JP2000085311A - 空気入りタイヤ - Google Patents

空気入りタイヤ

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JP2000085311A
JP2000085311A JP10257043A JP25704398A JP2000085311A JP 2000085311 A JP2000085311 A JP 2000085311A JP 10257043 A JP10257043 A JP 10257043A JP 25704398 A JP25704398 A JP 25704398A JP 2000085311 A JP2000085311 A JP 2000085311A
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belt
tire
layer
pneumatic tire
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JP10257043A
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Kazuo Oshima
一男 大島
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Original Assignee
Bridgestone Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ベルトコード折れの発生を防止し、且つ軽量
性に優れた空気入りタイヤを提供する。 【解決手段】 一対のビード部と、両ビード部にまたが
って延びるトロイド状のカーカス層と、該カーカス層の
クラウン部に位置するトレッド部と、該トレッド部の両
側にサイドウォール部とを具えると共に、該トレッド部
のタイヤ半径方向内側に配置された少なくとも2枚のベ
ルト層5を有したタイヤであって、該ベルト層5の少な
くとも1層の補強コードが、素線径0.125から0.
35mmのフィラメントを複数本撚り合わせたスチール
コードであり、該コードがその応力−歪曲線に変曲点を
有し、且つ切断強度の3分の1の荷重応力下での該コー
ドの直径の無負荷状態での直径に対する減少率が35%
以上である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は空気入りタイヤに関
し、さらに詳しくはベルトコード折れの防止による耐久
性が向上し、且つ軽量性に優れた空気入りラジアルタイ
ヤに関する。
【0002】
【従来の技術】一般乗用車、又は990cc以下の排気
量である、所謂軽車輌等での車輌軽量化は、その燃費性
能、運動性能向上に不可欠であり、それに装着されるタ
イヤの軽量化要求は近年ますます厳しくなりつつある。
【0003】タイヤ軽量化の手段として、トレッド部や
サイド部に使用されるゴム量の低減、カーカスプライ、
ビード部、ベルト層等の補強材使用量の低減等各種手段
が用いられている。中でも、ラジアルタイヤのベルト層
の補強材(ベルト材)には比重の高いスチールコードを
使用することが一般的であり、ベルト層はタイヤ全重量
に対し15%以上もの重量比率を占めているため、ベル
ト層の重量を低減することは、タイヤの軽量化の有効な
手段である。
【0004】ベルト層を軽量化するために、ベルト層に
用いられるスチール量を低減すれば良いのであるが、ベ
ルトコードの打ち込み数は、必要とされるベルト層の強
度、ベルト材として使用されるスチールコードの強力、
太さ等により変える必要があり、単純に、コードの打ち
込み数を減じると、コード1本あたりの歪入力が増加
し、かつベルト層の強度が下がるため、ベルトコードの
折れ(以下ベルト折れということがある)が発生するこ
とがある。このベルト折れを改良するためにはベルトコ
ーティングゴムを硬くする手法が一般的ではあるが、ゴ
ムの硬度にも限界がある。つまり通常のベルトコーティ
ングゴムは他部材に使用されているゴム部材よりは非常
に硬度の高いものが使用されているのが現状であり、ゴ
ムのみの改良でベルトコード折れを回避することには限
界があった。ちなみに、通常の乗用車用ラジアルタイヤ
の場合、ベルト層の強度はベルト層1枚の5cm幅当た
り、2000〜2500kgであることが一般的であ
る。
【0005】そこで、スチール補強ベルトを有するタイ
ヤの軽量化手段として、ベルト材層に有機繊維コード
(例えば芳香族ポリアミド繊維コード、ポリビニルアル
コール繊維コード、ポリエチレンテレフタレート繊維コ
ード等)、あるいは有機繊維のモノフィラメントを用い
る方法(特開平5−195360号、特開平5−860
9号、特開平8−318706号、特開平9−2490
07号等)、2ベルトをタイヤ周方向にほぼ0度で巻き
付け、ベルト補強層( 所謂キャップレイヤー)を除去し
たベルト構造自体の改良等が提案されている。
【0006】しかしながら、前者のベルト材をスチール
から初期引張抵抗度が高い有機繊維へ変更することは、
タイヤ軽量化は可能であるものの、コストアップは避け
られず、またタイヤ性能に関しても、なかなかスチール
ベルト以上の性能を得ることが困難であった。
【0007】また、後者のベルト構造を変えることは、
タイヤ成型機の大幅改良が必要であり、且つタイヤ張力
をほぼ1枚の第2ベルト層のみで負担せざるを得ないた
め、従来のベルト層よりベルトコード使用量を多くする
必要があるというような欠点があった。さらに、比較的
小型車輌に搭載される小型のラジアルタイヤにはキャッ
プレイヤーは使用されないことが多く、キャップレイヤ
ーを不要とすることにより軽量化が可能となる該手法で
は通常の小型タイヤへの適用メリットが見出せなかっ
た。
【0008】また、従来の有機繊維コードをベルト材と
して使用したタイヤも一部市場に見られる。かかるベル
ト材としてはレーヨン、ビニロン、高モジュラスポリエ
ステル繊維等、比較的初期引張抵抗度が高く、加硫中の
高温下でも物性変化の少ない有機繊維が用いられている
が、これらの有機繊維コード補強ベルト層は、通常4層
で使用されることが多く、結局、タイヤ重量はスチール
ベルト層2層のタイヤとほぼ同等である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事実に鑑
みてなされたものであり、本発明の目的は、主に一般乗
用車、又は排気量が990cc以下である所謂軽車輌等
に用いられる比較的小型のタイヤにおいて、従来の手法
に囚われず、且つ安価なベルト材を勘案して検討を加え
て得るに至った、ベルト折れ性及び軽量性に優れた空気
入りタイヤを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく特にベルト材に着目して、鋭意検討した結
果、特定のスチールコードを用いる等の下記手段によっ
て、前記目的を達成し得る事を見出し、本発明を完成す
るに至った。
【0011】すなわち(1)本発明の空気入りタイヤ
は、一対のビード部と、両ビード部にまたがって延びる
トロイド状のカーカス層と、該カーカス層のクラウン部
に位置するトレッド部と、該トレッド部の両側にサイド
ウォール部とを具えると共に、該トレッド部のタイヤ半
径方向内側に配置された少なくとも2枚のベルト層を有
したタイヤであって、該ベルト層の少なくとも1層の補
強コードが、素線径0.125から0.35mmのフィ
ラメントを複数本撚り合わせたスチールコードであり、
該コードがその応力−歪曲線に変曲点を有し、且つ、切
断強度の3分の1の荷重応力下での該コードの直径の無
負荷状態での直径に対する減少率<R>が35%以上で
あることを特徴とする。
【0012】(2)前記コードの直径の減少率<R>は
45%以上であることが好ましい。
【0013】(3)前(1)乃至(2)のいずれか1項
において、前記ベルト層の強度はベルト層1枚の5cm
幅当たり、2000kg以下であることが好ましい。
【0014】(4)前(1)乃至(2)のいずれか1項
において、前記ベルト層の強度はベルト層1枚の5cm
幅当たり、1500kg以下であることが好ましい。
【0015】(5)前(1)乃至(4)のいずれか1項
において、前記コードの撚り構造は1xn(n=3〜
6)の単撚り構造であることが好ましい。
【0016】(6)前(1)乃至(5)のいずれか1項
において、前記ベルト層の外周側に少なくとも1枚より
なるベルト補強層はベルト層全体及び/又は両端部に配
置され、該ベルト補強層はタイヤ周方向に実質上平行に
なる様に螺旋状にエンドレスにまきつけられる事により
形成されることが好ましい。
【0017】本発明は、ベルト層の少なくとも1枚に特
定のスチールコードを用いることにより、ベルト折れを
発生させずにスチールコード使用量を低減させた軽量性
に優れた空気入りタイヤに関する。
【0018】ベルト折れに付言すれば、その原因につい
て、詳細に検討したところ、以下の知見を得た。タイ
ヤ接地部のベルトコードに圧縮入力が加わり、この圧縮
入力がベルトコードの座屈を起こすために、ベルトコー
ドの折れが起こる。前記コード座屈は常時同一個所で
起こり、コードの一部分が絶えず座屈入力を受ける。
この圧縮歪みによるコード座屈はスチールコードの圧縮
モジュラスが高く、且つ圧縮歪みをコード自体の圧縮変
形で吸収しきれないために座屈が発生しコード切断に至
る。
【0019】そこで、上記現象を検証するために、コー
ドとゴムの複合体を作成し、1×3×0.3構造の通常
のベルトコードに使用されているコード軸方向に圧縮入
力を加えたところ、1%以下の小さな圧縮入力でコード
のある部分に座屈が生じ、それ以上の大きな圧縮入力が
加わってもその座屈部分で圧縮歪入力を吸収してしまう
ため、座屈が一度起こると極端に圧縮変形時の弾性率が
低下し、また繰返し変形下においては同一個所で繰返し
座屈するため剛性が極端に低下してしまい、且つ同一個
所で絶えず座屈が発生し、且つ繰返し入力によって該座
屈個所でフィラメント切断、ひいてはコード破断が起き
ることを確認した。
【0020】このことから、ベルト折れはコードの座屈
変形がその発端であり、ベルトコード折れを改良するた
めには、コードに圧縮入力がかかっても座屈変形を起こ
させないことが必要と推定した。
【0021】以上のことより、フィラメントの曲率を大
きくする事により圧縮入力を吸収し、スチールコードで
も圧縮変形時の弾性率の低減及び耐疲労性の大幅な改良
ができるという可能性を見出した。このようなフィラメ
ント自体の変形によってコードの歪入力を吸収させる事
により、従来言われていたフィラメント径の細糸化とは
比較にならない程の耐疲労性改良効果をもたらすことを
見出した。
【0022】以上のようなスチールコードに関する新知
見に基づいて、ベルト折れ性及び軽量性に優れた本発明
の空気入りタイヤが得られたものである。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明におけるベルト層補強コー
ドとして用いられるスチールコードは、前記のように、
その特徴を一言で言い表せば「コードにかかる歪み入力
をフィラメントの曲率変形によって吸収する」というこ
とであるので、コードはこの特徴を満足する撚り構造で
あればよく、撚り構造は特に制約されないが、例えば1
xn(n:2〜7)等の単撚り構造、1+n(n:2〜
8)、n+1( n:2〜15)、2+n( n:5〜
11)、3+n( n:6〜12)、1+n+m(n:
5〜11、m:1〜15)、2+n+m( n:5〜1
1、m:1〜17)、3+n+m( n:6〜12、
m:1〜18)等の層撚り構造を任意に選択することが
でき、中でもコード製造上の観点からは1xn(n:2
〜7)等の単撚り構造が好ましい。特に好ましくは、1
×n(n=3〜6)構造である。
【0024】また、本発明にとってベルト層の上記スチ
ールコードの鋼材は特に規定されるものではなく、通常
鋼と呼ばれる抗張力(300kg/mm2 )程度を有す
るものから超高強力と呼ばれる高張力(400kg/ m
2 以上)程度を有するもの、など、どの様なスチール
鋼材を用いても本発明の目的は達成されることはいうま
でもない。
【0025】通常のベルト用スチールコードでは、コー
ド及びフィラメント共に切断伸度(以下、切伸という)
が2〜3%程度であるが、本発明でベルト層に用いられ
る特定のスチールコードの切伸は3.5%以上であるこ
とが好ましく、さらに4.0%以上であることがより好
ましい。これはたとえばフィラメントの切伸を大きくす
る事により達成され、フィラメントの切伸が5%以上、
好ましくは6%以上の切伸を有するフィラメントが供さ
れる。このような切伸が5%以上のフィラメントは、通
常の撚りコードの型付けを大きくする事により達成され
るが、型付けを大きくする手段以外の手法でも構わな
い。この様に高切伸をフィラメントに付与することによ
り、フィラメントはコード内において比較的自由に変形
することができるようになり圧縮又は伸長歪みを受けた
ときにフィラメント自体の曲率変形によって吸収するこ
とが出来る。従って、従来のスチールコードの様に圧縮
変形によるコードの座屈は発生しない。しかし、無負荷
状態ではこの様に比較的自由に動ける余裕を有している
フィラメントも、伸長応力を負荷すると自由に動ける余
裕空間を失ってしまう。従って、変曲点以上の応力下、
つまり切断伸度の3分の1の応力下でのコード直径の減
少率は、無負荷状態に比べ35%以上、コードの疲労性
を十分確保するためには、好ましくは45%以上である
必要がある。
【0026】また、この特定のスチールコードのフィラ
メントの素線径は0.125〜0.35mmであり、好
ましくは0.125〜0.30mmである。
【0027】フィラメント径が0.125mm未満では
製造の際、伸線がしにくく、抗張力が出にくいため、コ
ード強力が低下し、0.35mmを超えると疲労性が悪
化し、またコード径が太くなり過ぎるため好ましくな
い。本発明においてはフィラメントの曲率を大きくする
ためコード径が若干大きくなる。従ってコードの太径化
をできるだけ少なくするためには細いフィラメントを複
数本撚り合わせた方が好ましい。したがって、直径が
0.30mm以下のフィラメントを3本以上撚り合わせ
た1×n(n:3〜6)構造がコード径、コードの作り
易さ等の観点から最も好ましい。
【0028】さらに、上記したようなコードはその変形
初期においてフィラメントの曲率変形によって歪み変形
を吸収することを特徴としているが、このようなコード
は伸長変形初期においてはフィラメント曲率変形によっ
て応力を発生し、フィラメント同士が接触し、それ以上
変形が進まなくなってから初めてフィラメントの材質自
体が変形し、所謂材質変形領域の変形が生じる。従って
曲率変形域と材質変形域での引張り応力に対する抗力は
当然異なり、コード伸長時の応力−歪曲線(S−Sカー
ブ)は変曲点を有し、引張り変形初期においては通常の
スチールコードのように高い初期引張り応力を示さない
ことに特徴がある。
【0029】前述もしたが、従来、スチールコードの重
量を低減しようとしてコード打込み数を低減すると、コ
ード折れが発生するという不具合があり、タイヤ軽量化
の大きな妨げとなっていた。一般にベルトコードは耐腐
食疲労を改良することを目標にコード内部にゴムを侵入
させた、所謂オープンコードが一般的であるが、本発明
に用いられるスチールコードのフィラメントは切断強度
の3分の1の荷重応力下で該コードの直径が35%以上
も低減出来るほどの変形が可能なため、前述したように
コードの耐疲労性が格段に向上し、ベルトコードの打込
み数を大幅に低減しても、従来のスチールコードに見ら
れるようなコード折れは発生しないという長所を有す
る。
【0030】本発明の空気入りタイヤのベルト層の強度
はベルト層1枚の5cm幅当たり、2000kg以下が
好ましく、1500kg以下がより好ましい。
【0031】また、本発明の空気入りタイヤではベルト
層の外周側に少なくとも1枚よりなるベルト補強層がベ
ルト層全体(キャップ)及び/又は両端部(レイヤー)
に配置され、該ベルト補強層がタイヤ周方向に実質上平
行になる様に螺旋状にエンドレスにまきつけられる事に
より形成されてもよい。
【0032】本発明のスチールコードで補強されたベル
ト層に使用されるゴム成分は特に限定されないが、例え
ば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチ
レン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(I
R)を挙げることができ、中でも天然ゴム、ブタジエン
ゴムが好ましい。また、これらのゴム成分は単独で用い
てもよいし、二種以上併用してもよい。
【0033】本発明において使用するベルト層はスチー
ルコードとゴムからなり、従来の方法で製造することが
できる。このベルト層を適用してグリーンタイヤを成型
し、これに加硫成型を施す。
【0034】
【実施例】以下に本発明の空気入りタイヤの構造を図面
を用いて説明する。本発明の空気入りタイヤの概略断面
図の例を図1及び2に示す。
【0035】図1における空気入りタイヤ10はコード
方向がラジアル方向に向く1プライのスチールコード使
用カーカスプライ4の両端末が左右―対のビードワイヤ
6の周りに巻回されて折り返され、折り返し部の高さh
はカーカスプライ4の高さHの60%であり、ビードフ
ィラーゴム9の高さh’はHの45%であり、該カーカ
スプライ4のタイヤ半径方向の上部に2層のベルト5が
リング状に配置されている、更にその上部のタイヤ踏面
部にはトレッドゴム3が配置されている。また、トレッ
ドゴム3の両サイドのカーカス層上にはサイドウォール
部2及びビード部1が配置されている。
【0036】図2における空気入りタイヤ10はスチー
ルベルト5の外周側に2枚のベルト補強層7(キャッ
プ)及び8(レイヤー)が配設されている。これ以外は
図1と同様である。 ベルトコードの説明 表2及び3にそれぞれ従来のスチールコード及び本発明
に供したスチールコードを示す。また図3に表2及び3
の各コードのS−Sカーブ、図4に代表コードの圧縮疲
労性結果を示す。
【0037】表2の、No.1及び2のコードは通常の
ラジアルタイヤのベルトコードとして使用されているコ
ードの例として1×5、1×3構造のスチールコードで
ある。
【0038】これらのコードは一般にオープンコードと
呼ばれているものであり、コード内部に水が侵入してコ
ードまたはフィラメントが腐食することを防止すること
を目的として、コード内部にゴムを含浸させるためにフ
ィラメント間に空隙が確保されている。従ってこのよう
なコードはS−Sカーブ初期には若干撚り締まりが発生
するために変曲点らしきものは存在するが、これはあく
まで加硫初期にゴムが浸透する空隙を有していればその
目的を達成できるために、本発明に述べるフィラメント
曲率で歪みを吸収するという機能は有しておらず、また
ベルト本来の機能である高い引張り剛性、曲げ剛性を確
保するためにはなるべく少ないフィラメント空隙で十分
なゴム浸透性を得ることが必要とされていた。従って本
発明のスチールコードのフィラメント曲率の様に大きな
曲率は有していない。
【0039】No.3のスチールコードは1×5構造フ
ィラメント径0.15mmの撚りコードである。
【0040】このコードは通常のスチール撚り構造を有
しており、各フィラメントはお互いに接しているために
No.1,No.2のコードと同様に圧縮変形時には座
屈変形を起こす。また一度コードに座屈が発生すると繰
返しの変形入力時に、その座屈点で常に座屈が起こり、
ひいてはその点でフィラメント切れ、またはコード切れ
が発生するという欠点を有する。従って、ベルトコード
に使用されているコードよりはフィラメント径は細いに
も係らず圧縮変形に対する耐疲労性は殆ど改善されてい
ないことが判る。
【0041】No.4、5、6、7、8は本発明に供し
たスチールコードである。なお、コード構造は1×3、
1×5、1×6であり、線径を調節することによりほぼ
同一の強力に近づけている。
【0042】フィラメント径を太くしたり、フィラメン
ト数を多くしたりして通常のベルトコードに使用されて
いるコード強力に近づけても支障はない。但しNo.
5,No.8ではおのおの材質、撚り構造の影響を明確
化するためにコード強力は若干変更している。これらの
コードの特徴としてゴムと複合する前のスチールコード
(以下生コードということがある)のS−Sカーブを図
3に示す。このS−Sカーブの低荷重域では非常に低い
初期引張抵抗度を示し、一定荷重負荷後、急に初期引張
抵抗度が高くなり、その境界で顕著な変曲点が認められ
る。即ち低荷重域では互いのフィラメントは接触してい
ないか、または接触していても、まだフィラメントが自
由に変形できる領域である。その後フィラメントが自由
に動けなくなると、所謂材質変形領域に入り、通常のス
チールコードのような高い引張り抵抗度が発生する。本
発明においては、この低荷重域でのフィラメント挙動が
重要であり、加硫後には機能としては以下2つの機能を
有している、即ちコードまたはフィラメントの座屈変
形を抑制し、変形をフィラメントの曲率変化で吸収でき
るため耐疲労性性が図4に示すように大幅に向上出来る
フィラメント間にゴムが十分浸透するため無負荷時に
はフィラメントはゴム中に他のフィラメントと殆ど接触
することなく存在し、変形下ではフィラメントが変形し
ようとするがゴムが介在するため座屈や腐食もない。
【0043】また、以上のコードの圧縮疲労試験結果を
図4に示す。No.1、No.2、No.3の様な通常
のコードは3.5%の歪みで100〜200回程度の歪
みを付与するとフィラメント切断が生じてしまうが、N
o.4、5、7、8の本発明に供したコードは歪みを3
倍の10.5%にしても数千〜5万回位の歪みを付与し
なければフィラメント切断が起こらない。また、コード
のフィラメント数、材質を変えてもコードの耐圧縮疲労
性はさほど変わらないことが判る。
【0044】以上の様なスチールコードをタイヤに適用
した場合の結果を以下に述べる。ただし、ベルトコード
に用いたコードは前記ベルトコードに囚われず、タイヤ
ベルトコードとして最適と考えられるコードを選択しタ
イヤに供した。
【0045】実施例及び比較例のタイヤにおいて、ベル
トコードに用いられるゴム層のゴム組成物は表1の配合
に示され、またベルトコードの諸要素は表4に示され
る。これらを用いて、加硫条件170℃×13分で、タ
イヤサイズ195/65 R14のチューブレス構造の
図1のタイヤを得て、タイヤのベルトコード折れ及び重
量減(軽量性)を測定した。結果を表4に示す。ベルト
コードの諸要素を変える以外、全て同じタイヤを用いて
評価した。 (比較例1)ベルト層は2枚とも通常のベルトコードと
して用いられている1×3×0.3のスチールコード
(前記コードNo.2に近似的に相当するコード)を打
込数32本/5cmで打込んだゴム引き布を用いてタイ
ヤを作成した。
【0046】タイヤ中でのクラウンセンター部のコード
打ち込み数は32本/5cmであった。
【0047】このタイヤをコントロールタイヤとして、
実施例のタイヤを評価した。 (比較例2)ベルト層は2枚とも通常のベルトコードと
して用いられている1×3×0.3のスチールコード
(比較例1と同様のコード)を打込数20本/5cmで
打込んだゴム引き布を用いてタイヤを作成した。
【0048】タイヤ中でのクラウンセンター部のコード
打ち込み数は21本/5cmであった。
【0049】タイヤ重量は低減したが、ベルトコードの
折れが発生した。 (比較例3)ベルト層は2枚とも通常のベルトコードと
して用いられている1×3×0.3のスチールコード
(比較例1と同様のコード)を打込数10本/5cmで
打込んだゴム引き布を用いてタイヤを作成した。
【0050】タイヤ中でのクラウンセンター部のコード
打ち込み数は10.5本/5cmであった。
【0051】タイヤ重量は低減したが、ベルトコードの
折れが発生した。 (実施例1)ベルト層は2枚とも1×3×0.3のスチ
ールコードであるが、フィラメント曲率を大きくして曲
率で歪みを吸収できる本発明のコードを用い、打込数3
0.5本/5cmで打込んだゴム引き布を用いてタイヤ
を作成した。
【0052】タイヤ中でのクラウンセンター部のコード
打ち込み数は32本/5cmであった。
【0053】タイヤ重量は低減し、ベルトコードの折れ
もなかった。 (実施例2)ベルト層は2枚とも1×3×0.3のスチ
ールコードであるが、フィラメント曲率を大きくして曲
率で歪みを吸収できる本発明のコード(実施例1と同様
のコード)を用い、打込数20本/5cmで打込んだゴ
ム引き布を用いてタイヤを作成した。
【0054】タイヤ中でのクラウンセンター部のコード
打ち込み数は21本/5cmであった。
【0055】タイヤ重量は更に低減したにも拘わらず、
ベルトコードの折れもなかった。 (実施例3)ベルト層は2枚とも1×3×0.3のスチ
ールコードであるが、フィラメント曲率を大きくして曲
率で歪みを吸収できる本発明のコード(実施例1と同様
のコード)を用い、打込数10本/5cmで打込んだゴ
ム引き布を用いてタイヤを作成した。
【0056】タイヤ中でのクラウンセンター部のコード
打ち込み数は10.5本/5cmであった。
【0057】タイヤ重量は更に低減したにも拘わらず、
ベルトコードの折れもなかった。 (実施例4)ベルト層は2枚とも1×5×0.15のス
チールコードであるが、フィラメント曲率を大きくして
曲率で歪みを吸収できる本発明のコード(前記コードN
o.7に近似的に相当するコード)を用い、打込数45
本/5cmで打込んだゴム引き布を用いてタイヤを作成
した。タイヤ中でのクラウンセンター部のコード打ち込
み数は47.5本/5cmであった。
【0058】タイヤ重量は低減したにも拘わらず、ベル
トコードの折れもなかった。 (実施例5)ベルト層は2枚とも1×5×0.15のス
チールコードであるが、フィラメント曲率を大きくして
曲率で歪みを吸収できる本発明のコード(実施例4と同
様のコード)を用い、打込数30.5本/5cmで打込
んだゴム引き布を用いてタイヤを作成した。
【0059】タイヤ中でのクラウンセンター部のコード
打ち込み数は32本/5cmであった。
【0060】タイヤ重量は低減したにも拘わらず、ベル
トコードの折れもなかった。 (実施例6)ベルト層は2枚とも1×5×0.15のス
チールコードであるが、フィラメント曲率を大きくして
曲率で歪みを吸収できる本発明のコード(実施例4と同
様のコード)を用い、打込数20本/5cmで打込んだ
ゴム引き布を用いてタイヤを作成した。
【0061】タイヤ中でのクラウンセンター部のコード
打ち込み数は21本/5cmであった。
【0062】タイヤ重量は低減したにも拘わらず、ベル
トコードの折れもなかった。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
【表4】 各種の評価方法は次の通りである。 (1)スチールコード引張り試験 スチールコードに余分な応力がかからないようにスプー
ルより取り出し、JIS G3510−1992に準拠
し、つかみ間隔250mm、初荷重50gを負荷し、引
張り速度25mm/分、つかみ間隔250mmで試験片
が切断するのに要する最大荷重及び伸びを測定し、切断
荷重及び切断時全伸びを求める。
【0067】切断時全伸び(%)=(E/L)×100 ここでE:切断時伸び(mm) L:つかみ間隔(m
m) より切断時全伸びをもとめる。また、荷重―伸び自記記
録装置によりS−Sカーブを書かせる。 (2)スチールフィラメント引張り試験 スチールコードに余分な応力がかからないようにスプー
ルより取り出し、さらにフィラメントに余分な力がかか
らないようにフィラメントを取り出し、スチールコード
と同様な方法で、試験片が切断するのに要する最大荷重
及び伸びを測定し、切断荷重及び切断時全伸びを求め
る。 (3)ピッチ長さ、型付け量 スチールコードに余分な応力がかからないようにスプー
ルより取り出し、さらにフィラメントに余分な力がかか
らないようにフィラメントを取り出し、波形に癖付けさ
れたフィラメントに張力がかからない様にまっすぐに
し、拡大鏡下で図5に示すピッチ長と型付け量を測定し
た。 (4)コード直径減少率 スチールコードに余分な応力がかからないようにスプー
ルより取り出し、デジタルマイクロスコープで投影法で
コード直径を測定した後、コードに荷重を負荷し、再度
投影法でコード直径を測定する。各コードの切断強力の
3分の1の荷重時と無負荷時のコード直径の比を求め、
これを百分率で表す。 (5)ベルト強度 タイヤクラウンセンター部のコードと直角方向の5cm
幅あたりのコード打ち込み数にコード強力を乗じた値、
つまり コード強力(kg)×打ち込み数(本/5cm) をベルト強度(kg/5cm)とした。
【0068】また、ベルト強度指数は比較例1のベルト
強度の測定値を100として、指数表示した。 (6)コード圧縮疲労性 円筒状のゴムサンプルに被検体のコードを円筒の長手方
向がコードの軸方向となるように埋め込み、このコード
軸方向に、繰り返し圧縮入力を負荷し、コードが破断す
るまでの回数を調べた。 (7)ベルト折れ評価 サイズ195/65R14の前述のタイヤを用いて、実
地で、30000km走行後、タイヤを解剖してそれぞ
れのベルト層を取り出した後、それぞれ、周方向の任意
の一か所20cm×ベルト全幅の範囲のX線写真を撮
り、フィラメントの状態を観察し、コードのフィラメン
トが一本でも折れていたら、ありと評価する。
【0069】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明の空気
入りタイヤにおいては、特定のスチールコード使用のベ
ルト層を用いることにより、ベルトコード折れの発生を
防止し、且つ軽量性に優れるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の例示の空気入りタイヤの概略断面図で
ある。
【図2】本発明の他の例示の空気入りタイヤの概略断面
図である。
【図3】本発明の実施例及び比較例におけるスチールコ
ードのS−Sカーブを示す図である。
【図4】本発明の代表的実施例及び比較例におけるスチ
ールコードの圧縮疲労性を示す図である。
【図5】本発明におけるスチールコードのフィラメント
のピッチ長さと型付け量を説明する概略図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ l ビード部 2 サイドウォール部 3 トレッドゴム 4 カーカスプライ 5 ベルト 6 ビートワイヤー 7 ベルト補強層(キャップ) 8 ベルト補強層(レイヤー) 9 ビードフィラー

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一対のビード部と、両ビード部にまたが
    って延びるトロイド状のカーカス層と、該カーカス層の
    クラウン部に位置するトレッド部と、該トレッド部の両
    側にサイドウォール部とを具えると共に、該トレッド部
    のタイヤ半径方向内側に配置された少なくとも2枚のベ
    ルト層を有したタイヤであって、 該ベルト層の少なくとも1層の補強コードが、素線径
    0.125から0.35mmのフィラメントを複数本撚
    り合わせたスチールコードであり、該コードがその応力
    −歪曲線に変曲点を有し、且つ切断強度の3分の1の荷
    重応力下での該コードの直径の無負荷状態での直径に対
    する減少率<R>が35%以上であることを特徴とする
    空気入りタイヤ。
  2. 【請求項2】 前記コードの直径の減少率<R>が45
    %以上であることを特徴とする請求項1記載の空気入り
    タイヤ。
  3. 【請求項3】 前記ベルト層の強度がベルト層1枚の5
    cm幅当たり、2000kg以下であることを特徴とす
    る請求項1乃至2のいずれか1項に記載の空気入りタイ
    ヤ。
  4. 【請求項4】 前記ベルト層の強度がベルト層1枚の5
    cm幅当たり、1500kg以下であることを特徴とす
    る請求項1乃至2のいずれか1項に記載の空気入りタイ
    ヤ。
  5. 【請求項5】 前記コードの撚り構造が1×n(n=3
    〜6)の単撚り構造であることを特徴とする請求項1 乃
    至4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 【請求項6】 前記ベルト層の外周側に少なくとも1枚
    よりなるベルト補強層がベルト層全体及び/又は両端部
    に配置され、該ベルト補強層がタイヤ周方向に実質上平
    行になる様に螺旋状にエンドレスにまきつけられる事に
    より形成されることを特徴とする請求項1乃至5のいず
    れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004009760A (ja) * 2002-06-03 2004-01-15 Yokohama Rubber Co Ltd:The 空気入りラジアルタイヤ
JP2006528104A (ja) * 2003-07-18 2006-12-14 ソシエテ ド テクノロジー ミシュラン 重車両用のタイヤ
JP2010179773A (ja) * 2009-02-05 2010-08-19 Bridgestone Corp 空気入りラジアルタイヤ

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