JP2000160318A - 断熱部材の形成方法 - Google Patents

断熱部材の形成方法

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JP2000160318A
JP2000160318A JP10338049A JP33804998A JP2000160318A JP 2000160318 A JP2000160318 A JP 2000160318A JP 10338049 A JP10338049 A JP 10338049A JP 33804998 A JP33804998 A JP 33804998A JP 2000160318 A JP2000160318 A JP 2000160318A
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Kazuhiko Mori
和彦 森
Kouta Kodama
幸多 児玉
Koji Nakanishi
孝治 中西
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Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】断熱性を確保するのに有利な断熱部材の製造方
法を提供する。 【解決手段】被処理面10を備える基材1を用い、基材
1の被処理面10の少なくとも一部に第1の材料層(例
えば低融点金属)を配置する。次に第2の材料層4を基
材1の被処理面10に被覆することにより、第2の材料
層4で第1材料層に覆う。次に第1の材料層の少なくと
も一部を基材1の外に排出し、第2の材料層4と基材1
との間に空隙層5を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は断熱部材の製造方法
に関する。本発明は例えばピストン、シリンダヘッド等
の高温雰囲気で使用される部品や装置に適用できる。
【0002】
【従来の技術】断熱部材の製造方法として、特開平8−
225958号公報には、セラミックスなどの断熱コー
ティングを基材の表面に多層に被覆する技術が開示され
ている。またピストンに関する技術として、特開平8−
68328号公報には、頂部に凹部をもつピストンと、
ピストンに対して別部品をなすセラミックス製の構造体
とを用い、ピストンの凹部の底面とセラミックス製の構
造体との間に空隙層を形成するように、セラミックス製
の構造体を凹部に物理的に嵌合する技術が開示されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た特開平8−225958号公報に係る技術のように、
断熱コーテイングを基材の表面に多層に被覆する方式で
は、充分な断熱性を得るためには、厚膜化しなければな
らない。一方、断熱性能の確保という点では空隙層(空
気層)が好ましいと考えられる。空隙層を形成する場合
には、上記した特開平8−68328号公報に係る技術
のように、別部品を嵌合する方式が必要とされる。この
場合には、厳しい嵌合精度、加工精度が要請され、コス
ト高を誘発しやすい。
【0004】本発明は上記した実情に鑑みなされたもの
であり、上記した技術とは異なる新規な方式で、断熱性
を確保するのに有利な断熱部材の製造方法を提供するこ
とを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る断熱部材の
形成方法は、被処理面を備える基材を用い、基材の被処
理面の少なくとも一部に第1の材料層を配置する第1工
程と、第2の材料層を基材の被処理面に被覆することに
より、第2の材料層で第1材料層を覆う第2工程と、第
1の材料層の少なくとも一部を基材の外部に排出し、第
2の材料層と基材との間に空隙層を形成する第3工程と
を実施することを特徴とするものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明方法で用いる基材の材質と
しては金属系を採用できる。金属系としては、アルミニ
ウム合金、マグネシウム合金等の軽合金系、あるいは、
炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄系、銅合金系などを採用で
きるが、これらに限定されるものではない。基材は、空
隙層を形成するための被処理面を備えている。被処理面
は凹部をもつことができる。
【0007】本発明方法に係る第1工程では、基材の被
処理面の少なくとも一部に第1の材料層を配置する。基
材の被処理面が凹部をもたない場合には、凹部をもたな
い被処理面に第1の材料層を配置できる。基材の被処理
面が凹部をもつ場合には、第1の材料層を凹部に配置で
きる。この場合には、凹部に第1の材料層を配置でき
る。凹部の平面形状、深さは適宜選択できる。凹部とし
ては浅底状の凹部を採用できる。凹部の深さとしては、
上限が例えば3mm,1mm,0.5mm等を採用でき、
下限が例えば10μm,100μm,200μm,500
μm等を採用できるが、これらに限定されるものではな
い。
【0008】本発明方法に係る第2工程においては、第
2の材料層を基材の被処理面に被覆することにより、第
2の材料層で第1の材料層を覆う。本発明方法に係る第
3工程においては、基材の被処理面に配置した第1の材
料層の少なくとも一部を、基材の外部に排出する。これ
により第2の材料層と基材の間に、断熱性の高い空隙層
が形成される。第3工程においては、第1の材料層の一
部を排出し、残りを基材の被処理面に残留させる形態と
しても良い。あるいは、第1の材料層の全部を基材の外
部に排出する形態としても良い。
【0009】本発明方法で形成する空隙層の平均厚み
は、特に限定されるものではないが、要請される断熱
性、空隙層の形成し易さ、コスト、断熱部材の用途など
の要因を考慮すると、上限としては、例えば10mm,
3mm,1mm,0.5mm等を採用でき、下限として
は、例えば5μm、10μm,100μm,200μm,
500μm等を採用できる。
【0010】内燃機関などの機関のピストンの頂部領域
に適用する場合には、空隙層の平均厚みは10〜100
0μm、殊に100〜500μmにできる。但しこれに
限定されるものではない。本発明方法に係る第3工程に
おいては、第1の材料層が加熱により融液となる場合に
は、融液状として排出する形態、あるいは、第1の材料
層が水などの液状物に溶解する場合には、液状物に溶解
させて排出する形態、あるいは、第1の材料層がガス化
(焼失、気化または蒸散)する場合には、加熱によりガ
ス化させて排出する形態を採用することもできる。加熱
する方式としては、燃焼バーナによる加熱方式、加熱炉
に装入する加熱方式、誘導加熱方式などの公知の加熱方
式を採用できる。
【0011】本発明方法に係る第3工程においては、第
1の材料層の排出性を一層促進させるために、吸引手段
を採用することもできる。吸引手段としては、基材を収
容する真空室をもつ真空装置、あるいは、基材を収容す
る真空加熱室をもつ真空加熱炉、あるいは、基材に被覆
された第2の材料層に接触または接近される吸引装置等
を採用できる。
【0012】第1の材料層を融液として基材の外部に排
出する場合には、本発明方法で用いる第1の材料層とし
ては、基材や第2の材料層の融点よりも低い融点をもつ
材料を採用できる。故に、第1の材料層として例えば低
融点金属や熱可塑性樹脂などを採用できる。低融点金属
としては、スズ、スズ合金、鉛、鉛合金、インジウム、
インジウム合金などを採用できる。
【0013】第1の材料層を液状物に溶解させて排出す
る場合には、本発明方法で用いる第1の材料層として
は、水溶性をもつ塩(NaCl等)を採用することがで
きる。第1の材料層をガス化(焼失または蒸散等)させ
て排出する場合には、本発明方法で用いる第1の材料層
としては、高分子系材料、炭素系材料、木材などの焼失
物質、あるいは、ナフタリンやアントラセンなどの昇華
性物質を採用できる。
【0014】本発明方法に係る第2工程おいては、第2
の材料層を基材の被処理面に被覆することにより、第2
の材料層で第1材料層を覆う。第2の材料層は基材の外
部へ連通可能な孔を備えていることが好ましい。この場
合には、第2の材料層の孔を介して、第1の材料層を排
出することができる。孔は、第2の材料層の形成過程で
自然と生成する形態でも良いし、あるいは、レーザビー
ムなどの高エネルギビームの照射、あるいは、ドリル穿
孔等で強制的に形成する形態でも良い。
【0015】本発明方法においては、基材の外部に連通
する孔を第2の材料層がもつ場合には、第1の材料層を
排出する際には、第1の材料層の少なくとも一部を、第
2の材料層の孔に残留させ、第2の材料層の孔の少なく
とも一部を封孔することができる。封孔性が高ければ、
基材の外部の異物が空隙層に侵入しにくくなる。また、
第2の材料層の気孔率が低下して緻密化するため、第2
の材料層の強度確保の面でも有利となる。
【0016】本発明方法で用いる第2の材料層として
は、溶射膜などを採用できる。溶射膜はポーラスであ
り、微細な空孔が分散されているため、この空孔を利用
して、第1の材料層を排出することができる。溶射層な
どで形成される第2の材料層の空孔を介して第1の材料
層を排出する場合には、第2の材料層の気孔率が過剰に
小さいと、排出性が制約される。また第2の材料層の気
孔率が過剰に大きいと、第2の材料層の強度が低下す
る。
【0017】溶射膜等で形成される第2の材料層に対し
て、封孔処理するか否かでも、気孔率は相違してくる。
上記した実情を考慮し、一般的には、排出前の気孔率と
しては面積率で、下限で例えば0.5%,1%,3%にで
き、上限で例えば8%,10%,15%にできる。但しこ
れらに限定されるものではない。なお溶射の場合には、
溶射粒子が融液化した状態で、相手材に衝突するため、
溶射粒子が偏平化するといわれている。
【0018】第2の材料層を構成する材質としては、金
属を採用できるが、場合によってはセラミックスでも良
い。金属としては、例えば、鉄、鉄合金、モリブデン、
モリブデン合金、ニッケル、ニッケル合金(Ni−Cr
系)などを採用できる。鉄合金としては、例えば、鉄−
炭素系合金、ステンレス鋼系(フェライト系,オーステ
ナイト系、マルテンサイト系)などを採用できる。
【0019】鉄合金の場合には、マルテンサイト化を期
待できる。マルテンサイト化すれば、高硬度となり、高
強度化を期待できる。殊に溶射の場合には、溶射された
溶融粒子が急冷されやすく、組成によってはマルテンサ
イト化を期待できる。第2の合金層を構成する材質がセ
ラミックスの場合には、酸化物系(アルミナ系、ジルコ
ニア系など)、窒化物系、炭化物系、硼化物系などを採
用できる。
【0020】第2の材料層の厚みは、第2の材料層の材
質、断熱部材の用途などに応じて適宜選択できるが、例
えば0.1〜1mm程度、殊に0.3〜0.6mm程度
にできる。但しこれに限定されるものではない。
【0021】
【実施例】(実施例1)以下、実施例1を図面を参照し
て説明する。本実施例においては、図1に示すように、
被処理面10をもつ基材1を用いる。基材1は軽合金つ
まりアルミ系合金(Al−Si系,JIS AC8A合
金:重量%でAl−12%Si−1.0%Cu−0.9
%Mg−1.5%Ni)で形成されている。被処理面1
0には、被処理面10で開口する浅底状の凹部11が形
成されている。凹部11は、凹底面11aと凹側面11
bとを有する。従って被処理面10は、平坦且つ平滑な
露出面10aと、凹部11の平坦且つ平滑な凹底面11
aとで構成されている。本実施例では、凹部11の深さ
h1は約0.3〜0.5mmとされている。
【0022】第1工程では、図2に示すように、低融点
金属(具体的にはスズ合金)で形成された第1の材料層
3を基材1の凹部11に装填して配置する。すなわち、
低融点金属で形成された溶射材を溶射処理(HVOF溶
射法)により被覆して、第1の材料層3(厚み:約0.
3mm)を構成する。これにより第1の材料層3を凹部
11内に配置する。
【0023】そして第1の材料層3の上側の余剰の部分
を平坦化手段により除去する。これにより図3に示すよ
うに、第1の材料層3の上面3aと基材1の露出面10
aとを実質的に面一状態とする。次に、ブラスト処理を
行い、基材1の露出面10a、第1の材料層3の上面3
aである被覆面を粗面化する。これにより後工程におけ
る第2の材料層4の密着性を高める。
【0024】第2工程では溶射装置を用い、図4に示す
ように、基材1の凹部11内の第1材料層3に溶射処理
(プラズマ溶射処理)により、ステンレス鋼系(Ni:
8重量%,Cr:18重量%)の溶射材を溶射して溶射
膜を積層する。溶射直前時の基材1の予熱温度は約15
0℃である。この溶射膜により第2の材料層4が構成さ
れる。溶射材は、粒径が実質的に30〜100μmに収
まるステンレス鋼系(SUS304系)の粉末を用い
る。
【0025】図4から理解できるように、溶射膜で形成
された第2の材料層4は、基材1の露出面10aに一体
的に密着してこれを被覆している。溶射装置75は、溶
射ガン75rと、鉄合金の粉末状の溶射材を溶射ガン7
5rに供給する溶射材供給装置75sと、燃焼ガス及び
酸素を溶射ガン75rに供給するガス供給装置75tと
をもつ。
【0026】第2の材料層4を構成する溶射膜はポーラ
スであり、多数個の空孔を分散して備えている。多数個
の空孔により、溶射膜はこれの厚み方向に連通してい
る。画像処理により気孔率を測定したところ、第2の材
料層4を構成する溶射膜の気孔率(排出操作前の気孔
率)は、面積率で約7〜9%、殊に約8%であった。形
成された第2の材料層4の厚みt2は0.2〜0.5m
m程度、殊に0.35mm程度である。第2の材料層4
は実質的に均等厚みである。
【0027】第3工程では、図5に示すように、基材1
の第2の材料層4に燃焼バーナ60の燃焼炎61を当て
て加熱する。第2の材料層4の加熱目標温度は、350
℃とする。そのため基材1、第2の材料層4は溶融しな
いものの、凹部11内の第1の材料層3である低融点金
属が溶融して溶融して融液状となる。この結果、第2の
材料層4に形成されている多数の空孔を介して、融液状
の低融点金属(本実施例ではスズ合金)は、凹部11の
外部、つまり、基材1の外部に排出される。この結果、
図7に示すように、微小隙間である空隙層5を第2の材
料層4と基材1との間に形成する。空隙層5の空隙厚み
t3は約0.1〜0.4mm、殊に0.2mmである。
【0028】本実施例では、融液状の低融点金属を重力
を利用して排出すべく、図5に示すように、第2の材料
層4を下向きとすることが好ましい。または図6に示す
ように、基材1の背面1rに燃焼バーナ60の燃焼炎6
1を当てて基材1を加熱し、これにより基材1の凹部1
1内に配置されている第1の材料層3を構成している低
融点金属を融液化する。更に吸引装置63を第2の材料
層4に接触または接近させ、吸引装置63の吸引ポンプ
68を作動させ、その融液を、第2の材料層4の空孔を
介して吸引装置63に吸引して基材1の外部に排出する
排出操作を行う。
【0029】この結果、第1の材料層3を構成する低融
点金属は、融液として、基材1の凹部11の外部に排出
される。これにより、図7に示すように、微小隙間であ
る空隙層5は、第2の材料層4と基材1との間に形成さ
れる。また図8に示すように、真空室65及びヒータ6
6を備えた真空加熱炉67を用い、第1の材料層3及び
第2の材料層4を設けた基材1を真空室65内に装入
し、吸引ポンプ68で真空室65を真空雰囲気または減
圧雰囲気にしつつ、基材1をヒータ66で加熱する。こ
れにより第2の材料層4を構成している低融点金属(本
実施例ではスズ合金)を加熱して融液化し、第2の材料
層4の空孔を介して、基材1の外部に排出する排出操作
を行い、空隙層5を形成することにしても良い。この場
合においても、重力により排出性を高めるべく、第2の
材料層4を下向きとすることが好ましい。
【0030】本実施例では、上記した排出操作により、
凹部11内の第1の材料層3をすべて基材1の外部に排
出しても良い。あるいは、排出操作を適宜調整すること
により、図9に示すように、第1の材料層3の融液化し
た部分の一部3xを第2の材料層4の空孔4kに残留さ
せ、残留させたまま固化させることにより、第2の材料
層4の空孔4kを封孔処理することにしても良い。
【0031】排出操作を行った後に、第2の材料層4の
気孔率を本発明者が測定したところ、気孔率は面積率で
1%以下に減少していた。封孔処理が進行したためと考
えられる。封孔処理により第2の材料層4の気孔率が低
減するため、第2の材料層4の強度増加を図り得る。更
に第2の材料層4は封孔されているため、基材1の外部
の異物が空隙層5へ侵入することを抑え得る効果が得ら
れる。
【0032】以上説明したように本実施例においては、
空隙層5を基材1に形成できるため、基材1の断熱構造
を図り得る。従って、熱伝導率が高いアルミ合金で基材
1が形成されているにもかかわらず、基材1の熱伝導率
を低減することができる。殊に、本実施例に係る第2の
材料層4はステンレス鋼の溶射膜で形成されている。ス
テンレス鋼の溶射膜は金属溶射膜のなかでも熱伝導率が
比較的に低いため、断熱構造の確保に一層有利である。
【0033】ところで本実施例においては、溶射により
セラミックス系の断熱層を基材1に被覆することも考え
られる。このようにセラミックス製の断熱層を用いた場
合には、材料コストが高いこと、セラミックス製の溶射
材の付着効率が高くないこと、空隙層5と同程度の断熱
性を得るには、断熱層のかなりの厚肉化が要請される等
の不具合がある。更に、アルミ合金系の基材1とセラミ
ックス製の断熱層との熱膨張率がかなり相違するといっ
た不具合もある。本実施例では、セラミックス製の断熱
層を用いずに、金属系の溶射膜、つまりステンレス鋼系
の溶射膜で第2の材料層4を形成しているため、上記し
た不具合を改善するのに有利となる。
【0034】但し、本発明方法においては、第2の材料
層をセラミックスで形成しても良いことは勿論である。 (評価)上記したように形成した空隙層5の断熱性を評
価する試験を行った。この試験においては、図10に示
すように、基材1の第2の材料層4の中央域を燃焼バー
ナ60で300℃に加熱した。その後、基材1の背面1
rに水冷盤装置70を当てて、第2の材料層4の中央部
が200℃に冷却されるまでの必要時間を測定した。こ
れを断熱性の評価とした。
【0035】上記した温度は、図10,図11に示すよ
うに、第2の材料層4の中央部に熱電対100をつなぐ
ことにより測定した。水冷盤装置70は、基材1の背面
1rが接触する冷却面71aをもつ冷却盤71と、冷却
盤71の内部に形成された通水路72と、通水路72に
冷却水を供給する給水装置73とを有する。試験の際に
は通水路72に通水しつつ行う。
【0036】比較例として、凹部11をもたない同材質
のアルミ合金の基材1に、部分安定化ジルコニアの溶射
層を種々の厚みで被覆し、同様に、断熱性を評価する試
験を行った。ジルコニアの溶射層の厚みは、それぞれ、
0.2mm,0.4mm,0.6mm,0.8mm,1.0
mm,1.2mmとした。試験結果を図12に示す。図
12の縦軸は300℃から200℃に到達する必要とし
た時間を示す。図12において、特性線Bは、上記した
実施例に係る空隙層5(空隙厚み:0.2mm)の場合
の試験結果を示し、×印はジルコニアの溶射層の厚みを
変化させた場合の試験結果を示す。図12に示す試験結
果によれば、空隙層5の厚みが0.2mmの場合には、
ジルコニアの溶射層の厚み1mmから1.1mm程度の
ものに相当する優れた断熱性が得られた。
【0037】(実施例2)実施例2を図13に示す。本
実施例は前記した実施例1と基本的には同様の構成であ
り、基本的には同様の作用効果を奏する。本実施例に係
る基材1Bの被処理面10には、凹部11は形成されて
いない。基材1Bの平坦且つ平滑な被処理面10に、高
分子系接着剤を塗布し、これを第1の材料層3B(厚
み:約0.5mm)とする。接着剤が乾燥した後に、そ
の上に、ステンレス鋼の溶射材をプラズマ溶射法で溶射
し、溶射膜で形成されている第2の材料層4B(平均厚
み:約0.3mm)を被覆する。
【0038】用いた溶射材は、粒径が実質的に30〜1
00μmに収まるステンレス鋼の粉末を用いた。第2の
材料層4Bを構成する溶射膜の気孔率を測定したとこ
ろ、気孔率が面積率で約3%であった。次に、第2の材
料層4Bを上向きに配置した状態で、加熱炉の炉室に装
入し、基材1Bを約200℃に加熱した。加熱炉の炉室
は不活性ガス雰囲気とされる。これにより第1の材料層
3Bを構成する高分子系接着剤を気化させつつ、第2の
材料層4Bの空孔を介して基材1Bの外部に排出する。
これにより空隙層を形成する。
【0039】空隙層の厚みは約0.2mmであった。高
分子系接着剤の塗布厚みである0.5mmに対して、空
隙層5の厚みが約半分に減少していた。その理由は、第
2の材料層4を溶射で形成する際に、高分子系接着剤が
ある程度気化した影響であると推察される。断熱性を評
価する試験を前述同様に行った。試験結果によれば、3
00℃から200℃に到達するのに必要な時間は80秒
であり、良好な断熱性が得られた。
【0040】(実施例3)実施例3を図14に示す。本
実施例は前記した実施例1と基本的には同様の構成であ
り、基本的には同様の作用効果を奏する。本実施例で
は、第1の工程では、基材1Cの凹部11Cに、水溶性
物質として機能する塩を装填し、これにより第1の材料
層3Cを配置する。その後、溶射膜からなる第2の材料
層4Cで、第1の材料層3C及び基材1Cの露出面10
aを被覆する。溶射膜は空孔をもつ。
【0041】その後、図14に示すように、基材1Cの
第2の材料層4Cを水槽80の水81に浸漬し、第1の
材料層3Cを構成する塩成分を水槽80の水81に溶解
する。これにより第2の材料層4Cの空孔を介して、第
1の材料層3Cを基材1Cの外部に排出する。水槽80
には超音波振動子83を装備し、超音波洗浄を利用して
塩成分の排出性を高めることができる。
【0042】(実施例4)実施例4を図15に示す。本
実施例は前記した実施例1と基本的には同様の構成であ
り、基本的には同様の作用効果を奏する。本実施例で
は、基材1Dの凹部11Dには、凹底面11aから膨出
する膨出部16が適数個形成されている。膨出部16の
頂面16xは平坦化されている。第2の材料層4Dは膨
出部16に接触して支持されている。膨出部16の高さ
は、基材1Dの露出面10aと実質的に同じ高さとされ
ている。
【0043】本実施例においては、膨出部16が形成さ
れているため、第2の材料層4Dを膨出部16が支持し
てこれを強化する役割を果たすことができる。そのた
め、空隙層5Dの全体の長さLAが大きく広面積化して
いる場合であっても、空隙層5Dを覆っている第2の材
料層4の補強を図るのに有利となる。なお膨出部16
は、凹部11D内において散点状に分散していても良い
し、あるいは、凹部11D内において基材1Dの中心軸
線PDに対して同心円的に配置されていても良い。
【0044】(実施例5)実施例5を図16〜図19に
示す。本実施例は前記した実施例1と基本的には同様の
構成であり、基本的には同様の作用効果を奏する。本実
施例においては、図16に示すように、被処理面10を
もつ基材1Eを用いる。基材1Eはアルミ系合金であ
る。被処理面10には、被処理面10で開口する浅底状
の凹部11Eが形成されている。従って、被処理面10
は、平坦且つ平滑な露出面10aと、凹部11Eを区画
している平坦且つ平滑な凹底面11aとで構成されてい
る。
【0045】第1工程では、図17に示すように、低融
点金属を溶射し、溶射層を凹部11Eに装填する。これ
により第1の材料層3Eを基材1Eの凹部11Eに配置
する。凹部11Eの深さをh4とし、第1の材料層3E
の厚みをt4としたとき、t4をh4よりも小さくする
(t4<h4)とする。この状態でブラスト処理を行
い、基材1Eの露出面10a、第1の材料層3Eの上面
である被覆面を粗面化する。
【0046】第2工程では、溶射装置を用い、図18に
示すように、基材1Eの凹部11E内の第1の材料層3
Eに溶射処理により、ステンレス鋼系のポーラスな溶射
膜で形成された第2の材料層4Eを被覆する。第2の材
料層4Eは基材1Eの露出面10aをも被覆している。
その後、第1の材料層3Eを排出し、図19に示すよう
に空隙層5Eを形成する。
【0047】図19に示すように、第2の材料層4Eの
厚みは、基材1Eのうち空隙層5Eが形成されていない
露出面10a側ではm4として示される。また空隙層5
Eの側ではm5として示される。厚みm5は厚みm4よ
りも大きい(m5>m4)。 (実施例6)実施例6を図20〜図22に示す。本実施
例は前記した実施例1と基本的には同様の構成であり、
基本的には同様の作用効果を奏する。本実施例において
は、低融点金属(スズ合金など)または樹脂などで形成
した薄箔やフィルムなどのシート材を用いる。シート材
の厚みは適宜選択でき、例えば0.1〜1mm程度,
0.2〜0.5mm程度にできるが、これらに限定され
るものではない。
【0048】そして図20に示すように、シート材を基
材1Fの被処理面10に敷設し、第1の材料層3Fとす
る。敷設にあたっては、シート材を基材1Fの被処理面
10に置くだけでも良いし、あるいは、有機系の接着剤
等を介してシート材を基材1Fの被処理面10に貼り付
けても良い。この実施例では基材1Fには凹部を形成し
ていないが、凹部を形成することも可能である。
【0049】その後、その第1の材料層3Fを含む基材
1Fの被処理面10に、第2の材料層4Fを被覆する。
第2の材料層4Fはポーラスな溶射層で形成できる。次
に、加熱処理を行ない、第1の材料層3Fを溶融または
ガス化し、第1の材料層3Fを基材1Fの外部に排出す
る。これにより第2の材料層4Fと基材1Fとの間に、
空隙層5Fを形成する。
【0050】(適用例)図20は適用例を示す。この適
用例では、車両の内燃機関に搭載されるアルミ合金系の
ピストンの頂部領域に適用している。ピストンを構成す
る基材1Hの被処理面10には、空隙層5Hと、空隙層
5を覆う第2の材料層4Hが設けられている。
【0051】製造にあたり上記した方法で製造されてい
る。即ち、第1工程では、ピストンを構成する基材1H
に、低融点合金等の第1の材料層を配置する。第2工程
では、第2の材料層4H(鉄系またはアルミ合金系)
を、基材1Hの第1の材料層に被覆するとともに、基材
1Hの露出面10aに被覆する。第3工程では、基材1
Hの第1の材料層を基材1Hの外部に排出する。これに
より第2の材料層4Hと基材1Hとの間に、微小隙間で
ある空隙層5H(空隙厚み:0.01〜0.5mm,殊
に0.1〜0.2mm)を形成する。空隙層5Hによ
り、ピストンの頂部の断熱化を図り得る。従って本発明
方法は、断熱性が向上したピストンの製造方法を提供で
きる。
【0052】アルミ合金系ピストンは、軽量化を図り得
るものの、熱伝導率が高いため、燃焼室の高温化には限
界がある。上記したようにピストンの頂部領域に空隙層
5Hを形成すれば、ピストン頂部領域における断熱化を
図ることができ、熱伝導を制約できる。故に燃焼室に供
給された燃料の気化の促進に有利となる。 (他の例)その他、本発明は上記し且つ図面に示した実
施例のみに限定されるものではなく、例えば寸法、材
質、適用例などは、上記したものに限定されるものでは
なく、要旨を逸脱しない範囲内で必要に応じて適宜選択
できるものである。
【0053】
【発明の効果】本発明方法によれば、基材の被処理面に
配置した第1の材料層の少なくとも一部を基材の外部に
排出することにより、第2の材料層と基材との間に空隙
層を形成することができる。従って断熱性を高めた断熱
部材を提供できる。故に、熱伝導率が高い材質で基材が
形成されている場合であっても、断熱性を高めた基材を
もつ断熱部材を提供できる。
【0054】このように本発明方法によれば、従来技術
とは異なる方式で、断熱性を確保するのに有利な断熱部
材の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】凹部をもつ基材を模式的に示す断面図である。
【図2】基材の凹部に第1の材料層を供給した状態を模
式的に示す断面図である。
【図3】基材の凹部に供給した第1の材料層を平坦化し
た状態を模式的に示す断面図である。
【図4】基材の凹部に供給した第1の材料層に第2の材
料層を被覆した状態を模式的に示す断面図である。
【図5】基材の凹部の第1の材料層を排出する形態を模
式的に示す断面図である。
【図6】基材の凹部の第1の材料層を排出する別の形態
に係る状態を模式的に示す断面図である。
【図7】空隙層をもつ基材を模式的に示す断面図であ
る。
【図8】基材の凹部の第1の材料層を排出する他の形態
を模式的に示す断面図である。
【図9】封孔した部分の概念を模式的に示す断面図であ
る。
【図10】断熱性を評価する試験のために基材の第2の
材料層を加熱している状態を模式的に示す断面図であ
る。
【図11】断熱性を評価する試験のために基材を冷却し
ている状態を模式的に示す断面図である。
【図12】断熱性を評価する試験結果を示すグラフであ
る。
【図13】別の実施例に係り、基材に供給した第1の材
料層に第2の材料層を被覆した状態を模式的に示す断面
図である。
【図14】更に別の実施例に係り、基材の凹部に供給し
た第1の材料層に第2の材料層を被覆した状態で、第1
の材料層を排出している状態を模式的に示す断面図であ
る。
【図15】更に異なる実施例に係り、空隙層をもつ基材
を模式的に示す断面図である。
【図16】更にまた異なる実施例に係り、凹部をもつ基
材を模式的に示す断面図である。
【図17】その実施例に係り、基材の凹部に第1の材料
層を配置した状態を模式的に示す断面図である。
【図18】その実施例に係り、基材の凹部に供給した第
1の材料層に第2の材料層を被覆した状態を模式的に示
す断面図である。
【図19】その実施例に係り、空隙層を形成した基材を
模式的に示す断面図である。
【図20】異なる実施例に係り、基材の被処理面に第1
の材料層を配置した状態を模式的に示す断面図である。
【図21】その実施例に係り、基材に配置した第1の材
料層に第2の材料層を被覆した状態を模式的に示す断面
図である。
【図22】その実施例に係り、空隙層を形成した基材を
模式的に示す断面図である。
【図23】適用例を示し、ピストンを模式的に示す断面
図である。
【符号の説明】
図中、1は基材、10は被処理面、11は凹部、3は第
1の材料層、4は第2の材料層、5は空隙層を示す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // F02F 3/00 F02F 3/00 G (72)発明者 中西 孝治 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 Fターム(参考) 3J044 AA08 BA01 BB14 DA09 EA10 4K031 AA02 AA08 AB03 AB08 BA01 BA05 BA08 CB21 CB22 CB28 CB34 CB39 CB41 FA02 FA06 FA10 FA13 GA01

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】被処理面を備える基材を用い、前記基材の
    被処理面の少なくとも一部に第1の材料層を配置する第
    1工程と、 第2の材料層を前記基材の被処理面に被覆することによ
    り、前記第2の材料層で前記第1の材料層を覆う第2工
    程と、 前記第1の材料層の少なくとも一部を前記基材の外部に
    排出し、前記第2の材料層と前記基材との間に空隙層を
    形成する第3工程とを実施することを特徴とする断熱部
    材の形成方法。
  2. 【請求項2】請求項1において、前記第2の材料層は前
    記基材の外部へ連通可能な孔を備えており、前記孔を介
    して、前記第1の材料層を排出することを特徴とする断
    熱部材の形成方法。
  3. 【請求項3】請求項2において、前記第1の材料層を排
    出する際には、前記第1の材料層の少なくとも一部を、
    前記第2の材料層の孔に残留させ、前記第2の材料層の
    孔の少なくとも一部を封孔することを特徴とする断熱部
    材の形成方法。
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