JP2000173453A - 電子放出素子、電子源、画像形成装置の製造方法 - Google Patents

電子放出素子、電子源、画像形成装置の製造方法

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JP2000173453A
JP2000173453A JP34856298A JP34856298A JP2000173453A JP 2000173453 A JP2000173453 A JP 2000173453A JP 34856298 A JP34856298 A JP 34856298A JP 34856298 A JP34856298 A JP 34856298A JP 2000173453 A JP2000173453 A JP 2000173453A
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electron
voltage
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vacuum
substrate
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JP34856298A
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Yoshitaka Arai
由高 荒井
Miki Tamura
美樹 田村
Keisuke Yamamoto
敬介 山本
Rie Ueno
理恵 上野
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高輝度で高品位な画像形成を可能とする画像
表示装置の電子源として適用可能な電子放出素子を提供
する。 【解決手段】 素子電極2,3間に、電子放出部5を含
む導電性膜4を有する電子放出素子の製造に際し、導電
性膜4に高抵抗部からなる電子放出部5を形成した後、
オレフィン系炭化水素と窒素から構成される混合気体中
で、基板1を加熱しながら素子電極2,3間に電圧を印
加して活性化処理を施す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子放出素子、該
電子放出素子を用いた電子源、該電子源を用いて構成し
た表示装置や露光装置等の画像形成装置の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】従来、電子放出素子には大別して熱電子
放出素子と冷陰極電子放出素子の2種類が知られてい
る。冷陰極電子放出素子には電界放出型(以下、「FE
型」と称す。)、金属/絶縁層/金属型(以下、「MI
M型」と称す。)や表面伝導型電子放出素子等が有る。
【0003】FE型の例としては、W.P. Dyke
and W.W. Dolan,“Field Em
ission”, Advance in Elect
ron Physics, 8,89(1956)ある
いはC.A. Spindt, “Physical
Properties of thin−filmfi
eld emission cathodes wit
h molybdenum cones”, J. A
ppl. Phys. ,47,5248(1976)
等に開示されたものが知られている。
【0004】MIM型の例としては、C.A. Mea
d, “Operation ofTunnel−Em
ission Devices”, J. Appl.
Phys., 32,646(1961)等に開示され
たものが知られている。
【0005】表面伝導型電子放出素子の例としては、
M.I. Elinson, Radio Eng.
Electron Phys., 10,1290(1
965)等に開示されたものがある。
【0006】表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成
された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流すことに
より、電子放出が生ずる現象を利用するものである。こ
の表面伝導型電子放出素子としては、前記エリンソン等
によるSnO2 薄膜を用いたもの、Au薄膜によるもの
[G.Dittmer:“Thin Solid Fi
lms”, 9,317(1972)]、In23
SnO2 薄膜によるもの[M.Hartwell an
d C.G. Fonstad:“IEEETran
s. ED Conf.”, 519(1975)]、
カーボン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26
巻、第1号、22頁(1983)]等が報告されてい
る。
【0007】これらの表面伝導型電子放出素子の典型的
な例として、前述のM.ハートウェルの素子構成を図1
7に模式的に示す。同図において1は絶縁性基板であ
る。4は電子放出部形成用の導電性膜で、H型形状のパ
ターンに形成された金属酸化物薄膜等からなり、後述の
フォーミングと呼ばれる通電処理により電子放出部5が
形成される。尚、図中のL’は0.5〜1mm、W’は
0.1mmで設定されている。
【0008】フォーミングとは、前記導電性膜4の両端
に直流電圧あるいは非常にゆっくりとした昇電圧例えば
1V/分程度を印加し、導電性膜4を局所的に破壊、変
形もしくは変質せしめ、周囲より電気的に高抵抗な状態
にした電子放出部5を形成することである。尚、電子放
出部5では導電性膜4の一部に亀裂が発生しており、そ
の亀裂付近から電子放出が行われる。
【0009】上記フォーミング処理をした表面伝導型電
子放出素子は、導電性膜4に電圧を印加し、素子に電流
を流すことにより、上述電子放出部5より電子を放出せ
しめるものである。
【0010】また、例えば特開平7−235255号公
報に開示されているように、フォーミングを終えた素子
に対して活性化と呼ばれる処理を施す場合がある。活性
化工程は、有機物質を含有する雰囲気下で、素子にパル
ス電圧の印加を繰り返すことで行うことができる。この
処理により、雰囲気中に存在する有機物質から、炭素ま
たは炭素化合物を主成分とする膜が素子上に堆積し、素
子電流If ,放出電流Ie が、著しく変化するようにな
る。
【0011】上述の表面伝導型電子放出素子は、構造が
単純で製造も容易であることから、大面積にわたり多数
素子を配列形成できる利点がある。そこで、この特徴を
生かせるようないろいろな応用が研究されている。例え
ば、荷電ビーム源、表示装置等が挙げられる。
【0012】多数の表面伝導型電子放出素子を配列形成
した例としては、並列に表面伝導型電子放出素子を配列
し、個々の表面伝導型電子放出素子の両端を配線にて夫
々結線した行を多数行配列した電子源が挙げられる(例
えば、特開昭64−31332号公報、特開平1−28
3749号公報、特開平2−257552号公報)。
【0013】また、特に表示装置等の画像形成装置にお
いては、近年、液晶を用いた平板型表示装置が、CRT
に替わって普及してきたが、自発光型でないため、バッ
クライト等を持たなければならない等の問題があり、自
発光型の表示装置の開発が、望まれてきた。
【0014】表面伝導型電子放出素子を多数配置した電
子源と、この電子源より放出された電子によって可視光
を発光せしめる蛍光体とを組み合わせた表示装置である
画像形成装置は、大面積の装置でも比較的容易に製造で
き、かつ表示品位の優れた自発光型表示装置である(例
えば、アメリカ特許第5066883号)。
【0015】尚、従来、多数の表面伝導型電子放出素子
より構成された電子源より、電子放出をし、蛍光体の発
光をさせる素子の選択は、上述の多数の表面伝導型電子
放出素子を並列に配置し結線した配線(行方向配線と呼
ぶ)と、該電子源と蛍光体間の空間に行方向配線と直交
する方向(列方向と呼ぶ)に設置された制御電極(グリ
ッド電極と呼ぶ)への適当な駆動信号によるものである
(例えば、特開平1−283749号公報等)。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】前記電子源、画像形成
装置等に用いられる表面伝導型電子放出素子について
は、明るく均一な表示画像を安定して提供できるような
素子の開発が進められている。表面伝導型電子放出素子
の一対の対向する素子電極に電圧を印加したとき、素子
電流If と真空中に放出される放出電流Ie との電流比
を効率と称し、効率が高い素子、つまり、素子電流は小
さく、放出電流は大きい電子放出素子が望ましい。
【0017】本発明者は、電子放出特性を決定する要因
として、電子放出部の構造が寄与すると考えている。活
性化処理を施した場合には、フォーミングにより形成し
た亀裂である間隙内の基板上及び間隙近傍の導電性膜上
に炭素を有する膜が堆積し、この結果、電子放出特性が
大きく変化する。安定で制御された電子放出特性と、電
子放出効率の向上が実現すれば、例えば蛍光体を画像形
成部材とする画像形成装置においては、低電流で明るい
高品位な画像形成装置、例えばフラットテレビが実現さ
れる。また、低電流化に伴い、画像形成装置を構成する
駆動回路等も安価になることも期待できる。
【0018】しかしながら、これら表面伝導型電子放出
素子の真空中の挙動には、未解明点が存在し、さらなる
電子放出特性の向上と安定した電子放出が望まれてい
る。本発明者の検討の結果、このうち放出電流Ie につ
いては、炭素を有する膜中に包含される窒素量によって
左右されることが判明した。すなわち、活性化を行って
炭素を有する膜を堆積する場合、炭素を有する膜中の窒
素含有量を制御するようなプロセスを導入すると、条件
によっては高い効率を示すことを見いだした。放出電流
e が窒素含有量で変化する要因としては、窒素を炭素
を有する膜中に包含することで、仕事関数の低下、ある
いは、電子散乱係数の増加があるためと考えている。
【0019】一方、上述の電子放出素子の製造プロセス
には、真空排気を要する工程が含まれる。各工程で、高
い真空度まで装置を排気することは、高価な真空排気装
置を必要とする上に、真空排気完了までの時間を要し、
装置もそれなりの密閉性を持たなくてはならない。さら
に、この電子放出素子を備えた電子源、もしくはこの電
子源を使用した画像形成装置でも、このようなプロセス
で電子放出素子を作成する場合には、製造過程において
真空排気工程を要し、製造コストが嵩むこととなる。も
ちろん、最終的な電子放出は真空下で行われるが、製造
段階での真空排気工程はできるだけ少なく、製造方法も
できるだけ単純であることが望ましい。
【0020】本発明は、上記問題を鑑み、効率が高く、
安定な電子放出特性を実現できる表面伝導型電子放出素
子の製造方法とそれを用いた電子源の製造方法及び画像
形成装置の製造方法を提供するものである。また、本発
明の別の目的は、効率が高く、安定な電子放出特性を実
現できる表面伝導型電子放出素子を、高真空まで排気す
る工程を要さない、簡単なプロセスで作成する製造方法
を提供し、さらにそれを用いた電子源及び画像形成装置
の製造方法を提供するものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明は、上述した課題
を解決するために鋭意検討を行って成されたものであ
り、下述する構成のものである。
【0022】すなわち、本発明は、基体上に形成された
一対の電極間を接続する導電性膜の一部に間隙を形成す
る工程と、該間隙内の該基体上および、該導電性膜上に
炭素を有する膜を形成する工程とを有し、該炭素を有す
る膜を形成する工程が、炭化水素ガスと、窒素ガスとを
含むガスを前記間隙に接触させた状態で、前記基体を加
熱しながら前記一対の電極間に電圧を印加する工程であ
る、ことを特徴とする電子放出素子の製造方法である。
【0023】好ましくは、前記炭化水素ガスと窒素ガス
とを含むガスの全圧が、1.3×101 〜6.7×10
4 Paであり、前記炭化水素の分圧が、1.3×100
〜1.3×102 Paであり、前記基体を加熱する温度
が、50℃〜200℃である。
【0024】また、前記炭化水素ガスは、標準状態で気
体であるメタン、エタン、プロパン、ブタン等の飽和炭
化水素、および、エチレン、プロピレン、ブテン、アセ
チレン等の不飽和炭化水素より成る群より選ばれるのが
望ましいが、蒸気圧の高いものであれば、標準状態で液
体あるいは固体である炭化水素を加熱して使用すること
もできる。
【0025】また本発明は、基体上に電子放出素子を複
数配列形成した電子源の製造方法において、該電子放出
素子を上記本発明の電子放出素子の製造方法により製造
することを特徴とする電子源の製造方法である。
【0026】さらに本発明は、電子源と、画像形成部材
とを有する画像形成装置の製造方法において、該電子源
を上記本発明の電子源の製造方法により製造することを
特徴とする画像形成装置の製造方法である。
【0027】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の好ましい実施態
様について述べる。
【0028】まず、本発明にかかわる表面伝導型電子放
出素子の基本的な構成について説明する。
【0029】図1の(a)、(b)は、それぞれ、本発
明にかかわる基本的な平面型の表面伝導型電子放出素子
の構成を模式的に示す平面図及び断面図である。図1に
おいて、1は基板、2と3は電極(素子電極)、4は導
電性膜、5は電子放出部、10は炭素を有する膜であ
る。
【0030】基板1としては、石英ガラス、Na等の不
純物含有量を減少させたガラス、青板ガラス、青板ガラ
スにスパッタ法等によりSiO2 を積層した積層体及び
アルミナ等のセラミックス等が挙げられる。
【0031】対向する素子電極2,3の材料としては導
電性を有するものであればどのようなものであっても構
わないが、例えばNi、Cr、Au、Mo、W、Pt、
Ti、Al、Cu、Pd等の金属或は合金及びPd、A
g、Au、RuO2 、Pd−Ag等の金属或は金属酸化
物とガラス等から構成される印刷導体、In23 −S
nO2 等の透明導電体及びポリシリコン等の半導体材料
等が挙げられる。
【0032】素子電極間隔L、素子電極の長さW、導電
性膜4の形状等は、この素子の応用形態等によって適宜
設計され、例えば、後述する表示装置で、テレビジョン
等では、画像サイズに対応した画素サイズが設計され、
とりわけ、高品位TVでは、画素サイズが小さく、高精
細さが要求される。そのため、電子放出素子のサイズが
限定されたなかで、十分な輝度を得るためには、十分な
放出電流が得られるように設計される。
【0033】素子電極間隔Lは、数百Å〜数百μmであ
り、素子電極の製法の基本となるフォトリソグラフィー
技術、すなわち、露光機の性能とエッチング方法等、及
び、素子電極間に印加する電圧等により設定されるが、
好ましくは、数μm〜数十μmである。
【0034】素子電極の長さW、及び、膜厚dは、電極
の抵抗値、前述した配線との結線、多数配置された電子
源の配置上の問題より適宜設計され、通常は、素子電極
の長さWは、数μm〜数百μmであり、素子電極の膜厚
dは、数百Å〜数μmである。
【0035】基板1上に設けられた対向する素子電極2
と素子電極3上に導電性膜4が配された場合を図1に示
したが、図1に示された場合だけでなく、素子電極2,
3上には導電性膜4が形成されない場合もある。すなわ
ち、基板1上に、導電性膜4、対向する素子電極2,3
の順に積層構成した場合である。導電性膜4の膜厚は、
好ましくは数Å〜数千Åで、特に好ましくは10Å〜5
00Åであり、素子電極2,3へのステップカバレー
ジ、電子放出部5と素子電極2,3間の抵抗値及び、後
述する通電処理条件等によって、適宜設定される。その
抵抗値は、103〜107 Ω/□のシート抵抗値を示
す。
【0036】導電性膜4を構成する材料の具体例を挙げ
るならば、Pd、Ru、Ag、Au、Ti、In、C
u、Cr、Fe、Zn、Sn、Ta、W、Pb等の金
属、PdO、SnO2 、In23 、PbO、Sb2
3 等の酸化物、HfB2 、ZrB2 、LaB6 、CeB
6 、YB4 、GdB4 等の硼化物、TiC、ZrC、H
fC、TaC、SiC、WC等の炭化物、TiN、Zr
N、HfN等の窒化物、Si、Ge等の半導体、カーボ
ン、AgMg、NiCu、PbSn等であり、微粒子か
らなる微粒子膜である。
【0037】なおここで述べる微粒子膜とは、複数の微
粒子が集合した膜であり、その微細構造は、微粒子が個
々に分散配置した状態あるいは微粒子が互いに隣接、あ
るいは重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、
全体として島状構造を形成している場合も含む)をとっ
ている。微粒子の粒径は、数Å〜数千Åの範囲、好まし
くは、10Å〜200Åの範囲である。
【0038】なお、本明細書では頻繁に「微粒子」とい
う言葉を用いるので、その意味について説明する。
【0039】小さな粒子を「微粒子」と呼び、これより
も小さなものを「超微粒子」と呼ぶ。「超微粒子」より
もさらに小さく、原子の数が数百個程度以下のものを
「クラスター」と呼ぶことは広く行われている。
【0040】しかしながら、それぞれの境は厳密なもの
ではなく、どの様な性質に注目して分類するかにより変
化する。また「微粒子」と「超微粒子」を一括して「微
粒子」と呼ぶ場合もあり、本明細書中での記述はこれに
沿ったものである。
【0041】「実験物理学講座14 表面・微粒子」
(木下是雄 編、共立出版 1986年9月1日発行)
では次のように記述されている。
【0042】「本稿で微粒子と言うときにはその直径が
だいたい2〜3μm程度から10nm程度までとし、特
に超微粒子というときは粒径が10nm程度から2〜3
nm程度までを意味することにする。両者を一括して単
に微粒子と書くこともあってけっして厳密なものではな
く、だいたいの目安である。粒子を構成する原子の数が
2個から数十〜数百個程度の場合はクラスターと呼
ぶ。」(195ページ 22〜26行目)
【0043】付言すると、新技術開発事業団の“林・超
微粒子プロジェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径
の下限はさらに小さく、次のようなものであった。
【0044】「創造科学技術推進制度の“超微粒子プロ
ジェクト”(1981〜1986)では、粒子の大きさ
(径)がおよそ1〜100nmの範囲のものを“超微粒
子”(ultra fine particle)と呼
ぶことにした。すると1個の超微粒子はおよそ100〜
108 個くらいの原子の集合体という事になる。原子の
尺度でみれば超微粒子は大〜巨大粒子である。」(「超
微粒子−創造科学技術」林主税、上田良二、田崎明
編;三田出版 1988年 2ページ1〜4行目)/
「超微粒子よりさらに小さいもの、すなわち原子が数個
〜数百個で構成される1個の粒子は、ふつうクラスター
と呼ばれる」(同書2ページ12〜13行目)
【0045】上記のような一般的な呼び方をふまえて、
本明細書において「微粒子」とは多数の原子・分子の集
合体で、粒径の下限は数Å〜10Å程度、上限は数μm
程度のものを指すこととする。
【0046】電子放出部5は、導電性膜4の一部に形成
された間隙と、間隙内の基板上及び間隙近傍の導電性膜
上に形成された炭素を有する膜で構成される。尚、図1
では導電性膜に形成された間隙よりも狭い間隙を置いて
炭素を有する膜が対向配置されているが、炭素を有する
膜は上記した導電性膜に形成された間隙よりも狭い間隙
の一部でつながっている場合もある。
【0047】また、炭素を有する膜10は、窒素を含有
する炭素もしくはアモルファスカーボンから構成され
る。この炭素を有する膜10の役割については、導電性
膜4の一部として機能し、また、電子放出部5を構成す
る物質として電子放出特性を支配することが分かってい
る。本発明の製造方法においては、炭化水素と窒素の混
合気体の減圧雰囲気下で活性化を施すが、混合気体の窒
素分圧を変化させることで、炭素を有する膜中の窒素量
が制御される。
【0048】また、電子放出素子を形成する基体を加熱
することは、H2 Oなど活性化時に炭素を有する膜が堆
積する堆積反応の阻害要因となりうる成分の反応部位へ
の吸着を防ぐと考えられる。その結果として炭化水素ガ
スの分解とその後の炭素を有する膜の堆積反応が促進さ
れ、同時に、窒素の分解と堆積物である炭素を有する膜
への含有がより効率的に行われる。
【0049】炭素を有する膜10は、導電性と強電界下
での安定性を有しているが、過剰の窒素を包むと半導体
的性質をもつので、適正な範囲がある。また、窒素含有
量が多いと熱的に不安定になるので、この点でも適正な
範囲が規定される。
【0050】また、本発明の製造方法では、炭化水素ガ
スと窒素との混合ガスの全圧は、1.3×101 〜6.
7×104 Paの範囲であり、所謂粘性流領域である。
【0051】粘性流領域の導入圧力とは、混合ガスを構
成する気体分子の平均自由行程λが、電子放出素子が設
置された空間内部の代表的寸法値(例えば、真空容器の
内径もしくは、後述する画像形成装置における基板とフ
ェースプレートとの距離)に比べて、十分小さくなる程
度の圧力以上とする。
【0052】以下、活性化工程を粘性流領域で行う技術
的な意味について説明する。活性化工程は、電子衝突あ
るいはジュール熱により、炭化水素の分解、重合を生じ
させると考えられる。
【0053】本発明では、活性化工程において粘性流領
域の導入圧力を使用するために、炭素を有する膜を形成
する速度が増加する。加えて、活性化工程を、上記のよ
うに粘性流領域の圧力で行うことにより、真空装置を用
いる場合に比べ、装置が簡易になったことはもちろん、
真空装置内を排気するのに必要な時間を省略することが
でき、製造に必要な時間を短縮することが出来る。
【0054】本発明の製造方法で作成された表面伝導型
電子放出素子の電子放出特性が、窒素含有量で変化する
要因として、窒素を炭素を有する膜中に含有すること
で、仕事関数の低下、あるいは、電子散乱係数の増加が
あるものと現在のところ考えている。
【0055】次に、本発明にかかわる別な構成の表面伝
導型電子放出素子である垂直型の表面伝導型電子放出素
子について説明する。
【0056】図2は基本的な垂直型の表面伝導型電子放
出素子の構成を示す模式的図面である。図2において、
図1と同一の符号のものは、同一である。
【0057】基板1、素子電極2,3、導電性膜4、電
子放出部5、炭素を有する膜10は、前述した平面型の
表面伝導型電子放出素子と同様の材料で構成されたもの
である。
【0058】21は段差形成部である。段差形成部21
は、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で形成されたS
iO2 等の絶縁性材料で構成され、段差形成部21の膜
厚が、先に述べた平面型の表面伝導型電子放出素子の素
子電極間隔Lに対応し、数十nm〜数十μmであり、段
差形成部の製法、及び、素子電極間に印加する電圧等に
より設定されるが、好ましくは、数十nm〜数μmであ
る。
【0059】導電性膜4は、素子電極2,3と段差形成
部21作成後に形成するため、素子電極2,3の上に積
層される。
【0060】本発明の電子放出素子の製造方法の一例を
図3に示す。尚、図3中、4は導電性膜で例えば微粒子
膜が挙げられる。
【0061】以下、図1及び図3に基づいて本発明の製
造方法の一例を順をおって説明する。
【0062】1)基板1を洗剤、純水及び有機溶剤によ
り十分に洗浄後、真空蒸着法、スパッタ法等により素子
電極材料を堆積後、フォトリソグラフィー技術を用いて
該基板1の面上に素子電極2,3を形成する(図3
(a))。
【0063】2)基板1上に設けられた素子電極2と素
子電極3との間に、有機金属溶液を塗布して放置するこ
とにより、有機金属薄膜を形成する。尚、有機金属溶液
とは、前述の導電性膜材料の金属を主元素とする有機化
合物の溶液である。この後、有機金属薄膜を加熱焼成処
理し、リフトオフ、エッチング等によりパターニング
し、導電性膜4を形成する(図3(b))。尚、ここで
は、有機金属溶液の塗布法により説明したが、導電性膜
4の形成法はこれに限られるものではなく、真空蒸着
法、スパッタ法、化学的気相堆積法、分散塗布法、ディ
ッピング法、スピンナー法等によって形成される場合も
ある。
【0064】3)つづいて、フォーミング処理を行う。
このフォーミング処理方法の一例として通電処理による
方法を説明する。素子電極2,3間に、不図示の電源よ
り通電処理が行われると、導電性膜4の一部に間隙6が
形成される(図3(c))。
【0065】フォーミング処理は、パルス波高値が定電
圧のパルスを印加する場合と、パルス波高値を増加させ
ながら、電圧パルスを印加する場合とがある。
【0066】パルス波高値が定電圧のパルスを印加する
場合の電圧波形を図4(a)に示す。図4(a)中、T
1 及びT2 は電圧波形のパルス幅とパルス間隔であり、
1を1μsec.〜10msec.、T2 を10μs
ec.〜100msec.とし、三角波の波高値(フォ
ーミング時のピーク電圧)は、適宜選択し、真空雰囲気
下で印加する。
【0067】次に、パルス波高値を増加させながら、電
圧パルスを印加する場合の電圧波形を図4(b)に示
す。図4(b)中、T1 及びT2 は電圧波形のパルス幅
とパルス間隔であり、T1 を1μsec.〜10mse
c.、T2 を10μsec.〜100msec.とし、
三角波の波高値(フォーミング時のピーク電圧)は、例
えば0.1Vステップ程度づつ、増加させ、真空雰囲気
下で印加する。
【0068】尚、フォーミング処理の終了は、パルス間
隔T2 中に、導電性膜4を局所的に破壊、変形しない程
度の電圧、例えば0.1V程度の電圧で、素子電流を測
定し、抵抗値を求め、例えば1MΩ以上の抵抗を示した
時、フォーミングを終了とした。この時の電圧を、フォ
ーミング電圧Vformと呼ぶことにする。
【0069】以上説明した間隙6を形成する際、素子の
電極間に三角波パルスを印加してフォーミング処理を行
っているが、素子の電極間に印加する波形は三角波に限
定することはなく、矩形波など所望の波形を用いても良
く、その波高値及びパルス幅、パルス間隔等についても
上述の値に限ることなく、間隙6が良好に形成されるよ
うに、導電性膜4の抵抗値等にあわせて、所望の値を選
択する。
【0070】また、このフォーミング電圧は、素子の材
料、構成等により一義的に決まるので、上記図4(b)
に示すようなパルス波高値を増加させながら、電圧パル
スを印加する場合の方が、個々の素子に適正なフォーミ
ングのエネルギーが容易に得られ、良好な電子放出特性
が得られるので好ましい。
【0071】フォーミング処理以降の電気的処理は、図
5に示す測定評価装置内で行うことができる。以下に測
定評価装置を説明する。
【0072】図5は、図1で示した構成を有する素子の
電子放出特性を測定するための測定評価装置の概略構成
図である。図5において、1は基板、2及び3は素子電
極、4は導電性膜、5は電子放出部を示す。また、51
は電子放出素子に素子電圧Vf を印加するための電源、
50は素子電極2,3間の電子放出部を含む導電性膜4
を流れる素子電流If を測定するための電流計、54は
素子の電子放出部5より放出される放出電流Ie を捕捉
するためのアノード電極、53はアノード電極54に電
圧を印加するための高圧電源、52は素子の電子放出部
5より放出される放出電流Ie を測定するための電流計
である。さらに、55は、素子を擁する基板1及びアノ
ード電極54が予め設置された後、ポンプ56によって
排気される密閉された真空装置であり、真空計60によ
り真空度を計測できる。
【0073】また、真空装置55には、後述する活性化
工程で使用する、窒素ガスボンベ57とオレフィン系炭
化水素ガスボンベ58が、バルブ59を介して接続され
ている。なお、窒素ガスボンベ57及び炭化水素ガスボ
ンベ58には、流量を制御できるマスフローコントロー
ラ(不図示)が備えられている。炭化水素が常温で液体
あるいは固体である場合には、炭化水素ガスボンベ58
は、加熱手段の付属したアンプル管等で代用することが
できる。
【0074】電子放出素子の上記素子電流If 、放出電
流Ie の測定にあたっては、素子電極2,3に電源51
と電流計50とを接続し、該電子放出素子の上方に電源
53と電流計52とを接続したアノード電極54を配置
している。また真空装置55には、高真空用の排気ポン
プ及び真空計等、高真空装置に必要な機器が具備されて
おり、所望の真空下で素子の測定評価を行えるようにな
っている。尚、排気ポンプは、ターボポンプ、ロータリ
ーポンプからなる通常の高真空装置系あるいは、オイル
を使用しない、磁気浮上ターボポンプ、ドライポンプ等
の高真空装置系と更に、イオンポンプからなる超高真空
装置系からなる。
【0075】また、真空装置全体、及び素子を備える電
子源基板は、不図示のヒーターにより250℃まで加熱
できる。
【0076】なお、電子放出素子の電子放出特性は、ア
ノード電極54の電圧を1kV〜10kV、アノード電
極54と電子放出素子との距離Hを2mm〜8mmの範
囲で測定を行うことができる。
【0077】4)次に、フォーミングが終了した素子に
活性化処理と呼ぶ処理を施す。本発明における活性化処
理とは、炭化水素ガスと窒素ガスとを含むガスを少なく
とも前記間隙6に接触させた状態(例えば有機物質の存
在する雰囲気下に素子を配置し)で、基板を加熱しなが
らフォーミング同様、素子電極2,3間にパルス電圧の
印加を繰り返す処理のことを言い、雰囲気中の有機物質
から、炭素を有する膜10を間隙6内の基板1上及び導
電性膜4上に堆積することで、電子放出部5を形成し、
素子電流If 、放出電流Ie が、著しく変化する処理で
ある(図3(d))。
【0078】本発明における活性化処理では、炭化水素
と窒素で構成される混合ガス粘性流雰囲気下、電極間に
パルス電圧を印加するが、このときの好ましい混合ガス
の全圧および両者の分圧比は、前述の応用の形態、真空
容器の形状や、炭化水素の種類、設定する基板温度など
により異なるため、場合に応じ適宜設定される。
【0079】ここで適当な炭化水素としては、窒素と混
合させることを考え、常温で気体であるものが望まし
い。具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン等
の飽和炭化水素、エチレン、プロピレン、ブテン、アセ
チレン等の不飽和炭化水素である。しかし、常温で液体
あるいは固体であっても、加熱して蒸気圧を高めれば使
用することができる。その意味で炭素数の多い炭化水素
や芳香族炭化水素も使用することができる。
【0080】この活性化処理により、雰囲気中に存在す
る炭化水素が分解し、同時にキャリアガスの窒素も分解
されて、窒素を含む炭素を有する膜が素子上に堆積し、
素子電流If 、放出電流Ie が著しく変化するようにな
る。さらに、電子放出素子を形成する基体を加熱して活
性化処理を施す為、H2 Oなど堆積反応の阻害要因とな
りうる成分の反応部位への吸着を防ぐと考えられる。そ
の結果として炭化水素ガスの分解とその後の炭素を有す
る膜の堆積反応が促進され、同時に、窒素の分解と堆積
物への含有がより効率的に行われる。
【0081】炭素を有する膜中の炭素とは、例えばグラ
ファイト(いわゆるHOPG,PG,GCを包含するも
ので、HOPGはほぼ完全なグラファイト結晶構造、P
Gは結晶粒が20nm程度で結晶構造がやや乱れたも
の、GCは結晶粒が2nm程度になり結晶構造の乱れが
さらに大きくなったものを指す。)、非晶質カーボン
(アモルファスカーボン及び、アモルファスカーボンと
前記グラファイトの微結晶の混合物を指す。)である。
【0082】ところで、本発明に係る表面伝導型電子放
出素子における炭素を有する膜の堆積機構は必ずしも明
らかとはなっていないが、熱、電子線、電界、光等のエ
ネルギーが複雑に組み合わさることにより有機分子が分
解し、堆積が起こると考えられている。同時に、雰囲気
中に存在する窒素分子も、同様な機構で分解し、堆積物
中に包含されると考えている。従って、活性化において
導電性膜に印加するパルス、もしくは、選択する有機分
子の種類およびその分圧比、さらには、堆積時の基板温
度により、堆積物の物性(導電率、仕事関数、電子散乱
係数、熱的安定性、機械的性質等)が異なる。従って、
この物性が電子放出の特性を決める重要な因子となる。
なお、堆積物の膜厚は、50nm以下の範囲とするのが
好ましく、30nm以下の範囲とすることがより好まし
い。
【0083】尚、図3(d)に示す様に、炭素を有する
膜10はフォーミング等により導電性膜4に形成された
間隙6よりも狭い間隙7を境いに対向して配置されてい
るが、炭素を有する膜10は間隙7の一部でつながって
いる場合もある。
【0084】5)こうして作成した電子放出素子を、好
ましくは、フォーミング処理及び活性化処理した真空度
より高い真空度の真空雰囲気にて駆動する。また、フォ
ーミング処理及び活性化処理した真空度より高い真空度
の真空雰囲気とは、好ましくは、約1.3×10-4Pa
以上の真空度を有する真空度であり、より好ましくは、
超高真空系で、炭素、及び炭素化合物が存在しないか、
存在しても、ほぼ、堆積しない真空度である。
【0085】従って、これによって、これ以上の炭素及
び炭素化合物の堆積を抑制することが可能となり、素子
電流If ,放出電流Ie が、一定に安定する。
【0086】上述のような素子構成と製造方法によって
作成された本発明にかかわる電子放出素子の基本特性に
ついて、図5及び図6を用いて説明する。
【0087】図5に示した測定評価装置により測定され
た放出電流Ie 及び素子電流If と素子電圧Vf の関係
の典型的な例を図6に示す。尚、図6においては、放出
電流Ie が素子電流If に比べて著しく小さいので、任
意単位で示されている。図6からも明らかなように、本
電子放出素子は放出電流Ie に対する3つの特性を有す
る。
【0088】まず第1に、本素子はある電圧(しきい値
電圧と呼ぶ;図6中のVth)以上の素子電圧を印加する
と急激に放出電流Ie が増加し、一方しきい値電圧Vth
以下では放出電流Ie が殆ど検出されない。すなわち、
放出電流Ie に対する明確なしきい値電圧Vthを持った
非線形素子である。
【0089】第2に、放出電流Ie が素子電圧Vf に依
存するため、放出電流Ie は素子電圧Vf で制御でき
る。
【0090】第3に、アノード電極54に捕捉される放
出電荷は、素子電圧Vf を印加する時間に依存する。つ
まり、アノード電極54に捕捉される電荷量は、素子電
圧Vf を印加する時間により制御できる。
【0091】一方、素子電流If は素子電圧Vf に対し
て単調増加する特性(MI特性と呼ぶ)及び電圧制御型
負性抵抗特性(VCNR特性と呼ぶ)を示す場合がある
が、これら素子電流の特性は、その製法に依存する。ま
た、VCNR特性を示す境界電圧とVpという。
【0092】即ち、素子電流If のVCNR特性は、通
常の真空装置系でフォーミングを行ったとき発生し、そ
の特性は、フォーミング時の電気的条件、真空装置系の
真空雰囲気条件等、あるいは、フォーミングを既に行っ
た電子放出素子の測定時の真空装置系の真空雰囲気条
件、測定時の電気的測定条件(例えば、電子放出素子の
電流−電圧特性を得るために、素子に印加する電圧を低
電圧から高電圧まで掃引したときの掃引速度等)、測定
時までの電子放出素子の真空装置内の放置時間等に依存
して、大きく変わることが判明した。またこの時、放出
電流Ie は、MI特性を示す。
【0093】以上のような表面伝導型電子放出素子の特
性、即ち、素子電流If 、放出電流Ie の素子印加電圧
に対する単調増加特性を有するため、本発明に係る電子
放出素子は、多方面への応用が期待できる。
【0094】以上表面伝導型電子放出素子の基本的構
成、製法について説明したが、本発明の思想によれば、
表面伝導型電子放出素子の特性で上述の3つの特性を有
すれば、上述の構成等に限定されず、以下に説明する電
子源、表示装置等の画像形成装置においても適用でき
る。
【0095】次に、本発明を適用可能な電子源及び画像
形成装置について述べる。
【0096】本発明を適用可能な電子放出素子を複数
個、基板上に配列して、電子源あるいは画像形成装置が
構成できる。
【0097】電子放出素子の配列の方式には、例えば、
従来例で述べた、多数の表面伝導型電子放出素子を並列
に配置し、個々の素子の両端を配線にて接続した、電子
放出素子の行を多数配列し(行方向と呼ぶ)、この配線
と直交する方向(列方向と呼ぶ)に、該電子源の上方の
空間に設置された制御電極(グリッドと呼ぶ)により、
電子を制御駆動する配列形態(以後、はしご型とい
う)、及び次に述べるm本のX方向配線の上に、n本の
Y方向配線を層間絶縁層を介して設置し、表面伝導型電
子放出素子の一対の素子電極に、それぞれX方向配線、
Y方向配線を接続した配列形態が挙げられる。これを単
純マトリクス配置と以降呼ぶ。
【0098】次に、この単純マトリクスについて詳述す
る。
【0099】本発明に係る表面伝導型電子放出素子の前
述した3つの基本的特性の特徴によれば、表面伝導型電
子放出素子からの放出電子は、しきい値電圧以上では、
対向する素子電極間に印加するパルス状電圧の波高値と
幅で制御できる。一方、しきい値電圧以下では、殆ど放
出されない。この特性によれば、多数の電子放出素子を
配置した場合においても、個々の素子に上記パルス状電
圧を適宜印加すれば、入力信号に応じて、表面伝導型電
子放出素子を選択し、その電子放出量が制御できること
となる。
【0100】以下、この原理に基づき構成した電子源基
板の構成について、図7を用いて説明する。
【0101】m本のX方向配線72は、Dx1,Dx2,…
…,Dxmからなり、絶縁性基板71上に、真空蒸着法、
印刷法、スパッタ法等で形成し、所望のパターンとした
導電性金属等からなり、多数の表面伝導型電子放出素子
にほぼ均等な電圧が供給される様に、材料、膜厚、配線
幅が設定される。Y方向配線73は、Dy1,Dy2,…
…,Dynのn本の配線よりなり、X方向配線72と同様
に、真空蒸着法、印刷法、スパッタ法等で形成し、所望
のパターンとした導電性金属等からなり、多数の表面伝
導型電子放出素子にほぼ均等な電圧が供給される様に、
材料、膜厚、配線幅が設定される。これらm本のX方向
配線72とn本のY方向配線73との間には、不図示の
層間絶縁層が設置され、電気的に分離されて、マトリク
ス配線を構成する(このm、nは、共に正の整数)。
【0102】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等で形成されたSiO2 等であり、X方
向配線72を形成した絶縁性基板71の全面あるいは一
部に所望の形状で形成され、特に、X方向配線72とY
方向配線73の交差部の電位差に耐え得るように、膜
厚、材料、製法が適宜設定される。X方向配線72とY
方向配線73は、それぞれ外部端子として引き出されて
いる。
【0103】更に、前述と同様にして、表面伝導型電子
放出素子74の対向する素子電極(不図示)が、m本の
X方向配線72(Dx1,Dx2,……,Dxm)とn本のY
方向配線73(Dy1,Dy2,……,Dyn)と、真空蒸着
法、印刷法、スパッタ法等で形成された導電性金属等か
らなる結線75によって電気的に接続されているもので
ある。
【0104】ここで、m本のX方向配線72とn本のY
方向配線73と結線75と対向する素子電極の導電性金
属は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であって
も、また夫々異なってもよく、Ni、Cr、Au、M
o、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等の金属あるい
は合金及びPd、Ag、Au、RuO2 、Pd−Ag等
の金属あるいは金属酸化物とガラス等から構成される印
刷導体、In23 −SnO2 等の透明導体及びポリシ
リコン等の半導体材料等より適宜選択される。また表面
伝導型電子放出素子は、絶縁性基板71、あるいは、不
図示の層間絶縁層上どちらに形成してもよい。
【0105】また、詳しくは後述するが、前記X方向配
線72には、X方向に配列する表面伝導型電子放出素子
74の行を、入力信号に応じて走査するための走査信号
を印加する不図示の走査信号印加手段が電気的に接続さ
れ、一方、Y方向配線73には、Y方向に配列する表面
伝導型電子放出素子74の各列を、入力信号に応じて変
調するための変調信号を印加する不図示の変調信号発生
手段が電気的に接続される。表面伝導型電子放出素子の
各素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加される
走査信号と変調信号の差電圧として供給されるものであ
る。
【0106】次に、上記のような単純マトリクス配置の
電子源基板を用いた電子源、及び、表示等に用いる画像
形成装置について、図8と図9を用いて説明する。図8
は画像形成装置の基本構成図であり、図9は蛍光膜であ
る。
【0107】図8において、71は電子放出素子を複数
配した電子源基板、81は電子源基板71を固定したリ
アプレート、86はガラス基板83の内面に蛍光膜84
とメタルバック85等が形成されたフェースプレートで
ある。82は支持枠であり、該支持枠82には、リアプ
レート81、フェースプレート86がフリットガラス等
を用いて接続されている。88は外囲器であり、例えば
大気中あるいは窒素中で、400〜500℃の温度範囲
で10分以上焼成することで、封着して構成される。
【0108】図8において、74は、図1あるいは図2
に示された表面伝導型電子放出素子に相当する。72,
73は、表面伝導型電子放出素子の一対の素子電極と接
続されたX方向配線及びY方向配線である。また、これ
ら素子電極への配線は、素子電極と配線材料が同一であ
る場合は、素子電極と呼ぶ場合もある。
【0109】外囲器88は、上述の如く、フェースプレ
ート86、支持枠82、リアプレート81で構成され
る。リアプレート81は主に基板71の強度を補強する
目的で設けられるため、基板71自体で十分な強度を持
つ場合は別体のリアプレート81は不要とすることがで
きる。即ち、基板71に直接支持枠82を封着し、フェ
ースプレート86、支持枠82及び基板71で外囲器8
8を構成してもよい。
【0110】図9は、蛍光膜である。蛍光膜84は、モ
ノクロームの場合は蛍光体のみから成るが、カラーの蛍
光膜の場合は、蛍光体の配列によりブラックストライプ
(図9(a))あるいはブラックマトリクス(図9
(b))等と呼ばれる黒色導電材91と蛍光体92とで
構成される。ブラックストライプ、ブラックマトリクス
が設けられる目的は、カラー表示の場合、必要となる三
原色蛍光体の各蛍光体92間の塗り分け部を黒くするこ
とで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜84におけ
る外光反射によるコントラストの低下を抑制することで
ある。黒色導電材91の材料としては、通常用いられて
いる黒鉛を主成分とする材料だけでなく、導電性があ
り、光の透過及び反射が少ない材料を用いることができ
る。
【0111】ガラス基板83に蛍光体を塗布する方法
は、モノクローム、カラーによらず、沈澱法や印刷法等
が用いられる。
【0112】また、蛍光膜84の内面側には、通常メタ
ルバック85が設けられる。メタルバックの目的は、蛍
光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート86
側へ鏡面反射することにより輝度を向上させること、電
子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用させ
ること、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメ
ージから蛍光体を保護すること等である。メタルバック
は、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理
(通常、フィルミングと呼ばれる。)を行い、その後A
lを真空蒸着等で堆積することで作製できる。
【0113】フェースプレート86には、更に蛍光膜8
4の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に透明電
極(不図示)を設けてもよい。
【0114】前述の封着を行う際、カラーの場合は各色
蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、十分
な位置合わせを行う必要がある。
【0115】外囲器88は、不図示の排気管を通じ、
1.3×10-4Pa程度の真空度にされ、外囲器88の
封止が行われる。
【0116】尚、電子源基板は、前述した通りに電子放
出部を形成した図1あるいは図2の素子が、基板上に上
記の如く配置、配線されたものでも良いが、好ましくは
電子放出部形成前の素子、例えば図3(b)に示された
状態の素子を、基板上に上記の如く配置、配線し、これ
を図8に示す外囲器88内に配置した後、不図示の排気
管を通じ、例えば、ロータリーポンプ、ターボポンプを
ポンプ系とする様な通常の真空装置系で該外囲器内を
1.3×10-4Pa程度の真空度とし、容器外端子D
ox1 〜Doxm とDoy1 〜Doyn を通じ素子電極2,3
(図3(b))間に電圧を印加し、上述のフォーミング
を行い、次に、前記活性化処理を行うことにより電子放
出部5を形成して、電子源基板を作製する。
【0117】以上の様に作製の後、特には、その後、8
0℃〜150℃でベーキングを3〜15時間行いなが
ら、例えば、イオンポンプ等をポンプ系とする超高真空
装置系に切り替える。超高真空系の切り替え、及びベー
キングは、前述の表面伝導型電子放出素子の素子電流I
f 、放出電流Ie の単調増加特性(MI特性)を満足す
るためであり、その方法、条件はこれに限るものではな
い。また、外囲器88の封止後の真空度を維持するため
に、ゲッター処理を行う場合もある。これは、外囲器8
8の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あるい
は高周波加熱等の加熱法により、外囲器88内の所定の
位置に配置されたゲッター(不図示)を加熱し、蒸着膜
を形成する処理である。ゲッターは通常Ba等が主成分
であり、該蒸着膜の吸着作用により、例えば1×10-5
Pa以上の真空度を維持するものである。
【0118】以上により完成した本発明に係る画像表示
装置において、各電子放出素子には、容器外端子Dox1
〜Doxm とDoy1 〜Doyn を通じ電圧を印加することに
より、電子放出させ、高圧端子87を通じ、メタルバッ
ク85あるいは透明電極(不図示)に数kV以上の高圧
を印加し、電子ビームを加速し、蛍光膜84に衝突さ
せ、励起・発光させることで画像を表示するものであ
る。
【0119】以上述べた構成は、表示等に用いられる好
適な画像形成装置を作製するうえで必要な概略構成であ
り、例えば各部材の材料等、詳細な部分は上述内容に限
られるものではなく、画像装置の用途に適するよう適宜
選択する。
【0120】次に、単純マトリクス配置の電子源を用い
て構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に
基づいたテレビジョン表示を行う為の駆動回路の構成例
について、図10を用いて説明する。
【0121】図10中、101は表示パネル、102は
走査信号発生回路、103はタイミング制御回路、10
4はシフトレジスタ、105はラインメモリ、106は
同期信号分離回路、107は変調信号発生回路、Vx及
びVaは直流電圧源である。
【0122】表示パネル101は、端子Dox1 乃至D
oxm 、端子Doy1 乃至Doyn 及び高圧端子87を介して
外部の電気回路と接続している。端子Dox1 乃至Doxm
には、表示パネル101内に設けられている電子源、即
ち、m行n列の行列状にマトリクス配線された表面伝導
型電子放出素子群を1行(n素子)ずつ順次駆動する為
の走査信号が印加される。端子Doy1 乃至Doyn には、
前記走査信号により選択された1行の表面伝導型電子放
出素子の各素子の出力電子ビームを制御する為の変調信
号が印加される。高圧端子87には、直流電圧源Vaよ
り、例えば10kVの直流電圧が供給されるが、これは
電子放出素子から放出される電子ビームに、蛍光体を励
起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧で
ある。
【0123】走査信号発生回路102は、内部にm個の
スイッチング素子(図中、S1 乃至Sm で模式的に示し
ている)を備えたものである。各スイッチング素子は、
直流電圧電源Vxの出力電圧もしくは0V(グランドレ
ベル)のいずれか一方を選択し、表示パネル101の端
子Dox1 乃至Doxm と電気的に接続される。S1 乃至S
m の各スイッチング素子は、制御回路103が出力する
制御信号Tscanに基づいて動作するものであり、例えば
FETのようなスイッチング素子を組み合わせることに
より構成することができる。
【0124】直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝
導型電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基
づき、走査されていない素子に印加される駆動電圧が電
子放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力す
るよう設定されている。
【0125】制御回路103は、外部より入力される画
像信号に基づいて適切な表示が行われるように、各部の
動作を整合させる機能を有する。制御回路103は、同
期信号分離回路106より送られる同期信号Tsyncに基
づいて、各部に対してTscan,Tsft 及びTmry の各制
御信号を発生する。
【0126】同期信号分離回路106は、外部から入力
されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と
輝度信号成分とを分離するための回路で、一般的な周波
数分離(フィルター)回路等を用いて構成できる。同期
信号分離回路106により分離された同期信号は、垂直
同期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便
宜上Tsync信号として図示した。前記テレビ信号から分
離された画像の輝度信号成分は、便宜上DATA信号と
表した。このDATA信号は、シフトレジスタ104に
入力される。
【0127】シフトレジスタ104は、時系列的にシリ
アルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン
毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制
御回路103より送られる制御信号Tsft に基づいて動
作する(即ち、制御信号Tsft は、シフトレジスタ10
4のシフトクロックであると言い換えてもよい。)。シ
リアル/パラレル変換された画像1ライン分のデータ
(電子放出素子n素子分の駆動データに相当)は、Id1
乃至Idnのn個の並列信号として前記シフトレジスタ1
04より出力される。
【0128】ラインメモリ105は、画像1ライン分の
データを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であ
り、制御回路103より送られる制御信号Tmry に従っ
て適宜Id1乃至Idnの内容を記憶する。記憶された内容
は、Id'1 乃至Id'n として出力され、変調信号発生器
107に入力される。
【0129】変調信号発生器107は、画像データI
d'1 乃至Id'n の各々に応じて、電子放出素子の各々を
適切に駆動変調する為の信号源であり、その出力信号
は、端子Doy1 乃至Doyn を通じて表示パネル101内
の表面伝導型電子放出素子に印加される。
【0130】前述したように、本発明を適用可能な電子
放出素子は放出電流Ie に関して以下の基本特性を有し
ている。即ち、電子放出には明確なしきい値電圧Vth
あり、Vth以上の電圧が印加された時のみ電子放出が生
じる。電子放出しきい値以上の電圧に対しては、素子へ
の印加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。このこ
とから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、例え
ば電子放出しきい値電圧以下の電圧を印加しても電子放
出は生じないが、電子放出しきい値電圧以上の電圧を印
加する場合には電子ビームが出力される。その際、パル
スの波高値Vmを変化させることにより、出力電子ビー
ムの強度を制御することが可能である。また、パルスの
幅Pwを変化させることにより、出力される電子ビーム
の電荷の総量を制御することが可能である。従って、入
力信号に応じて電子放出素子を変調する方式としては、
電圧変調方式とパルス幅変調方式等が採用できる。
【0131】電圧変調方式を実施するに際しては、変調
信号発生器107としては、一定長さの電圧パルスを発
生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルスの波高
値を変調できるような電圧変調方式の回路を用いること
ができる。
【0132】パルス幅変調方式を実施するに際しては、
変調信号発生器107として、一定の波高値の電圧パル
スを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルス
の幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いる
ことができる。
【0133】シフトレジスタ104やラインメモリ10
5は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式のもの
でも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変換や
記憶が所定の速度で行なわれれば良いからである。
【0134】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路106の出力信号DATAをデジタル信号化
する必要があるが、これには同期信号分離回路106の
出力部にA/D変換器を設ければ良い。これに関連して
ラインメモリ105の出力信号がデジタル信号かアナロ
グ信号かにより、変調信号発生器107に用いられる回
路が若干異なったものとなる。即ち、デジタル信号を用
いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器107には、
例えばD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅回路等
を付加する。パルス幅変調方式の場合、変調信号発生器
107には、例えば高速の発振器及び発振器の出力する
波数を計数する計数器(カウンタ)及び計数器の出力値
と前記メモリの出力値を比較する比較器(コンパレー
タ)を組み合わせた回路を用いる。必要に応じて、比較
器の出力するパルス幅変調された変調信号を電子放出素
子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅器を付加す
ることもできる。
【0135】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器107には、例えばオペアンプ等を
用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフト
回路等を付加することもできる。パルス幅変調方式の場
合には、例えば電圧制御型発振回路(VCO)を採用で
き、必要に応じて電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増
幅するための増幅器を付加することもできる。
【0136】このような構成をとり得る本発明を適用可
能な画像形成装置においては、各電子放出素子に、容器
外端子Dox1 乃至Doxm 、Doy1 乃至Doyn を介して電
圧を印加することにより、電子放出が生じる。高圧端子
87を介してメタルバック85あるいは透明電極(不図
示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。加速され
た電子は、蛍光膜84に衝突し、発光が生じて画像が形
成される。
【0137】ここで述べた画像形成装置の構成は、本発
明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の技
術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号に
ついてはNTSC方式を挙げたが、入力信号はこれに限
られるものではなく、PAL、SECAM方式等の他、
これらよりも多数の走査線からなるTV信号(例えば、
MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式をも採用
できる。
【0138】次に、前述のはしご型配置の電子源及び画
像形成装置について、図11及び図12を用いて説明す
る。
【0139】図11は、梯子型配置の電子源の一例を示
す模式図である。図11中、110は電子源基板、11
1は電子放出素子である。112は、電子放出素子11
1を接続するための共通配線Dx1〜Dx10 であり、これ
らは外部端子として引き出されている。電子放出素子1
11は、基板110上に、X方向に並列に複数個配置さ
れている(これを素子行と呼ぶ)。この素子行が複数個
配置されて、電子源を構成している。各素子行の共通配
線間に駆動電圧を印加することで、各素子行を独立に駆
動させることができる。即ち、電子ビームを放出させた
い素子行には、電子放出しきい値以上の電圧を印加し、
電子ビームを放出させたくない素子行には、電子放出し
きい値以下の電圧を印加する。各素子行間に位置する共
通配線Dx2〜Dx9は、例えばDx2とDx3、Dx4とDx5
x6とDx7、Dx8とDx9とを夫々一体の同一配線とする
こともできる。
【0140】図12は、はしご型配置の電子源を備えた
画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図で
ある。120はグリッド電極、121は電子が通過する
ための開口、Dox1 乃至Doxm は容器外端子、G1 乃至
n はグリッド電極120と接続された容器外端子であ
る。110は各素子行間の共通配線を同一配線とした電
子源基板である。図12においては、図8、図11に示
した部位と同じ部位には、これらの図に付したのと同一
の符号を付している。ここに示した画像形成装置と、図
8に示した単純マトリクス配置の画像形成装置との大き
な違いは、電子源基板110とフェースプレート86の
間にグリッド電極120を備えているか否かである。
【0141】図12においては、基板110とフェース
プレート86の間には、グリッド電極120が設けられ
ている。グリッド電極120は、電子放出素子111か
ら放出された電子ビームを変調するためのものであり、
はしご型配置の素子行と直交して設けられたストライプ
状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に対応
して1個ずつ円形の開口121が設けられている。グリ
ッド電極の形状や配置位置は、図12に示したものに限
定されるものではない。例えば、開口としてメッシュ状
に多数の通過口を設けることもでき、グリッド電極を電
子放出素子の周囲や近傍に設けることもできる。
【0142】容器外端子Dox1 乃至Doxm 及びグリッド
容器外端子G1 乃至Gn は、不図示の制御回路と電気的
に接続されている。
【0143】本例の画像形成装置では、素子行を1列ず
つ順次駆動(走査)して行くのと同期してグリッド電極
列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これ
により、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像
を1ラインずつ表示することができる。
【0144】以上説明した本発明を適用可能な画像形成
装置は、テレビジョン放送の表示装置、テレビ会議シス
テムやコンピューター等の表示装置の他、感光性ドラム
等を用いて構成された光プリンターとしての画像形成装
置等としても用いることができる。
【0145】
【実施例】以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を説
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はなく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素の
置換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0146】[実施例1]本実施例に係る電子放出素子
の基本的な構成は、図1と同様である。
【0147】本実施例の電子放出素子の製造法は、基本
的には図3と同様である。以下、図1及び図3を用い
て、本実施例における電子放出素子の製造方法を順をお
って説明する。
【0148】工程−a 基板1上に、素子電極パターンに対応する開口部を有す
るホトレジスト(RD−2000N−41/日立化成社
製)のマスクパターンを形成し、真空蒸着法により、厚
さ5nmのTi、厚さ30nmのPtを順次堆積した。
ホトレジストパターンを有機溶剤で溶解し、Pt/Ti
堆積膜をリフトオフして、素子電極2,3を形成した
(図3(a))。素子電極の間隔Lは3μm、素子電極
の幅Wは300μmである。
【0149】工程−b 素子電極間ギャップ及びこの近傍に開口を有するマスク
により膜厚100nmのCr膜を真空蒸着により堆積・
パターニングし、その上に有機Pd(ccp4230/
奥野製薬(株)製)をスピンナーにより回転塗布、35
0℃で12分間の加熱焼成処理をした。また、こうして
形成された主元素としてPdよりなる微粒子からなる導
電性膜4の膜厚は10nm、シート抵抗値は2×104
Ω/□であった。なおここで述べる微粒子膜とは、上述
したように、複数の微粒子が集合した膜であり、その微
細構造として、微粒子が個々に分散配置した状態のみな
らず、微粒子が互いに隣接、あるいは、重なり合った状
態(島状も含む)の膜を指し、その粒径とは、前記状態
で粒子形状が認識可能な微粒子についての径を言う。
【0150】工程−c Cr膜及び焼成後の導電性膜4を酸エッチャントにより
エッチングして、所望のパターンを有する導電性膜4を
形成した(図3(b))。
【0151】以上の工程により、基板1上に、素子電極
2,3及び導電性膜4を形成した。
【0152】工程−e 次に、上記素子を図5に示す測定評価装置に設置し、真
空装置55内を排気ポンプ56にて排気し、2.7×1
-4Paの真空度に達した後、電源51より、素子の素
子電極2,3間に電圧を印加し、フォーミング処理を行
い導電性膜4の一部に間隙6を形成した(図3
(c))。フォーミング処理の電圧波形は図4(b)に
示したものである。
【0153】図4(b)中、T1 及びT2 は電圧波形の
パルス幅とパルス間隔であり、本実施例ではT1 を1m
sec.、T2 を10msec.とし、三角波の波高値
(フォーミング時のピーク電圧)は0.1Vステップで
昇圧し、フォーミング処理を行った。また、フォーミン
グ処理中は、同時に、0.1Vの電圧で、T2 間に抵抗
測定パルスを挿入し、抵抗を測定した。尚、フォーミン
グ処理の終了は、抵抗測定パルスでの測定値が、約1M
Ω以上になった時とし、同時に、素子への電圧の印加を
終了した。
【0154】工程−f 続いて、活性化工程を行った。窒素ガスボンベ57及び
炭化水素ガスボンベ58に接続した不図示のマスフロー
コントローラを調節して所望の流量のガスが流れるよう
にした後、バルブ59を開いて真空装置55内に混合ガ
スを導入した。一方で、ポンプ56を用いて排気は継続
し、排気口のコンダクタンス及びガス流量を調節するこ
とで全圧を調整し、真空計60に示される値を読み取っ
た。この時、窒素および炭化水素の分圧は、マスフロー
コントローラのそれぞれの流量値と真空計60で示され
る全圧とから決定できる。なお、本実施例では炭化水素
としてエチレンを使用し、エチレンの分圧を27Pa
に、基板温度を100℃にそれぞれ固定して、窒素の分
圧を表1のように変化させてサンプルを作成した。サン
プル中には、比較のために窒素を含まない雰囲気中で作
成した素子(窒素を含有しない素子)も含まれている。
【0155】一定時間が経過して、ガス流量および全圧
が安定した後、フォーミング処理した素子に、矩形波の
波高値15Vで通電印加し、活性化処理を施し間隙6内
の基板上及び、導電性膜4上に炭素を有する膜10を形
成した(図3(d))。すなわち、測定評価装置内で、
素子電流If を測定しながら、素子電極間にパルス電圧
を印加した。約30分でIf 値がほぼ飽和したため、通
電を停止し、バルブを閉め、活性化処理を終了した。
【0156】その後、炭素を有する膜10中の窒素含有
量を測定するために、オージェ電子分光法(Auge
r)にてN(窒素)/C(炭素)の値を測定した。この
時の窒素含有量を表1に示す。なお、Augerでの測
定では、真空中で、200℃ベーキング後測定した。こ
れは、大気中で暴露したことにより大気成分の吸着や水
分の影響を避けるためである。
【0157】
【表1】
【0158】工程−g 続いて、これらの素子を図5の真空装置に再度入れ、安
定化工程を行った。素子のベーキングを250℃10時
間ほど施し、真空装置55内に有機成分が残留しない雰
囲気とし、安定化工程終了とした。
【0159】こうして、窒素分圧を変えて作製した6種
類の電子放出素子の電子放出特性を評価した。尚、アノ
ード電極54と電子放出素子間の距離Hを4mm、アノ
ード電極の電位を1kV、電子放出特性測定時の真空装
置55内の真空度を2.7×10-8Paとし、素子電極
2及び素子電極3の間に素子電圧を15Vを印加した。
この時の各電子放出素子の効率を表2に示す。
【0160】
【表2】
【0161】以上より、本実施例において、窒素および
エチレンからなる混合ガス中で活性化処理を行うと、窒
素を含有する炭素を有する膜が得られ、窒素含有量によ
って電子放出効率が変化することが判る。
【0162】窒素を混合しない素子(すなわち窒素が含
有されない素子)、および窒素の分圧が8.0×104
Pa以上の素子では、高い効率が得られず、高効率を与
える窒素含有量には適切な範囲が存在する。また、この
範囲中では、窒素含有量は窒素の分圧によって制御され
ている。
【0163】このために、安定性に優れ、かつ高効率で
ある活性化条件としては、窒素分圧が1.3×101
a〜6.7×104 Paの範囲のエチレンと窒素の混合
雰囲気中で活性化することが適正であることが明らかに
なった。
【0164】以上より、本実施例の素子は、比較用素子
(窒素無包含素子)に比べて、電子放出効率の高い、安
定性の良い電子放出素子であることがわかる。
【0165】[実施例2]本実施例では前記工程−eま
で実施例1と同様の工程を行った。
【0166】工程−f 工程−eのフォーミング処理に続いて、活性化処理を行
った。窒素ガスボンベ57及び炭化水素ガスボンベ58
に接続した不図示のマスフローコントローラを調節して
所望の流量のガスが流れるようにした後、バルブ59を
開いて真空装置55内に混合ガスを導入した。一方で、
ポンプ56を用いて排気は継続し、排気口のコンダクタ
ンス及びガス流量を調節することで全圧を調整し、真空
計60に示される値を読み取った。本実施例では炭化水
素としてエチレンを使用し、窒素の分圧を1.3×10
4 Paに、基板温度を100℃にそれぞれ固定して、エ
チレンの分圧を表3のように変化させてサンプルを作成
した。
【0167】一定時間が経過して、ガス流量および全圧
が安定した後、フォーミング処理した素子に、矩形波の
波高値15Vで通電印加し、活性化処理を施した。すな
わち、測定評価装置内で、素子電流If を測定しなが
ら、素子電極間にパルス電圧を印加した。約30分でI
f 値がほぼ飽和したため、通電を停止し、バルブを閉
め、活性化処理を終了した。
【0168】その後、活性化により堆積した炭素を有す
る膜中の窒素含有量を測定するために、オージェ電子分
光法(Auger)にてN/Cの値を測定した。この時
の窒素含有量を表3に示す。なお、Augerでの測定
では、真空中で、200℃ベーキング後測定した。これ
は、大気中で暴露したことにより大気成分の吸着や水分
の影響を避けるためである。
【0169】
【表3】
【0170】工程−g 続いて、これらの素子を図5の真空装置に再度入れ、安
定化工程を行った。素子のベーキングを250℃10時
間ほど施し、真空装置55内に有機成分が残留しない雰
囲気とし、安定化工程終了とした。
【0171】こうして、エチレンの分圧を変えて作製し
た6種類の電子放出素子の電子放出特性を評価した。
尚、アノード電極54と電子放出素子間の距離Hを4m
m、アノード電極の電位を1kV、電子放出特性測定時
の真空装置55内の真空度を2.7×10-8Paとし、
素子電極2及び素子電極3の間に素子電圧を15Vを印
加した。この時の各電子放出素子の効率を表4に示す。
【0172】
【表4】
【0173】以上より、エチレンの分圧により電子放出
効率が変化することがわかった。なお、表4より明らか
なように、活性化に適切なエチレンの分圧が存在する。
これは、分圧が低過ぎると、炭素を有する膜の堆積が少
ないためで、表4においてエチレン分圧が1.3Paの
場合がこれに相当すると考えている。
【0174】本実施例において、窒素およびエチレンか
らなる混合ガス中で活性化処理を行うと、窒素を含有す
る炭素を有する膜が得られ、エチレンの分圧によって電
子放出効率が変化し、分圧6.7Pa〜1.3×102
Paの範囲が最も適正な分圧であることが判る。
【0175】また、炭化水素としてプロピレンを用いた
場合には、エチレンを用いた場合と同様、分圧によって
電子放出効率が変化し、その適正範囲は2.7Pa〜
1.1×102 Paであった。これは、プロピレンがエ
チレンに比べて反応性が高く(電離電圧が低い)、より
低い分圧でもプロピレンの分解が十分に進行するためと
考えている。
【0176】さらに、炭化水素としてブテンを用いた場
合には、エチレンやプロピレンを用いた場合と同様、分
圧によって電子放出効率が変化し、その適正範囲は1.
3Pa〜80Paであった。これは、ブテンがエチレン
やプロピレンに比べて反応性が高く、より低い分圧でも
ブテンの分解が十分に進行するためと考えている。
【0177】以上のように、炭化水素と窒素の混合雰囲
気中で活性化を行う場合には、炭化水素に適正な分圧が
存在し、その範囲は、使用する炭化水素の種類にもよる
が、概ね1.3Pa〜1.3×102 Paの範囲内であ
る。
【0178】[実施例3]本実施例では前記工程−eま
で実施例1と同様の工程を行った。
【0179】工程−f 工程−eのフォーミング処理に続いて、活性化処理を行
った。窒素ガスボンベ57及び炭化水素ガスボンベ58
に接続した不図示のマスフローコントローラを調節して
所望の流量のガスが流れるようにした後、バルブ59を
開いて真空装置55内に混合ガスを導入した。一方で、
ポンプ56を用いて排気は継続し、排気口のコンダクタ
ンス及びガス流量を調節することで全圧を調整し、真空
計60に示される値を読み取った。本実施例では炭化水
素としてエチレンを使用し、窒素の分圧を1.3×10
4 Paに、エチレンの分圧を27Paに固定し、基板温
度を表5のように変化させてサンプルを作成した。
【0180】一定時間が経過して、ガス流量および全圧
が安定した後、フォーミング処理した素子に、矩形波の
波高値15Vで通電印加し、活性化処理を施した。すな
わち、測定評価装置内で、素子電流If を測定しなが
ら、素子電極間にパルス電圧を印加した。約30分でI
f 値がほぼ飽和したため、通電を停止し、バルブを閉
め、活性化処理を終了した。
【0181】その後、活性化により堆積した炭素を有す
る膜10中の窒素含有量を測定するために、オージェ電
子分光法(Auger)にてN/Cの値を測定した。こ
の時の窒素含有量を表5に示す。なお、Augerでの
測定では、真空中で、200℃ベーキング後測定した。
これは、大気中で暴露したことにより大気成分の吸着や
水分の影響を避けるためである。
【0182】
【表5】
【0183】工程−g 続いて、これらの素子を図5の真空装置に再度入れ、安
定化工程を行った。素子のベーキングを250℃10時
間ほど施し、真空装置55内に有機成分が残留しない雰
囲気とし、安定化工程終了とした。
【0184】こうして、基板温度を変えて作製した6種
類の電子放出素子の電子放出特性を評価した。尚、アノ
ード電極54と電子放出素子間の距離Hを4mm、アノ
ード電極の電位を1kV、電子放出特性測定時の真空装
置55内の真空度を2.7×10-8Paとし、素子電極
2及び素子電極3の間に素子電圧を15Vを印加した。
この時の各電子放出素子の効率を表6に示す。
【0185】
【表6】
【0186】以上より、基板温度により電子放出効率が
変化することがわかった。なお、表6より明らかなよう
に、活性化に適切な基板温度が存在する。これは、基板
温度が低過ぎると、エチレンの分解が十分になされず、
従って炭素を有する膜の堆積が少ないためで、表6にお
いて基板温度が25℃(室温)の場合がこれに相当する
と考えている。
【0187】本実施例において、窒素およびエチレンか
らなる混合ガス中で活性化処理を行うと、窒素を含有す
る炭素が得られ、基板温度によって電子放出効率が変化
し、基板温度50℃〜200℃の範囲が最も適正な基板
温度であることが判る。
【0188】また、炭化水素としてプロピレン、あるい
はブテンを用いた場合にも適正な基板温度範囲が認めら
れたが、概ねエチレンを用いた場合と同様の傾向であっ
た。
【0189】以上のように、炭化水素と窒素の混合雰囲
気中で活性化を行う場合には、適正な基板温度範囲が存
在し、その範囲は、概ね50℃〜200℃の範囲内であ
る。
【0190】[実施例4]本実施例は、多数の表面伝導
型電子放出素子を単純マトリクス配置した電子源を用い
て、画像形成装置を作製した例である。
【0191】複数の導電性膜がマトリクス配線された電
子源基板の一部の平面図を図13に示す。また、図中の
A−A’断面図を図14に示す。但し、図13、図14
で同じ符号で示したものは、同じものを示す。ここで7
1は基板、2と3は素子電極、4は導電性膜である。7
2は図7のDxmに対応するX方向配線(下配線とも呼
ぶ)、73は図7のDynに対応するY方向配線(上配線
とも呼ぶ)、151は層間絶縁層、152は素子電極2
と下配線72との電気的接続のためのコンタクトホール
である。
【0192】先ず、本実施例の電子源基板の製造方法
を、図15及び図16を用いて工程順に説明する。
【0193】工程−a 清浄化した青板ガラス上に厚さ0.5μmのシリコン酸
化膜をスパッタ法で形成した基板71上に、真空蒸着法
により、厚さ5nmのCr、厚さ600nmのAuを順
次積層した後、ホトレジスト(AZ1370/ヘキスト
社製)をスピンナーにより回転塗布、ベークした後、ホ
トマスク像を露光、現像して、下配線72のレジストパ
ターンを形成し、Au/Cr堆積膜をウエットエッチン
グして、所望の形状の下配線72を形成した(図15
(a))。
【0194】工程−b 次に、厚さ1μmのシリコン酸化膜よりなる層間絶縁層
151をスパッタリングにより堆積した(図15
(b))。
【0195】工程−c 工程−bで堆積したシリコン酸化膜にコンタクトホール
152を形成するためのホトレジストパターンを作り、
これをマスクとして層間絶縁層151をエッチングして
コンタクトホール152を形成した(図15(c))。
【0196】工程−d その後、素子電極2,3と素子電極間ギャップLとなる
べきパターンをホトレジスト(RD−2000N−41
/日立化成社製)で形成し、真空蒸着法により、厚さ5
nmのTi、厚さ100nmのNiを順次堆積した。ホ
トレジストパターンを有機溶剤で溶解し、Ni/Ti堆
積膜をリフトオフし、素子電極間隔Lが3μm、素子電
極の幅Wが300μmの素子電極2,3を形成した(図
15(d))。
【0197】工程−e 素子電極2,3の上に上配線73のホトレジストパター
ンを形成した後、厚さ5nmのTi、厚さ500nmの
Auを順次真空蒸着により堆積し、リフトオフにより不
要の部分を除去して、所望の形状の上配線73を形成し
た(図16(e))。
【0198】工程−f 膜厚100nmのCr膜を真空蒸着により堆積後、導電
性膜4の形状の開口部を有するようにパターニングし、
この上に有機Pd(ccp4230/奥野製薬(株)
製)をスピンナーにより回転塗布、300℃で10分間
の加熱焼成処理をした。こうして形成された主元素とし
てPdよりなる微粒子からなる導電性膜の膜厚は10n
m、シート抵抗値は2×104 Ω/□であった。続い
て、上記Cr膜及び焼成後の導電性膜を酸エッチャント
によりエッチングして導電性膜の不要部分とともに除去
し、所望の形状の導電性膜4を形成した(図16
(f))。
【0199】工程−g コンタクトホール152部分に開口を有するレジストパ
ターンを形成し、真空蒸着により厚さ5nmのTi、厚
さ500nmのAuを順次堆積した。リフトオフにより
不要な部分を除去することにより、コンタクトホール1
52を埋め込んだ(図16(g))。
【0200】以上の工程により、絶縁性基板71上に下
配線72、層間絶縁層151、上配線73、素子電極
2,3、導電性膜4を形成した。
【0201】工程−h 次に、上記電子源基板を図5に示す測定評価装置に設置
し、真空装置55内を排気ポンプ56にて排気し、十分
な真空度に達した後、図13に示すDx1とDy1を通じ電
子放出素子74の素子電極2,3間に電圧を印加し、導
電性膜4をフォーミング処理した。尚、フォーミング処
理の際は、Dx1からDxmまで、順次パルス波形が入るよ
うになっている。また、Dy1からDynまでは接地してあ
る。このフォーミング処理の電圧波形は図4(b)と同
様であり、本実施例ではT1 を1msec.、T2 を1
0msec.とし、約1.3×10-4Paの真空雰囲気
下で行った。
【0202】このようにして形成された電子放出部5
は、パラジウム元素を主成分とする微粒子が分散配置さ
れた状態となり、その微粒子の平均粒径は3nmであっ
た。
【0203】工程−i 次に、真空装置55内を一度排気した後、基板温度を1
00℃に設定し、窒素ガスボンベ57及び炭化水素ガス
ボンベ58に接続した不図示のマスフローコントローラ
を調節して所望の流量のガスが流れるようにし、バルブ
59を開いて真空装置55内に混合ガスを導入した。一
方で、ポンプ56を用いて排気は継続し、排気口のコン
ダクタンス及びガス流量を調節することで全圧を調整
し、真空計60に示される値を読み取った。本実施例で
は、炭化水素としてエチレンを使用し、この時、全圧
(ほぼ窒素の分圧に等しい)は1.3×104 Pa、エ
チレンの分圧は27Paに設定した。
【0204】一定時間が経過して、ガス流量および全圧
が安定した後、フォーミング処理した素子に、矩形波の
波高値15Vで通電印加し、活性化処理を施した。すな
わち、測定評価装置内で、素子電流If を測定しなが
ら、素子電極間にパルス電圧を印加した。約30分でI
f 値がほぼ飽和したため、通電を停止し、バルブを閉
め、活性化処理を終了した。
【0205】こうして基板上に並ぶ多数の素子に間隙6
を形成し、さらに窒素を含有する炭素を有する膜を形成
した。これを電子源基板71とし、図8に示す画像形成
装置を次のように作製した。
【0206】電子源基板71をリアプレート81上に固
定した後、電子源基板71の5mm上方に、フェースプ
レート86(ガラス基板83の内面に蛍光膜84とメタ
ルバック85が形成されて構成される)を支持枠82を
介して配置し、フェースプレート86、支持枠82、リ
アプレート81の接合部にフリットガラスを塗布し、大
気中で400℃で10分間焼成することで封着し、パネ
ル(図8中の外囲器88)を構成した。なお、リアプレ
ート81への電子源基板71の固定もフリットガラスで
行った。
【0207】蛍光膜84は、ストライプ形状(図9
(a)参照)の蛍光体とし、先にブラックストライプを
形成し、その間隙部にスラリー法により各色蛍光体92
を塗布して蛍光膜84を作製した。ブラックストライプ
の材料としては、通常よく用いられている黒鉛を主成分
とする材料を用いた。
【0208】また、蛍光膜84の内面側にはメタルバッ
ク85を設けた。メタルバック85は、蛍光膜84の作
製後、蛍光膜84の内面側表面の平滑化処理(通常、フ
ィルミングと呼ばれる)を行い、その後、Alを真空蒸
着することで作製した。
【0209】フェースプレート86には、更に蛍光膜8
4の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に透明電
極を設ける場合もあるが、本実施例ではメタルバック8
5のみで十分な導電性が得られたので省略した。
【0210】前述の封着を行う際、カラーの場合は各色
蛍光体92と電子放出素子とを対応させなくてはいけな
いため、十分な位置合わせを行った。
【0211】こうして作製された、電子源を擁する外囲
器は、安定化処理を行うために1.3×10-4Pa程度
の真空度まで排気し、300℃20時間の真空ベーキン
グを行った。
【0212】次に、室温まで冷却し、その後、不図示の
排気管をガスバーナーで熱することで溶着し外囲器の封
止を行った。
【0213】最後に、封止後の真空度を維持するため
に、高周波加熱法でゲッター(不図示)を飛散させ、外
囲器内の真空度の維持を図った。
【0214】以上のように完成した本実施例の画像表示
装置において、各電子放出素子には、容器外端子Dox1
乃至Doxm とDoy1 乃至Doyn を通じて、走査信号及び
変調信号を不図示の信号発生手段より夫々印加すること
により、電子放出させ、高圧端子87を通じてメタルバ
ック85に5kV以上の高圧を印加し、電子ビームを加
速し、蛍光膜84に衝突させ、励起・発光させることで
画像を表示した。
【0215】その結果、本実施例の画像形成装置は、テ
レビジョンとして十分満足できる輝度(約180fL)
で良好な画像を長期にわたって安定に表示することがで
きた。
【0216】[実施例5]本実施例では、実施例4で作
製した画像表示装置を、図10に示した駆動回路を用い
て、NTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行った。
【0217】本表示装置においては、とりわけ表面伝導
型電子放出素子を電子ビーム源とするディスプレイパネ
ルの薄型化が容易であるため、表示装置の奥行きを小さ
くすることができる。それに加えて、表面伝導型電子放
出素子を電子ビーム源とするディスプレイパネルは大面
積化が容易で輝度が高く視野角特性にも優れるため、本
表示装置は臨場感にあふれ迫力に富んだ画像を視認性良
く表示することが可能である。
【0218】本実施例における表示装置は、NTSC方
式のテレビ信号に応じたテレビ画像を良好に、かつ長時
間安定して表示することができた。
【0219】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
炭化水素と窒素から構成される混合気体中で、間隙が形
成された導電性膜に電圧印加することで、間隙内の基板
上及びその近傍の導電性膜上に窒素を含有する炭素を有
する膜が堆積し、高効率な電子放出素子を提供すること
ができる。
【0220】また、活性化時の混合ガスの圧力を、該混
合ガスが粘性流気体として扱える程度にしたことによっ
て、必要なガスを速やかに供給することができる。ま
た、高真空の排気系を用いることなく、活性化を行える
ので、生産コストを低く抑えることができる。
【0221】また、基板上に複数個配置して電子源を構
成した場合においては、各電子放出素子が、良好な電子
放出特性を長時間にわたり保持し得る電子源を提供でき
る。
【0222】さらに、画像形成装置においては、上記の
電子源と画像形成部材より構成され、入力信号に基づい
て画像を形成するため、電子放出特性の安定性と寿命の
向上がなされ、例えば蛍光体を画像形成部材とする画像
形成装置においては、高品位な画像形成装置、例えばカ
ラーフラットテレビが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子の
一構成例を示す模式図である。
【図2】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子の
別の構成例を示す模式図である。
【図3】本発明の電子放出素子の製造方法を説明するた
めの図である。
【図4】本発明の電子放出素子の製造に際して採用でき
る通電フォーミング処理における電圧波形の一例を示す
模式図である。
【図5】本発明の電子放出素子の製造に用いることので
きる測定評価装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子の
特性を示す図である。
【図7】本発明を適用可能な単純マトリクス配置の電子
源の一例を示す模式図である。
【図8】本発明を適用可能な画像形成装置の表示パネル
の一例を示す模式図である。
【図9】蛍光膜の一例を示す模式図である。
【図10】画像形成装置にNTSC方式のテレビ信号に
応じて表示を行うための駆動回路の一例を示すブロック
図である。
【図11】本発明を適用可能なはしご型配置の電子源の
一例を示す模式図である。
【図12】本発明を適用可能な画像形成装置の表示パネ
ルの別の例を示す模式図である。
【図13】本発明の実施例に係るマトリクス配線した電
子源の一部を示す模式図である。
【図14】図13のA−A’断面模式図である。
【図15】本発明の実施例に係るマトリクス配線した電
子源の製造工程を示す図である。
【図16】本発明の実施例に係るマトリクス配線した電
子源の製造工程を示す図である。
【図17】従来例の表面伝導型電子放出素子の模式図で
ある。
【符号の説明】
1 基板 2,3 素子電極 4 導電性膜 5 電子放出部 21 段差形成部 50 素子電流If を測定するための電流計 51 電子放出素子に素子電圧Vf を印加するための電
源 52 電子放出部5より放出される放出電流Ie を測定
するための電流計 53 アノード電極54に電圧を印加するための高圧電
源 54 アノード電極 55 真空容器 56 排気ポンプ 57 窒素ガスボンベ 58 炭化水素ガスボンベ 59 バルブ 60 真空計 71 電子源基板 72 X方向配線 73 Y方向配線 74 電子放出素子 75 結線 81 リアプレート 82 支持枠 83 ガラス基板 84 蛍光膜 85 メタルバック 86 フェースプレート 87 高圧端子 88 外囲器 91 黒色導電材 92 蛍光体 101 表示パネル 102 走査回路 103 制御回路 104 シフトレジスタ 105 ラインメモリ 106 同期信号分離回路 107 変調信号発生器 Vx,Va 直流電圧源 110 電子源基板 111 電子放出素子 112 電子放出素子を配線するための共通配線 120 グリッド電極 121 電子が通過するための開口 151 層間絶縁層 152 コンタクトホール
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 敬介 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 上野 理恵 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 5C031 DD09 DD17 DD19

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に形成された一対の電極間を接続
    する導電性膜の一部に間隙を形成する工程と、該間隙内
    の該基体上および、該導電性膜上に炭素を有する膜を形
    成する工程とを有し、 該炭素を有する膜を形成する工程が、 炭化水素ガスと、窒素ガスとを含むガスを前記間隙に接
    触させた状態で、前記基体を加熱しながら前記一対の電
    極間に電圧を印加する工程である、ことを特徴とする電
    子放出素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記炭化水素ガスと窒素ガスとを含むガ
    スの全圧が、1.3×101 〜6.7×104 Paであ
    り、前記炭化水素の分圧が、1.3×100〜1.3×
    102 Paであることを特徴とする請求項1に記載の電
    子放出素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記基体を加熱する温度が、50℃〜2
    00℃であることを特徴とする請求項1または2に記載
    の電子放出素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 基体上に電子放出素子を複数配列形成し
    た電子源の製造方法において、該電子放出素子を請求項
    1乃至3のいずれかに記載の製造方法により製造するこ
    とを特徴とする電子源の製造方法。
  5. 【請求項5】 電子源と、画像形成部材とを有する画像
    形成装置の製造方法において、該電子源を請求項4に記
    載の製造方法により製造することを特徴とする画像形成
    装置の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR100429523B1 (ko) * 2000-06-30 2004-04-29 캐논 가부시끼가이샤 전자원제조장치
US6897612B2 (en) 2000-04-03 2005-05-24 Matsushita Electric Industrial Co., Ltd. Discharge lamp, method for producing the same and lamp unit

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