JP2000087142A - フェライト+ベイナイト組織を有する高張力熱延鋼帯の製造方法 - Google Patents

フェライト+ベイナイト組織を有する高張力熱延鋼帯の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋼帯内において均一な特性の得られるフェラ
イト+ベイナイト組織を有する高張力熱延鋼帯の製造方
法を提供する。 【解決手段】 wt%で、C:0.003〜0.15、Si:1.5以下、
Mn:0.5〜2.5、P:0.1以下、S:0.01以下、solAl:0.00
5〜0.08、N:0.008以下を含む鋼の粗バーまたは薄スラ
ブを製造する工程と、粗バーまたは薄スラブを加熱する
ことにより、100〜850mpmの速度範囲の一定圧延速度
で、鋼帯内の仕上温度をAr3変態点〜(Ar3変態点+50℃)
の温度範囲に納めて仕上圧延する工程と、仕上圧延後の
鋼帯を5℃/s以上の冷却速度で550〜750℃の温度範囲に
冷却し1秒以上中間保持する工程と、中間保持後の鋼帯
を5℃/s以上の冷却速度で冷却し、300〜550℃の温度範
囲に巻取る工程とを有してなるフェライト+ベイナイト
組織を有する高張力熱延鋼帯の製造方法など。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、伸びフランジ性に
優れた高張力熱延鋼帯、特に、フェライト+ベイナイト
組織を有し、強度が400〜590MPaの高張力熱延
鋼帯の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、自動車用の構造部材には、省エネ
ルギーのための軽量化や安全性向上のための高強度化が
要請されており、高張力鋼板の適用される機会が増加し
ている。なかでも、ロアアーム、メンバー類、ホイール
類などの自動車足廻り部品には、伸びフランジ成形を主
体とする過酷な成形を受けることから、伸びフランジ性
に優れたフェライト+ベイナイト組織を有する熱延鋼板
が使用される場合が多い。
【0003】このフェライト+ベイナイト組織を有する
熱延鋼板の製造方法としては、熱延後の鋼帯を連続焼鈍
設備などを用いて熱処理する方法もあるが、コスト的に
有利な熱延ままで製造する方が望ましく、特公昭62−
37089号公報、特公平7−74378号公報、特公
平8−26407号公報などには、そのための方法が開
示されている。
【0004】こうした方法により熱延ままでフェライト
+ベイナイト組織を有する熱延鋼帯を製造する場合、鋼
帯内における特性の均一化を図るために仕上温度やその
後の冷却条件を厳密にコントロールする必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、仕上温
度と冷却条件を共に厳密にコントロールすることは難し
く、圧延速度を一定にして冷却条件を厳密にコントロー
ルしようとすると仕上温度に、また加速圧延を行って仕
上温度を厳密にコントロールしようとすると冷却条件
に、大きな変動が生じて鋼帯内における特性の均一化を
十分に図れないのが実情である。
【0006】本発明は、このような課題を解決するため
になされたもので、鋼帯内において均一な特性の得られ
るフェライト+ベイナイト組織を有する高張力熱延鋼帯
の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題は、wt%で、
C:0.003〜0.15%、Si:1.5%以下、M
n:0.5〜2.5%、P:0.1%以下、S:0.0
1%以下、sol.Al:0.005〜0.08%、
N:0.008%以下を含む鋼の粗バーまたは薄スラブ
を製造する工程と、前記粗バーまたは薄スラブを加熱す
ることにより、100〜850mpmの速度範囲の一定
圧延速度で、鋼帯内の仕上温度をAr3変態点〜(Ar3
変態点+50℃)の温度範囲に納めて仕上圧延する工程
と、前記仕上圧延後の鋼帯を5℃/s以上の冷却速度で
550〜750℃の温度範囲に冷却し、前記温度範囲で
1秒以上中間保持する工程と、前記中間保持後の鋼帯を
5℃/s以上の冷却速度で冷却し、300〜550℃の
温度範囲に巻取る工程と、を有してなるフェライト+ベ
イナイト組織を有する高張力熱延鋼帯の製造方法により
解決される。
【0008】以下に、成分および製造条件の限定理由に
ついて説明する。 C:0.15wt%を超えると硬質・低延性となり、
0.003wt%未満では所定の強度を得るためには多
量の合金元素の添加が必要になりコスト高となる。耐食
性が所望される場合には、Cの添加量を0.003wt
%以上で比較的少量に制限し、P、Cuなどで補うと効
果的である。
【0009】Si:目標強度レベルに応じて適宜添加す
る必要があるが、1.5wt%を超えると溶接性が劣化
する。
【0010】Mn:ベイナイト組織生成に必要であり、
目標強度レベルに応じて適量添加する必要がある。0.
5wt%未満では所望の組織または強度が得られず、
2.5wt%を超えると溶接性が劣化する。
【0011】P:耐食性が所望される場合は添加が有効
であるが、0.1wt%を超えると低延性・低靭性とな
る。耐食性が所望されない場合は、0.015wt%以
下が好ましい。
【0012】S:0.01wt%を超えるとMnSを形
成して伸びフランジ性を大きく低下させる。好ましい範
囲は0.005wt%以下である。
【0013】sol.Al:鋼の脱酸を安定して行うた
めに0.005wt%以上必要であるが、0.08wt
%を超えるとその効果は飽和しコスト高になる。好まし
い範囲は0.01〜0.05wt%である。
【0014】N:0.008wt%を超えると低延性・
低靭性となる。好ましい範囲は0.005wt%以下で
ある。
【0015】これらの元素の他、耐食性の向上を目的と
してCuを0.6wt%以下、Niを0.6%以下、M
oを0.7wt%以下、Snを0.1wt%以下、析出
強化による溶接時のHAZ軟化防止を目的としてNbを
0.06wt%以下、Tiを0.15wt%以下、Vを
0.1wt%以下、Zrを0.1wt%以下、焼入れ性
改善を目的としてBを0.01wt%以下、Crを0.
8wt%以下、Wを0.5wt%以下の範囲で添加して
も、本発明の効果が損なわれることはない。
【0016】また、Caを0.006wt%以下、RE
Mを0.1wt%以下の範囲で添加すると伸びフランジ
性がさらに改善される。
【0017】こうした成分を含有する鋼を仕上圧延する
に際しては、鋼を溶製後粗バーあるいは粗バー相当の厚
みの薄スラブを製造する必要がある。その製法は特に限
定しないが、通常は、鋼を溶製後、連続鋳造あるいは造
塊ー分解圧延によりスラブとなし、そのまま直接あるい
は加熱炉で再加熱して粗圧延することにより粗バーが、
また、溶製後、連続鋳造により粗バー相当の厚みを有す
る薄スラブが製造される。
【0018】スラブの再加熱を行う場合は、スケール欠
陥の発生防止や仕上圧延前のオーステナイト粒の微細化
を図る上で、1250℃以下の加熱が好ましい。
【0019】前述したように、鋼帯内において特性の均
一なフェライト+ベイナイト組織を有する高張力熱延鋼
帯を製造するには、仕上温度と冷却条件を共に厳密にコ
ントロールする必要がある。
【0020】本発明者等がそのための条件を検討したと
ころ、100〜850mpmの速度範囲の一定圧延速度
で、鋼帯内の仕上温度をAr3変態点〜(Ar3変態点+
50℃)の範囲内に納めて仕上圧延を行うことが必要で
あり、その手段として粗バーや薄スラブを仕上圧延前に
加熱することが有効であることが明らかになった。
【0021】圧延速度が100mpm未満では生産性が
著しく低下し、850mpmを超えると圧延後の冷却条
件の厳密なコントロールが困難になるとともに、圧延中
の温度や板厚のコントロールも困難になる。なお、上記
一定圧延速度においては、±50mpm程度の速度変動
があっても本発明の効果が損なわれることはない。
【0022】仕上温度がAr3変態点未満では、加工性
が著しく劣化するとともに、鋼帯内において均一な特性
が得られない。また、(Ar3変態点+50℃)を超え
ると、加工ひずみが解放されるとともにオーステナイト
粒が大きくなりフェライトの核生成サイトが少なくなる
ことから、鋼帯内において均一な特性が得られ難くなる
とともに、延性も低下する。
【0023】仕上温度をこのような温度範囲に納めるた
めに粗バーや薄スラブを加熱するとき、その温度は粗バ
ーや薄スラブの加熱前の温度や鋼の変態点、圧延速度な
どに応じて適宜決められる。粗バーや薄スラブには、通
常、位置による温度分布が生じているので、その温度分
布に応じて粗バーや薄スラブの加熱条件を変えるのが好
ましい。
【0024】仕上圧延後は、微細なフェライト粒を強度
に応じて適正量析出させるために、5℃/s以上の冷却
速度で550〜750℃の温度範囲に冷却し、この温度
範囲で1秒以上中間保持する必要がある。
【0025】中間保持後は、未変態のオーステナイト相
を安定してベイナイト相に変態させるために5℃/s以
上の冷却速度で冷却し、300〜550℃の温度範囲で
巻取る必要がある。
【0026】鋼帯内の仕上温度をAr3変態点〜(Ar3
変態点+30℃)の温度範囲に納めて仕上圧延すれば、
鋼帯内においてより均一な特性が得られる。
【0027】300〜500mpmの速度範囲の一定圧
延速度で仕上圧延を行えば、より厳密に冷却条件をコン
トロールできるので、より均一な特性が得られる。
【0028】350〜500℃の温度範囲に巻取れば、
組織の均一化が進み、安定して所望の特性が得られる。
【0029】粗バーまたは薄スラブの加熱は、コイルボ
ックスなどを用いて行ってもよいが、粗バーまたは薄ス
ラブを搬送しながらその幅方向全体を加熱できる粗バー
加熱装置により行えば、生産性を損なうことなくより均
一な加熱を行える。
【0030】なお、コイルボックスで巻かれた粗バーま
たは薄スラブを巻き戻して仕上圧延する場合は、巻き戻
された後に上記の粗バー加熱装置で加熱するのが効果的
である。
【0031】粗バーまたは薄スラブの加熱を誘導加熱コ
イルを用いて行えば、加熱を迅速に行えるので、より生
産性をアップできる。
【0032】
【実施例】表1に示す成分を有する鋼A〜Gを溶製し、
連続鋳造により厚さ約250mmのスラブを製造し、1
210℃に加熱後,粗圧延機により厚さ約30mmの粗
バーに圧延した。そして、表2〜4に示す条件で、この
粗バーを加熱し、仕上圧延ー冷却ー巻取りを順次行い、
板幅800mm、板厚1.4〜8.0mm、強度レベル
400〜590MPaのフェライト+ベイナイト組織を
有する熱延鋼帯1〜22を作製した。なお、粗バー加熱
は、誘導コイルタイプの加熱手段を備え、このコイル中
に粗バーを通過させながら加熱する粗バー加熱装置を用
いて行った。
【0033】そして、作製した鋼帯1〜22の長手方向
始端部(T)、中央部(M)、終端部(B)の幅中央部
より圧延直角方向に採取した2本のJIS5号試験片に
より引張試験を行い、平均値で引張特性を評価した。特
に、鋼帯内における特性の均一性は、強度TSのバラツ
キΔTS、すなわちT、M、Bにおける強度の最大値と
最小値の差で評価した。同様に、仕上温度のバラツキΔ
FTを、T、M、Bにおける仕上温度の最大値と最小値
の差から求めた。
【0034】伸びフランジ性の評価については、圧延鋼
帯の幅中央部より採取した150×150mmの試験片
中央にd0=10mmφの穴を打抜き、これを頂角60
°の円錐ポンチにてバリをポンチ側として押し広げ、穴
縁に板厚を貫通して亀裂が入った時点での穴径(df
を測定し、次式により穴拡げ率(λ)を求めた。 穴拡げ率:λ=(df−d0)/d0×100 (%)
【0035】結果を表2〜4に示す。
【0036】本発明例である鋼帯No.1、2、5〜1
3、15〜20は、いずれもΔTSが50MPa以下
で、長手方向にわたって均一な特性が得られる。
【0037】特に、仕上温度がAr3変態点〜(Ar3
態点+30℃)の温度範囲にある鋼帯No.11、1
2、15、20や圧延速度が300〜500mpmの速
度範囲にある鋼帯No.5、6、8、9、16では、Δ
TSが30MPa以下となり、より均一な特性が得られ
る。
【0038】また、仕上温度がAr3変態点〜(Ar3
態点+30℃)の温度範囲にあり、しかも圧延速度が3
00〜500mpmの速度範囲にある鋼帯No.2、
7、13、15、17では、均一性に著しく優れた特性
が得られる。
【0039】一方、比較例である鋼帯No.3、21で
は、仕上温度が圧延終端部で低下するためΔTSが大き
くなり、また、鋼帯No.4、22では、空冷時間が圧
延終端部で短くなるため降伏比が大きくなり、いずれも
長手方向にわたる特性の均一性に劣る。
【0040】なお、本発明のいずれの鋼帯もフェライト
+ベイナイト組織を有しており、ベイナイト分率が高い
ほど高強度になっている。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【発明の効果】本発明は以上説明したように構成されて
いるので、、鋼帯内において均一な特性の得られるフェ
ライト+ベイナイト組織を有する高張力熱延鋼帯の製造
方法を提供できる。
フロントページの続き (72)発明者 山本 徹夫 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 木戸 章雅 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 Fターム(参考) 4K037 EA01 EA04 EA05 EA06 EA09 EA13 EA15 EA17 EA18 EA19 EA20 EA23 EA25 EA27 EA28 EB02 EB08 EB09 EB11 FA03 FC07 FD02 FD03 FD08 FE01 FE06 JA03 JA06

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 wt%で、C:0.003〜0.15
    %、Si:1.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、
    P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.A
    l:0.005〜0.08%、N:0.008%以下を
    含む鋼の粗バーまたは薄スラブを製造する工程と、前記
    粗バーまたは薄スラブを加熱することにより、100〜
    850mpmの速度範囲の一定圧延速度で、鋼帯内の仕
    上温度をAr 3変態点〜(Ar3変態点+50℃)の温度
    範囲に納めて仕上圧延する工程と、前記仕上圧延後の鋼
    帯を5℃/s以上の冷却速度で550〜750℃の温度
    範囲に冷却し、前記温度範囲で1秒以上中間保持する工
    程と、前記中間保持後の鋼帯を5℃/s以上の冷却速度
    で冷却し、300〜550℃の温度範囲に巻取る工程
    と、を有してなるフェライト+ベイナイト組織を有する
    高張力熱延鋼帯の製造方法。
  2. 【請求項2】 鋼帯内の仕上温度をAr3変態点〜(A
    3変態点+30℃)の温度範囲に納めて仕上圧延する
    請求項1に記載のフェライト+ベイナイト組織を有する
    高張力熱延鋼帯の製造方法。
  3. 【請求項3】 300〜500mpmの速度範囲の一定
    圧延速度で仕上圧延を行う請求項1または請求項2に記
    載のフェライト+ベイナイト組織を有する高張力熱延鋼
    帯の製造方法。
  4. 【請求項4】 350〜500℃の温度範囲に巻取る請
    求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフェライト
    +ベイナイト組織を有する高張力熱延鋼帯の製造方法。
  5. 【請求項5】 粗バーまたは薄スラブの加熱を、粗バー
    または薄スラブを搬送しながらその幅方向全体を加熱で
    きる装置により行う請求項1から請求項4のいずれか1
    項に記載のフェライト+ベイナイト組織を有する高張力
    熱延鋼帯の製造方法。
  6. 【請求項6】 粗バーまたは薄スラブの加熱を誘導加熱
    コイルを用いて行う請求項1から請求項5のいずれか1
    項に記載のフェライト+ベイナイト組織を有する高張力
    熱延鋼帯の製造方法。
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