JP2000103191A - 筆記具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】インキ流出調節機構を内在させた筆記具におい
て、滑り止め機能と弾性的な触感を付与すると共に、長
時間筆記時の体温によるインキ流出性に及ぼす影響を緩
和する握り部を備えた筆記具の提供。 【解決手段】インキ流出調節機構３を軸筒前部に内在さ
せた筆記具において、前記インキ流出調節機構３が位置
する軸筒前部の外面の一部又は全面に滑り止め機能をも
つ外皮２１を設けたことを特徴とする筆記具１。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は筆記具に関する。更
に詳細には、インキ流出調節機構を軸筒前部の握り部と
なる位置に内在させた筆記具において、滑り止め機能と
弾性的な触感を付与した握り部を有する筆記具に関す
る。

【０００２】

【従来の技術】従来より、筆記具用軸筒の握り部に滑り
止め機能と弾性的な触感を付与させる試みは多数開示さ
れており、幾つかの提案は商品として実用化されてい
る。又、軸筒内部を透視可能にした外皮の構成に関して
も、幾つかの提案が開示されている（実公平６−１７５
７８号公報等）。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、この種の筆
記具の握り部に関し、殊に、インキ流出調節機構を軸筒
前部の握り部となる位置に内在させた筆記具において、
滑り止め機能と弾性的な触感を付与し、更には、筆記時
の手指の長時間接触による体熱の伝搬による、前記イン
キ流出調節機構に滞留のインキに及ぼす微妙な温度変化
を緩和する機能を付与する、握り部を備えた筆記具を提
供しようとするものである。この点について以下に説明
する。前記インキ流出調節機構（櫛溝等のインキ流出調
節機構を備えたプラスチック成形体、俗にペン芯と称さ
れている）を内在させ、軸筒後部に貯蔵したフリーのイ
ンキを筆記先端より流出させる筆記具にあっては、イン
キ流出調節機構は、加温或いは減圧による、前記インキ
の筆記先端からの飛び散りや、過剰流出を制御するため
のものであり、軸筒後部に収容したインキ容量に相応す
るインキ流出調節機構の容量が必要である。ここで、前
記インキ流出調節機構を内在させる軸筒前部とインキを
収容させる軸筒後部は同一軸体で形成されており、大容
量のインキに対して有効に機能させ、且つ、携帯性の筆
記具としてのスリムな外観性を維持するため、インキ流
出調節機構は、前端方向を縮径することなく、軸線方向
に亘り、略一様な外径寸法を備えた成形体であり、前記
成形体を収容保持する軸筒前部も一様な外径寸法に成形
されている。更には、前記収容保持性を損なわないよ
う、寸法安定性が保持される比較的硬質の軸筒が適用さ
れている。この種のインキ流出調節機構を備えた筆記具
は、前記した形態を有しており、筆記時には、軸筒前部
を握り部となすので、手指等が滑り易く、弾性感も不足
しているので、筆記時に疲労感を伴う。更には、長時間
の実用に際して、前記軸筒前部（握り部）が手指の接触
により昇温し、インキ流出調節機構或いは内部に貯留の
インキに微妙に影響し、インキ流出性にも微妙に影響を
与えがちである。本発明は、前記した不具合を一挙に解
消し、装飾性、意匠的効果等も付与した握り部を備えた
筆記具を提供しようとするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】以下に本発明を図面につ
いて説明する（図１〜図４参照）。本発明は、インキ流
出調節機構３を軸筒前部に内在させた筆記具１におい
て、前記インキ流出調節機構３の位置する軸筒前部の外
面の一部又は全面に、滑り止め機能をもつ外皮２１を設
けたことを特徴とする筆記具１を要件とする。更には、
外皮２１は、熱可塑性エラストマー、シリコンゴムから
選ばれる弾性材料により形成されてなること、外皮２１
は、熱可塑性エラストマー、ホットメルト樹脂からな
る、厚みが１０〜４００μｍの塗膜であること、外皮２
１は、２色成形、インサート成形、若しくはインモール
ド成形により、軸筒２と一体に設けられてなること、外
皮２１は、成形体の嵌め込みにより形成されてなるこ
と、外皮２１は、０．２ｍｍ〜１ｍｍの厚みであるこ
と、外皮２１は、無色透明乃至有色透明状であること、
外皮２１は、可逆熱変色性を有すること、等を要件とす
る。

【０００５】前記インキ流出調節機構３は、軸筒２後部
のインキ貯蔵部の内圧上昇による溢出インキを一時的に
保持するものであって、例えば、プラスチック成形体か
らなる櫛溝機構等を備えた、所謂、ペン芯と称されるイ
ンキ調節部材であり、従来より汎用の構造のものが有効
であり、本発明はこの種のペン芯を軸筒前部（握り部）
に内在させた構造の筆記具を対象とする。外皮２１は、
滑り止め機能を有する構成であれば、非弾性的な熱可塑
性樹脂の成形体（凹凸条の形成により、滑り止め性と弾
性感を付与したもの）であってもよいが、それ自体が弾
性的性状を示す、熱可塑性エラストマー、シリコンゴム
等のゴム質エラストマー、弾性感を示すホットメルト樹
脂や、各種樹脂の発泡体等の適用が便宜である。前記熱
可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン
系、ポリスチレンとポリオレフィンのブロック共重合
体、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、１、
２−ポリブタジエン系、塩化ビニル系、フッ素系が例示
できる。又、ポリプロピレンとエチレンプロピレン系ゴ
ムとのブレンド、ブタジエンとアクリロニトリルの共重
合体とのブレンド、塩素化ポリエチレンとナイロンとの
ブレンド等のブレンドされたエラストマーであってもよ
い。ホットメルト樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル
系、ポリアミド系、ポリエステル系、アイソタクチック
ポリプロピレン、等が有効である。

【０００６】前記した外皮２１には、可逆熱変色性材料
をブレンドし、或いは可逆熱変色性材料を含むコーティ
ング層を設けて、筆記時の手指の温度や環境温度変化に
より可逆的に色変化する構成となすことができる。前記
可逆熱変色性材料は、例えば、（イ）電子供与性呈色性
有機化合物、（ロ）電子受容性化合物、及び前記
（イ）、（ロ）の電子授受反応による呈色反応の生起温
度を決める（ハ）反応媒体の均質相溶体からなる、公知
の可逆熱変色性材料、具体的には、本出願人が先に提案
した、特公昭５１−３５４１４号公報、特公昭５１−４
４７０６号公報、特公平１−１７１５４号公報、特開平
７−１８６５４６号公報等に記載されているヒステリシ
ス幅の比較的小さい熱変色性材料や、３℃以下のΔＴ値
（融点−曇点）を示す脂肪酸エステルを前記（ハ）成分
として適用した、３℃以下のヒステリシス幅を発現させ
る高感度の可逆熱変色性材料（特公平１−２９３９８号
公報）を挙げることができる。この種の可逆熱変色性材
料は、変色温度を境として、その前後で変色し、変色前
後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在
しえない。即ち、もう一方の状態はその状態が発現する
のに要した熱または冷熱が適用されている間は維持され
るが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈す
る元の状態に戻るタイプの熱変色性材料である。又、大
きなヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩
記憶性熱変色性材料、即ち、温度変化による着色濃度の
変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域よ
り低温側から温度を上昇させていく場合と逆に変色温度
域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる
経路を辿って変色し、低温側変色点と高温域変色点の間
の常温域において、前記低温側変色点以下の温度、或い
は高温側変色点以上の温度で変化させた様相を互変的に
記憶保持できる材料が有効であり、本出願人が先に提案
した、特公平４−１７１５４号公報、特開平７−１７９
７７７号公報、特開平７−３３９９７号公報等に記載さ
れている材料を利用できる。前記熱変色性材料は、マイ
クロカプセルに内包させて顔料形態として通常、実用に
供される。

【０００７】外皮２１が塗膜の系では、前記熱変色性顔
料は、熱可塑性エラストマー、或いは、ホットメルト樹
脂を含むビヒクル中に分散状態となして適用され、熱変
色効果の面から、塗膜中における占有率が５〜８０重量
％（好ましくは、１０〜６０重量％）の範囲となるよう
配合される。５重量％未満では発色濃度が低く、色変化
が明瞭に視覚できず、一方、８０重量％を超えると残色
が視覚され、明瞭な消色状態を視覚させ難い。外皮２１
が成形体の系では、熱変色性顔料は、熱可塑性エラスト
マー又は熱可塑性樹脂中に０．１〜４０重量％（好まし
くは０．２〜２５重量％）が溶融ブレンドされ、成形さ
れる。外皮２１が塗膜の系では、熱可塑性エラストマー
を含む加工液のロールコーティング、カーテンコータ
ー、ディッピング、スプレー塗装、タンポ印刷、シルク
スクリーン印刷、転写印刷等の汎用の手段により、握り
部の表面に適宜形状、大きさの塗膜（文字、記号、図柄
等を含む）を形成できる。塗膜の厚みは１０〜４００μ
ｍ（好ましくは、２０〜３００μｍ）である。１０μｍ
未満の系では、弾性感に乏しく、概ね４００μｍ以下の
膜厚で滑り止め機能と弾性的な触感を満足させる。外皮
２１がホットメルト系樹脂の系では、該樹脂の適宜量を
溶剤に溶かし、印刷やコーティング手段、或いは、溶射
手段、加熱によるドクターコーティング等による汎用の
手段により形成される。外皮２１が２色成形、インサー
ト成形、若しくはインモールドによる系では、成形体の
肉厚は、概ね０．２〜１．５ｍｍ（好ましくは、０．３
〜１．２ｍｍ）の範囲にあれば、耐久性及び弾性的触感
を満たす。携帯性の細身形態の筆記具にあっては、キャ
ップのデザインや装着性との関係で、０．３〜１．０ｍ
ｍ、更に好ましくは、０．３〜０．８ｍｍである。前記
成形体は、筒状、リング状、ブロック状、外面に小突起
が分散状に形成されたもの、波状に形成されたもの、多
角形の外形を有するもの等、任意の形象が有効である。
外皮２１が成形体の嵌め込みによる取り付けの系では、
０．３〜１．５ｍｍ程度の肉厚の成形体、着脱自在の嵌
め込みによる系では、最大肉厚部が３ｍｍ程度（突起部
を含む）であってもよい。外皮２１は、軸筒２前部表面
の握り部となる個所を僅かに凹設し、前記凹部に配する
こともできる。

【０００８】握り部となる軸筒２前部が、透明状に形成
された系では、前記外皮２１を透明状に構成することに
より、内在のインキ流出調節機構３の透視性を損なうこ
となく、所期の握り部の機能を付与できる。又、前記外
皮２１が不透明状である系にあっては、一部被覆状態或
いは、分離状態に複数の外皮２１を配設することによ
り、内在のインキ流出調節機構３の一部を透視可能に構
成できる。外皮２１には、シリカ等の増量剤、ステアリ
ン酸カルシウム等の安定剤、アルミニウム、チタニウム
等の金属酸化物の静電防止剤、汎用の着色剤、蛍光顔
料、蓄光顔料、夜光顔料、金属粉、パール顔料、フォト
クロミック着色剤、抗菌剤等をブレンドすることができ
る。

【０００９】

【発明の実施の形態】本発明は、インキ流出調節機構３
を軸筒前部（握り部）に内在させた、ボールペン、サイ
ンペン、マーキングペン、万年筆等の筆記具に有効であ
り、前記軸筒２前部に外皮２１を設けることにより構成
される。前記外皮２１は、塗膜、或いは、２色成形、イ
ンサート成形、或いはインモールドによるもの、別体と
して予め所定形状に成形した成形体の嵌め込み、等の形
態を含み、以下の実施形態により例示する。

【００１０】

【実施例】実施形態１（図１参照） ポリオレフィン系樹脂の射出成形により成形された外径
９ｍｍの円筒状軸筒２の前部（肉厚：０．５ｍｍ）に、
櫛溝構造を有するプラスチック製インキ流出調節機構３
（外径７ｍｍ、全長２８ｍｍ）を内挿固定し、筆記先端
部５として、ボールペンチップを装着させ、軸筒２後部
に貯蔵したインキを筆記先端部５に導出させるボールペ
ンにおいて、前記軸筒２前部外面のキャップ４との嵌合
部２２、２３を除く箇所に外皮２１（肉厚：０．５ｍ
ｍ）を設け、キャップ４を装着し、筆記具１を構成し
た。尚、図１では、キャップ４が外皮２１の全面を覆っ
ているが、これ以外にもキャップ４後端より、外皮２１
が露出した構成であってもよい。

【００１１】実施形態２（図２参照） 前記実施形態１の軸筒前部外周に、コーティング加工に
よる熱可塑性エラストマーの厚み１５０μｍの塗膜から
なる外皮２１を設けた。 実施形態３（図３参照） 前記実施形態１の軸筒前部外周に、長細状の４列の外皮
２１を適宜間隔をおいて設けた。

【００１２】実施形態４（図４参照） 予め別体として成形した、凹凸表面をもつ熱可塑性エラ
ストマー成形体（凹部の肉厚：０．５ｍｍ、凸部の肉
厚：１．２ｍｍ）を軸筒前端部に嵌め込むことにより、
握り部を構成した。

【００１３】前記実施形態１〜４において、具体的にポ
リスチレンとポリオレフィンのブロック共重合体による
外皮２１を設け、軸筒前部（握り部）を把持し、筆記に
供したところ、いずれも弾性的な触感と、滑り止め機能
を満たし、長時間の実用に対して疲労感もなく、快適な
筆記性を示した。

【００１４】

【発明の効果】本発明は、インキ流出調節機構を軸筒前
部に内在させた筆記具において、筆記時における手指の
滑り止め機能と、弾性的な触感と、長時間筆記時におけ
る体熱のインキ貯留部への伝搬の緩和による安定的な筆
記適性とを付与する握り部を備えた筆記具を提供する。
殊に、前記握り部から内部のインキ流出調節機構を視覚
できる構成にあっては、内部機構や機能状態を目視で
き、メカニカル性をアピールする筆記具として実用性及
び商品性を満足させる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明筆記具の一実施形態の縦断面図である。

【図２】本発明筆記具の他の実施形態の説明図である。

【図３】本発明筆記具の他の実施形態の説明図である。

【図４】本発明筆記具の他の実施形態の説明図である。

【符号の説明】

１ 筆記具 ２ 軸筒 ２１ 外皮 ２２ キャップ嵌合部（気密嵌合部） ２３ キャップ嵌合部（支持嵌合部） ３ インキ流出調節機構 ４ キャップ ５ 筆記先端部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 2C350 GA02 GA03 HA13 KA10 KF01 NA10 NA23 NC05 NC20 NC21 NC46

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 インキ流出調節機構を軸筒前部に内在さ
   せた筆記具において、前記インキ流出調節機構の位置す
   る軸筒前部の外面の一部又は全面に、滑り止め機能をも
   つ外皮を設けたことを特徴とする筆記具。
2. 【請求項２】 外皮は、熱可塑性エラストマー、シリコ
   ンゴムから選ばれる弾性材料により形成されてなる請求
   項１記載の筆記具。
3. 【請求項３】 外皮は、熱可塑性エラストマー、ホット
   メルト樹脂からなる、厚みが１０〜４００μｍの塗膜で
   ある請求項１記載の筆記具。
4. 【請求項４】 外皮は、２色成形、インサート成形、若
   しくはインモールド成形により、軸筒と一体に設けられ
   てなる請求項１記載の筆記具。
5. 【請求項５】 外皮は、成形体の嵌め込みにより形成さ
   れてなる請求項１記載の筆記具。
6. 【請求項６】 外皮は、０．２ｍｍ〜１ｍｍの厚みであ
   る請求項４又は５記載の筆記具。
7. 【請求項７】 外皮は、無色透明乃至有色透明状である
   請求項１乃至６記載の何れかの筆記具。
8. 【請求項８】 外皮は、可逆熱変色性を有する請求項１
   乃至７記載の何れかの筆記具。