JP2000141643A - インクジェットヘッド - Google Patents

インクジェットヘッド

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JP2000141643A
JP2000141643A JP23667299A JP23667299A JP2000141643A JP 2000141643 A JP2000141643 A JP 2000141643A JP 23667299 A JP23667299 A JP 23667299A JP 23667299 A JP23667299 A JP 23667299A JP 2000141643 A JP2000141643 A JP 2000141643A
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渡邊  修
Kenji Tomita
健二 富田
Isaku Jinno
伊策 神野
良一 ▲高▼山
Ryoichi Takayama
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 圧電アクチュエータ21により圧力室3内の
インクを吐出させるようにしたインクジェットヘッドに
対して、振動板22や圧電素子23等を薄膜化してイン
クジェットヘッドを小型化しつつ、振動板22や圧電素
子23等にクラック等が生じるのを抑制してその生産性
を出来る限り向上させる。 【解決手段】 振動板22を1つ又は複数の圧力室3毎
に分割した状態で設けると共に、互いに電気的に接続す
る。また、振動板22の圧力室3に対応する部分を、圧
力室3と反対側へ凸状に湾曲させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェットプ
リンタに用いるインクジェットヘッドに関し、特に圧電
アクチュエータによりインクを吐出させる場合に該圧電
アクチュエータの振動板の構成を改良したものの技術分
野に属する。
【0002】
【従来の技術】近年、インクジェットプリンタが広く事
務所や家庭等にて使用されている。このインクジェット
プリンタに用いられるインクジェットヘッドには、近年
の低騒音化、高印字品位化等の要求のもと、いくつかの
方式が提案されているが、一般的には以下の2つの方式
に大別することができる。
【0003】すなわち、第1の方式は、流路やインク室
の一部を、圧電素子を有する圧電アクチュエータで形成
して圧力室とし、その圧電素子にパルス状の電圧を印加
して圧電アクチュエータを変形させることで、上記圧力
室をその容積が減少するように変形させ、これにより圧
力室内に圧力パルスを発生させ、この圧力パルスにより
圧力室に連通するノズル孔からインク滴を吐出させるも
のである。
【0004】次に、第2の方式は、流路内に発熱抵抗体
を配設しておき、この発熱抵抗体にパルス状の電圧を印
加して該発熱抵抗体を発熱させることにより、流路内の
インクを沸騰させて蒸気バブルを発生させ、この蒸気バ
ブルの圧力によりノズル孔からインク滴を吐出させるも
のである。
【0005】そして、本発明は、上記第1の方式のイン
クジェットヘッドに関するものであるため、この方式の
ものについてさらに詳しく説明する。図11〜図13
は、上記第1の方式のインクジェットヘッドの一例を示
し、このインクジェットヘッドは、インクを供給するた
めの供給口102aとインクを吐出するための吐出口1
02bとを有する複数の圧力室用凹部102が形成され
たヘッド本体101を備えている。このヘッド本体10
1の各凹部102は、一方向に所定間隔をあけて並べら
れている。
【0006】上記ヘッド本体101は、上記各凹部10
2の側壁部を構成する圧力室部品105と、該各凹部1
02の底壁部を構成しかつ複数の薄板を貼り合せてなる
インク流路部品106と、ノズル板113とで構成され
ている。上記インク流路部品106内には、上記各凹部
102の供給口102aにそれぞれ接続された供給用イ
ンク流路107と、各凹部102の吐出口102bにそ
れぞれ接続された吐出用インク流路108とが形成され
ている。上記各供給用インク流路107は、上記各凹部
102が並ぶ方向に延びるインク供給室110に接続さ
れ、このインク供給室110は、圧力室部品105及び
インク流路部品106に形成されかつ図外のインクタン
クと接続されるインク供給孔111に接続されている。
上記ノズル板113には、上記各吐出用インク流路10
8とそれぞれ接続されたノズル孔114が形成されてい
る。
【0007】上記ヘッド本体101の圧力室部品105
の上面には圧電アクチュエータ121が設けられてい
る。この圧電アクチュエータ121は、上記ヘッド本体
101の全ての凹部102を塞いで該凹部102と共に
圧力室103を構成する1つの平板状の振動板122を
有している。この振動板122は、後述の全圧電素子1
23に共通の共通電極としての役割をも果たしている。
また、圧電アクチュエータ121は、上記振動板122
の上面における圧力室103に対応する部分にそれぞれ
設けられた圧電素子123と、該各圧電素子123の上
面にそれぞれ設けられ、各圧電素子123に電圧を印加
するための個別電極124とを有している。
【0008】そして、上記共通電極としての振動板12
2と個別電極124との間にパルス状の電圧を印加する
と、圧電素子123がその厚み方向と垂直な幅方向に収
縮するのに対し、振動板122及び個別電極124は収
縮しないので、いわゆるバイメタル効果により振動板1
22の圧電素子123に対応する部分が圧力室3側へ凸
状に撓んで変形する。この撓み変形により圧力室3内に
圧力が生じ、この圧力で圧力室3内のインクが吐出口1
02b及び吐出用インク流路108を経由してノズル孔
114より外部へ吐出されることとなる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のよう
に圧電アクチュエータによりインクを吐出させるように
したインクジェットヘッドでは、近年、小型軽量化、低
駆動電圧化、低騒音化、低コスト化、インク吐出の制御
性の改善等への厳しい要求のもと、種々の改良等が試み
られているが、さらなる小型化、高性能化を目指して振
動板や圧電素子等を微細(小型精密)加工し易い薄膜と
して形成することが考えられる。
【0010】しかしながら、従来の圧電アクチュエータ
の形状、構造で振動板や圧電素子等を単に薄膜化するだ
けでは、インクジェットヘッドの製造時において、振動
板や圧電素子等にクラックが生じたり、膜剥離が発生し
たりする場合があり、インクジェットヘッドの生産性が
低下するという問題がある。このため、単に小型化する
のみならず、生産性が良好で製造が容易なインクジェッ
トヘッドの実現が要求されている。
【0011】本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので
あり、その目的とするところは、圧電アクチュエータに
より圧力室内のインクを吐出させるようにしたインクジ
ェットヘッドに対して、その圧電アクチュエータにおけ
る振動板の構成に工夫を凝らすことによって、振動板や
圧電素子等を薄膜化してインクジェットヘッドを小型化
しつつ、振動板や圧電素子等にクラック等が生じるのを
抑制してその生産性を出来る限り向上させようとするこ
とにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、この発明では、振動板を1つ又は複数の圧力室毎
に分割した状態で設けるか、又は振動板の圧力室に対応
する部分を、圧力室と反対側へ凸状に湾曲させるように
した。
【0013】具体的には、請求項1の発明では、インク
ジェットヘッドとして、インクを供給するための供給口
とインクを吐出するための吐出口とを有する複数の圧力
室用凹部が形成されたヘッド本体と、上記ヘッド本体の
各凹部を塞いで該凹部と共に圧力室を構成するように該
1つ又は複数の圧力室毎に分割された状態で設けられ、
互いに電気的に接続された振動板と、該各振動板の上記
圧力室と反対側において圧力室に対応する部分にそれぞ
れ設けられた圧電素子と、該各圧電素子の上記振動板と
反対側にそれぞれ設けられ、該振動板と共に各圧電素子
に電圧をそれぞれ印加するための個別電極とを有し、上
記振動板及び個別電極を介した圧電素子への電圧の印加
により該振動板を圧力室の容積が減少するように変形さ
せて、該圧力室内のインクを上記吐出口から吐出させる
圧電アクチュエータとを備えているものとする。
【0014】上記の構成により、振動板を1つ又は複数
の圧力室毎に分割した状態で設けることで、分割された
振動板同士が互いに内部応力や歪み等の影響を受けるこ
とはなく、1つの振動板でヘッド本体の全ての凹部を塞
ぐ場合よりも各振動板内に生じる内部応力を小さくする
ことができる。この結果、各振動板の圧力室と反対側に
設けられる圧電素子や個別電極内に生じる内部応力をも
小さくすることができる。したがって、振動板や圧電素
子等を薄膜で形成しても、インクジェットヘッドの製造
時に振動板や圧電素子等にクラックや膜剥離等が生じる
のを抑制することができ、生産性を向上させることがで
きる。また、インクジェットヘッドの使用時において
は、分割された振動板同士が互いに変形の影響を受ける
ことはなく、振動板の機械的強度の低下を抑制すること
ができ、製品寿命を向上させることができる。
【0015】請求項2の発明では、請求項1の発明にお
いて、振動板の圧力室に対応する部分が、圧力室と反対
側へ凸状に湾曲しているものとする。
【0016】すなわち、振動板と圧電素子との熱膨張係
数の差(振動板の方が大きい)等により振動板は圧電素
子よりも大きく収縮する一方、圧電素子は殆ど収縮しな
いので、容易に振動板を圧力室と反対側へ凸状に湾曲さ
せることができる。そして、振動板は収縮する際に圧電
素子より引張力を受ける一方、圧電素子は振動板より圧
縮力を受けるので、圧電素子には圧縮の内部応力が作用
することとなり、引張力に対して非常に弱い圧電素子に
クラック等が生じるのをより一層効果的に抑えることが
できる。さらに、インクジェットヘッドの使用時におい
ては、圧電素子が収縮することで振動板の圧力室に対応
する部分が、圧力室と反対側への凸量が小さくなるよう
に変形するため、圧電素子は振動板より引張力を受ける
が、最初に圧縮力が生じているので、これら引張力と圧
縮力とが相殺されて圧電素子に生じる応力は比較的小さ
くなる。また、小さい変形量でもインクの吐出力を、振
動板が平板状の場合や圧力室側へ凸状に湾曲している場
合よりも大きくすることができるので、変形量をそれ程
大きくしなくても済み、この点からも、振動板や圧電素
子の変形時の応力を小さくすることできる。
【0017】請求項3の発明では、インクジェットヘッ
ドとして、インクを供給するための供給口とインクを吐
出するための吐出口とを有する複数の圧力室用凹部が形
成されたヘッド本体と、上記ヘッド本体の各凹部を塞い
で該凹部と共に圧力室を構成するように設けられ、該圧
力室に対応する部分が圧力室と反対側へ凸状に湾曲した
振動板と、該振動板の圧力室と反対側において圧力室に
対応する部分にそれぞれ設けられた圧電素子と、該各圧
電素子の上記振動板と反対側にそれぞれ設けられ、該振
動板と共に各圧電素子に電圧をそれぞれ印加するための
個別電極とを有し、上記振動板及び個別電極を介した圧
電素子への電圧の印加により該振動板を圧力室の容積が
減少するように変形させて、該圧力室内のインクを上記
吐出口から吐出させる圧電アクチュエータとを備えてい
るものとする。
【0018】このことにより、振動板や圧電素子等を薄
膜化しても、上述の如く、圧電素子に圧縮の内部応力が
作用することで、インクジェットヘッドの製造時に、特
に圧電素子にクラック等が生じるのを抑制することがで
きると共に、インクジェットヘッドの使用時において
は、振動板や圧電素子の変形時の応力を小さくして、製
品寿命を向上させることができる。
【0019】請求項4の発明では、請求項2又は3の発
明において、振動板の圧力室に対応する部分における圧
力室と反対側への最大凸量が、0.05〜10μmに設
定されているものとする。
【0020】すなわち、圧力室と反対側への最大凸量
は、0.05μmよりも小さいと、インクジェットヘッ
ドの製造時及び使用時において振動板や圧電素子の不良
抑制効果が十分に得られない一方、10μmよりも大き
いと、却って製造時に振動板や圧電素子にクラック等が
生じ易くなるので、0.05〜10μmに設定してい
る。したがって、インクジェットヘッドの生産性を最大
限に高めることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて説明する。図1〜図3は、本発明の実施形態に
係るインクジェットヘッドを示し、このインクジェット
ヘッドは、インクを供給するための供給口2aとインク
を吐出するための吐出口2bとを有する複数の圧力室用
凹部2が形成されたヘッド本体1を備えている。このヘ
ッド本体1の各凹部2は、該ヘッド本体1の一外側面
(上面)に略矩形状に開口されていて、一方向に所定間
隔をあけて並べられている。尚、図3では、各凹部2
(後述のノズル孔14、振動板22、圧電素子23、個
別電極24等)は、煩雑となるのを避けるために3つし
か記載していないが、実際には、多数設けられている。
【0022】上記ヘッド本体1の各凹部2の側壁部は、
約200μm厚の感光性ガラス製の圧力室部品5で構成
され、各凹部2の底壁部は、この圧力室部品5に固着さ
れかつ複数のステンレス鋼薄板を貼り合せてなるインク
流路部品6で構成されている。このインク流路部品6内
には、上記各凹部2の供給口2aにそれぞれ接続された
供給用インク流路7と、上記各吐出口2bにそれぞれ接
続された吐出用インク流路8とが形成されている。上記
各供給用インク流路7は、上記各凹部2が並ぶ方向に延
びるインク供給室10に接続され、このインク供給室1
0は、上記圧力室部品5及びインク流路部品6に形成さ
れかつ図外のインクタンクと接続されるインク供給孔1
1に接続されている。上記インク流路部品6の圧力室部
品5と反対側面(下面)には、ポリイミド等の高分子樹
脂からなる約20μm厚のノズル板13が設けられ、こ
のノズル板13には、上記各吐出用インク流路8とそれ
ぞれ接続された直径約20μmのノズル孔14が形成さ
れている。この各ノズル孔14は、上記各凹部2の配列
方向に延びる一直線上に配置されている。
【0023】上記ヘッド本体1の圧力室部品5における
インク流路部品6と反対側面(上面)には、圧電アクチ
ュエータ21が設けられている。この圧電アクチュエー
タ21は、上記ヘッド本体1の各凹部2を塞いで該凹部
2と共に圧力室3を構成するように該1つの圧力室3毎
に分割された状態で設けられた1〜3μm厚のCr製振
動板22を有している。この各振動板22は、平面視で
圧力室3と略同じ略矩形状に形成されていると共に、配
線(図示せず)により互いに電気的に接続されて、後述
の全圧電素子23に共通の共通電極としての役割をも有
している。
【0024】また、上記圧電アクチュエータ21は、上
記各振動板22の上記圧力室3と反対側面(上面)にお
いて圧力室3に対応する部分にそれぞれ設けられかつチ
タン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる2〜5μm厚の
圧電素子23と、この各圧電素子23の上記振動板22
と反対側面(上面)にそれぞれ設けられ、該振動板22
と共に各圧電素子23に電圧をそれぞれ印加するための
0.1μm厚のPt製個別電極24とを有している。
【0025】上記各振動板22の圧力室3に対応する部
分は、圧力室3と反対側(上側)へ凸状に湾曲してい
る。つまり、各振動板22の圧力室3に対応する部分
は、振動板22の幅方向に沿って切断した断面及び長さ
方向に沿って切断した断面のいずれにおいても、略円弧
状をなして圧力室3と反対側へ突出している。この各振
動板22の湾曲に伴って各圧電素子23及び各個別電極
24も上側へ湾曲している。上記各振動板22の圧力室
3に対応する部分における圧力室3と反対側への最大凸
量(各振動板22の略中央部の凸量)は、0.05〜1
0μmに設定することが望ましい。これは、この最大凸
量が0.05μmよりも小さいと、後述の如くインクジ
ェットヘッドの製造時及び使用時において振動板22や
圧電素子23の不良抑制効果が十分に得られない一方、
10μmよりも大きいと、却って製造時に振動板22や
圧電素子23にクラック等が生じ易くなるからである。
尚、上記最大凸量のより好ましい範囲は、0.05〜5
μmである。
【0026】次に、上記インクジェットヘッドの製造方
法の概略手順を図4に基づいて説明する。尚、図4にお
いては、図1及び図2とインクジェットヘッドの上下関
係が逆になっている。
【0027】先ず、MgOの成膜基板41上全体にPt
膜42をスパッタ法により形成し(図4(a)参照)、
その後、このPt膜42上全体にPZT膜43をスパッ
タ法により形成する(図4(b)参照)。そして、この
PZT膜43上全体にCr膜44をスパッタ法により形
成する(図4(c)参照)。尚、上記スパッタ法とは、
高エネルギーの粒子を固体(ターゲット)に照射したと
きにターゲット構成原子がターゲット表面から放出され
る現象(スパッタという)を利用して薄膜形成を行う技
術であり、このスパッタ法には、電極の構造、スパッタ
する粒子の発生方法により高周波スパッタやDCスパッ
タ等の多数の方式があるが、高周波(周波数13.56
MHz)放電を用いるスパッタ法を採用すれば、絶縁物
のターゲット表面での正電位の帯電が起こらないため、
絶縁物のターゲットでもスパッタすることができて望ま
しい。
【0028】ところで、上記スパッタ法によりCr膜4
4を形成する際、各種スパッタ条件のうち、成膜基板4
1の温度、スパッタガス圧、スパッタパワー、TS間隔
(ターゲット・基板間距離)等のパラメータを変化させ
る(特にスパッタガス圧を制御することが望ましい)こ
とにより、Cr膜44の膜応力を制御することが可能で
あり、このようにスパッタガス圧等を制御してCr膜4
4の初期応力を圧縮力にすることが望ましい。例えば、
高周波スパッタ装置を用いて、ターゲット径6インチ、
スパッタパワー300Wとし、スパッタアルゴンガス圧
を2mTorr(0.27Pa)に設定することで、C
r膜44の初期応力を圧縮力にすることができる。尚、
上記Cr膜44の膜応力の値については、ヤング率、ポ
アソン比が既知の薄板基板(18mm×4mmで0.1
mm厚)上にCrの薄膜を形成してその基板のそり量を
測定することにより、ベンディングビーム法関係式から
基板に形成した薄膜の膜応力を算出しておくことで判
る。また、上記基板上に形成した薄膜が凹になるか凸に
なるかで応力が圧縮力か引張力かが判別できる。
【0029】次いで、上記Cr膜44の上面に、ヘッド
本体1の圧力室部品5を固着する(図4(d)参照)。
その後、上記成膜基板41を熱燐酸やKOH等で溶融・
除去すると共に、上記圧力室部品5上に、予め一体化し
たインク流路部品6及びノズル板13を固着する(図4
(e)参照)。このように成膜基板41を除去すると、
PZT膜43及びCr膜44の熱膨張係数の差(Cr膜
44の方が大きい)により、PZT膜43及びCr膜4
4の圧力室3に対応する部分(圧力室部品5により拘束
されない部分)が、圧力室3と反対側へ凸状に湾曲する
(尚、Pt膜42は、厚みがPZT膜43及びCr膜4
4よりもかなり薄いので、湾曲方向に殆ど影響しな
い)。つまり、熱膨張係数の大きいCr膜44がPZT
膜43よりも大きく収縮する一方、PZT膜43は殆ど
収縮しないので、PZT膜43側が凸側となるように曲
がる。これは、FeとAlとからなるバイメタルを加熱
すると、熱膨張係数が大きいAlがFeよりも大きく伸
長してAl側が凸側となるように曲がることと同様であ
る。そして、Cr膜44は収縮時にPZT膜43より引
張力を受ける一方、PZT膜43はCr膜44より圧縮
力を受けることになる。尚、上記のようにスパッタガス
圧等を制御することによりCr膜44に初期圧縮応力を
適切に付与すれば、振動板22が大きく曲がり過ぎるの
を防止することができ、最大凸量を0.05〜10μm
に設定することができる。
【0030】続いて、上記Pt膜42、PZT膜43及
びCr膜44をイオンミリング法や反応性イオンエッチ
ング法等のドライエッチング法にて1つの圧力室3毎に
分割することで、個別電極24、圧電素子23及び振動
板22をそれぞれ形成する(図4(f)参照)。このと
き、分割された振動板22同士が互いに内部応力や歪み
等の影響を受けることはなくなり、応力が緩和されて各
振動板22内に生じる内部応力は1つの振動板22でヘ
ッド本体1の全ての凹部2を塞ぐ場合よりも小さくな
る。この結果、振動板22の圧力室3と反対側に設けら
れる圧電素子23や個別電極24内に生じる内部応力を
も小さくすることができる。尚、上記イオンミリング法
では、反応性等の面から、アルゴンイオンを使用するこ
とが望ましく、反応性イオンエッチング法では、同じく
反応性等の面から、O2 、CF4 、CCl4 を使用する
ことが望ましい。
【0031】次いで、図示は省略するが、各振動板22
及び個別電極24への配線や他の必要な処理を行うこと
で、インクジェットヘッドが完成する。
【0032】このように、振動板22を1つの圧力室3
毎に分割した状態で設けたので、上述の如く振動板22
や圧電素子23内に生じる内部応力が小さくなり、振動
板22や圧電素子23等を薄膜で形成しても、インクジ
ェットヘッドの製造時に振動板22や圧電素子23等に
クラックや膜剥離が生じるのを抑制することができる。
また、振動板22の圧力室3に対応する部分を、圧力室
3と反対側へ凸状に湾曲させたので、引張力に対して非
常に弱い圧電素子23には圧縮力が作用し、特に圧電素
子23におけるクラック等の発生をより一層効果的に抑
制することができる。よって、インクジェットヘッドを
小型化しつつ、その生産性を向上させることができる。
【0033】次に、上記インクジェットヘッドの動作に
ついて説明すると、上記振動板22及び個別電極24間
への電圧の印加により振動板22の圧力室3に対応する
部分を圧力室3の容積が減少するように変形させること
で、該圧力室3内のインクを吐出口2bから吐出させ
る。すなわち、振動板22と個別電極24とを介して圧
電素子23にパルス状の電圧を印加すると、このパルス
電圧の立ち上がりにより圧電素子23がその厚み方向と
垂直な幅方向に収縮するのに対し、振動板22は収縮し
ないので、図5(b)に示すように、振動板22の圧力
室3に対応する部分が圧力室3側へ(凸量が小さくなる
側へ)変位するように変形する。この変形により圧力室
3内に圧力が生じ、この圧力で圧力室3内のインクのう
ちの所定量が上記吐出口2b及び吐出用インク流路8を
経由してノズル孔14より外部(印刷する紙面上)へ吐
出されて、紙面にドット状に付着することとなる。そし
て、上記パルス電圧の立ち下がりにより圧電素子23が
幅方向に伸長して振動板22は元の状態(図5(a)参
照)に復帰し、このとき、圧力室3内には上記インク供
給室10より供給用インク流路7及び供給口2aを介し
てインクが充填される。尚、1色のインクだけでなく、
例えばブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各イ
ンクを互いに異なるノズル孔14からそれぞれ吐出させ
るようにして、カラー印刷を行うようにすることもでき
る。
【0034】上記のように振動板22が変形する際、圧
電素子23は、振動板22と共に変形して振動板22よ
り引張力を受けるが、最初から圧力室3と反対側へ凸状
に湾曲して圧縮力が生じているので、これら引張力と圧
縮力とが相殺されて圧電素子23に生じる応力は比較的
小さくなる。すなわち、図6(a)に示すように、最初
から振動板22及び圧電素子23を平板状にしたり、図
7(a)に示すように、最初から振動板22及び圧電素
子23を圧力室3側へ凸状に湾曲させたりすると、変形
時(図6(b)及び図7(b)参照)において圧電素子
23に生じる引張力が大きくなり、引張力に対して非常
に弱い圧電素子23にクラック等が生じ易くなる。ま
た、小さい変形量でもインクの吐出力を、振動板22が
平板状の場合や圧力室3側へ凸状に湾曲している場合よ
りも大きくすることができるので、変形量をそれ程大き
くしなくても済む。さらに、分割された振動板22同士
が互いに変形の影響を受けることはなく、振動板22の
機械的強度の低下を抑制することができる。よって、イ
ンクジェットヘッドの使用時においては、振動板22や
圧電素子23の変形時の応力を小さくして、製品寿命を
向上させることができる。
【0035】尚、上記実施形態では、成膜基板41を用
いて該成膜基板41上にPt膜42、PZT膜43及び
Cr膜44をスパッタ法により順次形成したが、感光性
ガラスからなる圧力室部品5上に上記各膜を直接スパッ
タすることにより成膜基板41を用いないでもインクジ
ェットヘッドを製造することができる。この製造方法を
図8により説明すると、先ず、圧力室部品5上全体に、
Cr膜44を形成する(図8(a)参照)。このとき、
Cr膜44の初期応力を圧縮力にする場合には、上記実
施形態のようにスパッタガス圧等を制御してもよく、予
め成膜基板41に引張力を加えながらCr膜44を形成
した後に成膜基板41への引張力を取り去るようにして
もよい。次いで、圧力室部品5の下側からマスク50を
介して紫外線露光機で圧力室3に相当する部分を露光す
る(図8(b)参照)。そして、下地処理等をしてか
ら、上記Cr膜44上全体にPZT膜43を形成し(図
8(c)参照)、その後、このPZT膜43上全体にP
t膜42を形成する(図8(d)参照)。続いて、3%
HF液で圧力室部品5の上記露光部をエッチング除去す
ると共に、各膜の不必要部をもエッチング除去して1つ
の圧力室3毎に分割することで、振動板22、圧電素子
23及び個別電極24をそれぞれ形成する(図8(e)
参照)。そして、圧力室部品5の下面に、予め一体化し
たインク流路部品6及びノズル板13を固着する(図8
(f)参照)ことで、インクジェットヘッドが完成す
る。この製造方法においても、圧力室部品5の露光部を
除去すると、上記実施形態と同様に、Pt膜42、PZ
T膜43及びCr膜44の圧力室3に対応する部分を、
圧力室3と反対側へ凸状に湾曲させることができ、しか
も、振動板22を1つの圧力室3毎に分割した状態で設
けるので、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0036】また、上記実施形態では、ドライエッチン
グ法によりPt膜42、PZT膜43及びCr膜44を
1つの圧力室3毎に分割することで、個別電極24、圧
電素子23及び振動板22をそれぞれ形成したが、膜を
残したくない部分に予めレジストを塗布しておいてスパ
ッタするリフトオフ法により分割するようにすることも
できる。
【0037】さらに、上記実施形態では、振動板22を
1つの圧力室3毎に分割した状態で設けたが、振動板2
2の圧力室3に対応する部分を圧力室3と反対側へ凸状
に湾曲させれば、図9に示すように、従来のような1つ
の振動板22でヘッド本体1の全ての凹部2を塞ぐよう
にしてもよい。このようにしても、上記実施形態と同様
に、特に圧電素子23にクラック等が生じるのを抑制す
ることができ、延いては、振動板22や個別電極24に
おけるクラック発生をも抑制することができる。しか
も、インクジェットヘッドの使用時においては、振動板
22や圧電素子23の変形時の応力を小さくして、製品
寿命を向上させることができる。また、振動板22を1
つの圧力室3毎に分割した状態で設けないで複数の圧力
室3毎(例えばカラー印刷を行う場合には、同色のイン
クが充填される圧力室3毎)に分割した状態で設けるよ
うにしてもよい。さらに、振動板22を1つ又は複数の
圧力室3毎に完全に分割した状態で設けないで、図10
に示すように、分割された振動板22同士を、該振動板
22よりも薄い(最も薄い部分の厚みを0.2μm程度
にする)接続部22aで互いに接続するようにしてもよ
い(接続部22aは1つの振動板22の圧電素子23側
の面を凹溝状に削ることで振動板22と一体形成するの
が好ましい)。こうすれば、振動板22同士を互いに電
気的に接続できて配線が不要となるとなると共に、機械
的及び物理的には分割したのと略同じ状態にすることが
できる。
【0038】一方、振動板22を1つ又は複数の圧力室
3毎に分割した状態で設けさえすれば、必ずしも振動板
22の圧力室3に対応する部分を圧力室3と反対側へ凸
状に湾曲させなくてもよく、平板状にしたり(図6
(a)参照)圧力室3側へ凸状に湾曲させたり(図7
(a)参照)してもよい。このようにしても、インクジ
ェットヘッドの製造時や使用時に振動板22や圧電素子
23の不良発生を抑制することができる。
【0039】加えて、上記実施形態では、ヘッド本体1
の各凹部2の開口形状及び圧電アクチュエータ21の圧
電素子23等を矩形状としたが、長円形状にしてもよ
く、その他の形状であってもよい。
【0040】また、他の種々の変形が可能であり、例え
ば、圧電アクチュエータ21の振動板22、圧電素子2
3、個別電極24等は、上記実施形態と異なる材料や厚
みのものを使用してもよく(例えば振動板22をNi製
やTi製にする)、他の製造方法により形成してもよ
い。そして、ヘッド本体1の圧力室部品5、インク流路
部品6及びノズル板13も、上記実施形態と異なる材料
や厚みのものを使用することができる。
【0041】さらに、振動板22の湾曲形状は、圧力室
3と反対側へ凸状であればどのような形状であってもよ
い。但し、振動板22において少なくとも圧電素子23
の伸長方向(上記実施形態では幅方向)に沿って切断し
た断面が、上記実施形態のように略円弧状であることが
望ましい。
【0042】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のインクジ
ェットヘッドによると、振動板を1つ又は複数の圧力室
毎に分割した状態で設けるか、又は振動板の圧力室に対
応する部分を圧力室と反対側へ凸状に湾曲させたことに
より、振動板や圧電素子を薄膜化しても、インクジェッ
トヘッドの製造時に振動板や圧電素子にクラック等が生
じるのを抑制することができ、インクジェットヘッドを
小型化しつつ、その生産性を可及的に向上させることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図3のI−I線断面図である。
【図2】図3のII−II線断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るインクジェットヘッド
を示す平面図である。
【図4】インクジェットヘッドの製造方法を示す概略説
明図である。
【図5】振動板の非変形状態と変形状態とを比較して示
す要部拡大図である。
【図6】振動板が平板状の場合における図5相当図であ
る。
【図7】振動板が圧力室側へ凸状に湾曲した場合におけ
る図5相当図である。
【図8】インクジェットヘッドの他の製造方法を示す概
略説明図である。
【図9】インクジェットヘッドの他の形態を示す図1相
当図である。
【図10】インクジェットヘッドのさらに他の形態を示
す図1相当図である。
【図11】図13のXI−XI線断面図である。
【図12】図13のXII−XII線断面図である。
【図13】インクジェットヘッドの従来例を示す平面図
である。
【符号の説明】
1 ヘッド本体 2 圧力室用凹部 2a 供給口 2b 吐出口 3 圧力室 21 圧電アクチュエータ 22 振動板 23 圧電素子 24 個別電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神野 伊策 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 ▲高▼山 良一 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクを供給するための供給口とインク
    を吐出するための吐出口とを有する複数の圧力室用凹部
    が形成されたヘッド本体と、 上記ヘッド本体の各凹部を塞いで該凹部と共に圧力室を
    構成するように該1つ又は複数の圧力室毎に分割された
    状態で設けられ、互いに電気的に接続された振動板と、
    該各振動板の上記圧力室と反対側において圧力室に対応
    する部分にそれぞれ設けられた圧電素子と、該各圧電素
    子の上記振動板と反対側にそれぞれ設けられ、該振動板
    と共に各圧電素子に電圧をそれぞれ印加するための個別
    電極とを有し、上記振動板及び個別電極を介した圧電素
    子への電圧の印加により該振動板を圧力室の容積が減少
    するように変形させて、該圧力室内のインクを上記吐出
    口から吐出させる圧電アクチュエータとを備えているこ
    とを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のインクジェットヘッドに
    おいて、 振動板の圧力室に対応する部分が、圧力室と反対側へ凸
    状に湾曲していることを特徴とするインクジェットヘッ
    ド。
  3. 【請求項3】 インクを供給するための供給口とインク
    を吐出するための吐出口とを有する複数の圧力室用凹部
    が形成されたヘッド本体と、 上記ヘッド本体の各凹部を塞いで該凹部と共に圧力室を
    構成するように設けられ、該圧力室に対応する部分が圧
    力室と反対側へ凸状に湾曲した振動板と、該振動板の圧
    力室と反対側において圧力室に対応する部分にそれぞれ
    設けられた圧電素子と、該各圧電素子の上記振動板と反
    対側にそれぞれ設けられ、該振動板と共に各圧電素子に
    電圧をそれぞれ印加するための個別電極とを有し、上記
    振動板及び個別電極を介した圧電素子への電圧の印加に
    より該振動板を圧力室の容積が減少するように変形させ
    て、該圧力室内のインクを上記吐出口から吐出させる圧
    電アクチュエータとを備えていることを特徴とするイン
    クジェットヘッド。
  4. 【請求項4】 請求項2又は3記載のインクジェットヘ
    ッドにおいて、 振動板の圧力室に対応する部分における圧力室と反対側
    への最大凸量が、0.05〜10μmに設定されている
    ことを特徴とするインクジェットヘッド。
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