JP2000149322A - 無初期化型相変化光記録媒体 - Google Patents

無初期化型相変化光記録媒体

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JP2000149322A
JP2000149322A JP10313398A JP31339898A JP2000149322A JP 2000149322 A JP2000149322 A JP 2000149322A JP 10313398 A JP10313398 A JP 10313398A JP 31339898 A JP31339898 A JP 31339898A JP 2000149322 A JP2000149322 A JP 2000149322A
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film
recording film
crystallization
recording
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Katsumi Suzuki
克己 鈴木
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Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】相変化記録膜の初期結晶化を必要とすることな
く製造直後からオーバーライト記録が可能な無初期化型
相変化光記録媒体を提供すること。 【解決手段】本発明の無初期化型相変化光記録媒体1-1
は、光透過性の基板2と、前記基板2の一方の主面上に
形成され、光ビームを照射することにより可逆的に相変
化して光学的特性に変化を生ずる相変化記録膜5と、前
記相変化記録膜5上に形成された反射層6と、前記相変
化記録膜5と接して配置され、光透過性を有しかつ結晶
質の結晶化誘起層8-1とを具備することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、所定の光を照射す
ることにより結晶質と非晶質との間で可逆的に相変化す
る相変化記録膜を有する相変化光記録媒体に係り、特
に、記録膜の初期結晶化を必要とすることなく製造直後
からオーバーライト記録が可能な無初期化型相変化光記
録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】製造直後の相変化光ディスクは、記録膜
全面が非晶質状態にある、所謂全面記録状態にある。相
変化光ディスクは、作製直後であっても、最初のオーバ
ーライト記録により非晶質状態の記録マークと結晶質状
態のバックグラウンドとを書込み可能であることが理想
であるとされている。しかしながら、従来の方法により
記録膜を成膜した場合、成膜直後における非晶質状態
は、情報の記録に利用される非晶質状態に比べ極めて安
定である。そのため、光ディスクドライブによる1回目
のオーバーライト記録では、結晶質状態とすることがで
きない。
【0003】以上の理由から、相変化光ディスクでは、
通常、光ディスクドライブで記録を行う前に、大出力の
レーザーを用いた初期結晶化装置により記録膜全面の結
晶化が行われている。
【0004】初期結晶化装置による記録膜の初期結晶化
は、例えば、Arガスレーザー等から数ワット程度のパ
ワーでレーザー光を出力し、このレーザー光を対物レン
ズを用いてスポット径が数十μmとなるように相変化光
ディスク上に集光させる。相変化光ディスクのトラック
ピッチは、通常、0.5〜1.6μm程度であるので、
レーザー光のスポットは数十トラックにわたって照射さ
れることとなる。したがって、相変化光ディスクを回転
させつつ、上記レーザー光の光軸を光ディスクの半径方
向に沿って移動させることにより、記録膜全面の初期結
晶化が行われる。
【0005】ところで、上記相変化光ディスクは、記録
膜の結晶性と反射率との関係に基づき、2種類に大別さ
れる。すなわち、相変化光ディスクは、結晶質状態(消
去状態)に比べて非晶質状態(記録状態)の方が反射率
が低いHigh to Low(以下、HtoLとい
う)メディアと、結晶質状態(消去状態)に比べて非晶
質状態(記録状態)の方が反射率が高いLow to
High(以下、LtoHという)メディアとに分類さ
れるのである。
【0006】HtoLメディアにおいては、上記初期結
晶化後の記録膜は、結晶質状態にあり高い反射率を有す
る。そのため、HtoLメディアにおいては、初期結晶
化した直後に光ディスクドライブでオーバーライト記録
を行う場合、十分な反射光量が得られ、サーボ制御が不
安定となることはない。また、オーバーライト記録を行
った光ディスクにおいては、記録マーク部は非晶質状態
となるために反射率の低下を生ずるが、一般に、記録部
分と未記録部分とは概ね半々であると想定される。した
がって、オーバーライト記録を行った光ディスクにおい
て、反射率の平均値は、結晶質状態の反射率と非晶質状
態の反射率との中間程度となり、サーボ制御に支障を来
たすことはない。
【0007】それに対し、LtoHメディアにおいて
は、上記初期結晶化した直後の記録膜は反射率が低い。
そのため、LtoHメディアにおいては、サーボ制御に
支障を来たす場合がある。以下に、その理由を説明す
る。
【0008】近年、光ディスクの高記録密度化に伴い、
記録マークは益々微細化されている。そのため、微細化
された記録マークから大きな信号(反射率変化量)を得
るために、LtoHメディアにおいては結晶質状態の反
射率をより低減する傾向にある。
【0009】これを変調度を用いて説明すると、非晶質
状態における記録膜の反射率をRa、結晶質状態におけ
る記録膜の反射率をRc とした場合、変調度は、(Ra
−R c )/Ra により定義される。変調度は信号の大き
さの指標となるので、Rc をより小さくすることによ
り、変調度をより大きくすること、すなわちより大きな
信号を得ることができるのである。
【0010】現在、DVD−RAM等の高記録密度化に
伴い、片面で4.7GBの記憶容量を実現するために、
トラックピッチを0.6μm、ビットピッチを0.28
μm程度とすることが想定されている。このような条件
のもとでマークエッジ記録を行うとすると、再生ジッタ
値を8%以下とするには、C/N値(Carriert
o Noise Ratio)を53dB以上とする必
要がある。これは、計算上では、例えば、Ra を20
%、Rc を4%として、変調度を80%以上とすること
を意味する。
【0011】しかしながら、LtoHメディアにおい
て、初期結晶化直後の記録膜の反射率を4%以下とする
と、光ディスクドライブでオーバーライト記録を行う際
に十分な反射光量が得られないため、サーボ制御が不安
定となる。このような状態で情報を記録した場合、記録
された情報を再生することができなくなる等の不具合を
生ずる。
【0012】上記LtoHメディアにおいて生ずる不具
合を解決するものとして、無初期化型相変化光ディスク
が期待されている。無初期化型相変化光ディスクは、記
録膜の初期結晶化を行うことなく、作製直後に光ディス
クドライブによるオーバーライト記録を可能とするもの
である。LtoHタイプの無初期化型相変化光ディスク
によると、最初のオーバーライト記録は、作製直後の非
晶質状態にある記録膜に対して行われる。すなわち、全
面が反射率の高い記録状態にある記録膜に対して行われ
る。したがって、LtoHタイプの無初期化型相変化光
ディスクによると、最初のオーバーライト記録の際に、
サーボ制御に支障を来たすことはないと考えられる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、無初
期化型相変化光ディスクによると、初期結晶化を行うこ
となくオーバーライト記録することが可能であると考え
られる。
【0014】本発明は、相変化記録膜の初期結晶化を必
要とすることなく製造直後からオーバーライト記録が可
能な無初期化型相変化光記録媒体を提供することを目的
とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明は、相変化記録膜の初期結晶化を必要とする
ことなく製造直後からオーバーライト記録が可能な無初
期化型相変化光記録媒体であって、光透過性の基板と、
この基板の一方の主面上に形成され、光ビームを照射す
ることにより可逆的に相変化して光学的特性に変化を生
ずる相変化記録膜と、この相変化記録膜上に形成された
反射層と、上記相変化記録膜と接して配置され、光透過
性を有しかつ結晶質の結晶化誘起層とを有することを特
徴とする無初期化型相変化光記録媒体を提供する。
【0016】本発明の無初期化型相変化光記録媒体にお
いては、相変化記録膜に隣接して結晶質の結晶化誘起層
が配置される。一般に、非晶質の薄膜に隣接して結晶質
の薄膜を配置した場合、結晶質の薄膜の表面は、非晶質
の薄膜の結晶化の核として機能する。そのため、製造直
後における相変化記録膜を、非晶質状態から結晶質状態
へと容易に変化させることができる。したがって、本発
明によると、相変化記録膜の初期結晶化を必要とするこ
となく製造直後からオーバーライト記録が可能な無初期
化型相変化光記録媒体が実現される。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について
図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】図1に、本発明の一実施形態に係る無初期
化型相変化光記録媒体の断面図を示す。図1に示す相変
化光記録媒体(以下、相変化光ディスクという)1-1
は、LtoHタイプの相変化光ディスクであって、基板
2上に、半透明干渉層3、誘電体膜4-1、結晶化誘起層
8-1、相変化記録膜5、誘電体膜4-2、金属反射層6、
及び保護膜7が順次積層された構造を有している。
【0019】まず、本発明の原理について図1を参照し
ながら説明する。
【0020】上述したようにスパッタ法等により基板2
上に相変化記録膜5を形成した場合、製造直後における
記録膜5は、通常、安定性が過剰に高い非晶質状態とな
る。したがって、従来の方法により製造した相変化光デ
ィスクには、初期結晶化を施す必要がある。
【0021】それに対し、上記光ディスク1-1において
は、相変化記録膜5と隣接して結晶質の結晶化誘起層8
-1が設けられる。上述したように、相変化記録膜5と隣
接して結晶質の結晶化誘起層8-1を配置した場合、結晶
化誘起層8-1の表面は、相変化記録膜5の結晶化の核と
して機能する。そのため、上記光ディスク1-1において
は、製造直後における相変化記録膜5を、非晶質状態か
ら結晶質状態へと容易に変化させることが可能となる。
【0022】上記光ディスク1-1において、結晶化誘起
層8-1は、基板2と反射層6との間に配置される。した
がって、結晶化誘起層8-1は光透過性を有していること
が必要である。また、相変化記録膜5にレーザ光等を照
射する際に記録膜5が蒸発するのを防止するために、結
晶化誘起層8-1は相変化記録膜5よりも高い融点を有す
ることが好ましい。
【0023】結晶化誘起層8-1は、スパッタリング法を
用いて成膜することにより結晶質の薄膜を形成する材料
から実質的になることが好ましい。通常、第1及び第2
の誘電体膜4-1,4-2を構成する材料としては、ZnS
・SiO2 混合物等が用いられる。しかしながら、この
ような第1及び第2の誘電体膜4-1,4-2に一般に使用
される材料は、スパッタリング法により成膜を行った場
合に非晶質の薄膜を形成する。そのため、第1及び第2
の誘電体膜4-1,4-2に一般に使用される材料で結晶化
誘起層8を構成した場合、成膜工程の後に結晶化工程を
行う必要がある。
【0024】それに対し、結晶化誘起層8-1を、スパッ
タリング法を用いて成膜することにより結晶質の薄膜を
形成する材料で構成した場合、上記結晶化工程を行うこ
となく結晶化誘起層8-1を成膜することができる。した
がって、結晶化誘起層8及び相変化記録膜5等を連続的
に成膜することが可能となる。
【0025】結晶化誘起層8-1に用いられ、スパッタリ
ング法を用いて成膜することにより結晶質の薄膜を形成
する材料としては、酸化セリウム及び硫化亜鉛等を挙げ
ることができる。酸化セリウムは、スパッタリングによ
り結晶質の薄膜を形成するだけでなく、結晶化誘起層8
-1として用いられた場合に、相変化記録膜5の結晶化の
核としての能力に特に優れた表面を提供する。したがっ
て、結晶化誘起層8-1は、酸化セリウムで構成すること
が好ましい。
【0026】図1に示す光ディスク1-1においては、結
晶化誘起層は第1の誘電体膜4-1と相変化記録膜5との
間に設けられたが、相変化記録膜5と第2の誘電体膜4
-2との間に設けてもよい。
【0027】図2に、本発明の他の実施形態に係る無初
期化型相変化光ディスクの断面図を示す。図2に示す相
変化光ディスク1-2は、LtoHタイプの相変化光ディ
スクであって、基板2上に、半透明干渉層3、誘電体膜
4-1、相変化記録膜5、結晶化誘起層8-2、誘電体膜4
-2、金属反射層6、及び保護膜7が順次積層された構造
を有している。このように、結晶化誘起層8-2を相変化
記録膜5と第2の誘電体膜4-2との間に設けた場合にお
いても、光ディスク1-1に関して説明したのと同様の効
果を得ることができる。
【0028】結晶化誘起層は、相変化記録膜5の両側に
設けることが好ましい。図3に、本発明のさらに他の実
施形態に係る無初期化型相変化光ディスクの断面図を示
す。図3に示す相変化光ディスク1-3は、LtoHタイ
プの相変化光ディスクであって、基板2上に、半透明干
渉層3、誘電体膜4-1、結晶化誘起層8-1、相変化記録
膜5、結晶化誘起層8-2、誘電体膜4-2、金属反射層
6、及び保護膜7が順次積層された構造を有している。
【0029】このように、相変化記録膜5の両側に結晶
化誘起層8-1,8-2を設けた場合、相変化記録膜5の結
晶化の核として機能する面の面積が増加する。したがっ
て、相変化記録膜5の結晶化をより容易に生じさせるこ
とが可能となり、上述した効果がより顕著となる。
【0030】以上説明したように、無初期化型相変化光
ディスク1-1〜1-3において、結晶化誘起層8-1,8-2
は、相変化記録膜5に、その結晶化の核として機能する
表面を提供する。したがって、結晶化誘起層8-1,8-2
は厚く形成する必要はなく、例えば、10〜100オン
グストローム程度の厚さに形成される。
【0031】結晶化誘起層8-1,8-2を第1或いは第2
の誘電体4-1,4-2と同程度の厚さに形成してもよい。
この場合、結晶化誘起層8-1,8-2は、相変化記録膜の
蒸発等を防止する保護膜として用いられ得る。したがっ
て、この場合、第1或いは第2の誘電体膜4-1,4-2を
別途設ける必要がない。
【0032】しかしながら、結晶化誘起層8-1,8-2を
薄く形成し、さらに第1及び第2の誘電体膜4-1,4-2
を設けることが好ましい。この場合、相変化記録膜5の
結晶化の核を提供する機能と、相変化記録膜5の耐熱保
護を行う機能とを、結晶化誘起層8-1,8-2と誘電体膜
4-1,4-2とにそれぞれ分担させることができる。した
がって、結晶化誘起層8-1,8-2及び誘電体膜4-1,4
-2をそれぞれ最適な材料で構成することが可能となる。
【0033】上述したように、図1〜図3に示す光ディ
スク1-1〜1-3によると、結晶化誘起層8-1,8-2が設
けられるため、製造直後の相変化記録膜5を非晶質状態
から結晶質状態に容易に変化させることができる。この
変化をさらに容易に生じさせるために、スパッタガスと
してKr或いはXeを用い、5×10-2torr以上の
スパッタガス圧下で、真空スパッタリング法により相変
化記録膜5を成膜することが好ましい。以下にその理由
を説明する。
【0034】上述したようにスパッタ法等により基板2
上に相変化記録膜5を形成した場合、製造直後におい
て、記録膜5は安定性が過剰に高い非晶質状態となる。
したがって、従来の方法により製造した相変化光ディス
クには、初期結晶化を施す必要がある。
【0035】本発明者らは、製造直後において記録膜5
の非晶質状態の安定性が過剰に高い理由の1つは、記録
膜5の原料原子或いは原料分子が過剰な速度で基板面に
衝突することにあると考えた。すなわち、記録膜原料を
基板2上に付着させる際に、原料原子或いは原料分子は
非常に高い速度で基板2に衝突するため、原料は基板2
に付着した瞬間に非常に高い温度から急激に冷却され
る。この極端に高い冷却速度が、成膜直後の記録膜5に
おける非晶質状態の安定性を過剰に高くしているのであ
る。
【0036】ここで、記録膜5の原料原子或いは原料分
子の速度は、その平均自由工程に依存するものと考えら
れる。したがって、原料原子或いは原料分子の平均自由
工程を低減することにより、原料原子或いは原料分子の
基板面に対する入射エネルギーを低減することが可能と
なる。
【0037】真空スパッタ法により基板2上に記録膜5
を形成する場合、上記平均自由工程を低減する方法とし
ては、例えば、Krガス等のスパッタガス圧を増加させ
て、原料原子或いは原料分子とスパッタガスとの衝突回
数を増加させることが考えられる。
【0038】通常、相変化光ディスク1-1〜1-3の記録
膜5は、スパッタガスとしてArを用い5×10-3to
rr程度のガス圧下でスパッタリングすることにより形
成されるが、本発明者らは、様々な原料を用いて記録膜
5を成膜したところ、いずれの原料を用いた場合におい
てもスパッタガス圧を2×10-2torr以上に高める
ことにより、記録膜形成直後における非晶質状態の安定
性を低減することができ、特に、スパッタガス圧を5×
10-2torr以上とすることにより、上記原料原子或
いは原料分子の運動エネルギーを大幅に低減することが
できることを確認した。なお、スパッタガス圧が5×1
-1torrより高い場合、記録膜5中へのスパッタガ
スの混入量が過剰となるおそれがある。
【0039】また、スパッタガスとしてより大きな分子
量を有する分子を用いることにより、上記運動エネルギ
ーを低減することが可能である。Ar、Kr及びXeは
同族元素でありいずれも化学的に不活性であるが、周期
率表においてKrはArに対して1周期高次の元素であ
り、XeはArに対して2周期高次の元素である。すな
わち、Kr及びXeはArに比べて大きな原子量(分子
量)を有している。そのため、スパッタガスとして、K
rガス或いはXeガスを用いた場合、Arガスを用いた
場合に比べて、上記原料原子或いは原料分子の運動エネ
ルギーをより低減することができる。
【0040】したがって、相変化記録膜5の成膜時に、
例えば、スパッタガス圧を高めることにより、スパッタ
ガスとしてより大きな分子量を有する分子を用いること
により、或いはそれらを組み合せることにより、製造直
後の相変化記録膜5を非晶質状態から結晶質状態に容易
に変化させることができる。すなわち、相変化光ディス
ク1-1〜1-3を無初期化型とすることができる。
【0041】次に、上記相変化光ディスク1-1〜1-3に
用いられる材料等について説明する。
【0042】上記光ディスク1-1〜1-3において、基板
2としては、ポリカーボネート等の合成樹脂やガラス等
からなる透明基板が用いられる。
【0043】また、上記光ディスク1-1〜1-3におい
て、相変化記録膜5は、光照射により非晶質と結晶質と
の間で可逆的に相変化する材料で構成されることが必要
である。この相変化記録膜5を構成する材料として、例
えば、Ge2 Sb2 Te5 のようなGe、Sb及びTe
からなる3元合金、またはIn、Sb及びTeからなる
3元合金等を挙げることができる。
【0044】相変化記録膜5への記録は、記録膜5を融
点以上に加熱しさらに急冷して非晶質状態とすることに
より行なわれる。また、記録された情報の消去は、非晶
質状態にある記録膜5を結晶化温度以上かつ融点未満に
加熱して結晶質状態とすることにより行われる。なお、
相変化記録膜5は、レーザ光等を照射することにより溶
融される程度に薄い必要がある。したがって、通常、相
変化記録膜5は、50〜300オングストローム程度の
厚さに形成される。
【0045】誘電体膜4-1,4-2は、記録膜5にレーザ
光等を照射する際に記録膜5が蒸発するのを防止するた
めに設けられる。すなわち、誘電体膜4-1,4-2を設け
ることにより、記録膜5の穴明きを防ぎ、記録膜5の耐
熱保護を図ることができる。
【0046】誘電体膜4-1,4-2に用いられる材料とし
ては、例えば、ZnS・SiO2 混合物、SiO2 、T
iO2 、及びAl2 3 等の光透過性の誘電体を挙げる
ことができる。なお、上記光ディスク1-1〜1-3におい
て、誘電体膜4-1は、半透明干渉層3及び金属反射層6
等との相乗効果により再生信号を光学的にエンハンスす
るように設計されており、通常、500〜3000オン
グストローム程度の厚さに形成される。
【0047】また、誘電体膜4-2は、レーザ光等の照射
により溶融された記録膜5の冷却を促進するために薄く
形成され、通常、50〜300オングストローム程度の
厚さに制御される。なお、近年、データ転送速度の高速
化に伴い、記録速度の高速化が求められている。この場
合、感度を向上させる必要があるため、急冷(熱の保持
能力が低い)タイプではなく徐冷(熱の保持能力が高
い)タイプの相変化光ディスクも検討されている。した
がって、上記光ディスク1-1〜1-3を徐冷タイプとする
場合は、熱の保持能力を高めるために、誘電体膜4-2は
通常300〜3000オングストローム程度の厚さに形
成される。
【0048】金属反射層6に用いられる材料としては、
例えば、AlMo合金等を挙げることができる。この金
属反射層6は、再生信号をエンハンスするため、及び放
熱性を高めるために、通常、500〜3000オングス
トローム程度の厚さに形成される。
【0049】また、半透明干渉層3に用いられる材料と
しては、Au等を挙げることができる。この半透明干渉
層3は、基板2側から照射されたレーザ光等が記録膜5
へと到達可能である程度に薄い必要がある。また、半透
明干渉層3は、半透明干渉層3と金属反射層6との間で
光の干渉を生じさせて再生信号をエンハンスするため
に、ある程度の厚さを必要とする。そのため、半透明干
渉層3は、通常、20〜200オングストローム程度に
形成される。
【0050】保護膜7は、光ディスク1-1〜1-3を取扱
う際に反射層6等に傷等が生ずるのを防止するために設
けられる。保護膜7は、例えば、UV硬化樹脂等を用い
て形成することができる。
【0051】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0052】(実施例1)図4に示すスパッタ装置を用
いて、以下に示す方法により図1に示す相変化光ディス
ク1-1を作製した。なお、図4は、相変化光ディスクの
製造に用いられるスパッタ装置を概略的に示す図であ
る。
【0053】相変化光ディスク1-1を作製するに当た
り、まず、直径が120mm、厚さが0.6mmであ
り、一方の主面に幅0.6μmの渦巻線状の連続溝が形
成されたポリカーボネート製のディスク2を、溝が形成
された面が下方を向くように、チャンバー21内に設け
られた円盤状の基台9に保持させた。なお、基台9はデ
ィスク2を保持しつつ回転することが可能である。
【0054】次に、バルブ11を開き、真空ターボポン
プ12を駆動することにより、チャンバー21内を10
-6torrまで減圧した。さらに、基台9を60rpm
の速度で回転させつつ、バルブ10-1を開放してArガ
スをチャンバー21内に導入した。なお、チャンバー内
のArガス圧は、バルブ11の開放状態及び真空ターボ
ポンプ12の排気能力を変えることなく、図示しないマ
スフローコントローラを用いてAr流量を制御すること
により5×10-3torrとした。
【0055】次に、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-1とを電気的に接続して、電極14-1に
13.56MHz、150WのRF電力を供給した。以
上のようにして、電極14-1上に配置されたAuターゲ
ット13-1のArガスによるスパッタリングを開始し
た。約1分間プリスパッタした後、Auターゲット13
-1の上方に配置されたシャッタ15-1を開放した。所定
の時間経過した後、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-1とを電気的に絶縁し、さらにシャッタ
15-1を閉じた。以上のようにして、ディスク2上に半
透明干渉層3として、厚さ100オングストロームのA
u膜3を成膜した。
【0056】Au膜3を成膜した後、バルブ10-1を閉
じ、チャンバー21内に残留するArガスとAu原子と
を真空ターボポンプ12を用いて排気した。排気終了
後、再度バルブ10-1を開放して、マスフローコントロ
ーラで流量制御しつつArガスをチャンバー21内に導
入し、チャンバー内のArガス圧を5×10-3torr
に制御した。
【0057】次に、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-2とを電気的に接続して、電極14-2に
600WのRF電力を供給した。以上のようにして、電
極14-2上に配置されたZnS/SiO2 ターゲット1
3-2のArガスによるスパッタリングを開始した。約1
分間プリスパッタした後、ZnS/SiO2 ターゲット
13-2の上方に配置されたシャッタ15-2を開放した。
8分30秒経過後、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-2とを電気的に絶縁し、さらにシャッタ
15-2を閉じた。以上のようにして、Au膜3上に誘電
体膜4-1として、厚さ850オングストロームのZnS
/SiO2 膜4-1を成膜した。
【0058】ZnS/SiO2 膜4-1を成膜した後、バ
ルブ10-1を閉じ、チャンバー21内に残留するArガ
スとZnS/SiO2 分子とを真空ターボポンプ12を
用いて排気した。排気終了後、バルブ10-1を開放し
て、マスフローコントローラで流量制御しつつArガス
をチャンバー21内に導入し、チャンバー内のArガス
圧を5×10-3torrに制御した。
【0059】次に、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-4とを電気的に接続して、電極14-4に
400WのRF電力を供給した。以上のようにして、電
極14-4上に配置されたCeO2 ターゲット13-4のA
rガスによるスパッタリングを開始した。約1分間プリ
スパッタした後、CeO2 ターゲット13-4の上方に配
置されたシャッタ15-4を開放した。15秒経過後、切
替スイッチ17を用いてRF電源16と電極14-4とを
電気的に絶縁し、さらにシャッタ15-4を閉じた。以上
のようにして、ZnS/SiO2 膜4-1上に結晶化誘起
層8-1として、厚さ50オングストロームのCeO2
8-1を成膜した。
【0060】CeO2 膜8-1を成膜した後、バルブ10
-1を閉じ、チャンバー21内に残留するArガスとCe
2 分子とを真空ターボポンプ12を用いて排気した。
排気終了後、バルブ10-2を開放して、マスフローコン
トローラで流量制御しつつKrガスをチャンバー21内
に導入し、チャンバー内のKrガス圧を5×10-2to
rrに制御した。
【0061】次に、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-3とを電気的に接続して、電極14-3に
200WのRF電力を供給した。以上のようにして、電
極14-3上に配置されたGe2 Sb2 Te5 ターゲット
13-3のKrガスによるスパッタリングを開始した。約
1分間プリスパッタした後、Ge2 Sb2 Te5 ターゲ
ット13-3の上方に配置されたシャッタ15-3を開放し
た。40秒経過後、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-3とを電気的に絶縁し、さらにシャッタ
15-3を閉じた。以上のようにして、CeO2 膜8-1上
に相変化記録膜5として、厚さ100オングストローム
のGe2 Sb2 Te5 膜5を成膜した。
【0062】Ge2 Sb2 Te5 膜5を成膜した後、バ
ルブ10-2を閉じ、チャンバー21内に残留するKrガ
スとGe2 Sb2 Te5 分子とを真空ターボポンプ12
を用いて排気した。排気終了後、バルブ10-1を開放し
て、マスフローコントローラで流量制御しつつArガス
をチャンバー21内に導入し、チャンバー内のArガス
圧を5×10-3torrに制御した。
【0063】次に、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-2とを電気的に接続して、電極14-2に
600WのRF電力を供給した。以上のようにして、電
極14-2上に配置されたZnS/SiO2 ターゲット1
3-2のArガスによるスパッタリングを開始した。約1
分間プリスパッタした後、ZnS/SiO2 ターゲット
13-2の上方に配置されたシャッタ15-2を開放した。
3分経過後、切替スイッチ17を用いてRF電源16と
電極14-2とを電気的に絶縁し、さらにシャッタ15-2
を閉じた。以上のようにして、Ge2 Sb2 Te5 膜5
上に誘電体膜4-2として、厚さ300オングストローム
のZnS/SiO2 膜4-2を成膜した。
【0064】ZnS/SiO2 膜4-2を成膜した後、バ
ルブ10-1を閉じ、チャンバー21内に残留するArガ
スとZnS/SiO2 分子とを真空ターボポンプ12を
用いて排気した。排気終了後、再度バルブ10-1を開放
して、マスフローコントローラで流量制御しつつArガ
スをチャンバー21内に導入し、チャンバー内のArガ
ス圧を5×10-3torrに制御した。
【0065】次に、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-1とを電気的に接続して、電極14-1に
150WのRF電力を供給した。以上のようにして、電
極14-1上に配置されたAuターゲット13-1のArガ
スによるスパッタリングを開始した。約1分間プリスパ
ッタした後、Auターゲット13-1の上方に配置された
シャッタ15-1を開放した。2分30秒経過後、切替ス
イッチ17を用いてRF電源16と電極14-1とを電気
的に絶縁し、さらにシャッタ15-1を閉じた。以上のよ
うにして、ZnS/SiO2 膜4-2上に金属反射層6と
して、厚さ1000オングストロームのAu膜6を成膜
した。
【0066】上述した方法により、ディスク2上にそれ
ぞれの膜を成膜した後、ディスク2をチャンバー21か
ら取り出した。このディスク2のAu膜6上に、スピン
コータを用いてUV硬化樹脂をスピンコートし、UV光
を照射することにより、Au膜6上に保護膜7を形成し
た。
【0067】以上のようにして、ディスク2上に、厚さ
100オングストロームのAu膜3、厚さ850オング
ストロームのZnS/SiO2 膜4-1、厚さ50オング
ストロームのCeO2 膜8-1、厚さ100オングストロ
ームのGe2 Sb2 Te5 膜5、厚さ300オングスト
ロームのZnS/SiO2 膜4-2、厚さ1000オング
ストロームのAu膜6、及び厚さ8μmの保護膜7を順
次積層してLtoHタイプの相変化光ディスク1-1を作
製した。この相変化光ディスク1-1をサンプルAとす
る。
【0068】また、Ge2 Sb2 Te5 膜5の成膜時の
Krガス圧を5×10-1torrに制御したこと以外は
サンプルAと同様にしてLtoHタイプの相変化光ディ
スク1-1を作製した。すなわち、サンプルBに比べ、G
2 Sb2 Te5 膜5の成膜時における急冷度をさらに
低減して相変化光ディスク1-1を作製した。この相変化
光ディスク1-1をサンプルBとする。
【0069】(実施例2)図4に示すスパッタ装置を用
いて、以下に示す方法により図2に示す相変化光ディス
ク1-2を作製した。すなわち、ZnS/SiO2 膜4-1
とGe2 Sb2 Te5 膜5との間にCeO2 膜8-1を設
ける代わりに、Ge2 Sb2 Te5 膜5とZnS/Si
2 膜4-2との間に厚さ50オングストロームのCeO
2 膜8-2を設けたこと以外はサンプルAと同様にしてL
toHタイプの相変化光ディスク1-2を作製した。この
相変化光ディスク1-2をサンプルCとする。
【0070】また、ZnS/SiO2 膜4-1とGe2
2 Te5 膜5との間にCeO2 膜8-1を設ける代わり
に、Ge2 Sb2 Te5 膜5とZnS/SiO2 膜4-2
との間に厚さ50オングストロームのCeO2 膜8-2を
設けたこと以外はサンプルBと同様にしてLtoHタイ
プの相変化光ディスク1-2を作製した。この相変化光デ
ィスク1-2をサンプルDとする。
【0071】(実施例3)図4に示すスパッタ装置を用
いて、以下に示す方法により図3に示す相変化光ディス
ク1-3を作製した。すなわち、Ge2 Sb2 Te5 膜5
とZnS/SiO 2 膜4-2との間に厚さ50オングスト
ロームのCeO2 膜8-2を設けたこと以外はサンプルA
と同様にしてLtoHタイプの相変化光ディスク1-3を
作製した。この相変化光ディスク1-3をサンプルEとす
る。
【0072】また、Ge2 Sb2 Te5 膜5とZnS/
SiO2 膜4-2との間に厚さ50オングストロームのC
eO2 膜8-2を設けたこと以外はサンプルBと同様にし
てLtoHタイプの相変化光ディスク1-3を作製した。
この相変化光ディスク1-3をサンプルFとする。
【0073】(比較例)図5は、初期結晶化を必要とす
る従来の相変化光ディスクを概略的に示す断面図であ
る。図5において、相変化光ディスク1-4は、基板2上
に、半透明干渉層3、誘電体膜4-1、相変化記録膜5、
誘電体膜4-2、金属反射層6、及び保護膜7が順次積層
された構造を有している。
【0074】この相変化光ディスク1-4を、図4に示す
スパッタ装置を用い、以下に示す方法により作製した。
【0075】まず、サンプルAと同様にして、ディスク
2上に、厚さ100オングストロームのAu膜3及び厚
さ850オングストロームのZnS/SiO2 膜4-1を
順次積層した。
【0076】ZnS/SiO2 膜4-1を成膜した後、バ
ルブ10-1を閉じ、チャンバー21内に残留するArガ
スとZnS/SiO2 分子とを真空ターボポンプ12を
用いて排気した。排気終了後、バルブ10-1を開放し
て、マスフローコントローラで流量制御しつつArガス
をチャンバー21内に導入し、チャンバー内のArガス
圧を5×10-3torrに制御した。
【0077】次に、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-3とを電気的に接続して、電極14-3に
200WのRF電力を供給した。以上のようにして、電
極14-3上に配置されたGe2 Sb2 Te5 ターゲット
13-3のArガスによるスパッタリングを開始した。約
1分間プリスパッタした後、Ge2 Sb2 Te5 ターゲ
ット13-3の上方に配置されたシャッタ15-3を開放し
た。20秒経過後、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-3とを電気的に絶縁し、さらにシャッタ
15-3を閉じた。以上のようにして、ZnS/SiO2
膜4-1上に相変化記録膜5として、厚さ100オングス
トロームのGe2 Sb2 Te5 膜5を成膜した。
【0078】以上のようにして形成したGe2 Sb2
5 膜5上に、サンプルAに関して説明したのと同様の
方法により厚さ300オングストロームのZnS/Si
2膜4-2を成膜した。
【0079】ZnS/SiO2 膜4-2を成膜した後、バ
ルブ10-1を閉じ、チャンバー21内に残留するArガ
スとZnS/SiO2 分子とを真空ターボポンプ12を
用いて排気した。排気終了後、再度バルブ10-1を開放
して、マスフローコントローラで流量制御しつつArガ
スをチャンバー21内に導入し、チャンバー内のArガ
ス圧を5×10-3torrに制御した。
【0080】次に、切替スイッチ17を用いてRF電源
16と電極14-4とを電気的に接続して、電極14-4に
200WのRF電力を供給した。以上のようにして、電
極14-4上に配置されたAlMoターゲット13-4のA
rガスによるスパッタリングを開始した。約1分間プリ
スパッタした後、AlMoターゲット13-4の上方に配
置されたシャッタ15-4を開放した。2分30秒経過
後、切替スイッチ17を用いてRF電源16と電極14
-4とを電気的に絶縁し、さらにシャッタ15-4を閉じ
た。以上のようにして、ZnS/SiO2 膜4-2上に金
属反射層6として、厚さ1000オングストロームのA
lMo膜6を成膜した。
【0081】上述した方法により、ディスク2上にそれ
ぞれの膜を成膜した後、サンプルAに関して説明したの
と同様の方法により、AlMo膜6上に保護膜7を形成
した。
【0082】以上のようにして、ディスク2上に、厚さ
100オングストロームのAu膜3、厚さ850オング
ストロームのZnS/SiO2 膜4-1、厚さ100オン
グストロームのGe2 Sb2 Te5 膜5、厚さ300オ
ングストロームのZnS/SiO2 膜4-2、厚さ100
0オングストロームのAlMo膜6、及び厚さ8μmの
保護膜7を順次積層してLtoHタイプの相変化光ディ
スク1-4を作製した。この相変化光ディスク1-4を比較
用サンプルとする。
【0083】以上のようにして作製したサンプルA〜F
及び比較用サンプルについて、相変化記録膜であるGe
2 Sb2 Te5 膜5の成膜条件の違いと、結晶化誘起層
であるCeO2 膜8-1,8-2の有無とを下記表に纏め
る。
【0084】
【表1】
【0085】次に、これらサンプルA〜F及び比較用サ
ンプルについて、作製直後における相変化記録膜5の非
晶質状態の安定性を、図6に示す光ディスクドライブ装
置を用いて、以下に示す方法により評価した。なお、図
6は、光ディスクドライブ装置を概略的に示す図であ
る。
【0086】図6に示すように、相変化光ディスク1
は、スピンドルモータ32の回転軸に保持される。ディ
スク1は、スピンドルモータ32の回転数を制御するこ
とにより、所定の回転数で回転される。本実施例におい
ては、DVD−RAMを想定して、ディスク1と光学ヘ
ッド33との相対速度が8.2m/sで一定となるよう
に、ディスク1の回転軸と光学ヘッド33との間の距離
に応じてディスク1の回転速度を変化させる、いわゆる
線速度一定方式を採用した。
【0087】入力装置36から入力される信号は、変調
回路35において、例えばDVD−RAMを想定した場
合は8/16変調で、1または0の信号へとデジタル化
される。変調回路35からのデジタル信号はレーザドラ
イバ37へと送られ、光学ヘッド33から出射されるレ
ーザ光のON/OFFを制御する。これにより、ディス
ク1上へのデータの書込みが行われる。
【0088】本実施例においてディスク1は相変化光デ
ィスクであるので、ディスク1への情報の記録、ディス
ク1に記録された情報の消去、及びディスク1に記録さ
れた情報の再生は、全てレーザ光等を照射することによ
り行われる。
【0089】図7に、相変化光ディスクにおける、情報
の記録・消去・再生に必要なレーザ光のパワーをグラフ
にして示す。なお、図中、横軸は時間を示し、縦軸はレ
ーザ光のパワーを示している。
【0090】図7に示すように、情報の記録を行う場合
は、レーザ光のパワーをPw まで高めて相変化記録膜5
を溶融・急冷することにより非晶質状態とする。また、
記録された情報の消去を行う場合は、レーザ光のパワー
をPe 程度として、相変化記録膜5をその結晶化温度以
上、融点未満まで加熱することにより結晶化させる。な
お、図中、Pr は記録された情報の再生を行う場合に必
要なレーザ光のパワーである。ディスク1に情報を書込
むと、その部分は非晶質となる。非晶質部分と結晶質部
分とでは反射率が異なるので、ディスク1上を一定かつ
弱いパワーのレーザ光を用いて走査することにより、記
録された信号を反射光量の差として検出することができ
る。
【0091】ディスク1にパワーPr のレーザ光を照射
することにより得られる再生信号は、光学ヘッド33に
接続されたプリアンプ38で増幅される。増幅された再
生信号は、次に2値化回路39において、アナログ信号
からデジタル信号へとデジタル化される。デジタル化さ
れた再生信号は、さらに復調回路40において、8/1
6変調に基づいて復調され、アナログ信号として出力装
置41へと出力される。
【0092】なお、図7において、制御系43は、レー
ザドライバ37を介して光学ヘッド33から出射される
レーザ光強度を制御したり、例えば、リニアモータ駆動
制御系46を介してリニアモータ34を駆動することに
より光学ヘッド33を所望の位置に制御するのに用いら
れる。また、制御系43は、フォーカス駆動制御系44
やトラック駆動制御系45を介して、光学ヘッド33に
設けられた対物レンズアクチュエータを駆動することに
より、ディスク1の面振れやトラックの偏心に追従する
ように対物レンズの位置を制御するのに用いられる。
【0093】このように構成される光ディスクドライバ
装置30を用いて、サンプルA〜F及び比較用サンプル
について、以下に示す方法により、製造直後における相
変化記録膜の非晶質状態の安定性について評価を行っ
た。すなわち、ディスク1(サンプルA〜F及び比較用
サンプル)に初期結晶化を行うことなく、上記光ディス
クドライバ装置30により、図7に示すパワーPe の消
去用のレーザ光及びパワーPw の記録用のレーザ光を照
射した。すなわち、オーバーライト記録を行った。
【0094】なお、信号の記録は、DVD−RAMを想
定して、線速度が8.2m/sで一定となるようにスピ
ンドルモータ32の回転数を制御し、8/16変調、デ
ューティ50%として、周波数9.72MHzのレーザ
光を照射してマークエッジ記録を行い、相変化記録膜5
にマーク長の最も短い3Tの記録マークを形成すること
により行った。また、記録パワーPw は13mWとし、
消去パワーPe は6mWとした。
【0095】また、作製直後における相変化記録膜5は
非晶質状態にあり、かつサンプルA〜F及び比較用サン
プルは全てLtoHメディアであるため、作製直後にお
ける相変化記録膜5の反射率は0.18程度と十分に高
かった。したがって、光ディスクドライブ装置30にお
いて、サーボ制御可能であり、また、試験中にサーボ制
御不能となることはなかった。
【0096】次に、情報を記録したディスク1について
記録の再生を行い、スペクトラム・アナライザを用いて
C/N値を測定した。なお、C/N値が低すぎる場合
は、パワーPe の消去用のレーザ光を照射することによ
る相変化記録膜5の結晶化が不完全であったと判断する
ことができる。したがって、この場合は、オーバーライ
ト記録を再度行った。
【0097】十分に大きなC/N値が得られるまで、相
変化記録膜5の同じ領域に対して、上記オーバーライト
記録とC/N値の測定とを繰り返し行い、その繰返し回
数により、作製直後における相変化記録膜5の非晶質状
態の安定性を評価した。以下にその結果を示す。
【0098】まず、比較用サンプルについて上記測定を
行ったところ、1回目のオーバーライト記録直後では、
3T信号の記録マークに関するスペクトルは殆ど観測さ
れなかった。オーバーライト記録とC/N値の測定とを
繰り返し行ったところ、C/N値が40dBに達するの
に6回のオーバーライト記録を必要とした。また、C/
N値が52dBに達するのに15回のオーバーライト記
録を必要とした。以上から、従来の方法により製造した
比較用サンプルは、作製直後において、相変化記録膜の
非晶質状態が過剰に安定であることが確認された。すな
わち、比較用サンプルは、大出力のレーザーを用いた初
期結晶化装置により記録膜全面の初期結晶化を行う必要
があることが確認された。
【0099】次に、サンプルAについて上記測定を行っ
たところ、1回目のオーバーライト記録で、48dBを
超えるC/N値を得ることができた。また、オーバーラ
イト記録を3回繰返すことにより、C/N値を52dB
とすることができた。また、サンプルBについて上記測
定を行ったところ、1回目のオーバーライト記録で、C
/N値を51dBとすることができた。また、オーバー
ライト記録を2回繰返すことにより、C/N値を52d
Bとすることができた。
【0100】以上の結果から、誘電体膜4-1と相変化記
録膜5との間に結晶化誘起層8-1を設けることにより、
製造直後における記録膜5を非晶質状態から結晶質状態
へと容易に変化させることが可能となることが確認され
た。また、相変化記録膜5の成膜時に、スパッタリング
ガスとしてKrを用い、スパッタリングガス圧を高める
ことにより、記録膜原料の急冷度を低減し、作製直後に
おける相変化記録膜5の非晶質状態の過剰な安定性を低
減可能であることが確認された。
【0101】次に、サンプルCについて上記測定を行っ
たところ、1回目のオーバーライト記録でC/N値を4
8dBとすることができた。また、オーバーライト記録
を3回繰返すことにより、C/N値を52dBとするこ
とができた。また、サンプルDについて上記測定を行っ
たところ、1回目のオーバーライト記録の直後にC/N
値は51dBに達し、2回目のオーバーライト記録でC
/N値を52dBとすることができた。以上の結果か
ら、相変化記録膜5と誘電体膜4-1との間に結晶化誘起
層8-2を設けた場合に置いても、サンプルA及びBに関
して説明したのと同様の効果が得られることが確認され
た。
【0102】次に、サンプルE,Fについて上記測定を
行ったところ、ともに1回目のオーバーライト記録でC
/N値を52dB以上とすることができた。以上の結果
から、結晶化誘起層8-1,8-2の双方を設けることによ
り、一方のみを設けた場合に比べて、製造直後において
非晶質状態にある記録膜5をさらに容易に結晶質状態へ
と変化させることが可能となることが確認された。
【0103】上述したように、本発明の実施例に係るサ
ンプルA〜Fによると、製造直後において非晶質状態に
ある記録膜5を容易に結晶質状態へと変化させることが
できた。これは、本発明の実施例に係るサンプルA〜F
に設けられた結晶化誘起層の表面が、相変化記録膜の結
晶化の核として機能したため、製造直後の相変化記録膜
5の非晶質状態から結晶質状態への変化を妨げるエネル
ギー障壁が低減されたためであると考えられる。
【0104】また、サンプルA〜Fによると、比較用サ
ンプルに比べ、オーバーライト記録時における記録マー
クの消去率が著しく向上した。これは、サンプルA〜F
には結晶化誘起層が設けられているため、製造直後以外
においても非晶質状態から結晶質状態への変化がより容
易に生じたことによると考えられる。
【0105】以上示したように、本発明によると、相変
化記録膜と接するように、結晶質の結晶化誘起層が設け
られる。この結晶化誘起層の相変化記録膜と接する面
は、相変化記録膜の結晶化の核として機能する。そのた
め、製造直後の相変化記録膜をより容易に非晶質状態か
ら結晶質状態へと変化させることができる。
【0106】また、基板上に相変化記録膜を成膜する際
に、スパッタガスとしてKrガス或いはXeガスを用い
ること、スパッタガス圧を高めること、或いはそれらを
組み合せることにより、基板面へと衝突する記録膜原料
原子或いは分子の速度を低減することができる。そのた
め、記録膜原料の急冷度が低減され、作製される相変化
記録膜は、適度な安定性を有する非晶質状態となる。
【0107】したがって、本発明によると、相変化記録
膜に隣接して結晶質の結晶化誘起層を設け、相変化記録
膜を適切な方法により成膜することにより、相変化記録
膜の初期結晶化を行う必要がなく、作製直後からオーバ
ーライト記録が可能な無初期化型相変化光ディスクを製
造することが可能となる。
【0108】また、本発明によると、スパッタリング条
件の僅かな変更により、上記非晶質状態の安定性を制御
可能である。したがって、容易に実現可能であり、かつ
制御も簡単である。さらに、本発明によると、結晶化誘
起層、相変化記録膜、金属反射層等を連続的に成膜する
ことが出来るため、無初期化型相変化光ディスクを高い
効率で製造可能である。
【0109】なお、上記実施例においては、無初期化型
とすることによる効果が顕著なLtoHメディアについ
て説明したが、HtoLメディアであっても本発明の方
法により無初期化型の相変化光ディスクを製造可能であ
ることは言うまでもない。
【0110】また、上記実施例においては、相変化光デ
ィスクを製造する際に、相変化記録膜の材料としてGe
SbTe系材料を用いたが、本発明はこれに限られるも
のではなく、InSbTe系材料、AgInSbTe系
材料、及びInSe系材料等、様々な相変化記録材料を
用いた場合においても同様の効果を得ることができるの
は言うまでもない。
【0111】さらに、上記実施例においては、相変化記
録膜をスパッタリングにより成膜する際に、スパッタガ
スとしてKrガスを用いた場合について説明したが、X
eガスを用いた場合においても同様の効果を得ることが
できるのは言うまでもない。
【0112】
【発明の効果】以上示したように、本発明によると、相
変化記録膜と接するように、結晶質の結晶化誘起層が設
けられる。この結晶化誘起層の相変化記録膜と接する面
は、相変化記録膜の結晶化の核を提供する。そのため、
製造直後の相変化記録膜をより容易に非晶質状態から結
晶質状態へと変化させることができる。したがって、本
発明によると、記録膜の初期結晶化を必要とすることな
く製造直後からオーバーライト記録が可能な無初期化型
相変化光記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る無初期化型相変化光
記録媒体を概略的に示す断面図。
【図2】本発明の他の実施形態に係る無初期化型相変化
光記録媒体を概略的に示す断面図。
【図3】本発明のさらに他の実施形態に係る無初期化型
相変化光記録媒体を概略的に示す断面図。
【図4】相変化光記録媒体の製造に用いられるスパッタ
装置を概略的に示す図。
【図5】従来の相変化光記録媒体を概略的に示す断面
図。
【図6】光ディスクドライブ装置を概略的に示す図。
【図7】相変化光記録媒体への情報の記録・消去・再生
に必要なレーザ光のパワーを示すグラフ。
【符号の説明】
1-n…相変化光記録媒体 2…基板 3…半透明干渉層 4-n…誘電体膜 5…相変化記録膜 6…金属反射層 7…保護膜 8-n…結晶化誘起層 9…基台 10-n,11…バルブ 12…真空ターボポンプ 13-n…ターゲット 14-n…電極 15-n…シャッタ 16…RF電源 17…切替スイッチ 21…チャンバー 32…スピンドルモータ 33…光学ヘッド 34…リニアモータ 35…変調回路 36…入力装置 37…レーザドライバ 38…プリアンプ 39…2値化回路 40…復調回路 41…出力装置 43〜46…制御系

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相変化記録膜の初期結晶化を必要とする
    ことなく製造直後からオーバーライト記録が可能な無初
    期化型相変化光記録媒体であって、 光透過性の基板と、 前記基板の一方の主面上に形成され、光ビームを照射す
    ることにより可逆的に相変化して光学的特性に変化を生
    ずる相変化記録膜と、 前記相変化記録膜上に形成された反射層と、 前記相変化記録膜と接して配置され、光透過性を有しか
    つ結晶質の結晶化誘起層とを具備することを特徴とする
    無初期化型相変化光記録媒体。
  2. 【請求項2】 前記結晶化誘起層は、真空スパッタ法に
    よる成膜直後において結晶質の薄膜を形成する誘電体材
    料から実質的になることを特徴とする請求項1に記載の
    無初期化型相変化光記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記結晶化誘起層は酸化セリウムから実
    質的になることを特徴とする請求項1に記載の無初期化
    型相変化光記録媒体。
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