JP2000205317A - 湿式摩擦材 - Google Patents

湿式摩擦材

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JP2000205317A
JP2000205317A JP825799A JP825799A JP2000205317A JP 2000205317 A JP2000205317 A JP 2000205317A JP 825799 A JP825799 A JP 825799A JP 825799 A JP825799 A JP 825799A JP 2000205317 A JP2000205317 A JP 2000205317A
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friction
friction material
wet friction
wet
hollow body
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JP825799A
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Mamoru Toyama
護 遠山
Shunei Omori
俊英 大森
Takashi Ota
隆 太田
Takao Tani
孝夫 谷
Nobuo Kamiya
信雄 神谷
Kazuo Takatori
一雄 鷹取
Fumio Ueda
文雄 植田
Atsushi Suzuki
厚 鈴木
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Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Toyota Central R&D Labs Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 摩擦係数が高く、良好なμ−V特性(dμ/
dV値が大きい)を有するとともに、相手材攻撃性の抑
えられた湿式摩擦材を提供すること。 【解決手段】 本発明の湿式摩擦材は、繊維基材と、充
填材と、結合材と、からなる湿式摩擦材であって、充填
材は、アルミニウムを主成分とする酸化物よりなり平均
粒径が1μm以下で皮殻の厚さが20nm以下の中空体
を含有することを特徴とする。本発明の湿式摩擦材は、
物性的に高い摩擦係数を有する充填材を配合すること
で、高い摩擦係数を得ている。また、油とのなじみ性、
保持性や吸収性を向上させることで、μ−V特性を向上
させている。さらに、皮殻が薄い中空体は、相手部材と
の接触部において中空体粒子自身が変形してなめらかな
形状となるため、相手材攻撃性を抑えられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、湿式クラッチに用
いられる摩擦材に関し、詳しくは高い摩擦係数および良
好なμ−V特性を有する湿式摩擦材に関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば、自動車などは、発進、停止や
変速を行うため、エンジンから駆動系への動力の伝達を
断続するための機構としてクラッチがもうけられてい
る。このようなクラッチには、摩擦クラッチが広く用い
られている。摩擦クラッチは、摩擦を利用して動力を断
続させる装置であり、摩擦板の押しつけ荷重の制御によ
りすべりによるスムーズな継合いができる。摩擦クラッ
チには、乾燥状態で使用される乾式クラッチと、油液中
で使用される湿式クラッチと、がある。湿式クラッチ
は、遊星歯車式の自動変速機内の構成要素として多板ク
ラッチとして多く使用されている。
【0003】湿式クラッチの摩擦板には、湿式摩擦材が
用いられる。湿式摩擦材は、冷却性および耐熱性を有す
るために、その内部に油を含浸、保持できる。加えて、
高い摩擦係数を有するために、相手部材との接触面では
固体接触を維持できるように、油を排除できることが必
要となっている。一般的に湿式摩擦材は、繊維基材にフ
ェノール樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸さ
せたものである。また、摩擦特性を調整するために、充
填材や摩擦調整材としてけい藻土、カシューダスト等も
配合される。
【0004】このような湿式摩擦材には、例えば、特公
平7−21298号に記載された湿式摩擦材がある。こ
の湿式摩擦材は、充填材として、けい藻土、アルミナ
粉、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカの無機質充
填材が、摩擦調整材としてグラファイト、カシューダス
トがあげられている。また、特開昭60−38488号
に記載の湿式摩擦材は、充填材としてアルミナ、シリカ
アルミナ、フライアッシュ等の微小中空体があげられて
いる。これらの微小中空体を配合することによって、摩
擦材の耐熱性、耐久性を向上させている。
【0005】さらに、特開平10−130631号に記
載の湿式摩擦材は、銅合金系基材にシリカ、アルミナ等
のセラミックス中空体を配合することによって、摩擦材
の耐熱性、耐久性を向上させている。ここで用いられた
セラミックス中空体は、発泡剤により多孔質セラミック
ス粒子を発泡させて、破断中空形状または、中空形状を
形成させたものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公平
7−21298号および特開昭60−38488号に記
載の湿式摩擦材は摩擦係数および摩擦係数(μ)とすべ
り速度(V)との関係であるμ−V特性が十分といえ
ず、また、特開平10−130631号に記載の湿式摩
擦材は銅合金系基材が用いられているためその重量が重
くなるとともに摩擦係数も十分といえないという問題を
有していた。
【0007】また、一般に摩擦係数の高い摩擦材は、相
手材攻撃性が大きくなり、摩擦材および相手部材にとっ
て、寿命の低下等の問題を発生していた。本発明は上記
実状に鑑みてなされたものであり、摩擦係数が高く、良
好なμ−V特性(dμ/dV値が大きい)を有するとと
もに、相手材攻撃性の抑えられた湿式摩擦材を提供する
ことを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明者らは、湿式摩擦材の摩擦特性について検討を
重ねた結果、充填材として中空体構造の粒子を配合する
ことで摩擦材の油とのなじみ性、保持性や吸収性を制御
することで摩擦特性の改善を行うことができるととも
に、その摩擦部において相手材攻撃性を抑えられること
を見出した。
【0009】すなわち、本発明の湿式摩擦材は、繊維基
材と、充填材と、結合材と、からなる湿式摩擦材であっ
て、充填材は、アルミニウムを主成分とする酸化物より
なり平均粒径が1μm以下で皮殻の厚さが20nm以下
の中空体を含有することを特徴とする。本発明の湿式摩
擦材は、アルミニウムを主成分とする酸化物の物性によ
り高い摩擦係数を得ている。また、隣接する中空体同士
により形成される空隙に潤滑油が侵入することで、湿式
摩擦材の油とのなじみ性、保持性や吸収性を向上させる
ことで、μ−V特性を向上させている。さらに、中空体
粒子の皮殻の厚さが極めて薄く、粒子自身が変形しやす
いため、相手材攻撃性を抑えられる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の湿式摩擦材は、アルミニ
ウムを主成分とする酸化物よりなる中空体を含有する。
アルミニウムを主成分とする酸化物の物性により摩擦材
の摩擦係数が向上する。また、中空体を含有すること
で、接する中空体同士の間に空隙が形成され、この空隙
内に潤滑油が入り込んで保持されるため、μ−V特性が
向上される。
【0011】すなわち、空隙内に潤滑油が入り込むこと
で摩擦表面の油ぎれが良くなり、真実接触面積が増加
し、摩擦係数が向上している。また、空隙に侵入した潤
滑油が保持されるため、摩擦表面付近に潤滑油が保持さ
れているため、摩擦表面の焼き付きを抑えることができ
る。また、皮殻が薄い中空体は、相手部材との接触部に
おいて、粒子自身が弾性変形し、なめらかになること、
および突出した粒子の表面部が破断し、この中空体中に
潤滑油を保持すること、ならびに接触を均一化させるこ
となどにより、相手材攻撃性を抑えられる。
【0012】中空体は、その一部が破断して開口した破
断中空体が混在していてもよい。破断中空体は、破断さ
れた中空体内部に潤滑油が入り込んで保持されるように
なり、湿式摩擦材の油なじみ性、保持性および吸収性を
向上させる。中空体は、半球〜全球形状を維持している
ことが好ましい。半球以下に破断した中空体の割合が5
0mass%を超えると、油の保持性や吸収性を維持で
きなくなり、摩擦材の摩擦係数が低下し、好ましくな
い。
【0013】中空体は、その平均粒径が1μm以下で皮
殻の厚さが20nm以下である。中空体の平均粒径が1
μmを超えると、中空体の粒子によって形成される摩擦
材の粗さが大きくなるため、相手材攻撃性が増大する。
また、皮殻の厚さが20nmを超えると、粒子が硬く、
中空体粒子が変形しにくくなり、相手材攻撃性を抑えら
れなくなる。
【0014】中空体は、摩擦材の深さ方向に対して、均
一に配合してもよいし、表層のみに配合させてもよい。
摩擦材に均一に配合する場合には、中空体の湿式摩擦材
への配合量が0.05〜30mass%の範囲であるこ
とが好ましい。また、表層にのみ存在させる場合には、
中空体の湿式摩擦材への配合量が0.01〜15mas
s%の範囲であることが好ましい。
【0015】中空体の配合量が少なすぎると、潤滑油が
摩擦材中に十分に保持されなくなり摩擦係数の向上の効
果が十分でなく、配合量が過剰になると摩擦材に占める
空隙量が多くなるため、摩擦材が脆くなるという問題が
発生する。中空体は、アルミニウムを主成分とする酸化
物より構成される。アルミニウムを主成分とする酸化物
とすることで、中空体を配合することによる湿式摩擦材
の強度の低下を抑えることができる。
【0016】中空体としては、例えば、アルミニウム塩
を溶解および/または懸濁させた水溶液に、有機溶剤を
添加して水滴径100nm以上のw/o型エマルジョン
を形成し、w/o型エマルジョンを噴霧・燃焼させるこ
とによって得られた中空状アルミナがある。このとき、
アルミニウム塩の種類については特に限定されるもので
はなく、水溶性のアルミニウム塩であればよい。たとえ
ば、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、塩化物等の塩をあげるこ
とができる。また、有機溶剤は、水に難溶性でw/o型
のエマルジョンを形成できるものが用いられる。このよ
うな有機溶剤としては、たとえば、ヘキサン、オクタ
ン、ケロシン、ガソリン等の炭化水素系の有機溶剤をあ
げることができる。
【0017】中空体の合成方法は、まず、エマルジョン
を形成する。このエマルジョン化工程は、酸化物を形成
するアルミニウムが溶解してイオン状または微細な懸濁
状の水溶液に有機溶剤を加えて混合し、有機溶剤をマト
リックスとするw/o型エマルジョンを形成する工程で
ある。このとき、このw/o型エマルジョンの水滴径を
100nm以上とするため必要に応じて界面活性剤を利
用して水滴の粒子径を調整する。エマルジョン中の酸化
物を形成する金属を含む水滴径が噴霧・燃焼時に保持さ
れ、酸化物生成時の反応場を制御することができる。
【0018】w/o型のエマルジョンを安定に保持する
ために添加する分散剤は、その種類および添加量は限定
されない。たとえば、カチオン性界面活性剤、アニオン
性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれも使用で
き、水溶液、有機溶剤の種類および必要とする水滴径に
応じて、分散剤の種類および添加量を変化させて使用で
きる。
【0019】つづいて、w/o型エマルジョンを噴霧・
燃焼させてアルミニウム酸化物の中空状粉末を形成す
る。w/o型エマルジョンが加熱された反応炉内に噴霧
されると、噴霧された金属を含む水滴は外側が有機溶剤
に被覆されているので、有機溶剤が燃焼すると共に有機
溶剤側のアルミニウム塩の酸化と水分の蒸発が起こるの
で酸化物が皮殻状に形成されて中空状のアルミニウム酸
化物が形成される。
【0020】噴霧された時のエマルジョンの水滴径は、
100nm以上であることが中空状を形成するのに必要
である。水滴径が100nm未満であると水滴の表面側
の酸化物皮殻の形成前に水滴が完全に収縮してしまい、
酸化物は中空状とはならず中実状粒子となるので好まし
くない。一方、水滴径が10μmより大きいと、反応場
が大きくなりすぎて酸化物の生成に時間を要し、生成物
の組成が不均質になる可能性があり好ましくない。
【0021】本発明の湿式摩擦材は、繊維基材と充填材
と結合材とからなる。これらの繊維基材、充填材、結合
材には、従来の湿式摩擦材に用いられているものが用い
られる。繊維基材としては、有機繊維または無機繊維を
単独、あるいは併用して用いることができる。有機繊維
としては、リンタパルプ、木材パルプ、合成パルプ、ポ
リエステル系繊維、アクリル繊維、ポリアミド系繊維、
ポリビニルアルコール変成繊維、ポリ塩化ビニル繊維、
ポリプロピレン繊維、炭素繊維などを1種または複数種
混合して用いることができる。また、無機繊維として
は、チタン酸カルシウム繊維、ガラス繊維、カオリン繊
維、シリカ繊維、ボーキサイト繊維、カヤナイト繊維、
ホウ素繊維、マグネシア繊維、金属繊維などを複数種併
用して用いることができる。なお、繊維基材としては、
軽量化のために有機繊維を用いることが好ましい。
【0022】充填材としては、上記中空体以外には、二
酸化珪素、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、カオリ
ン、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、タルク、珪藻土
などの無機添加剤や、アルミニウム粉末、銅粉末、鉄粉
末、ゴム粉末、カシューダスト、グラファイト粉などの
摩擦調整材をあげることができる。結合材としては、フ
ェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂
等の熱硬化性樹脂が用いられるが、特にフェノール樹脂
が好ましい。
【0023】本発明の湿式摩擦材は、繊維基材、充填材
からなる混合物および結合材を従来から用いられる湿式
法あるいは乾式法により製造することができる。湿式法
は、上記の混合物を水中でスラリー状とし、これを抄紙
して抄紙体を形成する。この抄紙体に結合材を含浸させ
て加圧加熱して製造する方法である。また、乾式法は、
結合材を含めて混合物を成形型内に注入して加圧加熱成
形して製造する方法である。
【0024】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。 (実施例)本実施例は、充填材に中空アルミナを用いた
湿式摩擦材である。本実施例の湿式摩擦材は、繊維基材
にはセルロース繊維が、結合材にはフェノール樹脂が1
0mass%となるように、充填材としては中空アルミ
ナが13mass%となるように配合されている。ここ
で、中空アルミナの平均粒径は、0.4μmであった。
【0025】(中空アルミナの製造方法)中空アルミナ
は、以下の方法により製造された。 (エマルジョン化工程)水相には、市販の硝酸アルミニ
ウム9水和物を脱イオン水に濃度0.1〜2モル/リッ
トルで溶解した硝酸アルミニウム水溶液を用いた。有機
溶剤には、市販のケロシンを用いた。エマルジョンを形
成する分散剤としては、太陽化学(株)製サンソフトN
o818Hをケロシンに対して5〜10重量%用いた。
この分散剤入りのケロシンを油相とした。
【0026】水相と油相の割合は、水相/油相=40〜
70/60〜30(容量%)となるように混合した。混
合溶液は、ホモジナイザを用いて1000〜20000
rpmの回転数で5〜30分間攪拌し、W/O型エマル
ジョンを得た。なお、光学顕微鏡観察の結果から、上記
のエマルジョン中の水滴径は、約1〜2μmであった。
【0027】(粉末化工程)得られたW/O型エマルジ
ョンを、特開平7−81905号に記載のエマルジョン
燃焼反応装置を用いてエマルジョンを噴霧状にして油相
を燃焼させるとともに水相に存在する金属イオンを酸化
して酸化物粉末を形成した。この合成条件は、噴霧した
エマルジョンが完全燃焼し、かつ火炎温度が700〜1
000℃の一定温度になるように、エマルジョンの噴霧
流量、空気量(酸素量)などを制御した状態でおこなっ
た。得られた粉末を反応管後部に設置したバグフィルタ
ーで回収した。
【0028】得られた中空アルミナの形状を透過型電子
顕微鏡(TEM)を用いて観察した。図1にTEM像を
示した。図1aは低倍率のTEM像を、図1bに高倍率
のTEM像を示した。図1aに示されるように、中空ア
ルミナの平均粒子径は、300〜500nmであった。
また、図1に示されるように、その皮殻厚さは10nm
であった。
【0029】(湿式摩擦材の製造方法)湿式摩擦材は、
以下の方法で作製された。まず、メタノールに結合材を
16.6%配合し、これに配合する摩擦材への配合重量
分の充填材をくわえて、結合材樹脂のメタノール希釈溶
液を作製した。この希釈溶液を基材のペーパーに含浸さ
せ、過剰な結合材樹脂を加圧ろ過により取り除いた後、
80℃で2時間乾燥させた。乾燥後、成形圧力が60k
Pa、温度が180℃で2時間の熱プレスを施し、結合
材樹脂を硬化させ、湿式摩擦材を得た。
【0030】また、比較例として、従来の充填材を配合
した湿式摩擦材および、充填材を配合しない湿式摩擦材
を作製した。このときの摩擦材の製造方法は、実施例と
同様に行われた。なお、比較例の湿式摩擦材に用いられ
た充填材およびその割合を表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】(比較例1)本比較例は、充填材を含まな
い以外は、実施例と同様の材質および製造方法で作成さ
れた湿式摩擦材である。 (比較例2)本比較例は、充填材としてアルミナを用い
た以外は、実施例と同様に製造された湿式摩擦材であ
り、アルミナの配合量は13mass%であった。本比
較例に用いられたアルミナは、平均粒子径が0.01μ
mと粒径が小さかった。
【0033】(比較例3)本比較例は、充填材としてア
ルミナを用いた以外は、実施例と同様に製造された湿式
摩擦材であり、アルミナの配合量は13mass%であ
った。本比較例に用いられたアルミナは、平均粒子径が
0.7μmであった。 (比較例4)本比較例は、充填材としてシリカを用いた
以外は、実施例と同様に製造された湿式摩擦材であり、
シリカの配合量は13mass%であった。本比較例に
用いられたシリカは、平均粒子径が0.5μmであっ
た。
【0034】(比較例5)本比較例は、充填材として中
空ガラスを用いた以外は、実施例と同様に製造された湿
式摩擦材であり、中空ガラスの配合量は13mass%
であった。本比較例に用いられた中空ガラスは、平均粒
子径が20μmであり、皮殻厚さは1μmであった。
【0035】(評価)実施例および比較例の湿式摩擦材
に摩擦試験を行い、摩擦材の摩擦特性を測定した。摩擦
試験は、図2に示されるスラスト・カラー型摩擦試験機
により行われた。なお、すべり速度、試験時間等の試験
条件は、表2に示されるように行われた。また、摩擦係
数としては、荷重付加後30秒の値を測定した。さら
に、試験の前後におけるリング試片の重量差を測定し、
相手材の摩耗量も測定した。測定結果としては、ならし
後評価を用い、図3に油温80℃でのすべり速度と摩擦
係数との関係を、図4にdμ/dV値を、図5にリング
試片の摩耗量を示した。
【0036】摩擦試験には、エポキシ系接着剤を塗布し
たSPHC材よりなるプレート試片に実施例および比較
例の湿式摩擦材をはりつけ、室温で24時間乾燥させる
ことで接着させた試験片が用いられた。また、摩擦材の
相手材としてはS45C材により形成され、外径25.
6mm、内径20.0mm、摩擦面積200mm2の円
筒形のリング試片であって、摩擦面の表面あらさが0.
04〜0.06μmRaとなるように研磨されたものが
用いられた。さらに、潤滑油には、市販のATFが用い
られた。
【0037】
【表2】
【0038】表2に示されるように摩擦試験は、ならし
を行った後にそれぞれの油温で行われ、すべり速度を
0.01m/sから2.0m/sへと大きくしていった
ときの摩擦係数を測定することで行われた。 (測定結果)図3より、本実施例の湿式摩擦材は、80
℃の油温中では、すべり速度が変化しても摩擦係数がお
よそ0.2と高く保たれている。比較例1、4および5
の湿式摩擦材は、すべり速度が0.1m/sまでに最大
の摩擦係数値をとり、その後はすべり速度の増加にとも
なって摩擦係数も低下している。このときの最大の摩擦
係数値は比較例1では0.15、比較例4および5では
0.13と、実施例の摩擦係数より低い値となってい
る。比較例2の湿式摩擦材は、すべり速度が0.1m/
s時に摩擦係数が最大の0.18となり、すべり速度の
増加とともに摩擦係数は減少していき、すべり速度が
2.0m/sにまで増加すると摩擦係数が0.1程度ま
で減少している。比較例3は、すべり速度が0.3m/
sの時に摩擦係数が最大の0.27にまで増加するが、
すべり速度の増加にともない摩擦係数が大きく変動して
いる。
【0039】図4より、実施例の湿式摩擦材は、いずれ
の油温においてもdμ/dV値が0以上の正の値と大き
くなり、μ−V特性にすぐれた湿式摩擦材となってい
る。また、比較例1〜5の湿式摩擦材は、dμ/dV値
がほとんど0以下となっており、実施例と比較してμ−
V特性におとっている。図5より、実施例および比較例
1、2、4、5の湿式摩擦材は、リング試片の摩耗量が
2mg未満となっており、湿式摩擦材の相手材攻撃性が
低い。また、比較例3においては、リング試片の摩耗量
が24mgとかなり大きくなっている。
【0040】図3および図4より、実施例の湿式摩擦材
は、すべり速度が増加しても摩擦係数が高く保たれてい
るとともに、μ−V特性としてdμ/dV値も大きくな
っている。また、実施例の実施例の湿式摩擦材は、図5
より、相手材攻撃性も低く抑えられている。 (TEM)また、実施例の湿式摩擦材について、透過型
電子顕微鏡(TEM)を用いて観察した。このときのT
EM像を図6に示した。図6aは摺動面を、図6bは非
摺動面を示した。図6aおよび図6bから、摩擦材表面
を中空アルミナが覆っている。中空アルミナの中には、
皮殻の一部が破断して空孔を有するものも混在してい
る。このような中空アルミナの中空構造および粒子間の
隙間によって、摩擦材には気孔が形成されていることが
わかる。
【0041】図6aに示される摺動面と図6bに示され
る非摺動面とを比較すると、中空アルミナの形状に大き
な差異は認められない。したがって中空アルミナは、そ
の中空形状を保った状態で、高摩擦係数化、μ−V特性
の向上ならびに相手材攻撃性の防止に寄与していると考
えられる。
【0042】
【発明の効果】本発明の湿式摩擦材は、充填材として物
性的に高い摩擦係数を有する中空体構造の粒子を含有す
るため、高い摩擦係数を得ている。また、隣接する中空
体同士により形成される空隙に潤滑油が侵入するため、
湿式摩擦材の油とのなじみ性、保持性や吸収性が向上し
ている。このため、すぐれたμ−V特性を示す。さら
に、中空体構造の粒子を含有することから相手攻撃性も
抑えられている。
【図面の簡単な説明】
【図1】 中空アルミナの低倍率および高倍率でのTE
M像である。
【図2】 スラストカラー型摩擦試験の概略を示す図で
ある。
【図3】 実施例および比較例の湿式摩擦材のすべり速
度と摩擦係数との関係を示す図である。
【図4】 実施例および比較例の湿式摩擦材のdμ/d
V値を示した図である。
【図5】 摩擦試験における相手部材の摩耗量を示した
図である。
【図6】 実施例の湿式摩擦材の摩擦面のTEM像であ
る。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成11年7月28日(1999.7.2
8)
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正内容】
【図6】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 71:10 (72)発明者 大森 俊英 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 太田 隆 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 谷 孝夫 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 神谷 信雄 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 鷹取 一雄 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 植田 文雄 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 鈴木 厚 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3J056 AA31 BE17 EA03 EA13 EA24 GA01 GA12 3J058 BA76 GA01 GA33 GA51 GA82 GA93 GA94 4F071 AA09 AA20 AA24 AA29 AA34 AA41 AA42 AA43 AA54 AB03 AB06 AB18 AB20 AB21 AB23 AB25 AB26 AB27 AB28 AB30 AD01 AD04 AE17 AF28 AH07 DA01 DA18 DA20 4J002 AB012 BB122 BD052 BE022 BG102 CC031 CC161 CC181 CD001 CF002 CL002 DA017 DA027 DA066 DA067 DE076 DE077 DE186 DE237 DG047 DH047 DJ016 DJ017 DJ036 DJ037 DJ047 DK006 DL006 FA042 FA046 FD017 FD206 GM03

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊維基材と、充填材と、結合材と、から
    なる湿式摩擦材であって、 前記充填材は、アルミニウムを主成分とする酸化物より
    なり平均粒径が1μm以下で皮殻の厚さが20nm以下
    の中空体を含有することを特徴とする湿式摩擦材。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1621791A1 (en) * 2004-07-26 2006-02-01 BorgWarner Inc. Friction material with nanoparticles of friction modifying layer
CN102101916A (zh) * 2009-12-21 2011-06-22 比亚迪股份有限公司 摩擦粒子的制法及摩擦粒子和摩擦材料组合物及摩擦材料
CN102943410A (zh) * 2012-11-14 2013-02-27 陕西科技大学 一种多壁碳纳米管改性纸基摩擦材料的制备方法
CN109477534A (zh) * 2016-07-26 2019-03-15 三菱电机株式会社 制动器的衬片

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