JP2000128789A - 創傷治療剤 - Google Patents

創傷治療剤

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JP2000128789A
JP2000128789A JP30710498A JP30710498A JP2000128789A JP 2000128789 A JP2000128789 A JP 2000128789A JP 30710498 A JP30710498 A JP 30710498A JP 30710498 A JP30710498 A JP 30710498A JP 2000128789 A JP2000128789 A JP 2000128789A
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gel
aqueous solution
wound
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Kazuhiko Arai
一彦 新井
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Denka Co Ltd
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Denki Kagaku Kogyo KK
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 なんら化学的架橋剤や化学的修飾剤を使用す
ることなく、安全性及び生体適合性に優れた創傷治療剤
を提供すること。 【解決手段】 中性水溶液に難溶性であるヒアルロン酸
単独で形成されたゲルを含有する創傷治療剤を構成とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、中性水溶液に難溶
性であるヒアルロン酸単独で形成されたゲルを含有する
創傷治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】外界からの刺激、外力により生体が損傷
を受けた結果、創傷を生じるが、その原因は千差万別で
あり、また創傷の部位、程度も様々である。外傷による
組織断裂・欠損、熱傷創、潰瘍創、褥瘡等の形成外科分
野の創傷の他、耳鼻科分野における外傷、中耳炎等によ
る鼓膜穿孔も創傷と考えられ、さらに血管、神経におい
ても創傷が認められる。損傷を受けた組織では、それら
の解剖学的な不連続性や破壊された細胞などに対し、修
復反応が起こってくる。これら修復過程において、治癒
を早めるために創面の保護、表皮化促進作用を有する薬
剤、被覆材等が用いられている。外用剤としては、創傷
保護外用剤として亜鉛華軟膏等が、化膿性疾患治療剤と
して抗生物質含有軟膏、抗生物質副腎皮質ホルモン配合
剤、サルファ剤含有軟膏等が用いられる。被覆材として
は、(1)同種、異種皮膚、コラーゲン創傷被覆材、フ
ィブリン膜、キチン膜等の生体材料被覆材、(2)シリ
コン、ナイロン、コラーゲンの組み合わせからなるバイ
オブレン等の生体材料・合成材料複合被覆材、(3)ハ
イドロゲル・ドレッシングやポリウレタンフィルム・ド
レッシング等の合成材料被覆材がある。
【0003】創傷被覆材に望まれる特性としては、
(1)創面保護効果、鎮痛効果、(2)細菌進入阻止、
(3)水分蒸発抑制、体液漏出阻止、(4)表皮形成促
進効果、(5)肉芽形成促進効果、(6)無毒性、
(7)無抗原性、(8)組織親和性、(9)密着性、
(10)弾力性、伸縮性、耐久性、(11)消毒可能、
等があげられる。
【0004】ヒアルロン酸は、血餅マトリックスを安定
化し、その分解を制御し、炎症細胞、線維芽細胞及び内
皮細胞等の誘因を促進することで、組織修復の過程、主
として肉芽組織の形成過程の初期工程に作用することが
知られている。また、ヒアルロン酸溶液を投与すると、
創傷、褥瘡の患者の回復を早めることができることも知
られている(J.Theor.Biol.,119,219,(1986))。耳鼻科
において鼓膜穿孔に対するヒアルロン酸溶液の治療効果
も確認されている(Acta Otolaryngol.,Supple.442,81-
87(1987))。さらにラットの鼓膜穿孔モデル実験では、
無処理群に比べ、ヒアルロン酸適用群で鼓膜閉塞が促進
されること(Acta Otolaryngol.,Suppl.442,54-61,(198
7))、また吸収性ゼラチンスポンジと混合したヒアルロ
ン酸溶液を中耳に適用すると、ゼラチンスポンジ単独に
比べ瘢痕形成が低減することも報告されている(Am,J.O
tolaryngol,7,181-186,(1986))。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ヒアルロン酸が創傷治
療に有効であることは前記の通りであるが、例えば、鼓
膜穿孔モデルにおいて、ゼラチンスポンジを用いた試験
から滞留性、貯留性を向上させることでその治療効果は
著しく改善されることが示唆された。創面、生体内での
滞留性、貯留性の向上のために、ヒアルロン酸を化学的
に架橋することがさまざま試みられている(米国特許第
4,582,865号明細書、特公平6−37575号
公報、特開平7−97401号公報、特開昭60−13
0601号公報)。しかしながら、架橋ヒアルロン酸は
もはや本質的にヒアルロン酸そのものではなく、架橋剤
の残存を完全に否定することが難しいことも考慮する
と、創傷被覆材に望まれる特性のうち、無毒性、無抗原
性を無条件に保証することはできない。我々は、架橋剤
を用いない本質的にヒアルロン酸のみからなる難水溶性
ヒアルロン酸ゲルを見い出し(特願平9−226734
号、特願平10−117564号、PCT/JP98/
03536)、創傷治療への適用の可能性を鋭意検討し
た。
【0006】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、(1)
中性水溶液に難溶性であるヒアルロン酸単独で形成され
たゲルを含有する創傷治療剤、(2)次の(a)、
(b)の要件を満たすヒアルロン酸単独で形成されたゲ
ルを含有することを特徴とする創傷治療剤、(a)中性
の37℃の水溶液中で12時間での溶解率が50%以下
である、(b)ヒアルロン酸の促進酸加水分解条件下で
ヒアルロン酸ゲルを処理することで可溶化されたヒアル
ロン酸が分岐構造を有し、該可溶化されたヒアルロン酸
中に、分岐度が0.5以上の分子量フラクションを部分
的に含む、(3)ヒアルロン酸単独で形成されたゲル
が、シート状、フィルム状、破砕状、スポンジ状、塊
状、繊維状、又はチューブ状からなる群より選択した1
種であることを特徴とする(2)記載の創傷治療剤、
(4)中性の37℃の水溶液中で12時間での溶解率が
50%以下であり、ヒアルロン酸の促進酸加水分解条件
下でヒアルロン酸ゲルを処理することで可溶化されたヒ
アルロン酸が分岐構造を有し、該可溶化されたヒアルロ
ン酸中に、分岐度が0.5以上の分子量フラクションを
部分的に含むヒアルロン酸ゲルと、ゲル化されていない
ヒアルロン酸を含む創傷治療剤、(5)シート状、フィ
ルム状、破砕状、スポンジ状、塊状、繊維状、又はチュ
ーブ状であるヒアルロン酸単独で形成されたヒアルロン
酸ゲルと、ゲル化されていないヒアルロン酸を含む創傷
治療剤である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうヒアルロン酸ゲルとは、三次元網目構造を
もつ高分子及びその膨潤体である。三次元網目構造はヒ
アルロン酸の架橋構造によって形成されている。
【0008】本発明で使用される本質的にヒアルロン酸
単独からなる難水溶性ヒアルロン酸ゲルは、例えば、特
願平9−226734号、特願平10−117564
号、特願平10−219463号、及びPCT/JP9
8/03536に記載の方法で取得できる。その一例と
しては、ヒアルロン酸のpH3.5以下の水溶液を凍結
し、次いで解凍することでシート状、フィルム状、破砕
状、スポンジ状、塊状、繊維状、又はチューブ状の難水
溶性ヒアルロン酸ゲルを得ることができる。より具体的
には以下に述べる。
【0009】本発明に用いられるヒアルロン酸は、動物
組織から抽出したものでも、また発酵法で製造したもの
でもその起源を問うことなく使用できる。発酵法で使用
する菌株は自然界から分離されるストレプトコッカス属
等のヒアルロン酸生産能を有する微生物、又は特開昭6
3−123392号公報に記載したストレプトコッカス
・エクイFM−100(微工研菌寄第9027号) 、特開平
2−234689号公報に記載したストレプトコッカス
・エクイFM−300(微工研菌寄第2319号) のような
高収率で安定にヒアルロン酸を生産する変異株が望まし
い。上記の変異株を用いて培養、精製されたものが用い
られる。
【0010】本発明に用いられるヒアルロン酸の分子量
は、約1×105 〜約1×107 ダルトンの範囲内のも
のが好ましい。また、上記範囲内の分子量をもつもので
あれば、より高分子量のものから、加水分解処理等をし
て得た低分子量のものでも同様に好ましく使用できる。
なお、本発明にいうヒアルロン酸は、そのアルカリ金属
塩、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムの塩をも
包含する概念で使用される。
【0011】本発明でいうヒアルロン酸単独とは、ヒア
ルロン酸以外に化学的架橋剤や化学的修飾剤等は使用し
ないことまた、カチオン性の高分子と複合体化しないこ
とを意味するものである。
【0012】本発明でいうヒアルロン酸ゲルは、ヒアル
ロン酸の促進酸加水分解反応条件下でヒアルロン酸ゲル
を処理することで分解、可溶化することができる。可溶
化されたヒアルロン酸が架橋構造を保持している場合、
分岐点を有するヒアルロン酸として高分子溶液論的に直
鎖状のヒアルロン酸と区別することができる。
【0013】本発明でいうヒアルロン酸の促進酸加水分
解反応条件としては、水溶液のpH1.5、温度60℃
が適当である。ヒアルロン酸のグリコシド結合の加水分
解による主鎖切断反応が、中性の水溶液中と比較して、
酸性やアルカリ性の水溶液中で著しく促進される。更に
酸加水分解反応は、反応温度が高い方が促進される。
【0014】本発明ではGPC−MALLS法を用い、
GPCで分離された分子量フラクションの分子量と分岐
度をオンラインで連続的に測定した。本発明では、同一
溶出体積のフラクションの可溶化されたヒアルロン酸の
分子量と対照となる直鎖状ヒアルロン酸の分子量を比較
して分岐度を計算する溶出体積法を使って分岐度の測定
を行った。分岐度は可溶化されたヒアルロン酸の高分子
鎖1コ当たりに存在する分岐点の数であり、可溶化され
たヒアルロン酸の分子量に対してプロットされる。
【0015】可溶化されたヒアルロン酸は、GPC溶媒
で希釈して濃度を調製し、0.2μmのメンブランフィ
ルターでろ過した後測定に供した。本発明でいうヒアル
ロン酸ゲル中に、ヒアルロン酸の促進酸加水分解条件下
でも安定に存在する架橋構造がある場合、可溶化された
ヒアルロン酸に分岐構造が高分子溶液論的に確認され
る。
【0016】ヒアルロン酸の水溶液のpHを調整するた
めに使用する酸は、pH3.5以下に調整できる酸であ
れば、いずれの酸も使用することができる。酸の使用量
を低減するために、好ましくは強酸、例えば、塩酸、硝
酸、硫酸等を使用することが望ましい。
【0017】ヒアルロン酸の水溶液のpHは、ヒアルロ
ン酸のカルボキシル基が充分な割合でプロトン化するp
Hに調整する。調整されるpHはヒアルロン酸塩の対イ
オンの種類、ヒアルロン酸の分子量、水溶液濃度、凍結
及び解凍の条件、並びに生成するゲルの強さ等の諸特性
により適宜決められるが、本発明では、pH3.5以
下、好ましくは、pH2.5以下に調整することであ
る。
【0018】凍結、解凍はヒアルロン酸の調整された酸
性水溶液を、任意の容器に入れた後、所定の温度で凍結
させ、凍結が終わった後、所定の温度で解凍させる操作
を少なくとも1回行う。凍結、解凍の温度と時間は、容
器の大きさ、水溶液量によりヒアルロン酸の酸性水溶液
が凍結、解凍する温度と時間の範囲内で適宜決められる
が、一般には、氷点以下の凍結温度、氷点以上の解凍温
度が好ましい。凍結、解凍時間を短くできることから、
更に好ましくは−5℃以下の凍結温度、5℃以上の解凍
温度が選ばれる。また、時間は、その温度で凍結、解凍
が終了する時間以上であれば特に制限されない。
【0019】ヒアルロン酸の調整された酸性水溶液を凍
結し、次いで解凍する操作の繰り返し回数は、使用する
ヒアルロン酸の分子量、水溶液濃度、水溶液のpH、凍
結及び解凍の温度と時間、並びに生成するゲルの強さ等
の諸特性により適宜決められる。通常は1回以上繰り返
すことが好ましい。また、凍結、解凍の操作を繰り返す
ごとに、その凍結、解凍の温度及び時間を変えても構わ
ない。
【0020】ヒアルロン酸の調整された酸性溶液の凍結
解凍により得られたヒアルロン酸ゲルは、ヒアルロン酸
の酸加水分解を避けるために、酸性に調整するために用
いた酸等の成分を除く必要がある。酸等の成分を除くた
めには、通常は水性溶媒によって洗浄する。ヒアルロン
酸ゲルの機能を損なわないものであれば特に制限はない
が、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝液等が用いら
れるが、好ましくは、生理食塩水、リン酸緩衝液等が用
いられる。
【0021】また、洗浄方法は、特に制限はないが、通
常は、バッチ法、濾過法、カラム等に充填して通液する
方法等が用いられる。これらの洗浄条件は、洗浄液量、
回数等を含めて、除きたい成分を目標の濃度以下にでき
る条件であればよく、ヒアルロン酸ゲルの形態や用途に
より適宜選択することが可能である。
【0022】この洗浄されたヒアルロン酸ゲルは、その
使用目的に応じて、溶媒中に浸漬した状態、溶媒を含ま
せた湿潤状態、風乾、減圧乾燥あるいは凍結乾燥等の処
理を経た乾燥状態で創傷治療剤として供される。
【0023】ヒアルロン酸ゲルの成形加工等の処理は、
作製時には、ヒアルロン酸の調整された酸性溶液の凍結
時の容器や手法の選択によりシート状、フィルム状、破
砕状、スポンジ状、塊状、繊維状、及びチューブ状の所
望の形態のヒアルロン酸ゲルの作製が可能である。例え
ば、板上にキャスティングして凍結することによりフィ
ルム状及びシート状の形態が得られるし、水と混和しな
い有機溶剤と激しく混合撹拌しながら凍結解凍すること
により破砕状の形態が得られる。
【0024】本発明の難水溶性のヒアルロン酸ゲルの製
造法及び難水溶性ヒアルロン酸ゲルの諸物性に関しての
詳細は、特願平9−226734号、特願平10−11
7564号、特願平10−219463号、及びPCT
/JP98/03536の明細書に記載されている。
【0025】臨床における適用範囲は、外傷による組織
断裂・欠損、熱傷創、潰瘍創、褥瘡等の形成外科分野の
創傷の他、耳鼻科分野における外傷、中耳炎等による鼓
膜穿孔、さらに血管、神経における創傷が想定される。
また、適用部位に応じ、その形状をシート状、フィルム
状、破砕状、スポンジ状、塊状、繊維状、又はチューブ
状から選択することが可能である。
【0026】
【実施例】以下、実施例にて本発明を詳細に説明する
が、これらに限定されるものではない。 実施例1 分子量が2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
を蒸留水に溶解し、1重量%のヒアルロン酸水溶液を調
製した。この水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に
調整し、ヒアルロン酸酸性水溶液を得た。このヒアルロ
ン酸酸性水溶液25mlを、プラスチック製シャーレに
入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。22時間の
凍結と25℃で2時間の解凍を2回繰り返し、スポンジ
状のヒアルロン酸ゲルが得られた。次にこれを生理的食
塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加えて調整した
pH7のリン酸緩衝生理的食塩水100mlに5℃で2
4時間浸漬し中和した後、蒸留水で十分に洗浄した。そ
して、これを凍結乾燥し、シート状の難水溶性ヒアルロ
ン酸ゲルを得た。
【0027】実施例2 分子量が2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
を蒸留水に溶解し、1重量%のヒアルロン酸水溶液を調
製した。この水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に
調整し、ヒアルロン酸酸性水溶液を得た。このヒアルロ
ン酸酸性水溶液10mlを、直径約20mmのサンプル
管に入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。22時
間の凍結と25℃で2時間の解凍を2回繰り返し、スポ
ンジ状のヒアルロン酸ゲルが得られた。次にこれを生理
的食塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加えて調整
したpH7のリン酸緩衝生理的食塩水100mlに5℃
で24時間浸漬し中和した後、蒸留水で十分に洗浄し
た。そして、これを凍結乾燥し、スポンジ状の難水溶性
ヒアルロン酸ゲルを得た。
【0028】比較例1 分子量が2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
を蒸留水に溶解し、1重量%のヒアルロン酸水溶液を調
製した。この溶液25mlを、プラスチック製シャーレ
に入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れ凍結した。そ
して、これを凍結乾燥し、シート状のヒアルロン酸を得
た。
【0029】比較例2 分子量が2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
を蒸留水に溶解し、1重量%のヒアルロン酸水溶液を調
製した。この溶液10mlを、直径約20mmのサンプ
ル管に入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れ凍結し
た。そして、これを凍結乾燥し、スポンジ状のヒアルロ
ン酸を得た。
【0030】実施例3 分子量が2×106 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
を蒸留水に溶解し、1重量%のヒアルロン酸水溶液を調
製した。この水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に
調整し、ヒアルロン酸酸性水溶液を得た。このヒアルロ
ン酸酸性水溶液25mlを、プラスチック製シャーレに
入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。22時間の
凍結と25℃で2時間の解凍を2回繰り返し、スポンジ
状のヒアルロン酸ゲルが得られた。次にこれを生理的食
塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加えて調整した
pH7のリン酸緩衝生理的食塩水100mlに5℃で2
4時間浸漬し中和した後、蒸留水で十分に洗浄した。そ
して、これをオーブンにより40℃で3時間乾燥し、フ
ィルム状の難水溶性ヒアルロン酸ゲルを得た。
【0031】実施例4 分子量が6×105 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウム
を蒸留水に溶解し、1重量%のヒアルロン酸水溶液を調
製した。この水溶液のpHを、1N塩酸でpH1.5に
調整し、ヒアルロン酸酸性水溶液を得た。このヒアルロ
ン酸酸性水溶液25mlを、プラスチック製シャーレに
入れ、−20℃に設定した冷凍庫に入れた。22時間の
凍結と25℃で2時間の解凍を2回繰り返し、スポンジ
状のヒアルロン酸ゲルが得られた。次にこれを生理的食
塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加えて調整した
pH7のリン酸緩衝生理的食塩水100mlに5℃で2
4時間浸漬し中和した後、蒸留水で十分に洗浄した。そ
して、これを凍結乾燥し、シート状の難水溶性ヒアルロ
ン酸ゲルを得た。
【0032】実施例5 実施例1で調製したシート状の難水溶性ヒアルロン酸ゲ
ルを、0.2%ヒアルロン酸溶液5mlに浸漬し、再度
凍結乾燥してシート状の未ゲル化ヒアルロン酸含有ヒア
ルロン酸ゲルを得た。
【0033】実施例6 実施例2で調製したスポンジ状の難水溶性ヒアルロン酸
ゲルを、0.2%ヒアルロン酸溶液3mlに浸漬し、再
度凍結乾燥してスポンジ状の未ゲル化ヒアルロン酸含有
ヒアルロン酸ゲルを得た。
【0034】実施例7 ヒアルロン酸ゲルの溶解性試験 生理食塩水に50mM濃度でリン酸緩衝成分を加え、p
H7のリン酸緩衝生理食塩水を調製した。実施例1から
実施例4で作製したシート状、スポンジ状、及びフィル
ム状のヒアルロン酸ゲル(30×30mm)を50ml
のリン酸緩衝生理食塩水に浸漬し緩やかに攪拌した。そ
して、37℃でリン酸緩衝生理食塩水中に溶出するヒア
ルロン酸の割合を、リン酸緩衝生理食塩水中のヒアルロ
ン酸濃度から求めた。
【0035】ヒアルロン酸濃度の測定 リン酸緩衝生理食塩水中のヒアルロン酸の濃度は、GP
Cを使って、示差屈折率検出器のピーク面積から求め
た。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】表1より、実施例1〜4で得られたヒアル
ロン酸ゲルが中性水溶液に難溶性であることが確認され
た。
【0038】実施例8 難水溶性ヒアルロン酸ゲルの分岐度測定 実施例1〜実施例4で得られた難水溶性ヒアルロン酸ゲ
ルを、pH1.5の塩酸水溶液15mlに浸漬し、60
℃、6時間の加水分解を行った。ゲルは加水分解により
可溶化され、これをGPC溶媒で2倍に希釈して濃度を
0.05重量%に調製し、0.2μmのメンブランフィ
ルターでろ過した後、0.1ml注入してGPC−MA
LLSの測定を行った。実施例1〜実施例4で得られた
難水溶性ヒアルロン酸ゲルの分岐度は、いずれも0.5
以上であった。
【0039】実施例9 ヒアルロン酸ゲルの創傷治療剤のラット皮膚欠損モデル
による創傷治療効果試験 7週齢(約200g)のウィスター(Wister)系、雄性
ラットの背部の毛を刈り、エーテル麻酔下で眼科用ハサ
ミを用いて背部皮膚部分を直径2cmの円状に取り除
き、完全皮膚欠損創を作製した。医療用不織布ガーゼ
(40×40mm:2枚重ね)のみを適用した無処置
群、実施例1、実施例3、実施例4、実施例5、比較例
1で作製したシート(30×30mm)を創面に被覆
後、医療用不織布ガーゼ(40×40mm:2枚重ね)
を適用した処置群を設定した。各群6匹のラットを用い
た。医療用不織布ガーゼは粘着包帯で固定し、さらにテ
ーピングテープで固定した。治療効果は、創面積の経時
的変化を測定することで比較した。すなわち、初期創面
の面積に対する面積比を次の式によって求め、その経時
的変化を調べた。 面積比(%)=〔(観察日の創面の長径×短径)/(初
期創面の長径×短径)〕×100 その結果を結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】表2より、これらの難水溶性ヒアルロン酸
ゲルは、創面、生体内での滞留性、貯留性がヒアルロン
酸溶液に比べ著しく向上し、創傷治療効果が増強される
ことがわかる。
【0042】実施例10 ヒアルロン酸ゲルの創傷治療剤のラット鼓膜穿孔モデル
による創傷治療効果試験 成熟、雄性スプラーグ・ドーレイ(Sprague Dawley)系
ラット(体重250〜300g)を、ペントバルビター
ルナトリウム(45mg/kg)腹腔内投与により麻酔し、耳介
後方の皮膚切開を行った後、槍状刀により右鼓膜胞に穿
孔を起こした。左耳はコントロールとし、同様に穿孔を
起こしたまま無処置とした。実験群は、生理食塩水注入
群、1%ヒアルロン酸注入群、実施例2及び実施例6で
作製したスポンジ状の難水溶性ヒアルロン酸ゲル挿入
群、比較例2で作製した凍結乾燥のスポンジ状ヒアルロ
ン酸挿入群とし、各群10匹のラットを用いた。生理食
塩水、1%ヒアルロン酸は、注射器につないだカニュー
レから鼓膜の穿孔部及びその周辺部に、最終剖検日前日
まで連日滴下した。難水溶性ヒアルロン酸ゲル及び凍結
乾燥のスポンジ状のヒアルロン酸は、鼓膜穿孔後、中耳
腔内に挿入した。鼓膜の修復過程は、麻酔下で鼓膜の閉
塞状態を14日間観察した。その結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】表3より、これらの難水溶性ヒアルロン酸
ゲルは、創面、生体内での滞留性、貯留性がヒアルロン
酸溶液に比べ著しく向上し、創傷治療効果が増強される
ことがわかる。
【0045】
【発明の効果】本発明により、ヒアルロン酸単独で形成
された難水溶性ヒアルロン酸ゲルを含有する創傷治療剤
を提供することができる。かかる本発明の創傷治療剤
は、架橋剤等を使用していないため安全性及び生体適合
性に優れ創傷治療効果を有する。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中性水溶液に難溶性であるヒアルロン酸
    単独で形成されたゲルを含有する創傷治療剤。
  2. 【請求項2】 次の(a)、(b)の要件を満たすヒア
    ルロン酸単独で形成されたゲルを含有することを特徴と
    する創傷治療剤。 (a)中性の37℃の水溶液中で12時間での溶解率が
    50%以下である、(b)ヒアルロン酸の促進酸加水分
    解条件下でヒアルロン酸ゲルを処理することで可溶化さ
    れたヒアルロン酸が分岐構造を有し、該可溶化されたヒ
    アルロン酸中に、分岐度が0.5以上の分子量フラクシ
    ョンを部分的に含む。
  3. 【請求項3】 ヒアルロン酸単独で形成されたゲルが、
    シート状、フィルム状、破砕状、スポンジ状、塊状、繊
    維状、又はチューブ状からなる群より選択した1種であ
    ることを特徴とする請求項2記載の創傷治療剤。
  4. 【請求項4】 中性の37℃の水溶液中で12時間での
    溶解率が50%以下であり、ヒアルロン酸の促進酸加水
    分解条件下でヒアルロン酸ゲルを処理することで可溶化
    されたヒアルロン酸が分岐構造を有し、該可溶化された
    ヒアルロン酸中に、分岐度が0.5以上の分子量フラク
    ションを部分的に含むヒアルロン酸ゲルと、ゲル化され
    ていないヒアルロン酸を含む創傷治療剤。
  5. 【請求項5】 シート状、フィルム状、破砕状、スポン
    ジ状、塊状、繊維状、又はチューブ状であるヒアルロン
    酸単独で形成されたヒアルロン酸ゲルと、ゲル化されて
    いないヒアルロン酸を含む創傷治療剤。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101577140B1 (ko) * 2014-06-30 2015-12-11 박성훈 필름형 용해성 창상피복재

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KR101577140B1 (ko) * 2014-06-30 2015-12-11 박성훈 필름형 용해성 창상피복재

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