JP2000160298A - 耐摩耗性に優れた熱間工具用鋼および熱間工具 - Google Patents
耐摩耗性に優れた熱間工具用鋼および熱間工具Info
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Abstract
命が極めて長い熱間工具用鋼と熱間工具を提供する。 【解決手段】重量%で、C:0.4〜0.6%、Cr:
7〜10%を含み、かつ900℃における鋼中の炭化物
量が3.0〜9.0重量%の熱間工具用鋼とこの鋼で製
造された熱間工具。上記の鋼は、重量%で、Si:0.
5〜2%、Mn:1.5%以下、Mo:0.5〜3%、
V:0.5〜1.5%、さらにはNi:0.3〜2%、
また更にはAl:0.005〜0.1%を含み、不純物
中のPが0.015%以下、Sが0.005%以下、N
が0.015%以下であるのがよい。
Description
押し出し加工用金型、ダイカスト金型などに使用される
耐摩耗性に優れた熱間工具用鋼と熱間工具に関する。
びダイカストなどに使用される金型用の工具鋼には、摩
耗、熱亀裂、大割れが生じにくいことが要求される。
れ、主として用いられている5Cr−Mo−V系のSK
D61やSKD62、3Cr−3Mo−V系のSKD7
およびNi−Cr−Mo−V系のSKT3やSKT4な
どの工具鋼では、上記の要求される全ての特性を満たす
ことはできない。
添加して炭化物を積極的に析出させることによって耐摩
耗性を向上させた工具鋼が提案されている(例えば、特
開昭60−224754号公報や同61−213349
号公報)。
工具表面温度がA1 変態点以下の500〜700℃で
は、確かに、耐摩耗性に優れている。しかし、使用時の
工具表面温度が上記のA1 変態点を超えると、強度が急
激に低下して摩耗が著しくなり、使用寿命が短いという
欠点を有している。
時の工具表面温度がA1 変態点以下の500〜700℃
の場合は勿論、700℃を超える温度(例えばA3 変態
点以上の900℃程度)になっても、強度が急激に低下
することがなく、耐摩耗性と耐亀裂性に優れていて使用
寿命の極めて長い熱間工具用鋼と熱間工具を提供するこ
とにある。
(1)〜(4)の耐摩耗性に優れた熱間工具用鋼と下記
(5)の熱間工具にある。
Cr:7〜10%を含み、かつ900℃における炭化物
量が1.5〜9重量%である耐摩耗性に優れた熱間工具
用鋼。
Si:0.5〜2%、Mn:1.5%以下、Cr:7〜
10%、Mo:0.5〜3%、V:0.5〜1.5%を
含み、かつ900℃における炭化物量が1.5〜9重量
%である耐摩耗性に優れた熱間工具用鋼。
Si:0.5〜2%、Mn:1.5%以下、Cr:7〜
10%、Mo:0.5〜3%、V:0.5〜1.5%、
Ni:0.3〜2%を含み、かつ900℃における炭化
物量が1.5〜9重量%である耐摩耗性に優れた熱間工
具用鋼。
Si:0.5〜2%、Mn:1.5%以下、Cr:7〜
10%、Mo:0.5〜3%、V:0.5〜1.5%、
Ni:0.3〜2%、sol.Al:0.005〜0.
1%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からな
り、不純物中のP、SおよびNがそれぞれ0.015%
以下、0.005%以下、0.015%以下の化学組成
を有し、かつ900℃における炭化物量が1.5〜9重
量%である耐摩耗性に優れた熱間工具用鋼。
かの熱間工具用鋼からなる熱間工具。
成させた。すなわち、本発明者らは、A1 変態点を超え
る温度領域での耐摩耗性に及ぼす因子の究明に努めた結
果、次のことを知見した。
〜9重量%であれば、使用時の工具表面温度がA1 変態
点を超える温度になっても強度が急激に低下せず、耐摩
耗性が飛躍的に向上する。このことは、後述する実施例
の結果を示す図1から明らかである。
9重量%は、少なくとも、0.4〜0.6重量%のCと
7〜10重量%のCrを含む鋼を用いることによって安
定的に確保される。
重量%のSi、1.5重量%以下のMn、0.5〜3%
重量%のMoおよび0.5〜1.5重量%のVを含む場
合には、このV,Mo系炭化物(MC、M2C 、M
4C3)がCr系炭化物(M23C6、M7C3)に比べて微
細で、亀裂の発生起点になり難いのに加えて靭性低下を
招かないことから、耐亀裂性が向上する。
〜2重量%のNiを含有させれば、素地の靭性が向上
し、耐亀裂性がより一層向上する。
05〜0.1重量%のAlを添加含有させる一方、不純
物中のP、SおよびNの含有量を、それぞれ0.015
%以下、0.005%以下、0.015%以下に抑制す
れば、鋼の清浄度が向上するほか、強度および靭性が向
上する。ここで、上記の900℃における炭化物量と
は、下記に示す条件のもとに測定される量である。
ンモニウムクロライド−89%メタノール、 電流密度:20mA/cm2 、 フルターの濾過径:0.2μm、 抽出炭化物の溶解:王水で溶解後、硫リン酸で再度溶
解、 炭化物溶解液の分析方法;誘導結合プラズマ発光分光分
析法。
00℃における炭化物量と化学成分を上記のように限定
した理由について説明する。なお、以下において、
「%」は「重量%」を意味する。
したように、鋼の化学組成が前述の範囲内であっても、
900℃における鋼中の炭化物量が1.5%未満では、
工具の表面温度がA1 変態点を超える温度域になると、
耐摩耗性が急激に低下し、工具の使用寿命が極端に短く
なる。また、9%超では、靭性が低下して亀裂や大割れ
が発生し、工具の使用寿命が極端に短くなる。このた
め、本発明では、900℃における鋼中の炭化物量を
1.5〜9%に定めた。なお、好ましい範囲は2〜6
%、より好ましい範囲は3〜6%である。
は焼戻し時に炭化物として2次析出して耐摩耗性を向上
させる作用を有する。しかし、その含有量が0.4%未
満では添加効果が乏しく、逆に0.6%を超えて含有さ
せると、炭化物が亀裂の起点となり靭性の低下を引き起
こす。このため、C含有量は0.40〜0.60%とし
た。
上させる。また、Crは炭化物を形成し、耐摩耗性の向
上に有効な元素である。このCr系炭化物は、A1 変態
点を超える温度域でマトリックス中に固溶しやすいが、
前述したように、Mo、V、W系炭化物に比べると粗大
であり、900℃に加熱された鋼中に最も多く存在する
炭化物である。しかし、その含有量が7%未満では耐摩
耗性の向上効果が得られず、逆に10%を超えて含有さ
せると、炭化物が粗大化し、亀裂の起点となり靭性の低
下を招く。このため、Cr含有量は7〜10%とした。
すれば鋼の被削性を向上させる作用を有する。したがっ
て、この効果を得たい場合には添加することができ、そ
の効果は0.5%以上で顕著になる。しかし、2%を超
えて含有させるとヒートチェック性を低下させ、工具の
使用寿命が短くなる。このため、添加する場合のSi含
有量は0.5〜2%とするのがよい。
すれば鋼の焼入性を向上させて靱性を高めるのに有効な
元素である。したがって、この効果を得たい場合には添
加することができ、その効果は0.3%以上で顕著にな
る。しかし、1.5%を超えて含有させると、被削性が
低下する。このため、添加する場合のMn含有量は1.
5%以下とするのがよい。
すれば鋼の焼戻軟化抵抗を向上させるほか、焼入性を向
上させて靱性を高める元素である。したがって、この効
果を得たい場合には添加することができ、その効果は
0.5%以上で顕著になる。しかし、3%を超えて含有
させると、偏析が大きくなり靱性が低下する。このた
め、添加する場合のMo含有量は0.5〜3%とするの
がよい。
ば、マトリックスを強化するほか、上記のMoと同様
に、微細な炭化物を形成して靱性を高め、特に本発明の
高Cr鋼の靭性を高めるのに有効な元素である。したが
って、この効果を得たい場合には添加することができ、
その効果は0.5%以上で顕著になる。しかし、1.5
%を超えて含有させると、V系炭化物が多くなりすぎて
靭性の低下を招く。このため、添加する場合のV含有量
は0.5〜1.5%とするのがよい。
すれば焼入性を向上させて靱性を改善するのに有効な元
素である。したがって、この効果を得たい場合には添加
することができ、その効果は0.5%以上で顕著にな
る。しかし、2%を超えて含有させると、被削性が低下
する。このため、添加する場合のNi含有量は0.5〜
2%とするのがよい。
すれば、鋼の脱酸の安定化および均質化を図るのに有効
な元素である。したがって、この効果を得たい場合に添
加することができ、その効果はsol.Al含有量で
0.005%以上で顕著になる。しかし、0.10%を
超えて含有させると、Al系酸化物や窒化物量が増加
し、靭性や被削性はの低下を招くほか、地きずの原因に
なる。このため、添加する場合のsol.Al含有量は
0.005%〜0.1%とするのがよい。
あり、過剰なPは偏析して靱性低下や熱亀裂の発生を助
長する。このため、P含有量はできるだけ低いほうが好
ましいが、0.015%以下であれば特に問題ない。し
たがって、P含有量は0.015%以下とするのがよ
い。
避的に存在する元素であり、硫化物を形成して被削性を
向上させるが、過剰なSは靱性を低下させる。このた
め、S含有量はできるだけ低い方が好ましいが、0.0
05%以下であれば特に問題ない。したがって、S含有
量は0.005%以下とするのがよい。
不可避的に存在し、窒化物を形成する元素であり、特に
V添加鋼では過剰なNがV系炭化物の析出を妨げ、マト
リックスの強度低下を引き起こす。このため、N含有量
は0.015%以下とするのがよい。
の鋼を電気炉で溶製し、得られた鋼塊を分塊圧延し、次
いで鍛錬比4以上で厚さ200〜400mmに鍛造し
た。その後、鍛造品を800〜850℃で焼鈍した後、
900〜1050℃からの焼入れと550〜640℃で
の焼戻しを施し、硬さHS50〜55に調整した工具用
鋼を加工し、金型を製造した。
る鋼中の炭化物量を、前述の方法に従って測定した後、
金型表面の最高温度が920℃になる条件のJIS G
4051に規定されるS45Cの鍛造加工に供し、そ
の使用寿命と寿命原因を調べた。
E339−83に規定される方法に従って調べ、破壊
靭性値KQ(kgf/mm3/2 )を測定した。
状態を目視観察し、摩耗または亀裂が生じて使用できな
くなるまでの使用回数で評価した。
た。また、900℃における鋼中の炭化物量と使用寿命
との関係を図1にまとめて示した。
るように、本発明の熱間工具用鋼で製造された金型(N
o. 1〜23)の使用寿命は、4493回以上で極めて
長かった。
0℃における炭化物量が本発明で規定する範囲を外れる
鋼で製造された金型(No. 24〜33)の使用寿命は、
2487回以下であり、本発明例の約半分以下と短かっ
た。なお、No. 24の金型は、JISに規定されるSK
D61鋼製である。
れた工具は、A1 変態点を超える温度域において使用寿
命が極めて長い。このため、大幅な工具原単位の低減が
図れる。
寿命との関係を示す図である。
Claims (5)
- 【請求項1】重量%で、C:0.4〜0.6%、Cr:
7〜10%を含み、かつ900℃における炭化物量が
1.5〜9重量%であることを特徴とする耐摩耗性に優
れた熱間工具用鋼。 - 【請求項2】重量%で、C:0.4〜0.6%、Si:
0.5〜2%、Mn:1.5%以下、Cr:7〜10
%、Mo:0.5〜3%、V:0.5〜1.5%を含
み、かつ900℃における炭化物量が1.5〜9重量%
であることを特徴とする耐摩耗性に優れた熱間工具用
鋼。 - 【請求項3】重量%で、C:0.4〜0.6%、Si:
0.5〜2%、Mn:1.5%以下、Cr:7〜10
%、Mo:0.5〜3%、V:0.5〜1.5%、N
i:0.3〜2%を含み、かつ900℃における炭化物
量が1.5〜9重量%であることを特徴とする耐摩耗性
に優れた熱間工具用鋼。 - 【請求項4】重量%で、C:0.4〜0.6%、Si:
0.5〜2%、Mn:1.5%以下、Cr:7〜10
%、Mo:0.5〜3%、V:0.5〜1.5%、N
i:0.3〜2%、sol.Al:0.005〜0.1
%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からな
り、不純物中のP、SおよびNがそれぞれ0.015%
以下、0.005%以下、0.015%以下の化学組成
を有し、かつ900℃における炭化物量が1.5〜9重
量%であることを特徴とする耐摩耗性優れた熱間工具用
鋼。 - 【請求項5】請求項1〜4に記載のいずれかの熱間工具
用鋼からなることを特徴とする熱間工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP33693398A JP4055273B2 (ja) | 1998-11-27 | 1998-11-27 | 耐摩耗性、耐亀裂性および耐大割れ性に優れた熱間工具用鋼ならびに熱間工具 |
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---|---|---|---|
JP33693398A JP4055273B2 (ja) | 1998-11-27 | 1998-11-27 | 耐摩耗性、耐亀裂性および耐大割れ性に優れた熱間工具用鋼ならびに熱間工具 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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JP2000160298A true JP2000160298A (ja) | 2000-06-13 |
JP4055273B2 JP4055273B2 (ja) | 2008-03-05 |
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JP33693398A Expired - Fee Related JP4055273B2 (ja) | 1998-11-27 | 1998-11-27 | 耐摩耗性、耐亀裂性および耐大割れ性に優れた熱間工具用鋼ならびに熱間工具 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP4055273B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN101921958A (zh) * | 2009-06-16 | 2010-12-22 | 大同特殊钢株式会社 | 热加工工具钢以及使用其制得的钢制品 |
-
1998
- 1998-11-27 JP JP33693398A patent/JP4055273B2/ja not_active Expired - Fee Related
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EP2270245A1 (en) * | 2009-06-16 | 2011-01-05 | Daido Tokushuko Kabushiki Kaisha | Hot work tool steel and steel product using the same |
JP2011001573A (ja) * | 2009-06-16 | 2011-01-06 | Daido Steel Co Ltd | 熱間工具鋼及びこれを用いた鋼製品 |
CN101921958B (zh) * | 2009-06-16 | 2015-02-18 | 大同特殊钢株式会社 | 热加工工具钢以及使用其制得的钢制品 |
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