JP2000169942A - 耐アウトガス性および耐食性に優れた快削マルテンサイト系ステンレス鋼およびステンレス鋼部品の加工方法 - Google Patents

耐アウトガス性および耐食性に優れた快削マルテンサイト系ステンレス鋼およびステンレス鋼部品の加工方法

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JP2000169942A
JP2000169942A JP10343927A JP34392798A JP2000169942A JP 2000169942 A JP2000169942 A JP 2000169942A JP 10343927 A JP10343927 A JP 10343927A JP 34392798 A JP34392798 A JP 34392798A JP 2000169942 A JP2000169942 A JP 2000169942A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐アウトガス性,硬さ(耐摩耗性)および耐
食性に優れた快削マルテンサイト系ステンレス鋼を提供
する。 【解決手段】 重量%で、C:0.05〜0.65%、
Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜0.4
0%、P:0.04%以下、S:0.05〜0.35
%、Cu:0.02〜0.50%、Ni:0.02〜
0.50%、Cr:10.0〜15.0%、N:0.0
4〜0.20%、Se:0.10〜0.50%、O:
0.0040〜0.0200%、その他適宜の有効成分
を含み、残部Feおよび不純物からなる耐アウトガス
性,硬さ(耐摩耗性)および耐食性に優れた快削マルテ
ンサイト系ステンレス鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた精密切削仕
上げ加工性,硬さおよび耐食性が必要とされ、かつま
た、使用中においてH2Sガスなどの有害なガス放出を
抑制する必要性のある機器ないしは部品の素材として利
用するのに適した耐アウトガス性および耐食性に優れた
快削マルテンサイト系ステンレス鋼に関し、さらにま
た、前記快削マルテンサイト系ステンレス鋼よりなる部
品の加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】HDD(ハードディスクデバイス)部品
をはじめとするコンピュータ部品,プリント基板近接部
品などの各種電子機器では、一般に、AgやCuの接点
などからなる部材をも含めたプリント基板が用いられ
る。
【0003】一方、Ag,Cuなどの金属は硫化しやす
く、使用されている部品からH2Sガスが発生すると硫
化されることによって支障が起きる。
【0004】したがって、使用中にH2Sガスが発生し
ないように鋼中に含まれるS含有量を低減することが望
まれることとなる。
【0005】一方、コンピュータ部品やプリント基板近
接部品などの精密機器部品は、極めて高い仕上げ加工精
度が求められてきており、かつまた、硬さ(耐摩耗性)
および耐食性をも同時に具備することが要求されるよう
になってきている。
【0006】これまで、この種の精密機器部品の素材と
してはマルテンサイト系ステンレス鋼が用いられてきた
が、JIS SUS410,SUS420J2等の既存
のマルテンサイト系ステンレス鋼では、被削性が劣るた
め十分な仕上げ加工精度を得ることができず、生産性が
低くなってしまうという問題があると共に、SUS41
6,SUS420F等の既存の含S快削ステンレス鋼で
は使用中にH2Sガスを発生することがあって十分な耐
アウトガス性を確保することができないという問題が顕
在化してきた。
【0007】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題にかん
がみてなされたものであって、H2Sガス等の有害なガ
スを発生せず、耐アウトガス性の信頼性が極めて高く、
しかも被削性,硬さ(耐摩耗性)および耐食性にも優れ
たマルテンサイト系ステンレス鋼およびこれを素材とす
る部品を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる耐アウト
ガス性,硬さ(耐摩耗性)および耐食性に優れた快削マ
ルテンサイト系ステンレス鋼は、請求項1に記載してい
るように、重量%で、C:0.05〜0.65%、S
i:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜0.40
%、P:0.04%以下、S:0.05〜0.35%、
Cu:0.02〜0.50%、Ni:0.02〜0.5
0%、Cr:10.0〜15.0%、N:0.04〜
0.20%、Se:0.10〜0.50%、O:0.0
040〜0.0200%、残部Feおよび不純物からな
る成分組成を有するものとしたことを特徴としている。
【0009】そして、本発明に係わる耐アウトガス性,
硬さ(耐摩耗性)および耐食性に優れた快削マルテンサ
イト系ステンレス鋼の実施態様においては、請求項2に
記載しているように、Mo:0超過〜1.00%,W:
0超過〜1.00%のうちの1種または2種を含むもの
としたことを特徴としている。
【0010】同じく、本発明に係わる耐アウトガス性,
硬さ(耐摩耗性)および耐食性に優れた快削マルテンサ
イト系ステンレス鋼の実施態様においては、請求項3に
記載しているように、Pb:0.03〜0.20%,B
i:0.03〜0.15%,Te:0.01〜0.10
%のうちの1種または2種以上を含むものとしたことを
特徴としている。
【0011】同じく、本発明に係わる耐アウトガス性,
硬さ(耐摩耗性)および耐食性に優れた快削マルテンサ
イト系ステンレス鋼の実施態様においては、請求項4に
記載しているように、B,Ca,Mg,REMのうちの
1種または2種以上:0.0005〜0.0100%を
含むものとしたことを特徴としている。
【0012】同じく、本発明に係わる耐アウトガス性,
硬さ(耐摩耗性)および耐食性に優れた快削マルテンサ
イト系ステンレス鋼の実施態様においては、請求項5に
記載しているように、Nb,V,Ti,Zr,Hf,T
aのうちの1種または2種以上:0.03〜0.50%
を含むものとしたことを特徴としている。
【0013】さらに、本発明に係わるステンレス鋼部品
の加工方法は、請求項6に記載しているように、請求項
1ないし5のいずれかに記載の鋼を素材として所定形状
に加工し、その後例えば常温〜350℃の酸化性雰囲気
に曝す不動態化処理を行うようにしたことを特徴として
いる。
【0014】
【発明の作用】本発明に係わる耐アウトガス性,硬さ
(耐摩耗性)および耐食性に優れた快削マルテンサイト
系ステンレス鋼は、上記した化学成分組成を有するもの
であって、H2Sガスの発生を防止するためにMn/S
比を低減し、硫化物自体の耐溶出性を高める共に、S含
有量を適切な範囲にコントロールし、より一層の被削性
の確保のためにSeを適量添加する。
【0015】そして、所要の硬さを確保するためにCを
添加するが、このCの多量添加は耐食性を劣化させるの
でNを有効に活用したものとしている。
【0016】そして場合によっては、耐食性をより一層
向上させるためにMoやWを含有させることも可能であ
る。
【0017】同じく場合によっては、被削性をより一層
向上させるために使用目的上において問題のない限りP
b,Bi,Teの1種以上を含有させることも可能であ
る。
【0018】同じく場合によっては、熱間加工性をより
一層向上させるためにB,Ca,Mg,REMの1種以
上を含有させることも可能である。
【0019】同じく場合によっては、結晶粒をより微細
化して靭性をさらに向上させるために、Nb,V,T
i,Zr,Hf,Taの1種以上を含有させることも可
能である。
【0020】本発明に係わる耐アウトガス性,硬さ(耐
摩耗性)および耐食性に優れたステンレス鋼部品の加工
方法では、耐食性をより一層改善するため、前記成分組
成の快削マルテンサイト系ステンレス鋼を素材として所
定形状に加工した後例えば常温〜350℃程度の温度の
酸化性雰囲気に曝す不動態化処理を行うようになすこと
も可能である。
【0021】この不動態化処理では、一般的に行われて
いる硝酸等の酸化性酸中への浸漬のほか、雰囲気を制御
した熱処理により不動態化するようにしてもよい。
【0022】以下、本発明に係わる耐アウトガス性,硬
さ(耐摩耗性)および耐食性に優れた快削マルテンサイ
ト系ステンレス鋼の成分組成(重量%)の限定理由につ
いてさらに詳細に説明する。
【0023】C:0.05〜0.65% Cは鋼部品の硬さ(耐摩耗性)を確保するのに有効な成
分であるが、耐食性等の特性を劣化させるため、Nを製
造上可能な範囲で多く添加したうえで、所望の硬さを得
るのに必要なC含有量とすることが望ましく、そのため
に0.05%以上、場合によっては0.10%以上とす
る。しかし、多く含有しても得られる硬さが飽和してく
ると共に、必要以上に大きい1次炭化物の生成によって
焼鈍時の切削性をはじめとする加工性の低下をきたすこ
とから0.65%以下、望ましくは0.30%以下とす
るのが良い。
【0024】Si:0.10〜1.00% Siは鋼溶製時の脱酸剤として有効であるので、0.1
0%以上、望ましくは0.20%以上とするのが良い
が、多量のSi含有は金属間化合物の析出を増長するほ
か、母相強度を増加して被削性を低下させるので、1.
00%以下、望ましくは0.70%以下、さらに望まし
くは0.50%以下とするのが良い。
【0025】Mn:0.10〜0.40% MnはMn/S比を低減して硫化物自体の耐溶出性を高
めることにより有害なH2Sガスの発生を防止するため
に少ない方が望ましく、製造コストを考慮して0.10
%を下限としている。そして、Mn含有量が多くなると
Mn/S比が大きくなって耐アウトガス性が低下し、耐
食性の劣化をきたすことから0.40%以下、望ましく
は0.30%以下とするのが良い。
【0026】P:0.04%以下 Pは粒界に偏析して耐食性や強度等の特性を劣化させる
ので、できるだけ少ないことが望ましく、製造コストと
の兼ね合いで0.04%以下、望ましくは0.03%以
下とするのが良い。
【0027】S:0.05〜0.35% Sは耐食性および耐アウトガス性の面、とくにH2Sガ
スの発生防止の面からは低い方が望ましいが、あまりに
低いと被削性が良くないものとなることから0.05%
以上、望ましくは0.10%以上とするのが良いが、多
すぎると上記したごとく耐アウトガス性が低下し、耐食
性の確保がむつかしくなることから0.35%以下、望
ましくは0.30%以下、さらに望ましくは0.20%
以下とするのが良い。
【0028】Cu:0.02〜0.50% Cuは耐食性、とくに還元性酸環境中での耐食性を向上
するのに有効であるので、0.02%以上、望ましくは
0.05%以上とするのが良いが、必要以上の添加は相
安定性を低下させると共に焼鈍時の硬さの上昇を招くこ
ととなるので、0.50%以下、望ましくは0.20%
以下とするのが良い。
【0029】Ni:0.02〜0.50% Niは耐食性、とくに還元性酸環境中での耐食性を向上
するのに有効であるので、0.02%以上、望ましくは
0.10%以上とするのが良いが、必要以上の添加は相
安定性を低下させると共に焼鈍時の硬さの上昇を招くこ
ととなるので、0.50%以下、望ましくは0.30%
以下とするのが良い。
【0030】Cr:10.0〜15.0% Crはマルテンサイト系ステンレス鋼の基本成分であっ
て、良好な耐食性を確保するための必須の元素であり、
10.0%以上、望ましくは11.5%以上含有させ
る。しかし、多量の含有は相安定性を低下させると共に
熱間加工性を劣化させることとなるため15.0%以
下、望ましくは13.0%以下とするのが良い。
【0031】N:0.04〜0.20% Nは所要の硬さを確保するために添加したCによる耐食
性の劣化を抑制して良好なる耐食性および硬さを有する
ものとするために有効な成分であるので0.04%以
上、望ましくは0.06%以上とするのが良いが、必要
以上に添加しようとすると鋼溶製時にNブローを生じて
鋼塊の健全性を低下させると共に製造コストをも増大さ
せるので0.20%以下、望ましくは0.15%以下と
するのが良い。
【0032】Se:0.10〜0.50% SeはSの代替成分として被削性を向上させるために有
効な元素であり、添加量が多いほど被削性は向上するの
で、0.10%以上、望ましくは0.20%以上とする
が、過剰の添加は熱間加工性を劣化させると共にコスト
の上昇を招くことから0.50%以下、望ましくは0.
40%以下とするのが良い。
【0033】O:0.0040〜0.0200% Oはマルテンサイト系ステンレス鋼の被削性を確保する
ため一定以上の添加、望ましくは0.0040%以上、
さらに望ましくは0.0060%以上とするのが良い
が、過剰に含有すると多量の酸化物を生成して逆に被削
性を低下させることから0.0200%以下、望ましく
は0.0150%以下とするのが良い。
【0034】Mo:0超過〜1.00%,W:0超過〜
1.00%のうちの1種または2種 Mo,Wはマルテンサイト系ステンレス鋼の耐食性をよ
り一層向上させるのに有効な成分であるので、必要に応
じ添加するのも良いが、多量に含有すると熱間加工性を
低下させると共にコストの上昇を招くことから、Moに
ついては1.00%以下、Wについても1.00%以下
とするのが良い。
【0035】Pb:0.03〜0.20%,Bi:0.
03〜0.15%,Te:0.01〜0.10%のうち
の1種または2種以上 Pb,Bi,Teはマルテンサイト系ステンレス鋼の被
削性をさらに向上させるのに有効な成分であるので、必
要に応じPbについては0.03%以上、Biについて
も0.03%以上、Teについては0.01%以上含有
するものとなすのも良いが、多量に含有すると熱間加工
性を低下させる傾向となるため、Pbについては0.2
0%以下、Biについては0.15%以下、Teについ
ては0.10%以下とするのが良い。
【0036】B,Ca,Mg,REMのうちの1種また
は2種以上:0.0005〜0.0100% B,Ca,Mg,REM(ミッシュメタル(Mm)を含
む希土類元素の1種または2種以上)はマルテンサイト
系ステンレス鋼の熱間加工性および被削性の向上に有効
な成分であるので、必要に応じこれらの1種または2種
以上の合計で0.0005%以上含有するものとなすの
も良いが、多量に含有すると鋼の清浄度を低下させるこ
ととなるため、含有するとしてもこれらの合計で0.0
100%以下とするのが良い。
【0037】Nb,V,Ti,Zr,Hf,Taのうち
の1種または2種以上:0.03〜0.50% Nb,V,Ti,Zr,Hf,Taは結晶粒を微細化
し、固溶強化等により靭性をさらに向上するのに有効な
成分であるので、必要に応じこれらの1種または2種以
上の合計で0.03%以上含有するものとなすのも良い
が、多量に含有すると炭窒化物を形成し、鋼の清浄度を
低下させて被削性を劣化させることとなるので、含有す
るとしてもこれらの合計で0.50%以下とするのが良
い。
【0038】
【実施例】大気誘導炉溶解によって表1に示す成分組成
を有するマルテンサイト系ステンレス鋼の鋼塊(重量5
0kg)を製造し、熱間鍛造を行って直径60mmφお
よび直径20mmφの丸棒材を得たのち、各丸棒材に対
して750〜820℃での焼鈍を行った。
【0039】なお、表1において、供試材No.1〜1
1が本発明鋼、供試材No.12がS含有量の少ないS
US410鋼、供試材No.13がS含有量の多いSU
S416鋼、供試材No.14がSeが多くかつMn含
有量が多い鋼、供試材No.15がSe含有量の少ない
鋼、供試材No.16がMn含有量の多い鋼である。
【0040】
【表1】
【0041】次に、上記直径60mmφの焼鈍材につい
て、下記条件による旋削試験およびドリル試験を行っ
た。
【0042】◎旋削試験 ・工具 :サーメット ・切削速度:120m/min ・送り :0.05mm/rev ・切込み量:0.1mm ・切削油 :水溶性 ・摩耗量 :60min切削後のクランク摩耗量(μ
m)
【0043】◎ドリル試験 ・工具 :SKH9 φ5mm ・送り :0.07mm/rev ・穴深さ :15mm ・切削油 :なし(乾式) ・工具寿命:(穿孔不可能)5000mmとなる切削速
度(m/min)
【0044】これらの結果を表2の旋削試験およびドリ
ル試験の欄に示す。
【0045】次に、上記直径20mmφの焼鈍材につい
て、焼入れ(1000℃×0.5h油冷)および焼戻し
(180℃×1h空冷)を施したのち、硬さの測定を行
った。そして、5点の平均値を求めたところ、表2の硬
さの欄に示す結果であった。
【0046】次いで、上記直径20mmφの焼入れ焼戻
し材を15mm×3mm×25mmの寸法に加工したの
ち、全面を#400で研磨仕上げし、続いて、温度:5
0℃,酸化性雰囲気:30%硝酸+2%重クロム酸カリ
ウム,時間:1hの条件による不動態化処理を行ってア
ウトガス試験片とすることによりアウトガス試験(n=
2)を実施した。
【0047】このアウトガス試験では、密閉容器中に、
上記アウトガス試験片と、5mm×10mmのAg箔
と、0.5ccの純水を入れ、85℃で20時間保持し
た後のAg箔の色の変化(すなわち、Ag2Sの生成度
合い)を調べた。
【0048】そして、この際の評価として、変色のない
ものをクラスAとし、変色大のもの(アウトガス発生量
が大のもの)をクラスFとする6段階評価(すなわち、
A>B>C>D>E>F)にて行った。この結果を同じ
く表2のアウトガス試験の欄に示す。
【0049】次に、上記直径20mmφの焼入れ焼戻し
材を直径10mmφ×50mmの寸法に加工したのち、
全面を#320で研磨仕上げし、続いて上記と同様の条
件による不動態化処理を行って湿潤試験片とすることに
より湿潤試験(n=3)を実施した。
【0050】この湿潤試験では、温度:50℃,湿度:
98%、時間:96h保持した後の錆発生の有無を調べ
た。
【0051】そして、この際の評価として、錆発生のな
いものをクラスAとし、全面に錆発生したものをクラス
Fとする6段階評価(すなわち、A>B>C>D>E>
F)にて行った。この結果を同じく表2の湿潤試験の欄
に示す。
【0052】
【表2】
【0053】表1および表2に示す結果より明らかなよ
うに、SおよびSe含有量の少ないSUS410鋼であ
る供試材No.12では被削性にかなり劣っており、M
n/S比が大でSe含有量の少ない供試材No.13で
はH2Sガスを発生するためアウトガス試験における変
色が大であり、Mn/S比が大でSe含有量の多い供試
材No.14では被削性が良好であるもののH2Sガス
を発生するためアウトガス試験における変色が大であ
り、Mn含有量およびSe含有量の少ない供試材No.
15では耐アウトガス性は良好であるものの被削性があ
まり良くなく、Mn含有量およびSe含有量の多い供試
材No.16では耐アウトガス性があまり良くないもの
となっていた。
【0054】これに対して、本発明鋼であるNo.1〜
No.11の供試材では、いずれも、耐アウトガス性,
硬さ(耐摩耗性)および耐食性に優れ、被削性にも優れ
たものであることが認められた。
【0055】
【発明の効果】本発明によるマルテンサイト系ステンレ
ス鋼では、請求項1に記載しているように、重量%で、
C:0.05〜0.65%、Si:0.10〜1.00
%、Mn:0.10〜0.40%、P:0.04%以
下、S:0.05〜0.35%、Cu:0.02〜0.
50%、Ni:0.02〜0.50%、Cr:10.0
〜15.0%、N:0.04〜0.20%、Se:0.
10〜0.50%、O:0.0040〜0.0200
%、残部Feおよび不純物からなる成分組成を有するも
のとしたから、使用中においてH2Sガスなどの有害ガ
スを発生することなく、耐アウトガス性に優れていると
共に硬さ(耐摩耗性)および耐食性にも優れたものであ
り、さらにまた被削性にも優れた快削マルテンサイト系
ステンレス鋼であるという著大なる効果がもたらされ
る。
【0056】そして、請求項2に記載しているように、
Mo:0超過〜1.00%,W:0超過〜1.00%の
うちの1種または2種を含むものとすることによって、
耐アウトガス性,硬さ(耐摩耗性)および耐食性に優れ
た快削マルテンサイト系ステンレス鋼の耐食性をより一
層高めることが可能であるという著大なる効果がもたら
される。
【0057】さらにまた、請求項3に記載しているよう
に、Pb:0.03〜0.20%,Bi:0.03〜
0.15%,Te:0.01〜0.10%のうちの1種
または2種以上を含むものとすることによって、耐アウ
トガス性,硬さ(耐摩耗性)および耐食性に優れた快削
マルテンサイト系ステンレス鋼の被削性をより一層高め
ることが可能であるという著大なる効果がもたらされ
る。
【0058】さらにまた、請求項4に記載しているよう
に、B,Ca,Mg,REMのうちの1種または2種以
上:0.0005〜0.0100%を含むものとするこ
とによって、耐アウトガス性,硬さ(耐摩耗性)および
耐食性に優れた快削マルテンサイト系ステンレス鋼の熱
間加工性をより一層高めることが可能であるという著大
なる効果がもたらされる。
【0059】さらにまた、請求項5に記載しているよう
に、Nb,V,Ti,Zr,Hf,Taのうちの1種ま
たは2種以上:0.03〜0.50%を含むものとする
ことによって、結晶粒を微細化し、耐アウトガス性,硬
さ(耐摩耗性)および耐食性に優れた快削マルテンサイ
ト系ステンレス鋼の靭性をより一層高めることが可能で
あるという著大なる効果がもたらされる。
【0060】本発明によるステンレス鋼部品の加工方法
によれば、請求項6に記載しているように、請求項1な
いし5のいずれかに記載の鋼を素材として所定形状に加
工し、その後例えば常温〜350℃の酸化性雰囲気に曝
す不動態化処理を行うようにしたから、耐アウトガス
性,硬さ(耐摩耗性)および耐食性に優れたステンレス
鋼部品の製造を行うことが可能であるという著大なる効
果がもたらされる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 38/50 C22C 38/50 38/60 38/60

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.05〜0.65%、
    Si:0.10〜1.00%、Mn:0.10〜0.4
    0%、P:0.04%以下、S:0.05〜0.35
    %、Cu:0.02〜0.50%、Ni:0.02〜
    0.50%、Cr:10.0〜15.0%、N:0.0
    4〜0.20%、Se:0.10〜0.50%、O:
    0.0040〜0.0200%、残部Feおよび不純物
    からなることを特徴とする耐アウトガス性および耐食性
    に優れた快削マルテンサイト系ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】 Mo:0超過〜1.00%,W:0超過
    〜1.00%のうちの1種または2種を含むことを特徴
    とする請求項1に記載の耐アウトガス性および耐食性に
    優れた快削マルテンサイト系ステンレス鋼。
  3. 【請求項3】 Pb:0.03〜0.20%,Bi:
    0.03〜0.15%,Te:0.01〜0.10%の
    うちの1種または2種以上を含むことを特徴とする請求
    項1または2に記載の耐アウトガス性および耐食性に優
    れた快削マルテンサイト系ステンレス鋼。
  4. 【請求項4】 B,Ca,Mg,REMのうちの1種ま
    たは2種以上:0.0005〜0.0100%を含むこ
    とを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の耐
    アウトガス性および耐食性に優れた快削マルテンサイト
    系ステンレス鋼。
  5. 【請求項5】 Nb,V,Ti,Zr,Hf,Taのう
    ちの1種または2種以上:0.03〜0.50%を含む
    ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の
    耐アウトガス性および耐食性に優れた快削マルテンサイ
    ト系ステンレス鋼。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかに記載の鋼
    を素材として所定形状に加工し、その後酸化性雰囲気に
    曝す不動態化処理を行うことを特徴とする耐アウトガス
    性および耐食性に優れたステンレス鋼部品の加工方法。
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