JP2000160204A - 圧粉磁芯用鉄粉および圧粉磁芯 - Google Patents

圧粉磁芯用鉄粉および圧粉磁芯

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JP2000160204A
JP2000160204A JP11266842A JP26684299A JP2000160204A JP 2000160204 A JP2000160204 A JP 2000160204A JP 11266842 A JP11266842 A JP 11266842A JP 26684299 A JP26684299 A JP 26684299A JP 2000160204 A JP2000160204 A JP 2000160204A
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resin
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Yukiko Ozaki
由紀子 尾崎
Kuniaki Ogura
邦明 小倉
Tsutomu Yashiro
勉 八代
Tsuneo Murai
庸夫 村井
Hideo Hishijo
秀夫 菱城
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Victor Company of Japan Ltd
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Victor Company of Japan Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高周波特性に優れた圧粉磁芯用鉄粉および圧粉
磁芯の提供。 【解決手段】フェライト粒の平均粒径が2〜20μmの
還元鉄粉を、アミンキノンを構成成分とする化合物、好
ましくはアミン−キノン−ポリウレタン樹脂で被覆した
鉄粉と、該鉄粉被覆を、熱硬化性樹脂などの結合剤を用
いて圧縮成形した圧粉磁芯。結合剤にアミン−キノン−
ポリウレタン樹脂を混合すると、高周波領域での磁気特
性、防錆性、機械的強度がさらに良好になる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リアクトル・コ
ア、ノイズフィルター・コア、さらには、フェライト焼
結体の代替となり得る、より高い周波数領域にわたって
高い透磁率で、かつ低鉄損の圧粉磁芯およびその原料と
なる鉄粉に関する。
【0002】
【従来の技術】電子機器の小型化に伴い、電子部品の小
型化が急速に進行している。電子部品の多くには、高周
波特性に優れ、鉄損の低いフェライト焼結体が利用され
ているが、さらなる小型化のために、フェライト焼結体
の代替として、安価で、磁気特性の温度安定性に優れ、
飽和磁束密度が高い圧粉磁芯の利用が検討されている。
圧粉磁芯は、鉄粉を樹脂等の結合剤と混合した後、加圧
成形され、さらに樹脂等の結合剤を硬化させて製造され
るものであり、リアクトル・コアやノイズフィルター・
コア等に利用される。さらに、圧粉磁芯は、フェライト
焼結体に比べ、焼結工程を必要としないため、焼結時の
寸法収縮に伴う割れ・欠けがなく、薄肉あるいは複雑形
状の部品の成形が可能であり、小型化のみならず部品の
性能設計に応じて、従来の材料では実現不可能であった
部品の製造が可能になることが期待されている。
【0003】このような圧粉磁芯に要求される特性は、
高周波領域での高透磁率と低鉄損である。具体的には、
室温で50Hzから1MHzの条件で初透磁率の周波数
依存性を測定し、周波数を0に外挿した値を直流初透磁
率、初透磁率が直流初透磁率の80%になる周波数を臨
界周波数と定義した場合の、1)高い直流初透磁率、
2)高い臨界周波数が要求される。あるいは部品の使用
条件下で測定される、1)高い実効透磁率と2)低い鉄
損が要求される。透磁率は、磁芯の密度と有効反磁場の
影響を受け、磁芯の密度が高密度で、有効反磁場が小さ
いほど高い透磁率となる。一方、臨界周波数は、渦電流
損失が小さいほど高くなる量であり、磁芯を構成する粒
子間の絶縁性が高く、低い鉄損であるほど高い臨界周波
数となる。
【0004】直流初透磁率の改善を目的として、圧粉磁
芯の原料となる鉄粉の形状を扁平化することによって有
効反磁場を低減することが提案されている(例えば、特
開昭62−72102号公報、特開昭63−23350
8号公報、特開昭61−223101号公報)。これら
の提案によって、直流初透磁率は改善されたが、粉体同
士の接触面積が増大し、粒子間の絶縁性が低下し、鉄損
が増加する傾向があった。
【0005】前記問題を解決するために、絶縁皮膜を改
良し、高い直流初透磁率でかつ高い臨界周波数の磁芯を
製造する技術が検討されている(例えば、特開平8−2
60114号公報)。しかしながら、多くの絶縁皮膜
は、粒子表面に硬い皮膜を形成するため、圧粉磁芯の成
形時における圧縮性が低下し、密度の低下もあるため、
鉄粉の扁平化による透磁率改善の効果が低減してしまう
問題があった。また、従来提案されている鉄粉を原料と
した圧粉磁芯は、密度が低いため、磁芯表面のみなら
ず、内部の空隙部で鉄粉が腐食されやすく、フェライト
焼結体に比較して電子部品としての信頼性が低かった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術の
前記問題点の解消を目的とし、フェライト焼結体の代替
となり得る、高周波領域にわたって高い直流初透磁率を
示し、かつ低鉄損であり、さらに耐腐食性も向上した圧
粉磁芯用の鉄粉および圧粉磁芯を提供することを目的と
するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の発明は、
鉄粉の表面が、アミンキノンを構成単位とする化合物で
被覆されていることを特徴とする圧粉磁芯用鉄粉であ
る。
【0008】好ましい第一の発明は、前記鉄粉が、鉄酸
化物を還元して得た還元鉄粉であることを特徴とする圧
粉磁芯用鉄粉である。
【0009】また、好ましい第一の発明は、前記還元鉄
粉中のフェライト粒の平均粒径が2μm以上、20μm
以下であることを特徴とする圧粉磁芯用鉄粉である。
【0010】本発明の第二の発明は、前記のいずれかの
鉄粉を結合剤と混合後、圧縮成形したことを特徴とする
圧粉磁芯である。
【0011】好ましい第二の発明は、前記結合剤が、熱
硬化性樹脂であることを特徴とする圧粉磁芯である。
【0012】また、好ましい第二の発明は、前記熱硬化
性樹脂が、アミンキノンを構成単位とする化合物を含ん
だ高分子樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびポ
リアミド樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の
樹脂であることを特徴とする圧粉磁芯である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の鉄粉は、純鉄粉であり、
純鉄粉は、その製造法によって、還元鉄粉とアトマイズ
鉄粉に大別される。還元鉄粉は、細長いアームが絡み合
った海綿状であるため、1個の粒子は、細長いアームの
集合体となっており、同じ大きさのアトマイズ鉄粉に比
較して、交流磁場で生じる渦電流の流路が実質的に短く
なるため、ジュール発熱が減少し、渦電流損失が低減さ
れるため、比較的高周波用途では、アトマイズ鉄粉より
も軟磁性材料として有利である。
【0014】一方、アトマイズ鉄粉は、内部が稠密であ
るため、同一粒径の還元鉄粉と比較すると、渦電流の流
路が長いため、渦電流損失は大きい。しかし、粒子内部
の空隙や夾雑物が少ないため、磁壁のピンニング作用は
還元鉄粉より少なく、ヒステリシス損失は、還元鉄粉よ
り低い。このため、渦電流の影響が小さい比較的低周波
用途では鉄損が小さいという利点がある。ここで、磁壁
のピンニング作用とは、磁壁(外部磁場が変動した場合
にそれにつられて磁化方向が互いに逆になる境界)の移
動を妨げる(磁壁のピンニング)作用のことをさす。
【0015】本発明の還元鉄粉は純鉄粉であり、α−F
e相(フェライト相)の単相からなり、フェライト相の
平均粒径は2〜20μmである。フェライト相の結晶粒
界には不純物が濃化し、しばしば介在物として析出す
る。これが、磁壁の移動を妨げ(磁壁のピンニング)、
透磁率を低下させ、さらには、ヒステリシス損失を増大
させる原因になる。そのため、磁性材料として用いる鉄
粉のフェライト相の結晶粒径は大きい方が好ましい。
【0016】フェライト相の平均粒径が2μm未満であ
ると、鉄粉粒子内の結晶粒界の数が多くなって、著しく
透磁率が低下し、ヒステリシス損失が増大する傾向があ
る。還元鉄粉は、細長いアームが絡み合った海綿状であ
るため、実質的には、結晶粒径はアーム長さが上限とな
り、約20μmである。好ましい平均粒径は5〜10μ
mである。平均フェライト粒径は、鉄粉を樹脂に埋め込
んだ後、研磨、エッチング処理した鉄粉断面50個の倍
率400倍の光学写真を撮影し、その画像をパソコンに
取り込み、粒子中に観察されるフェライト結晶粒径を測
定し、その数値平均をとることによって求めた。
【0017】本発明の還元鉄粉は、常法による酸化鉄の
還元により得られる。酸化鉄としては、ミルスケールお
よび/または鉄鉱石粉末が使用される。
【0018】本発明の鉄粉はアミンキノンを構成単位と
する化合物(以下、アミンキノン化合物と言う)で被覆
するのが好ましく、アトマイズ鉄粉の場合、その表面粒
子が、また還元鉄粉の場合、粒子表面のみならず、鉄粉
の粒子内部の海綿状構造の空隙等に前記化合物が含有さ
れている場合も、便宜上被覆と言う。皮膜の厚さはおお
よそ5nm〜2μmである。これはオージェ電子分光分
析による粒子表面の深さ方向のCおよびNの含有量の分
析により求められる。
【0019】鉄粉の絶縁皮膜は、圧粉磁芯中における鉄
粉粒子間、あるいは、還元鉄粉においては、粒子を構成
する細長いアーム間の絶縁性を増大させ、磁芯の鉄損を
低減させる効果が著しい。また鉄粉粒子の耐食性を向上
させる付随的効果もある。これは、アミンキノン化合物
のキノン基中の酸素と、酸化により生じた鉄粉表面との
間に水素結合が形成され、皮膜が鉄粉に吸着し密着性が
良好になるためと推測される。
【0020】アミンキノン化合物としては、少なくとも
1つの水酸基を有するもの、あるいは、これを重合して
得られるアミン−キノン−ポリウレタン樹脂が特に好適
である。少なくとも1つの水酸基を有するアミンキノン
化合物は、鉄粉への親和性が良く、均質な絶縁膜を形成
する。また、アミン−キノン−ポリウレタン樹脂は鉄粉
への親和性が良いほか、耐熱性に優れ、高温雰囲気で使
用される場合に好適である。
【0021】アミンキノン化合物は、被覆の際に、鉄粉
に対し0.01〜0.3mass%の比率で使用されるのが
好ましく、0.05〜0.2mass%の比率で使用される
のが特に好ましい。0.01mass%未満であると、絶縁
効果がない。0.3mass%を超えると、前記被覆工程に
おいて、有機溶媒を除去乾燥する過程で、前記化合物が
鉄粉粒子間に液架橋を形成し、さらには、鉄粉粒子の2
次凝集体を形成する。鉄粉粒子の2次凝集体が形成され
ると、後続の結合剤との均一な混合ができず、不都合で
ある。
【0022】前記皮膜は、アミンキノン化合物の有機溶
媒の溶液を、鉄粉に滴下し、攪拌混合した後、有機溶媒
を除去乾燥することにより形成される。溶液濃度は5〜
80重量%が好ましく、20〜60重量%が特に好まし
い。有機溶媒としてはアミンキノン化合物を溶解するも
のであれば特に限定されるものではないが、例えば、ア
ノン(シクロヘキサノン)、テトラヒドロフラン、ジメ
チルホルムアミドおよびこれらとケトン系溶剤との混合
溶剤等が例示される。攪拌混合は、例えば、アトライタ
ー、防爆仕様の高速ミキサーを用いて、粉体中にアミン
キノン化合物溶液が偏析することにより生じる鉄粉の凝
集体がなくなるまで行うのが好ましい。被覆鉄粉は、前
記溶媒を除去したのち、例えば、真空乾燥される。
【0023】例えば、本発明の絶縁剤として好適なアミ
ン−キノン−ポリウレタン樹脂は、化学式(1)で示さ
れるアミン−キノンを含むジオールを変性剤とするポリ
ウレタン樹脂である。ここで、R1 は水素または炭素数
1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、環状もし
くは鎖状の分岐を有するアルキル基またはフェニル基で
あり、例えば、エチル基、n−プロピル基、i−プロピ
ル基、ベンジル基、フェニル基である。R2 は炭素数1
〜16の2価の炭化水素基であり、例えば、アルキレン
基、フェニレン基、アラキレン基、アルカリレン基また
は化学式(2)で示されるポリ(エチレンオキサイド)
基を含む直鎖状ポリオール基であり、例えば、メチレン
基、エチレン基、プロピレン基、i−プロピレン基であ
る。
【0024】
【化1】
【0025】 −(CH2 CH2 O)n CH2 CH2 − (2) ここでnは0〜50の整数を表す。
【0026】アミン−キノン−ポリウレタン樹脂は、化
学式(1)で示されるアミン−キノンを含むジオール
と、アミン−キノンを含まない鎖状のジオールとジイソ
シアネートを反応させて製造される。ジオールは、分子
量が500〜5000程度のものが好ましく、具体的に
はポリカプロラクトン(PCL)、ポリヘキサメチレン
カーボネート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメ
チレンアジペート、1,4−ブタンジオールであり、好
ましいジイソシアネートはトリレンジイソシアネート
(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ
ート(慣用名:メチレンジ(4−フェニルイソシアネー
ト):MDI)である。これらを所望量ずつ混合するこ
とにより、所望のアミン−キノン−ポリウレタン樹脂を
製造できる。例えば、アミン−キノンを含むジオールオ
リゴマーを、PCLとTDIの合計に対し5〜40mass
%混合し、約60℃で約1時間溶融重合させることによ
り製造される。
【0027】本発明のアミン−キノン−ポリウレタン樹
脂を被覆した鉄粉は、樹脂を結合剤に用いる圧粉磁芯材
料として好適である。圧粉磁芯は鉄粉を結合剤である熱
硬化性樹脂と混合した後、圧縮成形し、さらに樹脂を熱
硬化することにより得られる。圧縮成形は一般的な粉末
冶金的手法により実施される。樹脂の熱硬化も、一般的
な条件で実施される。
【0028】結合剤として使用される樹脂としては、エ
ポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂が例示さ
れるが、エポキシ樹脂が好適で、各種エポキシ樹脂が使
用される。結合用樹脂の配合量は、鉄粉に対し0.1〜
10mass%が好ましく、0.5〜5mass%が特に好まし
い。
【0029】鉄粉に被覆されたアミン−キノン−ポリウ
レタン樹脂中のウレタン分子の末端基と、結合剤として
用いたエポキシ樹脂のエポキシ基が縮合し、架橋結合を
形成する。これにより、エポキシ樹脂と鉄粉が密接に結
合したことになり、圧粉磁芯の機械的強度が増大する。
圧縮成形に際し、必要に応じ、アミン−キノン−ポリウ
レタン樹脂を結合用樹脂に配合しても良い。この場合
も、同様に、エポキシ分子間にアミン−キノン−ポリウ
レタン分子が、架橋結合を形成するため、熱硬化後の圧
粉磁芯の機械的強度が増大する。
【0030】アミン−キノン−ポリウレタン樹脂のエポ
キシ樹脂に対する比率は、大きいほど好ましいが、1ma
ss%未満であると、機械的強度の増大が十分でない。配
合量の上限は、組み合わせる結合剤の種類により異な
り、結合剤毎に適宜決定される。必要以上に配合する
と、機械的強度が逆に低下する。結合剤の樹脂成分を、
全量アミン−キノン−ポリウレタン樹脂とすることもで
きる。なお、予めアミン−キノン−ポリウレタン樹脂に
より被覆していない鉄粉を、アミン−キノン−ポリウレ
タン樹脂を含有する結合剤と混合後、圧縮成形して得た
圧粉磁芯も、前記圧粉磁芯とほぼ同様な効果が得られ
る。
【0031】
【実施例】[発明例1〜2][比較例1〜2] (結合剤にアミン−キノン−ポリウレタン樹脂を混合し
ていない場合)表1に示す特性の水アトマイズ鉄粉とミ
ルスケール還元鉄粉に対して、アミン−キノン−ポリウ
レタン樹脂をアセトン:2ーブタノン=50:50(重
量比)の混合溶媒に溶解した濃度50重量%の溶液を各
々0.6mass%(アミン−キノン−ポリウレタン樹脂
0.3mass%相当)添加し、防爆仕様の高速ミキサーを
用いて、常温で5分間攪拌し、鉄粉に樹脂を被覆した。
溶媒を除去乾燥した後、被覆鉄粉に形成された膜厚は約
500nmであった。
【0032】得られた被覆鉄粉に1mass%のエポキシ樹
脂を混合し、686MPaの成形圧力で、外形38m
m,内径25mm,厚さ6.5mmのリング片と幅10
mm,長さ50mm,厚さ5mmの直方体を圧縮成形
し、大気中140℃で30分間かけて樹脂を硬化し、試
験片を得た。
【0033】磁気特性は、リング片に巻線し、インピー
ダンスアナライザーによって、初透磁率の周波数依存性
を測定し、直流初透磁率μi / μ0 と臨界周波数fcr を
求めた。直流電気抵抗は、直方体の試験片の長手方向に
沿って20mmの間隔に電極をハンダづけし、直流4端
子法によって測定した。以上の結果を表2に示した。比
較のため、同じ鉄粉にアミン−キノン−ポリウレタン樹
脂を被覆せずに、同量のエポキシ樹脂を混合して、同様
に作製した試験片についても、直流初透磁率μi /
μ0 、臨界周波数fcr および直流電気比抵抗を測定し、
結果を表2に示した。
【0034】表2中、発明例1と比較例1、および、発
明例2と比較例2の比較より明らかなように、鉄粉が同
一ならば、アミン−キノン−ポリウレタン樹脂で予め被
覆をした鉄粉のほうが、直流初透磁率が高く、鉄損が改
善されるため、臨界周波数fcr が高い。
【0035】[発明例3〜5][比較例3] (結合剤にアミン−キノン−ポリウレタン樹脂を混合し
ていない場合)表3に示す特性ミルスケール還元鉄粉に
対して、アミン−キノン−ポリウレタン樹脂をアセト
ン:2−ブタノン=50:50(重量比)の混合溶媒に
溶解した濃度50重量%の溶液を0.4mass%(アミン
−キノン−ポリウレタン樹脂0.2mass%相当)添加
し、防爆仕様の高速ミキサーを用いて、常温で5分間攪
拌し、鉄粉に樹脂を被覆した。溶媒を乾燥除去した後、
被覆鉄粉に形成された膜厚は約200nmであった。
【0036】得られた被覆鉄粉に1mass%のエポキシ樹
脂を混合し、686MPaの成形圧力で、外形38m
m、内径25mm、厚さ6.5mmのリング片と幅10
mm、長さ50mm、厚さ5mmの直方体を圧縮成形
し、大気中140℃で30分間かけて樹脂を硬化し、試
験片を得た。
【0037】磁気特性として、発明例1と同様に、直流
初透磁率μi / μ0 を求め、結果を表4に示した。比較
のため、同成分で平均フェライト粒径が2μm未満の還
元鉄粉に、同様な樹脂被覆を行い、さらに同様な圧縮成
形を行なって作製した試験片についても、直流初透磁率
μi / μ0 を測定し、結果を表4に示した。
【0038】表4中、発明例3〜5と比較例3の比較よ
り、平均フェライト粒径が2μm未満の還元鉄粉に比
べ、平均フェライト粒径が2μm以上の還元鉄粉を用い
て成形した圧粉磁芯の直流初透磁率が高いことが明らか
である。
【0039】[発明例6〜8][比較例4] (結合剤にアミン−キノン−ポリウレタン樹脂を混合し
ていない場合)発明例4の平均フェライト粒径10.2
μmの還元鉄粉と、表5に示す還元鉄粉に対する混合割
合のアミン−キノン−ポリウレタン樹脂を混合し、発明
例4と同様に、該還元鉄粉の被覆を行った。引き続き、
発明例1と同様に、該被覆鉄粉の圧縮成形(該被覆鉄粉
に対するエポキシ樹脂の混合量は1mass%)を行い、磁
芯を成形した。
【0040】磁気特性は、リング片に巻線し、BHアナ
ライザーによって、最大磁束密度0.05T,100k
Hzでの実効透磁率と最大磁束密度0.01T,100
kHzでの鉄損を測定した。また磁気特性測定後のリン
グ片は巻線を解き、ASTMB202−58Tに定めら
れた方法で圧環強さを測定した。また、直方体の長手方
向に沿って、4端子法で直流比抵抗を測定した後、70
℃相対湿度95%の恒温恒湿槽中に48時間放置し、直
方体表面での発錆面積率を測定した。これらの結果を表
5に示した。
【0041】発明例6〜8と比較例4の比較より、アミ
ン−キノン−ポリウレタン樹脂の皮膜を有する鉄粉は、
該皮膜を有しない鉄粉と、実効透磁率は同等だが、鉄損
が小さく、かつ直流比抵抗が高く、磁芯中の粒子間の絶
縁性が改善されており、さらに発錆面積率も低く、耐腐
食性の向上が著しいことがわかる。リング片の圧環強さ
は、アミン−キノン−ポリウレタン樹脂を被覆した鉄粉
を用いた場合に、改善が見られる。
【0042】[発明例9〜20][比較例5] (結合剤にアミン−キノン−ポリウレタン樹脂を混合し
ている場合)発明例1〜2の被覆鉄粉(被覆に使用した
アミン−キノン−ポリウレタン樹脂の混合量0.05ma
ss%)と、比較例1の被覆をしていない鉄粉に、表6に
示すエポキシ樹脂に対する配合割合のアミン−キノン−
ポリウレタン樹脂を混合し(鉄粉に対するエポキシ樹脂
の配合量は1mass%)、発明例1と同様に圧縮成形し、
磁芯を成形した。
【0043】磁気特性は、発明例3と同様に、リング片
に巻線し、実効透磁率と鉄損を測定した後、巻線を解
き、発明例6と同様の方法で圧環強さを測定した。また
発明例3と同様に、直方体について発錆面積率を測定し
た。これらの結果を表6に示した。
【0044】水アトマイズ鉄粉を用いた圧粉磁芯につい
ては、発明例9〜12より明らかなように、粒子表面を
アミン−キノン−ポリウレタン樹脂で被覆し、かつ結合
剤にアミン−キノン−ポリウレタン樹脂を混合すること
によって、直流電気比抵抗が増大し、鉄損が低減され、
さらに発錆面積率も低下している。結合剤中のアミン−
キノン−ポリウレタン樹脂の量が多いほど、この傾向が
顕著である。圧環強さは、結合剤中にアミン−キノン−
ポリウレタン樹脂を混合することによって増加するが、
混合量が多過ぎると低下する傾向が認められた。
【0045】また発明例11と発明例13、あるいは、
発明例12と発明例14の比較により、結合剤にアミン
−キノン−ポリウレタン樹脂を混合しても、予め鉄粉表
面をアミン−キノン−ポリウレタン樹脂で被覆処理しな
い場合は、直流電気比抵抗の増加および鉄損の低減効果
が見られず、さらに、発錆面積率も低下しない。直流電
気比抵抗の増加および鉄損の低減効果が見られないの
は、被覆を施さないと、成形時に隣り合う鉄粉粒子が容
易に接触するためであり、防錆効果が低下するのは、圧
粉磁芯表面で被覆されない裸の鉄粉が露出するためであ
る。
【0046】還元鉄粉についても同様で、発明例15〜
18より明らかなように、粒子表面をアミン−キノン−
ポリウレタン樹脂を被覆し、かつ結合剤にアミン−キノ
ン−ポリウレタン樹脂を混合することによって直流電気
比抵抗が増大し、鉄損が低減され、さらに発錆面積率も
低下している。結合剤中のアミン−キノン−ポリウレタ
ン樹脂の量が多いほど、この傾向が顕著である。圧環強
さは結合剤中にアミン−キノン−ポリウレタン樹脂を混
合することによって増加するが、混合量が多過ぎると低
下する傾向が確認された。
【0047】また発明例17と発明例19、あるいは、
発明例18と発明例20の比較により、結合剤にアミン
−キノン−ポリウレタン樹脂を混合しても、予め鉄粉表
面をアミン−キノン−ポリウレタン樹脂で被覆処理しな
い場合は、直流電気比抵抗の増加および鉄損の低減効果
が見られず、さらに、発錆面積率も低下しない。これは
水アトマイズ鉄粉を使用した圧粉磁芯で確認されたのと
同じ現象として説明される。
【0048】
【表1】
【0049】
【0050】
【表2】
【0051】
【0052】
【0053】
【表3】
【0054】
【発明の効果】本発明により得られた圧粉磁芯は、高周
波領域で高透磁率を示すとともに、低鉄損をも達成し、
優れた磁気特性を具有する。さらに、本発明の圧粉磁芯
は、耐腐食性および機械的強度の向上も図れることか
ら、産業への寄与が大きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小倉 邦明 東京都千代田区内幸町2丁目2番3号 川 崎製鉄株式会社東京本社内 (72)発明者 八代 勉 神奈川県横浜市神奈川区守屋町3丁目12番 地 日本ビクター株式会社内 (72)発明者 村井 庸夫 神奈川県横浜市神奈川区守屋町3丁目12番 地 日本ビクター株式会社内 (72)発明者 菱城 秀夫 茨城県岩井市辺田1147−64

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鉄粉の表面が、アミンキノンを構成単位と
    する化合物で被覆されていることを特徴とする圧粉磁芯
    用鉄粉。
  2. 【請求項2】前記鉄粉が、鉄酸化物を還元して得た還元
    鉄粉であることを特徴とする請求項1に記載の圧粉磁芯
    用鉄粉。
  3. 【請求項3】前記還元鉄粉中のフェライト粒の平均粒径
    が2μm以上、20μm以下であることを特徴とする請
    求項1または2に記載の圧粉磁芯用鉄粉。
  4. 【請求項4】請求項1〜3のいずれかに記載の鉄粉を結
    合剤と混合後、圧縮成形したことを特徴とする圧粉磁
    芯。
  5. 【請求項5】前記結合剤が、熱硬化性樹脂であることを
    特徴とする請求項4に記載の圧粉磁芯。
  6. 【請求項6】前記熱硬化性樹脂が、アミンキノンを構成
    単位とする化合物を含んだ高分子樹脂、エポキシ樹脂、
    フェノール樹脂およびポリアミド樹脂からなる群より選
    ばれた少なくとも1種の樹脂であることを特徴とする請
    求項5に記載の圧粉磁芯。
JP11266842A 1998-09-21 1999-09-21 圧粉磁芯用鉄粉および圧粉磁芯 Withdrawn JP2000160204A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015115525A (ja) * 2013-12-13 2015-06-22 Necトーキン株式会社 圧粉磁芯及びその製造方法

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JP2015115525A (ja) * 2013-12-13 2015-06-22 Necトーキン株式会社 圧粉磁芯及びその製造方法

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