JP2000197483A - RecQDNAヘリカ―ゼファミリ―遺伝子の変異に起因する疾患の検査方法 - Google Patents

RecQDNAヘリカ―ゼファミリ―遺伝子の変異に起因する疾患の検査方法

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JP2000197483A
JP2000197483A JP11276664A JP27666499A JP2000197483A JP 2000197483 A JP2000197483 A JP 2000197483A JP 11276664 A JP11276664 A JP 11276664A JP 27666499 A JP27666499 A JP 27666499A JP 2000197483 A JP2000197483 A JP 2000197483A
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wrn
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Yasuhiro Furuichi
泰宏 古市
Masanobu Sugimoto
正信 杉本
Takehisa Matsumoto
武久 松本
Makoto Goto
眞 後藤
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EIJIIN KENKYUSHO KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 RecQ DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子の
変異に起因する疾患の分子レベルでの検査に用いられる
抗体、および該抗体を用いる免疫検査方法を提供するこ
とを課題とする。 【解決手段】 RecQ DNA ヘリカーゼファミリータンパ
ク質に属するWRNヘリカーゼのC末端領域に対するモノ
クローナル抗体を作製した。複数の患者から採取した末
梢血由来の血球細胞をエプシュタイン・バール・ウイル
ス(EBV)でトランスフォームさせた細胞を作製し、該抗
体を用いたウェスタンブロット解析を行うことで、WRN
ヘリカーゼ欠損を正確に検査でき、ウェルナー症候群の
検査を簡便に行えることを見出した。本発明の方法によ
り、あらかじめ遺伝子変異を知ることなく、一律に複数
のサンプルに適用してRecQ DNA ヘリカーゼファミリー
遺伝子の変異に起因する疾患の検査を行うことが可能と
なった。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、RecQ DNA ヘリカ
ーゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾患の免疫検査
に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリクローナル抗体あるいはモノクロー
ナル抗体を用いた免疫学的検査は、これまで感染症の診
断には広く用いられてきた(K. James, 1990, Clin. Mi
crobiol. Rev., 3: 132-152)。しかしながら、遺伝病
の検査に関しては、これまで抗体が得られなかったこ
と、遺伝子産物を産生する適当な患者の細胞を利用して
いかに診断に結びつけるかについて具体的方法がなかっ
たことなどの理由から、これらの免疫学的手法が系統的
に適用されることは稀である。遺伝病の場合、通常はそ
の病気に特異的な症状の組み合わせにより検査や診断が
行われる。
【0003】最近、ポジショナル・クローニングやその
他の分子遺伝学的な技術を利用して、いろいろな遺伝子
病の原因遺伝子が明らかにされるようになってきた。そ
の結果、ゲノム遺伝子の塩基配列を決定したり、あるい
はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)といった分子遺伝学的な
方法を利用して遺伝子の変異を検出することが可能とな
ってきている(S. Takeda et al., Hum. Mutat. 2: 112
-117 (1993); C. Delahunty et al., Am. J. Hum. Gene
t. 58: 1239-1246 (1996))。しかしこのような遺伝子
の変異の検出は、原因遺伝子の塩基配列が決定され、変
異の正確な部位が同定され、個々の変異を検出するため
のプライマー等が設計されなければ適用することができ
ない。変異が未知であっても検査が可能な遺伝病の検査
方法が求められていた。
【0004】例えば、遺伝病の1つであるウェルナー症
候群は、常染色体の劣性遺伝的異常が引き起こす、まれ
な癌を伴う早期加齢の症状である(C.J. Epstein et a
l., 1966, Medicine 45: 177-221; M. Goto et al., 19
81, Clin. Genet. 19: 8-15;M. Goto, 1997, Mechanism
s of Ageing and Development 98: 239-254; M. Gotoet
al., 1996, Cancer Epidemiol. Biomarker Prevention
5: 239-246)。ウェルナー症候群の患者は、日本にお
いて多くの報告があり、過去95年間に全世界で報告され
た1150例のうち850例が日本人とされている(T. Matsum
oto et al., 1997, Hum. Genet. 100: 123-130)。ウェ
ルナー症候群の原因遺伝子は、すでに8p11-12領域のポ
ジショナルクローニングによって同定され、大腸菌のRe
cQ(N. Irino et al., 1986, Mol. Gen. Genet. 205: 2
98-304)や酵母(Saccharomyces cerevisiae)のSGS1(S.
Gangloff et al., 1994, Mol. Cell. Biol. 14: 8391-
8398)と相同性を有するRecQ DNAへリカーゼファミリー
に属すDNAへリカーゼ(WRNヘリカーゼ)をコードしてい
る(C.-E. Yu et al., 1996, Science 272: 258-26
2)。日本人の患者には、これまでに8種類の変異が同定
されており、全世界では計19種類の変異が報告されてい
る(T. Matsumoto et al., 1997, Hum. Genet. 100: 12
3-130; C.-E. Yu et al., 1996, Science 272: 258-26
2; J. Oshima et al., 1996, Hum. Mol. Genet. 5: 190
9-1913)。遺伝子のシークエンシングが進めば、更に異
なる変異が見つかると予想される。
【0005】ウェルナー症候群の診断を、その症状を基
に行うには、特別な臨床経験が必要とされる。本発明者
らや他者らにより、これまでウェルナー症候群の診断基
準となる症状が提示されているが、診断は熟練した医師
により初めて可能となるものであり、常に曖昧さを伴う
(M. Goto et al., 1981, Clin. Genet. 19: 8-15; J.
Nakura et al., 1994, Genomics 23: 600-608)。
【0006】より正確な診断のために、原因遺伝子であ
るWRNヘリカーゼ遺伝子を用いて、分子レベルで検査・
診断を行うことが考えられる。例えば、本発明者らはゲ
ノムDNAのシークエンスとPCRを利用して、ウェルナー症
候群が疑われている患者の検査を行い、WRNヘリカーゼ
遺伝子の変異を検出することで分子レベルでの診断方法
を開発してきた(T. Matsumoto et al., 1997, Hum. Ge
net. 100: 123-130)。しかし、遺伝子の変異は理論的
にはエキソンのみならずイントロン中にも存在すること
が考えられ、例えばヒトWRNヘリカーゼ遺伝子のゲノム
は160Kbp以上の領域にコードされている(T. Matsumoto
et al., 1997, Hum. Genet. 100: 123-130; C.-E. Yu
et al., 1996, Science 272: 258-262)ことから、シー
クエンス等によって未同定の変異を全て見つけ出すこと
は著しく困難である。
【0007】また、WRNヘリカーゼと同様にRecQ DNAへ
リカーゼファミリーに属すBLMヘリカーゼの異常に起因
する疾患であるブルーム症候群の診断についても臨床診
断が主であり、遺伝子の変異や抗体による検索は未だ研
究レベルにとどまっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、あらかじめ
遺伝子変異を知ることなく、一律に複数のサンプルに適
用して結果を得ることができる、RecQ DNA ヘリカーゼ
ファミリー遺伝子の変異に起因する疾患の分子レベルで
の検査に用いられる抗体、および該抗体を用いる免疫検
出方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決しようとする手段】本発明者らは、RecQ D
NA ヘリカーゼファミリータンパク質の一つであるWRNヘ
リカーゼの異常に起因する疾患であるウェルナー症候群
においては、WRNヘリカーゼ遺伝子のフレームシフトや
欠失などにより、WRNヘリカーゼのC末端領域に欠失を
生じることに着目した。そこで、本発明者らは、WRNヘ
リカーゼのC末端領域に対するモノクローナル抗体を作
製し、この抗体を用いて患者細胞で、WRNヘリカーゼが
発現されているかどうかについて、ウェスタンブロット
による解析を行った。その結果、該抗体を利用して患者
サンプルを試験することにより、ウェルナー症候群を簡
便かつ効率的に検査できることを見出した。
【0010】さらに、本発明者らは、ウェルナー症候群
の検査において、WRNヘリカーゼのC末端領域に対する
モノクローナル抗体での検出に、さらにWRNヘリカーゼ
のN末端領域に対するモノクローナル抗体での検出を組
み合わせることで、ウェルナー症候群が WRNヘリカーゼ
遺伝子の発現異常によるものか構造異常によるかを簡便
かつ効率的に検査することも可能であることを見出し
た。
【0011】即ち、本発明はあらかじめ遺伝子変異を知
ることなく、一律に複数のサンプルに適用して RecQ DN
A ヘリカーゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾患の
検査を行うために用いられる抗体および該抗体を用いる
免疫検出方法に関し、より具体的には、(1) RecQ D
NA ヘリカーゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾患
を検査するための、該RecQ DNA ヘリカーゼファミリー
タンパク質のC末端領域を認識する抗体、(2) モノ
クローナル抗体である、(1)に記載の抗体、(3)
RecQ DNA ヘリカーゼファミリータンパク質がWRNヘリカ
ーゼである、(1)または(2)に記載の抗体、(4)
(1)または(2)に記載の抗体を含む、RecQ DNA
ヘリカーゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾患の検
査薬、(5) (3)に記載の抗体を含む、ウェルナー
症候群の検査薬、(6) RecQ DNA ヘリカーゼファミ
リータンパク質のN末端領域を認識する抗体と、(1)
または(2)に記載の抗体との組み合わせを含む、RecQ
DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾
患の検査のためのキット、(7) WRNヘリカーゼのN
末端領域を認識する抗体と、(3)に記載の抗体の組み
合わせを含む、ウェルナー症候群の検査のためのキッ
ト、(8) RecQ DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子の
変異に起因する疾患を検査するための方法であって、
(a)患者の末梢血より血球細胞を調製する工程、
(b)増殖刺激を受けた該血球細胞由来の試料に(1)
または(2)に記載の抗体を接触させる工程、および
(c)該試料における該RecQ DNA ヘリカーゼファミリ
ータンパク質を検出する工程、を含む方法、(9) Re
cQ DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子の変異に起因する
疾患を検査するための方法であって、(a)患者の末梢
血より血球細胞を調製する工程、(b)(1)または
(2)に記載の抗体とRecQ DNA ヘリカーゼファミリー
タンパク質のN末端領域を認識する抗体をそれぞれ増殖
刺激を受けた該血球細胞由来の試料に接触させる工程、
および(c)それぞれの試料における該RecQ DNA ヘリ
カーゼファミリータンパク質を検出する工程、を含む方
法、(10) ウェルナー症候群を検査するための方法
であって、(a)患者の末梢血より血球細胞を調製する
工程、(b)増殖刺激を受けた該血球細胞由来の試料に
(3)に記載の抗体を接触させる工程、および(c)該
試料における WRNヘリカーゼを検出する工程、を含む方
法、(11) ウェルナー症候群を検査するための方法
であって、(a)患者の末梢血より血球細胞を調製する
工程、(b)(3)に記載の抗体とWRNヘリカーゼのN
末端領域を認識する抗体をそれぞれ増殖刺激を受けた該
血球細胞由来の試料に接触させる工程、および(c)そ
れぞれの試料における WRNヘリカーゼを検出する工程、
を含む方法、(12) 工程(a)において、血球細胞
からさらにBリンパ球を調製する、(8)〜(11)の
いずれかに記載の方法、(13) 血球細胞に対する増
殖刺激がエプシュタイン・バール・ウイルス処理または
ホルボールエステル処理である、(8)〜(12)のい
ずれかに記載の方法、に関する。
【0012】なお、本発明において「RecQ DNA ヘリカ
ーゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾患」とは、正
常なRecQ DNA ヘリカーゼファミリータンパク質発現が
起こらない症状のことを言い、該タンパク質をコードす
る遺伝子の構造異常や発現異常が含まれる。また、「Re
cQ DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子の変異に起因する
疾患の検査」とは、RecQ DNA ヘリカーゼファミリー遺
伝子の変異に起因して症状を発現している患者の検査の
みならず、被験者がRecQ DNA ヘリカーゼファミリー遺
伝子の変異に起因する疾患にかかりやすいか否かを判断
するために行う、RecQ DNA ヘリカーゼファミリー遺伝
子の変異の検査も含まれる。すなわち、RecQ DNA ヘリ
カーゼファミリータンパク質が欠損することにより、表
面上は未だ症状を発現していない場合においても、将
来、疾患にかかる危険性が非常に増大しているものと考
えられる。このような危険性を判定するための検査も含
まれる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、RecQ DNA ヘリカーゼ
ファミリー遺伝子の変異に起因する疾患の免疫検査に用
いられる抗体に関する。本発明の抗体は、RecQ DNA ヘ
リカーゼファミリータンパク質のC末端領域を認識する
ことを特徴とする。RecQ DNAヘリカーゼファミリーに属
するヘリカーゼとしては、WRNヘリカーゼ以外にも、ブ
ルーム症候群(Bloom's syndrome; BLM)の原因遺伝子
がコードするBLMヘリカーゼ(N.A. Ellis et al., 199
5. Cell 83: 655-666)、RecQ1ヘリカーゼ(Nucleic Ac
ids Res. 22: 4566-4573)、ロスムンド−トムソン症候
群(RTS)の原因遺伝子の産物である RecQ4ヘリカーゼ
(RTSヘリカーゼともいう)(S. Kitao et al., 1998,
Genomics, 54, pp443-452; S. Kitao et al., 1999, Na
t. Genet. 22: 82-84; 特願平9-200387; 特願平11-1121
8号)、RecQ5ヘリカーゼ(S. Kitao et al.,1998, Geno
mics, 54, pp443-452; 特願平10-81492)が知られてい
る。
【0014】RecQ DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子の
変異に起因する疾患の原因としては、その原因遺伝子の
発現異常および該遺伝子の翻訳産物の構造異常が考えら
れる。原因遺伝子の発現異常とは、mRNAへの転写や蛋白
質への翻訳過程が阻害されることにより正常に蛋白質が
合成されないことを言う。一方、構造異常とは、タンパ
ク質の翻訳は行われるが、変異により正常な機能が損な
われる場合を言う。構造異常の原因には、原因遺伝子に
おける塩基の欠失、置換、挿入、および/または付加な
どが挙げられるが、これら変異によりフレームシフトや
終始コドンの出現が生じると、翻訳された蛋白質におい
て、原因遺伝子の変異部位に対応する領域以降の領域が
変異する。
【0015】本発明において、ウェルナー症候群患者に
おいては、WRNヘリカーゼのC末端側の欠失が高頻度に
認められ(図3)、WRNヘリカーゼタンパク質のC末端
領域を認識する抗体を用いることにより、ウェルナー症
候群の検査を簡便かつ効率的に行うことができることが
見出された(図4)。RecQ DNA ヘリカーゼファミリー
に属するタンパク質はお互いに構造の共通性を有するこ
とから、WRNヘリカーゼタンパク質以外のファミリーメ
ンバーのC末端を認識する抗体を用いることにより、ウ
ェルナー症候群以外のRecQ DNA ヘリカーゼファミリー
遺伝子の変異に起因する疾患の検査を行うことも可能で
あると考えられる。従って、本発明の検査の対象となる
疾患としては、ウェルナー症候群に限られず、RecQ DNA
ヘリカーゼファミリー遺伝子の変異に起因する各種疾
患が含まれる。
【0016】本発明において「RecQ DNA ヘリカーゼフ
ァミリータンパク質のC末端領域」とは、RecQ DNA ヘ
リカーゼファミリータンパク質のヘリカーゼドメインよ
りC末側を指す。例えば、ヒトWRNヘリカーゼにおいて
は、ヒトWRNヘリカーゼ遺伝子のエキソン22〜35により
コードされる領域またはその一部を言う。抗体を調製す
るためのC末端領域としては、例えばヒトWRNヘリカー
ゼであれば、833〜1432アミノ酸残基の領域が挙げら
れ、特に1373〜1432アミノ酸残基の領域が好ましい。
【0017】またヒトBLMヘリカーゼにおいては、C末
端領域として例えば984〜1417アミノ酸残基の領域が挙
げられ、特に1300〜1417アミノ酸残基の領域が好まし
い。また、ヒトRecQ1ヘリカーゼにおいては、C末端領
域として例えば409〜649アミノ酸残基の領域が挙げられ
る。ヒトRecQ4ヘリカーゼ(RTSヘリカーゼ)において
は、C末端領域として例えば819〜1208アミノ酸残基の
領域が挙げられ、特に1000〜1208アミノ酸残基の領域が
好ましい。さらに、ヒトRecQ5ヘリカーゼにおいては、
C末端領域として例えば354〜410アミノ酸残基の領域が
挙げられる。
【0018】本発明の検査に用いられる抗体としては、
モノクローナル抗体であっても、ポリクロ−ナル抗体で
あってもよい。これら抗体の調製は当業者に公知の方法
により行うことができる(特開平10-146188号公報参
照)。抗体を作成するために用いる抗原は、例えば、抗
原をコードする遺伝子を適当なプラスミドベクターに組
み込んで、大腸菌で遺伝子産物を発現させる、あるいは
バキュロウイルスベクターに組み込んで、昆虫細胞で遺
伝子産物を発現させることにより得ることができる。発
現ベクターとしては、大腸菌で発現させる場合は、例え
ばpQE30(Qiagen社製)のようなベクターが、また、バ
キュロウイルスベクターにはpAcHLT-B(PharMingen社
製)のようなベクターが使用できる。この場合、遺伝子
産物にFlag(Chiang, C. et al., EMBO J., 12: 2749-2
762 (1993))や6×His(Immunol. Meth. 4: 121-152 (1
990))のようなタグをつけておき、精製を容易にするこ
とができる。発現させた遺伝子産物は、タグを利用して
精製することができる。
【0019】発現させるタンパク質として、RecQ DNA
ヘリカーゼファミリータンパク質のC末端部分を用いれ
ば、C末端領域に対する抗体を直接調製することができ
る。一方、全長タンパク質を調製して、これに対する抗
体を調製し、C末端ペプチドを利用して抗体のエピトー
プセレクションを行うことにより、C末端領域に対する
抗体を調製することも可能である。
【0020】また、本発明の抗体検査において、RecQ D
NA ヘリカーゼファミリータンパク質のC末端領域を認
識する抗体に加え、N末端領域を認識する別の抗体を組
み合わせて用いれば、患者におけるRecQ DNA ヘリカー
ゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾患が原因遺伝子
の発現異常によるものか構造異常によるものかを検査す
ることができる。即ち、RecQ DNA ヘリカーゼファミリ
ー遺伝子の変異に起因する疾患における原因遺伝子の途
中に変異が生じると、フレームシフトや終止コドンの出
現により正常なC末端が欠損した翻訳産物が産生され、
N末端領域は正常であるが、C末端領域では変異が生じ
易いと考えられる。このため原因遺伝子の翻訳産物の構
造異常が起こった場合、N末端領域に対する抗体では翻
訳産物が検出されるが、C末端領域に対する抗体ではそ
れが検出されない可能性が高い。さらに、例えばWRNヘ
リカーゼ遺伝子においては、変異の入ったmRNAの発現が
非常に低下していることも知られており(Yamabe, Y. e
t al., Biochem. Biophys.Res. Commun., 236: 151-154
(1997))、そのような場合は変異したRecQ DNAヘリカ
ーゼファミリー遺伝子の翻訳産物自体が検出されないこ
とも想定される。一方、発現異常の場合には、いずれの
抗体でも免疫反応は検出されないと考えられる。従っ
て、これら両抗体を組み合わせることでRecQ DNA ヘリ
カーゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾患の原因の
検査を行うことができる。
【0021】本発明において「RecQ DNA ヘリカーゼフ
ァミリータンパク質のN末端領域」とは、RecQ DNA ヘ
リカーゼファミリータンパク質のヘリカーゼドメインよ
りN末端側を指す。例えば、ヒトWRNヘリカーゼにおい
ては、ヒトWRNヘリカーゼ遺伝子のエキソン1〜13により
コードされる領域またはその一部を言う。抗体を調製す
るためのN末端領域としては、例えば、ヒトWRNヘリカ
ーゼであれば1〜368アミノ酸残基の領域が挙げられ、特
に200〜300アミノ酸残基の領域が好ましい。
【0022】またヒトBLMヘリカーゼにおいては、N末
端領域として例えば1〜680アミノ酸残基の領域が挙げら
れ、特に1〜300アミノ酸残基の領域が好ましい。また、
ヒトRecQ1ヘリカーゼにおいては、N末端領域として例
えば1〜100アミノ酸残基の領域が挙げられる。ヒトRecQ
4ヘリカーゼ(RTSヘリカーゼ)においては、N末端領域
として例えば1〜495アミノ酸残基の領域が挙げられ、特
に1〜300アミノ酸残基の領域が好ましい。さらに、ヒト
RecQ5ヘリカーゼにおいては、N末端領域として例えば1
〜100アミノ酸残基の領域が挙げられる。
【0023】本発明において検査に用いる患者由来の細
胞としては、健常者で原因遺伝子が発現されている細胞
に対応する患者由来の細胞であれば、原理的にはどのよ
うな細胞でも使用できる。例えば、比較的入手しやすい
皮膚の線維芽細胞や血球細胞を使用することができる
が、特に血球細胞が好適である。血球細胞は、末梢血か
ら調製することができる。
【0024】調製された血球細胞は、増殖刺激を加える
ことで、細胞内のRecQ DNA ヘリカーゼファミリータン
パク質を増幅させることができ、これにより該蛋白質の
検出を容易にすることができる。増殖刺激には、例えば
エプシュタイン・バール・ウイルス(Epstein-Barr vir
us;EBV)によるトランスフォームが挙げられる。
【0025】例えば、血液から白血球分画をLymphocyte
Separation Medium(LSM)(Organotechnika, Durha
m)を用いて分離し、該白血球をマーモゼット由来のB95
-8細胞株の上清(EBVを含む)と200ng/mlのサイクロス
ポリンAとともに培養することにより、EBVによりトラ
ンスフォームしたB-リンパ芽球様細胞株を得ることがで
きる。このトランスフォーメーションにより、B-細胞は
継続的な細胞分裂をする細胞株となる。
【0026】血球細胞を活性化して分裂細胞にする方法
としては、他にインターロイキン-2とCD4抗原に対する
抗体で刺激したり(T-細胞)、植物凝集素であるphytoh
emagglutinin(PHA)で刺激したり(T-細胞)、あるい
はlipopolisaccharide(LPS)で刺激する(B-細胞)方
法などが考えられる。
【0027】また、血球細胞をホルボールミリステート
アセテート(PMA;12-o-テトラレカノイルホルボール-1
3-アセテート)などのホルボールエステルで処理するこ
とも好適である。実際、PMA処理によって RecQ DNA ヘ
リカーゼファミリータンパク質の発現が誘導された(図
5)。
【0028】上記のような細胞の増殖刺激は、抹消血全
体を分画せずに行うことも可能である。末梢血にはB-細
胞の他にT-細胞も存在するが、その両者が上記の薬剤等
の処理により刺激されりことにより、未梢血全体を用い
た場合でも、全体として RecQ DNA ヘリカーゼファミリ
ータンパク質の発現が上昇することが期待できる。すな
わち、末梢血を上記の薬剤等で刺激すると、RecQ DNA
ヘリカーゼファミリーを含め、他の様々な遺伝子の発現
が促進され、それが遺伝病関連産物であれば、この細胞
を用いて容易に診断が可能となる。未梢血細胞は患者か
ら容易に得ることができるため、例えばPMAなどの薬剤
等で刺激した末梢血は、RecQ DNA ヘリカーゼファミリ
ー遺伝子や他の遺伝子の遺伝病の免疫診断における非常
に適したサンプルとなる。
【0029】本発明の抗体検査は、例えば、公知の種々
の免疫学的手法により行うことができる。好ましい方法
としては、ウェスタンブロットが挙げられる。具体的に
は、患者細胞を、界面活性剤を含む緩衝液で溶かした後
に、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む SDSポリアク
リルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離後、ゲルか
らフィルターにタンパク質を転写し、本発明の抗体でフ
ィルター上の目的のタンパク質を検出することができ
る。また、エライザ法(enzyme-linked immunosorbent
assay, ELISA; I. Roitt et al., In "Immunology", Th
e C.V. Mosby Co., 1989, pp25.5-25.6)を用いること
もできる。抗体の標識としては、例えばアルカリフォス
ファターゼあるいはホースラディッシュパーオキシダー
ゼ等の酵素標識を用いることができ、この場合には呈色
反応で目的のタンパク質を検出することができる。目的
のタンパク質の検出においては、標識を目的のタンパク
質に対する抗体を認識する2次抗体に結合して用いるこ
ともでき、また、目的のタンパク質に対する抗体に結合
して用いることもできる。
【0030】
【実施例】以下、主にウェルナー症候群を例に、実施例
により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの
実施例によって何ら制限されるものではない。
【0031】[実施例1] WRNヘリカーゼ特異的モノク
ローナル抗体の調製とエピトープマッピング 抗原の作製のため、N末端にヘキサヒスチジン(6×Hi
s)を付加したヒトWRNヘリカーゼ全長タンパク質を、バ
キュロウイルスベクターを用いて、昆虫細胞Sf21で発現
させた(N. Suzukiら,1997, Nucl. Acids Res., 25: 2
973-2978)。発現させたヒトWRNヘリカーゼタンパク質
は、Ni-chelating NTA agarose gel(Qiagen Inc., C
A)を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより
精製した。また、ヒトWRNヘリカーゼのアミノ酸833〜14
32残基からなるC末端領域のN末端にグルタチオン-S-
トランスフェラーゼ(GST)を付加した組換えタンパク
質を大腸菌(E. coli)内で発現させ、グルタチオンセ
ファロースを用いたアフィニティークロマトグラフィー
により精製し、抗原として用いた。これらの精製タンパ
ク質は、フロイントの完全アジュバントに懸濁し、Balb
/cマウスへ通常の方法に従い免疫した。ハイブリドーマ
のクローンをELISAおよびウェスタンブロッティング解
析によりスクリーニングし、精製ヒトWRNヘリカーゼ全
長タンパク質に対して効率良く反応するマウスIgGを産
生する5種のハイブリドーマ細胞株および該細胞株が産
生する抗体、3D12、4H12、4D9、4F8、および8H3を得た
(図1)。それらの抗体のエピトープを決定するため
に、マウスメラノーマ細胞B16F10にヒトWRNヘリカーゼ
cDNA 断片を含む発現ベクターをMatsumotoらの方法(T.
Matsumoto et al., 1997, Nature Genet. 16: 335-33
6)と同様にトランスフェクトし、発現させたヒトWRNヘ
リカーゼの部分タンパク質に対する反応性を調べた(表
1)。表中、「○」は免疫反応陽性を、「×」は陰性
を、「−」は解析していないことを表す。B16F10細胞は
内在性のマウスWRNヘリカーゼをきわめて低いレベルで
発現しているため、細胞内で発現されるヒトWRNヘリカ
ーゼに由来する組換えタンパク質に対するモノクローナ
ル抗体の結合を容易に検出することができた。
【0032】ヒトWRNヘリカーゼに由来する組換えタン
パク質は、N末端に緑色蛍光タンパク質(enhanced gre
en fluorescent protein; EGFP)を持ち、さまざまな長
さ(即ち、アミノ酸残基1〜368 (N368)、1〜1046 (N104
6)、1〜1162 (N1162)、1〜1304 (N1304)、1294〜1432
(C138)、1304〜1432 (C128)、1353〜1432 (C79)、1363
〜1432 (C69)、1373〜1432 (C59)、1383〜1432 (C49)、
および1413〜1432 (C19))のヒトWRNヘリカーゼ断片を
持つように設計した(カッコ内は各ペプチドに付けた名
称である)。発現ベクターにはpEGFP(Clontech Labora
tories Inc., CA)を用いた。ビオチン化抗マウスIgG抗
体とテキサスレッド結合アビジンにより、各組換えタン
パク質に結合するモノクローナル抗体を検出した(図
2)。
【0033】その結果、モノクローナル抗体4H12はヒト
WRNヘリカーゼのC末端59アミノ酸を含むC59ペプチドに
は反応するが、C末端49アミノ酸を含むC49ペプチドに
は反応しないことが判明した。即ち4H12はC59には存在
するがC49にはない10アミノ酸内にエピトープを持つこ
とが判明した(図2A)。この10アミノ酸の領域はWRNヘ
リカーゼが細胞質から核へ移行するために必要な核移行
シグナル(NLS)を含む(T. Matsumoto et al., 1997,
Nature Genet. 16: 335-336)。モノクローナル抗体4D
9、4F8、および8H3は、ヒトWRNヘリカーゼのN末端368
アミノ酸残基を含むN368ペプチドに結合した(図2
B)。アミノ酸残基1〜231を欠く変異WRNヘリカーゼ(C1
201)をNi-TNAカラムクロマトグラフィーにより精製し、
このタンパク質に対する結合活性をウェスタンブロット
解析により検定した結果、4D9、4F8、および8H3はヒトW
RNヘリカーゼのアミノ酸残基232〜368内の領域をエピト
ープに持つことが判明した(図2Cおよび表1)。この
領域はMushegianら(A.R. Mushegian et al., 1997, Pr
oc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 5831-5836)のホモロジ
ー検索により予想されている 3'-5'エクソヌクレアーゼ
領域(60〜231アミノ酸残基)の下流に対応する。モノ
クローナル抗体3D12はヘリカーゼドメインおよびC末端
(833〜1432アミノ酸残基)を持つ組換えWRNヘリカーゼ
由来タンパク質に結合したことから、エピトープはC末
端領域に存在することが判明した。
【0034】
【表1】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ WRNヘリカーゼ アミノ酸 モノクローナル抗体 タンパク質 残基 3D12 4H12 4D9 4F8 8H3 ────────────────────────── ウェスタン ブロッティング 全長 1-1432 ○ ○ ○ ○ ○ C1201 232-1432 − ○ ○ ○ ○ C600 833-1432 ○ ○ × × × ────────────────────────── 免疫染色 全長 1-1432 ○ ○ ○ ○ ○ N1304 1-1304 × × − ○ − N1162 1-1162 − × − ○ − N1046 1-1046 × × ○ ○ ○ N368 1-368 × − ○ ○ ○ C138 1294-1432 × − − − − C128 1304-1432 × ○ − × − C79 1353-1432 × ○ − × − C69 1363-1432 × ○ − − − C59 1373-1432 × ○ − − − C49 1383-1432 × × − − − C19 1413-1432 × × − × − ────────────────────────── エピトープ 未決定 1373 232 232 232 〜1383 〜368 〜368 〜368 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0035】ヒトWRNヘリカーゼN末端領域の232〜368
アミノ酸中のエピトープを認識するモノクローナル抗体
8H3および、C末端領域の1373〜1432アミノ酸中のエピ
トープを認識する4H12の認識部位を図3に示す。また、
日本人の患者にみられる変異の位置も示した。
【0036】[実施例2] RecQ DNA ヘリカーゼの検出 2−1) 繊維芽細胞およびEBVでトランスフォームし
たBリンパ芽球様細胞を用いたWRNヘリカーゼの検出 健常者およびウェルナー症候群患者由来の繊維芽細胞を
用いて、内在性WRNヘリカーゼの検出を行った。生検に
より採取したヒト皮膚繊維芽細胞はMartinの方法により
培養した(G.M. Martin, 1978, Birth Defects. Orig.
Artic. Ser. 14: 5-39)。
【0037】ウェスタンブロット解析は、以下のように
実施した。細胞溶解物は、Tadaら(S. Tada et al., 19
96, Cell Struct. Funct. 21: 123-132)に記載されて
いるように、細胞のサブコンフルエント培養物から調製
した。およそ107の細胞を氷冷したPBSで洗浄し、沈殿さ
せ、10mM Tris-HClバッファー(pH7.4)、1% NP-40、0.1
% sodium deoxycholate、0.1% sodium dodecyl sulph
ate(SDS)、150mM NaCl、1mM ethylenediaminetetraacet
ateおよびプロテアーゼ阻害剤のカクテル(PharMingen,
CA)を含むRIPAバッファー中で溶解させ、20μgのタン
パク質を含む細胞抽出物の一部を7%SDS-ポリアクリル
アミドゲル上で電気泳動した。あらかじめ染色されたSD
S-PAGE標準蛋白質マーカー(Bio-Rad Laboratories In
c.,CA)を分子量の測定のために用いた。分子量マーカ
ーには、ミオシン(213kDa)、β-ガラクロシダーゼ(1
19kDa)、ウシ血清アルブミン(83kDa)、およびオバル
ブミン(47kDa)を含む。ゲルに展開した蛋白質をポリ
ビニルジフルオライド(PVDF)膜、Immobilon(Millipor
e,MA)に電気的に転写した。転写された膜を5%スキム
ミルクを含むTBS(20mM Tris-HCl,150mM NaCl,pH7.5)
で1時間処理した。次いで、膜は、WRNヘリカーゼに対す
る特異性および親和性において適度となるように希釈し
た抗体で4℃で一晩インキュベートした。次いで、膜を
洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗マウスIgG
(Dako,Denmark)と共にインキュベートした。再び洗浄
後、膜上のWRNヘリカーゼをECLTM(Amersham Life Scie
nce,UK)を用いて検出した。
【0038】WRNヘリカーゼのC末端を認識するモノク
ローナル抗体4H12を用いたウェスタンブロット解析の結
果を図4Aに示す。その結果、健常者から調製した細胞
抽出試料では、約180kDaのWRNヘリカーゼが検出された
(レーン3および4)。また、4H12のエピトープを持た
ないトランケートしたWRNヘリカーゼ(1〜1060アミノ酸
残基)を産生する4型変異をホモ(4/4)に持つ患者由来
の細胞においては、WRN特異的バンドは検出されなかっ
た(レーン1および2)。次に、健常者およびウェルナ
ー症候群患者由来のBリンパ球をEBVによりトランスフ
ォームさせた試料を用いて、N末端を認識するモノクロ
ーナル抗体8H3により、同様にウェスタンブロット解析
を行った(図4B)。
【0039】Bリンパ球は、パニング法(Lewis and Ka
min, 1980)により分離した。末梢血20mlからLymphocyte
Separation Medium(Organotechnika, Durham)を使っ
て、添付の説明書に従い遠心分離により末梢血由来の血
球細胞(PBL)を回収した。これを5%のウシ胎児血清を
含むPBSに懸濁し、アフィニティー精製ラビット抗ヒト
イムノグロブリン抗体(Organotechnika, Durham)がコ
ートされたポリスチレン培養フラスコへ移した。20℃1
時間静置後デカンテーションにより付着しなかった細胞
を除き、付着した細胞はPBSで5回洗浄した後、4mg/ml L
idocain-HClを含むPBS中で20℃15分間置き、ピペッティ
ングにより懸濁させて回収した。回収した細胞(Bリン
パ球)はPBSで洗浄した。
【0040】Bリンパ芽球様細胞は、先に述べたように
分離した抹消血白血球を、0.2μg/mlのサイクロスポリ
ン(Sandoz, Switzerland)存在下マーモセット細胞株B
95-8で増殖させたEBV(G. Miller, 1990, 「ウイルス学
(Virology)」, B. N. FieldsおよびK. M. Knipe編, R
aven Press, NY, pp. 1921-1958)を用いて文献(H.Tah
araら, 1997, Oncogene, 15: 1911-1920)に記載の方法
でトランスフォームさせ、Bリンパ芽球様細胞を得た。
【0041】その結果、健常者由来のBリンパ芽球様細
胞の抽出物では、180kDaの明瞭なバンドが検出された
(レーン3および4)が、4型変異をホモ(4/4)に持つ
患者由来の細胞においては、WRN特異的バンドは検出さ
れなかった(レーン1および2)。またこの結果から、
EBVによりトランスフォームさせたBリンパ芽球様細胞
の抽出物中の20μgのタンパク質(約2.5×105細胞)に
は、繊維芽細胞のそれよりも多くのWRNヘリカーゼ分子
が含まれることが判明した。
【0042】2−2) ホルボールエステルで処理した
Bリンパ球を用いたRecQ DNA ヘリカーゼの検出 上記と同様にして調製したBリンパ球細胞を、ホルボー
ルミリステートアセテート(PMA)で処理し、同様のウ
ェスタン解析を行った。抗体としては、抗WRNヘリカー
ゼ抗体(4H12)の他に、抗BLMヘリカーゼ抗体、抗RTSヘ
リカーゼ抗体、および抗RecQ1ヘリカーゼ抗体を用い
た。抗BLMヘリカーゼ抗体、抗RTSヘリカーゼ抗体、およ
び抗RecQ1ヘリカーゼ抗体(Tada, S. et al., 1996, Ce
ll Struct. Funct. 21(2): 123-32)は、大腸菌で各蛋
白質のC末断片を発現させ、これをウサギに免疫するこ
とにより作製したモノクローナル抗体である。また、抗
アクチン抗体を対照として用いた。その結果、未処理の
非活性化Bリンパ球では各RecQ DNA ヘリカーゼの発現
は検出されないか、されたとしてもごく僅かであった
が、PMA処理により調べた全てのRecQ DNA ヘリカーゼの
発現が著しく上昇することが判明した(図5)。各RecQ
DNA ヘリカーゼの発現は、EBVでトランスフォームさせ
たB細胞における発現と同等であるか、それを上回るも
のもあった。この結果から、PMAなどのホルボールエス
テル類により患者細胞を処理することにより、遺伝病の
免疫診断において非常に適したサンプルとなることが示
された。
【0043】2−3) トランスフォーメーションおよ
び不死化の影響 ヒト胎児肺由来の2倍体細胞株WI38を用いて、SV40によ
るトランスフォーメーションが及ぼすWRNヘリカーゼの
発現への影響を解析した。ウェスタンブロット解析の結
果、SV40によりトランスフォームさせたWI38(WI38/S
V)は、対照よりもWRNヘリカーゼタンパク質が著しく増
加していた(図6A;レーン1および2)。WI38/SVにお
けるWRNヘリカーゼの発現量は、HeLa細胞とほぼ同様
か、それよりわずかに多かった(レーン2および3)。
EBVによるトランスフォーメーションは、Bリンパ球の
寿命を最大160 PDLまで延ばすが、必ずしも細胞を不死
化させるわけではない(H. Tahara, 1997,Oncogene 15:
1911-1920)。トランスフォームさせたBリンパ芽球様
細胞を、10%ウシ胎児血清(Gibco BRL, NY)を含むRPM
I1640培地(Nissui Pharmaceutical Co. Lyd., Tokyo)
中で長期間継代することで選択された、強いテロメラー
ゼ活性を有する不死化した3株のBリンパ芽球様細胞株
を用いて、WRNヘリカーゼの発現をウェスタンブロット
で解析した。
【0044】その結果、不死化したBリンパ芽球様細胞
株(図6B;レーン4および6)は、不死化していない
(mortal)親細胞(図6B;レーン3および5)に比
べ、有意にWRNヘリカーゼの発現が高かった。また、末
梢血細胞より調製したトランスフォームさせていないB
リンパ球では、WRNヘリカーゼはほとんど検出されなか
った(図4B;レーン1および2)。
【0045】[実施例3] 患者細胞株 本実験で用いた36株(表2)の、エプシュタイン・バー
ル・ウイルス(EBV)でトランスフォームしたBリンパ
芽球様細胞株の内、26株はWRNヘリカーゼ遺伝子での変
異の有無が報告されているものである(T. Matsumotoら,
1997, Hum. Genet., 100: 123-130)。これら細胞株の
由来した患者および健常人の性、年齢、その WRNヘリカ
ーゼ遺伝子における変異は表2にまとめた。但し、表中
「*」で示した試料の変異は、本実施例により決定され
た。また、「**」で示した試料は、上記文献では両方の
アレルが未決定(「?/?」)であった。また、「?」の遺
伝子およびそのプロモーター領域の塩基配列を解析した
結果、「?」は、変異型1、4または6のいずれでもな
く、また、「WS6801」以外はプロモーター領域の変異で
もないことが判明した。また、「WS6801」は、プロモー
ター領域に関しては調べていない。「ND」は検査してい
ないことを表す。ウェスタンブロット解析は、後述の実
施例4の結果を表し、「+」は「4H12」抗体によるシグ
ナルが検出されたことを、「−」はされなかったことを
表す。
【0046】
【表2】 ──────────────────────────────── 健常者およびWRNの疑いのある患者由来のBリンパ芽球様細胞株リスト ──────────────────────────────── 細胞株 年齢/性 変異型 ウェスタンブロット解析 (実施例4参照) ──────────────────────────────── <第1群;正常> N0003 95/女性 ND + N0005 99/男性 ND + N0007 35/男性 -/- + N0008 51/男性 -/- + N0011 0/男性 ND + N0013 53/女性 ND + N0014 30/男性 ND + N6803 50/男性 ND + N0102 27/女性 1/- + ──────────────────────────────── <第2群;両アレルが遺伝的に決定> WS10001 46/男性 1/1 − WS0801 32/女性 4/4 − WS6104 32/男性 4/4 − WS2101 49/女性 4/4 − WS10801 38/女性 4/4 − WS24002 46/女性 4/4 − WS25401 47/女性 5/5 − WS11001 38/女性 6/6 − WS6201 40/女性 7/7 − WS11701 56/女性 8/8 − WS12001 52/男性 9/9 − WS11201 48/男性 10/10 − WS23703 39/男性 4/6 − ──────────────────────────────── <第3群;1つのアレルのみ決定> WS5801 43/男性 1/? − WS5802 40/男性 1/? − WS6401 40/男性 1/? − WS6501 50/女性 6/? − WS10901* 43/女性 4/? − WS11901 35/男性 4/? − WS12301** 42/男性 4/? − ──────────────────────────────── <第4群;両アレルが未決定> WS6801 45/女性 ?/? + WS8901 60/女性 ?/? + WS9001 46/女性 ?/? + WS9401 43/女性 ?/? + WS12101 46/女性 ?/? + WS12701* 54/男性 ?/? + WS14101* 63/男性 ?/? + ────────────────────────────────
【0047】[実施例4] 患者から得た試料のウェス
タンブロット解析による検査 細胞浮遊液を遠心して沈め、細胞のペレットを作った。
ペレットは、次のような組成のバッファーで溶かした;
10mM Tris-HCl(pH7.4),0.15M NaCl,1mM EDTA,1% N
P40,0.1% sodium deoxycholate,0.1% sodium dodec
yl sulfate(SDS),0.036u/ml DNase(Boehringer Ma
nnheim),1.75 mg/ml RNase(Boehringer Mannheim)
および x1 Protease Inhibitor カクテル(PharMingen
社,CA)。溶解した細胞抽出液中のタンパク質20μgを
7.5%のポリアクリルアミドゲルの電気泳動で分離後、P
olyvinylidine difluoride (PVDF)メンブレン(Immobil
on;ミリポア社)にトランスファーし、5%(w/v)のス
キムミルクを含むTris-buffered saline(20mM Tris-HC
l,150mM NaCl,PH7.5)(TBS)で1時間処理した。メ
ンブレンは希釈した「8H3」抗体または「4H12」抗体で
一晩、4℃でインキュベートした。メンブレンを洗浄し
た後に、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ウサギ抗マウ
スIgG(Dako社, Denmark)と反応させた。メンブレンを
洗浄した後、タンパク質の結合したメンブレンは、ECL
TM(Amersham Life Science社,UK)を用いて発色、現
像した。
【0048】N末端領域およびC末端領域に対する二つ
のモノクローナル抗体、「8H3」と「4H12」、のいずれ
を用いた場合でも、健常人から得られたEBVでトランス
フォームしたBリンパ芽球様細胞は、180kDa付近に検出
される組み換えWRNヘリカーゼ(N. Suzuki et al., 199
7, Nucl. Acids Res. 25: 2973-2978)と同じ位置に、
明瞭なバンド(WRNヘリカーゼ)が検出された(図
7)。一方、トランスフォームしていない健常人の末梢
血由来の血球細胞(PBL)では同じ位置にはるかに薄いW
RNヘリカーゼが認められるに過ぎなかった(図7の「00
07/PBL」および「0008/PBL」)。同様の実験を3回行っ
たが、ほとんど同じ結果を得た。また、健常者(母親が
ウェルナー症候群であり、本人はヘテロザイゴートのキ
ャリアー(1/-)である)由来のトランスフォームした
Bリンパ芽球様細胞 N0102は、N0007よりシグナルのバ
ンドが薄かった。
【0049】2つのアレルともに図3の4のタイプの変
異(4/4)を持つ患者(WS0801)では、WRNヘリカーゼの
シグナルは全く認められなかった。また、突然変異の不
明(?/?)なWS6801の患者には明瞭なWRNヘリカーゼの発
現が認められ、この患者はWRNではないと推定された。
したがって、この2つのモノクローナル抗体により患者
の細胞と健常人の細胞を見分けることができることが確
かめられた。
【0050】図8には、片側のアレルないし両側のアレ
ルの変異が不明な患者について行ったウェスタンブロッ
トの結果が示してある。第4群に属するWS8901、WS900
1、WS9401、WS12101、WS12701およびWS14101は両方のア
レルの変異が不明(表2中「(?/?)」と表記)であった
が、この検査により、いずれも正常と変わらないWRNヘ
リカーゼを発現し、WRN患者でないと判定された。一
方、片側のアレルに変異が認められていた第3群に属す
るWS5801、WS5802、WS6401、WS6501、WS10901、WS11901
およびWS12301の患者については、「8H3」抗体でも「4H
12」抗体でもWRNヘリカーゼの発現がまったく認められ
ず、WRN患者と判定された。
【0051】図9は、日本人に認められる8種類の変異
をそれぞれホモの形で両方のアレルに持つ患者について
調べた結果である。そうすると、変異1(WS10001)、5
(WS25401)および8(WS11701)については、N末に対する
「8H3」抗体で調べると、正常のWRNヘリカーゼより低分
子のところに薄いバンドが認められた(変異8について
はWRNヘリカーゼとほぼ同じ位置にも薄いバンドを認め
た)。しかし、C末端領域に対する「4H12」抗体で調べ
ると、これらの患者でもバンドは全く認められなかっ
た。したがって、これらのバンドは図3に示したよう
な、C末を欠如したペプチドであると考えられる。それ
以外の変異については、遺伝子産物のバンドは確認され
なかった。
【0052】以上の結果を表2にまとめた。C末端領域
に対する抗体(「4H12」)のシグナルの有無をそれぞれ
「+」および「-」で表した。表に示したように、健常者
由来のBリンパ芽球様細胞株は、0〜99歳までのものが
含まれるが、それらの全てでほぼ同じ量のシグナルが検
出された。よって、この検査は被験者の年齢によらず有
効であると考えられる。
【0053】[実施例5] 症状との比較 抗体による検査結果を、医師による患者の症状の診断と
比較した。その結果を表3にまとめた。表中「WB解析」
は、C末端領域に対する抗体(「4H12」)を用いたウェ
スタンブロット解析(シグナル陽性は「+」、陰性は
「−」)の結果を表す。
【0054】
【表3】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <第3群> 患者No. WS5801 WS5802 WS6401 WS6501 WS10901 WS11901 WS12301 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 変異型 1/? 1/? 1/? 6/? 4/? 4/? 4/? WB解析 − − − − − − − ───────────────────────────────── 近親婚の有無 + + + − − − − 特徴的な体型 + + + + + + + トリ様顔貌 + + + + + + + 白髪 + + + + + + − 声の変化 + + + + + + + 白内障 + + + + + + − 皮膚の硬化 + + + + + + + 角質増殖 + + + + + + − 皮膚潰瘍 − − + + + − − 皮下Ca沈着 + + + + + + − 糖尿病 + + + + + − − ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ <第4群> 患者No. WS6801 WS8901 WS9001 WS9401 WS12101 WS12701 WS14101 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 変異型 ?/? ?/? ?/? ?/? ?/? ?/? ?/? WB解析 + + + + + + + ───────────────────────────────── 近親婚の有無 + − + − − + − 特徴的な体型 − − − − − − − トリ様顔貌 − − − − − − − 白髪 + − + − + + + 声の変化 + − − + − − + 白内障 − + + − + − + 皮膚の硬化 + − + − − + − 角質増殖 + − + + − − + 皮膚潰瘍 − + + − − − − 皮下Ca沈着 − − − − − − − 糖尿病 + − − − − − + ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0055】その結果、第3群に属する患者は非常に高
い確率(計77中63; 82%)で陽性の症状を示すが、第4
群に属する患者は34%(77中26)と低かった。特に正常
WRNヘリカーゼと変わらないバンドが検出された7人の
患者のうちいずれもが、「特徴的な体型(characterist
ic habitas)」、「トリ様顔貌(bird-like face)」、
および「皮下Ca沈着(subcutaneous calcification)」
の症状を示さなかった。また、「声の変化」は一部に認
められるだけであった。それに対し、第3群の7人の患
者全てが「特徴的な体型」、「トリ様顔貌」、「声の変
化(voice change)」および「皮膚の硬化(skin scler
osis)」の症状が陽性であり、7人中6人が「白髪(gr
ay hair)」、「白内障(cataracts)」、「角質増殖
(hyperkeratosis)」、および「皮下Ca沈着」の症状が
陽性であった。即ち、上記の症状はウェルナー症候群と
本質的に相関しており、特に「特徴的な体型」、「トリ
様顔貌」、および「声の変化」の3つの症状は、ウェル
ナー症候群の診断にとって重要な症状であることが判明
した。
【0056】
【発明の効果】本発明によって、RecQ DNA ヘリカーゼ
ファミリー遺伝子の変異に起因する疾患の診断のために
用いられる抗体、および該抗体を用いるRecQ DNA ヘリ
カーゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾患の検査・
判定のための方法が提供された。本発明の方法を用いれ
ば、あらかじめ遺伝子変異を知る必要はなく、一律に複
数のサンプルに適用してウェルナー症候群を含む RecQ
DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾患
の検査を容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】WRNヘリカーゼに対するモノクローナル抗体を
用いたウェスタンブロット解析の結果を示す図である。
昆虫細胞を使ったバキュロウイルス系で作らせた精製WR
Nヘリカーゼ0.74μgに対するウェスタンブロット解析の
結果である。レーン1はクマシーブリリアントブルー染
色したWRNヘリカーゼ、レーン2および3はそれぞれC
末端領域(833〜1432アミノ酸残基)を抗原として作製
された3D12および4H12抗体、レーン4、5および6はそ
れぞれ全長WRNヘリカーゼを抗原として作製された4D9、
4F8、および8H3抗体の結果を表す。
【図2】4H12および8H3抗体のエピトープを決定した実
験の結果を示す図である。パネルAはマウスメラノーマ
細胞B16F10で発現したEGFPとの融合タンパク質であるWR
Nヘリカーゼの部分ペプチドC59(C末端59アミノ酸)お
よびC49(C末端49アミノ酸)を用いて4H12抗体のエピト
ープを決定した結果を示す。4H12抗体に結合したテキサ
スレッドの蛍光を右のパネルに、DAPIによるDNAと核の
染色を左のパネルに、EGFPの発現部位を示すEGFPの像を
中央のパネルに示す。核移行シグナル(NKRRCF)を有す
るC59は核に局在したが、C49は核に局在しなかった。パ
ネルBは8H3抗体のエピトープ決定の結果を示す。N368
は核移行シグナルを持たないため、EGFP-N368融合タン
パク質はB16F10細胞の細胞質に存在した。パネルCは8H
3抗体のエピトープをウェスタンブロット解析によりさ
らに詳しく解析した結果である。左はクマシーブリリア
ントブルー染色、右はウェスタンブロット解析の結果を
示す。バキュロウイルス発現系で作らせたWRNヘリカー
ゼ全長(レーン2)およびN末端231アミノ酸を欠く変
異WRNヘリカーゼ(レーン1)を8H3抗体で解析した。
【図3】モノクローナル抗体「8H3」および「4H12」の
認識部位、およびWRNヘリカーゼの変異部位を表す図で
ある。ヘリカーゼ領域を数字で示した矢印は、変異の位
置を表す。各数字に対応する、予想される変異遺伝子の
産物を「変異型ペプチド」として図示した。斜線の入っ
た部分はフレームシフトが起きている領域を表す。
【図4】健常者およびウェルナー症候群患者由来細胞の
ウェスタンブロット解析の結果を示す図である。パネル
Aはウェルナー症候群患者由来繊維芽細胞(レーン1お
よび2)および健常者由来繊維芽細胞(レーン3および
4)から抽出したタンパク質各20μgをWRNヘリカーゼの
C末端領域に認識する4H12抗体でウェスタンブロット解
析を行った結果を示す。レーン1は患者由来細胞#15501
(PDL14)、レーン2は患者由来細胞#10801(PDL 24)で
それぞれ4型変異をホモ(4/4)に有する。レーン3は
健常者由来細胞#TM36(PDL 20)、レーン4は正常プラ
イマリー培養細胞株WI38(PDL 24)。矢印は180kDaのWR
Nヘリカーゼの位置を示す。アスタリスクは4H12抗体に
より認識されるWRNヘリカーゼのプロテオリシスによる
デグラデーション産物を示す。パネルBはN末端領域
(232〜368アミノ酸)を認識する8H3抗体を用いて、健
常者およびウェルナー症候群患者由来のBリンパ球をEB
Vによりトランスフォームさせた試料のウェスタンブロ
ット解析を行った結果を表す。レーン1は患者由来細胞
#2101(PDL53)、レーン2は患者由来細胞#10801(PDL 3
6)でそれぞれ4型変異をホモ(4/4)に有する。レーン
3および4はそれぞれ健常者由来細胞#0003(PDL 53)
および#0005(PDL 18)。矢印は180kDaのWRNヘリカーゼ
の位置を示す。
【図5】PMA処理した健常者由来のBリンパ球のRecQ DN
A ヘリカーゼの発現を、ウェスタンブロットで解析した
結果を示す図である。抗WRNヘリカーゼ抗体、抗BLMヘリ
カーゼ抗体、抗RTSヘリカーゼ抗体、抗RecQ1ヘリカーゼ
抗体、および対照として抗アクチン抗体を用いた。「レ
スティング」は非活性化初代B細胞(resting primary
B-cell)であり、「+PMA」はこの細胞をを 50 ngのホル
ボールミリステートアセテート(PMA)とともに40時間
培養して刺激したもの、そしてN0008はEBVでトランスフ
ォームしたB細胞の結果を表す。
【図6】正常、トランスフォーム、および不死化の細胞
の状態におけるWRNヘリカーゼの発現の比較の結果を示
す図である。各20μgの細胞抽出タンパク質を用いた。
パネルA:レーン1は正常WI38細胞、レーン2はSV40で
トランスフォームしたWI38細胞、レーン3はHeLa細胞の
結果を示す。矢印は180kDaのWRNヘリカーゼの位置を示
す。アスタリスクは4H12抗体により認識されるWRNヘリ
カーゼのプロテオリシスによるデグラデーション産物を
示す。パネルB:レーン1および2はトランスフォーム
していない健常者末梢血由来のBリンパ球、レーン3
は、EBVによりトランスフォームした不死化していない
健常者末梢血由来のBリンパ芽球様細胞#0003(PDL 5
3)、レーン4は不死化した健常者末梢血由来のBリン
パ芽球様細胞#0003(PDL 269)、レーン5はEBVにより
トランスフォームした不死化していない健常者末梢血由
来のBリンパ芽球様細胞#0005(PDL 18)、レーン6は
不死化した健常者末梢血由来のBリンパ芽球様細胞#000
5(PDL 269)の結果を示す。
【図7】WRNヘリカーゼのウェスタンブロット解析を示
す図である。健常者(N0007およびN0102)ならびにWRN
様の症状を有する患者(WS0801およびWS6801)由来のEB
VでトランスフォームさせたBリンパ芽球様細胞株と、
男性健常者(0007/PBLおよび0008/PBL)由来の抹消血由
来の血球細胞(PBL)を使った結果を表す。AはWRNヘリ
カーゼのN末端領域を認識する「8H3」抗体、BはWRNヘ
リカーゼのC末端領域を認識する「4H12」抗体を使った
結果である。「rWRN」は、組換えWRNヘリカーゼ(全
長)を表す。
【図8】片側のアレルないし両側のアレルの変異が不明
な患者由来のBリンパ芽球様細胞株について、「8H3」
抗体または「4H12」抗体を用いたウェスタンブロット解
析を行った結果を示す図である。
【図9】変異をそれぞれホモの形で両方のアレルに持つ
患者由来のBリンパ芽球様細胞株について行ったウェス
タンブロット解析を示す図である。WS10001(1/1)、WS
25401(5/5)およびWS11701(8/8)は、「8H3」抗体では
サイズの小さい位置にシグナルが検出されたが、「4H1
2」抗体ではシグナルが検出されなかった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/53 G01N 33/53 D (72)発明者 松本 武久 神奈川県鎌倉市梶原200番地 株式会社エ イジーン研究所内 (72)発明者 後藤 眞 東京都練馬区関町南4丁目11番12号

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 RecQ DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子
    の変異に起因する疾患を検査するための、該RecQ DNA
    ヘリカーゼファミリータンパク質のC末端領域を認識す
    る抗体。
  2. 【請求項2】 モノクローナル抗体である、請求項1に
    記載の抗体。
  3. 【請求項3】 RecQ DNA ヘリカーゼファミリータンパ
    ク質がWRNヘリカーゼである、請求項1または2に記載
    の抗体。
  4. 【請求項4】 請求項1または2に記載の抗体を含む、
    RecQ DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子の変異に起因す
    る疾患の検査薬。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載の抗体を含む、ウェルナ
    ー症候群の検査薬。
  6. 【請求項6】 RecQ DNA ヘリカーゼファミリータンパ
    ク質のN末端領域を認識する抗体と、請求項1または2
    に記載の抗体との組み合わせを含む、RecQ DNA ヘリカ
    ーゼファミリー遺伝子の変異に起因する疾患の検査のた
    めのキット。
  7. 【請求項7】 WRNヘリカーゼのN末端領域を認識する
    抗体と、請求項3に記載の抗体の組み合わせを含む、ウ
    ェルナー症候群の検査のためのキット。
  8. 【請求項8】 RecQ DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子
    の変異に起因する疾患を検査するための方法であって、
    (a)患者の末梢血より血球細胞を調製する工程、
    (b)増殖刺激を受けた該血球細胞由来の試料に請求項
    1または2に記載の抗体を接触させる工程、および
    (c)該試料における該RecQ DNA ヘリカーゼファミリ
    ータンパク質を検出する工程、を含む方法。
  9. 【請求項9】 RecQ DNA ヘリカーゼファミリー遺伝子
    の変異に起因する疾患を検査するための方法であって、
    (a)患者の末梢血より血球細胞を調製する工程、
    (b)請求項1または2に記載の抗体とRecQ DNA ヘリ
    カーゼファミリータンパク質のN末端領域を認識する抗
    体をそれぞれ増殖刺激を受けた該血球細胞由来の試料に
    接触させる工程、および(c)それぞれの試料における
    該RecQ DNA ヘリカーゼファミリータンパク質を検出す
    る工程、を含む方法。
  10. 【請求項10】 ウェルナー症候群を検査するための方
    法であって、(a)患者の末梢血より血球細胞を調製す
    る工程、(b)増殖刺激を受けた該血球細胞由来の試料
    に請求項3に記載の抗体を接触させる工程、および
    (c)該試料における WRNヘリカーゼを検出する工程、
    を含む方法。
  11. 【請求項11】 ウェルナー症候群を検査するための方
    法であって、(a)患者の末梢血より血球細胞を調製す
    る工程、(b)請求項3に記載の抗体とWRNヘリカーゼ
    のN末端領域を認識する抗体をそれぞれ増殖刺激を受け
    た該血球細胞由来の試料に接触させる工程、および
    (c)それぞれの試料における WRNヘリカーゼを検出す
    る工程、を含む方法。
  12. 【請求項12】 工程(a)において、血球細胞からさ
    らにBリンパ球を調製する、請求項8〜11のいずれか
    に記載の方法。
  13. 【請求項13】 血球細胞に対する増殖刺激がエプシュ
    タイン・バール・ウイルス処理またはホルボールエステ
    ル処理である、請求項8〜12のいずれかに記載の方
    法。
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