JPH0988794A - ディーゼルエンジンの予熱装置、予熱ヒータ及びグロープラグ - Google Patents

ディーゼルエンジンの予熱装置、予熱ヒータ及びグロープラグ

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JPH0988794A
JPH0988794A JP7249879A JP24987995A JPH0988794A JP H0988794 A JPH0988794 A JP H0988794A JP 7249879 A JP7249879 A JP 7249879A JP 24987995 A JP24987995 A JP 24987995A JP H0988794 A JPH0988794 A JP H0988794A
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JP
Japan
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temperature
fuel
heating
coating layer
ceramic coating
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JP7249879A
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English (en)
Inventor
Kazuhisa Takimoto
和寿 滝本
Takayoshi Takano
孝義 高野
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Toyota Industries Corp
Original Assignee
Toyoda Automatic Loom Works Ltd
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    • Y02T10/12Improving ICE efficiencies

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  • Combustion Methods Of Internal-Combustion Engines (AREA)
  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 予熱装置の加熱面に付着した燃料の気化を促
進させ、エンジン始動時の着火性の向上、燃費の向上・
排気ガスの清浄化を図る。 【解決手段】 ディーゼルエンジン1の渦流室3内には
フューエルインジェクタ4の噴射ノズル4aと対向する
位置に予熱ヒータ5が配置されている。この予熱ヒータ
5は通電発熱部材7に加熱される金属板6を備え、金属
板6の表面にはジルコニア(ZrO2)からなる100 〜500
μm厚のセラミック被覆層10が形成されている。ジル
コニアのような低熱伝導率の被覆層が形成されている
と、燃料液滴の付着時に瞬間的に降温したその被覆層の
界面付近への熱移動が遅くなるため、液滴蒸発中の界面
温度がその付着前の温度より低い平衡温度に維持され
る。特にジルコニアの場合、渦流室3の内壁面温度(約
500℃)にまで被覆層が加熱された条件下でも、その界
面温度が軽油がジルコニア被覆層上で蒸発する場合の最
大蒸発率点付近となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ディーゼルエンジ
ンにおいて、フューエルインジェクタより噴射される燃
料が付着し得る位置に設けられ、発熱により燃料の着火
を促進するディーゼルエンジンの予熱装置、予熱ヒータ
及びグロープラグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ディーゼルエンジンは、直接噴射式と副
室式(主に渦流室式)の2つの方式に分けられる。いず
れの方式も、エンジン始動時に燃料を初期着火させるた
め、通常、燃料噴射装置のノズルの噴射域にヒータやグ
ロープラグが設けられ、このヒータやグロープラグによ
り燃焼室や渦流室を予熱するとともに、その熱により積
極的に燃料を初期着火させるようにしている。
【0003】例えば、グロープラグは燃料の噴射域内に
加熱部となる保護管が配置されるが、保護管をその噴射
域中央近傍に配置して噴霧の当たる量を多くしても、そ
の全てを着火し切れず、逆に一部は保護管の壁面に付着
したまま残ってしまう。そのため、燃料噴霧のできるだ
け多くを着火できるように比較的噴霧濃度の薄い噴霧域
の外周部近傍(噴射方向の軸線から離れたあたりの噴霧
域)に保護管を配置している。
【0004】また、特開平4−171272号公報に
は、図10に示すように、直接噴霧式のディーゼルエン
ジン51の燃焼室52に、燃料噴射装置53のノズル5
3aから噴射される燃料の噴射域に円板状のヒータ54
を配置し、噴霧された燃料の液滴がこのヒータ54に付
着してその熱により直接着火させようとするものが開示
されている。
【0005】これらのグロープラグや図10に示したヒ
ータ54は、渦流室や燃焼室内に突設されていることか
ら、噴射された燃料の渦流が乱され、これにより燃焼性
を悪化させるという問題がある。この問題を解決するた
め通電発熱部材を複数本埋設することにより、グロープ
ラグやヒータ54などのような室内への突出物を無くす
ことも提案されている(特開昭54−89136号公
報、特開昭64−3229号公報、特開平1−2673
12号公報等)。
【0006】この場合、通電発熱部材は通常セラミック
成形材料中に埋設され、焼結することにより渦流室本体
を形成している。しかし、セラミックは耐熱性、断熱性
の目的のため使用されているが、熱容量が大きくなって
しまうため、蓄熱された熱が吸入空気を加熱し、その熱
膨張のため吸入空気が減少するので、エンジンの体積効
率が低下し、燃費が悪化するという問題があると述べら
れている(特公昭60−182341号公報)。
【0007】ところで、グロープラグやヒータ54等
は、エンジン始動時における渦流室や燃焼室内の加温と
その室内に噴射される燃料の初期着火とを目的とするた
め、エンジン始動後しばらくするとその通電が停止され
る。エンジン始動以降は、渦流室や燃焼室内での燃焼に
より加熱されたグロープラグの保護管やヒータ54等の
加熱面に対して燃料が噴射されることになる。このと
き、グロープラグの保護管やヒータ54の表面温度は、
ディーゼルエンジンの渦流室の内壁面温度が達すると言
われている約500℃の高温に達することになる(但
し、燃焼室の場合は約300℃)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、噴射された
燃料の液滴は、加熱されたグロープラグの保護管やヒー
タ54の表面、渦流室や燃焼室の内壁面に付着し、その
付着面から伝達された熱により加熱されて気化する。
【0009】しかし、付着面の加熱が十分であっても、
グロープラグやヒータの表面に噴射された燃料の一部が
気化・着火し切れず、その表面上に付着して残ってしま
い、燃料の不完全燃焼により排気ガス中に未燃焼燃料や
HC等が混じるという問題がある。
【0010】また、エンジン始動後の室内が十分に加熱
された後においても、燃料の気化が十分に行われている
とはいえなかった。これは、グロープラグの保護管やヒ
ータ54等の加熱面に噴射されて付着した燃料の液滴の
気化は、その加熱面から如何に熱がその液滴側に効率良
く伝達されるかが問題となるためであり、加熱面が著し
く高温に加熱されていると、いわゆる膜沸騰状態となっ
て熱伝達量が減少して気化率が低下してしまう。一般
に、加熱面上における燃料の液滴の気化(蒸発)速度
と、加熱面温度との間には、図11のグラフに示すよう
な関係が成立することが知られている。
【0011】図11は加熱面温度と燃料の蒸発速度の関
係を示す蒸発速度曲線Lのグラフである。同図に示すよ
うに、燃料の温度が比較的低いうちは液滴表面から気化
が進行し(自然対流域)、加熱面温度が上昇して燃料の
飽和温度を超えるとともに液滴中に気泡が発生しだし、
さらにその気泡の数が多くなりいわゆる核沸騰状態とな
って蒸発速度が極めて大きくなる。燃料の蒸発速度は最
大蒸発率点と呼ばれる温度で最大となる。この最大蒸発
率点より加熱面温度が高くなると、大きくなった気泡に
より加熱面と液滴との接触が時間的、空間的に分断され
るようになり、その接触面積すなわち熱伝達面積が小さ
くなり、加熱面から液滴に熱が伝達され難くなる。その
ため、液滴の蒸発速度が次第に低下する(遷移沸騰
域)。そして、その接触面積が著しく小さくなると、つ
いには液滴が加熱面から離間してしまうライデンフロス
ト現象が発生し、いわゆる膜沸騰状態となる。
【0012】そのため、加熱面に付着した液滴を核沸騰
状態とし、蒸発速度を高めて燃焼時までに液滴ができる
だけ残らないようにするためには、加熱面の設定温度を
最大蒸発率点付近とする必要がある。
【0013】ところで、金属面上における軽油の最大蒸
発率点は測定した結果、約370℃程度にあることが分
かった。また、ディーゼルエンジンの場合、燃料が噴射
される内壁面温度が、先に述べたように直接噴射式で約
300℃、渦流式で約500℃と言われている。特に、
内壁面の極く表面付近の温度は実際には通常言われてい
る以上の高温になっているものと推察される。よって現
実には、金属内壁面に噴射された軽油の液滴は、ライデ
ンフロスト現象を起こしている可能性が高い。そのた
め、実際には噴射された液滴は完全な霧化もしくは気化
されてはおらず、一部は液滴のまま燃焼されていた。液
滴の一部は、燃焼し切れず不完全燃焼のまま排気されて
いた。これが、燃費の悪さや排気ガスを清浄化し切れな
い原因となっていた。
【0014】本発明は上記問題点を解決するためになさ
れたものであって、その目的は予熱装置の加熱面上に噴
霧されて付着した燃料の気化を促進してエンジン始動時
の着火性を向上させるとともに、エンジン始動以後の燃
料の気化を促進して燃費の向上及び排気ガスの清浄化を
図ることができるディーゼルエンジンの予熱装置及びグ
ロープラグを提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
め請求項1に記載の発明では、ディーゼルエンジンの燃
焼室もしくは渦流室内において燃料噴射装置の噴射ノズ
ルから噴射された燃料が付着し得る位置に加熱面を配置
する加熱体と、該加熱体を加熱するための通電発熱手段
とを備えたディーゼルエンジンの予熱装置であって、前
記加熱体は金属もしくは高熱伝導率のセラミックからな
る基材を備えており、前記加熱面は低熱伝導率のセラミ
ックからなるセラミック被覆層が前記基材の表面の一部
もしくは全部に被覆されて形成された。
【0016】請求項2に記載の発明では、前記セラミッ
ク被覆層はジルコニアからなる。請求項3に記載の発明
では、前記セラミック被覆層の厚みは100〜500μ
mの範囲である。
【0017】請求項4に記載の発明では、前記セラミッ
ク被覆層の表面には10〜50μm径相当の凹凸部が形
成された。請求項5に記載の発明では、前記燃焼室もし
くは渦流室内にはグロープラグが設けられ、前記加熱体
は前記噴射ノズルの燃料噴射域に配置された前記グロー
プラグの発熱部である。
【0018】請求項6に記載の発明では、前記加熱体
は、前記渦流室内における前記燃料噴射装置の噴射ノズ
ルに対向する内壁面を前記加熱面が形成するように設け
られ、前記通電発熱手段が該加熱体の裏面側に設けられ
た。
【0019】請求項7に記載の発明では、予熱ヒータ
は、前記渦流室内の燃料噴射装置の噴射ノズルに対向す
る内壁面を形成するように配置される加熱面を有すると
ともに、金属もしくは高熱伝導率のセラミックからなる
基材と、該基材の表面の一部もしくは全部に被覆されて
前記加熱面を形成する低熱伝導率のセラミックからなる
セラミック被覆層とを備えた加熱体と、該加熱体に熱を
供給するための通電発熱手段とを備えた。
【0020】請求項8に記載の発明では、グロープラグ
は、発熱部の表面の一部もしくは全部が低熱伝導率のセ
ラミックからなるセラミック被覆層にて被覆された。従
って、請求項1に記載の発明によれば、ディーゼルエン
ジンの始動時には燃焼室もしくは渦流室内において、通
電発熱部材に通電されて加熱された加熱面に対し、燃料
噴射装置の噴射ノズルから燃料が噴射され、この加熱面
の熱により付着した燃料の蒸発・着火が促進される。エ
ンジン始動後、通電発熱部材への通電は停止されるが、
燃焼室もしくは渦流室内での燃焼による火炎により加熱
面は内壁面温度程度まで加熱される。加熱面に付着した
燃料液滴は、セラミック被覆層の表面から伝達される熱
により加熱されて蒸発する。燃料液滴が付着した瞬間、
その液滴が付着した界面付近の温度は急激に低下し、セ
ラミック被覆層のその液滴との界面付近にできた急激な
低温勾配をなくすようにその低温部に回りから熱が伝導
される。しかし、セラミック被覆は低熱伝導性のセラミ
ックからなり、その低温部に伝導されてくる熱の移動速
度が比較的遅いため、温度勾配が回復され切らないうち
に、その低温部から液滴に伝達される熱の移動速度との
間で一種の平衡状態に達する。従って、燃料液滴の蒸発
中は、その界面温度は過渡的に液滴付着前の温度よりか
なり低くなり、ライデンフロスト現象を起こさない程度
の温度となる。そのため、セラミック被覆層が設けられ
ている場合には、金属面の場合には膜沸騰状態となるよ
うな高温であっても燃料液滴は膜沸騰することなく、核
沸騰もしくは遷移沸騰状態となりその蒸発速度が極めて
大きくなる。その結果、自己着火時期までに加熱面上に
噴射されて付着した燃料液滴は十分に気化される。
【0021】請求項2に記載の発明によれば、ジルコニ
アはセラミックの中でも比較的熱伝導率が低いため、セ
ラミック被覆層をジルコニアで形成することにより、付
着した液滴との界面付近に大きな温度勾配ができ易く、
液滴蒸発中の過渡的な界面温度をそれだけ低くすること
が可能となる。特に、渦流室の内壁面温度は燃焼により
約500℃に達すると言われており、液滴付着前の段階
では渦流室内に配置された加熱面も約500℃に達して
いる。ジルコニア上における軽油の最大蒸発率点は約5
00℃でありほぼ一致するため、軽油の蒸発速度はほぼ
最大となる。その結果、自己着火時期までに燃料が気化
される気化率をほぼ最大とすることが可能となる。
【0022】請求項3に記載の発明によれば、セラミッ
ク被覆層の厚みが100μm以上であれば基材からの熱
の影響を受け難く、過渡的に液滴蒸発中の界面温度をラ
イデンフロスト点より低くし得る適度な温度勾配が確保
される。また、セラミック被覆層の厚みが500μm以
下であれば、低熱伝導率のセラミックが断熱性を有する
とはいえ、燃焼による熱の放熱性が阻害されない。
【0023】請求項4に記載の発明によれば、セラミッ
ク被覆層の表面に形成された10〜50μm径相当の凹
凸部が気泡の核となって気泡が発生し易くなり、気泡が
発生し出す温度が低温側にシフトし、低温域における気
泡の発生率が増大する。液滴中に気泡が発生することに
よりその表面積が増加して気化が促進されるため、低温
域での蒸発速度も高められる。そのため、エンジン始動
時の燃料気化が促進される。
【0024】請求項5及び請求項8に記載の発明によれ
ば、燃焼室もしくは渦流室内に設けられたグロープラグ
の発熱部は、エンジン始動時に赤熱するほどの高温で発
熱するが、発熱部はセラミック被覆層に被覆されてお
り、付着した燃料液滴の膜沸騰が抑えられるため燃料気
化が促進される。その結果、エンジン始動時の着火性が
よくなる。また、エンジン始動中に燃料燃焼による火炎
により発熱部が高温に加熱された状態となっても、付着
した燃料の気化は促進される。
【0025】請求項6に記載の発明によれば、通電発熱
手段により裏面側から加熱される加熱体の加熱面は、渦
流室内における燃料噴射装置の噴射ノズルに対向する部
位にその内壁面を形成するように配置される。そのた
め、渦流室内で加熱体が突出状態に配置されていないた
め、燃焼の渦流が乱されて燃焼性を悪化させることが防
止される。
【0026】請求項7に記載の発明によれば、請求項
1、請求項2及び請求項6と同様の作用を有する。
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)以下、本発明を具体化した第1の実
施形態の燃料供給装置を図1〜図6に従って説明する。
【0028】図1に示すように、ディーゼルエンジン1
のシリンダブロック2には渦流室3(チャンバ)が形成
されている。この渦流室3は通路3aを介して燃焼室
(図示せず)に連通されている。シリンダブロック2は
第1ブロック2aと第2ブロック2bとからなる。
【0029】第1ブロック2aには燃料噴射装置として
のフューエルインジェクタ4が埋設され、その噴射ノズ
ル4aは渦流室3内を指向して配置されている。第2ブ
ロック2bには、渦流室3内において噴射ノズル4aと
対向する位置に予熱装置を構成する予熱ヒータ5が埋設
されている。
【0030】図1,図2に示すように、予熱ヒータ5
は、第2ブロック2bに形成された凹部2cに取付けら
れ、その表面が渦流室3の内壁面の一部を形成するよう
に配置されている。予熱ヒータ5は、約15〜50mm程
度の直径を有する略円板状のSUS(ステンレス鋼)よ
りなる基材としての金属板6と、この金属板6の裏面に
図3(b)に示すように所定経路に屈曲形成されたガイ
ド凹部6aに沿って配線された通電発熱部材7とを備
え、金属板6の裏面は通電発熱部材7に接続された配線
8が通る抜出穴9aを除いて断熱板9により覆われてい
る。
【0031】図1,図2に示すように、金属板6の表面
(図2の上面)には低熱伝導性のセラミックで知られる
ジルコニア(ZrO2 )が溶射法(例えばプラズマ溶射
法)により溶射されてセラミック被覆層10が形成され
ている。セラミック被覆層10の層厚Tc は約100〜
500μmの範囲にある。また、SUSからなる金属板
6の表面へのジルコニア(ZrO2 )の結合力を高める
目的から結合材11を介してセラミック被覆層10を被
覆させている。本実施の形態では結合材11としてニッ
ケルクロム・アルミ・コバルト・イットリア複合体(第
1メテコ株式会社製;461NS又は365−2)を使
用している。また、ジルコニア(ZrO 2 )は比較的粒
径の粗いもの(第1メテコ株式会社製;201BNS又
は204)を使用している。
【0032】セラミック被覆層10は金属板6の表面に
その周縁1mm程度を除いたほぼ全面に形成されている。
セラミック被覆層10の表面積(すなわち溶射面積)
は、渦流室3の内壁に埋設された予熱ヒータ5の表面に
対して噴射ノズル4aから噴射される軽油燃料の液滴F
のほとんど全てがセラミック被覆層10の表面上に付着
するように直径15〜50mmの円の面積もしくはそれに
相当する面積に設定されている。
【0033】また、セラミック被覆層10の表面粗度
は、ほぼ10〜50μmの範囲にある。これは溶射法に
より形成されたセラミック被覆層10の表面に、ほぼ1
0〜50μmの径を有する微小な凹部が形成されている
ためである。フューエルインジェクタ4の噴射ノズル4
aから噴射される燃料の液滴径が数百μmオーダにある
ことから、その微小な凹部は液滴径に比較して十分小さ
いものである。
【0034】本実施の形態では、低熱伝導性のセラミッ
クとしてジルコニア(ZrO2 )を使用しているが、低
熱伝導性のセラミックとして知られるその他のセラミッ
ク材料にて被覆層を形成することもできる。
【0035】図2に示すように、予熱ヒータ5は、凹部
2c内に装着された状態で互いに接触する金属板6の周
縁と、凹部2cを形成している第2ブロック2bの周縁
部との接触部をレーザー溶接により接合することにより
レーザー接合部12を介して第2ブロック2bに対して
十分強い結合力にて固定されている。
【0036】通電発熱部材7に接続された配線8は、第
2ブロックbに形成された配線通路2dを通って温度制
御回路13を介してバッテリ電源14と接続されてい
る。温度制御回路13には、金属板6の外周壁面に接触
して金属板6の温度を検出する温度センサ15が接続さ
れており、この温度センサ15からの温度検出信号に基
づき通電発熱部材7を流れる電流値が温度制御回路13
により制御されることにより、エンジン始動時にセラミ
ック被覆層10の表面温度が所定温度にまで加熱されそ
の温度で保持されるようになっている。なお、通電発熱
部材7とガイド凹部6aの内壁面との間は、電気絶縁を
図るため所定距離以上離間するか、その間に絶縁物(図
示せず)が介されている。
【0037】次に、上記のように構成された予熱ヒータ
5の作用を説明する。イグニションキーがオンされる
と、温度制御回路13により通電発熱部材7が通電され
て予熱ヒータ5が加熱される。通電発熱部材7が600
℃以上に達するとフューエルインジェクタ4の噴射ノズ
ル4aから燃料の噴射が開始される。通電発熱部材7の
通電はしばらく(例えば3分以内)続けられ、その後、
通電が停止される。このときまでに渦流室3内は燃料の
燃焼により十分高温(約500℃)に達する。
【0038】噴射ノズル4aから噴射された燃料の液滴
Fは、そのほとんどが直径15〜50mmの円の面積もし
くはそれに相当する面積を有するセラミック被覆層10
の表面上に付着する。このとき、セラミック被覆層10
も渦流室3内での燃焼時の火炎により加熱されて渦流室
ならば約500℃に達すると言われている。セラミック
被覆層10はその層厚Tz が100〜500μmと非常
に薄い膜であるため、その層内は内壁面温度に近似した
温度となっている。セラミック被覆層10の表面に噴霧
されて付着した軽油の液滴Fは、その表面から伝達され
る熱により加熱されて短時間で気化する。
【0039】すなわち、図4に示すように、セラミック
被覆層10の表面(以下、加熱面という)Sに付着した
液滴Fは、その液滴Fとセラミック被覆層10との接触
界面Pを介して高温側(約500℃)のセラミック被覆
層10側から伝達された熱により沸騰して気化する。
【0040】このとき、まず液滴Fが加熱面に付着する
と、低温の液滴と接触すること及びこれに引き続き接触
面において液が局部的に蒸発してセラミック被覆層10
から熱が急激に奪われることにより、液滴Fの付着直前
までその表面温度Ta が約500℃になっていたセラミ
ック被覆層10の表面温度が瞬間的に温度Tb に低下す
る。その後、温度Tbまで降温した低温部にその回りか
ら熱が供給されることにより、その瞬間的にできた大き
な温度勾配が小さくなる。
【0041】ここで、セラミック被覆層10は、その材
質が低熱伝導率のジルコニア(ZrO2 )からなること
から、低温部に回りから供給される単位時間当たりの熱
量が、金属等のような高熱伝導性の材質のものに比較し
てかなり小さい。そのため、液滴Fが蒸発し続けている
間は、初期にできた大きな温度勾配が金属等の高熱伝導
率の材質のものに比較してあまり回復されず、その界面
温度が約500℃という初期温度Taに比較してかなり
低い温度Tc (>Tb )で一種の平衡状態を保って液滴
Fの蒸発が進む。
【0042】加熱面Sを形成する材質が例えば金属のよ
うに熱伝導率の高い材質であれば、温度勾配はさほどで
きず界面温度Tcは約500℃のままとなる。しかし、
セラミック、特にその中でも熱伝導率の比較的小さな材
質であるジルコニア(ZrO 2 )であるため、セラミッ
ク被覆層10中には、図4に示すように接触界面P近傍
の極く表層領域に、500℃よりかなり低い温度Tcか
ら約500℃の温度Taまでの連続的な大きな温度勾配
を示す領域R(二点鎖線で囲まれた領域)ができる。な
お、同図中の斜線部分が約500℃の温度Ta の領域と
なる。
【0043】つまり、液滴Fの付着直前まで約500℃
に加熱されていても、液滴Fが付着してその液滴Fが蒸
発し続けている間は、その界面Pの温度Tc が500℃
より十分低く保持される。この温度Tc は加熱面Sに付
着した液滴Fがライデンフロスト現象を起こさない程度
の温度となる。その結果、液滴Fは加熱面S上で核沸騰
もしくは遷移沸騰して短時間のうちに気化し、自己着火
する時期までに噴射されて加熱面S上に付着した液滴F
のほとんど全てが気化する。気化した燃料は完全燃焼し
易いため、従来技術で述べたような加熱面で液滴Fが膜
沸騰して十分に気化し切れず、燃料の一部が不完全燃焼
を起こすという問題は回避される。
【0044】ここで、セラミック被覆層10の層厚Tz
を100〜500μmとしているが、層厚Tz が100
μm未満となるとその被覆層が形成されている母材の金
属(SUS)の影響を受けて温度勾配ができ難く、接触
界面Pの温度Tc が膜沸騰を起こさない温度まで十分に
降温し切らない。また、層厚Tz が500μmを越える
と、セラミック被覆層10の断熱効果により燃焼時の火
炎による熱が放熱され難くになる。そのため、液滴付着
前の表面温度Taが内壁面温度を大きく越える(Ta>
約500℃)虞れがあり、液滴付着後に接触界面Pの温
度Tc がライデンフロスト現象を起こさない程度の温度
まで降温し切らない事態が生じる。また、表面温度Ta
が高温であると、熱膨張のため吸入空気量が減ってしま
い、完全燃焼を阻害する虞れも生じる。そのため、層厚
Tz を100〜500μmとしたことにより、液滴Fの
蒸発中、界面Pの温度Tc をライデンフロスト現象を起
こさない程度の温度に保持してその気化時間を短縮する
ことが可能となるうえ、十分な吸入空気量を確保して完
全燃焼に近い燃焼を実現することが可能となる。
【0045】また、加熱面S(セラミック被覆面)は、
直径15〜50mmの円の面積もしくはそれに相当する面
積であり、渦流室3の内壁面の極く一部を占めるだけで
あり、また層厚Tz は100〜500μmと非常に薄い
膜であるため、セラミック被覆層10が断熱効果を有す
るとしても、火炎による熱は基材及び金属内壁面から放
熱されるため内壁表面が異常な高温となることはない。
【0046】次に、セラミック被覆層10が最大蒸発率
点の高温側へのシフトに寄与することを示す実験結果を
示す。図5は、アルミニウム(Al),SUS(ステン
レス鋼),及びSUSを基材としてその表面にジルコニ
ア(ZrO2 ),アルミナ(Al2 3 )を溶射してそ
れぞれの被覆層を形成したものとの合計4種類の固体面
試料について、加熱面温度Taとその加熱面Sに滴下し
た軽油液滴の寿命(蒸発速度の逆数に相当する)との関
係を示したグラフである。
【0047】熱電対により加熱面温度Ta が定常状態に
達した後、マイクロシリンジで針状先端部に付着させた
軽油2.85mm3 を振動させて加熱面S上に滴下し
た。蒸発時間は高速ビデオカメラを用いて測定し、1se
c.以上の測定は目視によりストップウォッチで行ってい
る。
【0048】図5に示す各試料毎のプロット点から分か
るように、金属(Al,SUS)の加熱面上では、最大
蒸発率は370℃付近で、それ以上の温度ではライデン
フロスト現象の影響により蒸発時間が長くなる。
【0049】また、セラミックを被覆した加熱面上で
は、金属加熱面上より広い温度範囲で蒸発時間を短縮で
き、特にZrO2 の場合は加熱面温度Ta が800℃に
なっても蒸発時間の短縮を維持できることが分かる。ま
た、ZrO2 の場合、約500℃付近が蒸発時間の最も
短くなる最大蒸発率点であることが分かる。これは一般
に言われているディーゼルエンジン1の渦流室3内の内
壁面温度にほぼ等しく、セラミック被覆層10の材質に
ジルコニア(ZrO2 )を用いることにより、その表面
温度が最大蒸発率点にほぼ一致し、軽油の液滴Fの蒸発
速度を最大とすることができることを意味する。また、
運転条件等により壁面温度は約500℃付近であるとは
限らないが、図5にあるように400〜600℃の広い
範囲において、安定して蒸発時間を短縮できる。一方、
約500℃での金属材質の加熱面Sでの蒸発速度は著し
く悪く、金属材質で形成された通常の渦流室では、その
内壁面に付着した軽油の液滴Fの気化が十分でないこと
が分かる。
【0050】図6は、実エンジンに近い環境(噴霧滴,
20気圧下)下におけるセラミック被覆層の気化率向上
効果を調べるため、アルミニウム鋼(Al)と、SUS
を基材としてその表面にジルコニア(ZrO2 )の被覆
層を形成したものとの2種類の固体面試料を用意し、種
々の雰囲気圧下で噴射した軽油の噴霧の寿命(蒸発速度
の逆数に相当)と加熱面温度Ta との関係を示したグラ
フである。
【0051】軽油の噴射は、窒素で加圧したチャンバ内
で行った。実験条件は、雰囲気圧1〜20気圧,加熱面
温度Ta は常温〜500℃、噴射圧30MPa,噴射量
10mm3 ,衝突距離44mmである。
【0052】ビデオ撮影により、Al上において、加熱
面温度370℃,雰囲気圧20気圧で噴射した燃料の一
部が加熱面に衝突後、粒状となり飛散している様子が観
察された。これは、噴射した燃料がライデンフロスト現
象を起こしたためだと考えられる。図6のグラフから雰
囲気圧の影響はさほど受けないことが分かる。図5の大
気圧下での実験結果と同様に、Alの加熱面(寿命曲線
L1)よりも、SUSにZrO2 を被覆した加熱面(寿
命曲線L2)の方が、付着した軽油の蒸発時間(寿命)
を短縮できることが分かる。
【0053】また、図5のグラフからジルコニア(Zr
2 )の最大蒸発率点が約500℃であったことから、
図6のグラフの曲線L2は350℃以上で破線の軌跡を
とるものと推察される。これは、ジルコニア被覆層の加
熱面を用いることにより、軽油燃料の供給が噴霧により
行われる実エンジン下では、液滴寿命を2ms(ミリ
秒)以下とし得ることを示唆している。
【0054】このように加熱面Sをセラミック被覆層1
0で被覆して形成することにより、加熱面Sに付着した
軽油液滴Fの気化が促進され、着火時期までに燃料のほ
とんどが気化される。そのため、従来技術で述べたよう
な燃料の一部が渦流室の内壁面に付着して不完全燃焼の
ままカーボンとして残ったりHC等の不完全燃焼ガスと
して排気されることが防止される。そして、燃料のほと
んど全てが完全燃焼に近い状態で燃焼されるので燃費が
良くなるとともに、排気ガスの清浄化を図ることも可能
となる。
【0055】以上詳述したように本実施形態の予熱ヒー
タ5によれば、以下に列記する効果が得られる。 (a)予熱ヒータ5の加熱面Sを低熱伝導性のセラミッ
ク被覆層10で被覆したため、軽油液滴Fの最大蒸発率
点を、事実上、高温側へシフトすることことができる。
また、広い温度範囲において、安定して蒸発時間を短縮
できる。そのため、渦流室3内での燃焼等により加熱面
温度Ta が約500℃となっていても、軽油液滴Fが膜
沸騰状態となることがなく、着火時期までに加熱面Sに
噴射された軽油液滴Fのほとんどを確実に気化させるこ
とができる。その結果、従来技術で述べたような気化し
切れなかった燃料が加熱面に付着したまま残ることが防
止されるので、燃費の向上及び排気ガスの清浄化を図る
ことができる。
【0056】(b)セラミック被覆層10の材質をジル
コニア(ZrO2 )としたので、最大蒸発率点の高温側
へのシフト量を大きくすることができ、特に渦流室3の
内壁面温度(約500℃)が、その最大蒸発率点とほぼ
一致するので、燃料の気化時間を著しく短縮することが
できる。
【0057】(c)セラミック被覆層10の層厚Tz を
100〜500μmの範囲としたので、液滴Fの蒸発中
の過渡的な界面温度Tc をライデンフロスト現象を起こ
さない程度の温度に維持することができるうえ、セラミ
ック被覆層10の断熱効果もさほど現れず吸入空気量を
十分確保することができる。
【0058】(d)セラミック被覆層10の表面(加熱
面S)に気泡の核となり得る10〜50μm径の微細な
凹部を形成したので、最大蒸発率点未満の低温域におい
ても、核沸騰を促進させて燃料の気化率を一層向上させ
ることができる。従って、エンジン始動時の低温時にお
いても、燃費の向上及び排気ガスの清浄化を図ることが
できる。
【0059】(e)加熱面S(セラミック被覆面)は、
直径15〜50mmの円の面積もしくはそれに相当する面
積であり、渦流室3の内壁面の極く一部を占めるだけな
ので、セラミック被覆層10が断熱効果を有するとして
も、火炎による熱は基材及び金属内壁面から確実に放熱
され、内壁面温度が異常な高温にさらされることを防止
することができる。
【0060】(f)本実施の形態によれば、セラミック
被覆層10は100〜500μmと大変薄い皮膜である
うえ、その層は渦流室の内壁の一部を形成しているだけ
なので、その層が低熱伝導性のセラミックであってもそ
のセラミック層による断熱効果はほとんど皆無といえ
る。そのため、特公昭60−182341号公報に述べ
られているように、渦流室の本体をセラミックで形成
し、その断熱効果により熱容量が大きくなってしまい、
蓄熱された熱が吸入空気を加熱し、その熱膨張のため吸
入空気が減少するので、エンジンの体積効率が低下し、
燃費が悪化するという問題が起こることはない。
【0061】(第2の実施形態)次に、本発明を具体化
した第2の実施形態について図7,図8に基づいて説明
する。本実施形態では、セラミック被覆層を渦流室もし
くは燃焼室に設けられるグロープラグの発熱部に形成し
た点が前記第1の実施の形態と異なっている。
【0062】図7に示すように、ディーゼルエンジン1
のシリンダブロック2内に形成されるとともに燃焼室
(図示せず)に通路3aを介して連通された渦流室3
(チャンバ)内には、シリンダブロック2内に埋設され
たグロープラグ21の発熱部21aが垂下されている。
この発熱部21aは、同じくシリンダブロック2内に埋
設されたフューエルインジェクタ4の噴射ノズル4aの
燃料噴射域内のやや外周部寄りに配置されている。
【0063】図8に示すように、発熱部21aは、SU
S等の金属からなる保護管22を備え、この保護管22
の表面には少なくとも燃料が当たる領域(図7の斜線部
の領域)に結合材23を介してセラミック被覆層24が
形成されている。セラミック被覆層24は前記第1の実
施形態と同様にジルコニア(ZrO2 )からなり、同じ
く溶射法を用いて形成されている。セラミック被覆層2
4の層厚Tz は、100〜500μmの範囲が好まし
く、本実施形態では約300μmとなっている。なお、
結合材23は前記第1の実施形態と同じものを使用して
おり、その厚みは約100μmである。
【0064】保護管22の内部には通電発熱部材25が
装着されている。この通電発熱部材25はバッテリ電源
(図示せず)と接続され、エンジン始動時に所定時間
(例えば3分間)だけ通電されるようになっている。
【0065】エンジン始動時にはまず通電発熱部材25
が通電されて発熱部21aが発熱される。発熱部21a
が600℃以上まで発熱すると、フューエルインジェク
タ4の噴射ノズル4aから燃料が噴射され、その燃料は
セラミック被覆層24の表面上に付着する。
【0066】付着した燃料の液滴Fによる吸熱と、ジル
コニア(ZrO2 )自身の低い熱伝導率のため、液滴F
との界面P近傍の極く表層に大きな温度勾配を示す領域
R(図4参照)ができ、その界面温度Tc がライデンフ
ロスト現象を起こさない程度の温度に維持できる。その
ため、加熱面Sに付着した液滴Fは瞬時に核沸騰もしく
は遷移沸騰し、著しく蒸発する。
【0067】こうしてセラミック被覆層24に付着した
燃料のうちかなりの量が直ちに気化し、その付着燃料が
瞬時に減少するとともに、その回りを気化燃料が覆うの
で、燃料の着火がし易くなる。そのため、エンジン始動
時での着火性が向上する。
【0068】こうしてエンジン1が始動し、この始動か
ら所定時間(例えば3分間)を経過すると、通電発熱部
材25の通電が停止される。このときまでに渦流室3の
内壁面及び発熱部21aの表面温度は約500℃に達す
ると言われている。
【0069】発熱部21に噴射された燃料は、セラミッ
ク被覆層24の表面上に付着する。燃料付着前のセラミ
ック被覆層24は約500℃の均一な温度となっている
が、付着した燃料の液滴Fによる吸熱と、ジルコニア
(ZrO2 )自身の低い熱伝導率のため、液滴Fとの界
面P近傍の極く表層領域に大きな温度勾配の領域R(図
4参照)ができ、その界面Pの温度Tc が軽油のライデ
ンフロスト現象を起こさない程度の温度となる。そのた
め、加熱面Sに付着した液滴Fは核沸騰もしくは遷移沸
騰し、しかも初期温度Ta が約500℃と、ジルコニア
(ZrO2 )を被覆した加熱面の最大蒸発率点にほぼ一
致するため、液滴Fの気化時間は著しく短縮される。
【0070】こうして発熱部21aの表面である加熱面
Sに付着した燃料は、そのほとんどが自己着火の時期ま
でに気化される。その結果、燃料の気化率が向上し、従
来技術のグロープラグを備えたエンジンに比較し、一層
の燃費の向上及び排気ガスの清浄化を図ることが可能と
なる。
【0071】また、セラミック被覆層24の層厚Tz が
約300μmであるが、層厚Tz を100μm以上とす
ることにより、母材である金属(SUS)からの熱の影
響を受けず液滴蒸発中の界面温度Tc をライデンフロス
ト現象を起こさない程度の温度に維持することが可能と
なる。また、層厚Tz を500μm以下とすることによ
り、火炎による熱の放熱が阻害されず、次の燃料噴射時
期までに初期温度Taを約500℃まで降温させること
が可能となる。この初期温度Ta が約500℃までに回
復されていないと、液滴付着後に界面温度Tc がライデ
ンフロスト現象を起こさない程度の温度にならない虞れ
がある。
【0072】以上詳述したように本実施形態のグロープ
ラグ21によれば、以下に列記した効果が得られる。 (a)グロープラグ21の発熱部21aの少なくとも燃
料が当たる部位を、低熱伝導性のセラミック被覆層24
で被覆したため、付着した燃料の気化が促進され、エン
ジン始動時での着火性を向上させることができる。
【0073】(b)グロープラグ21の発熱部21aの
少なくとも燃料が当たる部位を、低熱伝導性のセラミッ
ク被覆層24で被覆したため、通電停止後の発熱部21
aが燃焼時の火炎により約500℃に達していても、発
熱部21aに付着した燃料がライデンフロスト現象を起
こすことなくその気化を促進させることができる。その
結果、自己着火時期までに発熱部21aに付着した燃料
のほとんどを気化させることができ、燃費の向上及び排
気ガスの清浄化を図ることができる。
【0074】(c)セラミック被覆層24の材質をジル
コニア(ZrO2 )としたので、その最大蒸発率点が渦
流室3の内壁面温度(約500℃)にほぼ一致し、低熱
伝導率のセラミックの中でも最も顕著に燃料の気化時間
を短縮することができる。また、400〜600℃程度
の広い温度範囲において、安定して蒸発時間を短縮でき
る。
【0075】(d)セラミック被覆層24の層厚Tz を
100〜500μmの範囲としたので、層厚Tz が薄過
ぎることによる母材温度の影響を受けることもなく適当
な温度勾配を形成できるとともに、層厚Tz が厚過ぎる
ことによる断熱効果により初期温度Ta が約500℃に
下がり切らないことが起こることもないため、燃料蒸発
中の界面温度Tc をライデンフロスト現象を起こさない
程度の温度にすることができる。
【0076】なお、本発明は上記の各実施形態に限定さ
れるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で例え
ば次のように構成することもできる。 (1)前記第1の実施形態において、図9に示すよう
に、通電発熱部材をPCTセラミック31とし、温度制
御を不要とした構成としてもよい。この場合、セラミッ
ク被覆層10とPCTセラミック31との双方の材質の
結合性が良ければ、同図のようにPCTセラミック31
の表面にセラミック(例えばZrO2 )を直接溶射して
セラミック被覆層10を形成してもよい。勿論、結合材
を介してPCTセラミック31をセラミック被覆層10
で被覆してもよい。この構成によれば、通電発熱部材を
PCTセラミック31としたことにより温度制御が不要
となり、温度センサ15や温度制御回路13を無くすこ
とができ、予熱ヒータ5を簡単な構造とすることができ
る。また、温度上昇の即効性がよい。また、図2の予熱
ヒータ5において、金属板6をPCTセラミックを用い
て加熱する構成とし、温度センサ15や温度制御回路1
3を無くしてもよい。この構成によっても図9の予熱ヒ
ータ5と同様の効果が得られる。
【0077】(2)第1の実施形態における予熱ヒータ
5において、金属板6とセラミック被覆層10との結合
性が良ければ、結合材11を無くしてもよい。 (3)セラミック被覆層10,24の材質をジルコニア
(ZrO2 )以外の低熱伝導率を有するその他のセラミ
ックとしてもよい。例えばアルミナ(Al2 3 )を用
いてもよい。また、ジルコニアは部分安定化ジルコニア
もしくは安定化ジルコニアとしてもよい。
【0078】(4)セラミック被覆層10,24の形成
方法は溶射法に限定されない。例えば反応性イオンプレ
ーティング法,活性化反応性蒸着法(ARE法),ホロ
ーカソード放電法(HCD法)等によりセラミック被覆
層10,24を形成してもよい。
【0079】(5)第1の実施形態において、焼結して
得られたジルコニアの薄板をロー付け等の手法により金
属基材上に結合させてセラミック被覆層10としてもよ
い。 (6)シリンダブロック2を基材として、渦流室3の内
壁面にセラミック(例えばジルコニア)を溶射してセラ
ミック被覆層を形成し、このセラミック被覆層を加熱す
るための通電発熱部材を、そのセラミック被覆面から所
定深さのシリンダブロック2内に埋設した構成としても
よい。
【0080】(7)基材の材質を金属板6のような金属
に代えて、高熱伝導率を有するセラミックとしてもよ
い。例えばSiC,Si3 4 等を用いてもよい。勿
論、保護管22の基材が高熱伝導率のセラミックであっ
てもよい。
【0081】(8)グロープラグ21の発熱部21aを
燃料噴射域中央に配置し、噴霧燃料を積極的に発熱部2
1aに付着させるようにしてもよい。発熱部21aへの
燃料の付着量が多くなる分だけ燃料の気化率を向上させ
ることができる。
【0082】(9)グロープラグ21を直接噴射式のデ
ィーゼルエンジンの燃焼室に設けた構成としてもよい。
この構成によっても、エンジン始動時の着火性の向上、
及び燃費の向上や排気ガスの清浄化を図ることができ
る。
【0083】(10)燃料は軽油に限らず、メタノール
などその他の液体燃料を対象として本発明の予熱装置を
適用してもよい。前記実施の形態から把握され、特許請
求の範囲に記載されていない発明を、その効果とともに
以下に記載する。
【0084】(イ)請求項5又は請求項6において、前
記セラミック被覆層による被覆面積は、直径15〜50
mmの円の面積相当である。この構成によれば、通常の
渦流室のサイズから、燃料噴射装置の噴射ノズルからそ
の対向壁面に噴射される燃料の照射面積は直径15〜5
0mmの範囲内にあるため、噴射された燃料のほとんど
をセラミック被覆層の表面に付着させることができる。
また、この被覆面は渦流室内壁面のほんの一部であるた
め、燃焼による熱の放熱性も確保することができる。
【0085】(ロ)請求項1〜請求項6及び(イ)のい
ずれかにおいて、前記基材は、前記通電発熱手段を構成
する通電発熱部材を兼ねた。この構成によれば、セラミ
ック被覆層は、通電発熱部材である基材の表面に直接
(但し、結合材は除く)形成されるため、予熱装置の構
造を単純化できるうえ、加熱体の薄型化を図ることがで
きる。
【0086】(ハ)請求項1〜請求項6、(イ)及び
(ロ)において、前記通電発熱手段を構成する通電発熱
部材はPCTセラミックである。この構成によれば、温
度制御が不要となり、温度制御のための温度検出器や回
路等を使用しなくて済み、通電発熱手段を簡単な構造と
することができる。
【0087】
【発明の効果】以上詳述したように請求項1に記載の発
明によれば、低熱伝導率のセラミックからなるセラミッ
ク被覆層を被覆して加熱面を形成したので、燃焼室もし
くは渦流室内で燃料液滴が付着したその界面付近に適度
な温度勾配が形成されてその界面温度が過渡的にライデ
ンフロスト現象を起こさない程度の温度となるため、燃
料の気化を促進させることができる。その結果、噴射さ
れた燃料が有効に燃焼に使用され、燃費の向上及び排気
ガスの清浄化を図ることができる。
【0088】請求項2に記載の発明によれば、セラミッ
ク被覆層をジルコニアで形成したので、エンジン始動以
後の渦流室内の壁面温度に匹敵する温度(約500℃)
に加熱面が加熱されていても、燃料液滴が付着後の界面
温度が軽油の最大蒸発率点にほぼ一致し、軽油の気化率
を著しく大きくすることができる。
【0089】請求項3に記載の発明によれば、セラミッ
ク被覆層の厚みを100〜500μmの範囲に設定した
ので、基材の温度の影響を受けずに燃料液滴の界面温度
を確実にライデンフロスト現象を起こさない程度の温度
にできるとともに、燃焼による熱の放熱性が損なわれな
い。
【0090】請求項4に記載の発明によれば、セラミッ
ク被覆層の表面に10〜50μm径相当の凹部を形成し
たので、エンジン始動時の低温域における気泡の発生率
が増大し、エンジン始動時にも燃料気化を促進させるこ
とができる。
【0091】請求項5及び請求項8に記載の発明によれ
ば、グロープラグの発熱部をセラミック被覆層を被覆し
て形成したので、発熱部を600℃以上の高温で発熱し
ても、付着した燃料液滴はライデンフロスト現象を起こ
さず燃料気化を促進し、着火性をよくすることができ
る。また、エンジン始動後に燃焼による火炎により発熱
部が高温に加熱されても、付着した燃料はライデンフロ
スト現象を起こさず気化が促進されるので、燃費の向上
及び排気ガスの清浄化を図ることができる。
【0092】請求項6に記載の発明によれば、加熱体の
加熱面を渦流室内における噴射ノズルに対向する部位に
その内壁面を形成するように配置したので、渦流室内で
加熱体が突起物とならず、燃焼の渦流が乱されないので
良好な燃焼性を確保することができる。
【0093】請求項7に記載の発明によれば、請求項
1、請求項2及び請求項6と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態における予熱ヒータを備えた渦
流室の断面図。
【図2】予熱ヒータの模式断面図。
【図3】(a)は予熱ヒータの平面図、(b)は同じく
底面図。
【図4】燃料液滴の気化メカニズムを説明する模式断面
図。
【図5】加熱面温度に対する液滴寿命を示すグラフ。
【図6】同じくグラフ。
【図7】第2の実施形態におけるグロープラグを備えた
渦流室の断面図。
【図8】発熱部の部分断面図。
【図9】別例の予熱ヒータの模式断面図。
【図10】従来装置の側断面図。
【図11】蒸発速度曲線のグラフ。
【符号の説明】
1…ディーゼルエンジン、3…渦流室、4…燃料噴射装
置としてフューエルインジェクタ、4a…噴射ノズル、
5…予熱装置を構成する予熱ヒータ、6…加熱体を構成
するとともに基材としての金属板、7,25…通電発熱
部材、10,24…加熱体を構成するセラミック被覆
層、13…通電発熱手段を構成する温度制御回路、14
…通電発熱手段を構成するバッテリ電源、15…通電発
熱手段を構成する温度センサ、21…グロープラグ、2
1a…発熱部、22…基材としての保護管、31…基材
及び通電発熱部材としてのPTCセラミック、F…液
滴、S…加熱面。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ディーゼルエンジンの燃焼室もしくは渦
    流室内において燃料噴射装置の噴射ノズルから噴射され
    た燃料が付着し得る位置に加熱面を配置する加熱体と、
    該加熱体を加熱するための通電発熱手段とを備えたディ
    ーゼルエンジンの予熱装置であって、 前記加熱体は金属もしくは高熱伝導率のセラミックから
    なる基材を備えており、前記加熱面は低熱伝導率のセラ
    ミックからなるセラミック被覆層が前記基材の表面の一
    部もしくは全部に被覆されて形成されたディーゼルエン
    ジンの予熱装置。
  2. 【請求項2】 前記セラミック被覆層はジルコニアから
    なる請求項1に記載のディーゼルエンジンの予熱装置。
  3. 【請求項3】 前記セラミック被覆層の厚みは100〜
    500μmの範囲である請求項1又は請求項2に記載の
    ディーゼルエンジンの予熱装置。
  4. 【請求項4】 前記セラミック被覆層の表面には10〜
    50μm径相当の凹凸部が形成された請求項1〜請求項
    3のいずれか一項に記載のディーゼルエンジンの予熱装
    置。
  5. 【請求項5】 前記燃焼室もしくは渦流室内にはグロー
    プラグが設けられ、前記加熱体は前記噴射ノズルの燃料
    噴射域に配置された前記グロープラグの発熱部である請
    求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のディーゼルエ
    ンジンの予熱装置。
  6. 【請求項6】 前記加熱体は、前記渦流室内における前
    記燃料噴射装置の噴射ノズルに対向する内壁面を前記加
    熱面が形成するように設けられ、前記通電発熱手段が該
    加熱体の裏面側に設けられた請求項1〜請求項4のいず
    れか一項に記載のディーゼルエンジンの予熱装置。
  7. 【請求項7】 前記渦流室内の燃料噴射装置の噴射ノズ
    ルに対向する内壁面を形成するように配置される加熱面
    を有するとともに、金属もしくは高熱伝導率のセラミッ
    クからなる基材と、該基材の表面の一部もしくは全部に
    被覆されて前記加熱面を形成する低熱伝導率のセラミッ
    クからなるセラミック被覆層とを備えた加熱体と、該加
    熱体に熱を供給するための通電発熱手段とを備えた予熱
    ヒータ。
  8. 【請求項8】 発熱部の表面の一部もしくは全部が低熱
    伝導率のセラミックからなるセラミック被覆層にて被覆
    されたグロープラグ。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP1156202A2 (en) 2000-05-17 2001-11-21 Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha Internal combustion engine
WO2003036061A1 (de) * 2001-10-04 2003-05-01 Robert Bosch Gmbh Starthilfsmittel und brennraum
JP2008076044A (ja) * 2006-09-22 2008-04-03 Robert Bosch Gmbh 内燃機関における燃焼過程に用いられる始動エレメントを被覆するための方法および装置

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