JP2000205438A - ソレノイドバルブの駆動方法 - Google Patents

ソレノイドバルブの駆動方法

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JP2000205438A
JP2000205438A JP11011937A JP1193799A JP2000205438A JP 2000205438 A JP2000205438 A JP 2000205438A JP 11011937 A JP11011937 A JP 11011937A JP 1193799 A JP1193799 A JP 1193799A JP 2000205438 A JP2000205438 A JP 2000205438A
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modulation signal
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温のため弁が高周波パルスに応動可能であ
るにもかかわらず低周波パルスが弁に供給されて制御性
能が十分に発揮されない不合理を回避する。 【解決手段】 21は、弁5〜8の駆動を行うPWM 信号が
追従周波数域にあるか、不安定周波数域にあるかを判定
し、追従周波数域ならPWM 信号を常温時の動特性ωに対
応したモデル25に入力して弁の動作を推定する。30は、
弁の動作を推定動作にするパルス幅補正量を求め、41〜
48はPWM 信号を当該補正量だけ補正して弁の駆動に供す
る。動作不安定周波数域の時PWM 信号を22に入力し、22
は、ABS フラグまたはVDC フラグの存否によりPWM 信号
が制御のためのものか、ノイズによるものかを判定し、
制御のためなら23へPWM 信号を入力する。23は、車輪速
Wと目標車輪速VW0との偏差から弁がPWM 信号に追従
している高温と判定する時、PWM 信号を24を経由して高
温時の動特性hiωに対応したモデル26に入力して弁
の動作を推定し、PWM 信号の上記と同様な補正に用い
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パルス幅変調信号
によりソレノイドバルブを駆動する時のロバスト性能
(パラメータ変化やノイズに対しても制御系が乱れない
性能)およびノミナル性能(制御入力に対応した制御出
力が得られる性能)を向上させ得るソレノイドバルブの
駆動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ソレノイドバルブは、例えば車両の液圧
ブレーキシステムに用いられ、各車輪のブレーキ液圧を
個々に制御して、車輪の制動ロックを防止するアンチス
キッド制御を行ったり、車両の左右輪制動力差制御によ
り車両の挙動制御を行うことができる。この際ソレノイ
ドバルブは通常、目標液圧値に対応するパルス幅変調信
号により駆動するが、当該パルス幅変調信号によるソレ
ノイドバルブの過渡的な動作状態を推定して個々のブレ
ーキ液圧制御に資するのが有用である。
【0003】かようにソレノイドバルブの動作状態を推
定する方法としては、例えば特開平8−175356号
公報に記載されているように、車両の液圧ブレーキシス
テムにおけるソレノイドバルブの開閉状態(ブレーキ液
圧)を推定するに際し、パルス幅変調信号からソレノイ
ドバルブの弁体に関する位相遅れやブレーキシステムの
動作特性を基に、駆動パルスのON,OFFに応じた増
圧量の推定とその後の減圧量の推定とを行うことにより
ソレノイドバルブの開閉状態(ブレーキ液圧)を推定す
るものが知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで従来は、ソレ
ノイドバルブが完全に追従し得る駆動パルス周波数域で
ソレノイドバルブを駆動していたため、ソレノイドバル
ブの駆動パルス周波数に対するゲインが図7にαにより
示すように、全周波数域に亘って「1」のような一定値
であるとの仮定のもとに、上記ソレノイドバルブの開閉
状態(ブレーキ液圧)を推定しても差し支えなかった
が、同じブレーキ液圧を制御するにも、今日のようにそ
の制御精度を高くする要求が生じてくると、ソレノイド
バルブを短い時間でも動作させる必要があってソレノイ
ドバルブの駆動パルス周波数も高くなり、以下に説明す
るような問題が発生することを確かめた。
【0005】つまり、駆動パルス周波数が例えば同図に
示すCONS1未満の低周波数帯域(追従周波数帯域)
ではソレノイドバルブが駆動パルスに完全に追従し得る
ものの、駆動パルス周波数が例えばCONS1以上、C
ONS2未満の中周波数帯域(動作不安定周波数帯域)
ではソレノイドバルブが駆動パルスに追従したり追従し
なかったりする動作不安定状態となり、また駆動パルス
周波数が例えばCONS2以上の高周波数帯域(非追従
周波数帯域)ではソレノイドバルブが駆動パルスに全く
追従し得ない動作不能状態となり、ソレノイドバルブの
駆動パルス周波数に対するゲインは、図8にωで示すよ
うに高周波数域になるほど大きく低下する。
【0006】そして、ソレノイドバルブの駆動パルス周
波数に対するゲインは作動液温度などのパラメータに応
じても種々に変化し、常温時のゲイン特性が図8にωで
示すごときものであっても、作動液温度が上昇して高温
域に入るとゲイン特性が同図にhiωにより示すように
上昇変化し、特に上記の動作不安定周波数帯域や非追従
周波数帯域においてはゲイン変化が問題となるような制
御精度の低下をもたらす程に大きなものとなる。この場
合、ゲイン特性がhiωのように上昇変化し、高周波の
パルス幅変調信号に十分応動し得るにもかかわらず低周
波のパルス幅変調信号をソレノイドバルブに供給した
り、逆にゲイン特性がωのように低下し、高周波のパル
ス幅変調信号に応動し得ないにもかかわらず高周波のパ
ルス幅変調信号をソレノイドバルブに供給して、制御上
の不都合を生じたり制御能力を十分に発揮させ得なかっ
たりする不都合を生ずる。従来においては、中周波数帯
域でのゲイン低下を考慮に入れて制御を行うようにした
としても、当該パラメータ変化を考慮した推定を行うも
のでないため、この点において前記の推定が不正確にな
ってこれを基に行う制御が狙い通りのものにならない虞
があった。
【0007】請求項1に記載の第1発明は、ソレノイド
バルブが不安定でも駆動パルスに追従する周波数帯域で
ある限り、当該駆動パルスに応じたソレノイドバルブの
動作を正確に推定し得るようにして、当該推定結果に応
じソレノイドバルブを駆動することにより上述の問題を
解消することを目的とする。
【0008】請求項2に記載の第2発明は、ソレノイド
バルブの動作が不安定になる周波数帯域において駆動パ
ルスがノイズに基づくものである時の好適なソレノイド
バルブの駆動方法を提案することを目的とする。
【0009】請求項3に記載の第3発明は、第2発明に
おいて駆動パルスがノイズに基づくものでないと判定し
ても、ソレノイドバルブが駆動パルスに追従していない
時の好適なソレノイドバルブの駆動方法を提案すること
を目的とする。
【0010】請求項4に記載の第4発明は、ソレノイド
バルブの動特性に影響を及ぼすパラメータの変化時も、
ソレノイドバルブの動作を正確に推定して、パラメータ
変化に対応した好適なソレノイドバルブの駆動方法を提
案することを目的とするものである。
【0011】請求項5に記載の第5発明は、上記のパラ
メータとして、ソレノイドバルブの動特性に最も大きな
影響を及ぼすパラメータを選択し、パラメータ変化によ
る影響を最大限に排除す得るソレノイドバルブの駆動方
法を提案することを目的とする。
【0012】請求項6に記載の第6発明は、ソレノイド
バルブの動特性に最も大きな影響を及ぼすパラメータの
大きさを、パラメータ自身の計測に頼ることなく簡単に
判定し得るソレノイドバルブの駆動方法を提案すること
を目的とする。
【0013】請求項7に記載の第7発明は、駆動パルス
を補正するための制御器として好適な制御器を用いたソ
レノイドバルブの駆動方法を提案することを目的とす
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】これらの目的のため、先
ず第1発明によるソレノイドバルブの駆動方法は、パル
ス幅変調信号によりソレノイドバルブを駆動するに際
し、前記パルス幅変調信号が、複数個に分割した周波数
帯域のうち何れの周波数帯域に属しているのかを判定
し、該属している周波数帯域での前記ソレノイドバルブ
の動特性を表したモデルを選択し、該選択したモデルか
ら前記パルス幅変調信号の基でのソレノイドバルブの動
作状態を推定し、前記ソレノイドバルブが該推定した動
作状態となるよう前記パルス幅変調信号を補正してソレ
ノイドバルブに供給することを特徴とするものである。
【0015】第2発明によるソレノイドバルブの駆動方
法は、第1発明において、前記複数個の周波数帯域とし
て少なくとも、ソレノイドバルブがパルス幅変調信号に
完全に追従可能な低周波数の追従周波数帯域と、ソレノ
イドバルブがパルス幅変調信号に対して動作不安定にな
る高周波数の動作不安定周波数帯域とを設定し、前記属
している周波数帯域が動作不安定周波数帯域であると判
定する場合、前記ソレノイドバルブの駆動が狙いとする
制御の実行中を示す信号の有無により前記パルス幅変調
信号が該制御のためのものであるのか、ノイズによるも
のであるのかをチェックし、ノイズによるものであると
の判定時は、前記動作不安定周波数帯域に対応した前記
モデルへの前記パルス幅変調信号の入力を0としてソレ
ノイドバルブの動作状態の推定を中断することを特徴と
するものである。
【0016】第3発明によるソレノイドバルブの駆動方
法は、第2発明において、前記属している周波数帯域が
動作不安定周波数帯域であると判定し、且つ、前記パル
ス幅変調信号がノイズによるものでないとの判定時は、
前記ソレノイドバルブが該パルス幅変調信号に追従して
いるか否かを判定し、追従していないとの判定時は、前
記動作不安定周波数帯域に対応した前記モデルへの前記
パルス幅変調信号の入力を0としてソレノイドバルブの
動作状態の推定を中断することを特徴とするものであ
る。
【0017】第4発明によるソレノイドバルブの駆動方
法は、第1発明乃至第3発明のいずれかにおいて、前記
動作不安定周波数帯域のモデルとして、前記ソレノイド
バルブの動特性に影響を及ぼすパラメータの変化に対応
した複数のモデルを設定し、該パラメータの変化に応じ
前記複数のモデルを選択して前記ソレノイドバルブの動
作状態の推定を行うことを特徴とするものである。
【0018】第5発明によるソレノイドバルブの駆動方
法は、第4発明において、前記パラメータをソレノイド
バルブに向かう作動液温としたことを特徴とするもので
ある。
【0019】第6発明によるソレノイドバルブの駆動方
法は、第5発明において、前記ソレノイドバルブの駆動
が狙いとする制御の制御量が目標値に対し追従している
程度により前記作動液温を判定して前記モデルの選択に
資することを特徴とするものである。
【0020】第7発明によるソレノイドバルブの駆動方
法は、第1発明乃至第6発明のいずれかにおいて、前記
ソレノイドバルブを前記推定した動作状態にするための
パルス幅変調信号の補正量をH∞制御器により求めるこ
とを特徴とするものである。
【0021】
【発明の効果】第1発明においては、ソレノイドバルブ
を駆動するよう出力されたパルス幅変調信号が、複数個
に分割した周波数帯域のうち何れの周波数帯域に属して
いるのかを判定する。そして、当該属している周波数帯
域でのソレノイドバルブの動特性を表したモデルを選択
し、この選択したモデルから上記パルス幅変調信号の基
でのソレノイドバルブの動作状態を推定する。その後、
ソレノイドバルブが当該推定した動作状態となるよう上
記パルス幅変調信号を補正してソレノイドバルブに供給
し、これによりソレノイドバルブの駆動を行わせる。
【0022】これがため第1発明においては、パルス幅
変調信号の周波数帯域ごとにソレノイドバルブの動作状
態を正確に推定することができ、これに基づくパルス幅
変調信号の上記補正がソレノイドバルブを常時、パルス
幅変調信号の周波数帯域ごとに可能な限界の動特性で駆
動させることとなる。従って、高周波のパルス幅変調信
号に応動し得るにもかかわらず低周波のパルス幅変調信
号をソレノイドバルブに供給したり、逆に高周波のパル
ス幅変調信号に応動し得ないにもかかわらず高周波のパ
ルス幅変調信号をソレノイドバルブに供給して、制御上
の不都合を生じたり制御能力を十分に発揮させ得なかっ
たりする不合理を回避することができる。
【0023】第2発明においては、上記複数個の周波数
帯域として少なくとも、ソレノイドバルブがパルス幅変
調信号に完全に追従可能な低周波数の追従周波数帯域
と、ソレノイドバルブがパルス幅変調信号に対して動作
不安定になる高周波数の動作不安定周波数帯域とを設定
し、前記属している周波数帯域が動作不安定周波数帯域
である時は、ソレノイドバルブの駆動が狙いとする制御
の実行中を示す信号の有無によりパルス幅変調信号が該
制御のためのものであるのか、ノイズによるものである
のかをチェックして、ノイズによるものである時は、前
記動作不安定周波数帯域に対応した前記モデルへの前記
パルス幅変調信号の入力を0としてソレノイドバルブの
動作状態の推定を中断することから、パルス信号がノイ
ズによるものであるにもかかわらずこれによるソレノイ
ドバルブの動作状態の推定がなされて、これに基づくソ
レノイドバルブの駆動が実態にマッチせずに弊害となる
のを防止することができる。
【0024】第3発明においては、前記属している周波
数帯域が動作不安定周波数帯域であると判定し、且つ、
パルス幅変調信号がノイズによるものでないとの判定時
は、ソレノイドバルブが該パルス幅変調信号に追従して
いるか否かを判定し、追従していないとの判定であれ
ば、動作不安定周波数帯域に対応したモデルへの前記パ
ルス幅変調信号の入力を0としてソレノイドバルブの動
作状態の推定を中断するから、当該追従不能な状態にお
いてソレノイドバルブの動作状態の推定がなされて、こ
れに基づくソレノイドバルブの駆動が制御上の弊害を生
ずるのを防止することができる。例えばソレノイドバル
ブが追従不能な状態であるにもかからわずパルス幅変調
信号を、ソレノイドバルブが追従し得るようなものとな
るよう補正したために、ソレノイドバルブの駆動により
狙った制御が悪い結果をもたらすようなものになるとい
った弊害を回避することができる。
【0025】第4発明においては、前記動作不安定周波
数帯域のモデルとして、ソレノイドバルブの動特性に影
響を及ぼすパラメータの変化に対応した複数のモデルを
設定し、該パラメータの変化に応じ前記複数のモデルを
選択して前記ソレノイドバルブの動作状態の推定を行う
ことから、上記パラメータの変化時もソレノイドバルブ
の動作状態の推定を正確に行うことができ、ソレノイド
バルブの駆動を常時制御の狙い通りに行わせることがで
きる。
【0026】第5発明においては、第4発明におけるパ
ラメータをソレノイドバルブに向かう作動液温としたた
め、この作動液温がソレノイドバルブの動特性に最も大
きな影響を及ぼすパラメータであることから、パラメー
タ変化による影響を最大限に排除しつつソレノイドバル
ブの駆動を常時制御の狙い通りに行わせるという第4発
明の作用効果を更に顕著なものにすることができる
【0027】第6発明においては、第5発明における作
動液温の判定に際し、ソレノイドバルブの駆動が狙いと
する制御の制御量が目標値に対し追従している程度によ
り当該判定を行うことから、この判定を、作動液温の直
接的な計測に頼ることなく簡単に行うことができる。
【0028】第7発明においては、ソレノイドバルブを
前記推定した動作状態にするためのパルス幅変調信号の
補正量をH∞制御器により求めることから、以下の作用
効果を達成することができる。つまりH∞制御器は、入
力信号であるパルス幅変調信号の周波数ごとにゲインの
重み付けを決定することでき、例えば低周波域では最大
の制御効果を狙って制御器のゲインを高く決定する反
面、高周波域では耐ノイズ性を考慮して制御器のゲイン
を低く決定するようなことも可能であり、トレードオフ
の関係にあるロバスト性能とノミナル性能とを両立させ
ることができる。因みにPID制御などを行う極く一般
的な制御器では、最大の制御効果を狙って決定した制御
器のゲインを全周波数域において用いるのが普通である
ことから、高周波ノイズが入力された時これにも同じゲ
インが適用されて不用意なパルス幅変調信号の補正でロ
バスト性の低下を否めない。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づき詳細に説明する。図1は、車両の液圧ブレーキ
システムにおいて、車輪の制動ロックを防止するアンチ
スキッド制御や、左右輪制動力差制御による車両の水平
面挙動制御(VDC)に際し、各車輪のブレーキ液圧を
個々に制御するために設けられたソレノイドバルブに対
し本発明の駆動方法を適用した一実施の形態である。こ
の図1において、1L,1Rはそれぞれ左右前輪、2
L,2Rはそれぞれ左右後輪を示し、3L,3Rはそれ
ぞれ左右前輪のホイールシリンダを含むブレーキユニッ
ト、4L,4Rはそれぞれ左右後輪のホイールシリンダ
を含むブレーキユニットである。
【0030】各ブレーキユニット3L,3Rおよび4
L,4Rの液圧回路にはソレノイドバルブ型式の増圧弁
5L,5Rおよび6L,6Rと、同じくソレノイドバル
ブ型式の減圧弁7L,7Rおよび8L,8Rとを接続し
て設け、これら増圧弁および減圧弁は、暖機後の常温時
において図8にωで示すゲイン特性を呈し、これより高
温時において同図にhiωで示すゲイン特性を呈するも
のとする。増圧弁5L,5Rおよび6L,6Rはそれぞ
れ、ソレノイドバルブ駆動信号発生部10からのパルス
幅変調(PWM)信号に応動し、図示せざるブレーキマ
スターシリンダを含む液圧源からの液圧を対応するブレ
ーキユニット3L,3Rおよび4L,4Rに供給して個
々のブレーキ液圧をパルス幅変調(PWM)信号に応じ
た割合で上昇させ、減圧弁7L,7Rおよび8L,8R
はそれぞれ、同じくソレノイドバルブ駆動信号発生部1
0からのパルス幅変調(PWM)信号に応動して対応す
るブレーキユニット3L,3Rおよび4L,4Rの液圧
をパルス幅変調(PWM)信号に応じた割合で排除して
低下させるものとする。
【0031】但し本実施の形態においては、ソレノイド
バルブ駆動信号発生部10からのパルス幅変調信号をそ
のまま増圧弁5L,5Rおよび6L,6Rや、減圧弁7
L,7Rおよび8L,8Rに供給せず、以下に説明する
ごとくに補正してこれら弁の駆動に資することとする。
これがため、ソレノイドバルブ動作推定部20と、H∞
制御器30と、加算器41〜48とを設ける。
【0032】ソレノイドバルブ動作推定部20はパルス
幅変調(PWM)信号の他に、車輪速センサ51で検出
した個々の車輪速(便宜上1つの符号VW により示す)
と、これら車輪速を微分器52に通して求めた車輪加速
度(d/dt)VW と、アンチスキッド制御装置53からの
アンチスキッド制御中であることを示すABSフラグ
と、左右輪制動力差制御によって車両の水平面挙動制御
を行う挙動制御装置54からVDCフラグと、これら制
御装置が目標車輪速演算部55で求めた目標車輪速VW0
とを入力され、これら入力情報をもとに詳しくは後述す
るが、パルス幅変調信号のもとで増圧弁5L,5Rおよ
び6L,6Rや、減圧弁7L,7Rおよび8L,8Rの
動作状態を推定するものとする。
【0033】H∞制御器30は、例えば朝倉書店発行、
細江繁幸・荒木光彦共著、「制御系設計〔H∞制御とそ
の応用〕」において周知の制御理論に基づくロバスト制
御器で、前記増減圧弁の動作が上記のように推定した動
作状態になるようにするためのパルス幅補正量を求める
ものとし、また加算器41〜48はパルス幅変調信号を
パルス幅補正量だけ補正して、対応する増圧弁5L,5
Rおよび6L,6Rや、減圧弁7L,7Rおよび8L,
8Rの駆動パルスにするものとする。
【0034】図1におけるソレノイドバルブ動作推定部
20を詳しくは図2に示すごとくに構成し、PWM信号
周波数判定部21と、PWM信号正否判定部22と、車
輪速追従判定部23と、車輪速判定部24と、図8にω
で示す常温時のソレノイドバルブの動特性を表したノミ
ナルモデル25と、同図にhiωで示す高温時のソレノ
イドバルブの動特性を表したノミナルモデル26とを設
ける。PWM信号周波数判定部21は、パルス幅変調
(PWM)信号の周波数が図8のCONS1未満で、バ
ルブが制御信号に完全に追従し得る追従周波数帯域にあ
るのか、CONS1〜CONS2の範囲で、バルブが制
御信号に追従したり、しなかったりする動作不安定周波
数帯域にあるのかを判定する。ここで、パルス幅変調
(PWM)信号の周波数がCONS2以上である場合
は、バルブが制御信号に全く追従し得ない非追従周波数
帯域であって、パルス幅変調(PWM)信号を補正して
もしなくても制御結果に影響しないことから、周波数帯
域の判定対象外とする。
【0035】PWM信号周波数判定部21はパルス幅変
調(PWM)信号が追従周波数帯域であると判定する
時、このパルス幅変調(PWM)信号を、図8の動特性
ωに対応したノミナルモデル25に入力し、ここでソレ
ノイドバルブの動作を推定する。この推定に際しては、
ソレノイドバルブの弁体であるスプールの運動方程式が
入力PWM(t)に対する出力sol(t)の伝達関数
として、次式により表されることが知られていることか
ら、 M(d2 y/dt2 )+μ(dy/dt) =kS {PWM(t)−sol(t)}・・・(1) (但し、M,μ,kS は定数) これを、固有振動数(kS /M)1/2 =ωn とし、減衰
係数μ/{2(M/k S 1/2 }=ξと置換して次式に
書き換え、 (d2 y/dt2 )+2ξωn 2 (dy/dt)+ωn 2 sol(t) =ωn 2 {PWM(t)}・・・(2) 更にこの式を微分演算子sによりラプラス変換して求ま
るソレノイドバルブのゲインG(s)に関する以下の算
出式を用いる。 G(s)=sol(s)/PWM(s) =ωn 2 /{s2 +2ξωn s+ωn 2 }・・・(3) 上式において固有振動数ωn が、作動液温などのパラメ
ータにより変動して、ソレノイドバルブの動特性をパラ
メータ変動させることとなる。
【0036】H∞制御器30は、増減圧弁の動作が上記
のようにして推定した動作状態になるようにするための
パルス幅補正量を求め、加算器41〜48はパルス幅変
調(PWM)信号を当該パルス幅補正量だけ補正して、
対応する増圧弁5L,5Rおよび6L,6Rや、減圧弁
7L,7Rおよび8L,8Rの駆動パルスにする。これ
がため、当該追従周波数帯域において増減圧弁を実現可
能な最大限のゲインで動作させることができ、当該増減
圧弁の動作により狙うアンチスキッド制御や挙動制御を
一層効果的なものにすることができる。
【0037】PWM信号周波数判定部21はパルス幅変
調(PWM)信号が動作不安定周波数帯域であると判定
する時、このパルス幅変調(PWM)信号をノミナルモ
デル25に代えてPWM信号正否判定部22に入力す
る。PWM信号正否判定部22はパルス幅変調(PW
M)信号を入力される時、ABSフラグまたはVDCフ
ラグが存在するか否かを、つまりアンチスキッド制御ま
たは挙動制御の実行中か否かをチェックし、これら何れ
のフラグも存在しなければ、アンチスキッド制御も挙動
制御も実行されていないのにパルス幅変調(PWM)信
号が存在することから当該信号を、これら制御のための
ものではなくノイズによるものであるとして、PWM信
号正否判定部22から車輪速追従判定部23に一切の信
号を出力しないのはもとより、PWM信号正否判定部2
2から図8の動特性ωに対応したノミナルモデル25へ
0信号を入力して、ノミナルモデル25によるソレノイ
ドバルブの動作に関する前記推定を中断する。従って、
パルス幅変調(PWM)信号がノイズによるものである
にもかかわらずこれに基づく増減圧弁の動作状態の推定
がなされて、パルス幅変調(PWM)信号の補正が不正
になされる結果、増減圧弁の駆動が実態にマッチしなく
なる弊害を回避することができる。
【0038】PWM信号正否判定部22がパルス幅変調
(PWM)信号を入力される時、ABSフラグまたはV
DCフラグの存在を検知して、パルス幅変調(PWM)
信号がアンチスキッド制御または挙動制御のためのもの
であると判定した時、PWM信号正否判定部22はパル
ス幅変調(PWM)信号を車輪速追従判定部23に入力
する。車輪速追従判定部23は、目標車輪速VW0に対す
る車輪速VW の偏差ΔVW が所定の幅内に収まっている
か否かにより車輪速VW が目標車輪速VW0に追従してい
るか否かを、つまり増減圧弁がパルス幅変調信号に追従
しているか否かを判定し、低温故に追従していなければ
車輪速追従判定部23から車輪速判断部24に一切の信
号を出力しないのはもとより、車輪速追従判定部23か
ら図8の動特性ωに対応したノミナルモデル25へ0信
号を入力して、ノミナルモデル25によるソレノイドバ
ルブの動作に関する前記推定を中断する。従って、当該
追従不能な状態において増減圧弁の動作状態の推定がな
されて、これに基づくソレノイドバルブの駆動で制御上
の弊害が生ずるのを防止することができる。例えば増減
圧弁がパルス幅変調信号に追従不能な低温時であるにも
かからわずパルス幅変調信号を、ソレノイドバルブが追
従し得るようなものとなるよう補正したために、ソレノ
イドバルブの駆動により狙った制御が悪い結果をもたら
すようなものになるといった弊害を回避することができ
る。
【0039】車輪速追従判定部23は、車輪速VW が目
標車輪速VW0に追従していると判定する時、つまり増減
圧弁がパルス幅変調信号に追従している高温状態と判定
する時、車輪速追従判定部23からノミナルモデル25
への信号を無信号とし、車輪速判断部24にパルス幅変
調信号を入力する。車輪速判断部24は車輪速VW およ
び車輪加速度(d/dt)VW から増減圧弁の何れの弁が開
いているかを判定し、パルス幅変調信号を図8の高温時
用の動特性hiωに対応したノミナルモデル26に入力
し、ここでソレノイドバルブの動作を推定する。この推
定に際しては、前記(3)式における固有振動数ωn
高温時用の固有振動数hiωn に置換して求めた式 G(s)=sol(s)/PWM(s) =hiωn 2 /{s2 +2ξhiωn s+hiωn 2 }・・・(4) (但し、hiωn >ωn )を用いる。そしてH∞制御器
30は、加算器41〜48との共働により増減圧弁の動
作が当該推定した通りのものとなるようパルス幅変調信
号を補正する。
【0040】これがため、動作不安定周波数帯域にもか
かわらず増減圧弁がパルス幅変調信号に追従し得る高温
時は、当該高温時における動特性hiωで増減圧弁を動
作させることができ、従って、高周波のパルス幅変調信
号に応動し得るにもかかわらず低周波のパルス幅変調信
号をソレノイドバルブに供給し続ける不合理を回避する
ことができる。なお作動液温の判定に際し、増減圧弁の
駆動により狙ったアンチスキッド制御または挙動制御の
ための目標車輪速VW0に車輪速VW が追従している程度
により当該判定を行うことから、この判定を、作動液温
の直接的な計測に頼ることなく簡単に行うことができ
る。
【0041】また、増減圧弁を上記推定した動作状態に
するためのパルス幅変調信号の補正量をH∞制御器30
により求めることから、以下の作用効果を達成すること
ができる。つまりH∞制御器30は、入力信号であるパ
ルス幅変調信号の周波数ごとにゲインの重み付けを決定
することでき、例えば低周波域では最大の制御効果を狙
って制御器のゲインを高く決定する反面、高周波域では
耐ノイズ性を考慮して制御器のゲインを低く決定するよ
うなことも可能であり、トレードオフの関係にあるロバ
スト性能とノミナル性能とを両立させることができる。
因みにPID制御などを行う極く一般的な制御器では、
最大の制御効果を狙って決定した制御器のゲインを全周
波数域において用いるのが普通であることから、高周波
ノイズが入力された時これにも同じゲインが適用されて
不用意なパルス幅変調信号の補正でロバスト性の低下を
否めない。しかして制御器30は、H∞制御器に代表さ
れるロバスト制御器に限られるものでなく、動特性がパ
ラメータに応じて変化することを考慮しさえすれば、P
ID制御器やLQ制御器でもよいこと勿論である。
【0042】図1および図2を要約ブロック図により示
すと図3のごとくに表すことができ、図3におけるブレ
ーキ液圧サーボ60はアンチスキッド制御装置53、挙
動制御装置54、およびソレノイドバルブ駆動信号発生
部10を含み、プラント61は増圧弁5L,5Rおよび
6L,6Rや、減圧弁7L,7Rおよび8L,8Rを含
むブレーキ液圧系を包含し、ブレーキユニット群62は
左右前輪のホイールシリンダを含むブレーキユニット3
L,3R、および左右後輪のホイールシリンダを含むブ
レーキユニット4L,4Rを包含し、車輪群63は左右
前輪1L,1Rおよび左右後輪2L,2Rを包含する。
【0043】上記した実施の形態においては、ブレーキ
液圧サーボ60からのパルス幅変調(PWM)信号をそ
のままプラント61に入力せず、該プラント61の手前
に、加算器41〜48よりなる加算器群64を設けて、
これにPWM信号を入力する。加算器群64には更に、
H∞制御器30を可とする制御器65およびソレノイド
バルブ動作推定部66を順次接続して設け、ソレノイド
バルブ動作推定部66は同名の前記推定部20と同様に
して、PWM信号、車輪速VW 、目標車輪速VW0、AB
Sフラグ、およびVDCフラグを基にプラント61(増
圧弁5L,5Rおよび6L,6Rや、減圧弁7L,7R
および8L,8R)の動作を推定し、制御器65はプラ
ント61(増圧弁5L,5Rおよび6L,6Rや、減圧
弁7L,7Rおよび8L,8R)の動作が推定した通り
のものにするためのパルス幅補正量を加算器群64に入
力する。ここで加算器群64は、ブレーキ液圧サーボ6
0からのパルス幅変調(PWM)信号を当該パルス幅補
正量だけ補正してプラント61に入力する。
【0044】本実施の形態においては、パルス幅変調
(PWM)信号の周波数が図9(a)に示すように5H
zである場合と、図10(a)に示すように500Hz
である場合とについてシミュレーションを行った結果、
いずれの場合もプラント61(増圧弁5L,5Rおよび
6L,6Rや、減圧弁7L,7Rおよび8L,8R)の
動作を図9(b)および図10(b)に示すごとく、ソ
レノイドバルブ動作推定部66で推定した図9(c)お
よび図10(c)に示す推定動作に一致させることがで
きることを確かめた。
【0045】なお、図1および図2に示す実施の形態を
マイクロコンピュータで構成する場合、その制御プログ
ラムは図4に示すごときものとなる。先ずステップ80
1において、ソレノイドバルブ駆動信号であるパルス幅
変調(PWM)信号と、車輪速VW と、ABSフラグ
と、VDCフラグとを読み込む。次いでステップ80
2,803において、PWM信号の周波数が図8のCO
NS1未満で、追従周波数帯域にあるのか、PWM信号
の周波数が図8のCONS1〜CONS2の範囲で、動
作不安定周波数帯域にあるのか、PWM信号の周波数が
CONS2以上で、非追従周波数帯域にあるのかを判定
する。
【0046】追従周波数帯域にある場合、制御はステッ
プ812に進み、ここで増減圧弁の動作推定値をPWM
信号相当値とし、以後ステップ814において図8にω
で示す常温時のソレノイドバルブの動特性を表したノミ
ナルモデルにPWM信号を通し、つまり前記(3)式の
演算により増減圧弁の動作を推定する。この時ステップ
815においては、前記のH∞制御器などのロバスト制
御器により増減圧弁の動作を上記推定値にするためのパ
ルス幅補正量を求め、次いでステップ816において、
PWM信号を当該パルス幅補正量だけ補正して増減圧弁
に出力することにより、ステップ817においてブレー
キユニットのブレーキ液圧を制御する。
【0047】非追従周波数帯域にある場合、制御はステ
ップ811に進み、ここで増減圧弁の動作推定値を非動
作状態とし、ステップ814でのノミナルモデルωに基
づく増減圧弁の動作の推定を行わないこととする。この
時ステップ815においては、ロバスト制御器により求
めるパルス幅補正量が0になり、ステップ816におい
てPWM信号がそのまま増減圧弁に出力される。
【0048】動作不安定周波数帯域である場合、制御は
ステップ804に進み、ここでABSフラグまたはVD
Cフラグが存在しているか否かを、つまりアンチスキッ
ド制御または挙動制御の実行中か否かをチェックし、こ
れら何れのフラグも存在しなければ、アンチスキッド制
御も挙動制御も実行されていないのにPWM信号が存在
することから当該信号を、これら制御のためのものでは
なくノイズによるものであるとして制御をステップ81
0に進める。ステップ810においては増減圧弁の動作
推定値を非動作状態とし、ステップ814でのノミナル
モデルωに基づく増減圧弁の動作の推定を行わないこと
とする。この時ステップ815においては、ロバスト制
御器により求めるパルス幅補正量が0になり、ステップ
816においてPWM信号がそのまま増減圧弁に出力さ
れる。
【0049】ステップ804で、ABSフラグまたはV
DCフラグの存在の検知により、PWM信号がアンチス
キッド制御または挙動制御のためのものであると判定し
た時は制御をステップ805に進め、ここで目標車輪速
W0に対する車輪速VW の偏差が所定の幅CONS内に
収まっているか否かにより車輪速VW が目標車輪速V W0
に追従しているか否かを、つまり増減圧弁がPWM信号
に追従しているか否かを判定する。低温故に追従してい
なければステップ809において、増減圧弁の動作推定
値を非動作状態とし、ステップ814でのノミナルモデ
ルωに基づく増減圧弁の動作の推定を行わないこととす
る。この時ステップ815においては、ロバスト制御器
により求めるパルス幅補正量が0になり、ステップ81
6においてPWM信号がそのまま増減圧弁に出力され
る。
【0050】ステップ805において車輪速VW が目標
車輪速VW0に追従していると判定する時、つまり増減圧
弁がPWM信号に追従している高温状態と判定する時、
ステップ806において、車輪加速度(d/dt)VW の極
性から増減圧弁の何れの弁が開いているかを判定する。
車輪加速度(d/dt)VW の極性が負ならステップ807
において増圧弁開であると判断し、次のステップ813
で、そのためのPWM信号を、図8にhiωで示す高温
時のソレノイドバルブの動特性を表したノミナルモデル
に通し、つまり前記(4)式の演算により増圧弁の動作
を推定する。この時ステップ815においては、ロバス
ト制御器により増圧弁の動作を上記推定値にするための
パルス幅補正量を求め、次いでステップ816におい
て、PWM信号を当該パルス幅補正量だけ補正して増圧
弁に出力することにより、ステップ817においてブレ
ーキユニットのブレーキ液圧を制御する。
【0051】ステップ806において、車輪加速度(d/
dt)VW の極性が正と判定するとき、ステップ808に
おいて減圧弁開であると判断し、次のステップ813
で、そのためのPWM信号をノミナルモデルhiωに通
して、つまり前記(4)式の演算により減圧弁の動作を
推定する。この時ステップ815においては、ロバスト
制御器により減圧弁の動作を上記推定値にするためのパ
ルス幅補正量を求め、次いでステップ816において、
PWM信号を当該パルス幅補正量だけ補正して減圧弁に
出力することにより、ステップ817においてブレーキ
ユニットのブレーキ液圧を制御する。
【0052】ところで、前記(4)式により表されるノ
ミナルモデルhiωを上記では1種類のみとしたが、複
数のモデルを設定しても良く、多ければ多いほど増減圧
弁の動作の推定精度が向上する。また、増減圧弁の動特
性がパラメータ変動する周波数領域(動作不安定周波数
帯域)についてはこれを誤差モデルとしてモデル化する
のがよく、誤差モデルのデルタモデルを次式により示
す。 ΔG(s)=delωn 2 2 /{s2 +2ξdelωn s+delωn 2 } ・・・(5) (但し、delωn >hiωn ) しかして上式のデルタモデルは必ずしも同次数でモデル
化する必要はなく、高次の次数を用いることができ、高
次であればあるほどモデル化の精度が向上して好まし
い。
【0053】なお上記実施の形態においては、図8に示
すように増減圧弁の動特性が常温時にωで示すごときも
のとなり、高温時にhiωで示すごときものとなるよう
に、作動液温に応じて変化する場合でも十分これに対応
した増減圧弁の駆動を行い得るようにしたが、増減圧弁
の動特性がパラメータ変化にかかわらずωであると見做
して差し支えない場合にも本発明の着想を適用すること
ができることは言うまでもない。
【0054】この場合の制御プログラムの概略を図5
に、また詳細な制御プログラムを図6に示す。図5にお
いては、先ずステップ821でソレノイドバルブ駆動信
号であるパルス幅変調(PWM)信号を入力し、次いで
ステップ822において、図8にωで示すソレノイドバ
ルブの動特性を表したノミナルモデルにPWM信号を通
し、つまり前記(3)式の演算により増減圧弁の動作を
推定する。更にステップ823において、前記のH∞制
御器などの制御器により増減圧弁の動作を上記推定値に
するためのパルス幅補正量を求め、次いでステップ82
4において、PWM信号を当該パルス幅補正量だけ補正
して増減圧弁に出力することにより、ステップ825に
おいてブレーキユニットのブレーキ液圧を制御する。
【0055】図5を更に詳細に示すと、図6に示すよう
な制御プログラムであり、これは、図4のステップ81
3をステップ814に統合したものに相当し、それ以外
は図4と同様である。つまり、ステップ807において
増圧弁開であると判断した時は、ステップ814で、そ
のためのPWM信号を、図8にωで示す動特性を表した
ノミナルモデルに通して、前記(3)式の演算により増
圧弁の動作を推定する。またステップ808において減
圧弁開であると判断した時は、ステップ814で、その
ためのPWM信号を同じノミナルモデルωに通して、前
記(3)式の演算により減圧弁の動作を推定する。この
場合においても増減圧弁の動作の推定が、PWM信号の
周波数にかかわらず正確なものとなり、増減圧弁を当該
周波数に応じた動特性で動作させることができて、高周
波のPWM信号に応動し得るにもかかわらず低周波のP
WM信号を増減圧弁に供給したり、逆に高周波のPWM
信号に応動し得ないにもかかわらず高周波のPWM信号
を増減圧弁に供給して、制御上の不都合を生じたり制御
能力を十分に発揮させ得なかったりする不合理を回避す
ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明一実施の態様になるソレノイドバルブの
駆動方法を実施するためのブレーキ液圧制御系を示す概
略システム図である。
【図2】同実施の形態におけるソレノイドバルブ動作推
定部を特に詳細に示したブレーキ液圧制御系の概略シス
テム図である。
【図3】同実施の形態におけるブレーキ液圧制御系の概
略ブロック線図である。
【図4】同実施の形態をマイクロコンピュータで構成し
た場合の制御プログラムを示すフローチャートである。
【図5】本発明の他の実施の形態を示すブレーキ液圧制
御プログラムの概略を示すフローチャートである。
【図6】同ブレーキ液圧制御プログラムの更に詳細を示
すフローチャートである。
【図7】従来ソレノイドバルブの動作を推定するに際し
て想定していた動特性を示す線図である。
【図8】本発明においてソレノイドバルブの動作を推定
するに際し用いるソレノイドバルブの実際の動特性を示
す線図である。
【図9】パルス幅変調信号の周波数が5Hzである時の
バルブの実動作と推定動作とをシミュレーションにより
比較して示すもので、(a)は、パルス幅変調信号の波
形図、(b)は、バルブの実動作波形図、(c)は、バ
ルブの推定動作波形図である。
【図10】パルス幅変調信号の周波数が500Hzであ
る時のバルブの実動作と推定動作とをシミュレーション
により比較して示すもので、(a)は、パルス幅変調信
号の波形図、(b)は、バルブの実動作波形図、(c)
は、バルブの推定動作波形図である。
【符号の説明】
1L 左前輪 1R 右前輪 2L 左後輪 2R 右後輪 3L 左前輪ブレーキユニット 3R 右前輪ブレーキユニット 4L 左後輪ブレーキユニット 4R 右後輪ブレーキユニット 5L 左前輪増圧弁 5R 右前輪増圧弁 6L 左後輪増圧弁 6R 右後輪増圧弁 7L 左前輪減圧弁 7R 右前輪減圧弁 8L 左後輪減圧弁 8R 右後輪減圧弁 10 ソレノイドバルブ駆動信号発生部 20 ソレノイドバルブ動作推定部 21 PWM信号周波数判定部 22 PWM信号正否判定部 23 車輪速追従判定部 24 車輪速判断部 25 常温用ノミナルモデル 26 高温用ノミナルモデル 30 H∞制御器 51 車輪速センサ 52 微分器 53 アンチスキッド制御装置 54 挙動制御装置 55 目標車輪速演算部 60 ブレーキ液圧サーボ 61 プラント 62 ブレーキユニット群 63 車輪群 65 制御器 66 ソレノイドバルブ動作推定部

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パルス幅変調信号によりソレノイドバル
    ブを駆動するに際し、前記パルス幅変調信号が、複数個
    に分割した周波数帯域のうち何れの周波数帯域に属して
    いるのかを判定し、 該属している周波数帯域での前記ソレノイドバルブの動
    特性を表したモデルを選択し、 該選択したモデルから前記パルス幅変調信号の基でのソ
    レノイドバルブの動作状態を推定し、 前記ソレノイドバルブが該推定した動作状態となるよう
    前記パルス幅変調信号を補正してソレノイドバルブに供
    給することを特徴とするソレノイドバルブの駆動方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、前記複数個の周波数
    帯域として、ソレノイドバルブがパルス幅変調信号に完
    全に追従可能な低周波の追従周波数帯域と、ソレノイド
    バルブがパルス幅変調信号に対して動作不安定になる高
    周波の動作不安定周波数帯域とを設定し、 前記属している周波数帯域が動作不安定周波数帯域であ
    ると判定する場合、前記ソレノイドバルブの駆動が狙い
    とする制御の実行中を示す信号の有無により前記パルス
    幅変調信号が該制御のためのものであるのか、ノイズに
    よるものであるのかをチェックし、 ノイズによるものであるとの判定時は、前記動作不安定
    周波数帯域に対応した前記モデルへの前記パルス幅変調
    信号の入力を0としてソレノイドバルブの動作状態の推
    定を中断することを特徴とするソレノイドバルブの駆動
    方法。
  3. 【請求項3】 請求項2において、前記属している周波
    数帯域が動作不安定周波数帯域であると判定し、且つ、
    前記パルス幅変調信号がノイズによるものでないとの判
    定時は、前記ソレノイドバルブが該パルス幅変調信号に
    追従しているか否かを判定し、追従していないとの判定
    時は、前記動作不安定周波数帯域に対応した前記モデル
    への前記パルス幅変調信号の入力を0としてソレノイド
    バルブの動作状態の推定を中断することを特徴とするソ
    レノイドバルブの駆動方法。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1項におい
    て、前記動作不安定周波数帯域のモデルとして、前記ソ
    レノイドバルブの動特性に影響を及ぼすパラメータの変
    化に対応した複数のモデルを設定し、該パラメータの変
    化に応じ前記複数のモデルを選択して前記ソレノイドバ
    ルブの動作状態の推定を行うことを特徴とするソレノイ
    ドバルブの駆動方法。
  5. 【請求項5】 請求項4において、前記パラメータをソ
    レノイドバルブに向かう作動液温としたことを特徴とす
    るソレノイドバルブの駆動方法。
  6. 【請求項6】 請求項5において、前記ソレノイドバル
    ブの駆動が狙いとする制御の制御量が目標値に対し追従
    している程度により前記作動液温を判定して前記モデル
    の選択に資することを特徴とするソレノイドバルブの駆
    動方法。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6のいずれか1項におい
    て、前記ソレノイドバルブを前記推定した動作状態にす
    るためのパルス幅変調信号の補正量をH∞制御器により
    求めることを特徴とするソレノイドバルブの駆動方法。
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