JP2000133316A - リチウム二次電池及び電極板の作製方法 - Google Patents
リチウム二次電池及び電極板の作製方法Info
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Abstract
る電極活物質層の厚み及び密度のばらつきを低減するこ
とによって、内部抵抗を低減せしめ、サイクル特性を改
善したリチウム二次電池とそれに用いる電極板の作製方
法を提供する。 【解決手段】 正極板2と負極板3とをセパレータ4を
介して捲回してなる内部電極体1並びに有機電解液を用
いたリチウム二次電池である。正極板2における正極活
物質層の厚み相対標準偏差を5%以下及び/又は密度相
対標準偏差を5%以下とし、及び/又は、負極板3にお
ける負極活物質層の厚み相対標準偏差を3%以下及び/
又は密度相対標準偏差を3%以下とした。
Description
成する正極板と負極板のそれぞれにおける電極活物質層
の厚み及び密度のばらつきを低減することによって、内
部抵抗を低減せしめ、サイクル特性を改善したリチウム
二次電池とそれに用いる電極板の作製方法を提供する。
して、二酸化炭素その他有害物質を含む燃焼機関からの
排気ガスの排出規制や省エネルギーが切に望まれる中、
自動車業界ではガソリン等の化石燃料を使用する従来の
自動車に替えて、電気自動車(EV)やハイブリッド電
気自動車(HEV)の市場導入を促進する動きが活発に
なっている。
しては、エネルギー密度の大きいリチウム二次電池が有
望視されているが、モータ駆動のためには、100V以
上、好ましくは200V以上の電圧が必要とされる。し
かしながら、電池の電圧は電池を構成する材料により決
まっており、リチウム二次電池の電圧は開回路電圧で高
々4.2V程度であって、実使用における使用電圧は更
に小さなものとなる。このため、100V以上といった
所定の電圧を得るためには、多くの電池を直列に接続
し、組電池として用いる必要がある。
走行性能等を得るために、リチウム二次電池には、大容
量、高出力といった特性が要求される。例えば、HEV
では、加速時にはモータが出力をアシストするモードと
なっているため、100A以上の電流が流れることが頻
繁に起こり得、また、500Aもの電流が短時間ではあ
っても流れる場合がある。従って、直列に接続された電
池には、同じ大きさの電流が流れることとなる。
いては、単電池当たり、比較的大きな電池容量を必要と
し、このため電池反応を行う場である内部電極体の電極
面積が必然的に大きくなる。ここで、仮に内部電極体に
電流集中が起こった場合には、局所的な発熱や電極板
(正極板と負極板の両者を指す。以下同様。)の膨張収
縮が起こり、充放電サイクル特性(以下、「サイクル特
性」という。)が低下する問題や、この発熱によって電
解液が蒸発し、電池内圧が上昇することで電池が破裂す
る等、種々の問題を生ずることとなる。
の大きな内部電極体における電流集中をなくし、電池反
応を均一に行い、サイクル特性の低下を防止するために
は、電極活物質(正極活物質と負極活物質の両者を指
す。以下同様。)層の厚みと電極活物質層の密度という
2つのパラメータを制御することが重要であると考えら
れる。つまり、電極活物質層の厚みにばらつきがある
と、電極板を巻き取る際に電極活物質層の厚い部分は堅
く(強く)巻かれて抵抗が小さくなるが、電極活物質層
の薄い部分では緩く巻かれて、極端な場合には、対極と
の間に隙間を生じる等して電池反応が起こり難くなり、
抵抗が大きくなると考えられる。
は、構成粒子どうしの接触が良好となり、抵抗が小さく
なるが、密度が小さい部分では粒子どうしの接触が乏し
くなって高抵抗となると考えられる。そして、このよう
な電極活物質層の厚みと密度のばらつきは、電極板が大
面積となるほど発生し易くなり、そのために前記電流集
中等の問題を生じ易くなる。
は、電極面積の小さい小容量電池が主流であったため
に、電極活物質層の面内での厚みや密度のばらつきが、
電池特性へ与える影響は大きなものではなく、しかも、
小型の電子機器等の電源として用いられていたために大
電流の放電を、多くの場合、必要としていなかったこと
から、電極活物質層における厚みや密度のばらつきが、
大電流放電を行った場合に、サイクル特性へ与える影響
については殆ど分かっていなかった。さらに、このよう
な状況の下、EVやHEV等用の大容量電池に用いられ
る大面積の電極板について、電極活物質層の面内での厚
みや密度のばらつきを減少させる有効な電極板の作製方
法についても分かっていなかった。
技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的と
するところは、電極活物質層の厚み及び密度のばらつき
を抑制する電極板の作製方法を開発し、更に、許容され
る電極活物質層の厚み及び密度のばらつきを規定するこ
とにより、内部抵抗が小さく、大電流でのサイクル特性
に優れたリチウム二次電池を提供することにある。
極板とをセパレータを介して捲回してなる内部電極体並
びに有機電解液を用いたリチウム二次電池であって、当
該正極板における正極活物質層の厚み相対標準偏差が5
%以下及び/又は密度相対標準偏差が5%以下であり、
及び/又は、当該負極板における負極活物質層の厚み相
対標準偏差が3%以下及び/又は密度相対標準偏差が3
%以下であることを特徴とするリチウム二次電池、が提
供される。
は、正極活物質としてLi及びMnを主成分とする酸化
物を用い、及び/又は負極活物質として高黒鉛化炭素繊
維を用いることが好ましい。なお、本発明は、正極板及
び負極板における電極面積が1000cm2以上のリチ
ウム二次電池に好適に採用され、その好ましい用途とし
ては、電気自動車又はハイブリッド電気自動車のモータ
駆動用等電源が挙げられ、従って、電池容量は2Ah以
上あることが好ましい。
ウム二次電池を作製するための電極板の好適な作製方法
も提供される。すなわち、本発明によれば、正極板と負
極板とをセパレータを介して捲回してなる内部電極体並
びに有機電解液を用いたリチウム二次電池に用いられる
電極板の作製方法であって、金属箔表面へ電極活物質を
塗工する一次成形後に、複数回の圧力印加を行う二次成
形を行うことにより、当該正極板及び/又は当該負極板
を作製することを特徴とする電極板の作製方法、が提供
される。
成形後の正極活物質層厚みと負極活物質層厚みをそれぞ
れt1(μm)、t3(μm)とし、二次成形後の正極活
物質層厚みと負極活物質層厚みをそれぞれt2(μ
m)、t4(μm)としたとき、t2/t1値を0.8以
下及び/又はt4/t3値を0.91以下とし、及び/又
は、一次成形後の正極活物質層と負極活物質層の密度を
それぞれρ1(g/cm3)とρ3(g/cm3)とし、二
次成形後の正極活物質層と負極活物質層の密度をそれぞ
れρ2(g/cm3)とρ4(g/cm3)したとき、ρ2
/ρ1値を1.3以上及び/又はρ4/ρ3値を1.1以
上とすることが好ましい。
当たりの厚み圧縮比は、好適には、正極板の作製におい
ては0.8×(t1−t2)/t1以下及び/又は負極板
の作製においては0.8×(t3−t4)/t3以下とさ
れ、及び/又は、二次成形時における圧力印加1回当た
りの密度増加比は、好適には、正極板の作製においては
0.7×(ρ2−ρ1)/ρ1以下及び/又は負極板の作
製においては0.7×(ρ4−ρ3)/ρ3以下とされ
る。
≧2)行う場合には、任意のk+1回目(1≦k≦n−
1)における電極活物質層の厚み圧縮比をk回目の厚み
圧縮比以下とし、及び/又は、任意のk+1回目(1≦
k≦n−1)における電極活物質層の密度増加比を、k
回目の密度増加比以下として正極板及び/又は負極板を
成形することが好ましい。
方法においては、二次成形における圧力印加をロールプ
レスにより行うことが好ましく、正極活物質としてはL
i及びMnを主成分とする酸化物が、及び/又は負極活
物質としては高黒鉛化炭素繊維が、それぞれ好適に用い
られる。なお、このような電極板の作製方法は、正極板
及び負極板における電極面積が、それぞれ1000cm
2以上の場合に好適に採用される。
いて説明するが、本発明が以下の実施の形態に限定され
るものでないことはいうまでもない。本発明のリチウム
二次電池(以下、「電池」という。)は、図1の斜視図
に示すように、正極板2と負極板3とをセパレータ4を
介して捲回することで内部電極体1が成形され、また、
電解液としては非水電解液が用いられ、これらをその他
の必要部材と共に電池ケースに収容して構成される。こ
こで、電極板2・3を巻き取る際に、超音波溶接等の手
段により、電極板2・3のそれぞれに集電用のタブ5が
取り付けられる。
ける正極活物質層の厚み相対標準偏差は5%以下及び/
又は密度相対標準偏差は5%以下とされ、及び/又は、
負極板3における負極活物質層の厚み相対標準偏差は3
%以下及び/又は密度相対標準偏差は3%以下とされ
る。電極活物質層の厚み相対標準偏差が小さいことは、
電極活物質層の厚みのばらつきが小さいことを意味する
ので、このような条件を満足する電極板2・3を用いた
場合には、内部電極体1の作製時に、電極板2・3に掛
かる圧力の均一化が図られ、部分的な電流集中が回避さ
れる。また電極反応が均一化され、内部電極体1の抵抗
低減が図られる。更にこのような特性に起因して、後述
する実施例にも示すように、サイクル特性に優れたリチ
ウム二次電池が得られる。
が小さいことは、電極活物質層の密度のばらつきが小さ
く、組織が均一であることを意味するので、電極板2・
3が上述した条件を満足する場合には、電極活物質層の
粒子構造が均質化されて、電極板2・3そのものの抵抗
が小さくなると共に、そのばらつき幅が小さくなる。そ
の結果、後述する実施例に示すように、サイクル特性に
優れるリチウム二次電池が得られるようになる。従っ
て、前述した厚み相対標準偏差の好適な範囲と、この密
度相対標準偏差の好適な範囲とを、同時に満足する電極
板2・3を、同時に用いることが最も望ましい。なお、
ここでの密度とは、後述する実施例に示すように、電極
板から打ち抜かれた円板の形状と重量から算出された密
度で代表される見掛けの密度を示す。
度相対標準偏差を有する電極板2・3を用いたリチウム
二次電池においては、電極板2・3の作製方法に関わら
ず、内部抵抗の低減やサイクル特性の向上といった効果
が、電極板2・3そのものの有する厚みばらつきや密度
ばらつきの特性によって発現すると考えられる。従っ
て、以下に説明する電極板2・3の作製方法は、このよ
うな特性を有する電極板2・3を作製する好適な方法の
一実施形態を示すものであって、電極板2・3の作製方
法を限定するものではないことが理解されるべきであ
る。
(集電体)とし、この金属箔の両面に正極活物質層を形
成した構造を有している。金属箔の材料としては、一般
的にアルミニウムが用いられるが、チタン箔を用いるこ
ともできる。また、正極活物質としては、一般的にコバ
ルト酸リチウム(LiCoO2)やニッケル酸リチウム
(LiNiO2)あるいはマンガン酸リチウム(LiM
n2O4)等のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられる
が、本発明においては、LiとMnを主成分とする立方
晶スピネル構造を有するLiMn2O4が特に好適に用い
られ、これにより電池の内部抵抗の低減が図られる。
るために、アセチレンブラックやグラファイト粉末等の
カーボン粉末を導電補助材として正極活物質に添加、混
合することも好ましく、本発明における正極活物質層
は、好適には、所定量のアセチレンブラックを添加した
正極活物質から形成される。なお、化学量論組成LiM
n2O4は例示に過ぎず、結晶構造を維持できる範囲で、
陽イオンが他の元素に置換され、あるいは酸素イオンが
欠損等しても構わない。
を溶解した溶媒に添加して均一なスラリーを作製し、こ
のスラリーを金属箔の両面に塗布することで、正極活物
質層の形成された正極板2を作製するが、ここで本発明
においては、金属箔表面へ正極活物質を塗工する一次成
形を行った後に、複数回の圧力印加を行う二次成形を行
う。
のスラリーを連続的に金属箔表面へ塗布し、乾燥する塗
工処理を金属箔の両面について行う工程をいい、リバー
スロールコータ法等が好適に用いられる。また、「二次
成形」とは、一次成形後の正極板に、その厚み方向に少
なくとも複数回ほど圧力を印加する工程をいい、一次成
形により形成された正極活物質層の密度の増大と、厚み
と密度のばらつきを減少させて均一性を向上させること
を目的とする。この二次成形の方法としては、連続的に
圧力印加を行うことができるロールプレス法が好適に用
いられる。なお、本願において「正極板2」もしくは
「電極板2」と記す場合は、この二次成形を終了した正
極板を指す。
ボンやハードカーボンといったアモルファス系炭素質材
料や、人造黒鉛や天然黒鉛等の高黒鉛化炭素材料が用い
られる。これらの各種の炭素材料の粉末形状について特
に制限はないが、本発明においては、高リチウム容量の
高黒鉛化炭素繊維が好適に用いられ、前述した正極板2
の作製方法と同様の方法により、すなわち、負極活物質
のスラリーを作製し、一次成形と二次成形を経て負極板
3が作製される。但し、アセチレンブラック等の導電補
助材は必要に応じて添加すればよく、通常は添加されな
い。なお、正極板2の定義と同様に、本願における「負
極板3」もしくは「電極板3」は二次成型を終了した負
極板を指す。
法においては、一次成形後の正極活物質層厚み(片面塗
工厚みを指し、少なくとも複数箇所において測定した平
均値で示される。以下、負極活物質層厚みについても同
様であり、二次成形後の場合についても同様である。)
と負極活物質層厚みをそれぞれt1(μm)とt3(μ
m)とし、二次成形後の正極活物質層厚みと負極活物質
層厚みをそれぞれt2(μm)、t4(μm)としたと
き、後述する実施例に示されるように、二次成形の前後
における厚み圧縮比、すなわちt2/t1値を0.8以下
とし、及び/又はt4/t3値を0.91以下とすること
が好ましい。このような条件を満足する一次成形と二次
成形を行うことにより、電極活物質層厚みが均一化さ
れ、こうして内部電極体1の作製時の電極板2・3に掛
かる圧力の均一化による電極反応の均一化が図られると
共に、内部電極体の抵抗低減が図られる。
当たりの厚み圧縮比は、好適には、正極板2の作製にお
いては0.8×(t1−t2)/t1以下とされ、及び/
又は負極板3の作製においては0.8×(t3−t4)/
t3以下とされる。更に、二次成形時の圧力印加をn回
(但し、n≧2)行う場合には、任意のk+1回目(但
し、1≦k≦n−1)における電極活物質層の厚み圧縮
比を、k回目の厚み圧縮比以下として正極板2及び/又
は負極板3を成形することが好ましい。このように、複
数回に分けて徐々に圧縮を行うことにより、電極活物質
層が徐々に変形し、電極活物質層厚みの均一性が確保さ
れる、なお、1回の圧力印加により二次成形を行おうと
すると、必然的に大きな印加圧力を必要とすることとな
るが、一次成形後の電極活物質層における厚みや密度の
不均一な部分に大きな圧力が加えられた場合には、電極
板における金属箔の破損や電極板への皺の発生を招くお
それがあり、好ましくない。
を電極活物質層の厚みの面から規定したものであるが、
他方、一次成形後の正極活物質層と負極活物質層の密度
(少なくとも複数箇所において測定した値の平均値で示
される。以下、二次成形後の場合についても同様とす
る。)をそれぞれρ1(g/cm3)とρ3(g/cm3)
とし、二次成形後の正極活物質層と負極活物質層の密度
をそれぞれρ2(g/cm3)とρ4(g/cm3)したと
き、二次成形前後における密度増加比、すなわちρ2/
ρ1値を1.3以上とし、及び/又はρ4/ρ3値を1.
1以上とすることが好ましい。このような密度増加比の
条件を満足する一次成形と二次成形を行うことにより、
電極活物質層が均質化されて抵抗分布の均一化が図ら
れ、電流集中を回避することが可能となる。また、電極
板2・3自体の抵抗、すなわち内部電極体1の内部抵抗
の低減が図られる。
当たりの密度増加比は、好適には、正極板の作製におい
ては0.7×(ρ2−ρ1)/ρ1以下とされ、及び/又
は負極板の作製においては0.7×(ρ4−ρ3)/ρ3
以下とされる。また、二次成形時の圧力印加をn回(但
し、n≧2)行う場合には、任意のk+1回目(但し、
1≦k≦n−1)における電極活物質層の密度増加比
を、k回目の密度増加比以下として正極板及び/又は負
極板を成形することが好ましい。このような複数回の圧
力印加により二次成形を行う理由は、前述した厚み圧縮
比の規定の際の説明と同様の理由による。
電極活物質の厚み圧縮比と密度増加比についての条件が
同時に満足されるように、一次成形と二次成形を行うこ
とが好ましい。また、本発明の電極板の作製方法が適用
される電極板の大きさについては、特に制限はないが、
電極板の電極面積が、それぞれ1000cm2以上の場
合に好適に採用され、電極板及び内部電極体の抵抗低減
の効果が顕著に現れる。
説明に戻ることとする。セパレータ4としては、マイク
ロポアを有するリチウムイオン透過性のポリエチレンフ
ィルム(PEフィルム)を、多孔性のリチウムイオン透
過性のポリプロピレンフィルム(PPフィルム)で挟ん
だ三層構造としたものが好適に用いられる。これは、内
部電極体1の温度が上昇した場合に、PEフィルムが約
130℃で軟化してマイクロポアが潰れ、リチウムイオ
ンの移動すなわち電池反応を抑制する安全機構を兼ねた
ものである。そして、このPEフィルムをより軟化温度
の高いPPフィルムで挟持することによって、PEフィ
ルムが軟化した場合においても、PPフィルムが形状を
保持して正極板2と負極板3の接触・短絡を防止し、電
池反応の確実な抑制と安全性の確保が可能となる。
ネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジ
メチルカーボネート(DMC)といった炭酸エステル系
のもの、プロピレンカーボネート(PC)やγ−ブチロ
ラクトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等の有
機溶媒の単独溶媒もしくは混合溶媒に、電解質としての
LiPF6やLiBF4等のリチウム錯体フッ素化合物、
あるいはLiClO4といったリチウムハロゲン化物等
を1種類もしくは2種類以上を溶解した非水系の有機電
解液が好適に用いられる。
部電極体1を作製し、電池ケースへ内部電極体1を挿入
し、更に、電解液を内部電極体1に含浸させ、最後に電
池ケースを封止することで電池が作製される。こうし
て、作製された電池は、内部電極体における抵抗分布が
小さく、従って電流集中が起こり難いのみならず、内部
抵抗が小さいという特性を有する。また、このような特
性に起因して良好なサイクル特性が得られる。
明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでな
いことはいうまでもない。
正極活物質としてLiMn2O4スピネル粉末を用い、こ
れに所定量のアセチレンブラックを添加したものを、結
着剤としてのポリフッ化ビニリデンを(PVDF)を溶
媒ノルマルメチルピロリドン(NMP)に溶解して作製
した溶液に添加して、均一に混合することでスラリーを
作製し、このスラリーを厚み20μmのアルミニウム箔
の両面にロールコータ法により塗工することで行った。
こうして1次成形後に得られた正極板を、以下「正極一
次成形体」と呼ぶこととする。次に、正極一次成形体の
二次成形をロールプレス法により、圧力印加条件を種々
に変えて行った。二次成形が終了して得られた正極板を
以下「正極二次成形体」と呼ぶこととする。なお、本実
施例においては、一次成形の条件は全ての正極板につい
て同じとした。
て高黒鉛化炭素繊維を用いて、また金属箔として厚み1
0μmの銅箔を用いること以外は、前述した正極板の一
次成形及び二次成形と同様の方法を用いることにより、
負極板を作製した。ここで、一次成形後、及び二次成形
後の負極板をそれぞれ「負極一次成形体」、及び「負極
二次成形体」と呼ぶこととする。なお、一次成形の条件
は全ての負極板について同じとした。
正負各極の一次成形体及び二次成形体についての電極活
物質層厚みをマイクロメータにより測定して、測定値か
ら金属箔の厚みを減じ、各面における電極活物質層厚み
が同じと仮定して、片面塗工厚みを算出した。このと
き、少なくとも100cm2当たり1ヶ所以上の測定を
行うこととした。算出された電極活物質層厚みを統計処
理することにより、その平均値(t1〜t4)と標準偏差
を求め、この標準偏差を平均値で除することにより、厚
み相対標準偏差を計算した。なお、以下、相対標準偏差
は100を乗じた%値で示すこととする。また、正極二
次成形体において、電極活物質層厚みを測定した部分に
おける厚み方向の電気抵抗を、直径20mmφの平面を
有する電極で電極板を挟み込むことにより測定した。
場合の厚み圧縮比と、前記電気抵抗及び電極活物質層の
厚み相対標準偏差との関係を、正極板の場合について図
2(a)に、負極板の場合について図2(b)に示す。
ここで、二次成形においては、第1回目の圧力印加にお
ける厚み圧縮比が、正極板の場合には0.8×(t1−
t2)/t1以下、負極板の場合には0.8×(t3−
t4)/t3以下とし、厚み圧縮比は第1回目の圧力印加
時よりも第2回目の圧力印加時で小さくなるように設定
した、同時に、二次成形においては、第1回目の圧力印
加における密度増加比を、正極板の場合には0.7×
(ρ2−ρ1)/ρ1以下、負極板の場合には、0.7×
(ρ4−ρ3)/ρ3以下とし、密度増加比が第1回目の
圧力印加時よりも第2回目の圧力印加時で小さくなるよ
うに設定した。この密度に関する評価については後に詳
述する。
抗が、厚み圧縮比t2/t1が0.8以下の場合に小さ
く、また、ほぼ一定の値を示しているが、0.8を上回
るにつれて急激に大きくなっていくことがわかる。厚み
相対標準偏差は、厚み圧縮比が0.8以下の場合にはほ
ぼ一定の5%以下の値を示しているが、0.8より大き
くなるにつれて大きくなっている。従って、これらの相
関から、低抵抗な正極板を得るためには、厚み相対標準
偏差を5%以下とすればよいと判断される。
対標準偏差と抵抗との関係を考慮すると、図2(b)か
らは、負極板の厚み相対標準偏差は、厚み圧縮比が0.
91以下で、3%以下の一定の小さい値を示しており、
この範囲で抵抗の小さい負極板が得られると判断され
る。従って、このように電極板の厚み相対標準偏差を所
定の範囲内とすることで、電極板の抵抗を低減し、内部
電極体の抵抗を小さくすることが可能となる。
負各極の一次成形体及び二次成形体についての電極活物
質層の密度測定は、まず、各電極板の任意の場所から直
径20mmφの円板を少なくとも100cm2から1枚
以上打ち抜き、その円板の厚みをマイクロメータで測定
して、この測定厚みから金属箔の厚みを減じ、得られた
電極活物質層厚みに円板の面積を乗じて電極活物質層体
積を計算し、一方、円板の重量を測定し、この測定値か
ら、使用する金属箔のみを予め打ち抜いて得た直径20
mmφの円板の重量を減じることで電極活物質層重量を
計算して、電極活物質層重量を電極活物質層体積で除す
ることにより算出した。算出された密度を統計処理する
ことにより、その平均値(ρ1〜ρ4)と標準偏差を求
め、この標準偏差を平均値で除することにより、密度相
対標準偏差を計算した。なお、以下、密度相対標準偏差
は100を乗じた%値で示すこととする。
破壊検査であるので、当然に、円板の打ち抜きを行った
電極板を用いて電池を作製することは不可能である。し
かし、同じ作製条件により作製した製品は、それぞれ同
等の特性を有するとの仮定の下に、製品は作製されるも
のであり、上述した密度の評価方法は、同条件で作製さ
れた電極板の特性を表す代表値として用いることができ
ることはいうまでもない。
と結果」に供したものと同じ電極板を用い、密度増加比
と電気抵抗及び密度相対標準偏差との関係について評価
した結果を、正極板の場合について図3(a)に、負極
板の場合について図3(b)に示す。
以上の場合に、密度相対標準偏差が約5%以下の一定値
を示すと共に、低い抵抗値を示しており、密度増加比が
1.3より小さくなるにつれて、密度相対標準偏差と抵
抗の両者が増大する傾向が現れている。このことから、
密度相対標準偏差が5%以下のときに、正極板が低抵抗
となることがわかる。一方、負極板においては、密度増
加比が1.1以上のときに、密度相対標準偏差が3%以
下の一定値を示していることから、この範囲で、抵抗の
小さい負極板が得られると判断される。
結果)同一の条件で一次成形を行った正極板(実施例1
・2、比較例1・2)を用いて、二次成形における圧力
印加回数、1回当たりの厚み圧縮比率、密度増加比率
が、二次成形体における厚み相対標準偏差及び密度相対
標準偏差へ与える影響を調べた。表1に試験条件と結果
を示す。なお、圧力印加の各回における厚み圧縮比率と
は、二次成形終了後に得られる厚み圧縮比に占めるその
回における圧縮の割合を示すもので、その回の圧力印加
による厚みの減少分を、二次成形の全工程終了前後にお
ける全体の厚みの減少分で除したものである。密度増加
比率についても同様に定義され、また算出される。
成形における圧力印加が1回の場合、並びに比較例2に
示されるように、最初の圧力印加よりもその次の圧力印
加における厚み圧縮比を大きくした場合には、厚み相対
標準偏差及び密度相対標準偏差を5%以下とすることが
できなかった。一方、実施例1・2に示されるように、
第1回目の圧力印加における厚み圧縮比率を、0.77
(約0.8)以下とし、厚み圧縮比率が、第2回目以降
は前回よりも小さくなるように設定することで、正極二
次成形体における厚み相対標準偏差及び密度相対標準偏
差を好適な5%以下とすることが可能であった。また、
二次成形における第1回目の圧力印加における密度増加
比率0.7以下とし、密度増加比率が第2回目以降はそ
の前の回よりも小さくなるように設定することが好まし
いことがわかる。
極板についても同様の試験と評価を行った。表1に試験
条件と結果を並記する。前述した正極板についての試験
と同様の厚み圧縮比率と密度増加比率の分配を行うこと
で、厚み相対標準偏差及び密度相対標準偏差が3%以下
の負極二次成形体が得られた。
次成形の条件を同じとして、二次成形における条件のみ
を変えることにより、表2に示した電極活物質層の厚み
及び密度相対標準偏差を有する幅110mm×長さ36
00mmの大きさの正極二次成形体と、幅110mm×
長さ4000mmの大きさの負極二次成形体を用い、こ
れらが互いに接触しないように、PPフィルム/PEフ
ィルム/PPフィルムの3層構造からなるセパレータを
介して一定圧力で巻芯の回りに捲回しつつ、タブを超音
波溶接により取り付け、内部電極体を作製した。そし
て、タブと電池の端子との導通を確保し、内部電極体を
電池ケースに挿入したのち、ECとDECの等量混合溶
媒に電解質としてのLiPF6を溶解してなる電解液
を、内部電極体に十分に含浸させた後、電池ケースを封
止することで電池を作製した。
mmφであり、作製した電池の容量は全て10Ahとな
るようにした。また、正極二次成形体における正極活物
質層厚み(片側塗工厚み)が約100μmとなるよう
に、負極二次成形体における負極活物質層厚みは約80
μmとなるように、一次成形時の塗工厚み及び二次成形
時の印加圧力を調整した。比較例においては、二次成形
時の圧力印加を電極板に損傷が生じない範囲で1回とし
た結果、若干厚めの電極活物質層厚みを有した。
示される充放電サイクルを1サイクルとして、これを繰
り返すことにより耐久試験を行った。1サイクルは50
%の充電状態の電池を10C(放電レート)相当の電流
100Aにて9秒間放電した後18秒間休止し、その後
70Aで6秒間充電後、続いて18Aで27秒間充電
し、再び50%の充電状態とするパターンに設定した。
なお、充電の2回目(18A)の電流値を微調整するこ
とにより、各サイクルにおけるDODのずれを最小限に
止めた。また、この耐久試験中の電池容量の変化を知る
ために、適宜、0.2Cの電流強さで充電停止電圧4.
1V、放電停止電圧2.5Vとした容量測定を行い、所
定のサイクル数における電池容量を初回の電池容量で除
した値により電池容量の変化率を求めた。
とサイクル数との関係を図5に示す。いずれか一方の電
極板が所定の厚み相対標準偏差及び密度相対標準偏差を
有する場合、具体的には、実施例1に示されるように、
正極板が厚み相対標準偏差5%以下、密度相対標準偏差
5%以下を有する場合、実施例2に示されるように、負
極板が厚み相対標準偏差3%以下、密度相対標準偏差3
%以下を有する場合に、これらの条件を満たさない比較
例1と比較して、サイクル特性が改善され、さらに、電
極板2・3の両方がこれら所定の厚み相対標準偏差と密
度相対標準偏差を有する実施例3の場合に特にサイクル
特性の改善の効果が大きいことが分かる。これは、10
0Aといった大電流によるサイクルにおいて、電流集中
が緩和され、均一な電流分布が得られ、劣化が抑制され
た結果と考えられる。
る電極活物質層の厚みばらつき、密度ばらつきが所定の
範囲内に納められている、すなわち、厚み相対標準偏差
と密度相対標準偏差を所定範囲に納めることにより、電
極活物質層が均質化されて電極板自体の抵抗が低減され
るとともに、内部電極捲回時の圧力分布が均一化されて
内部抵抗の低減と電流集中の回避が図られる顕著な効果
を奏する。更に、このような電池特性に起因して、サイ
クル特性が向上するという顕著な効果を奏する。
る。
との関係を示すグラフである。
との関係を示すグラフである。
る。
ータ、5…リードタブ。
Claims (12)
- 【請求項1】 正極板と負極板とをセパレータを介して
捲回してなる内部電極体並びに有機電解液を用いたリチ
ウム二次電池であって、 当該正極板における正極活物質層の厚み相対標準偏差が
5%以下及び/又は密度相対標準偏差が5%以下であ
り、及び/又は、当該負極板における負極活物質層の厚
み相対標準偏差が3%以下及び/又は密度相対標準偏差
が3%以下であることを特徴とするリチウム二次電池。 - 【請求項2】 正極活物質がLi及びMnを主成分とす
る酸化物であり、及び/又は負極活物質が高黒鉛化炭素
繊維であることを特徴とする請求項1記載のリチウム二
次電池。 - 【請求項3】 当該正極板及び当該負極板における電極
面積が1000cm2以上であることを特徴とする請求
項1または2記載のリチウム二次電池。 - 【請求項4】 電気自動車又はハイブリッド電気自動車
に用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか
一項に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項5】 電池容量が2Ah以上であることを特徴
とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウム二
次電池。 - 【請求項6】 正極板と負極板とをセパレータを介して
捲回してなる内部電極体並びに有機電解液を用いたリチ
ウム二次電池に用いられる電極板の作製方法であって、 金属箔表面へ電極活物質を塗工する一次成形後に、複数
回の圧力印加を行う二次成形を行うことにより、当該正
極板及び/又は当該負極板を作製することを特徴とする
電極板の作製方法。 - 【請求項7】 当該一次成形後の正極活物質層厚みと負
極活物質層厚みをそれぞれt1(μm)、t3(μm)と
し、当該二次成形後の正極活物質層厚みと負極活物質層
厚みをそれぞれt2(μm)、t4(μm)としたとき、
t2/t1値を0.8以下及び/又はt4/t3値を0.9
1以下とし、 及び/又は、当該一次成形後の正極活物質層と負極活物
質層の密度をそれぞれρ1(g/cm3)、ρ3(g/c
m3)とし、当該二次成形後の正極活物質層と負極活物
質層の密度をそれぞれρ2(g/cm3)、ρ4(g/c
m3)したとき、ρ2/ρ1値を1.3以上及び/又はρ4
/ρ3値を1.1以上とすることを特徴とする請求項6
記載の電極板の作製方法。 - 【請求項8】 当該二次成形時における圧力印加1回当
たりの電極活物質層の厚み圧縮比を、当該正極板の作製
においては0.8×(t1−t2)/t1以下及び/又は
当該負極板の作製においては0.8×(t3−t4)/t
3以下とし、 及び/又は、当該二次成形時における圧力印加1回当た
りの電極活物質層の密度増加比を、当該正極板の作製に
おいては0.7×(ρ2−ρ1)/ρ1以下及び/又は当
該負極板の作製においては0.7×(ρ4−ρ3)/ρ3
以下とすることを特徴とする請求項6又は7記載の電極
板の作製方法。 - 【請求項9】 当該二次成形時の圧力印加をn回(n≧
2)行う場合に、 任意のk+1回目(1≦k≦n−1)における電極活物
質層の厚み圧縮比をk回目の厚み圧縮比以下とし、及び
/又は、 任意のk+1回目(1≦k≦n−1)における電極活物
質層の密度増加比をk回目の密度増加比以下として、 当該正極板及び/又は負極板を成形することを特徴とす
る請求項6〜8のいずれか一項に記載の電極板の作製方
法。 - 【請求項10】 当該二次成形における圧力印加をロー
ルプレスにより行うことを特徴とする請求項6〜9のい
ずれか一項に記載の電極板の作製方法。 - 【請求項11】 正極活物質としてLi及びMnを主成
分とする酸化物を用い、及び/又は負極活物質として高
黒鉛化炭素繊維を用いることを特徴とする請求項6〜1
0のいずれか一項に記載の電極板の作製方法。 - 【請求項12】 当該正極板及び当該負極板における電
極面積を、それぞれ1000cm2以上とすることを特
徴とする請求項6〜11のいずれか一項に記載の電極板
の作製方法。
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JP30573598A JP3693827B2 (ja) | 1998-10-27 | 1998-10-27 | 電極板の作製方法 |
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CN113632256A (zh) * | 2019-03-27 | 2021-11-09 | 松下知识产权经营株式会社 | 二次电池 |
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