JP2000111922A - 液晶素子 - Google Patents

液晶素子

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JP2000111922A
JP2000111922A JP29759498A JP29759498A JP2000111922A JP 2000111922 A JP2000111922 A JP 2000111922A JP 29759498 A JP29759498 A JP 29759498A JP 29759498 A JP29759498 A JP 29759498A JP 2000111922 A JP2000111922 A JP 2000111922A
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JP29759498A
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English (en)
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Takeshi Togano
剛司 門叶
Masahiro Terada
匡宏 寺田
Yasushi Asao
恭史 浅尾
Yoshimasa Mori
省誠 森
Takashi Moriyama
孝志 森山
Kiyoshi Miura
聖志 三浦
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 均一な液晶分子配向、広い駆動マージンを実
現し、より高速なスイッチング特性を有する液晶素子を
提供する。 【解決手段】 基板に液晶に対する一軸配向規制力を有
する第一の領域と、該第一の領域に比較して液晶に対す
る一軸配向規制力が弱いか又は実質的に持たない第二の
領域を有し、液晶は基板間において降温時に第一の領域
に接する領域から液晶相への転移が生じて該第一の領域
の一軸配向規制力の軸方向に沿って連続的に液晶相転移
領域が拡大し配向状態が形成される液晶素子で、該第一
の領域がポリアミド酸前駆体と感光性モノマーを含有し
てなる感光性材料を用い、該ポリアミド酸前駆体状態で
基板に塗布し、パターニング後に加熱焼成して該前駆体
ポリイミドあるいはポリアミドイミドとする際に感光部
が揮散し、実質的にポリイミドあるいはポリアミドイミ
ド主骨格が残ている液晶素子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は液晶素子に関し、特
に液晶の配向制御に優れた、フラットパネルディスプレ
イ、プロジェクションディスプレイ、プリンター等に用
いられるライトバルブに使用される液晶素子に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ネマティック液晶表示素子に
おいて、一つ一つの画素にトランジスタのような能動素
子を配置した、アクティブマトリクス(たとえばTF
T)といわれる液晶素子の開発が行われている。現在こ
のTFTを用いた液晶表示素子に用いられるネマティッ
ク液晶のモードとして、たとえばエム・シャット(M.
Schadt)とダブリュー・ヘルフリッヒ(W.He
lfrich)著“Applied Physics
Letters”第18巻、第4号(1971年2月1
5日発行)第127頁から128頁において示されたツ
イステッドネマティック(Twisted Nemat
ic)モードが広く用いられている。
【0003】また、最近では横方向電界を利用したイン
プレインスイッチング(In−Plain Switc
hing)モードが発表されており、ツイステッドネマ
ティックモード液晶ディスプレイの欠点であった視野角
特性の改善がなされている。その他、上述したTFT等
の能動素子を用いない、ネマティック液晶表示素子の代
表例として、スーパーツイステッドネマティック(Su
per Twisted Nematic)モードがあ
る。このように、こうしたネマティック液晶を用いた液
晶表示素子は様々なモードが存在するのであるが、その
いずれのモードの場合にも液晶の応答速度が数十ミリ秒
以上かかってしまうという問題点が存在した。
【0004】このような従来型のネマティック液晶素子
の欠点を改善するものとして、双安定性を示す液晶を用
いた素子がクラーク(Clark)およびラガウェル
(Lagerwall)により提案されている(特開昭
56−107216号公報、米国特許第4367924
号明細書)。この双安定性を示す液晶としては、一般に
カイラルスメクティックC相を示す強誘電性液晶が用い
られている。この強誘電性液晶は、自発分極により反転
スイッチングを行うため、非常に速い応答速度が得られ
る上にメモリー性のある双安定状態を発現させることが
できる。さらに視野角特性も優れていることから、高
速、高精細、大面積の表示素子あるいはライトバルブと
して適していると考えられる。
【0005】一方、最近では3安定性を示す反強誘電性
液晶が注目されている。この反強誘電性液晶も強誘電性
液晶同様に、自発分極により反転スイッチングを行うた
め、非常に速い応答速度が得られる。この液晶材料は、
電界無印加時には液晶分子は互いの自発分極を打ち消し
合うような分子配列構造をとるため、電界を印加しない
状態では自発分極は存在しないことが特徴となってい
る。更に最近では、この反強誘電性液晶をアクティブマ
トリクス素子にて駆動するために開発された無閾値反強
誘電性液晶も報告されている。
【0006】こうした自発分極による反転スイッチング
を行う強誘電性液晶や反強誘電性液晶は、いずれもスメ
クティック液晶相を示す液晶である。すなわち、従来ネ
マティック液晶が抱えていた応答速度に関する問題点を
解決できるという意味において、スメクティック液晶を
用いた液晶表示素子の実現が期待されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】こうした優れた特長を
有するスメクティック液晶表示素子においては、特に自
発分極による反転スイッチングを行う強誘電性液晶を用
いた素子の場合、素子内で液晶の配向制御を司る、特に
一軸配向規制を行う通常絶縁性材料からなる配向制御層
の厚みを薄くして配向制御層の電気容量を大きくするこ
とによって、反電場、即ち素子内で液晶の自発分極によ
り誘起されて生じる逆方向の電場を小さくし、スイッチ
ング特性を向上させ、駆動マージンが拡大させるように
する。反電場の発生は自発分極の大きさを大きくするほ
ど顕著に現れるため、応答速度向上のため自発分極の大
きな液晶材料を用いようとする場合には特に絶縁性の配
向制御膜の薄膜化は必須となる。
【0008】一方、強誘電性液晶又は反強誘電性液晶と
いったカイラルスメクティック液晶を用いた液晶素子
は、両者とも、パルス電界の印加による液晶の応答によ
ってスイッチングさせる原理を用いているため、実効的
に液晶層に加えられる電圧の大きさは、液晶素子を構成
する層(液晶層、配向制御層等)の容量の比(逆比)に
よって決定される。従って、実効的に液晶層に加えられ
る電圧を大きくし、より高速なスイッチング特性を得る
ためには、配向制御層の容量を液晶層の容量に対して十
分大きくなるよう設計する、即ち配向制御層の厚みを液
晶層の厚みに比較して十分小さくするよう設計すればよ
いことになる。
【0009】しかしながら、配向制御層の厚みを小さく
すればするほど、配向制御層が液晶分子に対して所望の
配向制御を行うように機能することが困難になってく
る。その結果、カイラルスメクティック液晶素子の上記
の設計思想によれば、スイッチング特性の向上(反電場
の抑制、駆動マージンの拡大)、応答速度の改善と均一
配向との両立は非常に難しくなってしまう。更に、配向
膜を均一に成膜する製造プロセスに関しても、膜厚が薄
くなればなるほど厳密に制御することが困難になってし
まう。
【0010】本発明は上記問題点に鑑みてなされたもの
で、その課題とするところは、均一な液晶分子配向を実
現しつつ、広い駆動マージンを実現し、より高速なスイ
ッチング特性を有する液晶素子、特にカイラルスメクテ
ィック液晶、強誘電性あるいは反強誘電性を示す液晶を
用いた液晶素子を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、一対の
基板間に液晶を有し、少くとも一方の基板に液晶に対す
る一軸配向規制力を有する第一の領域と、該第一の領域
外の該第一の領域に比較して液晶に対する一軸配向規制
力が弱いか又は実質的に一軸配向規制力を持たない第二
の領域を有し、該液晶は基板間において降温時に液晶の
液体相−液晶相の相転移過程で該第一の領域に接する領
域から液晶相への転移が生じて該第一の領域の一軸配向
規制力の軸方向に沿って連続的に液晶相転移領域が拡大
し配向状態が形成される液晶素子において、該第一の領
域がポリアミド酸前駆体と感光性モノマーを含有してな
る感光性材料を用い、該ポリアミド酸前駆体状態で基板
に塗布し、パターニング後に加熱焼成して該前駆体ポリ
イミドあるいはポリアミドイミドとする際に感光部が揮
散し、実質的にポリイミドあるいはポリアミドイミド主
骨格が残ることによって得られたものであることを特徴
とする液晶素子である。
【0012】本発明において前記感光性材料が、(1)
下記一般式(I)を主成分とするポリマーからなるポリ
アミド酸前駆体と、
【0013】
【化5】 (式中、Rは
【0014】
【化6】 から選ばれる。
【0015】Lは1もしくは2を示し、かつカルボキシ
ル基は主鎖を構成するカルボニル基に対しオルト位に結
合する。m、nはそれぞれ独立に0もしくは1であり、
oは2から10の整数である。)(2)化学線により2
量化又は重合可能な炭素−炭素二重結合及びアミノ基を
含む化合物からなる感光性モノマーと、(3)必要に応
じて光重合開始剤及び光増感剤の少なくとも一種からな
る材料であるのが好ましい。
【0016】また前記感光性材料が、(1)下記一般式
(II)を主成分とするポリマーからなるポリアミド酸
前駆体と、
【0017】
【化7】 (式中、m、nはそれぞれ独立に0もしくは1であり、
oは2から10の整数である。)(2)化学線により2
量化又は重合可能な炭素−炭素二重結合及びアミノ基を
含む化合物からなる感光性モノマーと、(3)必要に応
じて光重合開始剤及び光増感剤の少なくとも一種からな
る材料であるのが好ましい。
【0018】前記化学線により2量化又は重合可能な炭
素−炭素二重結合及びアミノ基を含む化合物が下記一般
式(III)で示される化合物であるのが好ましい。
【0019】
【化8】 (式中、Rは水素原子又は炭素数1から4の低級アル
キル基を示し、Rは炭素数1から4の低級アルキル基
を示す。またqは1から8の整数を示す。)
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の液晶素子は、一対の基板
間に液晶を有し、少くとも一方の基板に液晶に対する一
軸配向規制力を有する第一の領域と、該第一の領域外の
該第一の領域に比較して液晶に対する一軸配向規制力が
弱いか又は実質的に一軸配向規制力を持たない第二の領
域を有し、該液晶は基板間において降温時に液晶の液体
相−液晶相の相転移過程で該第一の領域に接する領域か
ら液晶相への転移が生じて該第一の領域の一軸配向規制
力の軸方向に沿って連続的に液晶相転移領域が拡大し配
向状態が形成される液晶素子において、該第一の領域が
ポリアミド酸前駆体と感光性モノマーを含有してなる感
光性材料を用い、該ポリアミド酸前駆体状態で基板に塗
布し、パターニング後に加熱焼成して該前駆体ポリイミ
ドあるいはポリアミドイミドとする際に感光部が揮散
し、実質的にポリイミドあるいはポリアミドイミド主骨
格が残ることによって得られたものであることを特徴と
する。
【0021】以下本発明の液晶素子の実施態様につい
て、図面を参照して詳細に説明する。図1及び2に本発
明の液晶素子の第一の実施態様を示す。図1は、本発明
の液晶素子を構成する一基板12a(一軸配向規制力を
有する配向制御膜が選択的に設けられた基板)の一態様
の上面側から見た平面図であり、図2は、図1に示す基
板12aを一方の基板として用いた液晶素子1の構造を
示す断面図(図1に示す基板のa−a′線に沿った断面
を示す)。
【0022】図2に示すように、液晶素子1の基本構造
は、液晶組成物からなる液晶11が一対の基板12a、
12b間に挟持された構造となっている。
【0023】基板12aでは、液晶11に対して電界を
印加する電極13aが設けられ、更に電極13a上に
は、下地となる下地層14aを介して配向制御層15a
が、図1に示す例えばストライプパターン形状のような
平面形状で選択的に設けられ液晶11に接している。該
配向制御層15aは、絶縁性材料等からなり適切な処理
を施すことで液晶に対する一軸配向規制力を呈する材料
により形成され、ここでは少なくともその上面、即ち基
板12aと平行な液晶と接する面(R1)において、一
軸配向処理が施されており、液晶に対して一軸配向規制
力を有する。
【0024】即ち、基板12aでは選択的に設けられた
配向制御層15aに対応して少なくとも液晶に対して一
軸配向規制力を有する第一の領域(面R1を構成する領
域)とそれ以外の部分で液晶と接する第二の領域(面R
2を構成する領域)が形成されており、第一の領域の少
なくとも実質的に基板に平行な面での液晶に対する一軸
配向規制力は、第二の領域の一軸配向規制力より大き
く、あるいは第二の領域の液晶に接する面R2の一軸配
向規制力は0である。
【0025】一方、対向する基板12bでは、液晶11
に対して電界を印加する電極13bが設けられ、更に該
電極13b上には、液晶11に接し、該液晶の配向制御
に寄与し得る配向制御層15bが形成されている。この
ような電極や配向制御層を備えた基板1la及び1lb
はスペーサー16を介して一定距離を隔てて対向してい
る。
【0026】基板1la及び1lbの外面には、必要に
応じて偏光板が設けられている。また、観察者側から見
て液晶素子1の背後には必要に応じて光源が設けられて
いる(夫々図示せず)。
【0027】上記構造の液晶素子1では、信号電源(図
示せず)からのスイッチング信号に応じて電極13a及
び13bにより液晶層11に電界が印加されてスイッチ
ングが行われ、外部からの光が液晶11で変調される。
【0028】上記構造の液晶素子1では、液晶11に接
する、パターン形状の配向制御層15a、下地層14
a、配向制御層15bや、更に液晶11の材料、処理方
法、条件等を適宜設定することにより、液晶11におい
て、降温時に液晶の液体相−液晶相の相転移過程で、選
択的に設けられた配向制御層15aの基板と平行方向の
面R1に接する第一の領域から液晶相への転移が生じ
て、配向制御層15aの一軸配向処理規制力の軸方向
(一軸配向処理の軸方向)に沿って違続的に液晶相転移
領域が成長し、さらに液晶相転移領域が面R2側に拡大
し、配向状態が形成されたものである点で特徴的であ
る。
【0029】以下、この配向状態の形成に関して図3及
び4を参照して説明する。図3(A)〜(C)は、図1
に示す基板12aにおける選択的に形成された配向制御
層15aに接する液晶領域からの配向状態の形成につい
て、一軸配向規制の方向(配向制御層15aに施される
一軸配向処理の方向)Uを該配向制御層15aの長手方
向と略垂直に設定し、また液晶としてスメクティック液
晶を用い、降温時におけるスメクティック液晶相への相
転移過程の状態の変化((A)、(B)、(C)の順で
降温が進行する)を偏光顕微鏡観測したものを模式的に
示した説明図である。
【0030】まず図3(A)に示すように、液晶をスメ
クティック液晶相より高秩序の相から降温(冷却)した
際に、基板12a上において一軸配向規制力の強い配向
制御層15aの面R1上の液晶から、スメクティック液
晶相転移において発現するスメクティックの核であるバ
トネと呼ばれる領域Nが発生する。
【0031】続いて、更に液晶を降温させることによ
り、図3(B)に示すようにバトネNは一軸配向制御層
15aの長手方向と垂直な方向である一軸配向処理方向
U、即ちスメクティック層の法線方向へと成長する。通
常、スメクティック液晶相のバトネはスメクティック層
の法線方向に成長し易いという成長の異方性を有してお
り、この特性に従って、(A)に示すように発生したバ
トネNの核によって決定されたスメクティック層の法線
方向(一軸配向処理方向Uに相当)に沿って、配向制御
層15aのライン間の一軸配向規制力が実質的に存在し
ないあるいは弱い部分に対応する液晶領域(図2の断面
図で隣接する配向制御層15aのライン間で下地層14
aの液晶と接する部分R2に対応する液晶領域)に向っ
て、ほぼ直線的に成長する。ここで、上述した液晶自身
の有するスメクティック液晶のバトネ成長の異方性によ
り、配向規制力が存在しない部分において形成された液
晶の配向状態においてもスメクティック層方向は均一に
配列する。
【0032】更に降温を進めると、図3(B)〜(C)
に示すように、バトネNは一軸配向規制された方向Uだ
けでなく、その方向と垂直方向(配向制御層15aの長
手方向)に太るように成長を開始する。その際、徐々に
バトネNが全体的に太って成長するだけでなく、バトネ
の脇からブランチが現れるように成長する。このブラン
チはスメクティック層の方向(配向制御層15aの長手
方向)へ徐々に成長していくのであるが、同図(C)に
示すようにブランチはまず配向制御層15a上で該層の
長手方向に成長が進行する。
【0033】このように素子内の基板間の全域がスメク
ティック相となるまで冷却し、最終的には、配向制御層
15aが存在する部分及びこれが存在しない部分の全て
に対応する液晶領域において、当該配向制御層15aの
長手方向に均一にスメクティック層が配列したような配
向状態が形成される。
【0034】一方、図4(A)〜(C)は、図1、2に
示す基板12aにおける選択的に形成された配向制御層
15aからの配向状態の形成について、一軸配向規制の
方向(配向制御層15aに施される一軸配向処理の方
向)Uを該配向制御層15aの長手方向と実質的に同様
に(平行に)設定し、また液晶としてスメクティック液
晶を用い、降温時におけるスメクティック液晶相への相
転移過程の状態の変化((A)、(B)、(C)の順で
降温が進行する)を偏光顕微鏡観測したものを模式的に
示した説明図である。
【0035】まず図4(A)に示すように、上記図3
(A)の場合と同様に液晶をスメクティック液晶相より
高秩序の相から降温した際に、基板12a上において一
軸配向規制力の強い配向制御膜15aの面R1上の液晶
から、スメクティック液晶相転移において発現するスメ
クティックの核であるバトネと呼ばれる領域Nが発生す
る。
【0036】続いて、更に液晶を降温させることによ
り、図4(B)に示すようにバトネNは上述したスメク
ティック液晶相のバトネ成長の異方性の特性に基づい
て、(A)に示すように発生したバトネNの核によって
決定されたスメクティック層の法線方向である一軸配向
処理方向U、即ち一軸配向制御層15aの長手方向と同
様の方向へと成長する。ここでは、上述のバトネ成長の
異方性によるバトネの成長方向と、一軸配向規制力を有
する配向制御層15aのパターンの長手方向が一致する
ことにより、図4(B)に示すようにバトネNは配向制
御層15aの面R1上でより素早く成長する。
【0037】更に降温を進めると、図4(B)〜(C)
に示すように、バトネNは配向制御層15aの長手方向
だけでなく、その方向と垂直方向に太るように成長を開
始する。その際、徐々にバトネNが全体的に太って成長
するだけでなく、バトネの脇からブランチが現れるよう
に成長し、当該ライン間の一軸配向規制力が実質的に存
在しないあるいは弱い部分に対応する液晶領域(図2の
断面図で隣接する配向制御層15aのライン間で下地層
14aが液晶に接する部分R2に対応する液晶領域)に
拡大する。そして隣り合った配向制御層15aの島ライ
ン部から成長したバトネN同志が最終的に接合すること
により、スメクティック層がほぼ均一であるような配向
状態が形成される。
【0038】このように素子内の基板間の全域がスメク
ティック相となるまで冷却し、最終的には、配向制御層
15aが存在する部分及びこれが存在しない部分の全て
に対応する液晶領域において、当該配向制御層15aの
長手方向と垂直に均一にスメクティック層が配列したよ
うな配向状態が形成される。
【0039】かかる液晶素子では、素子内において通常
絶縁性を有する一軸配向規制力を有する配向制御層(1
5a)が、配向状態形成の開始部分となる核(バトネ)
を供給するために必要なパターン形状で設けられ、上述
のように配向状態の形成過程により素子全面に均一な配
向状態の形成が確実になされる。加えて、液晶の駆動に
対して電気的に障害となる絶縁性材料からなる一軸配向
規制力を有する配向制御層(15a)の存在量が極力少
なくなり、これを介せずに電圧が印加される液晶領域が
大きくなり、パルス電圧による駆動の際に液晶に印加さ
れる実効電圧を大きくすることができる。こうして、配
向状態の均一化と、液晶駆動(スイッチング)の高速化
の両立がなされる。
【0040】上記液晶素子1を構成する部材について、
更に詳細に説明する。基板12a、12bには、好まし
くはガラス、プラスチック等透明性の高い材料が用いら
れ、また電極13a、13bには、ITO等の透明電極
が用いられ、更に必要に応じて電極全体としの抵抗を低
下すべく透明電極に接して金属電極を設けることもでき
る(図示せず)。
【0041】液晶11を構成する液晶材料としては、好
ましくは強誘電性或いは反強誘電性を示すカイラルスメ
クティック液晶が用いられる。この場合前述したクラー
ク及びラガウェルのモデルによる双安定性を実現させる
ため、セルギャップ(基板間距離)としては0.5〜5
μm程度が好ましい。また液晶材料としてネマティック
液晶を用いることもできる。
【0042】特に本発明では、液晶材料として、上述の
カイラルスメクティック液晶であって、降温下でコレス
テリック相を持たない材料が好適に用いられる。例えば
反強誘電性を示す液晶の場合、合成されている液晶材料
のほとんどにはコレステリック相が存在しない。あるい
は、強誘電性を示す液晶の場合、シェブロン構造を解消
しブックシェルフといわれる層状構造即ちスメクティッ
ク層が基板に対し実質的に垂直であるような、あるいは
それに近い構造を現出させ、高コントラストな良好な液
晶素子を実現するべく、一例として、パーフルオロエー
テル側鎖を持つ液晶性化合物(1993年 第4回 強
誘電液晶国際会議P−46、MarcD.Radcli
ffeら)を用いることが好ましいが、かかる液晶材料
は、材料自体の特性によりブックシェルフに近い層傾き
角の小さなスメクティック層の構造を現出することがで
きる材料であって、コレステリック相を持たない、等方
相−スメクティック液晶相転移を示す液晶材料である。
【0043】上記ブックシェルフ層構造を呈する液晶材
料として、具体的に、フルオロカーボン末端部分及び炭
化水素部分が中心核によって結合された構造であって、
スメクティック中間相又は潜在的スメクティック中間相
を有するフッ素含有液晶化合物を少なくとも1種を含有
するカイラルスメクティック液晶組成物を用いることが
できる。ここで言う潜在的スメクティック中間相を持つ
化合物とはそれ自身でスメクティック中間相を示してい
なくとも、スメクティック中間相を持つ化合物または他
の潜在的スメクティック中間相を持つ化合物との混合物
において、適当な条件下でスメクティック中間相を発現
する化合物を言う。また、当該フッ素含有液晶化合物の
構造において、中心核とは、少なくとも2つの芳香環、
脂肪族環、又は置換芳香族環、置換複素芳香族から選ば
れ、これら環は、互いに、−COO−、−COS−、−
HC=N−、−COSe−からなる群より選ばれる基に
よって結合されていてもよい。これらの環は、縮合して
いても、いなくてもよい。複素芳香族環中のヘテロ原子
は、N、0、Sから選ばれる少なくとも1つの原子を含
む。脂肪族環中の隣接していないメチレン基はOによっ
て置換されていてもよい。
【0044】上記フッ素含有液晶化合物、あるいはこれ
を含有するカイラルスメクティック液晶組成物の処方の
具体例としては、特開昭63−27451号公報、特開
平2−142753号公報、米国特許5,262,08
2号、国際公開93/22396号、米国特許5,41
7,813号等に記載されたものが挙げられる。
【0045】尚、上述したコレステリック相を示さず、
等方相−スメクティック液晶相転移を示す液晶材料は、
配向形成に関して、前述のバトネ成長の異方性が顕著で
あり、スメクティック液晶相の微少な核が生成された
後、スメクティック層の法線方向に急激にバトネが成長
し、更にスメクティック層へとバトネの領域の拡大が急
速に進行するという過程を経る。従って、当該液晶材料
を用いる素子では、液晶と接する基板の界面において一
軸配向規制力あるいは液晶との濡れ性等に分布を設け、
スメクティック液晶相の微少な核発生位置に選択性を持
たせ、バトネの核生成後の成長領域においては、特に基
板と液晶の界面に配向規制力が存在しなくても上記のバ
トネ成長方向の異方性により配向形成がなされる。よっ
て、かかる液晶材料は、図1、2に示すような一軸配向
規制力を有する配向制御層15aのように、基板上にお
いてパターニング等によって選択的に配置し、液晶の駆
動領域内において配向制御層の占める割合を減少させた
構造には特に好適である。
【0046】液晶に対し一軸配向規制力を有する配向制
御層15aは、所定のパターン形状で設けられたもので
あるが、前述したように、該ライン部分間で液晶に接す
る下地層14aの材料や表面特性との組合せにより、該
ライン部の表面R1に接する液晶領域が、図3及び4で
説明したような液晶配向状態の形成過程で液晶相への転
移の際における核発生(バトネ発生)部分となるように
機能する。即ち、配向制御層15aのライン部の表面R
1に対応する液晶領域の液体相−液晶相転移温度が、該
ライン部の表面R1に対応しない部分(ライン部間の表
面R2に対応する部分)での液晶領域の液体相−液晶相
転移温度より高くなる。
【0047】配向制御層15aは、好ましくは基板に
(下地層14a上に)設けられた所定の材質の膜に一軸
配向処理を施すことによって形成され得る。
【0048】上述の強い一軸配向規制力を有する配向制
御層15aの材料の感光性材料として、膜としての耐熱
性や安定性、その他様々な膜物性の点からポリイミドま
たはポリアミドイミドを用いることが好ましい。
【0049】ポリイミドまたはポリアミドイミドに感光
性を付与する方法としては、加熱焼成時において低温で
の処理が可能となることから、前駆体ポリアミド酸のカ
ルボキシル基にイオン結合を介して、例えば感光性モノ
マーによる感光基を結合させた後、前駆体状態で基板に
塗布し、パターニング後に加熱焼成してポリイミドまた
はポリアミドイミドとする際に感光部が揮散し、実質的
にポリイミドまたはポリアミドイミド主骨格が残るよう
に設計されたポリイミドまたはポリアミドイミド樹脂を
用いることが好ましい。より具体的には、(1)下記般
式(I)を主成分とするポリマーと、
【0050】
【化9】 (式中、Rは
【0051】
【化10】 から選ばれる。
【0052】Lは1もしくは2を示し、かつカルボキシ
ル基は主鎖を構成するカルボニル基に対しオルト位に結
合する。m、nはそれぞれ独立に0もしくは1であり、
oは2から10の整数である。)(2)化学線により2
量化又は重合可能な炭素−炭素二重結合及びアミノ基を
含む化合物と、(3)必要に応じて光重合開始剤及び光
増感剤の少なくとも一種を含有する感光性材料を用いる
ことができる。
【0053】一般式(I)で示される構造において、R
としては原料調達の容易性から好ましくは
【0054】
【化11】 であり、さらに好ましくは
【0055】
【化12】 が用いられる。
【0056】m、nは好ましくは共に0であり、oは好
ましくは4から8の整数を示す。また、一般式(I)で
示されるポリイミドの具体的な構造としては、例えば以
下の繰り返し単位構造が上げられる。
【0057】
【化13】
【0058】
【化14】
【0059】
【化15】
【0060】
【化16】
【0061】
【化17】
【0062】
【化18】
【0063】
【化19】
【0064】
【化20】
【0065】
【化21】
【0066】
【化22】
【0067】また、本発明における化学線により2量化
又は重合可能な炭素−炭素二重結合及びアミノ基を含む
化合物としては、好ましくは下記一般式(III)およ
び(IV)で表わされる構造の化合物が挙げられる。
【0068】
【化23】 (式中、R は水素原子又は炭素数1から4の低級ア
ルキル基を示し、Rは炭素数1から4の低級アルキル
基を示す。qは1から8の整数を示す。)
【0069】
【化24】 (式中、R は水素原子又はメチル基を示し、rは1
から3の整数、sは0から2の整数を示す。ただし、r
+sは3である。)
【0070】一般式(III)および(IV)で表わさ
れる化合物の具体的な例を以下に示す。
【0071】
【化25】
【0072】
【化26】
【0073】これら化学線により2量化又は重合可能な
炭素−炭素二重結合を有する化合物は、感光性材料のポ
リマーの全構成単位の3%に相当する当量以上、望まし
くは30%に相当する当量以上で、かつポリマー中の全
カルボキシル基の当量の2倍以下の割合でポリマーと混
合されているのが望ましい。
【0074】本発明で用いられる光重合開始剤または光
増感剤としては、既に公知の種々の材料を用いることが
できるが、例えばベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、
4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、キサント
ン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−
メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサント
ン、2,4−ジエチルチオキサントン、アセトフェノ
ン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメ
トキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジル、2−
エチルアントラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプ
ロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4′−イソプロピル
−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロ
ヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メ
チルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−1−プロパノ
ン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モ
ルホリノフェニル)−1−ブタノン、イソプロピルベン
ゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベン
ゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、
2,2−ジエトキシベンゾフェノン、カンファーキノ
ン、ベンズアンスロン、3,3′,4,4′−テトラ
(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、
N−フェニル−グリシン、p−ヒドロキシ−N−フェニ
ルグリシン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テ
トラメチルチウラムジスルフィド、p−トリルジスルフ
ィド、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチ
ルアミノ安息香酸イソアミル、3,3′−カルボニル−
ビス(7−ジエチルアミノ)クマリン等を挙げることが
できるが、これらに限定されるわけではない。光重合開
始剤または光増感剤の添加量は重合材(感光性モノマ
ー)100重量部に対して0.05から20重量部で用
いることが好ましい。
【0075】本発明の感光性材料は、スピンコート法、
浸漬法、噴霧、印刷等の方法により基板(層14a)上
に塗布した後、電気炉あるいはホットプレート等の加熱
手段を用いて30〜150℃の温度で数分から数十分の
プリベークを行なうことにより、塗膜中の大部分の溶媒
の除去を行なう。この塗膜にネガマスクを置き、X線、
電子線、紫外線あるいは可視光線等の化学線を照射しパ
ターン形成を行なう。その後未露光部を現像液で溶解除
去することによりレリーフパターンを得る。
【0076】現像液としてはN−メチル−2−ピロリド
ン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチル
ホルムアミドなどや、メタノール、エタノール、イソプ
ロピルアルコール、水などを単独または混合して使用す
る。現像方法としては、スプレー、パドル、浸漬、超音
波などの方式が可能である。次に、メタノールやエタノ
ール、イソプロピルアルコール等のリンス液により、レ
リーフパターンをリンスする。現像により得られたれレ
リーフパターンのポリマーは前駆体の形であるため、こ
れを上記加熱手段によりl50〜450℃、好ましくは
150〜300℃の温度で数十分から数時間加熱するこ
とによりパターン化されたポリイミド膜が形成され、化
学線によって硬化した感光成分は熱により分解し揮散す
ることで実質的に主骨格からなるポリイミドのレリーフ
パターンを得る。その後表面をビロード、布あるいは紙
等の繊維状のもので摺擦(ラビング)することにより配
向制御層とする。
【0077】配向制御層15aのパターンは、図1に示
すストライプ形状が好ましいが、液晶材料の配向特性、
配向制御層の一軸配向規制力の程度に応じて、あるいは
液晶素子の光学変調の単位や画素のサイズ等に応じて、
格子状、アイライド状等種々の形状を選択することも可
能である。但し、当該配向制御層15aの領域のパター
ンの寸法については、前述したような素子内での配向状
態の均一化と、液晶駆動(スイッチング)の高速化の両
立を考慮して、少なくとも一軸配向規制力を有する配向
制御層15aの領域の設けられた基板における全平面積
が、該基板における配向制御層が設けられていない領域
の全平面積より小さくなるように設定することがより好
ましい。
【0078】また、一軸配向規制力を有する配向制御層
15aのパターン形状と一軸配向規制力の軸方向(一軸
配向処理の方向)の関係についても、上記の液晶材料の
配向特性、配向制御層の一軸配向規制力等に応じて決定
することができる。
【0079】液晶11として、スメクティック液晶相を
示す液晶を用いる場合、図4(A)〜(C)に示すよう
に、配向制御層15aとしてストライプ形状とし、更に
このストライプ方向に平行に一軸配向処理方向を設定し
て配向状態を形成する際には、特に配向制御層15aの
ライン距離が過度に大きいと、ライン間における広い液
晶領域に対して基板面に一軸配向規制力が存在しないた
め、同図(C)に示すようにスメクティック液晶相のバ
トネから生じるブランチが直線的ではなく、屈曲して成
長しスメクティック層が屈曲して形成する可能性があ
る。その結果、素子全面がスメクティック液晶相になる
まで冷却した後は、一軸配向規制力の存在する配向制御
層15aのライン間のほぼ中央付近における液晶領域で
は、スメクティック層方向が不均一となる恐れが生じ
る。
【0080】一方、図3(A)〜(C)に示すように、
配向制御層15aとしてストライプ形状とし、更にこの
ストライプ方向に垂直に一軸配向処理方向を設定して配
向状態を形成する際には、同図(C)に示すようにスメ
クティック液晶相のバトネから生じるブランチが、配向
制御層15aのストライプのラインに沿ってほぼ直線的
に成長し、スメクティック層も当該ライン方向に均一に
形成し易くなる。従って、液晶11としてスメクティッ
ク液晶相を示す液晶を用いる場合、配向形成の際にブラ
ンチの成長過程において層方向の均一性を維持する意味
において、より好ましくは形成されるスメクティック層
方向に連続または略連続するようなストライプ形状、即
ち一軸配向規制力の軸方向(例えば上述のラビング処理
におけるラビング軸)に垂直なストライプ状パターンと
する。
【0081】配向制御層15aのパターンが、図1に示
すようなストライプパターンである場合、上述したスメ
クティック層の方向と同方向が長手方向となる(一軸配
向規制力の軸方向に沿った)複数のストライプからなる
パターンであって、該配向制御層の一ストライプ(ライ
ン)部分のスメクティック層の法線方向の長さが、該配
向制御層の隣接するストライプ(ライン)間の該配向制
御層が設けられいない部分のスメクティック層の法線方
向の長さより短いことが好ましい。
【0082】配向制御層15aのパターンが、図1に示
すようなストライプパターンである場合、そのライン間
の間隔の設定が、得られる配向状態に関連して重要であ
る。特に図4に示すような一軸配向規制力の軸方向に実
質的に同様(平行)なストライプ状パターンとした場
合、特にストライプのライン間の問隔をより小さくする
ことによって、図5に示すようにバトネの発生領域が増
加し、更にバトネからブランチが成長した際に、隣接す
るライン上のバトネから成長してきたブランチと接合す
るまでの成長距離がより短くなる。こうして、特にスメ
クティック液晶相を示す液晶を用いる場合では、スメク
ティック層の層方向の均一性が向上する。但し、前述し
たように絶縁性材料からなる配向制御層15aが液晶に
接する面積を極力低減し、これを介せずに液晶に対して
電圧が印加される液晶領域を大きくするため、配向制御
層のライン間にはある程度の間隔を設けることが必要で
ある。
【0083】例えば、図3及び図4のような構造の場合
で、ラインの幅を約2〜20μmとして、ラインの間隔
を10μm〜50μmの範囲で設定することが好まい。
また、ストライプパターンの厚みを50〜5000Å、
200〜1000Åとすることが好ましい。
【0084】一方、配向制御層15aのライン部間で液
晶11と接する面R2を構成する層14aとしては、図
3〜5に示すような配向形成過程を発現させるべく、配
向制御層15aに使用される材料、その特性等との関係
を考慮し、実質的に液晶に対して配向制御層15a上の
面R1に比べて一軸配向規制力を持たずあるいは一軸配
向規制力が弱く、液晶駆動特性、特にカイラルスメクテ
ィック液晶の駆動特性を影響を与えないような絶縁性が
抑制され、液晶分子に対する影響が小さい材料を選択し
て用いる。
【0085】かかる層14aとして、一軸配向規制力を
実質的に持たない層とするために、例えばラビング処理
等によっても一軸配向規制力が実質的に付与され得ない
金属酸化物等の無機膜等の硬度の高い材料を用いること
が好ましい。この点では、図2に示す構造では、層14
aを省略してITO等からなる透明電極13a上にパタ
ーン形状の配向制御層15aを設けることもできる。
【0086】また、層14aは、図3〜5に示すような
配向形成過程を良好に進行させるべく、その表面R2に
おいて、一軸配向規制力を有する配向制御層15aの表
面R1に比較して液晶分子の相互作用を低下させてお
く。このため、層14aについては、その表面R2が、
液晶との濡れ性がよくない方向(液滴をはじく特性がよ
り強い)、接触角が大きくなる方向、表面エネルギー分
散項(γd)がより小さくなる方向、又は表面エネルギ
ー水素結合項をより大きくする方向で、材料、或いは必
要に応じてその形成方法や処理方法を選択して形成する
ことが好ましい。こうして、配向制御層15aのライン
部の表面R1に対応する液晶領域の液体相−液晶相転移
温度が、該ライン部間の表面R2に対応する部分での液
晶領域の液体相−液晶相転移温度より高くし、前述の良
好な配向形成過程を実現することが可能となる。
【0087】具体的には、層14aとして、ラダー型の
ポリシロキサン膜や有機変成シリカ膜等の表面エネルギ
ーの分散項が配向制御層13aポリイミド等より相対的
に低い材料を用いることができる。
【0088】更に、層14aとしては、配向制御層15
aに使用される材料に比較して液晶分子に対する作用が
小さいことに加えて、液晶の駆動特性を向上させるべ
く、体積抵抗値をl×l04 〜l×l010Ωcmの範囲
とすることが好ましい。かかる特性を得るために、例え
ば、必要に応じて多結晶又は非晶質金属酸化物からなる
膜、多結晶又は非晶質半導体からなる膜、及び微粒子
(導電性微粒子)を絶縁性の母材、バインダー中に分散
させた膜を用いることができる。上記多結晶又は非晶質
金属酸化物、多結晶又は非晶質半導体からなる膜、及び
微粒子には必要に応じて導電性制御不純物が添加されて
いてもよく導電性が調整される。
【0089】前記多結晶又は非晶質金属酸化物からなる
膜として、例えば、ZnO、CdO、ZnCdOx 等の
12族元素の酸化物の膜、GeO2 、SnO2 、GeS
nOx 、TiO2 、ZrO2 、TiZrOx 等の4族元
素、14族元素の酸化物の膜が挙げられる。
【0090】前記多結晶又は非晶質半導体からなる膜と
しては、Si、SiC等の14族半導体の膜が挙げられ
る。また、微粒子としては、例えば、上記12族元素の
酸化物、4族元素の酸化物、14族元素の酸化物、14
族の半導体の微粒子が挙げられる。
【0091】必要に応じて上記多結晶又は非晶質金属酸
化物、多結晶又は非晶質半導体や微粒子に添加される導
電性制御不純物としては、12族元素の酸化物に対して
ドープする導電性制御不純物には、例えばn型不純物
(ドナー/電子伝導を高める不純物)として13族元素
であるB、Al、Ga、In等が、p型不純物(アクセ
プタ/ホール伝導度を高める不純物)として1族、11
族元素であるCu、Ag、Au、Li等用いられる。ま
た14族元素の酸化物、半導体にドープする導電性制御
不純物には、例えば、n型不純物として15族元素であ
るP、As、Sb、Biが、p型不純物として13族元
素であるB、Al、Ga、In等が挙げられる。
【0092】このような導電性制御不純物については、
当該不純物が添加された材料を含む配向制御層を有する
基板側の表面電位が正の場合はドナーを、負の場合はア
クセプタを用いる、不純物の添加濃度については、材料
(微粒子、不純物の材料の組合せ)の種類、結晶状態
(結晶欠陥密度の多寡)に応じて設定されるが、不純物
が添加された状態での材料の自由電子あるいは自由正孔
の濃度が1.0×1011〜1.0×1014atm/cm
3 程度となるようにすることが好ましい。不純物を添加
する母体の材料として多結晶又は非晶質の材料を用いる
場合は、不純物の添加効率を考慮して、1.0×1017
〜1.0×1020atm/cm3 (母体材料に対して
0.01〜1%程度)を実際の添加量とする。
【0093】前記微粒子を分散させるバインダーとなる
材料としては、例えば、SiOx 、TiOx 、ZrO
x 、その他の酸化物溶融母材、シロキサンポリマー等が
挙げられる。
【0094】一方、対向する基板12bにおける配向制
御層15bについては、用いる液晶材料の特性に応じて
一軸配向規制力を付与する、或いは他の配向制御能を付
与する。
【0095】前述したコレステリック相をとらず等方相
−スメクティックといった相転移系列を示す液晶材料を
用いる場合では、一方の基板12aにおける一軸配向規
制力を持った配向制御層15aに対し、他方の基板12
bにおける配向制御層15bを一軸配向規制力を実質的
に持たない層とすることが好ましい。この場合配向制御
層15bには、対向する基板12a側で前述したように
液晶分子に対する相互作用が小さい層14aと同様の機
能を持たせることがより好ましく、当該層14aとして
使用可能な材料を用い、特に好ましくは層14aと同一
材料を用いる。こうして、液晶11に対して実質的に接
する両基板の界面の大部分では絶縁性が抑制され、液
晶、特にカイラルスメクティック液晶の駆動特性の向上
がなされる。
【0096】その他、上記構造の液晶素子では、配向制
御層15aや15b、層14aとは別に、対向する基板
相互のショートを防止する層としての絶縁膜や、他の有
機材料からなる層、無機材料からなる層を設けてもよ
い。
【0097】スペーサー16は、基板間距離(セルギャ
ップ)を決定するものであり、例えばシリカビーズ等が
用いられる。かかるスペーサー16に加えて、基板12
a及び12b間の接着性を向上させるべく、エポキシ樹
脂等の樹脂材料からなる接着性粒子を基板問に分散配置
してもよい。
【0098】ところでスメクチック液晶表示素子では同
一画像を長時間表示し続けた場合の表示焼き付きに関す
る特性が、ネマティック液晶表示素子と比較すると相対
的に大きく現れるという問題が挙げられる。この問題は
スメクティック液晶共通の問題であるが、特に双安定性
を有する強誘電性液晶において表示焼き付き問題は顕著
に観測されている。このスメクティック液晶、特に強誘
電性液晶において問題となる表示焼き付き現象は電気的
な要因と配向的な要因によって生じるものと理解するこ
とができる。
【0099】まず、強誘電性液晶では自発分極によりイ
オンの偏在が誘発される結果、電気的非対称性を生み出
し双安定性が崩れてしまうという、電気的要因による双
安定性の崩れが表示焼き付きとして観測される。これは
強誘電性液晶特有の問題といえる。
【0100】一方、焼き付き現象は配向制御膜表面と液
晶との界面分子配向の問題であるものと考えられる。こ
れは液晶素子全てに当てはまる現象であるが、液晶素子
において、基板間の中央付近におけるパルクの分子配向
方向が界面分子配向方向を変化させる結果、駆動特性を
変化させるため表示焼き付きとして観測されるものであ
る。
【0101】即ち、少なくとも一方の基板に一軸配向処
理が施された液晶素子では、一軸配向規制力を有する基
板界面近傍における液晶分子は平均的にはその配向が容
易である方向に分子配列しているが、バルクの分子配列
方向に関しては、液晶素子に対して印加される電界に方
向に影響を受けたものとなり、これらの分子の配列方向
がずれることになってしまう。そのとき基板間の液晶の
厚み方向における連続体としての液晶分子は、基板界面
とバルクとの分子配向方向の歪みによって生じた弾性自
由エネルギーの増加分を減少させるために、界面分子そ
のものの配向方向を変化させてしまう。このときの界面
分子の配向変化量は、例えばフランクの弾性定数が大き
い等、連続体としての特性が大きい液晶材料ほど顕著に
なると考えられる。そのため、より高次の液晶相である
スメクティック液晶はネマティック液晶と比較すると相
対的に表示焼き付き特性が悪くなるものと考えられる。
【0102】そこで本発明の液晶素子では、上述した表
示焼き付き特性を改善すべく一対の基板間において、該
液晶の部分が、基板界面付近の液晶分子と基板間のバル
ク液晶分子が実質的に連続配列状態である第一の液晶領
域と、基板界面付近の液晶分子と基板間のバルク液晶分
子が不連続配列状態である第二の液晶領域から構成され
るようにすることが好ましい。
【0103】そして、このような第一及び第二の液晶の
領域を有する素子を、図1〜5で説明したような少なく
とも一方の基板に強い一軸配向規制力を有する配向制御
層が選択的に設けられた素子により実現することができ
る。
【0104】このような第一及び第二の液晶領域を有す
る液晶素子について図16を参照して説明する。
【0105】同図において、液晶素子10は、液晶20
を夫々該液晶に電界を加える電極23a、23b及び液
晶の配向状態を制御する配向制御層25a、25bを備
えた基板22a及び22b間に挟持した構造を有してい
る。かかる素子は、液晶に接する配向制御層25a(及
び/又は25b)の材料を適宜選択し、液晶に接する界
面(R21、R22)の表面状態やその特性を制御する
ことにより、液晶20が、基板界面付近の領域L11の
液晶分子と基板間の領域のバルク液晶分子L12が実質
的に連続配列状態である第一の液晶領域L1と、基板界
面付近の領域L21の液晶分子と基板間の領域L22の
バルク液晶分子が不連続配列状態である第二の液晶領域
L2から構成されるようにしたものである。
【0106】かかる液晶素子における作用について説明
する。前述のように、液晶素子における焼き付き現象は
バルクの配向歪みによって生じる弾性自由エネルギーの
増加分を減少させるため界面分子配向方向を変化させる
結果生じる現象と考えられる。即ち、焼き付き現象は素
子の基板間でバルク部分と界面部分といった素子の厚み
方向の液晶部分の全てが弾性連続体として挙動するとき
に生じる現象といえる。
【0107】そこで、図16に示す構造の液晶素子で
は、液晶領域L2においては、配向制御層25aの界面
近傍の領域L21における液晶分子と、基板間の領域L
22におけるバルク液晶分子が不連続配列状態を有するこ
とにより、表示焼き付き現象の発生を抑制している。具
体的には領域L21での液晶配向状態と領域L22での
バルクの液晶配向状態とが全く異なっており、分子集団
としての連続体が形成できないように分子配向制御して
いる。より具体的には領域L21では液晶分子の配向方
向が完全にランダムな方向を向いており、領域L22で
は液晶分子の配向方向は整然と一軸方向(配向制御層2
5aにおける一軸配向処理方向)へと配向するよう制御
している。液晶領域L2では、こうした配向状態とする
ことにより、界面とバルクとは不連続配向状態となり配
向状態が互いに影響しあわない、即ち経時的に配向状態
が変化することのない素子を実現できる。
【0108】尚、液晶領域L2を構成する基板界面付近
の領域であるL21及びバルク部分に対応する領域L2
2、液晶領域L1を構成する基板界面付近の領域である
L11及びバルク部分に対応する領域L12について
は、領域L21及びL11は、基板界面(配向制御層2
5a(又は25b)と液晶20との界面)から100Å
程度の部分であり、領域L22及びL12は、上記領域
L21及びL11を基板界面から除いた基板間の中央部
分であると規定することができる。これら領域におけ
る、液晶分子の挙動については、Appl.Phys.
Lett.Vo1.53(24)P2397−2398
に記載のTIR(Total InternalRef
lection)法、SHG法により観察することがで
きる。
【0109】次に、上記の液晶素子を得るための手段、
特に配向制御層25a(25b)の調整について説明す
る。通常、液晶素子は一対の基板に施された配向制御方
向にしたがってセル全体の分子配向方向が決定される。
つまり、液体相から液晶相への相転移過程においては配
向制御膜近傍の分子から液晶相へと相転移する。そして
その際、配向制御膜上に施された配向処理方向にしたが
って分子配列し、更に冷却が進行すると、液晶相への相
転移がバルク部分にも及びセル全体が液晶相となる。つ
まり、通常の液晶素子は界面の規制を受けて分子配列が
形成されることから、上記の領域L1のような界面とバ
ルクは連続した分子配列状態が得られる。
【0110】一方、上記の領域L2のような基板界面と
バルク部分とで不連続な分子配列状態を得るためには、
同一基板面内に一軸配向規制力を有する部分(一軸配向
処理がなされていない部分)と、一軸配向規制力を実質
的に持たない部分(一軸配向処理が施されている部分)
の両方を設けること好ましい。具体的は、配向制御層2
5aにおける表面R21を一軸配向規制力を有する部分
とし、R22を一軸配向規制力を実質的に持たない又は
R21に比べて一軸配向規制力が相対的に弱い部分とす
る。
【0111】このような配向制御能を有する層25aを
有する基板により構成された素子の場合、液体相−液晶
相相転移は、一軸配向規制力を持つ部分(R21)にお
ける液晶領域の界面近傍分子(L11)から生じ、配向
規制されていない部分に対応する液晶領域(L2)へと
拡大する。この相転移の順序については、液晶素子が一
般に一軸配向規制力が強いほど液晶相への相転移温度が
高くなることからも明らかである。
【0112】このように、同一基板面内に一軸配向規制
力を有する部分(R21)と、一軸配向規制力を実質的
に持たない部分(R22)とが設けられている場合、特
に一軸配向規制力を実質的に持たない部分(R22)に
対応する液晶領域のバルク配向(L22)は、その液晶
領域の界面(R22)の影響ではなく、隣り合った一軸
配向規制力を有する部分(R21)に対応する液晶領域
のバルク部分(L12)の配向にしたがって配向させる
ことができる。中でも特にスメクティック液晶のように
結晶性の高い液晶相では、一軸配向規制力を有する部分
(R21)に対応する液晶領域(L1)において均一配
向を形成させた後、一軸配向規制されていない部分(R
22)に対応する領域(L2)へと結晶成長させること
により、基板界面における配向規制の有無に関わらずセ
ル全体を均一に配向させることができる。
【0113】スメクティック液晶は層法線方向に対する
一次元結晶であることから、このときの結晶成長方向は
層法線方向に向かって進行し易い。従って、一軸配向規
制力を有する部分(R21)はスメクチック層方向に関
して連続、あるいは略連続させておくことが望ましい。
一方この時、一軸配向規制されていない部分(R22)
に対応する液晶領域(L2)では、界面近傍領域(L2
1)の分子の配向方向はランダムな方向を向いている。
これは界面近傍領域(L21)の分子から先に液晶相へ
と相転移する、即ち、バルク部分(L22)が液体相を
示す温度範囲においても界面近傍領域(L21)の分子
は界面(R22)の規制を受けてある程度分子配列して
いることから、必然的に一軸配向規制されていない界面
近傍領域(L21)の配向方向はランダムな方向を向か
ざるを得ないことによる。こうして、バルク部分(L2
2)が均一に配向し界面近傍領域(L21)がランダム
に配向するという、液晶20の厚み方向に不連続な配向
状態(液晶領域L2)を示す液晶素子が実現できる。
【0114】上記L2の液晶領域に対応する配向制御層
25aの界面R22については、そのの表面状態を算術
平均粗さRaが2nm以上の表面粗さ、自乗平均粗さR
msが2.5nm以上の表面粗さ、あるいは表面粗度5
%以上の表面粗さとすることが好ましい。
【0115】こうすることで、当該界面R22近傍び液
晶領域(L21)における分子の起き上がり角度(プレ
チルト角)は表面凹凸にならった角度になるため、プレ
チルト角に関しても界面近傍層ではランダムな角度とな
る。つまり、基板面内方向(方位角方向)だけでなく基
板からの起き上がり方向(極角方向)に関しても基板界
面近傍の液晶領域(L21)とバルク領域(L22)と
で不連続な分子配列とすることができるため、表示焼き
付きの抑制効果がより大きくなる。
【0116】尚、ここでいう算術平均粗さRaとは、定
量面で中心面から表面までの偏差の絶対値の平均値を表
し、自乗平均粗さRmsとは、定量面で中心面から表面
までの偏差の自乗の平均値の平方根を表している。また
表面粗度とはある面積S上に凹凸形状を有する膜が存在
したとき表面の凹凸を含めた表面積S′との関係によっ
て次式のように表される。
【0117】
【数1】表面粗度=(S′−S)/S
【0118】尚、図16に示すような構造の液晶素子で
は、例えば液晶20の部分が、互いに離間した複数の実
駆動領域の単位に分割され、これらを実駆動領域におけ
る液晶を全て或いは選択的に駆動させるような態様で使
用され得る。液晶素子では、かかる実駆動領域はいわゆ
る画素に相当する。かかる液晶素子の態様では、少なく
とも実駆動領域は上記第二の液晶領域L2に相当し、実
駆動領域間を第一の液晶領域L1に相当するようにする
ことが好ましい。
【0119】上述したように、第一の液晶領域(L1)
及び第二の液晶領域(L2)は、好ましくは基板におけ
る液晶との界面領域に一軸配向規制力を有する部分(R
21)と、一軸配向規制力を実質的に持たないか相対的
に小さい部分(R22)を設けることにより、これらに
対応して形成することができる。従って、図1及び図2
に示すような構造で、前述した部材処理を適用した基板
及び素子の構成により、特に配向制御層15aを前述し
た感光性材料によるパターニングで形成して素子を作製
し、図3〜5に示すような配向形成過程を発現させるこ
とにより、図16に示すような第一の液晶領域(L
1)、第二の液晶領域(L2)を有する素子を得ること
ができる。図16における第一の液晶領域(L1)を付
与する基板上の面領域R21が、図2における一軸配向
規制力を有する配向制御層15aの基板と実質的に平行
な面領域であるR1に、図16における第二の液晶領域
(L2)を付与する基板上の面領域R22が図1での配
向制御層15aのライン間の面領域R2に、夫々相当す
る。
【0120】即ち、図2に示す構造の液晶素子では、素
子内において通常絶縁性を有する一軸配向規制力を有す
る配向制御層(15a)が、配向状態形成の開始部分と
なる核(バトネ)を供給するために必要なパターン形状
で設けられ、図3〜5に示すように配向状態の形成過程
により素子全面に均一な配向状態の形成が確実になさ
れ、かかる配向状態の形成過程と、配向制御層15aの
表面R1と、その間隙の層14aの表面R2の特性の関
係により、R1に対応する液晶領域が前述した図16に
示す液晶領域L1のように領域L11とL22が、連続
配列状態となり、R2に対応する液晶領域が前述した図
16に示す液晶領域L2のように領域L21とL22が
不連続配列状態となる。
【0121】特に、図2に示す素子構造で図16に示す
第一の液晶領域L1、第二の液晶領域L2を良好に形成
させるべく、特に領域L21とL22が不連続配列状態
となるように領域R2を形成する。
【0122】下地層14aとしては、表面状態を前述し
た所定の粗さとする。例えば、前述した液晶との濡れ性
がよくない方向(液滴をはじく特性がより強い)、接触
角が大きくなる方向、表面エネルギー分散項(γd)が
より小さくなる方向、又は表面エネルギー水素結合項を
より大きくする方向の材料を粗面化して用いることが好
ましい。
【0123】液晶領域L2を得るために又、電気特性や
表面特性を所望のものとすべく特に好ましくは、下地層
14aとして、前述した微粒子(導電性微粒子)を絶縁
性母材、バインダー中に分散させた膜を用いる。かかる
微粒子には必要に応じて導電性不純物を添加し導電性を
調整する。
【0124】上記構造の液晶素子1では、好ましくは、
液晶11が基板間の液晶が、互いに離間した複数の実駆
動領域から構成されるものであり、該実駆動領域におい
て、信号電源(図示せず)からのスイッチング信号に応
じて電極12a及び12bにより液晶11に電界が印加
されてスイッチングが行われ、液晶11中を通過する光
が変調され、少なくとも明状態及び暗状態が形成され
る。
【0125】更に、かかる配向制御層15aに対応する
液晶領域(領域R1に対応する素子の厚み方向の全液晶
領域)において、暗状態が示されるように、該領域での
液晶分子の位置を固定化させることもできる。特に、配
向制御層15aの領域R1とこの領域に対向する配向制
御層15bの表面電位の差を50mVより大きく、好ま
しくは100mVより大きくし、この対向面間の領域で
常に暗状態が示されるように液晶分子の位置を固定化さ
せる。
【0126】強誘電性を示す液晶を用い、ストライプ状
の電極を有する一対の基板を対向せしめたマトリックス
タイプの液晶素子では、夫々の基板の電極が互いに交差
する部分以外に対応する領域、即ち画素間の領域では、
液晶の分子配向状態を電界により制御することはでき
ず、画素間で光漏れが生じ表示におけるコントラストが
劣化する恐れがあるため、当該画素間領域に対応して基
板に金属材料等のブラックマトリックスといった部材を
設け遮光している。しかし、このブラックマトリックス
の形成は、上記の画素電極が互いに交差する部分に対応
するべく位置合わせ等が必要となり、コストの向上をも
たらし、またブラックマトリックスとして金属材料等を
用いる場合、素子表示面の反射率が高くなり、表示品位
が低下することがある。
【0127】更に、反強誘電性液晶を用いたマトリック
スタイプの液晶表示素子においては、画素間において液
晶の配向状態が他の領域に比較して若干乱れることがあ
る。この場合においても、画素間の光漏れ生じ表示にお
けるコントラストが劣化する恐れがあるため、上述のよ
うに当該画素間領域に対応して基板に金属材料等のブラ
ックマトリックススといった部材を設け遮光する必要が
生じ、同様に表示品位の低下の問題が生じる。
【0128】従って、上述のような暗状態が固定的に形
成される領域を画素間領域に対応して設けることで均一
な液晶分子配向を実現しつつ、広い駆動マージンを実現
し、より高速なスイッチング特性を有し、且つ簡単な構
造で実駆動領域間、特に表示素子における画素間におい
て確実に遮光を行い、コントラストを充分に確保するこ
とができる。
【0129】次に図17を参照して本発明の液晶素子の
第二の実施態様を説明する。同図において図2と同一の
符合は同一の部材を示す。
【0130】図17に示す第二の実施態様にかかる液晶
素子1では、基本的な構造は図2に示す第一の実施態様
と同様であり、基板12a側において、液晶11に対し
て電界を印加する電極13a上に、下地層14aを介し
て配向制御層15aが、ストライプ形状や格子状といっ
た所望の形状で設けられて液晶11に接し、その上面、
即ち基板12aと実質的に平行な面(領域R1を構成す
る)において、少なくとも液晶11に対し一軸配向規制
力を有する。更に、配向制御層15aに対応しない領域
では、下地層14a上に層17aが設けられた領域(R
2)で液晶11に接している。ここで層17aは、配向
制御層15aと同様に絶縁性材料等からなり適切な処理
を施すことで液晶に対する一軸配向規制力を呈する材料
により形成されるが、例えば配向制御層15aに比較し
て極めて薄い厚みとすることで、領域(R1)に比較し
て領域(R2)での液晶に対する一軸配向規制力を相対
的に小さく液晶との相互作用が小さくなるようにする。
尚、対向する基板12bでは、液晶11対して電界を印
加する電極1lb上に、液晶に接し該液晶の配向制御に
寄与し得る配向制御層15bが形成されている。
【0131】上記構造の液晶素子1においては、液晶1
1に接する、配向制御層15a、層17a、配向制御層
15bや、液晶11の材料、処理方法、条件等を適宜設
定することにより、第一の実施態様と同様に、図3〜5
に示すように、液晶11におして、降温時に液晶の液体
相−液晶相の相転移過程で、配向制御層15aの基板と
平行方向の面領域R1(第一の領域)に接する領域から
液晶相への相転移が生じて、配向制御層15aの一軸配
向規制力の軸方向(一軸配向処理の軸方向)に沿って連
続的に液晶層転移領域が成長し、更に面領域R2(第二
の領域)に当該相転移領域が拡大し、配向状態が形成さ
れる。特に、配向制御層15aと、層17aの表面の一
軸配向規制力の関係及び液晶に対する相互作用の関係に
より、即ち前者の表面の一軸配向規制力の強さを相対的
に強くし、且つ液晶との相互作用を大きくすることで、
上述した配向状態の形成過程を効果的に得るようにす
る。
【0132】液晶の相転移が最初に生じる第一の領域面
(R1)に対応する配向制御層15aについては、第一
の実施態様の場合と同様の材料及び処理を採用して形成
することができる。一方、第一の領域以外の領域に対応
する層17については、例えば配向制御層15aに用い
ることのできる材料として例示したものを同様に用いる
ことができる。具体例としては、下地層14a上に配向
制御層15aを形成するための材料層(膜)を全面形成
した後、前述した感光性材料を用いパターニングする際
の条件を調整して配向制御層15aを選択的に形成する
ことと同時に、配向制御層15aの各ライン間に、同一
の材料で配向制御層15aに比較して小さい厚みの層1
7aを得ることできる。この場合、換言すれば層17a
は、配向制御層15aが突出したライン間で厚みを低減
させて当該ラインと連続的に形成されている。このよう
なパターニングの後一軸配向処理を施すことで配向制御
層l5aの厚みの大きな部分の表面(第一の領域(R
1)に対応)では強い一軸配向規制力が付与され、層1
7a部分の表面(第二の領域R2に対応)では相対的に
弱い一軸配向規制力が付与され得る。
【0133】かかる第二の態様では、第一の実施態様と
同様に、図3〜5に示すような過程により素子全面での
均一な配向状態の形成が確実になされる。加えて、配向
制御層15aに絶縁性材料を用い、上述のパターニング
方法で図17に示すような構造を形成した場合、液晶の
駆動に対して、電気的に障害となる絶縁性材料からなる
一軸配向規制力を有する配向制御層15aのライン間に
おいて厚みが小さく絶縁性の影響が抑制された層17a
が存在するに過ぎず、電気的には絶縁性層の影響が小さ
く電圧が印加される液晶領域が素子全体で大きくなり、
特にパルス電圧による駆動の際に液晶に印加される実効
電圧を大きくすることができる。
【0134】第二の領域(R2)を構成する層17aが
絶縁層である場合の厚みについては、特に液晶として自
発分極を有するスメクチック液晶を用い、領域(R2)
を液晶素子の実駆動領域とする場合において、当該液晶
の自発分極が素子の基板間で生じせしめる逆電圧により
液晶分子のスイッチングが阻害されないように設定する
ことが重要である。具体的には、層17aを含む領域
(R2)に対応する両基板の絶縁層の総厚みが、下記式
(Al)のdl未満となるようにすることが好ましい。
【0135】
【数2】 dl=Vth1 ×ε/2Ps (Al) Vth1 :パルス幅lmsの片極性パルスで一部反転する
閾値電圧 ε:領域R2対応する両基板の絶縁層のトータルでの誘
電率 Ps :用いる液晶の自発分極(単位面積あたり)
【0136】尚、式(A1)は、液晶のスイッチングが
自発分極により生じる逆電圧により阻害を受けはじめる
ときの逆電圧の値Vrev =Vth1 =2Ps ×S/C、C
=ε×S/dl(Cは該当する領域R2での液晶容量、
Sは当該領域の面積)としてその際の絶縁層の厚みを求
めたものである。
【0137】一方、第一の領域Rlでの配向制御層15
aの厚みについては、少なくとも層15aを含む領域R
lに対応する両基板の絶縁層の総厚みが、上記式(A
l)のdl以上となるようにすることが好ましく、下記
式(A2)のd2以上となるようにすることが特に好ま
しい。
【0138】
【数3】 d2=Vth2 ×ε/2Ps (A2) Vth2 :パルス幅lmsの片極性パルスで全部反転する
閾値電圧 ε:領域Rlに対応する両基板の絶縁層のトータルでの
誘電率 Ps :用いる液晶の自発分極(単位面積あたり)
【0139】更に、層17aについては、下地となる層
14aの材質によっては、また電極14aから液晶にう
ける化学的な影響、特に下層からのイオンの移動による
影響を低減するために好ましい。
【0140】尚、本発明で言う配向規制力の強さを以下
に定義する。液晶材料を仮に配向規制力が存在しないセ
ル中に注入した場合、磁場等の特別な外場や温度勾配を
用いなければ、一般に分子長軸方向はランダムな方向に
向かって配向する。一方、十分強固に一軸配向規制され
たセル中に液晶材料を注入した場合、一般に分子長軸方
向は一軸配向規制された方向に向かって整然と配向す
る。後者の配向の様子はネマティック液晶もスメクティ
ック液晶の場合もほぼ同様であるが、前者の配向の様子
はネマティックとスメクティックにおいて若干テクスチ
ャーに違いがある。分子長軸方向がランダムな方向に配
向する場合、層構造を有するスメクティックの場合はフ
ォーカルコニックテクスチャーと呼ばれる幾何学模様を
呈しながらランダムな層構造を形成する。
【0141】本発明においてスメクティック液晶におけ
る弱い配向規制力とは一軸配向規制されたセル中にスメ
クテイツク液晶を注入した場合、セル中の一部分にこう
したフォーカルコニックテクスチャーが発現する場合、
この液晶にとってこのセルの配向規制力が弱いものと定
義する。同様に、一軸配向規制されたセル中にスメクテ
ィック液晶を注入した場合、上述のフォーカルコニック
テクスチャーがまったく存在せず、整然と一方向に層構
造制御された場合、この液晶にとってこのセルの配向規
制力が弱いものと定義する。そしてフォーカルコニック
テクスチャーの存在比率により相対的な強弱を判断す
る。この強弱の定義は配向性によって決定されるもので
あるので、液晶の種類が変われば強弱の程度も変化す
る。即ち本発明におはる配向規制力の強さとは、セルに
よって一義的に決まるものではなく、セルと液晶との組
み合わせによって決まるものと定義する。
【0142】上述の図17第二の実施形態の液晶素子の
構造の更なる変形である第三の態様を図18に示す。同
図に示す構造は、まず図17の配向制御層15aと同様
の材料から形成された層18a(前述した感光性材料)
を選択的に設けた後、その上側から薄い厚みで配向制御
層15aにも適用可能な層19aを全面に形成し、一軸
配向規制力を付与したものである。この場合、選択的に
設けた層18a上(ライン上)での層19aの表面(領
域Rl)と層18aのライン間での層19aの表面(R
2)において、領域Rlは一軸配向規制力を付与し得る
材料の総厚みが大きな層の表面であり、これに比較して
領域R2での液晶に対する一軸配向規制力を相対的に小
さく液晶との相互作用が小さくなるようにすることがで
き、第二の実施態様と同様の効果を得ることができる。
【0143】上述したような第二及び第三の態様におい
ても、領域Rl、R2の表面状態を配向制御層15a、
下地層14a、層17a、18a、19aの材料、厚
み、処理条件を選択して調整することで、特に下地層1
4aを粗面化することで、領域Rlを前述の図16で説
明したような基板の面領域R2lに、領域R2を、図1
6の面領域R22となるようにし、同図に示す液晶領域
Ll及びL2を形成することもできる。
【0144】図6を参照して、本発明の液晶素子の第四
の実施態様を示す。同図において、図1、2と同一の符
号は同一の部材を表す。同図に示す態様では、基板12
aに液晶11に接する面領域R1で一軸配向規制力を有
する前述した感光性材料による配向制御層15aが選択
的にパターン形状で設けられていることに加えて、対向
する基板12bにおいても配向制御層15bが同様にパ
ターン形状で設けられている。
【0145】かかる配向制御層15bは、配向制御層1
5aと同様に液晶に接する面領域(R3)で一軸配向規
制力を有するものであり、特に前述した配向制御層15
aとして使用可能な材料及び一軸配向処理が選択され適
用される。これら配向制御層15a及び15bのパター
ンのライン部は互いに位置合わせされて完全に対向して
おり、両配向制御層の一軸配向規制力の軸ないし一軸配
向処理方向は同一である。
【0146】かかる素子では、基板12a側に加えて、
基板12b側においても、図3〜5に示すような配向状
態の形成過程が進行して液晶配向が得られる。
【0147】従って、配向制御層15bのライン間で液
晶11に接する面領域R4は、実質的に液晶に対して領
域R3に比較して相対的に一軸配向規制力が弱いかない
しは一軸配向規制力を持たず、液晶分子に対する作用が
低減されたものであり、これを構成する層14bは、配
向制御層15bに使用される材料、その特性等との関係
を考慮し、対向側の層14aに使用可能な材料、処理方
法を適用して形成される。
【0148】更に、上記素子では、配向制御層15a、
15bの材料や処理方法を選択し、好ましくは対向面
(Rl、R3)の表面電位の差を前述のように50mV
より大きく、好ましくはl00mVより大きくし、これ
らに挟まれた領域で常に暗状態が示されるように同領域
での液晶分子の位置を固定化させる。
【0149】又、上記素子では、前述の第二、第三の実
施態様のように領域R2、R4を下地層とは別の薄層に
より形成し、領域R1、R3に比較して一軸配向規制力
が弱く、液晶素子に対する作用が低減されたようにする
こともできる。
【0150】図7に、本発明の液晶素子の第五の実施態
様を示す。同図におぃて、図1、2と同一の符号は同一
の部材を表す。
【0151】同図に示す構造の素子では、基板12a及
び12bの夫々に形成される電極13a及び13bがス
トライプ状に形成され、これらがマトリックス状に対向
させ、その交差部が実駆動領域ないし表示素子における
画素となっている。そして、基板12a側において、前
述した感光性の絶縁性材料、特にポリイミド、ポリアミ
ドイミドからなる一軸配向規制力を有する配向制御層1
5aがそのライン部が夫々同基板の電極13aの各スト
ライプ間に対応するようなパターン形状で設けられてい
る。図8に、基板12a側における電極13aと配向制
御層15aのパターン形状の上方から見た位置関係を示
す(同図では他の部材を省略している)。ここで、電極
13aが透明電極であり、前述したように金属電極が付
設される場合では、該金属電極の部分にも配向制御層1
5aのラインを対応させることが好ましい。
【0152】かかる構造の素子における配向状態は、基
本的に前述の第一の態様と同様に、図3〜5に示すよう
な過程により、一軸配向制御層15aに対応する液晶領
域を出発点として形成される。更にこの態様では、液晶
の駆動に対して電気的に障害となる絶縁性材料からなる
一軸配向規制力を有する配向制御層15aは、同一基板
における電極13aとの位置関係により、液晶の実駆動
領域ないしは画素部分に実質的に存在せず、当該領域に
おけるパルス電圧による駆動の際に液晶に印加される実
効電圧を大きくすることができる。こうして、配向状態
の均一化と、液晶駆動(スイッチング)の高速化の両立
が実現する。特に、後者の特性に関して顕著な効果がも
たらされる。更に、表示素子として適用する場合では、
有効に駆動する画素面積を大きくすることができ開口率
が向上する。
【0153】加えて、上記第五の態様の素子では、実駆
動領域間ないしは画素間に対応する、配向制御層15a
及び対向する配向制御層15bの材料の関係や処理方法
を選択し、好ましくは対向面の表面電位の差を前述のよ
うに設定することで、これら実駆動領域間ないしは画素
間が暗状態が示されるように同領域での液晶分子の位置
を固定化させる。こうして、基板12a及び12bのい
ずれにおいても、実駆動領域間に対応して金属等からな
る遮光部材を設けることなくコントラストの向上がなさ
れ、また表示面での反射率が低減される。この効果をよ
り顕著にすべく、図8に示すような配向制御層15a
を、そのライン部が同図の電極ストライプ13aのライ
ンと同方向に加えて、これと垂直な方向であり、且つ対
向する基板(12b)側の電極ストライプ(13b)の
ライン間に対応するように設けられた格子状パターンと
することが特に好ましい。
【0154】尚、上記構造の素子においても、前述の第
二、第三の態様のように配向制御層15aのライン間の
層14aの表面を、層14aと別の薄層により被覆し
て、配向制御層15aの表面と比較して一軸配向規制力
が弱く、液晶分子に対する作用が低減されたようにする
こともできる。
【0155】図9に、本発明の液晶素子の第六の実施態
様を示す。同図において、図1、図2、図6と同一の符
号は同一の部材を表す。
【0156】同図に示す構造の素子では、基板12a及
び12bの夫々に形成される電極13a及び13bがス
トライプ状に形成され、これらがマトリックス状に対向
させ、その交差部が実駆動領域ないし表示素子における
画素となっている。そして、基板12a側において、絶
縁性材料からなる一軸配向規制力を有する配向制御層1
5aがそのライン部が夫々同基板の電極13aの各スト
ライプ間に対応するようなパターン形状で設けられてい
る。
【0157】基板12a側における電極13aと配向制
御層15aのパターン形状の上方から見た位置関係を図
に示すと前述の図8と同様となる(同図では他の部材を
省略している)。一方、基板12b側においては、基板
12a側の配向制御層15aとライン部どうしが対向す
るようなパターン形状で絶縁性材科からなる一軸配向規
制力を有する配向制御層15bが設けられている。図1
0に、基板12b側における電極13bと配向制御層1
5bのパターン形状の上方から見た位置関係を示す(同
図では他の部材を省略している)。ここで、電極13
a、13bが透明電極であり、前述したように金属電極
が付設される場合では、該金属電極の部分にも配向制御
層15a、15bのラインを対応させることが好まし
い。配向制御層15aと配向制御層15bには、特に前
述の第一の実施態様で説明した少なくとも一方は配向制
御層15aとして使用可能な材料及び一軸配向処理が選
択され適用される。両配向制御層における一軸配向処理
方向は好ましくは同一である。
【0158】かかる構造の素子における配向状態は、基
本的に前述の第四態様と同様に、両基板において、一軸
配向制御層15a、15bに対応する液晶領域を出発点
として図3〜5に示すような過程により形成される。更
にこの態様では、液晶の駆動に対して電気的に障害とな
る絶縁性材料からなる一軸配向規制力を有する配向制御
層15a、15bは、同一基板における電極13a、1
3bとの位置関係により、液晶の実駆動領域ないしは画
素部分に実質的に存在せず、当該領域におけるパルス電
圧による駆動の際に液晶に印加される実効電圧を大きく
することができる。こうして、配向状態の均一化と、液
晶駆動(スイッチング)の高速化の両立が実現される。
特に、後者の特性に関して顕著な効果がもたらされる。
更に、表示素子として適用する場合では、有効に駆動す
る画素面積が大きくすることができ開口率が向上する。
【0159】そして、液晶の実駆動領域において、層1
4a及び14bの材料、表面状態等を調整することによ
り図16で説明したような液晶領域L2の領域L21と
L22のように、基板界面付近の液晶領域における分子
とバルク領域の液晶分子が不連続配列状態を形成するこ
ともできる。
【0160】こうして、配向状態の均一化と、液晶駆動
(スイッチング)の高速化の両立が実現される上に、駆
動中の焼き付きの抑制がなされる。更に、表示素子とし
て適用する場合では、有効に駆動する画素面積を大きく
することができ、開口率が向上する。
【0161】加えて、上記第六の態様の素子では、実駆
動領域間ないしは画素間に対応する、配向制御層15a
及び対向する配向制御層15bの材料や処理方法を選択
し、好ましくは対向面の表面電位の差を前述のように設
定することで、これら実駆動領域間ないしは画素間が暗
状態が示されるように同領域での液晶分子の位置を固定
化させる。こうして、基板12a及び12bのいずれに
おいても、実駆動領域間に対応して金属等からなる遮光
部材を設けることなく、表示面での反射率が抑制され、
コントラストの向上がなされる。この効果をより顕著に
すべく、図8に示すような配向制御層15aを、そのラ
イン部が同図の電極ストライプ13aのラインと同方向
に加えてこれと垂直な方向で、対向する基板(12b)
側の電極ストライプ(13b)のライン間に対応するよ
うな格子状パターンとし、また図10に示すような配向
制御層15bを、そのライン部が同図の電極ストライプ
13bのライン方向と垂直方向に加えて、電極ストライ
プ13bのライン方向と同方向であり、電極ストライプ
13bのライン間に対応するような格子状パターンとす
ることが特に好ましい。
【0162】上記構造の素子においても、前述の第二、
第三の態様のように配向制御層15a、15bの夫々の
ライン間の層14a、14bの表面を層14a、14b
と別の薄層により、被覆して、配向制御層15a、15
bの表面と比較して一軸配向規制力が弱く、液晶分子に
対する作用が低減されたようにすることもできる。
【0163】このような第五及び第六の実施態様による
素子は、両基板の電極12a及び12bがマトリックス
電極構造を形成し、パターン表示、パターン露光が可能
となり、例えば、パーソナルコンピューター、ワークス
テーション等のディスプレイ、プリンター用等のライト
パルブとして好適に用いられる。
【0164】尚、第五及び第六の実施態様では、より良
好な配向状態を得るために、配向制御層15a、及び1
5bを電極13a、13bの交差する上述した実駆動領
域ないしは画素内にも設けることもできる。このような
実駆動領域ないしは画素内に設ける配向制御層は、その
厚みを好ましくは上記範囲(50〜5000Å)内でよ
り大きくし、より好ましくは500Å以上とし、当該配
向制御層に対応する液晶領域に加わる電圧を抑制し当該
液晶領域を完全に駆動しないようにして、電極13a、
13bの交差する部分全体での液晶の駆動特性を良好に
する。
【0165】本発明の液晶素子の駆動法としては、例え
ば、特開昭59−193426号公報、特開昭59−1
93427号公報、特開昭60−156046号公報、
特開昭60−156047号公報等に記載の駆動法を用
いることができる。
【0166】以下、図面を参照して、本発明の液晶素子
における単純マトリックス駆動とその際に重要となる駆
動特性について詳述する。
【0167】図11は、液晶素子におけるマトリクス電
極の配置の一例を示す平面図である。液晶素子(パネ
ル)51には、走査電極群52の走査線(S1 〜Sm
と情報電極群53のデータ線(I1 〜In )とが互いに
交差して配線され、走査線とデータ線との間には液晶が
配置されている。そして、走査線とデータ線の各交差部
が一表示単位である画素となり、走査線とデータ線から
電圧が印加され液晶の駆動がなされる。尚、特に前述の
第三及び第四の実施態様では、基板12a、12bの夫
々に設けられた電極13a、13bが、同図に示す電極
52、53のいずれかに相当することになる。
【0168】図12、13は、図11に示すマトリック
ス電極構造において採用する駆動法(マルチプレックス
駆動)の波形の一例である。図12に示す駆動波形は、
走査ライン側を基準にして、+側の極性で黒表示させる
ような設定とし、黒表示側をリセット方向とした、リセ
ット書き込み型の波形である。S0は走査線に印加する
走査信号波形を、I1 はデータ線に印加する情報信号波
形(白表示波形)、I2 はデータ線に印加する情報信号
波形(黒表示波形)を表している。また、図中(S0
1 )と(S0 −I2 )は選択された画素に印加される
電圧波形で、電圧(S0 −I1 )が印加された画素は白
表示状態をとなり、電圧(S0 −I2 )が印加された画
素は黒表示状態となる(前述用のようにリセットを黒表
示側とする)。
【0169】図13における(S2 −I0 )と(S3
0 )は、図12に示す駆動波形で、例えば同一データ
線上で連続する4画素に「白、白、黒、黒」表示を行っ
た時の第2番目の画素と第3番目の画素に印加される時
経列波形である。
【0170】図12、13に示す駆動波形では、選択さ
れた走査線上の画素に印加される書き込みパルス幅Δt
に対し、1ラインクリアのリセットパルスが5/2Δt
に設定され、また書き込みパルスの後にリセットパルス
側を補助するパルスが1/2Δt存在している。このた
め、図12、13で示される駆動波形では1ライン走査
時間(lH)は4Δt分となる。但し、図13の様に走
査波形を1ラインごとに重なり合う時間を設けずに走査
する他に、2以上の走査線(例えば隣接する走査線)の
走査波形の出力に重なり合う時間を設け(例えば、2Δ
t分)実用上の1ライン走査時問(lH)を短く(例え
ば、2Δtに)することも可能である。
【0171】図12、13に示した駆動波形の各パラメ
ータ走査信号電圧Vs 、情報信号VI 、駆動電圧V
op(Vs +VI )、(バイアス比:VI /(Vs +V
I ))、Δtの値は使用する液晶材料のスイッチング特
性によつて決定される。
【0172】図14は、図12で示した駆動波形を用い
て、上述のバイアス比を1/3.4に固定し、また駆動
電圧Vop(Vs +VI )を20Vで一定にし、パルス幅
Δtを変化させた際の、該当画素における駆動波形印加
後(選択印加後)の最終的な透過率Tの変化を示したも
のである。
【0173】同図において、実線は、白波形(S0 −I
1 )(黒消去(リセット)白書き込み)、破線は、黒波
形(S0 −I2 )(黒消去(リセット)保持)が印加さ
れた場合のものである。実線の白波形(S0 −I1 )を
印加する場合では、該当画素の波形が印加される前状態
が黒状態になっており、Δt1 以上のパルス幅で完全に
白状態への書き込みが出来るようになり、Δt2 より大
きなΔtでは、再び白状態への書き込みが出来なくなっ
ている(例えば図12に示した白表示波形(S0 −I
1 )のWのパルスに後続する逆極性の補助のパルスの印
加により再度黒状態となる)。また、破線の黒波形(S
0 −I2 )では、該当画素の波形が印加される前状態が
反対の白状態になっており、Δt3 以上のパルス幅で完
全に黒状態への書込み及び保持が実現されており、Δt
4 より大きなΔtでは、黒状態の保持が出来なくなって
いる(図12に示した黒表示波形(S0 −I2 )のBの
パルスに後続する逆極性の保持パルスの印加自体で白状
態となる)。
【0174】通常、Δt3 <Δt1 なので、Δt1 を閾
値パルス幅と呼び、Δt2 かΔt4の小さい方(この図
14の場合Δt4 )をクロストークパルス幅と呼ぶ。
(Δt2 を白クロストークパルス幅、Δt4 を黒クロス
トークパルス幅とも呼ぶ。)
【0175】閾値パルス幅とクロストークパルス幅の間
のパルス幅を持った駆動波形によりマトリックス駆動が
なされる、白表示波形(図12に示した白表示波形(S
0 −I1 ))による確実な白表示、及び黒波形(図12
に示した黒表示波形(S0 −I2 ))による確実な黒表
示が可能となり、情報信号側の極性の差だけで白及び黒
の良好な画像表示が出来る。
【0176】上述のバイアス比を大きくすることによ
り、Δt2 やΔt4 のクロストークパルス幅の値を大き
くすることは可能であるが、バイアス比を増すことは情
報信号の振幅を大きくすることを意味し、画質的にはち
らつきの増大、コントラストの低下を招き好ましくな
い。我々の検討ではバイアス比1/3〜1/5程度が適
当であった。
【0177】このような駆動特性に関して、駆動条件の
設定にどの程度の余裕があるかについての特性を駆動マ
ージンと呼ぶが、これを定量的に評価するための指標と
して、上述の閾値パルス幅Δt1 とクロストークパルス
幅Δt4 (場合によってはΔt2 )の値の中心値からの
幅を比率で表すパラメータ「M2」を用いる事ができ
る。
【0178】
【数4】M2=1/2(Δt4 −Δt1 )/1/2(Δ
4 十Δt1
【0179】ある一定温度において、上述のように情報
信号の2通りの向きによって選択画素に黒及び白の2状
態を書き込むことが可能であり、また非選択画素はその
黒または白の状態を保持することが可能である駆動マー
ジンは、液晶材料及び素子構成によって差があり、特有
なものである。また、環境温度の変化によってもそれら
駆動マージンは異なるため、実際の液晶表示装置では、
液晶材料、素子構成や環境温度にたいして最適な駆動条
件を設定しておく必要がある。上記の駆動マージンパラ
メータM2が大きいほど表示素子として当然有利であ
る。
【0180】尚、図14に示す駆動特性(駆動マージ
ン)の評価については、駆動電圧Vopを固定し、パルス
幅Δtを変化させたが、反対にパルス幅Δtを固定し、
駆動電圧Vopを変化させても良いし、両方のパラメータ
を変化させても良い。
【0181】又、本発明の液晶素子は、アクティブマト
リクスタイプの素子にも適用することができる。即ち、
一方の基板においてマトリクス状に複数の画素電極が設
けられ、各画素電極に対応して二端子又は三端子型のス
イッチング素子が配置され、好ましくはスイッチング素
子の少なくとも一方向の配列に沿うように少なくとも一
方の基板に前述した感光性材料による強い一軸配向規制
力を付与した第一の領域を形成し、前述の例えば図3〜
5に示すように配向状態を形成することができる。
【0182】
【実施例】以下、具体的な実施例において本発明を詳細
に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるもの
ではない。
【0183】実施例1 ・液晶組成物の調整 下記の液晶性化合物(A)〜(E)を使用し液晶組成物
LC−1を調整した。
【0184】
【化27】
【0185】重量比:化合物A/B/C/D/E=45
/15/30/5/2 物性パラメータを以下に示す。
【0186】
【数5】
【0187】感光性ポリイミド樹脂組成物の調整1 撹拌機、窒素導入管、塩化カルシウム管を付した排出
管、温度計を付けた300mlの4つ口フラスコをあら
かじめ窒素ガスで置換した。このフラスコに、窒素気流
下で下記繰り返し単位を有するポリアミド酸のN−メチ
ル−2−ピロリドン溶液(固形分濃度13.5%)10
0g(0.04mol)を仕込み、新たに蒸留したジエ
チルアミノエチルメタクリレート18.5g(0.lm
ol)を投入し、室温で1時間撹拌して、ポリアミド酸
とジエチルアミノエチルメタクリレートの塩が形成して
いる溶液(A)を得た。
【0188】塩生成の確認のため、赤外分光光度計(日
立製作所社製270−30形)にて、ポリアミド酸に含
まれているカルボニル基C=Oの伸縮振動吸収帯を測定
した。ポリアミド酸中のフリーのカルボキシル基に含ま
れるC=Oに基づく吸収帯は、1700cm-1付近に見
られたのに対しポリアミド酸にジエチルアミノエチルメ
タクリレートを加えて撹拌した後のC=Oの吸収帯は1
600〜1650cm-1にシフトしており、塩を形成し
ていることがわかる。
【0189】溶液(A)47.4gに特級N,N−ジメ
チルアセトアミド58.26gを加えて超音波中にて混
合し、溶液(B)を得た。一方窒素気流下にて、光重合
開始剤イルガキュア651(チバガイギー社製)5.2
gと増感剤ダイトーキュアPAA(大東化学工業所社
製)2.6gを、特級N,N−ジメチルアセトアミド1
5.6gで溶解させた溶液(C)を作製した。
【0190】
【化28】
【0191】先に得られた溶液(B)105.66gに
溶液(C)を2.34g添加し、超音波中にて混合さ
せ、次いで、5μm孔のフィルタを用いて加圧ろ過し、
固形分濃度が12.6%(ポリアミド酸の固形分濃度が
5.0%)の感光性ポリイミド樹脂組成物(PI−A)
を作成した。
【0192】感光性ポリイミド樹脂組成物の調整2 撹拌機、窒素導入管、塩化カルシウム管を付した排出
管、温度計を付けた300mlの4つ口フラスコをあら
かじめ窒素ガスで置換した。このフラスコに、窒素気流
下で下記繰り返し単位を有するポリアミド酸のN−メチ
ル−2−ピロリドン溶液(固形分濃度13.5%)10
0g(0.04mol)を仕込み、新たに蒸留したジエ
チルアミノエチルメタクリレート18.5g(0.lm
ol)を投入し、室温で1時間撹拌して、ポリアミド酸
とジエチルアミノエチルメタクリレートの塩が形成して
いる溶液(A)を得た。
【0193】塩生成の確認のため、赤外分光光度計(日
立製作所社製270−30形)にて、ポリアミド酸に含
まれているカルボニル基C=Oの伸縮振動吸収帯を測定
した。ポリアミド酸中のフリーのカルボキシル基に含ま
れるC=Oに基づく吸収帯は、1700cm-1付近に見
られたのに対しポリアミド酸にジエチルアミノエチルメ
タクリレートを加えて撹拌した後のC=Oの吸収帯は1
600〜1650cm-1にシフトしており、塩を形成し
ていることがわかる。
【0194】溶液(A)47.4gに特級N,N−ジメ
チルアセトアミド58.38gを加えて超音波中にて混
合し、溶液(B)を得た。一方窒素気流下にて、光重合
開始剤イルガキュア369(チバガイギー社製)2.9
6gを、特級N,N−ジメチルアセトアミド19.24
gで溶解させた溶液(C)を作製した。
【0195】
【化29】
【0196】先に選られた溶液(B)105.78gに
溶液(C)を2.22g添加し、超音波中にて混合さ
せ、次いで、5μm孔のフィルタを用いて加圧ろ過し、
固形分濃度が12.1%(ポリアミド酸の固形分濃度が
5.0%)の感光性ポリイミド樹脂組成物(PI−B)
を作成した。
【0197】セルの作成 実施例で使用するマトリクスセル(単純マトリクスタイ
プのセル)を以下の如く作成した。
【0198】セルA ここでは、図7に示す断面構造のセル(空セル)を作成
した。透明電極としてストライプパターンのITO膜
(膜厚約70nm、1ラインの幅16μm、隣接ライン
間の間隔4μm)が形成された1.1mm厚の一対のガ
ラス基板を用意した。
【0199】このガラス基板の一方に、ラダー型のポリ
シロキサンのエタノール溶液をスピンコート法により塗
布し、その後、80℃、5分間の前乾燥を行なった後、
200℃、1時間加熱乾燥を施し、膜厚は3nmのポリ
シロキサン層を得た。該ポリシロキサン層上に、先に調
整した感光性ポリイミド樹脂組成物(PI−A)をスピ
ンコート法により塗布し、その後100℃、5分間の前
乾燥を行なった。
【0200】次いで、上記ポリイミド膜上に、マスク幅
16μm、間隔4μmのストライプ状のマスクパターン
を、そのマスク部分が当該基板のITO膜パターンのラ
イン上に対応するように配置した。続いて、高圧水銀ラ
ンプを用い、波長254nmにおける光エネルギー量が
1.44J/cm2 となるUV強度にて露光した。次い
で、ジメチルホルムアミド/エタノール=5/5の現像
液を用い15秒間現像を行ない、引き続き、エタノール
中で洗浄し基板を乾燥させた。その後、200℃、1時
間加熱焼成を施し、基板上にITO膜のライン間に対応
してストライプ状のポリイミド膜が50nm存在する部
分(幅4μm)とITO膜のラインに対応してまったく
存在しない部分(幅16μm)からなるポリイミド膜パ
ターンを得た。
【0201】続いて、当該基板上のポリイミドに対して
一軸配向処理としてナイロン布によるラビング処理を施
した。ラビング処理の条件は、径10cmのロールにナ
イロン(NF−77/帝人製)を貼り付けたラビングロ
ールを用い、押し込み量0.3mm、送り速度10cm
/sec、回転数1000rpm.、送り回数4回とし
た。ラビング処理の方向は、ポリイミド膜のストライプ
方向と垂直な方向に設定した。
【0202】他方のガラス基板に、ラダー型のポリシロ
キサンのエタノール溶液をスピンコート法により塗布し
た。その後、80℃、5分間の前乾燥を行なった後、2
00℃、1時間加熱乾燥を施し、膜厚3nmのボリシロ
キサン層を得た。
【0203】続いて一方の基板(ポリイミドを塗布した
側の基板)上にスペーサーとして、平均粒径2.0μm
のシリカビーズを散布し、他方の基板を、各基板の電極
が直交しマトリクス電極配置(図11に示すような配
置)となるように重ねあわせ、図7に示すような断面構
造のセル(空セル)を作成した。このように作成された
セルの実駆動領域(両基板の電極が交差する部分)にお
ける絶縁膜(ポリシロキサン層)の合計膜厚は6nmで
あった。
【0204】セルB 感光性ポリイミド樹脂組成物として先に調整したPI−
Bを用いた点を除いて、セルAと同様の方法及び条件で
セル(空セル)を作成した。作成されたセルの実駆動領
域(両基板の電極が交差する部分)における絶縁膜(ポ
リシロキサン層とポリイミド膜)の合計膜厚は6nmで
あった。
【0205】セルC 透明電極としてストライプパターンのITO膜(膜厚約
70nm、1ラインの幅16μm、隣接ライン間の間隔
4μm)が形成された1.1mm厚の一対のガラス基板
を用意した。
【0206】このガラス基板の一方に、ラダー型のポリ
シロキサンのエタノール溶液をスピンコート法により塗
布し、その後、80℃、5分間の前乾操を行なった後、
200℃、1時間加熱乾燥を施し、膜厚は3nmのポリ
シロキサン層を得た。該ポリシロキサン層上に、下記繰
り返し単位を有するポリイミド(前駆体)をスピンコー
ト法により塗布し、その後、80℃、5分間の前乾燥を
行なった後、200℃で1時間加熱焼成を施し膜厚5n
mのポリイミド被膜を得た。
【0207】
【化30】
【0208】続いて、当該基板上のポリイミドに対して
セルAの場合と同様の方法及び条件により、一軸配向処
理としてラビング処理を施した。他方のガラス基板に、
ラダー型のポリシロキサンのエタノール溶液をスピンコ
ート法により塗布した。その後、80℃、5分間の前乾
燥を行なった後、200℃、1時間加熱乾燥を施し、膜
厚3nmのポリシロキサン層を得た。
【0209】続いて、一方の基板(ポリイミドを塗布し
た側の基板)上にスペーサーとして、平均粒径2.0μ
mのシリカビーズを散布し、他方の基板を、各基板の電
極が直交し、マトリクス電極配置(図11に示すような
配置)となるように重ねあわせ、セル(空セル)を作成
した。
【0210】このように作成されたセルの実駆動領域
(両基板の電極が交差する部分)における絶縁膜(ポリ
シロキサン層とポリイミド膜)の合計膜厚は1lnmで
あった。
【0211】セルD ポリイミド膜の膜厚を2nmと設定することを除いて、
セルCと同様の方法及び条件でセル(空セル)を作成し
た。作成されたセルの実駆動領域(両基板の電極が交差
する部分)における絶縁膜(ポリシロキサン層とポリイ
ミド膜)の合計膜厚は8nmであった。
【0212】セルE 透明電極としてストライプパターンのITO膜(膜厚約
70nm、1ラインの幅16μm、隣接ライン間の間隔
4μm)が形成された1.1mm厚の一対のガラス基板
を用意した。
【0213】これらガラス基板に、ラダー型のポリシロ
キサンのエタノール溶液をスピンコート法により塗布
し、その後、80℃、5分間の前乾燥を行なった後、2
00℃、1時間の加熱乾燥を施し、膜厚は3nmのポリ
シロキサン層を得た。続いて、これら基板のポリシロキ
サン層に、セルAと同様の方法及び条件により一軸配向
処理としてラビング処理を施した。
【0214】次いで、一方の基板(ラビング処理を施し
た側の基板)上にスペーサーとして、平均粒径2.0μ
mのシリカビーズを散布し、他方の基板を、各基板の電
極が直交しマトリクス電極配置(図11に示すような配
置)となるように重ねあわせ、セル(空セル)を作成し
た。尚、両基板のラビング処理の方向が同方向、平行と
なるように設定した。
【0215】このように作成されたセルの実駆動領域
(両基板の電極が交差する部分)における絶縁膜(ポリ
シロキサン層)の合計膜厚は6nmであった。尚、セル
AからEのサイズは2.5cm×3.5cmとした。
【0216】上記に示したプロセスで作成した各セルA
〜Eに液晶組成物LC−1を等方相の温度にて注入し、
液晶をカイラルスメクティック液晶相を示す温度まで冷
却し、双安定性を示すカイラルスメクティック液晶素子
サンプルA〜Eを作製した。この液晶の冷却過程を偏向
顕微鏡内で観察したところ、セルA、Bでは、スメクテ
ィックA相への転移温度付近から図3に示すようなバト
ネの発生、成長による配向状態の形成過程が観察され
た。
【0217】これらサンプルに対して、(1)配向均一
性の評価、及び(2)M2マージン(M2)の評価を行
なった。 (1)配向均一性の評価 液晶素子にカイラルスメクティック液晶相の状態で電圧
を印加してカイラルスメクティック液晶を一方の状態に
スイッチングさせ、偏向顕微鏡により目視観測によっ
て、配向均一性の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0218】
【表1】
【0219】(2)M2マージン(M2)の測定 M2マージンの測定方法を説明する。まず、クロスニコ
ルに配置された偏向板間にセルを設置し、図13に示す
駆動波形(Vop=20V、1/3.3バイアス、1/1
0デューティー)を用いて、M2マージンの測定を行な
った。印加パルス波形の長さΔtを変化させながら暗状
態(黒表示)と明状態(白表示)をそれぞれ書き込み、
明、暗それぞれの状態を書き込める印加パルス波形の長
さΔtの範囲が図15のようになった場合において、駆
動マージンパラメーターを
【0220】
【数4】M2=(Δt4 −Δt1 )/(Δt4 +Δt
1 )とし、上記サンプルA〜Eについて温度を数点振っ
てM2マージンを評価した。結果を下記表2に示す。
【0221】
【表2】
【0222】尚、素子Dについては正常にスイッチング
する領域のみ(良好な配向状態の領域のみ)のM2マー
ジン、素子A、Bについてはストライプ状のポリイミド
が配置されていない領域のM2マージンとした。又素子
Eは全面ランダム配向であったため駆動マージンは測定
不能であった。
【0223】この結果から、素子Cについては、室温以
上におけるM2マージンは大きいものの、低温側での駆
動マージンが著しく悪くなっていることがわかる。これ
は低温側での反電場の影響によるものと予測される。一
方配向性の悪い素子Dに関しては、全体としてM2マー
ジンの値は小さいものの、素子Dは素子Cと比較して配
向膜厚(ポリイミド膜の厚み)が薄く配向制御層の電気
容量が大きいため、低温側でのマージンの減少量が小さ
くなっている。一方、素子A、Bは、両基板の電極が対
向する領域、すなわち有効スイッチング領域にはポリイ
ミドが存在しないため配向制御層の電気容量が大きく、
低温側でのマージンの減少量が小さくなっている。
【0224】このように、基板に一軸配向規制力を有す
る配向制御層が存在する部分及び該配向制御層が存在し
ない部分とを混在させ、該配向制御層の部分に接する液
晶領域から配向状態を形成して均一な配向性を得て、更
に液晶の実駆動領域においてかかる一軸配向規制力を有
する配向制御層を存在させないことにより、良好な駆動
マージン特性を実現することができることが証明され
た。
【0225】実施例2 液晶組成物および感光性ポリイミド樹脂組成物として、
実施例1で用いた液晶組成物LC−1、感光性ポリイミ
ド樹脂組成物(PI−A)、(PI−B)を用いて、実
施例1と同様に液晶素子を作製した。
【0226】セルの作成 実施例で使用するマトリクスセル(単純マトリクスタイ
プのセル)を以下の如く作成した。
【0227】セルa ここでは、図7に示す断面構造のセル(空セル)を作成
した。透明電極としてストライプパターンのITO膜
(膜厚約70nm、1ラインの幅16μm、隣接ライン
間の間隔4μm)が形成された1.1mm厚の一対のガ
ラス基板を用意した。
【0228】このガラス基板の一方に、ラダー型のポリ
シロキサンの母材中にアンチモンドープのSnOx 超微
粒子(粒径100Å)を重量比で30%添加し、分散さ
せた、固形分濃度10重量%のエタノール溶液をスピン
コート法により塗布し、その後、80℃、5分間の前乾
燥を行なった後、200℃、1時間加熱乾燥を施し、膜
厚は200nmの微粒子分散層を得た。該層上に、先に
調整した感光性ポリイミド樹脂組成物(PI−A)をス
ピンコート法により塗布し、その後100℃、5分間の
前乾操を行なった。
【0229】次いで、上記ポリイミド膜上に、マスク幅
16μm、間隔4μmのストライプ状のマスクパターン
を、そのマスク部分が当該基板のITO膜パターンのラ
イン上に対応するように配置した。続いて、高圧水銀ラ
ンプを用い、波長254nmにおける光エネルギー量が
1.44J/cm2 となるUV強度にて露光した。次い
で、ジメチルホルムアミド/エタノール=5/5の現像
液を用い15秒間現像を行ない、引き続き、エタノール
中で洗浄し基板を乾燥させた。その後、200℃、1時
間加熱焼成を施し、基板上にITO膜のライン間に対応
してストライプ状のポリイミド膜が50nm存在する部
分(幅4μm)とITO膜のラインに対応してまったく
存在しない部分(幅16μm)からなるポリイミド膜パ
ターンを得た。
【0230】続いて、当該基板上のポリイミドに対して
一軸配向処理としてナイロン布によるラビング処理を施
した。ラビング処理の条件は、径10cmのロールにナ
イロン(NF−77/帝人製)を貼り付けたラビングロ
ールを用い、押し込み量0.3mm、送り速度10cm
/sec、回転数1000rpm.、送り回数4回とし
た。ラビング処理の方向は、ポリイミド膜のストライプ
方向と垂直な方向に設定した。
【0231】他方のガラス基板に、ラダー型のポリシロ
キサンの母材中にアンチモンドープのSnOx超微粒子
(粒径100Å)を重量比で30%添加し、分散させ
た、固形分濃度10重量%のエタノール溶液をスピンコ
ート法により塗布した。その後、80℃、5分間の前乾
燥を行なった後、200℃、1時間加熱乾燥を施し、膜
厚200nmの微粒子分散層を得た。
【0232】続いて一方の基板(ポリイミドを塗布した
側の基板)上にスペーサーとして、平均粒径2.0μm
のシリカビーズを散布し、他方の基板を、各基板の電極
が直交しマトリクス電極配置(図11に示すような配
置)となるように重ねあわせ、図7に示すような断面構
造のセル(空セル)を作成した。
【0233】セルb 微粒子分散層を形成するために用いるラダー型ポリシロ
キサンにおいて.母材中に分散させたアンチモンドープ
SnOx 超微粒子の重量比を30%から50%に変更し
た以外は、セルaと同様の方法及び条件でセル(空セ
ル)を作成した。
【0234】セルc ここでは、図9に示す断面構造のセル(空セル)を作成
した。透明電極としてストライプパターンのITO膜
(膜厚約70nm、1ラインの幅16μm、隣接ライン
間の間隔4μm)が形成された1.1mm厚の一対のガ
ラス基板を用意した。
【0235】これらガラス基板の夫々に、ラダー型のポ
リシロキサンの母材中にアンチモンドープのSnOx
微粒子(粒径100Å)を重量比で30%添加し、分散
させた、固形分濃度10重量%のエタノール溶液をスピ
ンコート法により塗布し、その後、80℃、5分間の前
乾燥を行なった後、200℃、1時間加熱乾燥を施し、
膜厚は200nmの微粒子分散層を得た。該ポリシロキ
サン層上に、先に調整した感光性ポリイミド樹脂組成物
(PI−B)をスピンコート法により塗布し、その後1
00℃、5分間の前乾燥を行なった。
【0236】次いで、一方のガラス基板における上記ポ
リイミド膜上に、マスク幅16μm、間隔4μmのスト
ライプ状のマスクパターンを、そのマスク部分が当該基
板のITO膜パターンのライン上に対応するように配置
した。続いて、高圧水銀ランプを用い、波長365nm
における光エネルギー量が1.44J/cm2 となるU
V強度にて露光した。次いで、120℃のホットプレー
ト上で10分間加熱を行ないポリシロキサン層上の全面
に、ポリイミドの薄膜を形成させた後、ジメチルホルム
アミド/エタノール=5/5の現像液を用い15秒間現
像を行ない、引き続き、エタノール中で洗浄し基板を乾
燥させた。その後、200℃、1時間加熱焼成を施し、
基板上にITO膜のライン間に対応してストライプ状の
ポリイミド膜が50nm存在する部分(幅4μm)とI
TO膜のラインに対応して超薄膜が存在する部分(幅1
6μm)からなるポリイミド膜パターンを得た。
【0237】続いて、当該基板上のポリイミドに対して
セルaの場合と同様の方法及び条件により一軸配向処理
としてラビング処理を施した。ラビング処理の方向は、
ポリイミド膜のストライプ方向と垂直な方向に設定し
た。
【0238】他方のガラス基板における、上記ポリイミ
ド膜上に、マスク幅16μm、間隔4μmのストライプ
状のマスクパターンを、そのマスク部分が当該基板のI
TO膜パターンのラインと直交するように配置した。続
いて、高圧水銀ランプを用い、波長365nmにおける
光エネルギー量が1.44J/cm2 となるUV強度に
て露光した。次いで、120℃のホットプレート上で1
0分間加熱を行ないポリシロキサン層上の全面に、ポリ
イミドの薄膜を形成させた後、ジメチルホルムアミド/
エタノール=5/5の現像液を用い15秒間現像を行な
い、引き続き、エタノール中で洗浄し基板を乾燥させ
た。その後、200℃、1時間加熱焼成を施し、基板上
にITO膜のラインに直交したストライプ状のポリイミ
ド膜が50nm存在する部分(幅4μm)と、まったく
存在しない部分(幅16μm)からなるポリイミド膜パ
ターンを得た。
【0239】続いて、当該基板上のポリイミドに対して
セルaの場合と同様の方法及び条件により一軸配向処理
としてラビング処理を施した。ラビング処理の方向は、
ポリイミド膜のストライプ方向と垂直な方向に設定し
た。
【0240】続いて一方の基板(最初の基板)上にスペ
ーサーとして、平均粒径2.0μmのシリカビーズを散
布し、他方の基板を、各基板の電極が直交しマトリクス
電極配置(図11に示すような配置)となり、かつ両基
板上のポリイミド膜パターンのライン部が完全に対向
し、ポリイミド膜におけるラビング方向が同一になるよ
うに位置あわせを行ない、貼り合わせ、図9に示すよう
な断面構造のセル(空セル)を作成した。
【0241】このように作製されたセルの実駆動領域
(両基板の電極が交差する部分)における微粒子分散膜
の合計膜厚は400nmであった。
【0242】セルd 微粒子分散層を形成するために用いるラダー型ポリシロ
キサンにおいて、母材中に分散させたアンチモンドープ
SnOx 超微粒子の重量比を30%から50%に変更し
た以外は、セルcと同様の方法及び条件でセル(空セ
ル)を作成した。尚、セルaからdのサイズは2.5c
m×3.5cmとした。
【0243】また、セルa〜dにおいて実駆動領域(両
基板の電極の交差部)において、液晶に接する基板面と
なる、各層の表面粗さについて測定を行なった。測定は
ガラス基板またはITO膜上にセルa〜dにおける上記
層と同様の条件で1800Åの膜を形成し、原子間力顕
微鏡(NanoScope IIIa AFM Dim
ension3000ユニット/Digital In
strument社製、探針としてオリンパス光学社製
のSiカンチレバーを使用)により、走査範囲3.0μ
m×3.0μmについて行なった。走査速度は0.8H
z、測定環境は室温、大気中とした。
【0244】結果を下記表3に示す。
【0245】
【表3】
【0246】上記に示したプロセスで作成した各セルa
〜dに液晶組成物LC−1を等方相の温度にて注入し、
液晶をカイラルスメクティック液晶相を示す温度まで冷
却し、双安定性を示すカイラルスメクティック液晶素子
サンプルa〜dを作製した。この液晶の冷却過程を偏向
顕微鏡内で観察したところ、セルa〜dでは、スメクテ
ィックA相への転移温度付近から図3に示すようなバト
ネの発生、成長による配向状態の形成過程が観察され
た。
【0247】これらサンプルに対して、(1)配向均一
性の評価、(2)M2マージン(M2)、(3)表示焼
き付きの評価を行なった。
【0248】(1)配向均一性の評価 液晶素子にカイラルスメクティック液晶相の状態で電圧
を印加してカイラルスメクティック液晶を一方の状態に
スイッチングさせ、偏向顕微鏡により目視観測によっ
て、配向均一性の評価を行なった。結果を表4に示す。
【0249】
【表4】
【0250】(2)M2マージン(M2)の測定 実施例1と同様に上記サンプルa〜dについて温度を数
点振ってM2マージンを評価した。結果を下記表5に示
す。
【0251】
【表5】
【0252】この結果から、素子a〜dは実駆動領域に
はポリイミド膜が存在しないため反電場の影響が少な
く、低温側でのM2マージンは室温とほば同等の値を示
している。
【0253】このように、基板に一軸配向規制力を有す
る配向制御層(ポリイミド膜)が存在する部分及び該配
向制御層が存在しない部分とを混在させ、該配向制御層
の部分に接する液晶領域から配向状態を形成して均一な
配向性を得て、さらに液晶の実駆動領域においてかかる
一軸配向規制力を有する配向制御層を存在させないこと
により、良好な駆動マージン特性を実現することができ
ることが証明された。
【0254】(3)表示焼き付きの評価 素子サンプルa〜dについて、図12に示す駆動波形を
用いて、黒表示、白表示のストライプパターンを表示さ
せ、30℃にて1000時間連続して同一パターンを表
示させた後に、上記2)と同様の方法及び条件によりセ
ル全体が白黒書き分けられる駆動条件(M2マージン)
の測定を行なった。この1000時間後のM2マージン
の値と、焼き付き実験前(同一パターン表示前)のM2
マージンの値との比をとって、1000時間後のマージ
ン保存率とした。なお、この保存率の測定温度は30℃
とした。
【0255】結果を下記表6に示す。
【0256】
【表6】
【0257】この結果から、実駆動領域においてポリイ
ミドの存在しない素子サンプルa〜dについては、非常
に高いマージン保存率、すなわち焼き付き現象が抑制さ
れ駆動特性の劣化がない性能を示す。特に、実駆動領域
において液晶に接する層が導電性の酸化物微粒子からな
る素子サンプルは、微少な表面凸凹の効果により非常に
高いマージン保存率を示すことがわかる。
【0258】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
配向均一性及び駆動特性が共に向上し、さらに表示の焼
き付き現象が抑制された液晶素子、特にカイラルスメク
ティック液晶を用いた液晶素子であって、スメクティッ
ク液晶相の配向性が均一であり、駆動マージンの温度依
存性が低減された、焼き付き現象が抑制された液晶素子
が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施態様にかかる液晶素子に用いる
基板の構造を示す平面図である。
【図2】本発明の第一の実施態様にかかる液晶素子の構
造を示す断面図である。
【図3】本発明の液晶素子における液晶の配向状態の形
成過程の一例を模式的に示す図である。
【図4】本発明の液晶素子における液晶の配向状態の形
成過程の他の例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の液晶素子における液晶の配向状態の形
成過程の更に他の例を模式的に示す図である。
【図6】本発明の第二の実施態様にかかる液晶素子の構
造を示す断面図である。
【図7】本発明の第三の実施態様にかかる液晶素子の構
造を示す断面図である。
【図8】図7に示す基板(12a)側での配向制御層と
電極の位置関係を示す図である。
【図9】本発明の第四の実施態様にかかる液晶素子の構
造を示す断面図である。
【図10】図9に示す基板(12a)側での配向制御層
と電極の位置関係を示す図である。
【図11】本発明の液晶素子の実施態様における電極構
造の一例を示す図である。
【図12】本発明の液晶素子に適用されるマトリクス駆
動法の一例を示す図である。
【図13】本発明の液晶素子に適用されるマトリクス駆
動法の一例を示す図である。
【図14】図12、13に示す駆動法を用いた際におけ
る、パルス幅と液晶の透過率の関係を示す図である。
【図15】カイラルスメクティック液晶を用いた、図1
4に示す特性を持つ素子における駆動マージンを説明す
るための図である。
【図16】本発明の他の実施態様にかかる液晶素子の構
造を示す断面図である。
【図17】本発明の他の実施態様にかかる液晶素子の構
造を示す断面図である。
【図18】本発明の他の実施態様にかかる液晶素子の構
造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 液晶素子 11 液晶 12a、12b 基板 13a、13b 電極 14a、14b 下地層 15a、15b 配向制御層 16 スペーサー R1 第一の領域 R2 第二の領域 N バトネ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浅尾 恭史 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 森 省誠 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 森山 孝志 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 三浦 聖志 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H088 EA03 EA12 EA40 FA29 GA04 HA01 HA02 HA03 HA18 HA28 JA05 JA17 JA20 KA02 LA06 MA10 MA18 MA20 2H090 HA14 HA16 HB08Y HC05 HC15 HD14 JB02 JB03 KA05 KA14 KA15 LA01 LA02 LA09 LA16 4J043 PA02 PA19 QB15 QB26 QB31 RA35 SA06 SB01 TA22 TB01 UA022 UA122 UA131 UA262 UA761 UB131 VA021 VA041 ZB23

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対の基板間に液晶を有し、少くとも一
    方の基板に液晶に対する一軸配向規制力を有する第一の
    領域と、該第一の領域外の該第一の領域に比較して液晶
    に対する一軸配向規制力が弱いか又は実質的に一軸配向
    規制力を持たない第二の領域を有し、該液晶は基板間に
    おいて降温時に液晶の液体相−液晶相の相転移過程で該
    第一の領域に接する領域から液晶相への転移が生じて該
    第一の領域の一軸配向規制力の軸方向に沿って連続的に
    液晶相転移領域が拡大し配向状態が形成される液晶素子
    において、該第一の領域がポリアミド酸前駆体と感光性
    モノマーを含有してなる感光性材料を用い、該ポリアミ
    ド酸前駆体状態で基板に塗布し、パターニング後に加熱
    焼成して該前駆体ポリイミドあるいはポリアミドイミド
    とする際に感光部が揮散し、実質的にポリイミドあるい
    はポリアミドイミド主骨格が残ることによって得られた
    ものであることを特徴とする液晶素子。
  2. 【請求項2】 前記感光性材料が、(1)下記一般式
    (I)を主成分とするポリマーからなるポリアミド酸前
    駆体と、 【化1】 (式中、Rは 【化2】 から選ばれる。Lは1もしくは2を示し、かつカルボキ
    シル基は主鎖を構成するカルボニル基に対しオルト位に
    結合する。m、nはそれぞれ独立に0もしくは1であ
    り、oは2から10の整数である。)(2)化学線によ
    り2量化又は重合可能な炭素−炭素二重結合及びアミノ
    基を含む化合物からなる感光性モノマーと、(3)必要
    に応じて光重合開始剤及び光増感剤の少なくとも一種か
    らなることを特徴とする請求項1記載の液晶素子。
  3. 【請求項3】 前記感光性材料が、(1)下記一般式
    (II)を主成分とするポリマーからなるポリアミド酸
    前駆体と、 【化3】 (式中、m、nはそれぞれ独立に0もしくは1であり、
    oは2から10の整数である。)(2)化学線により2
    量化又は重合可能な炭素−炭素二重結合及びアミノ基を
    含む化合物からなる感光性モノマーと、(3)必要に応
    じて光重合開始剤及び光増感剤の少なくとも一種からな
    ることを特徴とする請求項1または2記載の液晶素子。
  4. 【請求項4】 前記化学線により2量化又は重合可能な
    炭素−炭素二重結合及びアミノ基を含む化合物が下記一
    般式(III)で示される化合物であることを特徴とす
    る請求項2または3記載の液晶素子。 【化4】 (式中、R1 は水素原子又は炭素数1から4の低級アル
    キル基を示し、R2 は炭素数1から4の低級アルキル基
    を示す。またqは1から8の整数を示す。)
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111367123A (zh) * 2018-12-26 2020-07-03 捷恩智株式会社 水平取向型液晶显示元件、液晶组合物、显示装置及水平取向型液晶显示元件的制造方法
CN111679509A (zh) * 2019-03-11 2020-09-18 捷恩智株式会社 水平取向型液晶显示元件、液晶组合物、显示装置及水平取向型液晶显示元件的制造方法
US11781070B2 (en) 2019-07-30 2023-10-10 Transitions Optical, Ltd. Mesogen compounds

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