JP3592108B2 - 液体吐出ヘッド、液体吐出装置および液体吐出方法 - Google Patents

液体吐出ヘッド、液体吐出装置および液体吐出方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱エネルギーを液体に作用させることで起こる気泡の発生によって液体を吐出する液体吐出ヘッドおよび液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置に関する。また、本発明は、可動部材の変位と気泡成長を伴う新たな液体吐出方法及びこれを実行するための液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【0002】
本発明は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の被記録媒体に対し記録を行う、プリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサ等の装置、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業用記録装置に適用できる。ここで、本発明における「記録」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を付与することをも意味するものである。
【0003】
【従来の技術】
熱等のエネルギーをインクに与えることで、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着させて画像形成を行なうインクジェット記録方法、いわゆるバブルジェット記録方法が従来知られている。このバブルジェット記録方法を用いる記録装置には、米国特許第4,723,129号明細書等の公報に開示されているように、インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通するインク流路と、インク流路内に配されたインクを吐出するためのエネルギー発生手段としての電気熱変換体が配されている。
【0004】
この様な記録方法によれば、品位の高い画像を高速、低騒音で記録することができるとともに、この記録方法を行うヘッドではインクを吐出するための吐出口を高密度に配置することができるため、小型の装置で高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得ることができるという多くの優れた点を有している。このため、このバブルジェット記録方法は、近年、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムにまで利用されるようになってきている。
【0005】
このようにバブルジェット技術が多方面の製品に利用されるに従って、次のような様々な要求が近年さらにたかまっている。例えば、エネルギー効率の向上の要求に対する検討としては、保護膜の厚さを調整するといった発熱体の最適化が挙げられている。この手法は、発生した熱の液体への伝搬効率を向上させる点で効果がある。また、高画質な画像を得るために、インクの吐出スピードが速く、安定した気泡発生に基づく良好なインク吐出を行える液体吐出方法等を与えるための駆動条件が提案されたり、また、高速記録の観点から、吐出された液体の液流路内への充填(リフィル)速度の速い液体吐出ヘッドを得るために、流路形状を改良したものも提案されている。
【0006】
この流路形状の内、特開昭63−199972号公報等に記載されている流路構造やヘッド製造方法は、気泡の発生に伴って発生するバック波(吐出口へ向かう方向とは逆の方向へ向かう圧力、即ち、液室へ向かう圧力)に着目した発明である。このバック波は、吐出方向へ向かうエネルギーでないため損失エネルギーとして知られている。特開昭63−199972号公報に開示されているヘッドは、発熱素子が形成する気泡の発泡領域よりも離れ、かつ、発熱素子に関して吐出口とは反対側に位置する弁を有する。この弁は、板材等を利用する製造方法によって流路の天井に貼り付いたように初期位置を持ち、気泡の発生に伴って流路内に垂れ下がる。この発明は、上述したバック波の一部を弁によって制御することでエネルギー損失を制御するものとして開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この構成において、吐出すべき液体を保持する流路内部に気泡が発生した前後の流路内の挙動を検討するとわかるように、弁によるバック波の一部を抑制することは、液体の吐出にとって必ずしも実用的なものではない。もともとバック波自体は、液体の吐出に直接的には関係しないものである。従って、バック波のうちの一部を抑制したからといって、液体の吐出に大きな影響を与えることはない。
【0008】
また、インクのリフィルを向上させ、周波数応答性に優れたヘッドを得るべく、ノズルのヒーター近傍を副流路に連通させた構造のヘッドも従来提案されている。インクのリフィル時、この副流路からもノズルにインクを供給し、リフィルの時間短縮を図ったものである。しかしながら、このような構造のヘッドでは、発泡時に発生する吐出力の一部が副流路に逃げてしまうため、吐出効率の低下が起ってしまうおそれがあった。
【0009】
本発明は、気泡(特に膜沸騰に伴う気泡)を液流路中に形成して液体を吐出する方式における根本的な吐出特性を、従来では考えられなかった観点から、従来では予想できない水準にまで高めることを主たる目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者達の一部は、先に液滴吐出の原理に立ち返り、従来では得られなかった気泡を利用した新規な液滴吐出方法及びそれに用いられるヘッド等を提供すべく鋭意研究を行った。そして、流路中の可動部材の機構の原理を解析するといった液流路中の可動部材の動作を起点とする第1技術解析、及び気泡による液滴吐出原理を起点とする第2技術解析、さらには、気泡形成用の発熱体の気泡形成領域を起点とする第3解析を行った。
【0011】
これらの解析により、可動部材を発熱体もしくは気泡発生領域に面して配することで、積極的に気泡を制御する全く新規な技術を確立するに至った。この発明の他の特徴は、気泡自体が吐出量に与えるエネルギーを考慮すると、気泡の下流側の成長成分を利用することが吐出特性を格段に向上できる要因として最大であるとの知見に基づき、気泡の下流側の成長成分を吐出方向へ効率よく変換させることにある。これにより、吐出効率、吐出速度の向上をもたらすことができるものである。
【0012】
本発明は、前述した画期的な吐出原理を一層優れたものにすることができる新たな吐出方法及び吐出原理を提供するものである。すなわち、本発明は、可動部材の自由端の変位と気泡発生領域から得られる気泡の成長との関係、さらには可動部材の配置や液流路の構造的要素を勘案することにより、吐出効率と液体のリフィル性との一層の向上を可能ならしめる吐出原理を追求したものである。
【0013】
本発明の目的の一つは、可動部材の配置や液流路の構造的要素を勘案することにより、吐出効率と液体のリフィル性とを向上させた液体吐出ヘッド、液体吐出装置および液体吐出方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、可動部材の弁機構によってバック波による液体供給方向とは逆方向への慣性力が働くのを抑えるとともにメニスカス後退量を低減させることで、リフィル周波数を高め印字速度を向上させた液体吐出ヘッド、液体吐出装置および液体吐出方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、可動部材の弁機構が気泡の発生により作動する際、可動部材の所定の変位位置までの液流路から受ける抵抗を少なくすることで、可動部材の適正変位位置に速やかに到達させることにより、吐出効率を向上させた液体吐出ヘッド、液体吐出装置および液体吐出方法を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、発熱体上の液体への蓄熱を大幅に軽減できるとともに、発熱体上の残留気泡の低減をも図ることにより、良好な液体吐出を行い得る液体吐出ヘッド、液体吐出装置および液体吐出方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、液体吐出ヘッドの各構成部品の材質の違いによる機械的特性の問題を解決することができる液体吐出ヘッド、液体吐出装置および液体吐出方法を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、液体吐出ヘッドの各構成部品の組立上の問題を解決し、さらに素子基板上への発熱体の高密度配列を達成することにより、液体吐出ヘッドの小型化を可能にすることができる液体吐出ヘッド、液体吐出装置および液体吐出方法を提供することにある。
【0019】
本発明の特徴は、液体吐出ヘッドにおいて、液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通する液流路と、液体に気泡が発生する気泡発生領域と、該気泡発生領域に面して配され前記吐出口に向かう前記液流路の下流側に自由端を具備する可動部材とを有し、少なくとも前記可動部材が初期位置にあるときには、前記液流路の前記気泡発生領域に対応する部分の側方が、実質的に全面的に壁面からなり、前記可動部材が最大変位状態にあるときには、該可動部材の前記自由端の側方に前記壁面が存在し、前記可動部材の可動部分の上方には、前記液流路とそれに隣接する液流路とを連通させる共通連通空間が設けられているところにある。
【0020】
本発明の他の特徴は、液体吐出方法において、液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通する液流路と、液体に気泡が発生する気泡発生領域と、該気泡発生領域に面して配され前記吐出口に向かう前記液流路の下流側に自由端を具備する可動部材とを有する液体吐出ヘッドを用い、少なくとも、実質的にすべて壁面からなる、前記液流路の前記気泡発生領域に対応する部分の側方部と、前記可動部材が最大変位状態にあるときの該可動部材の前記自由端の側方部と、前記可動部材とにより、前記気泡発生領域における気泡の成長を前記吐出口の方へ導きながら、液体を吐出する液体吐出工程と、気泡の収縮開始後に、少なくとも、前記可動部材の可動部分の上方に配された、前記液流路とそれに隣接する液流路とを連通させる共通連通空間から、前記吐出口の方へ液体を供給するところにある。
【0021】
なお、本発明の説明で用いる「上流」、「下流」とは、液体の供給源から気泡発生領域(または可動部材)を経て、吐出口へ向かう液体の流れ方向に関しての表現として表わされている。また、気泡自体に関する「下流側」とは、主として液滴の吐出に直接作用するとされる気泡の吐出口側部分を代表する。より具体的には、気泡の中心に対して、上記流れ方向に関する下流側、または発熱体の面積中心より下流側の領域で発生する気泡を意味する。
【0022】
また、本発明の説明で用いる「実質的に密閉」とは、気泡が成長するとき、可動部材が変位する前に可動部材の周囲の隙間(スリット)から気泡がすり抜けない程度の状態を意味する。
【0023】
さらに、本発明でいう「分離壁」とは、広義では気泡発生領域と吐出口に直接連通する領域とを区分するように介在する壁(可動部材を含んでもよい)を意味し、狭義では気泡発生領域を含む流路と吐出口に直接連通する液流路とを区分し、それぞれの領域にある液体の混合を防止するものを意味する。
【0024】
さらに、本発明でいう「気泡発生領域」とは、液体に気泡を発生させる手段を有する基板と可動部材との間に発生する気泡が存在しうる領域を示すもので、気泡発生手段が発熱体の場合、製品に使用し得る通常の駆動条件においては発熱体の面積よりやや広い範囲となる。また、気泡の膨張に伴う可動部材の変位によって気泡発生領域は拡大し、最終的には気泡の存在した領域すべてを気泡発生領域と定義することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
(原理説明)
以下、本発明に適用可能な吐出原理について詳細に説明する。図1は液体吐出ヘッドを液流路方向で切断した断面模式図であり、図2はこの液体吐出ヘッドの部分破断斜視図である。
【0027】
図1の液体吐出ヘッドは、液体を吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生素子として熱エネルギーを発生する発熱体2(本例においては40μm×105μmの矩形の発熱抵抗体)が素子基板1に設けられており、この素子基板上に発熱体2に対応して液流路10が配されている。液流路10は吐出口18に連通していると共に、複数の液流路10に液体を供給するための共通液室13に連通しており、吐出口から吐出された液体に見合う量の液体をこの共通液室13から受け取る。
【0028】
この液流路10の素子基板上には、前述の発熱体2に対向するように面して、金属等の弾性を有する材料で構成され、平面部を有する板状の可動部材31が片持梁状に設けられている。この可動部材の一端は液流路10の壁や素子基板上に感光性樹脂などをパターニングして形成した土台(支持部材)34等に固定されている。これによって、可動部材は保持されると共に支点(支点部分)33を構成している。
【0029】
この可動部材31は、液体の吐出動作によって共通液室13から可動部材31を経て吐出口18側へ流れる大きな流れの上流側に支点(支点部分;固定端)33を持ち、この支点33に対して下流側に自由端(自由端部分)32を持つように、発熱体2に面した位置に発熱体2を覆うような状態で発熱体から15μm程度の距離を隔てて配されている。この発熱体と可動部材との間が気泡発生領域となる。なお発熱体、可動部材の種類や形状および配置はこれに限られることなく、後述するように気泡の成長や圧力の伝搬を制御しうる形状および配置であればよい。なお、上述した液流路10は、後述する液体の流れの説明のため、可動部材31を境にして直接吐出口18に連通している部分を第1の液流路10aとし、気泡発生領域11を有する第2の液流路10bの2つの領域に分けて説明する。
【0030】
発熱体2を発熱させることで可動部材31と発熱体2との間の気泡発生領域11の液体に熱を作用し、液体にUSP4,723,129に記載されているような膜沸騰現象に基づく気泡を発生させる。気泡の発生に基づく圧力と気泡は可動部材に優先的に作用し、可動部材31は図1(b)、(c)もしくは図2で示されるように支点33を中心に吐出口側に大きく開くように変位する。可動部材31の変位若しくは変位した状態によって気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気泡自身の成長が吐出口側に導かれる。
【0031】
ここで、本発明に適用される基本的な吐出原理の一つを説明する。本発明において最も重要な原理の1つは、気泡に対面するように配された可動部材が気泡の圧力あるいは気泡自体に基づいて、定常状態の第1の位置から変位後の位置である第2の位置へ変位し、この変位する可動部材31によって気泡の発生に伴う圧力や気泡自身を吐出口18が配された下流側へ導くことである。
【0032】
この原理を、可動部材を用いない従来の液流路構造を模式的に示した図3と本発明の図4とを比較してさらに詳しく説明する。なおここでは吐出口方向への圧力の伝搬方向をV、上流側への圧力の伝搬方向をVとして示した。
【0033】
図3で示されるような従来のヘッドにおいては、発生した気泡40による圧力の伝搬方向を規制する構成はない。このため気泡40の圧力伝搬方向はV〜Vのように気泡表面の垂線方向となり様々な方向を向いていた。このうち、特に液吐出に最も影響を及ぼすV方向に圧力伝搬方向の成分を持つものは、V〜V即ち気泡のほぼ半分の位置より吐出口に近い部分の圧力伝搬の方向成分であり、液吐出効率、液吐出力、吐出速度等に直接寄与する重要な部分である。さらにVは吐出方向Vの方向に最も近いため効率よく働き、逆にVはVに向かう方向成分が比較的少ない。
【0034】
これに対して、図4で示される本発明の場合には、図3の場合には様々な方向を向いていた気泡の圧力伝搬方向V〜Vを、可動部材31が下流側(吐出口側)へ導き、Vの圧力伝搬方向に変換するものであり、これにより気泡40の圧力が直接的に効率よく吐出に寄与することになる。そして、気泡の成長方向自体も圧力伝搬方向V〜Vと同様に下流方向に導かれ、上流より下流で大きく成長する。このように、気泡の成長方向自体を可動部材によって制御し、気泡の圧力伝搬方向を制御することで、結果的に、液体の移動方向を吐出口方向へ効率よく向わせるように制御し、吐出効率や吐出力また吐出速度等の根本的な向上を達成することができる。
【0035】
次に図1に戻って、上述した液体吐出ヘッドの吐出動作について詳しく説明する。
【0036】
図1(a)は、発熱体2に電気エネルギー等のエネルギーが印加される前の状態であり、発熱体が熱を発生する前の状態である。ここで重要なことは、可動部材31が、発熱体の発熱によって発生した気泡に対し、この気泡の少なくとも下流側部分に対面する位置に設けられていることである。つまり、気泡の下流側が可動部材に作用するように、液流路構造上では少なくとも発熱体の面積中心3より下流(発熱体の面積中心3を通って流路の長さ方向に直交する線より下流)の位置まで可動部材31が配されている。
【0037】
図1(b)は、発熱体2に電気エネルギー等が印加されて発熱体2が発熱し、発生した熱によって気泡発生領域11内を満たす液体の一部を加熱し、膜沸騰に伴う気泡を発生させた状態である。このとき可動部材31は気泡40の発生に基づく圧力により、気泡40の圧力の伝搬方向を吐出口方向に導くように第1位置から第2位置へ変位する。ここで重要なことは前述したように、可動部材31の自由端32を下流側(吐出口側)に配置し、支点33を上流側(共通液室側)に位置するように配置して、可動部材の少なくとも一部を発熱体の下流部分すなわち気泡の下流部分に対面させることである。
【0038】
図1(c)は気泡40がさらに成長した状態であるが、気泡40発生に伴う圧力に応じて可動部材31はさらに変位している。可動部材は気泡や発泡圧を吐出口方向へ導く際もこの伝達の妨げになることはほとんどなく、伝搬する圧力の大きさに応じて効率よく圧力の伝搬方向や気泡の成長方向を制御することができる。この際、可動部材の上流側は、上壁なし領域(共通連通空間)61によって変位抵抗少なく所定の位置まで変位し、上述した効果をすみやかに達成するとともに、それ以降は、液流路10の上壁60と側壁62と協同して液体の上流側への移動を防止し、リフィル時の効率を高めている。
【0039】
図1(d)は気泡40が、前述した膜沸騰の後気泡内部圧力の減少によって収縮し、消滅する状態を示している。消泡時には、気泡発生領域11での気泡の収縮体積を補うため、また、吐出された液体の体積分を補うために上流側、すなわち共通液室13側から流れのVD1、VD2、VD3のように、また、吐出口側からの流れVのように液体が流れ込んでくる。
【0040】
図1(e)は気泡40の消滅により、可動部材31が初期位置(第1位置)より下降した状態を示している。このように、第2位置まで変位していた可動部材31は、気泡の収縮による負圧と可動部材自身のばね性による復元力によって図1(a)の初期位置(第1位置)に復帰する。
【0041】
以上、気泡の発生に伴う可動部材の動作と液体の吐出動作について説明したが、以下に本発明に適用可能な液体吐出ヘッドにおける液体のリフィルについて詳しく説明する。
【0042】
図1(c)の後、気泡40が最大体積の状態を経て消泡過程に入ったときには、消泡した体積を補う体積の液体が気泡発生領域11に、液流路10の吐出口18側と気泡発生領域11の上流側から流れ込む。可動部材31を持たない従来の液流路構造においては、消泡位置に吐出口側から流れ込む液体の量と共通液室から流れ込む液体の量は、気泡発生領域より吐出口に近い部分と共通液室に近い部分との流抵抗の大きさに起因する(流路抵抗と液体の慣性に基づくものである)。
【0043】
このため、吐出口に近い側の流抵抗が小さい場合には、多くの液体が吐出口側から消泡位置に流れ込みメニスカスの後退量が大きくなることになる。特に、吐出効率を高めるために吐出口に近い側の流抵抗を小さくして吐出効率を高めようとするほど、消泡時のメニスカスMの後退が大きくなり、リフィル時間が長くなって高速印字を妨げることとなっていた。
【0044】
これに対して本構成は可動部材31を設けたため、気泡の体積Wを可動部材31の第1位置を境に上側をW1、気泡発生領域11側をW2とした場合、消泡時に可動部材が元の位置に戻った時点でメニスカスの後退はほぼ止まり、その後残ったW2の体積分の液体供給は主に第2の液流路10bの流れVD3からの液供給によって成される。これにより、従来、気泡Wの体積の半分程度に対応した量がメニスカスの後退量になっていたのに対して、それより少ないW1の半分程度のメニスカス後退量に抑えることが可能になった。さらに、W2の体積分の液体供給は消泡時の圧力を利用して可動部材31の発熱体側の面に沿って、主に気泡発生領域11の上流側(VD3)から強制的に行うことができるためより速いリフィルを実現できた。
【0045】
さらに、この発明においては、前述のように、上壁なし領域61からの液供給VD1が極めて重要な効果を上げる。この領域においては、上壁60および側壁62がないため流抵抗が非常に小さく高い供給性能が得られる。特に、この構造は側壁幅が狭くなる高密度ノズル配列において効率が高い。この領域は、複数の液流路を仕切る側壁がなく、各液流路が共通に連通する共通連通空間を形成する。
【0046】
また、特徴的なことは、従来のヘッドで消泡時の圧力を用いたリフィルを行った場合、メニスカスの振動が大きくなってしまい画像品位の劣化につながっていたが、本構成の高速リフィルにおいては可動部材によって吐出口側の液流路10の領域と、気泡発生領域11との吐出口側での液体の流通が抑制されるためメニスカスの振動を極めて少なくすることができることである。
【0047】
このように本発明に適用される上述した構成は、上壁のない領域(共通連通空間)61からの液流路と発泡領域への強制リフィルと、上述したメニスカス後退や振動の抑制によって高速リフィルを達成することで、吐出の安定や高速繰り返し吐出、また記録の分野に用いた場合、画質の向上や高速記録を実現することができる。なお、本発明でいうノズルは、オリフィスから側壁62の上流側までの液流路10を示すもので、側壁62を有した上壁なし領域(共通連通空間)61はノズルに含まれない。
【0048】
本発明に適用される上述した構成においてはさらに次のような有効な機能を兼ね備えている。それは、気泡の発生による圧力の上流側への伝搬(バック波)を抑制することである。発熱体2上で発生した気泡の内、共通液室13側(上流側)の気泡による圧力は、その多くが、上流側に向かって液体を押し戻す力(バック波)になっていた。このバック波は、上流側の圧力と、それによる液移動量、そして液移動に伴う慣性力を引き起こし、これらは液体の液流路内へのリフィルを低下させ高速駆動の妨げにもなっていた。本構成においては、まず可動部材31によって上流側へのこれらの作用を抑えることでもリフィル供給性の向上をさらに図っている。
【0049】
次に、更なる特徴的な構造と効果について、以下に説明する。
【0050】
第2の液流路10bは、発熱体2の上流に発熱体2と実質的に平坦につながる(発熱体表面が大きく落ち込んでいない)内壁を持つ流路を有している。このような場合、気泡発生領域11および発熱体2の表面への液体の供給は、可動部材31の気泡発生領域11に近い側の面に沿って、VD3のように行われる。このため、発熱体2の表面上に液体が淀むことが抑制され、液体中に溶存していた気体の析出や、消泡できずに残ったいわゆる残留気泡が除去され易く、また、液体への蓄熱が高くなりすぎることもない。従って、より安定した気泡の発生を高速に繰り返し行うことができる。なお、本実施例では実質的に平坦な内壁を持つ液流路を持つもので説明したが、これに限らず、発熱体表面となだらかに繋がり、なだらかな内壁を有する液流路であればよく、発熱体上に液体の淀みや、液体の供給に大きな乱流を生じない形状であればよい。
【0051】
ところで、可動部材31の自由端32と支点33の位置は、例えば図5で示されるように、自由端が相対的に支点より下流側にある。このような構成のため、前述した発泡の際に気泡の圧力伝搬方向や成長方向を吐出口側に導く等の機能や効果を効率よく実現できるのである。さらに、この位置関係は吐出に関する機能や効果のみならず、液体の供給の際にも液流路10を流れる液体に対する流抵抗を小さくでき高速にリフィルできるという効果を達成している。これは図5に示すように、吐出によって後退したメニスカスMが毛管力により吐出口18へ復帰する際や、消泡に対しての液供給が行われる場合に、液流路10(第1の液流路10a、第2液流路10bを含む)内を流れる流れS1、S2、S3に対し、逆らわないように自由端32と支点33とを配置しているためである。
【0052】
補足すれば、本構成の図1においては、前述のように可動部材31の自由端32が、発熱体2を上流側領域と下流側領域とに2分する面積中心3(発熱体の面積中心(中央)を通り液流路の長さ方向に直交する線)より下流側の位置に対向するように発熱体2に対して延在している。これによって発熱体の面積中心位置3より下流側で発生する液体の吐出に大きく寄与する圧力、又は気泡を可動部材31が受け、この圧力及び気泡を吐出口側に導くことができ、吐出効率や吐出力を根本的に向上させることができる。さらに、加えて上記気泡の上流側をも利用して多くの効果を得ている。また、本構成においては可動部材31の自由端が瞬間的な機械的変位を行っていることも、液体の吐出に対して有効に寄与していると考えられる。
【0053】
(実施例1)
第1の実施例を図1を参照して説明する。本実施例においても、主たる液体の吐出原理については先の説明と同じである。
【0054】
本実施例においては、図1(a)に示すように、可動部材31と発熱体2の間の気泡発生領域11における気泡の発生に伴う圧力波による液体の流れが隣接ノズルへおよぶのを防止するために、側壁62が発熱体2の後端よりも上流側まで形成されている。また、前記側壁62の上流側は共通液室13まで延在し、その上方に上壁なし領域61が形成されている。
【0055】
これにより、図1(c)に示す気泡成長工程において、可動部材31の変位によって可動部材31と側壁62とで、上流側および隣接ノズルへの液体の流れを遮断または抑制し、上流側への液体の移動を抑制する。これにより、結果的に気泡40の消泡工程におけるメニスカスの後退量も少なくなる。また、可動部材31はノズルの上壁60またはノズル内の構造物(突起など)にあたって、あるいは可動部材自体の剛性によって途中で変位が止まり、気泡成長工程における上流側及び隣接ノズル側への液体の移動を効果的に抑制することができる。
【0056】
図1(d)に示す気泡収縮工程において、気泡発生領域11の上方からも液体(VD1)が供給されるため、側壁62によって生じる液体の流体抵抗がほとんど無くなり極めて短時間にノズルへのリフィルが完了できる。したがって、ノズルの上壁60が側壁後端と同じ位置まで延在している従来のノズルの場合と比較して飛躍的に供給効率が向上する。
【0057】
このように、本発明による液体吐出ヘッドによれば、従来のノズルと比較して、上流側への液体の移動が押さえられる上に、供給性が良いためリフィル周波数(発泡からメニスカスがオリフィスに復帰するまでの時間の逆数)が向上する。また、可動部材31の自由端32が発熱体2の下流側まで延びているため、気泡40の成長を吐出口側に導くことができ、吐出力が向上する。なお、本発明でいうノズルは、オリフィスから側壁62の上流側までの液流路10を示すもので、側壁62を有した上壁なし領域(共通連通空間)61はノズルに含まれない。
【0058】
(実施例2)
第2の実施例を図6を参照して説明する。
【0059】
本実施例は、第1の実施例の構成に加え、図6(a)に示すように、可動部材31の自由端32を発熱体2の中央付近まで後退させている。また、側壁62の上流側は、共通液室13内まで延在し、その上方に上壁なし領域(共通連通空間)61が形成されている。
【0060】
これにより、図6(c)に示す気泡成長工程において、可動部材31の変位によって可動部材31と側壁62とで、上流側および第2の液流路10bからの隣接ノズルへの液体の流れを遮断または抑制し、上流側への液体の移動を抑制する。これにより、結果的に気泡40の消泡工程におけるメニスカスの後退量も少なくなる。また、可動部材31はノズルの上壁60またはノズル内の構造物(突起など)にあたって、あるいは可動部材自体の剛性によって途中で変位が止まり、気泡成長工程における上流側及び隣接ノズル側への液体の移動を効果的に抑制することができる。
【0061】
図6(d)に示す気泡収縮工程において、気泡発生領域11の上方からも液体(VD1)が供給されるため、側壁62によって生じる液体の流体抵抗がほとんど無くなり極めて短時間にノズルへのリフィルが完了できる。したがって、ノズルの上壁が側壁後端と同じ位置まで延在している従来のノズルの場合と比較して飛躍的に供給効率が向上する。特に、本実施例においては、図6(d)に示す気泡収縮状態において、気泡発生領域11の上方からの液体の流れが側壁62および可動部材31にあまり影響されない構造となっているので、上流側の流抵抗が極めて小さく、液体(VD1)が供給され易いため、第1の実施例以上にリフィル周波数が向上する。さらに、側壁62は気泡発生領域11に主として存在し、流流路10では短くなっているため、リフィル特性はさらに向上する。
【0062】
(実施例3)
第3の実施例を図7を参照して説明する。
【0063】
本実施例は、第1の実施例と同様、図7(a)に示すように、側壁62の上流側の高さを可動部材31の変位する高さまで高め、その端部は共通液室13まで延在し、その上方に上壁なし領域(共通連通空間)61が形成されている。また、第2の実施例と同様、可動部材31の自由端32を発熱体2の中央付近まで後退させている。
【0064】
これにより、図7(c)に示す気泡成長工程において、可動部材31の変位によって可動部材31と側壁62とで、上流側および隣接ノズルへの液体の流れを遮断または抑制してクロストークを減少し、上流側への液体の移動を抑制する。更に本実施例では、図7(d)に示す気泡収縮状態において、気泡発生領域11の上方から側壁62および可動部材31にあまり影響されずに、液体(VD1)が供給され、また、気泡発生領域11の下流側に可動部材31がない為、流抵抗が低く、第1の実施例以上にリフィル周波数と吐出効率が向上する。
【0065】
(実施例4)
第4実施例を図8を参照して説明する。
【0066】
本実施例は、第3の実施例と同様、図8(a)に示すように、側壁62の上流側の高さを可動部材31の変位する高さまで高めているが、側壁62の後端上部を斜めにカットし、上流側、隣接側への遮断性と、リフィル性の両者をより高めている。また、下流側の上壁60を吐出口18に近づく程、高くしている。
【0067】
これにより、図8(c)に示す気泡成長状態において、可動部材31の変位によって可動部材31と側壁62とで、上流側および隣接ノズルへの液体の流れを遮断または抑制してクロストークを減少し、上流側への液体の移動を抑制すると共に、下流側の流路抵抗が少ないため、第3の実施例以上に吐出効率が向上する。また、図8(d)に示す気泡収縮状態において、気泡発生領域11の上方から側壁62および可動部材31にあまり影響されずに、液体(VD1)が供給されるため、第3の実施例以上にリフィル周波数が向上する。
【0068】
また、第2および第3の実施例と同様に可動部材31の支点33が側壁62より下流側の発熱体近傍にあるため、可動部材31の変位の際の上流側への液体の移動体積が少なく、結果的にメニスカスの後退をさらに抑制することができる。また、これら上流側への液体の移動が少なくなることは、リフィルの際の吐出口方向への液移動の反作用が少なくなることを示しており、この効果もよりリフィル特性を向上させることになる。また、さらに、隣接ノズルへの影響が小さく、ノズル間クロストークによる吐出不安定要素も低減できる。
【0069】
(実施例5)
上述した実施例1〜4における液体吐出ヘッドの構成部材の材質は、その部材の使用状況に応じて選択されるが、熱膨張条件をほぼ一致させて高密度配列における可動部材および流路・液室構造の特性効果の信頼性を向上させることは重要である。そこで次に、この目的に対応した構成部材を有する液体吐出ヘッドについて説明する。
【0070】
図9は、本発明の第5の実施例における液体吐出ヘッドの基本的な構造を説明するための、液流路方向に沿った断面図である。図9に示すように、この液体吐出ヘッドは、液体に気泡を発生させるための熱エネルギーを与える複数個(図9では1つのみ示す)の発熱体2が並列に設けられた素子基板1と、この素子基板1上に接合された天板50と、素子基板1および天板50の前端面に接合されたオリフィスプレート63とを有する。
【0071】
素子基板1は、シリコン等の基板上に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜または窒化シリコン膜を成膜し、その上に、発熱体2を構成する電気抵抗層および配線をパターニングしたものである。この配線から電気抵抗層に電圧を印加し、電気抵抗層に電流を流すことで発熱体2が発熱する。
【0072】
天板50は、各発熱体2に対応した複数の液流路10および各液流路10に液体を供給するための共通液室13を構成するためのもので、天井部分から各発熱体2の間に延びる側壁62が一体的に設けられている。天板50はシリコン系の材料で構成され、液流路10および共通液室13のパターンをエッチングで形成したり、シリコン基板上にCVD等の公知の成膜方法により窒化シリコン、酸化シリコンなど、側壁62となる材料を推積した後、液流路10の部分をエッチングして形成することができる。
【0073】
オリフィスプレート63には、各液流路10に対応しそれぞれ液流路10を介して共通液室13に連通する複数の吐出口18が形成されている。オリフィスプレート63もシリコン系の材料からなるものであり、例えば、吐出口18を形成したシリコン基板を10〜150μm程度の厚さに削ることにより形成される。なお、オリフィスプレート63は本発明には必ずしも必要な構成ではなく、オリフィスプレート63を設ける代わりに、天板50に液流路10を形成する際に天板50の先端面にオリフィスプレート63の厚さ相当の壁を残し、この部分に吐出口18を形成することで、吐出口付きの天板とすることもできる。
【0074】
さらに、この液体吐出ヘッドには、液流路10を吐出口18に連通した第1の液流路10aと、発熱体2を有する第2の液流路10bとに分けるように、発熱体2に対面して配置された片持梁状の可動部材31が設けられている。可動部材31は、窒化シリコンや酸化シリコンなどのシリコン系の材料で形成された薄膜である。
【0075】
この可動部材31は、液体の吐出動作によって共通液室13から可動部材31を経て吐出口18側ヘ流れる大きな流れの上流側に支点10aを持ち、この支点10aに対して下流側に自由端32を持つように、発熱体2に面した位置に発熱体2を覆うような状態で発熱体2から所定の距離を隔てて配されている。この発熱体2と可動部材31との間が気泡発生領域11となる。
【0076】
上記したように本実施例による液体吐出ヘッドでは、各構成部品の材料にSiNを使用しているため、耐インク性が向上すると共に、線膨張率の違いによる機械的特性の問題が解決される。
【0077】
(液体吐出ヘッドの製造方法の例)
次に、液体吐出ヘッドの製造方法の例について説明する。可動部材、ノズル壁およびオリフィスプレートを別体で作製し、素子基板上に組み立てることによって液体吐出ヘッドを製造した場合、組立時の困難性および精度上の観点から高密度化がなかなか困難である。そこで、本実施形態では、上記各構成要素を成膜工程で作り込むことによって、機械的特性の問題(Si素子基板とノズル天板の線膨率の違い等)および組立上の問題(可動部材の接着工程およびノズル天板の貼り付け工程、特に可動部材が設けられた状態での貼り付け工程の困難さ)を一気に解決し、さらに素子基板上への高密度加熱体配列を達成して吐出ノズルの高密度化を可能とした。
【0078】
図10および図11は、本実施の形態に係る液体吐出ヘッドの製造方法の一例を示す工程図である。図中(a)〜(i)は正面断面図であり、(a’)〜(i’)は側面断面図である。
【0079】
図10(a),(a’)に示すように、まず、基板208上にCVD法によって温度350℃の条件でPSG(Phospho−Silicate Glass)膜201を形成する。このPSG膜201の膜厚は最終的に可動部材の可動部と発熱体とのギャップに相当し、1〜20μmの間で流路全体のバランス上、もっとも可動部材の効果が顕著となる値に制御する。
【0080】
図10(b),(b’)に示すように、次に、PSG膜201をパターニングするためのレジストをスピンコートなどにより塗布し、露光、現像する。これにより、可動部材の固定部に相当する部分のレジストを除去する。これをバッファードフッ酸によるウェットエッチングによってレジストのない部分のPSG膜201を除去する。次に酸素プラズマによるプラズマアッシング、あるいはレジスト塗布剤に浸して、残ったレジストを除去する。
【0081】
図10(c),(c’)に示すように、この上にスパッタ法により、1〜10μmの厚さにSiN膜202を形成する。SiN膜202の組成はSi が最も良いが、可動部材の効果としてはSi:1に対し、Nが1〜1.5の範囲でも良い。また、このSiN膜202は半導体プロセスに一般的に使用され、耐アルカリ性、耐アルカリ性、化学的安定性があり、耐インク性もある。すなわち、この膜202が最終的に可動部材となるため最適の物性値を得る構造および組成を達成する製造方法は限定されない。例えばSiN膜202の形成方法は、先にあげたスパッタ法にかかわらず、常圧CVD、LPCVD、バイアスECRCVD、マイクロ波CVD、あるいは塗布方法でも製造は可能である。また、SiN膜202においてもその応力、剛性、ヤング率等の物理的特性、耐アルカリ性、耐酸性等の化学的特性を、その用途に応じて向上させるために、段階的に組成比を変えて多層膜化する。あるいは段階的に不純物を添加して、多層膜化する。あるいは、単層で不純物を添加しても良い。
【0082】
図10(d),(d’)に示すように、さらに、このSiN膜202上に次工程で形成する流路壁のエッチングの際の可動部材へのダメージ防止のために、ダメージ防止膜203を形成する。すなわち、可動部材と流路壁がほぼ同一材料である場合、流路壁形成時のエッチングにおいて可動部材もエッチングされてしまうため、そのダメージを防止する膜が必要になって来る。ここではスパッタリング法によってダメージ防止膜203であるAl膜を2μmの厚さに形成した。
【0083】
図10(e),(e’)に示すように、次に、SiN膜202とその上のダメージ防止膜203であるAl膜を所定の形状とするため、レジストをスピンコートなどにより塗布し、パターニングする。そして、CFガス等を使用したドライエッチングあるいはリアクティブイオンエッチング法等によって可動部材の形状にAl膜203とSiN膜202のエッチングを行なう。
【0084】
図10(f),(f’)に示すように、次に、今度は流路壁およびオリフィスプレート材料としてのSiN膜207をCVD法、特に高速成膜をしたい場合はマイクロウェーブCVD法によって20〜40μmの厚さに形成する。この膜207がパターニング後に流路壁あるいはオリフィス部分になる。このSiN膜207は、通常半導体工程で求められるような膜の特性、例えばピンホール密度や膜のち密さには左右されない。すなわち、インクに対する流路壁としての耐インク性や機械的強度を満たすものであれば良く、その分、高速成膜等によって多少ピンホール密度が多くなっても問題はない。また、ここでは、SiN膜としたが、先に記述したように流路壁の材料として、SiN膜に限定されることはなく、不純物を含んだSiN膜、組成を変えたSiN膜、あるいはダイヤモンド膜、水素化アモルファスカーボン膜(ダイヤモンドラインクカーボン膜)、アルミナ系、ジルコニア系等の無機膜など、機械的特性と耐インク性がある膜であれば良い。
【0085】
図11(g),(g’)に示すように、次に、このSiN膜207を所定の形状とするためレジストをスピンコートなどにより塗布し、パターニングする。そしてCFガス等を使用したドライエッチングあるいはリアクティブイオンエッチングを行う。あるいはさらに高速のエッチング性を重視して、ICP(誘導結合プラズマ)エッチング法が、この厚い膜207のエッチングに最も適している。そしてこのエッチング後に酸素プラズマによるプラズマアッシングあるいはレジスト除去剤に浸して、残ったレジストを除去する。このようにして流路壁204が形成される。
【0086】
図11(h),(h’)に示すように、次に、可動部材上のダメージ防止膜203をウェットエッチングあるいはドライエッチングにより除去する。ここでは方法に限定することなく、ダメージ防止膜203が除去出来れば良い。あるいはダメージ防止膜203が、可動部材の特性に悪い影響をおよぼさず耐インク性の高い、Taのような膜であれば、除去する必要はない。
【0087】
図11(i),(i’)に示すように、最後に、バッファードフッ酸によって可動部材の下層のPSG膜201を除去し、これにより所定の形状の可動部材205が形成される。この様にして形成されたものに対し、オリフィスプレート63と天板50とを接合することにより、液体吐出ヘッドが製造される。
【0088】
上述した液体吐出ヘッドの製造方法においては、流路壁と可動部材を同時に基板上に形成したが、さらにオリフィス部材を同時に形成することも出来る。すなわち、流路壁204を図11(g),(g’)〜(i),(i’)の様に形成する代わりに、図12(g),(g’)〜(i),(i’)に示す様にオリフィス部材206の壁を2〜30μmの厚さに同時形成する。そして、この壁にエキシマレーザーによるアブレーション加工によって穴をあける。すなわち、SiNの結合解離エネルギー105kcal/mol以上の光子エネルギー115kcal/molのエネルギーを持つ、KrFエキシマレーザーによって分子結合を直接切断することにより、吐出口18を形成する。これは非熱加工であるため、加工部周辺の熱ダレや炭化のない精度の高い加工が出来る。
【0089】
上記製造方法によって、次のような効果が得られる。
(1)フォトリソグラフィー技術により、可動部材および天板の貼付け精度が高くなる。
(2)従来、例えば1200dpiになると可動部材の貼付が困難となっていた吐出ノズルの密度を、高密度化できる。
(3)可動部材の接着が不要となり、接着剤、ボンディングなどによる汚染がない。
(4)各構成部品を一体として形成するため、作成時のゴミの問題がなくなる。
(5)素子基板にキズが発生しない。従来、素子基板に各構成部品を組み立てる際キズが発生することがあった。
(6)オリフィスプレートを同時に作り込む場合、エキシマレーザ加工ができる。
(7)素子基板上へのドライバートランジスタ(LDMOS)の同時作り込みにより、発熱体の高密度配列が達成される。
【0090】
(他の実施の形態)
図13〜図15は、本発明に係る液体吐出ヘッドの製造工程を示す図である。まず、前記したような構成の素子基板71a上に、プラズマCVD法を用いて厚さ約5μmのPSG膜71bを成膜した(図13(a)参照)後、これをフォトリソグラフィー等の周知の方法を用いてパターニングする。そして、μW−CVD(Microwave Chemical Vapor Deposition)法を用いて、厚さ約5μmのSiN膜からなる可動部材76を形成する。この時、PSG膜71bおよび可動部材76は、液流路77の部分のみ櫛歯状にパターニングされた状態となる(図13(b)参照)。
【0091】
一方、シリコンウェハー73aの両面に厚さ約1μmの熱酸化SiO膜73bを形成した後、フォトリソグラフィー等の周知の方法を用いて、共通液室となる部分をパターニングすることにより、天板73となるシリコン基板を形成する。そして、このシリコン基板上に、流路側壁79となるSiN等の層73cを、μW−CVD法により約20μmの厚さで成膜する(図14(a)参照)。そして、フォトリソグラフィー等の周知の方法を用いて、オリフィス部分と液流路部分をパターニングし、誘電結合プラズマを使ったエッチング装置を用いてトレンチ構造にエッチングを行う。その後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を使って、シリコンウェハー貫通エッチングをして、オリフィスプレート一体型であるシリコン天板73を完成させる(図14(b)参照)。図14(c)は、完成された天板73を示す斜視図である。
【0092】
素子基板71の、天板73と接合する部分の耐キャビテーション膜は、フォトリソグラフィー等の周知の方法を用いてパターニングされる。そして、素子基板71と天板73とを、真空雰囲気中において両部材の接合部分にArガスなどを照射して表面を活性な状態にしてから、図15(a),(b)に示すように常温で接合する。図15(a)は素子基板71と天板73とを接合した状態を示す側面断面図、図15(b)はその正面断面図である。この図15(b)からわかるように、両者を接合した時点で天板73には液流路77、共通液室78、供給口81は形成されているが、オリフィス75はまだ形成されていない。そこで、図15(c)に示すように、真空雰囲気中においてマスク100を用いてイオンビーム加工を行なってオリフィス75を形成する(図15(d)参照)。そして、発熱体と可動部材との間に初期気泡発生領域を生成させるためのギャップを形成するために、PSG膜71aをウェットエッチング法により除去する。この様にして、液体吐出ヘッドが製造される。
【0093】
本実施形態では、駆動された発熱体72が設けられた液流路に連通する吐出口からのみインクが吐出する。そして、素子基板71、天板73、可動部材76が全てシリコンを含む材料から形成されており、これらの熱膨張率が実質的に同じであるため、高速印字に伴って温度が上昇しても、各部材の相対位置精度や密着性が保たれ、広い温度範囲で安定したインクの吐出が行え、高効率で品質の高い印字が可能である。また、接着剤を用いずに基板の接合を行なっているため、接着剤の液流路77への垂れ込みによる流路抵抗の変動および吐出性能劣化が防げる。なお、素子基板71および天板73をシリコンを含む材料、とくに窒化シリコン等の無機化合物から形成すると、容易な加工での高密度化が可能である。
【0094】
図16および図17には、液体吐出ヘッドの製造方法の他の例が示してある。ここでは、先の例と異なる点のみ説明する。図16(a)〜(d)は正面断面図、図16(e)および図17(a)〜(c)は側面断面図である。
【0095】
基体71a上に、厚さ約5μmのPSG膜71bを成膜した(図16(a)参照)後、フォトリソグラフィー等の周知の方法を用いてパターニングする。そして、μW−CVD法を用いて厚さ約5μmのSiN膜からなる可動部材76を形成する。PSG膜71bおよび可動部材76は、液流路77の部分のみ櫛歯状にパターニングされた状態となる(図16(b)参照)。その上に、スパッタリング法または蒸着法により、厚さ1000Åの金属膜からなるエッチングストップ層(図示せず。)を成膜する。そして、オリフィス75および液流路77が形成されるSiN膜71c層を、μW−CVD法を用いて約20μm成膜する(図16(c)参照)。そして、フォトリソグラフィー等の周知の方法を用いてオリフィス部分と液流路部分とをパターニングし、前記金属膜をエッチングストップ層として、誘電結合プラズマを使ったエッチング装置を用いてトレンチ構造にエッチングを行う。こうして素子基板82を完成させる(図16(d),(e)参照)。
【0096】
一方、シリコンを含む材料からなる天板83には、TMAHを使ってシリコンウェハー貫通エッチングにより共通液室81が形成される。そして、この素子基板82と天板83とが、先の例と同様な常温接合により接合される(図16(a)参照)。
【0097】
その後、マスク100を用いたエキシマレーザ加工(図16(b)参照)により、オリフィス75が形成される。そして、発熱体72と可動部材76との間に初期気泡発生領域となるギャップを形成するために、PSG膜71bをウェットエッチング法により除去して、液体吐出ヘッドが完成する(図16(c)参照)。このように本例では、天板83ではなく素子基板82側に液流路77および共通液室81が設けられている。
【0098】
以上述べた図15(d)や図17(c)に示された様な形態の液体吐出ヘッドは、次の点で非常に好ましいものである。この液体吐出ヘッドには、発熱体72に対面して配置され、素子基板71に直接固定された片持梁状の可動部材76が設けられている。この可動部材76は屈曲部を有し、この屈曲部により可動部材76の可動部分76が基板に対して所定の間隙を有するようになっている。可動部材76をこのような形状とすることによって、可動部材の固定を強固に行うことができるとともに、間隙を形成するために台座を用いることがなくなるため、従来台座が占めていた空間をも液室の一部とすることができ液室の容積の確保を容易に行うことができる。また、可動部材を上記構成にする場合には、従来の構成よりも可動部材の強度を必要とするため、本発明では可動部材76を窒化シリコンや酸化シリコン等のシリコン系の材料等で形成された薄膜で構成している。これら材料は従来の可動部材の材料として用いられているニッケルよりも強度に優れているとともに、基板の表面に設けられる絶縁保護層との密着性に優れているため、上記構成において安定した性能を発揮することができる。
【0099】
図18〜20には、液体吐出ヘッドの製造方法のさらに他の例を示してある。本例は、先の例と類似の構成であるが、接合部84aと複数の可動部材84bとが一体化した薄膜84が用いられている。前記薄膜の材料としては、SiNやSiC等のシリコンを含む材料でもいいし、熱膨張係数をSiに近づけたNi,W,Ta,Pt,Mo,Cr,Mn,Fe,Co,Cu等のメタルでもかまわない。
【0100】
すなわち、基体85a上にSiN膜85bを成膜した(図18(a)参照)後、フォトリソグラフィー等の周知の方法を用いて発熱素子近傍の前記可動部材の下方部分のみをパターニングして素子基板85を形成する(図18(b)参照)。一方、天板73は、シリコンウェハー73a両面に厚さ約1μmの熱酸化SiO膜73bを形成した後、フォトリソグラフィー等の周知の方法を用いて、共通液室となる部分をパターニングしてシリコン基板を形成する。そして、このシリコン基板上に、流路側壁79となるSiN等の層73cをμW−CVD法により約20μmの厚さで成膜し(図19(a)参照)、フォトリソグラフィー等の周知の方法を用いて、オリフィス部分と液流路部分をパターニングし、誘電結合プラズマを使ったエッチング装置を用いてトレンチ構造にエッチングを行った。その後、TMAHを使って、シリコンウェハー貫通エッチングをして、オリフィスプレート一体型である天板73を完成させた(図19(b)参照)。図19(c)は、完成された天板73を示す斜視図である。
【0101】
そして、素子基板85と天板73と図20(a)に示す薄膜84とを、真空雰囲気中において接合部分にArガスなどを照射して表面を活性な状態にしてから、図20(b)の側面断面図および図20(c)の正面断面図に示すように、薄膜84を介して素子基板85と天板73とを積層し常温接合する。図20(d)には、素子基板85と天板73とを接合した状態の側面断面図が示されている。その後、図20(e)に示すように、真空雰囲気中においてマスク100を用いてイオンビーム加工を行なってオリフィス75を形成する。こうして、イオンビームのパワーによって、オリフィス75が形成される(図20(f)参照)。そして、発熱体と可動部材との間に初期気泡発生領域となるギャップを形成するために、PSG膜85bをウェットエッチング法により除去する。この様にして、本例の液体吐出ヘッドが完成する。
【0102】
(可動部材および分離壁)
図21は可動部材31の他の形状を示すもので、35は、分離壁に設けられたスリットであり、このスリットによって、可動部材31が形成されている。同図(a)は長方形の形状であり、(b)は支点側が細くなっている形状で可動部材の動作が容易な形状であり、同図(c)は支点側が広くなっており、可動部材の耐久性が向上する形状である。
【0103】
先の実施例のいくつかにおいては、板状可動部材31およびこの可動部材を有する分離壁30は厚さ5μmのニッケルで構成したが、これに限られることなく可動部材、分離壁を構成する材質としては発泡液と吐出液に対して耐溶剤性があり、可動部材として良好に動作するための弾性を有し、微細なスリットが形成できるものであればよい。
【0104】
可動部材31の材料としては、耐久性の高い、銀、ニッケル、金、鉄、チタン、アルミニュウム、白金、タンタル、ステンレス、りん青銅等の金属、およびその合金、または、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン等のニトリル基を有する樹脂、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、ポリカーボネイト等のカルボキシル基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリサルフォン等のスルホン基を持つ樹脂、そのほか液晶ポリマー等の樹脂およびその化合物、耐インク性の高い、金、タングステン、タンタル、ニッケル、ステンレス、チタン等の金属、これらの合金および耐インク性に関してはこれらを表面にコーティングしたもの若しくは、ポリアミド等のアミド基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン基を有する樹脂、ポリイミド等のイミド基を有する樹脂、フェノール樹脂等の水酸基を有する樹脂、ポリエチレン等のエチル基を有する樹脂、ポリプロピレン等のアルキル基を持つ樹脂、エポキシ樹脂等のエポキシ基を持つ樹脂、メラミン樹脂等のアミノ基を持つ樹脂、キシレン樹脂等のメチロール基を持つ樹脂およびその化合物、さらに二酸化珪素等のセラミックおよびその化合物が望ましい。
【0105】
分離壁30の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリブタジエン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリサルフォン、液晶ポリマー(LCP)等の近年のエンジニアリングプラスチックに代表される耐熱性、耐溶剤性、成型性の良好な樹脂、およびその化合物、もしくは、二酸化珪素、チッ化珪素、ニッケル、金、ステンレス等の金属、合金およびその化合物、もしくは表面にチタンや金をコーティングしたものが望ましい。
【0106】
また、分離壁30の厚さは、分離壁30としての強度を達成でき、可動部材31として良好に動作するという観点からその材質と形状等を考慮して決定すればよいが、0.5μm〜10μm程度が望ましい。
【0107】
なお、可動部材31を形成するためのスリット35の幅は実施例では2μmとしたが、発泡液と吐出液とが異なる液体であり、両液体の混液を防止したい場合は、スリット幅を両者の液体間でメニスカスを形成する程度の間隔とし、夫々の液体同士の流通を抑制すればよい。例えば、発泡液として2cP(センチポアズ)程度の液体を用い、吐出液として100cP以上の液体を用いた場合には、5μm程度のスリットでも混液を防止することができるが、3μm以下にすることが望ましい。
【0108】
本発明における可動部材31としてはμmオーダーの厚さ(tμm)を対象としており、cmオーダーの厚さの可動部材は意図していない。μmオーダーの厚さの可動部材にとって、μmオーダーのスリット幅(Wμm)を対象とする場合、製造のバラツキをある程度考慮することが望ましい。
【0109】
スリットを形成する可動部材31の自由端あるいは/且つ側端に対向する部材の厚みが可動部材の厚みと同等の場合、スリット幅と厚みの関係を製造のバラツキを考慮して以下のような範囲にすることで発泡液と吐出液の混液を安定的に抑制することができる。設計上の観点として限られた条件について例示すると、3cp以下の粘度の発泡液に対して高粘度インク(5cp、10cp等)を用いる場合、W/t≦1を満足するようにすることで、2液の混合を長期にわたって抑制することが可能な構成となった。本発明の「実質的な密閉状態」を与えるスリットとしては、このような数μmオーダであればより確実である。
【0110】
上述のように、発泡液と吐出液とに機能分離させた場合、可動部材がこれらの実質的な仕切部材となる。この可動部材が気泡の生成に伴って移動する際に吐出液に対して発泡液がわずかに混入することが見られる。画像を形成する吐出液は、インクジェット記録の場合、色材濃度を3%ないし5%程度有するものが一般的であることを考慮すると、この発泡液が吐出液滴に対して20%以下の範囲で含まれても大きな濃度変化をもたらさない。従って、このような混液としては、吐出液滴に対して20%以下となるような発泡液と吐出液との混合を許容するものとする。
【0111】
なお、上記構成例の実施によると、粘性を変化させても上限で15%程度の発泡液の混合であったが、5cps以下の発泡液の場合、駆動周波数にもよるが、この混合比率は最大10%程度であった。特に、吐出液の粘度を20cps以下で小さくすればする程、この混液は低減(例えば5%以下)できる。
【0112】
次に、このヘッドにおける発熱体と可動部材の配置関係について説明する。発熱体と可動部材の最適な配置によって、発熱体による発泡時の圧力を吐出圧として有効に利用することが可能となる。
【0113】
熱等のエネルギーをインクに与えることで、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着させて画像形成を行うインクジェット記録方法、いわゆるバブルジェット記録方法の従来技術においては、図22に示すように、発熱体面積とインク吐出量は比例関係にあるが、インク吐出に寄与しない非発泡有効領域Sが存在していることがわかる。また、発熱体上のコゲの様子から、この非発泡有効領域Sが発熱体の周囲に存在していることがわかる。これらの結果から、発熱体周囲の約4μm幅は、発泡に関与されていないとされている。
【0114】
したがって、発泡圧を有効利用するためには、発熱体の周囲から約4μm以上内側の発泡有効領域の直上が可動部材の可動領域で覆われるように、可動部材を配置するのが効果的であると、言える。本実施例においては、発泡有効領域を発熱体周囲から約4μm以上内側としたが、発熱体の種類や形成方法によっては、これに限定されるものではない。
【0115】
(素子基板)
以下に液体に熱を与えるための発熱体が設けられた素子基板の構成について説明する。図23は本発明の液体吐出ヘッドの縦断面図を示したもので、同図(a)は後述する保護膜があるヘッド、同図(b)は保護膜がないものである。
【0116】
素子基板1上に第2液流路、分離壁30、第1液流路、第1液流路を構成する溝を設けた溝付き部材が配されている。
【0117】
素子基板1には、シリコン等の基体107に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜またはチッ化シリコン膜106を成膜し、その上に発熱体2を構成するハフニュウムボライド(HfB)、チッ化タンタル(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気抵抗層105(0.01〜0.2μm厚)とアルミニュウム等の配線電極104(0.2〜1.0μm厚)を図12(a)のようにパターニングしている。この配線電極104から抵抗層105に電圧を印加し、抵抗層に電流を流し発熱させる。配線電極間の抵抗層上には、酸化シリコンやチッ化シリコン等の保護層103を0.1〜2.0μm厚で形成し、さらにそのうえにタンタル等の耐キャビテーション層102(0.1〜0.6μm厚)が成膜されており、インク等の各種の液体から抵抗層105を保護している。
【0118】
特に、気泡の発生、消泡の際に発生する圧力や衝撃波は非常に強く、堅くてもろい酸化膜の耐久性を著しく低下させるため、金属材料のタンタル(Ta)等が耐キャビテーション層102として用いられる。
【0119】
また、液体、液流路構成、抵抗材料の組み合わせにより、上述の抵抗層105に保護層103を必要としない構成でもよくその例を図23(b)に示す。このような保護層103を必要としない抵抗層105の材料としてはイリジュウム−タンタル−アルミ合金等が挙げられる。このように、前述の各実施例における発熱体の構成としては、前述の電極間の抵抗層(発熱部)だけででもよく、また抵抗層を保護する保護層を含むものでもよい。
【0120】
本実施例においては、発熱体として電気信号に応じて発熱する抵抗層で構成された発熱部を有するものを用いたが、これに限られることなく、吐出液を吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるものであればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を受けることで発熱するような光熱変換体や高周波を受けることで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよい。
【0121】
なお、前述の素子基板1には、前述の発熱部を構成する抵抗層105とこの抵抗層に電気信号を供給するための配線電極104で構成される電気熱変換体の他に、この電気熱変換素子を選択的に駆動するためのトランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタ等の機能素子が一体的に半導体製造工程によって作り込まれていてもよい。
【0122】
また、前述のような素子基板1に設けられている電気熱変換体の発熱部を駆動し、液体を吐出するためには、前述の抵抗層105に配線電極104を介して図24に示されるような矩形パルスを印加し、配線電極間の抵抗層105を急峻に発熱させる。前述の各実施例のヘッドにおいては、それぞれ電圧24V、パルス幅7μsec、電流150mA、電気信号を6kHzで加えることで発熱体を駆動させ、前述のような動作によって、吐出口から液体であるインクを吐出させた。しかしながら、駆動信号の条件はこれに限られることなく、発泡液を適正に発泡させることができる駆動信号であればよい。
【0123】
(吐出液体、発泡液体)
先の実施例で説明したように本発明においては、前述のような可動部材を有する構成によって、従来の液体吐出ヘッドよりも高い吐出力や吐出効率でしかも高速に液体を吐出することができる。本実施例のうち、発泡液と吐出液とに同じ液体を用いる場合には、発熱体から加えられる熱によって劣化せずに、また加熱によって発熱体上に堆積物を生じにくく、熱によって気化、凝縮の可逆的状態変化を行うことが可能であり、さらに液流路や可動部材や分離壁等を劣化させない液体であれば種々の液体を用いることができる。このような液体のうち、記録を行う上で用いられる液体(記録液体)としては従来のバブルジェット装置で用いられていた組成のインクを用いることができる。
【0124】
吐出液としては、発泡性の有無、熱的性質に関係なく様々な液体を用いることができる。また、従来吐出が困難であった発泡性が低い液体、熱によって変質、劣化しやすい液体や高粘度液体等であっても利用できる。ただし、吐出液の性質として、吐出液自身または発泡液との反応によって、吐出や発泡また可動部材の動作等を妨げるような液体でないことが望まれる。記録用の吐出液体としては、高粘度インク等をも利用することができる。その他の吐出液体としては、熱に弱い医薬品や香水等の液体を利用することもできる。
【0125】
本発明においては、さらに吐出液に用いることができる記録液体として以下のような組成のインクを用いて記録を行ったが、吐出力の向上によってインクの吐出速度が高くなったため、液滴の着弾精度が向上し非常に良好な記録画像を得ることができる。
【0126】
染料インク(粘度2cp)の組成
Figure 0003592108
(液体吐出ヘッド構造)
図25は、本発明の液体吐出ヘッドの全体構成を示した分解斜視図である。アルミ等の支持体70上に発熱体2が設けられた素子基板1が配されている。この上に第2の液流路10bを区画する壁および共通液室13を区画する壁が設けられており、その上に可動部材31を有する分離壁30が設けられている。さらに、この分離壁30の上に第1の液流路10aを構成する複数の溝、共通液室13を区画する壁が設けられた天板50が設けられている。
【0127】
(液体吐出装置)
図26は、前述の液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出装置の概略構成を示している。本実施例では、特に吐出液体としてインクを用いたインク吐出記録装置を用いて説明する。液体吐出装置のキャリッジHCは、インクを収容する液体タンク部90と、液体吐出ヘッド部200とが着脱可能なヘッドカートリッジを搭載しており、被記録媒体搬送手段で搬送される記録紙等の被記録媒体150の幅方向に往復移動する。不図示の駆動信号供給手段からキャリッジ上の液体吐出手段に駆動信号が供給されると、この信号に応じて液体吐出ヘッドから被記録媒体に対して記録液体が吐出される。
【0128】
また、本実施例の液体吐出装置においては、被記録媒体搬送手段とキャリッジを駆動するための駆動源としてのモータ111、駆動源からの動力をキャリッジに伝えるためのギア112、113、キャリッジ軸115等を有している。この記録装置およびこの記録装置で行う液体吐出方法によって、各種の被記録媒体に対して液体を吐出することで良好な画像の記録物を得ることができた。
【0129】
図27は、本発明の液体吐出方法および液体吐出ヘッドを適用したインク吐出記録を動作させるための装置全体のブロック図である。
【0130】
記録装置は、ホストコンピュータ300より印字情報を制御信号として受ける。印字情報は印字装置内部の入力インタフェイス301に一時保存されると同時に、記録装置内で処理可能なデータに変換され、ヘッド駆動信号供給手段を兼ねるCPU302に入力される。CPU302はROM303に保存されている制御プログラムに基づき、前記CPU302に入力されたデータをRAM304等の周辺ユニットを用いて処理し、印字するデータ(画像データ)に変換する。
【0131】
また、CPU302は前記画像データを記録用紙上の適当な位置に記録するために、画像データに同期して記録用紙および記録ヘッドを移動する駆動用モータを駆動するための駆動データを作る。画像データおよびモータ駆動データは、各々ヘッドドライバ307と、モータドライバ305を介し、ヘッド200および駆動モータ306に伝達され、それぞれ制御されたタイミングで駆動され画像を形成する。
【0132】
上述のような記録装置に適用でき、インク等の液体の付与が行われる被記録媒体としては、各種の紙やOHPシート、コンパクトディスクや装飾板等に用いられるプラスチック材、布帛、アルミニウムや銅等の金属材、牛皮、豚皮、人工皮革等の皮革材、木、合板等の木材、竹材、タイル等のセラミックス材、スポンジ等の三次元構造体等を対象とすることができる。
【0133】
また、上述の記録装置として、各種の紙やOHPシート等に対して記録を行うプリンタ装置、コンパクトディスク等のプラスチック材に記録を行うプラスチック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録装置、皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を行う木材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラミックス用記録装置、スポンジ等の三次元網状構造体に対して記録を行う記録装置、また布帛に記録を行う捺染装置等をも含むものである。また、これらの液体吐出装置に用いる吐出液としては、それぞれの被記録媒体や記録条件に合わせた液体を用いればよい。
【0134】
【発明の効果】
本発明によれば、気泡発生領域において発生する気泡の下流側部分の膨張とそれに連動した液体の移動を吐出口方向に極めて効率よく導くことにより、吐出効率を向上させることができる。また、気泡の上流側部分の膨張とそれに連動した液体の上流方向への移動とを、可動部材と可動部材の変位に沿った側壁と変位方向の上壁とによって防止または抑制することができる。さらに、気泡の収縮時及び吐出方向への液体のリフィル時には、可動部材の復帰に伴う側壁に隣接した上壁のない低流抵抗の領域(共通連通空間)からの高速リフィルが可能となる。また、前記側壁により、隣の液流路への気泡および吐出圧力の横逃げを防止することができ、吐出口近傍の液体を効率よく吐出できるため、吐出効率を向上することができる。
【0135】
これにより、気泡の安定的成長と液滴の安定的形成とを達成し、高速液滴による高速、高品位、高応答性の記録を可能にすることができる。また、成長する気泡とこれによって変位する可動部材との相乗効果を得ることができ、吐出口近傍の液体を効率よく吐出することができるため、吐出効率を向上させることができる。
【0136】
さらに本発明によれば、気泡の成長により可動部材が所定の変位位置まで移動する際に可動部材が液流路から受ける抵抗を少なくして適正な変位位置まで速やかに到達させることにより、吐出効率を向上させることができる。
【0137】
本発明によれば、可動部材の支点を共通液室内に存在させることにより、液体のリフィル性を向上させることができる。
【0138】
本発明によれば、低温や低湿で長期放置を行った場合であっても不吐出になることを防止でき、仮に不吐出になっても、予備吐出や吸引回復といった回復処理をわずかに行うだけで正常状態に即座に復帰できるという利点もある。これにより、回復時間の短縮や回復による液体の損失を低減でき、ランニングコストも大幅に下げることが可能である。
【0139】
本発明において、各構成部品の材料としてシリコン材料をベースとして使用すれば、耐インク性が向上すると共に、各構成部品の線膨張率の違いによる機械的特性の問題を解決することができる。
【0140】
本発明において、各構成要素を成膜工程で作り込めば、機械的特性の問題および組立上の問題を解決し、さらに素子基板上への発熱体の高密度配列を達成して液体吐出ヘッドの小型化を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液体吐出ヘッドの一例(第1の実施例)とその駆動の様子を示す模式的側断面図である。
【図2】本発明の液体吐出ヘッドを示す模式的部分破断斜視図である。
【図3】従来の液体吐出ヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を示す模式図である。
【図4】本発明の液体吐出ヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を示す模式的側断面図である。
【図5】本発明の液体吐出ヘッドにおける液体の流れを説明するための模式的側断面図である。
【図6】本発明の第2の実施例における液体吐出ヘッドとその駆動の様子を示す模式的側断面図である。
【図7】本発明の第3の実施例における液体吐出ヘッドとその駆動の様子を示す模式的側断面図である。
【図8】本発明の第4の実施例における液体吐出ヘッドとその駆動の様子を示す模式的側断面図である。
【図9】本発明の第5の実施例における液体吐出ヘッドを示す模式的側断面図である。
【図10】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の例を示す模式的工程図である。
【図11】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の例を示す模式的工程図である。
【図12】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の他の例を示す模式的工程図である。
【図13】本発明の液体吐出ヘッドの素子基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図14】本発明の液体吐出ヘッドの天板の製造方法の一例を示す工程図である。
【図15】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の一例であって、素子基板と天板との接合以降を示す工程図である。
【図16】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図17】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図18】本発明の液体吐出ヘッドの素子基板の製造方法のさらに他の例を示す工程図である。
【図19】本発明の液体吐出ヘッドの天板の製造方法のさらに他の例を示す工程図である。
【図20】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法のさらに他の例であって、素子基板と天板との接合以降を示す工程図である。
【図21】可動部材の他の形状を示す模式的上面図である。
【図22】発熱体面積とインク吐出量との関係を示すグラフである。
【図23】本発明の液体吐出ヘッドを示す模式的側断面図である。
【図24】駆動パルスの例を示すグラフである。
【図25】液体吐出ヘッドを示す模式的分解斜視図である。
【図26】液体吐出装置の要部を示す模式的斜視図である。
【図27】液体吐出装置のブロック図である。
【符号の説明】
1 素子基板
2 発熱体
3 面積中心
10 液流路
10a 第1の液流路
10b 第2の液流路
11 気泡発生領域
13 共通液室
18 吐出口
30 分離壁
31 可動部材
32 自由端
33 支点(支点部分)
34 土台(支持部材)
35 スリット
40 気泡
50 天板
60 上壁
61 上壁なし領域(共通連通空間)
62 側壁(流路側壁)
63 オリフィスプレート
71 素子基板
71b PSG膜
71c SiN膜
72 発熱体
73 天板
73b SiO
73c 層
75 オリフィス
76 可動部材
77 液流路
78 共通液室
79 流路側壁
81 吐出口
84 薄膜
84a 接合部
85 素子基板
85a 基体
84b 可動部材
90 液体タンク部
100 マスク
102 耐キャビテーション層
103 保護層
104 配線電極
105 電気抵抗層
106 膜
107 基体
111 モータ
112 ギア
113 ギア
115 キャリッジ軸
150 被記録媒体
200 液体吐出ヘッド部
201 PSG膜
202 SiN膜
203 ダメージ防止膜
204 流路壁(流路側壁)
205 可動部材
206 オリフィス部材
207 SiN膜
208 基板
300 ホストコンピュータ
301 入力インタフェイス
302 CPU
303 ROM
304 RAM
305 モータドライバ
306 駆動モータ
307 ヘッドドライバ

Claims (15)

  1. 液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通する液流路と、液体に気泡が発生する気泡発生領域と、該気泡発生領域に面して配され前記吐出口に向かう前記液流路の下流側に自由端を具備する可動部材とを有し、
    少なくとも前記可動部材が初期位置にあるときには、前記液流路の前記気泡発生領域に対応する部分の側方が、実質的に全面的に壁面からなり、前記可動部材が最大変位状態にあるときには、該可動部材の前記自由端の側方に前記壁面が存在し、
    前記可動部材の可動部分の上方には、前記液流路とそれに隣接する液流路とを連通させる共通連通空間が設けられている液体吐出ヘッド。
  2. 前記可動部材が最大変位状態にあるときに、前記液流路の、該可動部材の可動部分より下方に位置する前記気泡発生領域に対応する部分の側方が、実質的に全面的に前記流路側壁に塞がれる請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  3. 前記可動部材は気泡を発生するための発熱体が設けられた基板に対して直接固定されており、前記可動部材に設けられた屈曲部により前記可動部材の可動部分が前記基板に対して所定の間隙を形成している請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  4. 前記可動部材の自由端は、前記気泡発生領域の中心より前記液流路の下流側に位置する請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  5. 前記共通連通空間は、前記可動部材が初期位置にあるときの、該可動部材の自由端の位置より前記液流路の上流側に位置する請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  6. 前記共通連通空間は、前記可動部材が最大変位状態にあるときの、該可動部材の自由端の位置より前記液流路の上流側に位置する請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  7. 前記気泡発生領域において膜沸騰による気泡を生成するために利用される熱エネルギーを発生する発熱体が設けられている請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  8. 前記発熱体の前記液流路下流側の端部は、前記共通連通空間よりも、下流側に位置する請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
  9. 前記発熱体の前記液流路上流側の端部は、前記流路側壁の前記液流路上流側の端部よりも、流側に位置する請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
  10. 前記可動部材の支点は、前記流路側壁の前記液流路上流側の端部よりも上流側に位置する請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  11. 前記共通連通空間は、前記吐出口へ向かう液体の流れに対して低流体抵抗領域を形成する請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  12. 互いに接合されることで前記液流路を形成する基板および天板と、前記可動部材とは、いずれもシリコン系の材料からなる請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
  13. 前記吐出口が形成されているオリフィスプレートが、シリコン系の材料からなる請求項12に記載の液体吐出ヘッド。
  14. 液体を吐出する吐出口と、該吐出口に連通する液流路と、液体に気泡が発生する気泡発生領域と、該気泡発生領域に面して配され前記吐出口に向かう前記液流路の下流側に自由端を具備する可動部材とを有する液体吐出ヘッドを用い、
    少なくとも、実質的にすべて壁面からなる、前記液流路の前記気泡発生領域に対応する部分の側方部と、前記可動部材が最大変位状態にあるときの該可動部材の前記自由端の側方部と、前記可動部材とにより、前記気泡発生領域における気泡の成長を前記吐出口の方へ導きながら、液体を吐出する液体吐出工程と、
    気泡の収縮開始後に、少なくとも、前記可動部材の可動部分の上方に配された、前記液流路とそれに隣接する液流路とを連通させる共通連通空間から、前記吐出口の方へ液体を供給する液体供給工程とを含む液体吐出方法。
  15. 請求項1に記載の液体吐出ヘッドと、該液体吐出ヘッドから液体を吐出させるための駆動信号を供給する駆動信号供給手段とを有する液体吐出装置。
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