JP2000219427A

JP2000219427A - 糸条の綾振り装置

Info

Publication number: JP2000219427A
Application number: JP11020529A
Authority: JP
Inventors: Kunihiro Utsunomiya; 国博宇都宮; Kozo Okumura; 幸三奥村; Hiroshi Otani; 洋大谷
Original assignee: Toray Industries Inc
Current assignee: Toray Industries Inc
Priority date: 1999-01-28
Filing date: 1999-01-28
Publication date: 2000-08-08

Abstract

(57)【要約】【課題】糸条と、その糸条に接触しながら綾振り運動を
付与する部材や糸道を規制する部材との摩擦を減少する
とともに、前記部材の離型性を向上させ油剤付着量を減
少させることにより、毛羽の発生および糸落ちを抑制
し、良好な糸条パッケージを生産し得る糸条の綾振り装
置を提供する。【解決手段】糸条綾振り装置の、糸条に綾振り運動を付
与する部材や糸道を規制する部材の少なくとも一部に、
炭素硬質皮膜を形成し、糸条との摩擦係数を下げ、離型
性を向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、糸条綾振り装置に
おける、糸条に綾振り運動を付与する部材および糸道を
規制する部材に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】糸条の綾振り装置としては、例えば、特
公昭４６−１６２９８号公報によって、糸条に綾振り運
動を付与する２個のブレードを有し、それらのブレード
が同軸心回りに互いに逆方向に回転するトラバース機構
が３個並列配置され、さらに糸条を位置規制し、綾振り
方向に案内する糸道規制ガイドが取り付けられた羽根ト
ラバース装置が、そして、特公昭３６−５８２２号公報
および特公昭４９−６４９３号公報等によって、糸条を
把持して綾振り運動を付与するトラバースガイドを、ト
ラバースカムの外周面に設けられた螺旋溝に摺動可能に
設置し、トラバースカムの回転によりトラバースガイド
が往復することにより、糸条を綾振るレシプロカムトラ
バース装置が開示されている。

【０００３】しかし、前記羽根トラバース装置では、高
速で糸条を巻き取る際にブレードまたは糸道規制ガイド
と糸条間での摩擦が大きいため、糸条に毛羽が発生して
いた。また、前記レシプカムトラバース装置でも、トラ
バースガイドと糸条間での摩擦のために、同様の問題が
発生していた。さらに、前記羽根トラバース装置では、
糸条とブレード間の摩擦や油剤の付着による摩擦の増加
によってスティックスリップ（糸条が、ブレードや糸道
規制ガイドに引掛かりながらすべる現象）が生じ、２つ
の糸送りブレード間で糸渡しが円滑に行われず糸落ちが
発生するとういうような問題もあった。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、糸条
と、その糸条に接触しながら綾振り運動を付与する部材
や糸道を規制する部材との摩擦を減少するとともに、前
記部材の離型性を向上させ油剤付着量を減少させること
により、毛羽の発生および糸落ちを抑制し、良好な糸条
パッケージを生産し得る糸条の綾振り装置を提供するこ
とにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
の本発明は、糸条に綾振り運動を付与する部材を有し、
かつ、その部材の少なくとも一部が炭素硬質皮膜で形成
されている糸条の綾振り装置を特徴とするものである。

【０００６】ここで、糸条に綾振り運動を付与する部材
が、互いに反対方向に回転する少なくとも２つの回転体
それぞれに取り付けられた糸送りブレード、または、螺
旋溝を有するトラバースカムに摺動可能に設けられた、
糸条を把持するトラバースガイドであることが好まし
い。

【０００７】また、上記目的を達成するための本発明
は、糸道を規制する部材を有し、かつ、その部材の少な
くとも一部が炭素硬質皮膜で形成されている糸条の綾振
り装置を特徴とするものである。

【０００８】そして、これら糸条の綾振り装置におい
て、炭素硬質皮膜としては、例えば「ニューセラミック
ス」（１９９１）No.９、ｐ４９に記載されているダイ
ヤモンド膜が好ましい。このダイヤモンド膜は、表面性
状を適正に制御することで非常に優れた耐摩耗性、離型
性、耐食性を有する皮膜である。

【０００９】また、「表面化学」第１２巻第４号（１９
９１）Ｐ２２７に記載のダイヤモンド・ライク・カーボ
ン（ＤＬＣ、炭素軽質膜、アモルファス・カーボン［ａ
−Ｃ］、ハイドロジェネレーテェッド・カーボン［ａ−
Ｃ：Ｈ］、またはイオンアクティベーション・カーボン
［ｉ−Ｃ］とも称される。）の膜も好ましい。このＤＬ
Ｃは、ｓｐ３結合を比較的多く含んでいる非晶質炭素
で、多くは水素を含んでいることが多い皮膜であり、こ
の皮膜も、優れた耐摩耗性、離型性、耐食性を有する表
面皮膜である。さらに、この皮膜は、摩擦係数が約０．
１と非常に低い点で優れており、本発明の炭素硬質皮膜
としてより好ましい。

【００１０】そして、この炭素硬質皮膜の硬度は、耐摩
耗性、耐久性の観点から、ビッカース硬度で１５００Ｈ
ｖ以上であることが好ましく、さらには２５００Ｈｖ以
上であることが好ましい。また、皮膜の厚さは、安定的
に膜を形成し、クラックや膜の剥離を抑制するために
は、０．１〜１０μｍが好ましく、０．５〜５μｍがよ
り好ましい。

【００１１】糸条に綾振り運動を付与する部材や糸道を
規制する部材の表面に、炭素硬質皮膜を形成する手段と
しては、スパッタリング法イオンビーム法イオンプレーティング法プラズマ物理蒸着法（Ｐ−ＣＶＤ）ＥＣＲ（Electron Cyclotron Resonance）法などが挙げられ、どの手段を用いてもよい。

【００１２】また、前記部材と炭素硬質皮膜とをより強
固に密着させるためには、クロム（Ｃｒ）、チタン（Ｔ
ｉ）、ニッケル合金を主体とする皮膜と、その皮膜の上
にシリコンまたはゲルマニュウムを主体する皮膜とから
なる中間層を介在させることが好ましい。

【００１３】一方、糸条に綾振り運動を付与する部材や
糸道を規制する部材としては、炭素硬質皮膜の形成のし
やすさの観点から、高硬度材料である超硬材やクロムモ
リブデン鋼（ＳＣＭ）、ダイス鋼（ＳＫＤ），高速度工
具鋼（ＳＫＨ），炭素工具鋼（ＳＫ）等の鋼材等が適し
ているが、その他の鋼材を用いても炭素硬質皮膜の形成
が可能である。また、セラミックス材、樹脂または陶器
などを用いても、その表面に上記のような中間層を設け
ることで炭素硬質皮膜の形成が可能である。さらに、硬
度アップのため、母材表面に硬質Ｃｒメッキを施した面
にも形成可能である。

【００１４】そして、上記目的を達成するための本発明
は、上記のいずれかの糸条の綾振り装置と、糸条を巻き
取るボビンホルダと、ボビンホルダに巻き取られた糸条
パッケージに接圧するタッチロールとを有している糸条
の巻取装置も好ましく、この巻取装置を用いる糸条パッ
ケージの製造方法も好ましい。

【００１５】

【発明の実施の形態】図１は本発明の糸条の巻取装置を
例示したものであり、機台２３に、トラバース装置６０
と、回転駆動手段に接続されたボビンホルダー２５とを
備えている。そして、そのボビンホルダー２５は、ボビ
ン２７と、その外周に形成された糸層２６よりなる糸条
パッケージを把持している。また、トラバース装置６０
は、タッチローラ２４を回転自在に備えており、そのタ
ッチローラ２４は、糸層２６の外周面と接触している。

【００１６】トラバース装置６０は、図２に示すよう
に、ケーシング１５に複数のトラバースユニット５０と
駆動モータ１６とを備えている。そして、駆動モータ１
６のモータ軸１７が、回転伝達手段を介して各トラバー
スユニット５０の歯車１１につながっている。例えば、
図２では、モータ軸１７が歯車２０に固定されたプーリ
１８に接続され、その歯車２０と歯車１１が噛合される
ことにより、モータ軸１７は歯車１１につながってい
る。

【００１７】トラバースユニット５０は、図３および図
３のＸ−Ｘ矢視図である図４に示すように、ハウジング
４に、トラバース機構１００、２００および３００を並
列に備えている。また、ハウジング４に固定された軸１
２および１４、それら軸のそれぞれに回転自在に接続さ
れた歯車１１および１３も備えている。

【００１８】各トラバース機構は、図３のトラバース機
構１００において例示しているように、外軸１０３の一
方の端部にブレード１０１が、他方の端部に歯車１０７
が固定された部品（回転部品１０９）と、内軸１０４の
一方の端部にブレード１０２が、他方の端部に歯車１０
８が固着された部品（回転部品１１０）とを備えてい
る。そして、回転部品１０９は、ベアリング１０５を介
して、ハウジング４に設置され、さらに回転部品１１０
は、ベアリング１０６を介して、回転部品１０９に設置
されている。この構成は、トラバース機構２００および
３００についても同様である。

【００１９】この様なトラバースユニット５０におい
て、トラバース機構１００，２００および３００のそれ
ぞれの歯車１０７、歯車２０７、および歯車３０７は一
連に噛合されており、また、歯車１０８、歯車２０８、
および歯車３０８も一連に噛合されている。さらに、図
４に示す様に、歯車１０８が歯車１３に噛合され、そし
て、歯車１３および歯車３０７が歯車１１に噛合されて
いる。

【００２０】また、図３のＺ−Ｚ矢視図である図５に示
すように、トラバースユニット５０には、並列に配置さ
れたトラバース機構１００、２００、および３００の各
ブレードと、前記トラバース機構を配列した方向と平行
に、糸道規制ガイド３とが配置されている。そして、糸
条に綾振り運動を付与する部材である、前記ブレードま
たは糸道規制ガイド３の少なくとも１方の部材の少なく
とも一部には、炭素硬質皮膜が形成されている。

【００２１】この様な装置を用いることにより、図２に
おいて、駆動モータ１６の回転が、モータ軸１７を介し
て歯車１１に伝達される。そして、図４において、歯車
１１の回転が、歯車１３を介して歯車１０８に、また、
歯車３０７にも伝達される。さらに、図３において、そ
の歯車１０８と歯車３０７に伝達された回転は、歯車１
０８から、歯車２０８、そして歯車３０８の順に伝達さ
れ、また、歯車３０７から、歯車２０７、そして歯車１
０７の順に伝達される。これら回転の伝達により、各ト
ラバース機構の歯車は同期して回転し、さらに、外軸ま
たは内軸を介して各歯車と一体化されている各ブレード
も同期して回転する。そして、図５に示すブレード１０
１、２０２および３０１は時計回りに、ブレード１０
２、２０１および３０２は反時計回りに回転することと
なる。したがって、糸条Ｙは、糸道規制ガイド３上を滑
りながら、ブレード３０２、３０１、２０２、１０１、
１０２、２０１、３０２・・・・・によって、この順に
連続的に受け渡される。これを繰り返すことで糸条Ｙは
左右へと綾振られることとなる。

【００２２】この様に綾振られた糸条Ｙは、図１に示す
糸条の巻取装置において、回転するボビンホルダーに把
持されたボビン２７上に、所定の面圧でタッチローラ２
４に圧接されながら、糸層２６を形成し、糸条パッケー
ジとして巻き取られる。

【００２３】本発明の糸条の綾振り装置は、上述した羽
根トラバース方式のもののほか、レシプロカムトラバー
ス方式のものにおいても同様に適応可能である。図６に
レシプロカムトラバース装置の一例を示す。ハウジング
５０１にベアリング５０２を介して回転自在に設置され
たトラバースカム５０３が設置されており、一方の端で
回転駆動手段に回転伝達可能に接続されている。また、
トラバースカム５０３はその外周面に螺旋溝５０４が設
けられており、その螺旋溝５０４にトラバースガイド５
０５が摺動可能に設置されている。そして、トラバース
ガイド５０５が、トラバースカム５０３の回転方向への
移動することを規制するための規制板５０６がハウジン
グ５０１に設けられている。さらに、トラバースガイド
５０５の糸条Ｙと接する少なくとも一部に炭素硬質皮膜
が形成されている。

【００２４】この様な装置を用いて、回転駆動手段によ
りトラバースカム５０３が回転し、その回転により、螺
旋溝５０４に摺動可能に設置されたトラバースガイド５
０５が往復運動し、糸条Ｙを綾振ることとなる。

【００２５】

【実施例】図３〜５に示す３機種の羽根トラバース装置
を図１に示す糸条の巻取装置に取付け、３０デニール、
２４フィラメントのポリエチレンテレフタレート（ＰＥ
Ｔ）糸条の巻取試験を巻取速度６５００ｍ／分で実施
し、糸落ち発生率毛羽発生状態を測定した。

【００２６】羽根トラバース装置は、糸送りブレードの
みにダイヤモンド・ライク・カーボン（ＤＬＣ）をコー
ティングしたもの、糸道規制ガイドのみにＤＬＣをコー
ティングしたもの、糸送りブレードおよび糸道規制ガイ
ド両方にＤＬＣをコーティングしたものの３種類であっ
た。

【００２７】また、糸送りブレードおよび糸道規制ガイ
ドの部材は、３機種に共通して、アルミナ系のセラミッ
クス上に、Ｔｉとゲルマニウムの２層中間層が形成され
ているのものを用いた。そして、ＤＬＣ皮膜は、膜厚約
１μｍ、膜硬度３０００Ｈｖであったその結果を表１に
示す。

【００２８】

【比較例】糸送りブレードおよび糸道規制ガイドとし
て、何もコーティングしていないアルミナ系のセラミッ
クスのみの部材を用いる以外は、実施例１〜３と同様
に、巻取試験を行った。結果は実施例と共に表１に示
す。

【００２９】

【表１】

【００３０】

【発明の効果】上述したように本発明の糸条の綾振り装
置によれば、糸条に綾振り運動を付与する部材の少なく
とも一部に炭素硬質皮膜を形成すること、または、糸道
を規制する部材の少なくとも一部に炭素硬質皮膜を形成
することにより、前記部材と糸条との摩擦が低減され、
かつ前記部材の離型性が向上することよって油剤付着量
が低減されるため、毛羽の発生および糸落ち現象を抑制
することができる。さらに、以上の効果により、良好な
糸条パッケージを生産することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施態様を示す糸条の巻取装置の概
略斜視図である。

【図２】本発明の一実施態様を示す糸条のトラバース装
置の概略図である。

【図３】本発明の一実施態様を示すトラバースユニット
の概略正面図である。

【図４】図３のトラバースユニットのＸ−Ｘ矢視図であ
る。

【図５】図３のトラバースユニットのＺ−Ｚ矢視図であ
る。

【図６】本発明の一実施態様を示すレシプロカムトラバ
ース装置の概略図である。

【符号の説明】

３糸道規制ガイド４ハウジング１１歯車１２軸１３歯車１４軸１５ケーシング１６駆動モータ１７モータ軸１８プーリ２０歯車２３機台２４タッチローラ２５ボビンホルダー２６糸層２７ボビン５０トラバースユニット６０トラバース装置１００第１トラバース機構１０１ブレード１０２ブレード１０３外軸１０４内軸１０５ベアリング１０６ベアリング１０７歯車１０８歯車１０９回転部品１１０回転部品２００第２トラバース機構２０１ブレード２０２ブレード２０７歯車２０８歯車３００第３トラバース機構３０１ブレード３０２ブレード３０７歯車３０８歯車５０１ハウジング５０２ベアリング５０３トラバースカム５０４トラバースガイド５０５規制板Ｙ糸条

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】糸条に綾振り運動を付与する部材を有し、
かつ、その部材の少なくとも一部が炭素硬質皮膜で形成
されていることを特徴とする糸条の綾振り装置。
【請求項２】糸条に綾振り運動を付与する部材が、互い
に反対方向に回転する少なくとも２つの回転体それぞれ
に取り付けられた糸送りブレード、または、螺旋溝を有
するトラバースカムに摺動可能に設けられた、糸条を把
持するトラバースガイドである、請求項１に記載の糸条
の綾振り装置。
【請求項３】糸道を規制する部材を有し、かつ、その部
材の少なくとも一部が炭素硬質皮膜で形成されているこ
とを特徴とする糸条の綾振り装置。
【請求項４】炭素硬質皮膜が、ダイヤモンド、または、
ダイヤモンド・ライク・カーボン（ＤＬＣ）の膜であ
る、請求項１〜３のいずれかに記載の糸条の綾振り装
置。
【請求項５】炭素硬質皮膜のビッカース硬度が１５００
Ｈｖ以上である、請求項１〜４記載の糸条の綾振り装
置。
【請求項６】炭素硬質皮膜の膜厚が０．１〜１０μｍの
範囲にある、請求項１〜５に記載の糸条の綾振り装置。
【請求項７】請求項１〜６のいずれかに記載の糸条の綾
振り装置と、糸条を巻き取るボビンホルダと、ボビンホ
ルダに巻き取られた糸条パッケージに接圧するタッチロ
ールとを有している糸条の巻取装置。
【請求項８】請求項７に記載の糸条の巻取装置を用いる
糸条パッケージの製造方法。