JP4301686B2 - 熱処理時の粗粒化特性および冷間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼線材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工後の熱処理工程で結晶粒の粗大化が必要な製品、例えば冷間加工用ステンレス鋼線材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、オーステナイト系ステンレス線材および鋼線の冷間加工性を向上させるために、加工硬化を抑制する目的でC,Nを低減させ、Cuを添加したり、加工誘起マルテンサイトを抑制する目的でNi当量を上げたりしてきた(例えば特公平5−87586号公報)。ここで、冷間加工性の向上とは、例えば冷間鍛造時の材料の割れ感受性の低減、および工具の高寿命化をさす。
【0003】
また、冷間加工性向上には低耐力化が有効であるため、焼鈍回数を増やし、オーステナイト粒を大きくしてきた(例えば「塑性と加工」第27巻(1986),P839)。またオーステナイト粒粗大化のため、近年は冷間加工をする前のステンレス鋼線のストランド焼鈍の温度を高める傾向にある。
一方、オーステナイト粒の粗大化にはNの低減も提案されている(例えば「塑性と加工」第27巻(1986),P839)。
この時、安定した高冷間加工性を有するためには、オーステナイトの結晶粒径が50μm以上であることが要求される。
【0004】
更に、介在物が割れの起点となるため、加工性向上のために介在物を微細化する手法が採られてきた(例えば特開平5−247596号公報、特開平8−134598号公報)。
また、マルテンサイト系ステンレス鋼において、bcc構造の鉄鋼材料の固溶強化に寄与するSi量を低減して軟質化し、冷間加工性を向上させる試みがある(特開平1−176053号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のものでは冷間加工性がばらつき、加工割れが生じる場合があった。この主な原因として、オーステナイト結晶粒径がばらつくことにあった。
そこで、本発明はこれらの課題を解決し、溶体化処理時に安定して粒粗大を起こす冷間加工性に優れたステンレス線材を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため種々検討した結果、オーステナイト系ステンレス鋼において、マトリックスの成分を限定し、かつ微細な非金属介在物の組成を限定することで、結晶粒粗大化が容易で冷間鍛造性に優れたオーステナイト系ステンレス線材および鋼線を安定して得ることを見い出した。本発明はこの知見に基づいてなされた。
【0007】
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)オーステナイト系ステンレス鋼の成分が質量%で、
C :0.05%以下、 Si:0.05〜0.25%、
Mn:0.1〜4.0%、 P :0.05%以下、
S :0.03%以下、 Ni:7.0〜13.0%、
Cr:16.0〜20.0%、 O :0.005〜0.02%、
Al:0.01%未満、 N :0.1%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、0.5〜2μmの酸化物の平均Si濃度が10質量%以下であることを特徴とする熱処理時の粗粒化特性および冷間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼線材。
(2)オーステナイト系ステンレス鋼の成分が質量%で、
C :0.05%以下、 Si:0.3〜0.4%、
Mn:0.1〜4.0%、 P :0.05%以下、
S :0.03%以下、 Ni:7.0〜13.0%、
Cr:16.0〜20.0%、 Al:0.01〜1.0%、
O :0.0005〜0.007%、 Ca:0.0005〜0.01%、
N :0.03%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、0.5〜2μmの酸化物の平均Al濃度が10〜40質量%であることを特徴とする熱処理時の粗粒化特性および冷間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼線材。
(3)オーステナイト系ステンレス鋼の成分が質量%で、更に
Cu:0.2〜4.0%、 Mo:0.1〜3.0%
の1種または2種を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の熱処理時の粗粒化特性および冷間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼線材。
(4)鋳造後、分塊圧延せずに、直接、熱間圧延をしてなることを特徴とする前記(1)ないし(3)のいずれか1項に記載の熱処理時の粗粒化特性および冷間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼線材。
【0008】
【発明の実施の形態】
まず本発明で特定した非金属介在物のサイズとその組成について説明する。
鋼中の2次脱酸生成物である微細な酸化物中のSi酸化物は、熱処理により分解し、Cr酸化物へと置換する。この微細なSi酸化物の分解、Cr酸化物への超微細再析出によりオーステナイト粒界のピンニング力が増大し、通常、溶体化処理がなされる約1100℃前後の熱処理で結晶粒が粗大化し難くなる。しかしながら、0.5〜2μmの酸化物の平均Si濃度(微細粒酸化物中のSi濃度)が10%以下なら、熱処理時の分解・再析出が抑制され、粒粗大化することを見いだした。
【0009】
図1に、質量%で17%Cr−9%Ni−3%Cu−0.6%Mn鋼の0.5〜2μmサイズの微細酸化物の平均Si濃度(%)と、冷間加工−1100℃熱処理時の結晶粒径の関係を示す。微細酸化物中の平均組成が約10%以下になると粒粗大しているのがわかる。そのため、0.5〜2μmの酸化物の平均組成のSi濃度が10%以下に限定した。ここで酸化物の平均組成は、非金属介在物中のSとCu元素(硫化物)を除いて質量%で換算して求めた値である。粗粒化に効果があるのは鋼の製造時に生じる2次脱酸生成物のサイズが約0.5〜2μmの範囲にあるため、本発明では規定する微細酸化物のサイズを0.5〜2μmに限定した。
【0010】
微細酸化物中のSi濃度を下げるには、請求項1に記載したようにマトリックス中のSi濃度を0.25%以下に低減し、O濃度を0.005%以上添加して、鋳造時から安定なCr系酸化物系を積極的に生成させることが有効である。
【0011】
また、酸化物中のSi濃度を下げるには、請求項2に記載したようにマトリックス中にAlを0.01%以上添加し、脱酸生成物である酸化物中のAl酸化物の平均組成を20%以上、すなわち0.5〜2μmの酸化物の平均組成のAl濃度を10%以上にすることが有効である。但し、Al濃度が40%超になると粗大なクラスター状のAl2 O3 を生成させ、冷間加工性を劣化させる。そのため、請求項2では0.5〜2μmの酸化物の平均組成のAl濃度を10〜40%に限定した。
【0012】
次に、請求項4の鋳造後、直接、熱間圧延してなるものについての限定理由を説明する。
従来行われてきた分塊圧延を施すと、その熱履歴によりSiO2 系の介在物が比較的粗大なCr2 O3 に変化するため、粒界のピンニング力が低下し、本発明の効果が薄れる。従って請求項1〜3の本発明を、安価に製造できる直接、熱間圧延により製造される鋼に適用することが、経済的にその効果が特に優れる。そのため請求項4では鋳造後、直接、熱間圧延してなる鋼製品に限定した。
【0013】
次に、本発明の請求項1〜3のマトリックスの鋼の成分範囲について述べる。
Cはマトリックスの加工硬化を助長し、冷間加工性を劣化させるため、0.05%以下に限定した。好ましくは0.03%以下である。
一方Bが存在する時は、炭化物が析出し特性を劣化させるため、上限を0.015%にする。
【0014】
SiはAlが存在しない場合は、脱酸をするために0.05%以上添加するが、0.25%超添加すると、微細なオーステナイト粒の原因となるSiO2 系の微細酸化物の生成を助長させる。図2に17%Cr−9%Ni−3%Cu−0.6%Mn−0.004%O−0.002%Al鋼の冷間加工−1100℃熱処理時のSi量(%)と結晶粒径の関係を示す。Si量(%)が0.25%を超えるとSi系主体の酸化物が多くなるため、結晶粒が微細化している。そのため上限を0.25%に限定した。好ましくは0.20%以下である。
【0015】
Sは冷間加工性を劣化させる元素であるため、0.03%以下に限定した。
好ましくは、0.01%以下である。
【0016】
Nはマトリックスの加工硬化を助長し、冷間加工性を劣化させるため、上限を0.1%に限定した。一方、Alが0.01%以上の場合、AlNのピン止め効果により溶体化処理時の粒成長を阻害させるため、0.03%以下にするのがよい。
【0017】
Alは脱酸元素であり、微細オーステナイト粒の原因となる微細SiO2 系の酸化物の生成を抑制するため、0.01%以上添加する。図3に17%Cr−9%Ni−3%Cu−0.6%Mn−0.3%Si−0.003%O鋼の冷間加工−1100℃熱処理時のAl量(%)と結晶粒径の関係を示す。図からAl量が0.01%未満になると、Si系の微細な酸化物が多くなるため、結晶粒が微細化していることが分かる。そのため、下限を0.01%に限定した。しかしながら、1.0%を超えて添加すると経済的でない。そのため、上限を1.0%に限定した。好ましくは0.01〜0.1%である。
一方、Oが0.005%以上の場合、Alが0.01%以上含有すると粗大なAl系酸化物を生成させ、冷間加工性を劣化させる。そのため、Oが0.005%以上の場合はAlの上限を0.01%未満に限定した。
【0018】
Oは冷間加工性を劣化させる元素であり、0.02%以下に限定した。しかしながら、Alを添加していない時はOを0.005%未満に低減すると微細オーステナイト粒の原因となるSiO2 系の微細酸化物の生成を助長させる。図4に17%Cr−9%Ni−3%Cu−0.6%Mn−0.2%Si−0.003%Al鋼の冷間加工−1100℃熱処理時のO量(%)と結晶粒径の関係を示す。O量が0.005%未満になるとSi系主体の微細な酸化物が多くなるため、結晶粒が微細化している。そのため、Alが存在しない時はOの下限を0.005%にした。
一方、Alが存在する時は微細なSiO2 系の酸化物の生成が抑制されるが、Oが0.007%超になると粗大なAl系酸化物を生成し、冷間加工性を劣化させる。このことから、Alが存在する時はOの上限を0.007%に限定した。しかしながら、0.0005%未満に低減することは工業的に経済的でない。そのため、Oの下限を0.0005%に限定した。
【0019】
CaはAlを添加した時にAl系酸化物の粗大凝集による冷間加工性を抑制させるために、0.0005%以上添加する。しなしながら、0.01%を超えて添加するとその効果は飽和し、経済的でないばかりか耐食性を劣化させる。そのため上限を0.01%に限定した。
【0020】
更に、Niはオーステナイト組織を安定化させ、加工誘起マルテンサイトによる加工効果を抑制させるため、7%以上添加する。しかしながら13%を超えて添加しても、その効果は飽和するし経済的でない。そのため上限を13%に限定した。
【0021】
Mnは脱酸元素であり、またオーステナイト組織を安定化させ、加工誘起マルテンサイトによる硬化を抑制させるため、0.1%以上添加する。しかしながら4%を超えて添加しても、その効果は飽和するし経済的でない。そのため上限を4%にした。
【0022】
Crはステンレス鋼の耐食性を確保するために16%以上添加する。しかしながら20%を超えて添加すると経済的でない。そのため上限を20%に限定した。好ましくは16〜19%である。
【0023】
またCuは、オーステナイト系ステンレス鋼の加工硬化を抑制し、冷間加工性を向上させるため、必要に応じて0.2%以上添加する。しかしながら4%を超えて添加すると、その効果は飽和するばかりか、Cu偏析により熱間での製造性を著しく劣化させる。そのため上限を4%に限定した。好ましくは1〜3.5%である。
【0024】
Moはオーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を向上させるため、必要に応じて0.1%以上添加する。しかしながら3.0%を超えて添加すると、その効果は飽和するばかりか冷間加工性を劣化させる。そのため上限を3.0%に限定した。
【0025】
【実施例】
以下に本発明の実施例について説明する。
表1に本発明鋼A〜E,G〜J,L〜Rと、表2に比較鋼S〜Z,AA〜AIの成分を示す。
本発明鋼A〜Dと比較鋼S〜Xは、0.6Mn−9.5Ni−17.5Cr−3Cu−0.02N系を基本成分として、酸化物の状態を大きく変化させるSi量(%),Al量(%),Ca量(%),O量(%)を変化させたものである。
【0026】
本発明鋼E,Gと比較鋼Y,Z,AAは、0.2Si−0.7Mn−9.7Ni−18.1Cr系を基本成分として加工硬化を大きくし、冷間加工性を劣化させるC量(%),N量(%)を変化させたものである。
【0027】
本発明鋼H〜Jと比較鋼AB,ACは、0.02C−0.2Si−18.1Cr−0.5Cu−0.03N系を基本成分として、オーステナイト組織を安定させるNi量(%),Mn量(%)を変化させたものである。
【0028】
本発明鋼E,Lと比較鋼AD,AEは、0.2Si−0.6Mn−9.7Ni−18.1Cr−0.01N系を基本成分として、冷間加工性を劣化させる偏析元素であるP,Sを変化させたものである。
【0029】
本発明鋼E,M〜Oと比較鋼AF〜AHは、0.2Si−0.6Mn−9.7Ni−18Cr−0.01N系を基本成分として、耐食性を向上させ、また冷間加工性を劣化させるCr量(%),Mo量(%)を変化させたものである。
【0030】
本発明鋼E,P〜Rと比較鋼AIは、0.01C−0.2Si−0.6Mn−9.7Ni−18Cr−0.01N系を基本成分として、軟質化および冷間加工性を向上させるCuを変化させたものである。
【0031】
これらの鋼は、線材の微細な酸化物の組成を変化させるために製鋼段階で以下の処理を行った。すなわち、精錬炉にて酸化物精錬時に生成したクロム酸化物を含むスラグの還元剤としてSiまたはAl含有物質を用いて、還元精錬後のスラグ組成を調整し、鋳造を行った。
本発明鋼C,Dと比較鋼V,W,X,Zは、0.5〜2μmの酸化物介在物の平均組成のAl濃度を高くするためAl還元を行い、鋳造を行ったものである。
その他の鋼はSi脱酸を行い、鋳造を行ったものである。
【0032】
以上の鋳片はステンレス線材の製造工程で、連続鋳造された鋳片を、分塊圧延無しに1200℃まで加熱して、φ5.5mmまで熱間で線材圧延を行い、1000℃で熱延を終了した。ここで本発明鋼A,Bおよび比較鋼S,Tは、分塊圧延の効果を確認するために、鋳片を1280℃加熱で分塊圧延し、その後、前述と同様な条件でφ5.5mmまで線材圧延を行った。得られた熱延材から微細な酸化物の組成をEDS分析により測定した。その後、焼鈍、酸洗を行い、φ3.9mmまで冷間伸線加工を施し、1100℃でストランド焼鈍を施し、3.8mmまで冷間でスキンパス伸線を施し、続いてオーステナイト粒径および圧造試験を実施した。
【0033】
微細な酸化物は、線材を#500研磨仕上げし、その試料を陽極として、10%無水マレイン酸+2%塩化テトラメチルアンモニウム+メタノール溶液中で約1200クーロン/cm2 の電流を流して、約0.5g溶解し、メッシュサイズが0.2μmのポリカーボネイトのろ紙でろ過して、微細な非金属介在物を抽出した。その後、ビームサイズが約1μmのSEM・EDS分析により、0.5〜2μm サイズの非金属介在物の組成を任意に10個測定し、その平均値で微細な酸化物組成とした。
ここで、酸化物は硫化物と複合体となっているため、酸化物の組成を算出する時は、SとCu元素を除いて質量%で換算した。本発明の微細な酸化物中のSi濃度は10%以下とした。また本発明のAl添加材については更に、微細な酸化物中のAl濃度が10%〜50%とした。
【0034】
オーステナイト粒径は、鋼線縦断面中心を鏡面研磨後、硝酸電解エッチし、切断法により平均結晶粒径を求めた。本発明の平均オーステナイト粒径は50μm以上とした。
【0035】
圧造試験はSUS304を基本成分とした発明鋼E,G〜J,L〜Oと比較鋼Y,Z,AAからAHは六角頭形状に、またSUSXM7を基本成分とした発明鋼A〜D,P〜Rと比較鋼S〜X,AIは、プラス十字頭形状に100本ずつ圧造加工し、割れの発生有無で冷間加工性を評価した。本発明の冷間加工性の評価は割れが無いこととした。
【0036】
分塊圧延無しに鋳片を、直接、熱間圧延した材料の試験結果を本発明例として表3に、比較例として表4に示す。
表3で明らかなように、本発明例は全て上記特性ランクを満足しているのに対し、表4の比較例No.19はSi量(%)が高く結晶粒が微細なため、冷間加工性に劣っていた。No.20はSi量が低いが、O量(%)が低く結晶粒が微細なため、冷間加工性に劣っていた。No.21は、O量(%)が高いため、冷間加工性に劣っていた。No.22はAl量(%)が高くO量(%)が高いため、巨大介在物が生成し、冷間加工性に劣っていた。No.23はAl量(%)が高くCa量(%)が低いため、巨大介在物が生成し、冷間加工性に劣っていた。No.24はAl量(%)が高過ぎるため、冷間加工性は良好であるが不経済である。
【0037】
No.25はC量(%)が高いため、冷間加工性に劣っていた。No.26はAl量(%)が高くN量(%)が高く、結晶粒が微細なため、冷間加工性に劣っていた。No.27はN量(%)が高いため、冷間加工性に劣っていた。
【0038】
No.28,No.29はそれぞれ、Mn量(%)とNi量(%)が高く、冷間加工性は良好であるが不経済である。
No.30はP量(%)が高いため、冷間加工性に劣っていた。No.31はS量(%)が高いため、冷間加工性に劣っていた。
【0039】
No.32はCr量(%)が低いため、冷間加工性は良好であったが耐食性に劣っていた。No.33はCr量(%)が高く、冷間加工性は良好であるが不経済である。
No.34はMo量(%)が高いため、冷間加工性に劣っていた。
No.35はCu量(%)が高いため熱間加工性が悪く、線材に製造不可であった。
【0040】
次に、鋳片を分塊圧延した場合の試験結果を本発明例,比較例として表5に示す。本発明例No.36,37は、本発明例No.1,2、比較例No.19,20と比較して、分塊圧延を行うことで更に結晶粒径が大きくなっている。ここで鋼S(No.38)は、分塊圧延を行うことで圧造割れも回避できているが、鋼T(No.39)は、分塊圧延を行っても圧造割れが発生している。
以上の結果、鋳造後、分塊圧延を行った製品に対しては、本発明の効果が小さくなっているのがわかる。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【発明の効果】
以上の各実施例から明らかなように、本発明により加工後の熱処理工程で結晶粒の粗大化が必要な製品、例えば冷間鍛造用ステンレス線材および鋼線を安価に、且つ安定して提供することが可能であり、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】17%Cr−9%Ni−3%Cu−0.6%鋼の冷間加工−1100℃熱処理時の微細酸化物中の平均Si量(%)と結晶粒径の関係を示す図。
【図2】17%Cr−9%Ni−3%Cu−0.6%Mn−0.004%O−0.002%Al鋼の冷間加工−1100℃熱処理時のSi量(%)と結晶粒径の関係を示す図。
【図3】17を示す図。%Cr−9%Ni−3%Cu−0.6%Mn−0.3%Si−0.003%O鋼の冷間加工−1100℃熱処理時のAl量(%)と結晶粒径の関係を示す図。
【図4】17%Cr−9%Ni−3%Cu−0.6%Mn−0.2%Si−0.003%Al鋼の冷間加工−1100℃熱処理時のO量(%)と結晶粒径の関係を示す図。
Claims (4)
- オーステナイト系ステンレス鋼の成分が質量%で、
C :0.05%以下、
Si:0.05〜0.25%、
Mn:0.1〜4.0%、
P :0.05%以下、
S :0.03%以下、
Ni:7.0〜13.0%、
Cr:16.0〜20.0%、
O :0.005〜0.02%、
Al:0.01%未満、
N :0.1%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、0.5〜2μmの酸化物の平均Si濃度が10質量%以下であることを特徴とする熱処理時の粗粒化特性および冷間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼線材。 - オーステナイト系ステンレス鋼の成分が質量%で、
C :0.05%以下、
Si:0.3〜0.4%、
Mn:0.1〜4.0%、
P :0.05%以下、
S :0.03%以下、
Ni:7.0〜13.0%、
Cr:16.0〜20.0%、
Al:0.01〜1.0%、
O :0.0005〜0.007%、
Ca:0.0005〜0.01%、
N :0.03%以下
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、0.5〜2μmの酸化物の平均Al濃度が10〜40質量%であることを特徴とする熱処理時の粗粒化特性および冷間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼線材。 - オーステナイト系ステンレス鋼の成分が質量%で、更に
Cu:0.2〜4.0%、
Mo:0.1〜3.0%
の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の熱処理時の粗粒化特性および冷間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼線材。 - 鋳造後、分塊圧延せずに、直接、熱間圧延をしてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の熱処理時の粗粒化特性および冷間加工性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼線材。
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