JP2000223304A - 有機質正特性サーミスタ - Google Patents

有機質正特性サーミスタ

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JP2000223304A
JP2000223304A JP11020601A JP2060199A JP2000223304A JP 2000223304 A JP2000223304 A JP 2000223304A JP 11020601 A JP11020601 A JP 11020601A JP 2060199 A JP2060199 A JP 2060199A JP 2000223304 A JP2000223304 A JP 2000223304A
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positive temperature
coefficient thermistor
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Norihiko Shigeta
徳彦 繁田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 人体に危険性のない100℃以下で動作し、
非動作時(室温)の初期抵抗が低く、非動作時から動作
時にかけての抵抗変化率が大きい有機質正特性サーミス
タ、さらには、耐湿性にも優れた有機質正特性サーミス
タを提供する。 【解決手段】 本発明の有機質正特性サーミスタは、ポ
リアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイドホモ
ポリマーを除く)と、非水溶性有機化合物と、スパイク
状の突起を有する導電性粒子とを含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有機質正特性サー
ミスタに関し、さらに詳細には、昇温により急激に抵抗
値が増大する現象、すなわちPTC( positive temper
ature coefficient of resistivity)特性を有する有機
質正特性サーミスタに関する。
【0002】
【従来の技術】結晶性重合体(ポリマー)に、カーボン
ブラックやグラファイト等の炭素粉末、または、金属粉
末等の導電性粒子を混練、分散させたPTC特性を示す
有機質正特性サーミスタは、この分野では公知であり、
例えば、米国特許第3243753号明細書および同3
351882号明細書等に開示されている。抵抗値の増
大は、結晶性重合体が融解に伴って膨張し、導電性微粒
子の導電経路を切断するためと考えられている。
【0003】有機質正特性サーミスタは、自己温度制御
型ヒーターや温度検出器センサー、過電流保護素子とし
て利用することができる。これに要求される特性とし
て、室温(非動作時)の初期抵抗値が充分低いこと、初
期抵抗値と動作時の抵抗の変化率が大きいこと、繰り返
し動作によってもその特性が安定していることが挙げら
れる。一般に、有機質正特性サーミスタでは、動作時に
結晶性重合体の融解を伴うので、冷却されたときに導電
性粒子の分散状態が変化し、初期抵抗値が上昇し、抵抗
変化率が減少することが知られている。
【0004】従来の有機質正特性サーミスタでは、導電
性粒子としてカーボンブラックが多く用いられてきた。
しかしながら、初期抵抗値を下げるためにカーボンブラ
ックの充填量を多くすると充分な抵抗変化率が得られ
ず、逆に、充填量を少なくして充分な抵抗変化率を得る
と初期抵抗値が高すぎて実用に適さないという問題があ
った。また、一般の金属粒子を導電性粒子に用いた例も
あるが、カーボンブラック同様、低い初期抵抗値と大き
な抵抗変化率とを両立させることは困難であった。
【0005】上記の欠点を解決する方法として、スパイ
ク状の突起を有する導電性粒子を用いる方法が特開平5
−47503号公報に開示されている。より具体的に
は、結晶性重合体としてポリフッ化ビニリデンを用い、
スパイク状の突起を有する導電性粒子としてはスパイク
状Niパウダーを用いたもので、これにより、低い初期
抵抗と大きな抵抗変化との両立を図ることができるとさ
れている。しかしながら、このものは繰り返し動作に対
する特性の安定性が不充分である。また、ポリフッ化ビ
ニリデンを用いる場合、動作温度は160℃程度であ
る。しかし、2次電池、電気毛布、便座、車両用シート
用のヒーター等の保護素子としての用途を考えた場合、
100℃以上の動作温度では人体への危険性が大きい。
人体に対しての安全性を考えた場合、動作温度は100
℃未満、特に60〜90℃程度が必要である。
【0006】また、米国特許第5378407号明細書
にも、スパイク状の突起を有するフィラメント形状のN
iと、ポリオレフィン、オレフィン系コポリマー、ある
いはフルオロポリマーとを用いたものが開示されてい
る。このものは、低い初期抵抗と、大きな抵抗変化と、
繰り返し動作に対する特性の安定性は十分であるとされ
ている。しかし、実施例で用いられている高密度ポリエ
チレン、ポリフッ化ビニリデンポリマーでは、動作温度
はそれぞれ130℃、160℃前後である。なお、この
明細書には、エチレン/エチルアクリレートコポリマ
ー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アク
リル酸コポリマー等も使用可能とされている。しかし、
実施例は存在しない。これらのポリマーは、動作温度が
100℃未満であるが、本発明者により、繰り返し動作
により特性が不安定になることが確認された。
【0007】なお、米国特許第4545926号明細書
に開示されたものも、球状、フレーク状、棒状のNi
と、ポリオレフィン、オレフィン系コポリマー、ハロゲ
ン化ビニル、ビニリデンポリマーを用いている。実施例
の中で、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エ
チレン/アクリル酸コポリマーが動作温度100℃未満
であり、他のポリマーは100℃超の動作温度である。
しかし、エチレン/エチルアクリレートコポリマー、エ
チレン/アクリル酸コポリマーは、前記の通り、繰り返
し動作により特性が不安定になる。
【0008】動作温度が100℃未満であり、かつ、低
い初期抵抗と大きな抵抗変化とを両立させる方法とし
て、本発明者は、重量平均分子量2,000,000以
上のポリエチレンオキサイドと、スパイク状の突起を有
する導電性粒子とを混練した有機質正特性サーミスタを
特開平10−214705号公報で提案している。この
ものは優れたPTC特性を示し、60〜90℃で動作
し、非動作時(室温)の初期抵抗が低く、動作時におけ
る抵抗の立ち上がりが急峻であり、非動作時から動作時
にかけての抵抗変化率が大きく、繰り返し動作によって
もその特性が安定している。
【0009】しかしながら、高湿度環境下では特性が不
安定であるという問題があり、後述の実施例で明らかに
なるであろうが、80℃80%RHの耐湿性試験では5
0時間で、大幅な特性劣化が見られる。ポリエチレンオ
キサイドは水溶性なので、水が吸着したり、重合体の中
へ拡散したりしてしまって、特性が劣化するのである。
高温で処理し、水を蒸発させると特性が元に戻ることか
らも、サーミスタの劣化が耐水性の問題であることがわ
かる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、人体
に危険性のない100℃以下で動作し、非動作時(室
温)の初期抵抗が低く、非動作時から動作時にかけての
抵抗変化率が大きい有機質正特性サーミスタ、さらに
は、耐湿性にも優れた有機質正特性サーミスタを提供す
ることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
の本発明により達成される。 (1) ポリアルキレンオキサイド(ただし、ポリエチ
レンオキサイドホモポリマーを除く)と、スパイク状の
突起を有する導電性粒子とを含有する有機質正特性サー
ミスタ。 (2) さらに、非水溶性有機化合物を含有する上記
(1)の有機質正特性サーミスタ。 (3) 前記ポリアルキレンオキサイドがポリプロピレ
ンオキサイドまたはポリテトラメチレンオキサイドであ
る上記(1)または(2)の有機質正特性サーミスタ。 (4) 前記非水溶性有機化合物が低密度ポリエチレン
である上記(2)または(3)のいずれかの有機質正特
性サーミスタ。 (5) 前記非水溶性有機化合物が、メルトフローレー
トが0.1〜30g/10minの非水溶性重合体であ
る上記(2)〜(4)のいずれかの有機質正特性サーミ
スタ。 (6) 前記非水溶性有機化合物の分子量が1,000
以下の非水溶性低分子有機化合物である上記(2)また
は(3)の有機質正特性サーミスタ。 (7) 前記非水溶性低分子有機化合物の融点が40〜
100℃である上記(6)の有機質正特性サーミスタ。 (8) 前記非水溶性低分子有機化合物がワックスまた
は水素結合可能な官能基をもつものである上記(6)ま
たは(7)の有機質正特性サーミスタ。 (9) 前記水素結合可能な官能基がカルバモイル基ま
たは水酸基である上記(8)の有機質正特性サーミス
タ。 (10) 前記スパイク状の突起を有する導電性粒子が
鎖状に連なっている上記(1)〜(9)のいずれかの有
機質正特性サーミスタ。 (11) 動作温度が100℃以下である上記(1)〜
(10)のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
【0012】
【作用】本発明では、スパイク状の突起を有する導電性
粒子を用いているので、その形状によりトンネル電流が
流れやすくなり、球状の導電性粒子と比較して低い室温
抵抗が得られる。また、導電性粒子間の間隔が球状のも
のと比較して大きいため、動作時にはより大きな抵抗変
化が得られる。
【0013】また、本発明では、ポリアルキレンオキサ
イド(ポリエチレンオキサイドホモポリマーを除く)を
用いるので、動作温度を100℃以下とすることがで
き、人体への危険性の軽減された保護素子とすることが
できる。本発明の有機質サーミスタは、100℃以下で
動作し、非動作時(室温)の初期抵抗が低く、非動作時
から動作時にかけての抵抗変化率が大きいスパイク状の
突起を有する導電性粒子−ポリエチレンオキサイド系有
機質サーミスタと同等程度の優れたPTC性能を有す
る。
【0014】しかし、ポリエチレンオキサイドホモポリ
マーを除くポリアルキレンオキサイドも、エーテル結合
を含み、そのエーテル酸素(−O−)は水分子が配位し
やすいので、一般に吸水性が高い。そのため、ポリエチ
レンオキサイドほどではないが、高湿度下での特性の安
定性が低い。このスパイク状の突起を有する導電性粒子
−ポリアルキレンオキサイド系有機質サーミスタに、さ
らに非水溶性有機化合物を含有させることにより、その
優れたPTC特性をほぼ維持したまま、耐湿性が大幅に
向上し、高湿度下における特性劣化が抑制される。これ
は、吸水性のポリアルキレンオキサイドと非水溶性の有
機化合物とがミクロ相分離構造をとり、ポリアルキレン
オキサイドに水が吸着したり、重合体の中へ拡散したり
するのが防止されるためと考えられる。
【0015】なお、特開昭61−181859号公報に
は、結晶性ポリアルキレンオキサイドと、側鎖または/
および主鎖に、カルボキシル基または/およびカルボン
酸の無水基を含有する変性ポリオレフィンと、導電性カ
ーボンブラックまたは/および黒鉛とからなることを特
徴とする正の温度係数特性を有する導電性重合体組成物
が開示されている。この構成とすることで、PTC特性
が実質的に損なわれることなく、耐湿性が向上するとさ
れている。しかしながら、耐湿性試験は40℃90%R
H、240時間で行われており、通常の使用条件下での
耐湿性を判定するには不十分である。上記の加速条件で
は、後述する絶対湿度換算で、東京では半年以下、那覇
では3ヶ月以下の湿度寿命にしか相当しない。後述の実
施例で明らかになるであろうが、本発明の有機質正特性
サーミスタは、80℃80%RHの加速条件で500時
間以上もつので、東京で20年以上、那覇で10年以上
の湿度寿命をもつ。また、上記公報の実施例には、耐湿
性試験前の特性が示されておらず、試験による劣化がど
れくらいかは不明である。また、導電性粒子としてカー
ボンブラックやグラファイトを用いており、本発明のよ
うに低い初期抵抗と大きな抵抗変化率とを両立させては
いない。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。本発明の有機質正特性サーミスタ
は、ポリアルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイ
ドホモポリマーを除く)と、スパイク状の突起を有する
導電性粒子とを混練したものである。さらには、ポリア
ルキレンオキサイド(ポリエチレンオキサイドホモポリ
マーを除く)と、スパイク状の突起を有する導電性粒子
と、非水溶性有機化合物とを混練したものであることが
好ましい。
【0017】本発明に用いるポリアルキレンオキサイド
は、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリトリメ
チレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ま
たは、これらの共重合体、および、ポリエチレンオキサ
イドの共重合体のいずれかであることが好ましい。共重
合体としては、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、
ポリトリメチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキ
サイド、および、ポリエチレンオキサイドのいずれか同
士の共重合体が好ましい。このような共重合体として
は、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイ
ドブロック共重合体等がある。共重合体の場合、その比
率は任意である。これらの中でも、特に、ポリプロピレ
ンオキサイドまたはポリテトラメチレンオキサイドを用
いることが好ましい。
【0018】本発明に用いるポリアルキレンオキサイド
は、重量平均分子量Mw1,000以上のものが好まし
い。Mwが1,000未満では、溶融時の粘度が低すぎ
て導電性粒子の分散性が悪化してしまい、非動作時(室
温)の初期抵抗を低くすることが困難になる傾向があ
る。
【0019】また、動作温度が好ましくは100℃以下
であるサーミスタを目的としているため、用いるポリア
ルキレンオキサイドは、融点が100℃以下、特に60
〜90℃程度であることが好ましい。
【0020】本発明に用いる導電性粒子は、1個、1個
が鋭利な突起をもつ一次粒子から形成されており、粒径
の1/3〜1/50の高さの円錘状のスパイク状の突起
が1個の粒子に複数(通常10〜500個)存在するも
のである。その材質は金属、特にNiが好ましい。
【0021】このような導電性粒子は、1個、1個が個
別に存在する粉体であってもよいが、一次粒子が10〜
1000個程度鎖状に連なり二次粒子を形成しているこ
とが好ましい。鎖状のものには、一部一次粒子が存在し
ていてもよい。前者の例としては、スパイク状の突起を
もつ球状のニッケルパウダがあり、市販されているもの
として、商品名INCO Type 123ニッケルパ
ウダ(インコ社製)がある。その平均粒径は3〜7μm
程度、見かけの密度は1.8〜2.7g/cm3程度、比
表面積は0.34〜0.44m2/g程度である。
【0022】また、好ましく用いられる後者の例として
は、フィラメント状ニッケルパウダがあり、市販されて
いるものとして、商品名INCO Type 210、
215、255、270、287ニッケルパウダ(イン
コ社製)がある。このうち、INCO Type 25
5、270、287が特に好ましい。そして、その一次
粒子の平均粒径は、好ましくは0.1μm 以上、特に
0.5〜4.0μm程度が好ましい。一次粒子の平均粒
径は1.0〜4.0μmが最も好ましく、これに平均粒
径0.1μm 以上1.0μm未満のものを50重量%以
下混合してもよい。また、見かけの密度は0.3〜1.
0g/cm3程度、比表面積は0.4〜2.5m2/g程度
である。なお、この場合の平均粒径はフィッシュー・サ
ブシーブ法で測定したものである。
【0023】このような導電性粒子については、特開平
5−47503号公報、米国特許第5378407号明
細書に記載されている。
【0024】また、スパイク状の突起を有する導電性粒
子の他に、補助的に導電性を付与するための導電性粒子
として、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、
金属被覆カーボンブラック、グラファイト化カーボンブ
ラック、金属被覆炭素繊維等の炭素系導電性粒子、球
状、フレーク状、繊維状等の金属粒子、異種金属被覆金
属(銀コートニッケル等)粒子、炭化タングステン、窒
化チタン、窒化ジルコニウム、炭化チタン、ホウ化チタ
ン、ケイ化モリブデン等のセラミック系導電性粒子、ま
た、特開平8−31554号、同9−27383号公報
に記載されている導電性チタン酸カリウムウィスカー等
を添加してもよい。このような導電性粒子は、スパイク
状の突起を有する導電性粒子の25重量%以下とするこ
とが好ましい。
【0025】非水溶性有機化合物としては、非水溶性で
あれば特に限定されず、低分子有機化合物を用いても、
重合体(ポリマー)を用いてもよい。
【0026】非水溶性低分子有機化合物としては、分子
量1000程度まで、好ましくは200〜800のもの
であれば特に制限はないが、常温(25℃程度の温度)
で固体であるものが好ましい。低分子有機化合物の融点
mpは40〜100℃であることが好ましい。
【0027】このようなものとしては、ワックス(具体
的には、パラフィンワックスやマイクロクリスタリンワ
ックス等の石油系ワックス、植物系ワックス、動物系ワ
ックス、鉱物系ワックスのような天然ワックス等)、油
脂(具体的には、脂肪または固体脂と称されるもの)な
どがある。ワックスや油脂の成分は、炭化水素(具体的
には、炭素数22以上のアルカン系の直鎖炭化水素
等)、脂肪酸(具体的には、炭素数12以上のアルカン
系の直鎖炭化水素の脂肪酸等)、脂肪酸エステル(具体
的には、炭素数20以上の飽和脂肪酸とメチルアルコー
ル等の低級アルコールとから得られる飽和脂肪酸のメチ
ルエステル等)、脂肪酸アミド(具体的には、オレイン
酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド
等)、脂肪族アミン(具体的には、炭素数16以上の脂
肪族第1アミン)、高級アルコール(具体的には、炭素
数16以上のn−アルキルアルコール)などであるが、
これら自体を単独で低分子有機化合物として用いること
ができる。
【0028】非水溶性低分子有機化合物としては、ワッ
クスまたは水素結合可能な官能基を有するもの、特に水
素結合可能な官能基を有するものが均一な混合状態が得
られ、製造も容易なので好ましい。炭化水素、主に炭化
水素からなる石油系ワックス等を用いると、均一な分散
が難しくなり、プレス成形時に低分子化合物が分離する
ことがある。水素結合可能な官能基を有するものは、ポ
リアルキレンオキサイドのエーテル酸素に水素結合する
ので、低分子化合物の分離は起こりにくい。水素結合可
能な官能基としてはアミノ基、好ましくはカルバモイル
基、水酸基等が挙げられる。
【0029】これらの低分子有機化合物は、市販されて
おり、市販品をそのまま用いることができる。これらは
1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】このようなものとしては、パラフィンワッ
クス(例えば、テトラコサンC24 50;mp49〜52
℃、ヘキサトリアコンタンC3674;mp73℃、商品
名HNP−10(日本精蝋社製);mp75℃、HNP
−3(日本精蝋社製);mp66℃など)、マイクロク
リスタリンワックス(例えば、商品名Hi−Mic−1
080(日本精蝋社製);mp83℃、Hi−Mic−
1045(日本精蝋社製);mp70℃、Hi−Mic
2045(日本精蝋社製);mp64℃、Hi−Mic
3090(日本精蝋社製);mp89℃、セラッタ10
4(日本石油精製社製);mp96℃、155マイクロ
ワックス(日本石油精製社製);mp70℃など)、脂
肪酸(例えば、ベヘン酸(日本精化製);mp81℃、
ステアリン酸(日本精化製);mp72℃、パルミチン
酸(日本精化製);mp64℃など)、脂肪酸エステル
(例えば、アラキン酸メチルエステル(東京化成製);
mp48℃など)、脂肪酸アミド(例えば、オレイン酸
アミド(日本精化製);mp76℃)などがある。ま
た、パラフィンワックスに樹脂類を配合した配合ワック
スやこの配合ワックスにマイクロクリスタリンワックス
を混合したものであって融点を40〜100℃にしたも
のも用いることができる。
【0031】本発明で用いる非水溶性重合体は、吸水率
(ASTM D570)が0.5%以下である重合体で、ポリエ
チレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポ
リ塩化ビニル、オレフィン系コポリマー等の熱可塑性ポ
リマーや、熱可塑性エラストマーや、エポキシ樹脂、フ
ェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹
脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。中でもポリエチレ
ン、特に低密度ポリエチレンが好ましい。
【0032】低密度ポリエチレンとは、密度が0.91
0〜0.929g/cm3のものである。低密度ポリエチ
レンは、高圧法、すなわち1000気圧以上の高圧ラジ
カル重合法で製造され、エチレン基等の短鎖分岐の他、
長鎖分岐を含む。
【0033】非水溶性重合体、好ましくは低密度ポリエ
チレンのASTM D1238で定義されるメルトフローレート
(MFR)は、0.1〜30g/10min、特に1.
0〜10g/10minが好ましい。これより高いと、
溶融粘度が低すぎて、導電性粒子の分散を一定にするの
が困難になり、抵抗値のばらつきが大きくなる傾向が見
られる。これより低いと、溶融粘度が高すぎて、本発明
で好ましく用いられる導電性粒子の鎖状構造が分断さ
れ、抵抗変化率が減少する傾向が見られる。
【0034】非水溶性重合体としては、MFR0.1〜
30g/10minの低密度ポリエチレンのみを用いる
ことが好ましい。
【0035】非水溶性有機化合物は、1種のみを用いて
も2種以上を併用してもかまわない。また、すべて非水
溶性低分子有機化合物であっても、すべて非水溶性重合
体であっても、非水溶性低分子有機化合物と非水溶性重
合体とを併用してもよい。
【0036】本発明の有機質正特性サーミスタは、ポリ
アルキレンオキサイドと非水溶性有機化合物(非水溶性
低分子有機化合物、非水溶性重合体)とがそれぞれ別々
に分散して存在する海島構造をしていると考えられる。
【0037】本発明におけるポリアルキレンオキサイド
と非水溶性有機化合物との混合比は、ポリアルキレンオ
キサイド1に対して非水溶性有機化合物0.02〜2.
0(重量比)であることが好ましい。非水溶性低分子有
機化合物の場合、ポリアルキレンオキサイドと非水溶性
低分子有機化合物との混合比は、重量比で、ポリアルキ
レンオキサイド1に対して非水溶性低分子有機化合物
0.02〜0.4、特に0.05〜0.3であることが
好ましい。非水溶性重合体の場合、ポリアルキレンオキ
サイドと非水溶性重合体との混合比は、重量比で、ポリ
アルキレンオキサイド1に対して非水溶性重合体0.2
5〜2.0、特に1.0〜1.8であることが好まし
い。この比率が小さくなって非水溶性有機化合物が少な
くなりすぎると、耐湿性の向上が見られなくなる。ま
た、この比率が大きくなって非水溶性有機化合物が多く
なりすぎると、ポリアルキレンオキサイドの融点におけ
る充分な抵抗の増大が得られなくなり、また、素子の強
度が減少してくる。なお、非水溶性有機化合物を2種以
上併用する場合もその合計量が上記の範囲であることが
好ましい。
【0038】導電性粒子は、重量比で、ポリアルキレン
オキサイドと非水溶性有機化合物との合計量の2〜5倍
であることが好ましい。導電性粒子がこれより少ない
と、非動作時の初期抵抗を充分に低くすることができな
くなってくる。また、導電性粒子がこれより多いと、非
動作時から動作時にかけての抵抗変化率が小さくなって
くる上、混練が困難になってくる。
【0039】また、必要に応じて各種添加剤を用いても
よい。添加剤としては、例えば、高分子マトリックス、
低分子有機化合物の熱劣化を防止するためのフェノール
類、有機イオウ類、フォスファイト類(有機リン系)等
の酸化防止剤、重合物のブレンド助剤(相溶化剤)等が
用いられる。ブレンド助剤として、エチレンオリゴマー
骨格にポリエーテル側鎖が複数結合しているものが挙げ
られる。添加剤は1種を用いても、2種以上を併用して
もよい。含有量は、重量比で、ポリアルキレンオキサイ
ドと非水溶性有機化合物との合計量の0.1〜10重量
%程度であることが好ましい。
【0040】また、本発明の有機質サーミスタには、本
発明の特性を損なうものでなければ以下の各種添加剤を
混入してもよい。
【0041】良熱導電性添加物として、特開昭57−1
2061号公報に記載されている窒化ケイ素、シリカ、
アルミナ、粘土(雲母、タルク等)、特公平7−771
61号公報に記載されているシリコン、炭化ケイ素、窒
化ケイ素、ベリリア、セレン、特開平5−217711
号公報に記載されている無機窒化物、酸化マグネシウム
等を添加してもよい。
【0042】耐久性向上のために、特開平5−2261
12号公報に記載されている酸化チタン、酸化鉄、酸化
亜鉛、シリカ、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化クロ
ム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウ
ム、酸化鉛、特開平6−68963号公報に記載されて
いる高比誘電率の無機固体、具体的には、チタン酸バリ
ウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム等を
添加してもよい。
【0043】耐電圧改善のために、特開平4−7438
3号公報に記載されている炭化ホウ素等を添加してもよ
い。
【0044】強度改善のために、特開平5−74603
号公報に記載されている水和チタン酸アルカリ、特開平
8−17563号公報に記載されている酸化チタン、酸
化鉄、酸化亜鉛、シリカ等を添加してもよい。
【0045】結晶核剤として、特公昭59−10553
号公報に記載されているハロゲン化アルカリ、メラミン
樹脂、特開平6−76511号公報に記載されている安
息香酸、ジベンジリデンソルビトール、安息香酸金属
塩、特開平7−6864号公報に記載されているタル
ク、ゼオライト、ジベンジリデンソルビトール、特開平
7−263127号公報に記載されているソルビトール
誘導体(ゲル化剤)、アスファルト、さらには、リン酸
ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム等を添加し
てもよい。
【0046】ア−ク調節制御剤としては、特公平4−2
8744号公報に記載されているアルミナ、マグネシア
水和物、特開昭61−250058号公報に記載されて
いる金属水和物、炭化ケイ素等を添加してもよい。
【0047】金属害防止剤として、特開平7−6864
号公報に記載されているイルガノックスMD1024
(チバガイギー製)等を添加してもよい。
【0048】また、難燃剤として、特開昭61−239
581号公報に記載されている三酸化二アンチモン、水
酸化アルミニウム、特開平5−74603号公報に記載
されている水酸化マグネシウム、さらには、2,2−ビ
ス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロ
パン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のハロゲン
を含有する有機化合物(重合体を含む)、リン酸アンモ
ニウム等のリン系化合物等を添加してもよい。
【0049】これら以外にも、硫化亜鉛、塩基性炭酸マ
グネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケ
イ酸マグネシウム、アルミノシリケート粘土(雲母、タ
ルク、カオリナイト、モンモリロナイト等)、ガラス
粉、ガラスフレーク、ガラス繊維、硫酸カルシウム等を
添加してもよい。
【0050】これらの添加剤は、高分子マトリックス、
低分子有機化合物および導電性粒子の合計重量の25重
量%以下であることが好ましい。
【0051】ポリアルキレンオキサイドと導電性粒子、
または、ポリアルキレンオキサイドと導電性粒子と非水
溶性有機化合物との混練は、公知の方法により行えばよ
く、例えばミルやロール等により5〜90分間程度混練
する。混練温度は、通常、ポリマーの融点以上の温度、
好ましくは融点より5〜40℃高い温度で行えばよい。
【0052】また、溶液法で、ポリアルキレンオキサイ
ドと導電性粒子と、または、ポリアルキレンオキサイド
と導電性粒子と非水溶性有機化合物とを混合してもよ
い。この場合、ポリアルキレンオキサイドが溶解する溶
媒を用いて非水溶性有機化合物と導電性粒子とを分散さ
せる方法と、非水溶性有機化合物が溶解する溶媒を用い
てポリアルキレンオキサイドと導電性粒子とを分散させ
る方法と、ポリアルキレンオキサイドと非水溶性有機化
合物とが溶解する溶媒を用いて導電性粒子を分散させる
方法等がある。
【0053】ポリアルキレンオキサイドと導電性粒子と
非水溶性有機化合物との混練物は、所定の厚さのシート
形状にプレス成型し、その後、金属電極を熱圧着してサ
ーミスタ素子とする。成型は、注入法、押し出し法等で
行えばよい。金属電極はCu、Ni等が好ましい。ま
た、プレス成型と電極形成とを同時に行ってもよい。
【0054】成型後に、必要に応じて架橋処理を施して
もよい。架橋方法は、放射線架橋、有機過酸化物による
化学架橋、シランカップリング剤をグラフト化しシラノ
ール基の縮合反応による水架橋等が用いられる。
【0055】本発明の有機質正特性サーミスタは、10
0℃以下、好ましくは60〜90℃で動作し、非動作時
における初期抵抗が低く、その室温比抵抗値は10-2
10 0Ω・cm程度であり、非動作時から動作時にかけて
の抵抗変化率が7桁以上と大きい。その上、耐湿性に優
れており、東京で20年以上、那覇で10年以上の湿度
寿命をもつ。
【0056】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例とともに示
し、本発明を具体的に説明する。 <実施例1>結晶性重合体としてポリプロピレンオキサ
イド(重量平均分子量1000、融点70℃)、非水溶
性低分子有機化合物としてオレイン酸アミド(日本精化
製、商品名ニュートロンP)、導電性粒子として鎖状の
フィラメント状ニッケルパウダ(INCO社製、商品名
Type255ニッケルパウダ)を用いた。導電性粒子
の平均粒径は2.2〜2.8μm 、見かけの密度は0.
5〜0.65g/cm3、比表面積は0.68m2/gである。
【0057】ポリプロピレンオキサイドに、オレイン酸
アミドをポリプロピレンオキサイドの10重量%、ニッ
ケルパウダをポリプロピレンオキサイドの4倍重量、フ
ェノール系および有機イオウ系酸化防止剤(住友化学
製、商品名スミライザー−BHTおよびTP−D)をポ
リプロピレンオキサイドの0.5重量%加え、ミル中、
80℃で10分間混練した。
【0058】この混練物の両面をNi箔電極(30μm
厚)で挟み、混練物にNi箔を圧着するとともに、混練
物を成型し、全体で1mm厚のプレス成型品を得た。これ
を直径10mmのディスク状に打ち抜いて、サーミスタ素
子を得た。このサーミスタ素子の断面図を図1に示す。
図1に示されるように、サーミスタ素子はNi箔から形
成された電極11間に、結晶性重合体と導電性粒子と非
水溶性低分子有機化合物との混練成形シートであるサー
ミスタ素体12を挟み込んだものである。
【0059】このサンプルを恒温槽内で加熱、冷却し、
所定の温度で、4端子法で抵抗値を測定して温度−抵抗
曲線を得た。この結果を図2に示す。
【0060】室温(25℃)抵抗値は7.6×10-3Ω
(6.0×10-2Ω・cm)で、ポリプロピレンオキサイ
ドの融点70℃付近で抵抗の急激な上昇が見られ、最大
抵抗値は6.5×106Ω(5.1×107Ω・cm)とな
り、抵抗変化率は8.9桁であった。
【0061】(耐湿性試験)得られたサーミスタサンプ
ルを、80℃80%RHに設定した恒温恒湿槽に放置
し、耐湿性試験を行った。各放置時間における室温抵抗
と抵抗変化率を図3に示す。500時間まで室温(25
℃)抵抗値は10mΩ以下、抵抗変化率は8桁以上であ
り、充分なPTC特性が保たれていた。
【0062】80℃80%RH、500時間の耐湿性試
験は、絶対湿度換算で、東京では20年以上、那覇では
10年以上の湿度寿命に相当する。絶対湿度換算につい
て、80℃80%RH条件下での寿命から25℃60%
RH条件下での寿命への計算を例にして説明する。80
℃80%RHの絶対湿度は232.5g/m3、25℃
60%RHの絶対湿度は13.8g/m3である。加速
定数は2として、次の計算式で求める。 (232.5/13.8)2≒283.85 この場合、80℃80%RH条件下での寿命が500hr
であれば、25℃60%RH条件下での寿命は 500hr×283.85=141925hr≒5914日
≒16.2年 となる。東京、那覇の湿度は、月々の平均相対湿度を絶
対湿度換算し、その合計を年間の湿度とした。
【0063】<実施例2>非水溶性低分子機化合物とし
て、オレイン酸アミドの代わりに、マイクロクリスタリ
ンワックス(日本精蝋製、商品名Hi−Mic−104
5)をポリプロピレンオキサイドの10重量%加え、さ
らに下記の相溶化剤I(住友化学工業製、商品名スミエ
ード300)をポリプロピレンオキサイドとマイクロク
リスタリンワックスの合計重量の2重量%加えた他は実
施例1と同様にしてサーミスタ素子を得た。そして、実
施例1と同様にして温度−抵抗曲線を得、耐湿性試験を
行った。
【0064】
【化1】
【0065】このサンプルの室温(25℃)抵抗値は
6.4×10-3Ω(5.0×10-2Ω・cm)で、ポリプ
ロピレンオキサイドの融点70℃付近で抵抗の急激な上
昇が見られ、最大抵抗値は5.2×106Ω(4.0×
107Ω・cm)となり、抵抗変化率は8.9桁であっ
た。
【0066】80℃80%RH耐湿性試験では、500
時間後の室温抵抗値は8.8×10 -3Ω(6.9×10
-2Ω・cm)、抵抗変化率は7.9桁であり、充分なPT
C特性が保たれていた。
【0067】<実施例3>実施例1と同じポリプロピレ
ンオキサイドに、フェノール系および有機イオウ系酸化
防止剤(住友化学製、商品名スミライザー−BHTおよ
びTP−D)をポリプロピレンオキサイドの0.5wt
%、実施例2と同じ相溶化剤Iをポリプロピレンオキサ
イドの5wt%加え、ミル中、80℃で10分間混練し
た。次に、ミルの温度を115℃に上げ、非水溶性重合
体として低密度ポリエチレン(日本ポリケム製、商品名
LC500、MFR=4.0g/10min、融点10
6℃)をポリプロピレンオキサイドの1.5重量倍加
え、5分間混練した。そして、実施例1と同じフィラメ
ント状ニッケルパウダをポリプロピレンオキサイドと低
密度ポリエチレンとの合計重量の4倍量加え、ミル中、
115℃で60分間混練した。そして、実施例1と同様
にしてこの混練物にNi箔を熱圧着してサーミスタ素子
を得た。そして、実施例1と同様にして温度−抵抗曲線
を得、耐湿性試験を行った。
【0068】このサンプルの室温(25℃)抵抗値は
5.3×10-3Ω(4.2×10-2Ω・cm)で、ポリプ
ロピレンオキサイドの融点70℃付近で抵抗の急激な上
昇が見られ、最大抵抗値は8.2×105Ω(6.4×
106Ω・cm)となり、抵抗変化率は8.2桁であっ
た。
【0069】80℃80%RH耐湿性試験では、500
時間後の室温抵抗値は7.6×10 -3Ω(6.0×10
-2Ω・cm)、抵抗変化率は7.6桁であり、充分なPT
C特性が保たれていた。
【0070】<実施例4>ポリプロピレンオキサイドの
代わりに、ポリテトラメチレンオキサイド(重量平均分
子量5000、融点60℃)を用い、70℃で混練した
他は実施例1と同様にしてサーミスタ素子を得た。そし
て、実施例1と同様にして温度−抵抗曲線を得、耐湿性
試験を行った。
【0071】このサンプルの室温(25℃)抵抗値は
8.5×10-3Ω(6.7×10-2Ω・cm)で、ポリテ
トラメチレンオキサイドの融点60℃付近で抵抗の急激
な上昇が見られ、最大抵抗値は4.2×105Ω(3.
2×106Ω・cm)となり、抵抗変化率は7.7桁であ
った。
【0072】80℃80%RH耐湿性試験では、500
時間後の室温抵抗値は9.1×10 -3Ω(7.1×10
-2Ω・cm)、抵抗変化率は7.2桁であり、充分なPT
C特性が保たれていた。
【0073】<比較例1>実施例1と同じポリプロピレ
ンオキサイドに、実施例1と同じフェノール系および有
機イオウ系酸化防止剤をポリプロピレンオキサイドの
0.5重量%、実施例1と同じフィラメント状ニッケル
パウダをポリプロピレンオキサイドの4倍重量加え、ミ
ル中、80℃で10分間混練した。そして、実施例1と
同様にして、この混練物の両面にNi電極を圧着して、
サーミスタ素子を得た。
【0074】実施例1と同様にしてこのサンプルの温度
−抵抗曲線を得た。このサンプルの室温(25℃)抵抗
値は7.1×10-3Ω(5.6×10-2Ω・cm)で、ポ
リプロピレンオキサイドの融点70℃付近で抵抗の急激
な上昇が見られ、最大抵抗値は8.1×106Ω(6.
4×107Ω・cm)となり、抵抗変化率は9.1桁であ
った。
【0075】実施例1と同様にして、80℃80%RH
でこのサンプルの耐湿性試験を行った。各放置時間にお
ける室温抵抗と抵抗変化率を図4に示す。50時間で室
温(25℃)抵抗値は1桁以上も上昇し、抵抗変化率は
8桁以下に減少した。100時間で室温抵抗値は初期か
ら3桁以上、250時間で5桁以上も上昇し、抵抗変化
率は250時間で4桁以下に減少し、大幅な特性の劣化
が見られた。
【0076】非水溶性有機化合物を含有させた本発明の
有機質正特性サーミスタは、100℃以下で動作し、非
動作時(室温)の初期抵抗が低く、非動作時から動作時
にかけての抵抗変化率が大きいスパイク状の突起を有す
る導電性粒子−ポリアルキレンオキサイド系有機質サー
ミスタの優れたPTC特性をほぼ維持しており、その
上、耐湿性が大幅に向上していることがわかる。
【0077】なお、比較例1において、ポリプロピレン
オキサイドの代わりに、実施例4と同じポリテトラメチ
レンオキサイドを用いても比較例1と同等の結果が得ら
れた。
【0078】<比較例2>ポリエチレンオキサイド(重
量平均分子量4,300,000〜4,800,00
0、融点67℃)に、実施例1と同じフェノール系およ
び有機イオウ系酸化防止剤をポリエチレンオキサイドの
0.5重量%、実施例1と同じ鎖状のフィラメント状ニ
ッケルパウダをポリエチレンオキサイドの4倍重量加
え、ミル中、80℃で10分間混練した。そして、実施
例1と同様にして、この混練物の両面にNi電極を圧着
して、サーミスタ素子を得た。
【0079】実施例1と同様にしてこのサンプルの温度
−抵抗曲線を得た。このサンプルの室温(25℃)抵抗
値は6mΩ(4.7×10-2Ω・cm)で、ポリエチレン
オキサイドの融点67℃付近で抵抗の急激な上昇が見ら
れ、最大抵抗値は6.0×107Ω(4.7×108Ω・
cm)となり、抵抗変化率は10.0桁であった。
【0080】実施例1と同様にして、80℃80%RH
でこのサンプルの耐湿性試験を行った。各放置時間にお
ける室温抵抗と抵抗変化率を図5に示す。50時間で室
温(25℃)抵抗値は2桁以上も上昇し、抵抗変化率は
6桁以下に減少した。100時間で室温抵抗値は初期か
ら6桁以上も上昇し、抵抗変化率は2桁以下に減少し
た。このように50時間でも大幅な特性の劣化が見られ
た。このサーミスタ素子は、比較例1のサーミスタ素子
よりもさらに耐湿性が低かった。
【0081】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、人体に
危険性のない100℃以下で動作し、非動作時(室温)
の初期抵抗が低く、非動作時から動作時にかけての抵抗
変化率が大きい有機質正特性サーミスタ、さらには、耐
湿性にも優れた有機質正特性サーミスタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機質正特性サーミスタのサンプルの概略断面
図である。
【図2】実施例1のサンプルの温度−抵抗曲線である。
【図3】実施例1のサンプルの80℃80%RH耐湿性
試験の各放置時間における室温抵抗と抵抗変化率であ
る。
【図4】比較例1のサンプルの80℃80%RH耐湿性
試験の各放置時間における室温抵抗と抵抗変化率であ
る。
【図5】比較例2のサンプルの80℃80%RH耐湿性
試験の各放置時間における室温抵抗と抵抗変化率であ
る。
【符号の説明】
11 電極 12 サーミスタ素体

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアルキレンオキサイド(ただし、ポ
    リエチレンオキサイドホモポリマーを除く)と、スパイ
    ク状の突起を有する導電性粒子とを含有する有機質正特
    性サーミスタ。
  2. 【請求項2】 さらに、非水溶性有機化合物を含有する
    請求項1の有機質正特性サーミスタ。
  3. 【請求項3】 前記ポリアルキレンオキサイドがポリプ
    ロピレンオキサイドまたはポリテトラメチレンオキサイ
    ドである請求項1または2の有機質正特性サーミスタ。
  4. 【請求項4】 前記非水溶性有機化合物が低密度ポリエ
    チレンである請求項2または3の有機質正特性サーミス
    タ。
  5. 【請求項5】 前記非水溶性有機化合物が、メルトフロ
    ーレートが0.1〜30g/10minの非水溶性重合
    体である請求項2〜4のいずれかの有機質正特性サーミ
    スタ。
  6. 【請求項6】 前記非水溶性有機化合物の分子量が1,
    000以下の非水溶性低分子有機化合物である請求項2
    または3の有機質正特性サーミスタ。
  7. 【請求項7】 前記非水溶性低分子有機化合物の融点が
    40〜100℃である請求項6の有機質正特性サーミス
    タ。
  8. 【請求項8】 前記非水溶性低分子有機化合物がワック
    スまたは水素結合可能な官能基をもつものである請求項
    6または7の有機質正特性サーミスタ。
  9. 【請求項9】 前記水素結合可能な官能基がカルバモイ
    ル基または水酸基である請求項8の有機質正特性サーミ
    スタ。
  10. 【請求項10】 前記スパイク状の突起を有する導電性
    粒子が鎖状に連なっている請求項1〜9のいずれかの有
    機質正特性サーミスタ。
  11. 【請求項11】 動作温度が100℃以下である請求項
    1〜10のいずれかの有機質正特性サーミスタ。
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