものではないが、プラズマディスプレイなど映像電子部品、パソコンなどの電子部品などの使用に好適であり、工業上顕著な効果を奏するものである。

Claims (2)

  1. Al−Mg−Si系合金圧延板において、Mgを0.1〜0.34質量%(以下、%と記す)、Siを0.2〜0.8%、Cuを0.22〜1.0%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、Si/Mg含有量比が1.3以上であり、ファイバー組織を有し、導電率が57.5%IACS以上、引張強度180N/mm以上であることを特徴とする、熱伝導性、強度及び成形性に優れたAl−Mg−Si系合金圧延板。
  2. 請求項1記載の成分を有するAl−Mg−Si系合金圧延板の製造方法であって、
    Mgを0.1〜0.34質量%(以下、%と記す)、Siを0.2〜0.8%、Cuを0.22〜1.0%含有し、残部がAl及び不可避的不純物からなり、Si/Mg含有量比が1.3以上であるAl−Mg−Si系合金を、半連続鋳造で厚さ250mm以上の鋳塊とし、400〜540℃の温度での予備加熱を経て熱間圧延、50〜85%の圧下率で冷間圧延を施した後、140〜280℃の温度で焼鈍をすることを特徴とする、Al−Mg−Si系合金圧延板の製造方法。
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