JP2000186724A - 無励磁作動型電磁ブレーキまたはクラッチ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 永久磁石を用いてブレーキまたはクラッチの
アーマチュアとヨークを係合させ、電磁石を用いて係合
から釈放するタイプの無励磁作動型電磁ブレーキまたは
クラッチにおいて、係合からの釈放に要する時間を短縮
化する構造を提供することを課題とする。 【解決手段】 永久磁石を用いて係合させ、電磁石を用
いて係合から釈放する無励磁作動型電磁ブレーキまたは
クラッチにおいて、回転軸に固定されるハブを、従来の
アルミニウム系、１８−８ステンレス鋼などの非磁性体
材料に代えて、磁性体材料を用いることにより、永久磁
石からの磁束Ｍ１が、電磁コイルの励磁によって発生す
る磁束Ｍ２と対抗し、打消し合うときに、永久磁石から
の磁束Ｍ１の一部を前記磁性体ハブに漏洩させることが
でき、それによって電磁コイルによる磁束Ｍ２と対抗す
るべき永久磁石からの磁束Ｍ１が、ある程度減殺される
ことにより、該係合の釈放に要する時間を短縮される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、永久磁石を用いて
アーマチュアがヨークに吸引されて係合し、ブレーキま
たはクラッチとして作動し、電磁石を用いてこの係合か
ら釈放するタイプの電磁ブレーキまたはクラッチ、即ち
永久磁石無励磁作動型電磁ブレーキまたはクラッチに関
し、特に無励磁作動型電磁ブレーキまたはクラッチの釈
放に要する時間が短縮される電磁ブレーキまたはクラッ
チに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、この種の電磁ブレーキまたはクラ
ッチにおいては、永久磁石にはインダクタンス（電気抵
抗）が存在しないためブレーキまたはクラッチ作動時、
即ち係合接続時における吸引動作が極めて早い。しか
し、その反面係合からの釈放が比較的に緩慢であった。
例えばハイトルクモータなど極く短時間で回転トルクが
立ち上がるときは釈放時間が遅いと所謂‘つれ回り'が
発生し、時にはブレーキやモータの焼損の原因ともなる
という不都合があった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】係合からの釈放が緩慢
になる理由として、アーマチュアと、それに接触又は離
脱するヨークとの同軸精度が挙げられる。即ち、図１
は、アーマチュア３とそれと接触するヨーク６の先端部
とが半径方向に位置的に整合されている場合、即ち同軸
精度の十分な場合を示すが、図２はその同軸精度が不十
分な場合を示す。即ち、アーマチュアとヨークとの製
造、組立時の誤差等に起因して、図示のように半径方向
の寸法の精度、つまり同軸精度がδだけずれているよう
な場合には、永久磁石から図示のようなＦ１、Ｆ２とい
う‘もれ磁束'が発生する。尚、このδは、現象を明ら
かにするため図面上では実際よりも大きく誇張されて描
かれている。この‘もれ磁束'が存在するため、アーマ
チュアはヨーク側へ常時吸引され、永久磁石からの磁石
Ｍ１と電磁コイルからの磁束Ｍ２とが対抗し打消し合う
時に、この‘もれ磁束'Ｆ１、Ｆ２が十分に打消されず
に残留するため、永久磁石によりアーマチュアがヨーク
側へ吸引される力成分が残留し、その結果ブレーキまた
はクラッチの係合状態からの釈放が緩慢となってしまう
という不都合があった。本発明は上記従来技術の課題を
解決するようにした電磁ブレーキまたはクラッチにおけ
る係合状態からの釈放時間短縮化を目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、このような従
来技術の問題点を解決するために、永久磁石を用いてア
ーマチュアとヨークを係合させ、電磁石を用いて該係合
から釈放するタイプの電磁ブレーキまたはクラッチにお
いて、回転軸に固定されたハブとして、従来使用されて
いたアルミニウム、オーステナイト系の１８−８ステン
レス鋼などの非磁性材料に代えて磁性体材料を用いるこ
とにより、該永久磁石による磁束Ｍ１が該電磁コイルの
励磁によって発生する磁束Ｍ２と対抗し打消し合うとき
に、永久磁石からの磁束Ｍ１の一部を磁性体ハブに漏洩
させることができ、それによって電磁石からの磁束Ｍ２
と対抗すべき永久磁石からの磁束Ｍ１が一部減殺される
ことにより該係合から釈放に要する時間を短縮すること
が可能となった。尚、ヨーク６が取り付けられるＰが固
定体の場合はブレーキとして、Ｐが回転体、つまり回転
可能にされている場合はクラッチとなり、作用は全く同
様なので以下は電磁ブレーキとして使用される場合につ
いて説明する。原理的には永久磁石と電磁石のみでも作
動できるが、作動を円滑にするため永久磁石による吸引
力に抗する板バネなどを使用する。

【０００５】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につき
図面を参照して説明する。図１は、本発明の実施の形態
を示す概略断面図であって、図示しないモータなどによ
り回転される回転軸１に固定されて一体に回転するハブ
２には、板バネ４を介してアーマチュア３が取り付けら
れている。板バネ４は中央に低い突部のある中空円環状
で外方の端部はアーマチュアに、中央に近い部分がハブ
にネジ止めされている。アーマチュア３の外方周縁部に
は永久磁石５が取り付けられている。基盤Ｐに固定され
た電磁ブレーキのヨーク６には、その凹部に電磁コイル
７が装着されている。電磁コイル７が励磁されていない
場合、いわゆる、無励磁状態では、永久磁石５から発生
する実線の矢印で示す磁束Ｍ１によってアーマチュア３
は板バネ４の弾性力に抗してヨーク６に吸着される。こ
のようにアーマチュアとヨークとが係合されると、ハブ
３と一体に回転する回転軸１の回転に制動がかけられ
る。一方、その状態で電磁コイル７が励磁されると、電
磁コイル７により点線の矢印で示す磁束Ｍ２が生じて、
永久磁石からの磁束Ｍ１と対抗し、打消し合って永久磁
石による磁束Ｍ１は弱められるため板バネ４の弾性力に
よってアーマチュア３はヨーク６の端面から離脱する。
即ち、アーマチュアとヨークとの係合は解除される。

【０００６】従来のこの種の電磁ブレーキにおいては、
ハブは通常アルミニウムや１８−８ステンレス鋼等の非
磁性体が使用されていた。そのため、前段落の［発明が
解決しようとする課題］の欄で述べたように、‘もれ磁
束'が発生した場合に、それを吸収する手段がなく、そ
のため前述のような不都合が生じていた。本発明では、
ハブ２に鉄系等の磁性体材料を用いることによって、こ
のもれ磁束Ｆ１、Ｆ２をハブ側に吸収し、それによって
永久磁石からの磁束Ｍ１と電磁石からの磁束Ｍ１との対
抗、打ち消しをより効率化するものである。それによっ
て係合からの釈放に要する時間を短縮することが可能と
なる。

【０００７】図３は、電磁コイル７へ印加する電圧
（Ｖ）または電流（Ｉ）と、電磁コイルの励磁によって
発生する吸引力（Ｋｇｆ）との関係を示すグラフで、実
線は本発明の吸引力ｆ１、点線は従来の吸引力ｆ２であ
る。図でＳは永久磁石５による磁束Ｍ１と、コイル７の
電流による磁束Ｍ２とがバランスされる位置である。図
で明らかなように、従来の吸引力ｆ２は図２に示す‘も
れ磁束'Ｆ１、Ｆ２のために、電圧（電流）が零付近で
板バネのリリーズ力Ｓ２と差があまり大きくないが、本
発明の吸引力ｆ１は‘もれ磁束'Ｆ１、Ｆ２がヨーク６
側にはほとんどないので、電圧（電流）が零付近で板バ
ネのリリーズ力Ｓ１との差が大きいので釈放時間が早
く、安定が維持され、更に釈放電圧範囲が図３に示すよ
うに広く、製作、調整に有利になる。

【０００８】

【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば永久
磁石からのもれ磁束Ｆ１及びＦ２が、磁性体材料からな
るハブに吸収されるので、その分だけアーマチュアのヨ
ーク側への吸引が弱められることになり、そのために見
かけ上ヨークへの反発力がアップすることになる。その
結果、係合からの釈放動作が迅速となるのみならず、係
合からの釈放中は、永久磁石からの磁束Ｍ１の一部がハ
ブ側に常時漏洩されるのでアーマチュアのヨーク側への
吸引力が弱められる結果、係合からの釈放動作が持続的
に維持され安定化する。また、アーマチュアとそれに接
触するヨークとの製造、組立時の同軸精度が不十分な場
合であっても、係合釈放時間の短縮化が可能であり、更
に、ブレーキまたはクラッチを釈放するに要する電圧／
電流の範囲が大幅に拡大されるという実用上顕著な効果
を発揮できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施の形態を示す概略側断面図であ
る。

【図２】本発明が解決しようとする課題を説明するため
の概略側断面図である。

【図３】本発明のクラッチ釈放電圧範囲を従来例と比較
して示すグラフである。

【符号の説明】

１：回転軸 ２：ハブ ３：アーマチュア ４：板バネ ５：永久磁石 ６：ヨーク ７：電磁コイル Ｍ１：永久磁石からの磁束 Ｍ２：電磁石からの磁束 Ｆ１、Ｆ２：もれ磁束 δ：同軸精度のずれ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 永久磁石を用いてアーマチュアとヨーク
   を係合させ、電磁石を用いて、前記の係合から釈放する
   タイプの無励磁作動型電磁ブレーキまたはクラッチにお
   いて、回転軸に固定されたハブに磁性体材料を用いるこ
   とにより、前記永久磁石からの磁束Ｍ１が、前記電磁コ
   イルの励磁によって発生する磁束Ｍ２と対抗し打消し合
   うときに、前記永久磁石からの磁束Ｍ１の一部を前記ハ
   ブに漏洩させ、それによって前記電磁コイルによる磁束
   Ｍ２と対抗するべき前記永久磁石からの磁束Ｍ１が一部
   減殺されることにより、該係合からの釈放に要する時間
   が短縮されることを特徴とする係合からの釈放時間が短
   縮される無励磁作動型電磁ブレーキまたはクラッチ。
2. 【請求項２】 請求項１記載の無励磁作動型電磁ブレー
   キまたはクラッチにおいて、アーマチュアとそれに接触
   するヨークとの製造、組立時の同軸精度が不十分な場合
   であっても、前記アーマチュアに設けられた永久磁石か
   らの磁束Ｍ１のもれ磁束Ｆ１、Ｆ２が前記磁性体ハブに
   漏洩するようにされることにより、該クラッチの釈放に
   要する時間が短縮されることを特徴とする係合からの釈
   放時間が短縮される無励磁作動型電磁ブレーキまたはク
   ラッチ。
3. 【請求項３】 請求項１記載の無励磁作動型電磁ブレー
   キまたはクラッチにおいて、クラッチ釈放中において
   も、前記永久磁石からの磁束Ｍ１が磁性体のハブ側に漏
   洩され、前記アーマチュアが前記ヨーク側へ吸引される
   力が弱められ、クラッチ釈放動作が持続的に維持され安
   定化することを特徴とする係合からの釈放時間が短縮さ
   れる無励磁作動型電磁ブレーキまたはクラッチ。