JP2000170920A - グランドパッキンおよびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 膨張黒鉛系パッキンからの漏れを有効に防止
でき、製造が容易で安価に製造できるグランドパッキン
およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 中芯部材１の周りを、膨張黒鉛製テープ
を補強繊維で被覆した複数本の編み糸３で編組する紐状
のグランドパッキンにおいて、中芯部材１と編み糸３の
間に剛直な繊維からなる網状素材２を設けて構成する。 【効果】 網状素材２による中心部材１の位置ずれや変
形の防止、編み糸３の網状素材２へのくい込みによる編
み糸同士の密着性向上で、シール性が改善される。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、バルブ等の機器の
スタフィングボックス内に装填し、バルブステムからの
流体の漏れを防止する等の用途に使用されるグランドパ
ッキンおよびその製造方法の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、バルブステムあるいは回転軸（以
下、軸と称する）からの漏れを防止するために使用する
パッキンとしては、石綿繊維やカーボン繊維等の耐熱繊
維を八編み、袋編みあるいは格子編み等に編組し、潤滑
剤等を含浸させるか表面処理を行うかした、いわゆる編
組パッキンが多く使用されている。

【０００３】上記編組パッキンは、耐熱性・耐薬品性・
耐摩耗性等が優れているために現在でも広く使用されて
いるが、近時、環境問題に対する意識の高まり等から微
少な漏れも問題とされるようになり、シール性の良い膨
張黒鉛を主原料として用いるパッキン（以下、膨張黒鉛
系パッキンと称する）が使用されるようになってきてい
る。

【０００４】前記膨張黒鉛系パッキンには種々のタイプ
があるが、最も一般的なものは、膨張黒鉛製シートを所
定の幅にスリットして得たテープ状素材を成形用金型内
に渦巻き状または同心円状に配置した後、これを縦方向
に圧縮成形加工して得られたリング状グランドパッキン
である。

【０００５】ところが、上記タイプのグランドパッキン
はあらかじめ用いる軸径に合わせて個々にリング状に成
形する必要があるために汎用性に乏しく、軸径の異なる
ものには使用することができない不具合がある。また膨
張黒鉛は脆い性質を有するために曲げやひねり、また引
張り等により簡単に亀裂や破断などを起こしてしまうこ
とから、一度装着したものを交換のために取り出す作業
が極めて困難である。

【０００６】そこで、別の構造の膨張黒鉛系パッキンと
して、膨張黒鉛製シートを所定の幅にスリットして得た
テープ状素材の周囲を補強繊維で袋編みするなどの方法
で、膨張黒鉛と補強繊維とを複合させた編み糸を作り、
これを八編み、袋編みあるいは格子編み等に編組して紐
状体を構成することで、様々な軸径に合わせて所定の長
さに切断して使用できるような編組タイプも最近使われ
ている。

【０００７】そして、上記タイプの膨張黒鉛系編組パッ
キンの場合、パッキンを装着するスタフィングボックス
の大きさに合わせて、種々の寸法の紐が用意されている
が、寸法の大きなものは、中芯部材の周囲を膨張黒鉛と
補強繊維とを複合させた編み糸で袋編みする方法で製造
されているものが多用されている。

【０００８】上記中芯部材としては、膨張黒鉛と補強繊
維からなる編み糸を束ねたものや編組したもの、あるい
は無機繊維や有機繊維を束ねたものや編組したもの、さ
らに繊維、ゴム、充填材等の練りものを棒状に成形した
ものなど種々の構造をしたものがあり、シール性や潤滑
性などのパッキンの要求性能に応じて適宜使用されてい
る。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
な中芯部材を用いた膨張黒鉛製編組パッキンでは、中芯
部材とその周囲に編組された編み糸を密着させることが
難しく、パッキンをバルブの中のスタフィングボックス
内に装着する時に中芯部材が位置ずれを起こし、グラン
ドパッキン内部の構成比率が変化し、密度が不均一にな
ったり、編み糸同士あるいは編み糸と中芯部材との間に
隙間が形成されやすい構造となり、浸透漏れを発生する
ことがよくある。

【００１０】また、パッキンを高温で長時間使用した場
合に、中芯部材が劣化して、強度低下を起こし、パッキ
ンを交換する際にパッキンが取り出しにくくなるという
問題を発生することがある。

【００１１】本発明の目的は、以上の問題点に鑑みてな
されたもので、膨張黒鉛系パッキンからの漏れを有効に
防止でき、製造が容易で安価に製造できる膨張黒鉛系パ
ッキンおよびその製造方法を提供することにある。

【００１２】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項１の発明は、中芯部材の周りを、膨張黒鉛製
テープの周囲を補強繊維で被覆した編み糸を複数本用い
て編組する紐状のグランドパッキンにおいて、中芯部材
と編み糸の間に剛直な繊維からなる網状素材を設けたこ
とを要旨とする。

【００１３】請求項２の発明は、請求項１において、上
記紐状グランドパッキンをリング状に加圧成形加工した
ことを要旨とする。

【００１４】請求項３の発明によるグランドパッキンの
製造方法は、中芯部材の周りを被覆するように剛直な繊
維からなる網状素材を挿入しながら、その外周を膨張黒
鉛製テープの周囲を補強繊維で被覆した編み糸を複数本
用いて編組し、紐状としたものを圧縮ロールで四方から
加圧成形して断面略四角形の紐状とするか、または編組
後の紐状としたものを所定の長さに切断し、これを成形
金型にてリング状に加圧成形加工することを要旨とす
る。

【００１５】

【発明の実施の形態】本発明の基本的な実施の形態とし
ては、例えば図１に示すように、棒状成形物等からなる
中芯部材１の周りを金属線等の剛直な繊維からなる網状
素材２で被覆し、さらにその外周を膨張黒鉛製テープの
周囲を補強繊維で被覆した編み糸３を複数本用いて編組
して紐状グランドパッキンを構成する。

【００１６】ここで、剛直な繊維からなる網状素材とし
ては、強度や加工性等の理由から、金属金網を用いるこ
とが望ましいが、使用温度において弾性を維持できれば
炭素繊維、ガラス繊維などを用いることもできる。

【００１７】本発明者等は、膨張黒鉛系編組パッキンの
シール性をさらに改善するために検討を行い、中芯部材
の周りを膨張黒鉛製テープの周囲を補強繊維で被覆した
編み糸を複数本用いて編組した紐状パッキンが浸透漏れ
を起こす原因として、中芯部材の位置ずれにより応力が
不均一になったり、編み糸と編み糸の間に隙間が形成さ
れることが大きいことを解明した。

【００１８】そこで、これを改善するためにさらに鋭意
検討を行った結果、剛直な繊維からなる網状素材で中芯
部材を被覆することにより、中芯部材の変形を防止する
ことができ、さらにロール成形時に編み糸が網状素材に
くい込むことにより、編み糸同士の密着性が向上し、シ
ール性が格段に改善されることを見いだした。

【００１９】また、上記剛直な繊維からなる網状素材
は、高温においても十分な反発弾性を有しているため、
パッキンの復元性が大きくなり、これもシール性の向上
に寄与しているものと思われる。

【００２０】さらに、パッキン交換時にも、パッキンを
取り出すための治具をこの網状素材に引っかけることに
より容易に取り出すことができるという効果もあること
が判明した。

【００２１】

【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明は実施例に限定されるものではない。

【００２２】実施例１ まず図１に示すように、アラミド繊維、溶剤で潤滑させ
たゴム、膨張黒鉛粉末、充填材、薬品等を混練し、棒状
に押し出した後溶剤を乾燥させた棒状成形物からなる中
芯部材１を作り、その中芯部材１の周りを線径０．１５
ｍｍ、幅３５ｍｍのステンレス線からなる平織り金網２
（光陽石綿（株）製）で被覆し、次に厚さ０．５ｍｍ、
密度１．０ｇ／ｃｍ³の膨張黒鉛製シートを５ｍｍ幅に
スリットし、その周囲を線径０．０８ｍｍのステンレス
線で袋編みしたものを編み糸３とし、この編み糸３を１
６本用いて前記ステンレス線からなる平織り金網２で被
覆した中芯部材の外周を袋網みして紐状体４とする。そ
して、図２に示すように、前記紐状体４を所定の寸法で
切断してリング状に加圧成形することでリング状（内径
２６ｍｍ、外径４２ｍｍ、高さ８ｍｍ）のグランドパッ
キンＡを得た。

【００２３】比較例１ 図３に示すように、実施例１と同じ棒状成形物からなる
中芯部材１の周りを膨張黒鉛製シートの周囲をステンレ
ス線で袋編みした実施例１と同じ編み糸３を１６本用い
て袋編みして紐状体５とする。そして、図４に示すよう
に、この紐状体５を所定の寸法で切断してリング状に加
圧成形することでリング状（内径２６ｍｍ、外径４２ｍ
ｍ、高さ８ｍｍ）のグランドパッキンＢを得た。

【００２４】上記実施例１および比較例１のリング状グ
ランドパッキンを図５に示すシール試験機（ステム径２
６ｍｍ、スタフィングボックス内径４２ｍｍ、スタフィ
ングボックス深さ１５０ｍｍ）にそれぞれ７リングを装
着して面圧３００ｋｇｆ／ｃｍ²で締め付け、２０ｋｇ
ｆ／ｃｍ²のＮ₂ガスを負荷したときの漏洩量を測定し
た。そしてこの試験機を３００℃で１６時間加熱し、常
温まで放冷した後、再度２０ｋｇｆ／ｃｍ²のＮ₂ガスを
負荷したときの漏洩量を測定した。

【００２５】なお、図５において、Ｄはシール試験機本
体、６は軸、７はパッキン押さえ、８は締め付けボル
ト、９はランタンリング、１０はガス加圧口、１１はガ
ス出口、Ｐは供試体に用いたリング状グランドパッキン
である。表１に、常温時および加熱後における漏洩量の
変化を示す。

【００２６】

【表１】

【００２７】表１に示す如く、本発明による実施例１で
得られた膨張黒鉛系グランドパッキンは、比較例１の膨
張黒鉛系グランドパッキンに比べて常温時、加熱後とも
にシール性が優れていることが確認された。

【００２８】なお、剛直な繊維からなる網状素材の被覆
方法としては、中芯部材を編み糸で編組する時に網状素
材を巻き込むようにすれば良く、中芯部材の全周を完全
に被覆しなくても十分効果は見られた。また、中芯部材
の周りを金属線等で袋編みするような方法でも良いこと
は言うまでもない。

【００２９】

【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、従
来の膨張黒鉛系編組グランドパッキンと比較して、製作
が容易でさらに良好なシール性を保持することができる
膨張黒鉛系グランドパッキンが安価に得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の紐状グランドパッキンの実施例の断面
斜視図である。

【図２】本発明のリング状グランドパッキンの実施例の
断面斜視図である。

【図３】従来の紐状グランドパッキンの断面斜視図であ
る。

【図４】従来のリング状グランドパッキンの断面斜視図
である。

【図５】試験機の断面図である。

【符号の説明】

１ 中芯部材 ２ 網状素材 ３ 膨張黒鉛製編み糸 ４ 本発明の紐状グランドパッキン ５ 従来の紐状グランドパッキン Ａ 本発明のリング状グランドパッキン Ｂ 従来のリング状グランドパッキン Ｐ 供試用グランドパッキン Ｎ₂ 窒素ガス Ｄ 試験機本体 ６ 軸 ７ パッキン押さえ ８ 締め付けボルト ９ ランタンリング １０ ガス加圧口 １１ ガス出口

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 中芯部材の周りを、膨張黒鉛製テープの
   周囲を補強繊維で被覆した編み糸を複数本用いて編組す
   る紐状のグランドパッキンにおいて、中芯部材と編み糸
   の間に剛直な繊維からなる網状素材を設けたことを特徴
   とする紐状グランドパッキン。
2. 【請求項２】 中芯部材の周りを、膨張黒鉛製テープの
   周囲を補強繊維で被覆した編み糸を複数本用いて編組
   し、中芯部材と編み糸の間に剛直な繊維からなる網状素
   材を設け、紐状としたものをリング状に加圧成形加工し
   たことを特徴とするリング状グランドパッキン。
3. 【請求項３】 中芯部材の周りを被覆するように剛直な
   繊維からなる網状素材を挿入しながら、その外周を膨張
   黒鉛製テープの周囲を補強繊維で被覆した編み糸を複数
   本用いて編組し、紐状としたものを圧縮ロールで四方か
   ら加圧成形して断面略四角形の紐状とするか、または編
   組後の紐状としたものを所定の長さに切断し、これを成
   形金型にてリング状に加圧成形加工したことを特徴とす
   るグランドパッキンの製造方法。