JP2000225705A - 液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、及び液体吐出装置 - Google Patents

液体吐出ヘッド用基板、液体吐出ヘッド、及び液体吐出装置

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JP2000225705A
JP2000225705A JP34510299A JP34510299A JP2000225705A JP 2000225705 A JP2000225705 A JP 2000225705A JP 34510299 A JP34510299 A JP 34510299A JP 34510299 A JP34510299 A JP 34510299A JP 2000225705 A JP2000225705 A JP 2000225705A
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heating element
movable
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Yoshiyuki Imanaka
良行 今仲
Toshio Kashino
俊雄 樫野
Ichiro Saito
一郎 斉藤
Teruo Ozaki
照夫 尾崎
Muga Mochizuki
無我 望月
Masahiko Kubota
雅彦 久保田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 気泡の発生に基づく圧力による可動部材の自
由端の変位を利用して液体を吐出する際に、吐出特性を
安定させ、信頼性を向上させる。 【解決手段】 素子基板1は、シリコン基板151の上
に第1の配線層152、第2の配線層155及び発熱体
層154等を形成したものであり、表面は、第1の配線
層151や第2の配線層155のパターンに応じて段差
を有する。素子基板1の表面には、第2の配線層155
の間の発熱体層154の部位での発熱によりインクに発
生した気泡の圧力変化に伴って変位する片持ち梁状の可
動部材6がフォトリソグラフィー技術を用いて形成され
る。第1の配線層152と第2の配線層153とはスル
ーホール153aを介して電気的に接続される。スルー
ホール153aは、可動部材6の可動部と固定部との境
界とは異なる位置に設けられている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱エネルギーを液
体に作用させることで起こる気泡の発生によって所望の
液体を吐出する液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関
し、特に、熱エネルギーを発生させるための熱エネルギ
ー発生素子等が形成された基板の構造に関するものであ
る。
【0002】また、本発明は、紙、糸、繊維、布、金
属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックなどの被
記録媒体に対して記録を行う、プリンタ、複写機、通信
システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワ
ードプロセッサなどの装置、さらには各種処理装置と複
合的に組み合わされた産業用記録装置に適用することが
できるものである。
【0003】なお、本発明における「記録」とは、文字
や図形などのように意味を持つ画像を被記録媒体に対し
て付与するすることだけでなく、パターンなどのように
意味を持たない画像を付与することをも意味するもので
ある。
【0004】
【従来の技術】熱などのエネルギーをインクに与えるこ
とで、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状
態変化を生じさせ、このインクの状態変化に基づく作用
力によって吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒
体上に付着させて画像形成を行うインクジェット記録方
法、いわゆるバブルジェット記録方法が従来知られてい
る。このバブルジェット記録方法を用いる記録装置に
は、米国特許第4723129号明細書に開示されてい
るように、インクを吐出するための吐出口と、この吐出
口に連通するインク流路と、インク流路内に配された、
インクを吐出するためのエネルギー発生手段としての電
気熱変換体が一般に配されている。
【0005】このような記録方法によれば、品位の高い
画像を高速、低騒音で記録することができると共に、こ
の記録方法を行うヘッドではインクを吐出するための吐
出口を高密度に配置することができるため、小型の装置
で高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得
ることができるという多くの優れた利点を有している。
このため、このバブルジェット記録方法は、近年、プリ
ンター、複写機、ファクシミリなどの多くのオフィス機
器に利用されており、さらに、捺染装置などの産業用シ
ステムにまで利用されるようになってきている。
【0006】このようにバブルジェット技術が多方面の
製品に利用されるに従って、次のような様々な要求が近
年さらに高まっている。
【0007】例えば、エネルギー効率の向上の要求に対
する検討としては、発熱体の保護膜の厚さを調整すると
いった発熱体の最適化が挙げられている。この手法は、
発生した熱の液体への伝搬効率を向上させる点で効果が
ある。
【0008】また、高画質な画像を得るために、インク
の吐出スピードが速く、安定した気泡発生に基づく良好
なインク吐出を行える液体吐出方法などを与えるための
駆動条件が提案されたり、また、高速記録の観点から、
吐出された液体の液流路内への充填(リフィル)速度の
速い液体吐出ヘッドを得るために液流路の形状を改良し
たものも提案されたりしている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、基本的に従
来の気泡、特に膜沸騰に伴う気泡を液流路中に形成して
液体を吐出する方式の、根本的な吐出特性を、従来では
予想できない水準に高めることを主たる課題とする。
【0010】発明者たちは、従来では得られなかった気
泡を利用した新規な液滴吐出方法、およびその方法を用
いたヘッドなどを提供すべく鋭意研究を行った。このと
き、液流路中の可動部材の機構の原理を解析するといっ
た液流路中の可動部材の動作を起点とする第1技術解
析、および気泡による液滴吐出原理を起点とする第2技
術解析、さらには、気泡形成用の発熱体の気泡形成領域
を起点とする第3解析を行い、これらの解析によって、
可動部材の支点と自由端の配置関係を吐出口側つまり下
流側に自由端が位置する関係にすること、また可動部材
を発熱体もしくは、気泡発生領域に面して配することで
積極的に気泡を制御する全く新規な技術を確立するに至
った。
【0011】次に、気泡自体が吐出量に与えるエネルギ
ーを考慮すると気泡の下流側の成長成分を考慮すること
が吐出特性を格段に向上できる要因として最大であると
の知見に至った。つまり、気泡の下流側の成長成分を吐
出方向へ効率よく変換させることこそ吐出効率、吐出速
度の向上をもたらすことも判明した。
【0012】さらに、気泡を形成するための発熱領域、
例えば電気熱変換体の液体の流れ方向の面積中心を通る
中心線から下流側、あるいは、発泡を司る面における面
積中心などの気泡下流側の成長にかかわる可動部材や液
流路などに構造的要素を勘案することも好ましいという
ことがわかった。
【0013】また、一方、可動部材の配置と液供給路の
構造を考慮することで、リフィル速度を大幅に向上する
ことができることがわかった。
【0014】本発明の目的は、気泡の発生に基づく圧力
による可動部材の自由端の変位を利用して液体を吐出す
る際に、吐出特性が安定した、信頼性の高い液体吐出ヘ
ッドおよび液体吐出装置等を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明の液体吐出ヘッド用基板は、インクに熱エネルギ
ーを与えることにより液体を吐出させる液体吐出ヘッド
に用いられ、前記熱エネルギーを液体に与えるための発
熱体が形成されているとともに、該発熱体に対面して、
液体の流れ方向の上流側が固定され下流側端が自由端と
なって可動する可動部材がフォトリソグラフィ技術によ
り形成される液体吐出ヘッド用基板において、前記発熱
体に電圧を印加するための2つの配線層が層間絶縁層を
間において積層され、かつ前記2つの配線層が互いにス
ルーホールを介して電気的に接続され、前記スルーホー
ルは、前記可動部材の固定部と可動部との境界とは異な
る位置に設けられていることを特徴とする。
【0016】また、本発明の液体吐出ヘッド用基板は、
インクに熱エネルギーを与えることにより液体を吐出さ
せる液体吐出ヘッドに用いられ、前記熱エネルギーを液
体に与えるための複数の発熱体が表面に形成されている
とともに、該複数の発熱体にそれぞれ対面して、液体の
流れ方向の上流側が固定され下流側端が自由端となって
可動する複数の可動部材がフォトリソグラフィ技術によ
り形成される液体吐出ヘッド用基板において、前記複数
の発熱体に電圧を印加するための2つの配線層が層間絶
縁層を間において積層され、かつ前記2つの配線層が互
いに複数のスルーホールを介して電気的に接続され、前
記複数のスルーホールは、前記可動部材の固定部と可動
部との境界とは異なる位置に設けられていることを特徴
とする。
【0017】吐出ヘッド用基板には、インクに熱エネル
ギーを与えるための発熱体や、この発熱体に電圧を印加
するための配線等が形成されており、表面には段差があ
る。一方、吐出ヘッド用基板の表面には発熱体に対面し
て可動部材が形成され、発熱体の発熱により液体に発生
した気泡の圧力変化に伴って可動部材が変位して吐出圧
力を液体の流れ方向の下流側に良好に制御する。この可
動部材はフォトリソグラフィ技術を用いて形成されるの
で、可動部材と対応する領域で吐出ヘッド用基板の表面
に段差があると、可動部材にもこの段差に対応した段差
が形成される。可動部材は、上述したように気泡の圧力
変化に伴って変位するものであるが、その変位の際に段
差に応力が集中する。この応力は特に可動部材の支点で
大きく働き、可動部材の耐久性に影響を与える。
【0018】そこで本発明では、液体吐出ヘッド用基板
の表面に形成される段差の位置または高さを規定し、可
動部材の変位の際に可動部材に加わる力を緩和するもの
である。
【0019】具体的には、発熱体に電圧を印加するため
の2つの配線層が層間絶縁層を間において積層され、こ
れら配線層がスルーホールを介して電気的に接続されて
いる場合には、スルーホールを、可動部材の固定部と可
動部との境界とは異なる位置に設けることで、段差が可
動部材の支点の近傍には位置しなくなる。その結果、可
動部材の変位の際に最も大きな応力が加わる部分での応
力集中が緩和され、可動部材の耐久性が向上する。そし
て、スルーホールを積極的に可動部材の固定部に置くこ
とで、固定部の密着力を向上させることもでき、さらに
可動部材の信頼性を向上させることができる。このこと
は複数の可動部材の固定部を共通のもの(連続したもの)
とすることで、スルーホール部を被覆している固定部に
かかる応力を分散させることができるため、さらに好ま
しい。
【0020】また、フォトリソグラフィ技術(及び成膜
技術)を用いて基板上に可動部材を作る場合、可動部材
の形状や膜質は上述の段差によって変化する。そして、
この段差が可動部材の固定部と可動部との境界に設けら
れていた場合には、先の応力集中にほかにも可動部材の
膜質劣化や形状不安定によって所望の性能が得られない
ものも見受けられるが、本願の構成を採ることにより、
可動部材の形状や膜質の安定化をもたらすこともでき、
信頼性の高い可動部材を有する液体吐出ヘッド用基板及
び液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0021】本発明の液体吐出ヘッドは、熱エネルギー
を液体に与えるための発熱体が表面に形成された素子基
板と、インクを吐出するための吐出口及び該吐出口に連
通する溝が形成され前記素子基板と接合されることで前
記発熱体を含む液流路を構成する天板部材と、前記液流
路内において前記発熱体に対面して液体の流れ方向の上
流側が前記素子基板に固定され下流側端が自由端となる
ようにフォトリソグラフィ技術により形成された可動部
材とを有する液体吐出ヘッドにおいて、前記素子基板と
して、上記本発明の液体吐出ヘッド用基板を用いたこと
を特徴とする。
【0022】本発明の液体吐出装置は、上記本発明の液
体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから液体を吐出させ
るための駆動信号を供給する駆動信号供給手段とを有す
る。また、本発明の液体吐出装置は、上記本発明の液体
吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから液体を吐出された
液体を受ける被記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段
とを有する構成であってもよい。さらに、本発明の液体
吐出装置は、前記液体吐出ヘッドからインクを吐出し、
被記録媒体に前記インクを付着させることで記録を行う
構成とすることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態につ
いて図面を参照して説明する。
【0024】まず、液体吐出ヘッドの構造及び製造手順
の概略について、図1〜図6を参照して説明する。
【0025】図1は、本発明の一実施形態の液体吐出ヘ
ッドの基本的な構造を説明するための、液流路方向に沿
った断面図である。本実施形態の液体吐出ヘッドは、図
1に示すように、液体に気泡を発生させるための熱エネ
ルギーを与える吐出エネルギー発生素子としての、複数
個(図1では、1つのみ示す)の発熱体2が並列に設け
られた素子基板1と、この素子基板1上に接合された天
板3と、素子基板1および天板3の前端面に接合された
オリフィスプレート4とを有する。
【0026】素子基板1は、シリコンなどの基板上に絶
縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜または窒化シ
リコン膜を成膜し、その上に、発熱体2を構成する電気
抵抗層および配線をパターニングしたものである。この
配線から電気抵抗層に電圧を印加し、電気抵抗層に電流
を流すことで発熱体2が発熱する。そして、この配線と
電極抵抗層の上には、それらをインクから保護する保護
膜が形成されており、さらにその保護膜の上にはインク
消泡によるキャビテーションから保護する耐キャビテー
ション膜が形成されている。
【0027】天板3は、各発熱体2に対応した複数の液
流路7および各液流路7に液体を供給するための共通液
室8を構成するためのもので、天井部分から各発熱体2
の間に延びる流路側壁9が一体的に設けられている。天
板3はシリコン系の材料で構成され、液流路7および共
通液室8のパターンをエッチングで形成したり、シリコ
ン基板上にCVDなどの公知の成膜方法により窒化シリ
コン、酸化シリコンなど、流路側壁9となる材料を堆積
した後、液流路7の部分をエッチングして形成すること
ができる。
【0028】オリフィスプレート4には、各液流路7に
対応し、それぞれの液流路7を介して共通液室8に連通
する複数の吐出口5が形成されている。オリフィスプレ
ート4もシリコン系の材料からなるものであり、例え
ば、吐出口5を形成したシリコン基板を10〜150μ
mの厚さに削ることにより形成される。なお、オリフィ
スプレート4は本発明に必ずしも必要な構成でなく、オ
リフィスプレート4を設ける代わりに、天板3に液流路
7を形成する際に天板3の先端面にオリフィスプレート
4の厚さ相当の壁を残し、この部分に吐出口5を形成す
ることで吐出口付きの天板とすることもできる。
【0029】さらに、この液体吐出ヘッドには、液流路
7内に、発熱体2に対面して配置された片持梁状の可動
部材6が設けられている。可動部材6は、窒化シリコン
や酸化シリコンなどのシリコン系の材料で形成された薄
膜である。
【0030】この可動部材6は、液体の吐出動作によっ
て共通液室8から可動部材6を経て吐出口5側へ流れる
大きな流れの上流側に支点6aを持ち、この支点6aに
対して下流側に自由端6bを持つように、発熱体2に面
した位置に自由端6bを発熱体2の中央付近に位置させ
て発熱体2から所定の距離を隔てて配されている。この
発熱体2と可動部材6との間が気泡発生領域10とな
る。
【0031】上記構成に基づき、発熱体2を発熱させる
と、可動部材6と発熱体2との間の気泡発生領域10の
液体に熱が作用し、これにより発熱体2上に膜沸騰現象
に基づく気泡が発生して成長する。この気泡の成長に伴
う圧力は可動部材6に優先的に作用し、可動部材6は図
1に破線で示されるように、支点6aを中心に吐出口5
側に大きく開くように変位する。可動部材6の変位もし
くは変位した状態によって、気泡の発生に基づく圧力の
伝播や気泡自身の成長が吐出口5側に導かれ、吐出口5
から液体が吐出する。
【0032】つまり、気泡発生領域10上に、液流路7
内の液体の流れの上流側(共通液室8側)に支点6aを
持ち下流側(吐出口5側)に自由端6bを持つ可動部材
6を設けることによって、気泡の圧力伝播方向が下流側
へ導かれ、気泡の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与す
ることになる。そして、気泡の成長方向自体も圧力伝播
方向と同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく
成長する。このように、気泡の成長方向自体を可動部材
によって制御し、気泡の圧力伝播方向を制御すること
で、吐出効率や吐出力または吐出速度などの根本的な吐
出特性を向上させることができる。
【0033】一方、気泡が消泡工程に入ると、可動部材
6の弾性力との相乗効果で気泡は急速に消泡し、可動部
材6も最終的には図1に実線で示した初期位置に復帰す
る。このとき、気泡発生領域10での気泡の収縮体積を
補うため、また、吐出された液体の体積分を補うため
に、上流側すなわち共通液室8側から液体が流れ込み、
液流路7への液体の充填(リフィル)が行われるが、こ
の液体のリフィルは、可動部材6の復帰作用に伴って効
率よく合理的かつ安定して行われる。
【0034】このような本実施形態の液体吐出ヘッドで
は、上述したように素子基板1がシリコン基板で構成さ
れ、天板3、流路側壁9、オリフィスプレート4および
可動部材6がシリコン系の材料で構成され、それぞれの
部材の材料にシリコンが含まれている。これにより、そ
れぞれの部品の線膨張率の違いにより発生する応力が抑
制される。これにより、液体吐出ヘッドの機械的特性が
向上し、吐出特性が安定すると共に、信頼性の高い液体
吐出ヘッドが実現される。
【0035】図2は、図1に示した素子基板1を示す平
面図である。図2に示すように、素子基板1の天板3側
の面には、複数の発熱体2が素子基板1の一方の縁部に
沿って並列に配置されている。素子基板1のその面の中
央部がヒータドライバ形成領域21となっており、ヒー
タドライバ形成領域21に、複数の発熱体2が並ぶ方向
と同じ方向に並ぶ複数のヒータドライバが形成されてい
る。また、ヒータドライバ形成領域21の、発熱体2側
と反対側の部分には、シフトレジスタラッチ22が形成
されている。
【0036】図3は、図2のA部の拡大図である。本実
施形態で用いた素子基板1としては、記録画像の解像度
が600dpi(dpi:25.4mmあたりのドット
数)以上となる高密度ヒータ配列のものを用いている。
素子基板1上での配線の引き回しを考慮して、発熱体2
を駆動するヒータドライバの列が一段となっている。図
2に示したヒータドライバ形成領域21には、図3に示
すように、発熱体2が並ぶ方向と同じ方向に並ぶヒータ
ドライバ31が形成されている。ヒータドライバ31の
ピッチは発熱体2のピッチと同じであり、そのピッチP
1は、15〜42μmとなっている。
【0037】ヒータドライバ31は、ヒータドライバ3
1が並ぶ方向に対して垂直な方向に延びるソース32
と、ソース32と平行なドレイン33およびゲート34
とで構成されている。ドレイン33は発熱体2と電気的
に接続されている。また、ヒータドライバ形成領域21
には、金属層で構成されたヒータ駆動電源35およびグ
ランド36が形成されている。
【0038】ここで、ヒータドライバ31の条件として
は、高耐圧(10〜50V程度)であり、かつ、前記の
ようにピッチ15〜42μmという非常に狭い幅で配置
できるドライバが必要である。その条件を満足するヒー
タドライバ31として、オフセットMOS型、LDMO
S型、VDMOS型トランジスタなどを用いることがで
きる。
【0039】図4は、図1に示した素子基板1の変形例
を示す拡大図である。図3に示したものでは、ヒータド
ライバ31のピッチと、発熱体2のピッチとが同じであ
ったが、図4に示されるものでは、ヒータドライバ31
のピッチP3が発熱体2のピッチP2の2倍になってい
る。このような素子基板1を用いて1つのノズルに複数
の発熱体2を配置し、1つのノズルで複数の発熱体2を
駆動することによって、階調記録を行うことができる。
【0040】次に、図3または図4に示した構成の素子
基板1において、記録画像の解像度が1200dpiと
なるように発熱体2が配列される例について説明する。
この場合、発熱体2を駆動するための電源の電圧は、配
線の抵抗や、電源自体のばらつき、ヒータドライバ31
のばらつきなどを考慮すると、なるべく高くすることが
望ましい。本実施形態では、電源の電圧を24Vにし
た。発熱体2のピッチは約21μmとなり、発熱体2の
幅を、マージンを含めて14μmとした。1200dp
iの記録密度に必要な発熱体2の面積を確保するため
に、発熱体2の長さを60μmとした。ここで、発熱体
2を数μsの間隔で駆動するためには、発熱体2の抵抗
値を大きくすることが必要であり、発熱体2のシート抵
抗値としては50Ω/□以上が要求される。
【0041】そこで、1200dpi用の発熱体2の材
料としてTaSiNを用いることによって、発熱体2の
抵抗値を200Ω以上に設定した。ヒータドライバ31
としては、比較的、幅を小さくすることができるLDM
OS型トランジスタを用いた。このように構成された液
体吐出ヘッドを駆動することによって、1200dpi
の記録画像を得ることができた。
【0042】上記のように、発熱体2が高密度に配置さ
れた液体吐出ヘッドにおいて、ヒータドライバ31とし
て、オフセットMOS型、LDMOS型、VDMOS型
トランジスタなどを用いることによって、素子基板1に
ヒータドライバ31を一列(一段)に高密度に配置する
ことでき、素子基板1で効率のよい配線のレイアウトが
可能となる。その結果、素子基板1をチップサイズに小
型化することができる。また、50Ω/□以上とシート
抵抗が高い材料を用いた発熱体2と、上記の種類のMO
Sなど、10V以上の電圧に耐えうる高耐圧のヒータド
ライバ31とを組み合わせることによって、発熱体2に
かかる電圧のばらつきが少ない液体吐出ヘッドの構成が
実現される。
【0043】次に、本実施形態の液体吐出ヘッドの製造
方法について説明する。図5および図6は、図1に基づ
いて説明した液体吐出ヘッドの製造方法について説明す
るための図である。図5および図6に示される図(a)
〜図(i)が、液流路が延びる方向に対して垂直な方向
の断面図であり、図5および図6に示される図(a’)
〜図(i’)が、液流路方向に沿った断面図である。本
実施形態の液体吐出ヘッドは、図5に示される図(a)
および図(a’)から、図6に示される図(i)および
図(i’)の工程を経て製造される。
【0044】まず、図5の(a)および(a’)におい
て、素子基板1の発熱体2側の面全体に、CVD法によ
って温度350℃の条件でPSG(phospho silicate g
lass)膜101を形成する。このPSG膜101の膜厚
は、図1に示した可動部材6と発熱体2とのギャップに
相当し、PSG膜101の膜厚を1〜20μmにする。
これにより、液体吐出ヘッドの液流路全体のバランス
上、可動部材6の効果が顕著にあらわれる。次に、PS
G膜101をパターニングするために、PSG膜101
の表面に、スピンコートなどによりレジストを塗布した
後、フォトリソグラフィーとして露光および現像を行
い、そのレジストの、可動部材6が固定される部分に相
当する部分を除去する。
【0045】そして、図5の(b)および(b’)にお
いて、PSG膜101の、前記レジストで覆われていな
い部分を、バッファードフッ酸によるウェットエッチン
グによって除去する。その後、PSG膜101の表面に
残っている前記レジストを、酸素プラズマによるプラズ
マアッシング、あるいは素子基板1をレジスト除去剤に
浸すことによって除去する。これにより、PSG膜10
1の一部が素子基板1の表面に残され、そのPSG膜1
01の一部が、気泡発生領域10の空間に相当する型部
材となる。このような工程を経て、素子基板1の表面
に、気泡発生領域10の空間に相当する型部材が作り込
まれる。
【0046】次に、図5の(c)および(c’)におい
て、素子基板1およびPSG膜101の表面に、プラズ
マCVD法により温度400℃の条件で、第1の材料層
として、アンモニアとシランガスを原料とする、厚さ1
〜10μmのSiN膜102を形成する。このSiN膜
102の一部が可動部材6となる。SiN膜102の組
成としては、Si34が最も良いとされるが、可動部材
2の効果を得るためには、Siを1としてNの比率が1
〜1.5の範囲であっても良い。このSiN膜は、半導
体プロセスで一般的に使用され、耐アルカリ性、化学的
安定性、および耐インク性を有している。SiN膜10
2の一部が可動部材2となるため、この膜の材質が、可
動部材2として最適な物性値を得られる構造および組成
であれば、この膜の製造方法は限定されない。例えば、
SiN膜102の形成方法として、前述したプラズマC
VD法の代わりに、常圧CVD、LPCVD、バイアス
ECRCVD、マイクロ波CVD、あるいはスパッタ
法、塗装方法などを用いてもよい。また、SiN膜にお
いても、その応力、剛性、ヤング率などの物理的特性
や、耐アルカリ性、耐酸性などの化学的特性を、その用
途に応じて向上させるために、段階的に組成比を変えて
多層膜化してもよい。あるいは、段階的に不純物を添加
して多層膜化したり、単層で不純物を添加してもよい。
【0047】次に、図5の(d)および(d’)におい
て、SiN膜102の表面に耐エッチング保護膜103
を形成する。耐エッチング保護膜103として、スパッ
タリング法によって厚さ2μmのAl膜を形成した。こ
の耐エッチング保護膜103によって、次の工程で流路
側壁9を形成するためにエッチングを行う際に、可動部
材6となるSiN膜102へのダメージが防止される。
ここでは、可動部材6と流路側壁9とがほぼ同一の材料
で形成される場合、流路側壁9の形成時のエッチングで
可動部材6もエッチングされてしまうので、その可動部
材6の、エッチングによるダメージを防止する必要が生
じるので、可動部材6となるSiN膜102の、素子基
板1側と反対側の面に耐エッチング保護膜103を形成
する。
【0048】次に、SiN膜102および耐エッチング
保護膜103を所定の形状にするために、耐エッチング
保護膜103の表面にレジストをスピンコートなどによ
り塗布し、フォトリソグラフィーによりパターニングを
行う。
【0049】その後、図5の(e)および(e’)にお
いて、CF4ガスなどを使用したドライエッチング、あ
るいはリアクティブイオンエッチング法などによってS
iN膜102および耐エッチング保護膜103のエッチ
ングを行い、SiN膜102および耐エッチング保護膜
103を可動部材6の形状にする。これにより、素子基
板1の表面に可動部材6が作り込まれる。ここでは、耐
エッチング保護膜103およびSiN膜102を同時に
パターニングしたが、耐エッチング保護膜103のみを
可動部材6の形状にパターニングし、後の工程でSiN
膜102をパターニングしてもよい。
【0050】次に、図6の(f)および(f’)におい
て、耐エッチング保護膜103、PSG膜101および
素子基板1の表面に、第2の材料層として、厚さ20〜
40μmのSiN膜104を形成する。SiN膜104
を高速で形成したい場合には、マイクロウェーブCVD
法を用いる。このSiN膜104が、最終的に流路側壁
9となる。SiN膜104は、通常、半導体の製造工程
で求められるような膜の特性、例えばピンホール密度
や、膜の緻密さには左右されない。SiN膜104は、
液流側壁9としての耐インク特性や、機械的強度を満た
すものであればよく、SiN膜104の高速成形によっ
てSiN膜104のピンホール密度が、多少、高くなっ
ても問題はない。
【0051】また、ここではSiN膜を用いたが、流路
側壁9の材料としてSiN膜に限定されることはなく、
不純物を含んだSiN膜や、組成を変えたSiN膜な
ど、機械的特性および耐インク性を有するものであれば
よく、ダイヤモンド膜、水素化アモルファスカーボン膜
(ダイヤモンドライクカーボン膜)、アルミナ系、ジル
コニア系などの無機膜でもよい。
【0052】次に、SiN膜104を所定の形状にする
ために、SiN膜104の表面にレジストをスピンコー
トなどにより塗布し、フォトリソグラフィーによりパタ
ーニングを行う。その後、CF4ガスなどを使用したド
ライエッチング、あるいはリアクティブイオンエッチン
グを行い、図6の(g)および(g’)に示すように、
SiN膜104を流路側壁9の形状にする。あるいは、
より高速なエッチング性を重視すると、ICP(誘導結
合プラズマ)エッチング法が、厚いSiN膜104のエ
ッチングに最も適している。このような工程を経て、素
子基板1の表面に流路側壁9が作り込まれる。そして、
SiN膜104のエッチングを行った後、酸素プラズマ
によるプラズマアッシング、あるいは、素子基板1をレ
ジスト除去剤に浸すことによって、SiN膜104上に
残ったレジストを除去する。
【0053】次に、図6の(h)および(h’)に示す
ように、SiN膜102上の耐エッチング保護膜103
をウェットエッチングまたはドライエッチングによって
除去する。ここでは、それらの方法に限定されず、耐エ
ッチング保護膜103のみを除去することができれば、
どのような方法でもよい。あるいは、耐エッチング保護
膜103が可動部材6の特性に悪影響を及ぼさなく、か
つ、耐エッチング保護膜103が、耐インク性の高いT
a膜などであれば、耐エッチング保護膜103を除去す
る必要はない。
【0054】次に、図6の(i)および(i’)に示す
ように、バッファードフッ酸によってSiN膜102の
下層のPSG膜101を除去することにより、本実施形
態の液体吐出ヘッドが製造される。
【0055】上記のような液体吐出ヘッドの製造方法で
は、素子基板1上に可動部材6および流路側壁9を直接
作り込むので、それらの部材を別々に作製した後に液体
吐出ヘッドを組み立てる場合と比較して、組み立ての工
程がなくなり、製造工程が簡略化される。また、可動部
材6を接着剤などによって接着させることがないので、
接着剤によって液流路7の内部の液体が汚染されること
がない。さらに、組み立ての際に、素子基板1の表面に
傷がつくことがなく、可動部材6を貼り付ける時にごみ
が生じるということもない。そして、フォトリソグラフ
ィーやエッチングなど半導体の製造工程を経て、それぞ
れの部材が形成されるので、高い精度で、かつ、高密度
に可動部材6や流路側壁9を形成することができる。
【0056】また、上述したように、素子基板1には様
々な配線等がパターニングされて形成されているので、
素子基板1の表面は厳密には平坦ではない。つまり、素
子基板1の表面には、形成された配線等の厚さに応じた
段差が生じている。可動部材6は、このような素子基板
1上に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング等の半
導体製造プロセスを用いて形成されるので、可動部材6
の断面形状は、素子基板1の表面の段差の影響を受けた
ものとなる。
【0057】以下に、このことについて図7を参照して
説明する。図7は、液体吐出ヘッドの素子基板及び可動
部材の詳細な構造を説明するための図であり、(a)は
その要部平面図、(b)は(a)のA−A線断面図であ
る。
【0058】図7に示すように、ベースとなるシリコン
基板151の表面に、共通配線としてAlからなる第1
の配線層152が形成され、さらにその上に、シリコン
基板151全体を覆って酸化シリコンからなる層間絶縁
層153が形成されている。層間絶縁層153の第1の
配線層152上に対応する部位には、後述する第2の配
線層155との接続のためにスルーホール153aが形
成される。層間絶縁層153上にはさらに発熱体層(電
気抵抗層)154が形成され、この発熱体層154の上
に、個別配線としてAlからなる第2の配線層155が
形成されている。そして、第2の配線層155の上に保
護膜156が形成され、素子基板1が得られる。こうし
て得られた素子基板1の上に、窒化シリコンからなる可
動部材層157が可動部材6の形状に合わせて櫛歯状に
形成される。
【0059】第1の配線層153と第2の配線層155
との間に電圧を印加することにより、発熱体層154が
発熱し、発熱体層154の第2の配線層155が形成さ
れていない領域が実質的には発熱体として作用する。
【0060】このような積層構造において、特に第1の
配線層152及び第2の配線層155はシリコン基板1
51の表面全体に形成されるのではなく所定のパターン
で形成され、さらにはスルーホール153aも設けられ
ているので、保護膜156の表面(素子基板1の表面)
には段差部が生じている。その結果、この素子基板1上
に形成される可動部材層157も素子基板1の表面形状
を転写した形状となり、固定部と可動部との境界によっ
て形成される段差部の他に、素子基板1の段差部と対応
する不必要な段差部が形成される。例えば、第1の配線
層152及び第2の配線層155をそれぞれ0.5μ
m、層間絶縁層153を1.2μmの膜厚で形成したと
すると、この層間絶縁層153にスルーホール153a
を形成しているので、保護膜156の表面には、最大で
1.2μmの不必要な段差部が形成されることになる。
【0061】この可動部材層157は、可動部材6を構
成するもので、可動部材6の可動という特性上、特にそ
の可動部及び支点部の耐久性が重要である。上述した段
差部は、可動部材6の耐久性に大きく関係し、段差部の
位置や高さによっては可動部材6の耐久性が著しく悪化
する。
【0062】そこで本発明者等が検討を重ねた結果、素
子基板1の表面の、可動部材6の固定部と可動部との境
界である支点157aの近傍部分に段差を設けないこと
が重要であることが分かった。なお、支点部近傍に段差
を設けないとは、少なくとも可動部材の間隙に係る可動
部材の最表面の高さの変化領域(C)の直下に段差を有
さないことを意味する。
【0063】上述のように、複数の配線層構造を有する
基板では、段差を生じさせる最も大きな要因は、層間を
電気的に接続するためのスルーホールである。従って、
図7に示したように、スルーホール153aの位置を、
可動部材6の可動部と固定部との境界とは異なる位置に
設けることによって、可動部材6の耐久性が向上する。
言い換えると、素子基板1の表面の、可動部材6の可動
部と固定部との境界部に段差が生じていると、可動部材
6の耐久性が著しく低下してしまう。
【0064】これは、インクの発泡パワーで可動部材6
の可動部が変位する際、特に支点157aに大きな力が
加わるので、可動部材6の支点157aの近傍に、素子
基板1の段差に起因する段差があると、ここに応力が集
中して他の部分に段差がある場合に比べて大きな力が加
わり、そこを起点として可動部材6の破壊が始まるため
であると考えられる。
【0065】さらに、スルーホールを積極的に可動部材
の固定部に置くことで、固定部の密着力を向上させるこ
ともでき、さらに可動部材の信頼性を向上させることが
できる。このことは図7に示すように複数の可動部材の
固定部を共通のもの(連続したもの)とすることで、スル
ーホール部を被覆している固定部にかかる応力を分散さ
せることができるため、さらに好ましい。
【0066】また、素子基板1の表面に生じる段差は、
スルーホール153aによるものばかりではなく、下層
のパターンの端部に相当する部位も生じる。これらの段
差はスルーホール153aによる段差ほど大きくはない
が、その位置や高さによっては可動部材6の耐久性に影
響を及ぼす。
【0067】また、可動部材6は、インクの発泡パワー
により可動部全体が大きく変位するので、素子基板上の
上記範囲Cに段差がない場合であっても、可動部に形成
された段差は可動部材6の耐久性に僅かではあるが影響
を与える。これは、フォトリソグラフィ技術(及び成膜
技術)を用いて基板上に可動部材を作る場合、可動部材
の形状や膜質は上述の段差によって変化するためであ
る。そして、可動部材6が変位する際、可動部材6自身
も僅かに変形するため、可動部材6の可動部に、素子基
板1の表面の段差に起因する段差が形成されていると、
この段差には、支点157aの近傍と比較すると極めて
小さいが応力が集中し易くなる。従って、上記範囲Cを
可動部側に可動部材6の自由端まで広げた範囲Dにおい
て、素子基板1の表面に段差が形成されていないのが好
ましい。
【0068】例えば、上記の膜厚で第1及び第2の配線
層152,155、層間絶縁層153を形成し、さらに
可動部材層157の厚さtを5μmとすると、スルーホ
ール153aに対応して素子基板1の表面に形成された
段差は1.2μmとなる。しかし、この段差の位置が、
上記の範囲D以外に位置するように形成されていれば、
可動部材6の耐久性は殆ど低下しない。このように、段
差の位置を上記の範囲D以外に位置することにより、先
の応力集中防止のほかにも可動部材の形状や膜質の安定
化をもたらすこともでき、信頼性の高い可動部材を有す
る液体吐出ヘッド用基板及び液体吐出ヘッドを提供する
ことができる。
【0069】スルーホール153a以外の、配線パター
ンにより形成された段差についても耐久性の確認を行っ
たが、上述のように段差の位置を設定することにより耐
久性には影響が殆どないことが分かった。
【0070】以上述べたように、素子基板1の表面の範
囲Cまたは範囲Dにスルーホール等の段差を設けないこ
とで、可動部材6の変位の際の可動部材6の支点157
aの近傍、さらには可動部材6の可動部全体での応力集
中が緩和されるので、可動部材の耐久性を向上させるこ
とができる。その結果、可動部材の所望の機能が長期に
わたって維持されるので、吐出特性が安定したものとな
り、信頼性が向上した液体吐出ヘッドが得られる。
【0071】図8は、図5および図6に基づいて説明し
た液体吐出ヘッドの製造方法の変形例について説明する
ための図である。図5および図6を参照して説明した液
体吐出ヘッドの製造方法において、流路側壁9と同時に
オリフィスプレート4を形成することができる。次に、
流路側壁9とオリフィスプレート4とを同時に形成す
る、液体吐出ヘッドの製造方法について、図8を参照し
て説明する。図8に示される図(j)および図(k)
が、液流路が延びる方向に対して垂直な方向の断面図で
あり、図8に示される図(l)および図(m)が正面図
である。また、図8に示される図(j’)〜図(m’)
が、液流路方向に沿った断面図である。
【0072】図6の(f)および(f’)に示したよう
にSiN膜104を形成した後、図9の(j)および
(j’)に示すように、SiN膜104の、流路側壁9
およびオリフィスプレート4に対応する部分を残すよう
に、フォトリソグラフィーによりパターニングした後、
エッチングを行う。このようにして、厚さ2〜30μm
のオリフィスプレート4、および液流路側壁9を、素子
基板1の表面に同時に作り込む。
【0073】次に、図8の(k)および(k’)に示す
ように、SiN膜102上の耐エッチング保護膜103
をウェットエッチングまたはドライエッチングによって
除去する。
【0074】次に、図8の(l)および(l’)に示す
ように、バッファードフッ酸によってSiN膜102の
下層のPSG膜101を除去する。
【0075】次に、図8の(m)および(m’)に示す
ように、オリフィスプレート4にエキシマレーザを照射
してアブレーション加工を行い、オリフィスプレート4
に吐出口5を形成する。この時、SiN膜の結合解離エ
ネルギー105kcal/mol(4.3953×105J/mol)
以上の光子エネルギー115kcal/mol(4.18390
×105J/mol)を持つKrFエキシマレーザによって、
SiN膜の分子結合を直接切断する。このエキシマレー
ザによる加工は非熱加工であるため、加工部周辺熱だれ
や炭化のない、精度の高い加工を行うことができる。
【0076】本例においても、素子基板1の表面には、
SiN膜102(可動部材6)の可動部の支点を基準に
した上述の範囲C、望ましくは範囲Dに、SiN膜10
2の厚さの1/5を超える高さの段差が生じないよう
に、また、連続した段差の合計の平均傾斜角度が20度
以下になるように、素子基板1に形成される配線等のパ
ターンやスルーホールの位置が決定される。
【0077】図9は、上述した液体吐出ヘッドを搭載し
た液体吐出装置を示す斜視図である。本実施形態では、
特に吐出液体としてインクを用いた液体吐出装置IJR
Aを用いて説明する。図9に示すように、液体吐出装置
IJRAに備えられたキャリッジHCは、インクを収容
する液体容器90と液体吐出ヘッド200とが着脱可能
なヘッドカートリッジ202を搭載している。また、液
体吐出装置IJRAには被記録媒体搬送手段が備えられ
ており、その被記録媒体搬送手段で搬送される記録紙な
どの被記録媒体150の幅方向(矢印a,b方向)に、
キャリッジHCが往復運動する。液体吐出装置IJRA
では、不図示の駆動信号供給手段からキャリッジHC上
の液体吐出ヘッド200に駆動信号が供給されると、こ
の駆動信号に応じて液体吐出ヘッド200から被記録媒
体150に対して記録液体が吐出される。
【0078】さらに、液体吐出装置IJRAは、被記録
媒体搬送手段およびキャリッジHCを駆動するための駆
動源としてのモータ111、モータ111からの動力を
キャリッジHCに伝えるためのギア112,113、お
よびキャリッジ軸85a,85bなどを有している。こ
の液体吐出装置IJRAによって、各種の被記録媒体に
対して液体を吐出させることで良好な画像の記録物を得
ることができた。
【0079】図10は、本発明の液体吐出ヘッドを適用
したインク吐出記録装置を動作させるための装置全体の
ブロック図である。
【0080】図10に示すように、記録装置は、ホスト
コンピュータ300より印字情報を制御信号401とし
て受ける。印字情報は記録装置内部の入出力インターフ
ェイス301に一時保存されると同時に、記録装置内で
処理可能なデータに変換され、ヘッド駆動信号供給手段
を兼ねるCPU302に入力される。CPU302は、
ROM303に保存されている制御プログラムに基づ
き、CPU302に入力されたデータをRAM304な
どの周辺ユニットを用いて処理し、印字するデータ(画
像データ)に変換する。
【0081】また、CPU302は、前記画像データを
記録用紙上の適当な位置に記録するために、画像データ
に同期して記録用紙および液体吐出ヘッド200を移動
させる駆動用モータ306を駆動するための駆動データ
を作る。画像データがヘッドドライバ307を介して液
体吐出ヘッド200に伝達されると共に、モータ駆動デ
ータがモータドライバ305を介して駆動用モータ30
6に伝達される。これにより、液体吐出ヘッド200お
よび駆動用モータ306がそれぞれ、制御されたタイミ
ングで駆動されることで画像が形成される。
【0082】上述のような記録装置に適用でき、インク
などの液体の付与が行われる被録媒体としては、各種の
紙やOHPシート、コンパクトディスクや装飾板などに
用いられるプラスチック材、布帛、アルミニウムや銅な
どの金属板、牛皮、豚皮、人工皮革などの皮革材、木、
合板などの木材、竹材、タイルなどのプラスチック材、
スポンジなどの三次元構造体などを対象とすることがで
きる。
【0083】また、上述の記録装置として、各種の紙や
OHPシートなどに対して記録を行うプリンタ装置、コ
ンパクトディスクなどのプラスチック材に記録を行うプ
ラスチック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録
装置、皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を
行う木材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラ
ミックス用記録装置、スポンジなどの三次元網状構造体
に対して記録を行う記録装置、また布帛に記録を行う捺
染装置などをも含むものである。
【0084】また、これらの液体吐出装置に用いる吐出
液としては、それぞれの被記録媒体や記録条件に合わせ
た液体を用いればよい。
【0085】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、液
体吐出ヘッド用基板の表面に形成される段差の位置を可
動部材の可動部と固定部との境界を基準として、スルー
ホールとの関連で規定することで、可動部材の支点近傍
での応力集中を緩和し、可動部材の耐久性を向上させる
ことができる。その結果、長期の使用にわたっても可動
部材の所望の機能が維持されるので、吐出特性が安定し
信頼性が高い液体吐出ヘッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の液体吐出ヘッドの基本的
な構造を説明するための、液流路方向に沿った断面図で
ある。
【図2】図1に示した素子基板を示す平面図である。
【図3】図2のA部の拡大図である。
【図4】図1に示した素子基板の変形例を示す拡大図で
ある。
【図5】図1に基づいて説明した液体吐出ヘッドの製造
方法について説明するための図である。
【図6】図1に基づいて説明した液体吐出ヘッドの製造
方法について説明するための図である。
【図7】液体吐出ヘッドの素子基板及び可動部材の詳細
な構造を説明するための図であり、(a)はその要部平
面図、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【図8】図5および図6に基づいて説明した液体吐出ヘ
ッドの製造方法の変形例について説明するための図であ
る。
【図9】図1に基づいて説明した液体吐出ヘッドを搭載
した液体吐出装置を示す斜視図である。
【図10】図1に基づいて説明した液体吐出ヘッドを適
用したインク吐出記録装置を動作させるための装置全体
のブロック図である。
【符号の説明】 1 素子基板 2 発熱体 3 天板 4 オリフィスプレート 5 吐出口 6 可動部材 6a 支点 6b 自由端 7 液流路 8 共通液室 9 流路側壁 10 気泡発生領域 21 ヒータドライバ形成領域 22 シフトレジスタラッチ 31 ヒータドライバ 32 ソース 33 ドレイン 34 ゲート 35 ヒータ駆動電源 36 グランド 90 液体容器 85a、85b キャリッジ軸 101 PSG膜 102、104 SiN膜 103 耐エッチング保護膜 111 モータ 112、113 ギア 150 被記録媒体 151 シリコン基板 152 第1の配線層 153 層間絶縁層 153a スルーホール 154 発熱体層(電気抵抗層) 155 第2の配線層 156 保護膜 157 可動部材層 157a 支点 200 液体吐出ヘッド 202 ヘッドカートリッジ 300 ホストコンピュータ 301 入出力インターフェース 302 CPU 303 ROM 304 RAM 305 モータドライバ 306 駆動用モータ 307 ヘッドドライバ 401 制御信号
フロントページの続き (72)発明者 斉藤 一郎 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 尾崎 照夫 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 望月 無我 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 久保田 雅彦 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクに熱エネルギーを与えることによ
    り液体を吐出させる液体吐出ヘッドに用いられ、前記熱
    エネルギーを液体に与えるための発熱体が形成されてい
    るとともに、該発熱体に対面して、液体の流れ方向の上
    流側が固定され下流側端が自由端となって可動する可動
    部材がフォトリソグラフィ技術により形成される液体吐
    出ヘッド用基板において、 前記発熱体に電圧を印加するための2つの配線層が層間
    絶縁層を間において積層され、かつ前記2つの配線層が
    互いにスルーホールを介して電気的に接続され、 前記スルーホールは、前記可動部材の固定部と可動部と
    の境界とは異なる位置に設けられていることを特徴とす
    る液体吐出ヘッド用基板。
  2. 【請求項2】 前記スルーホールは前記可動部材の固定
    部に設けられている請求項1に記載の液体吐出ヘッド用
    基板。
  3. 【請求項3】 インクに熱エネルギーを与えることによ
    り液体を吐出させる液体吐出ヘッドに用いられ、前記熱
    エネルギーを液体に与えるための複数の発熱体が表面に
    形成されているとともに、該複数の発熱体にそれぞれ対
    面して、液体の流れ方向の上流側が固定され下流側端が
    自由端となって可動する複数の可動部材がフォトリソグ
    ラフィ技術により形成される液体吐出ヘッド用基板にお
    いて、 前記複数の発熱体に電圧を印加するための2つの配線層
    が層間絶縁層を間において積層され、かつ前記2つの配
    線層が互いに複数のスルーホールを介して電気的に接続
    され、 前記複数のスルーホールは、前記可動部材の固定部と可
    動部との境界とは異なる位置に設けられていることを特
    徴とする液体吐出ヘッド用基板。
  4. 【請求項4】 前記複数の可動部材の固定部は基板上で
    共通化されているとともに前記スルーホールは該固定部
    内に配置されている請求項3に記載の液体吐出ヘッド用
    基板。
  5. 【請求項5】 前記スルーホールによって形成された段
    差を表面に有する請求項1に記載の液体吐出ヘッド用基
    板。
  6. 【請求項6】 熱エネルギーを液体に与えるための発熱
    体が表面に形成された素子基板と、インクを吐出するた
    めの吐出口及び該吐出口に連通する溝が形成され前記素
    子基板と接合されることで前記発熱体を含む液流路を構
    成する天板部材と、前記液流路内において前記発熱体に
    対面して液体の流れ方向の上流側が前記素子基板に固定
    され下流側端が自由端となるようにフォトリソグラフィ
    技術により形成された可動部材とを有する液体吐出ヘッ
    ドにおいて、 前記素子基板として、請求項1ないし5のいずれか1項
    の液体吐出ヘッド用基板を用いたことを特徴とする液体
    吐出ヘッド。
  7. 【請求項7】 前記可動部材は窒化シリコンで形成され
    た請求項6に記載の液体吐出ヘッド。
  8. 【請求項8】 請求項6または7に記載の液体吐出ヘッ
    ドと、 該液体吐出ヘッドから液体を吐出させるための駆動信号
    を供給する駆動信号供給手段とを有する液体吐出装置。
  9. 【請求項9】 請求項6または7に記載の液体吐出ヘッ
    ドと、 該液体吐出ヘッドから液体を吐出された液体を受ける被
    記録媒体を搬送する被記録媒体搬送手段とを有する液体
    吐出装置。
  10. 【請求項10】 前記液体吐出ヘッドからインクを吐出
    し、被記録媒体に前記インクを付着させることで記録を
    行う請求項8または9に記載の液体吐出装置。
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