JP2000079353A - 回転ドラム型磁気分離装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 分離装置への流入時あるいは流入後に微細な
スラッジが塊状、綿状に集合する場合などに発生する搬
送不良を解消でき、微細なスラッジの分離回収能に優れ
るとともに、優れた液切れが持続可能な構成からなる回
転ドラム型磁気分離装置の提供。 【解決手段】 回転ドラム表面の所要深さの表層を改質
処理で磁性体化することにより、スラッジには磁石の磁
力による吸着力以外に、磁石により一時的に磁石化する
回転ドラム表面からの吸着力が作用し、回転ドラム表面
の摩擦力に対向して搬送力が向上してスラッジの搬送不
良の発生を低減し、あるいはさらに絞りローラーに周方
向の溝部を設けて、ローラー両端部の液濡れを低減し、
穿孔内径を選定したパンチングメタルをスクレパーに用
いて液切れを向上させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】この発明は、クーラント液よ
り微細スラッジを効率よく回収するとともにスラッジの
液切れを向上させた回転ドラム型磁気分離装置に係り、
回転ドラム表面の所要深さの表層部を磁性体化して搬送
能力を向上させ、スラッジの分離搬送不良の発生を低減
し、また、絞りローラーに周方向の溝部を設けて、ロー
ラー両端部の液濡れを低減し、さらにパンチングメタル
をスクレパーに用いて液切れを向上させ、分離搬送能力
並びに固液分離効率に優れた回転ドラム型磁気分離装置
に関する。

【０００２】

【従来の技術】金属材料、特に鉄鋼材料などの磁性材料
の切削加工、研削加工に際し、クーラント液とともに排
出される切削屑や切粉は、通常、液分と切削屑や切粉に
分離回収される。切削屑や切粉の形状に応じて種々の磁
気選別装置が提案されている。例えば、スラッジと呼ば
れる切粉は粉状で容易に集合して液分を含みやすく、分
離回収が困難であるため、微細スラッジの分離回収能と
ともに液切れ性に優れた装置が要求されている。すなわ
ち、通常のスラッジの分離に適した構成として実用化さ
れている回転ドラム型磁気分離装置では、微細スラッジ
の分離回収が困難でその改良が求められている。

【０００３】図１に示す回転ドラム型磁気分離装置は、
箱型の本体１内にはクーラント液の液溜め部２が設けら
れ、これを２分するごとく回転ドラム３が中央部に水平
に軸支配置されている。回転ドラム３はステンレス鋼な
どの非磁性材からなる円筒体で、外周面に磁石４を配置
した内筒５を内部に同軸固定してある。内筒５の磁石４
は回転ドラム３の外周面に所要の磁束を作用させるよう
に適宜磁極が配置される。

【０００４】回転ドラム３へ磁力を作用させる範囲は、
ドラム外径やスクレパー７の配置位置などに応じて種々
の構成が採用できるが、図示の構成においては、回転ド
ラム３の液溜め部２に浸漬する部分から頂上部までの外
周の３／４部分に、その外周部に吸着力が及ぶように内
筒５に磁石４が配置され、残り１／４部分は内筒５に磁
石がなく磁力が作用しないように構成され、液溜め部２
底で回転ドラム３外周面に吸着されたスラッジは当該ド
ラム３の回転により、回転ドラム３の頂上部まで搬送さ
れ、頂上部を過ぎると吸着力から開放され、回転ドラム
３表面に当接する板状のスクレパー７にてスラッジが掻
きとられて回収される。

【０００５】回転ドラム３の頂上部近くには絞りローラ
ー６が配置され、所定の押圧力で外周面に当接すること
で回転ドラム３表面に吸着されているスラッジに含まれ
る液分を搾り取るように構成してある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】上述の磁石内筒を回転
ドラム内に内蔵する構造の磁気分離装置において、スラ
ッジが搬送される機構は、磁石がスラッジを吸着する力
に比べて、スラッジと外筒表面の摩擦力が打ち勝ってス
ラッジが搬送されると考えられる。回転ドラム表面の面
粗度が良くなりすぎるとスラッジの搬送能力が低下し、
面粗度が悪くなると液切れ低下する傾向にあり、搬送能
力と液切れのバランスを取るため、面粗度はスラッジ形
状との相関関係より所定の範囲がある。

【０００７】また、搬送不良は、当該分離装置に流入す
る際に既にスラッジが塊状、綿状に集合している場合、
あるいはスラッジ自体の寸法が大きすぎる場合、また微
細なスラッジが塊状、綿状に集合する場合などに発生し
やすく、かかる搬送不良を解消するには、スラッジと外
筒表面の摩擦力を上げるか、吸着力を上げることが考え
られる。しかし上述の面粗度には最適範囲があり、吸着
力の向上は磁石の増量又は高性能化できるが、両者のバ
ランスが要求される。

【０００８】一方、スクレパーは回転ドラムに全面接触
しており、スラッジを掻きとるとともにドラム表面の液
分も掻きとり、液分が含まれたスラッジとなる問題があ
った。また、絞りローラーはその両端部は絞り効率が悪
く表面が濡れた状態となり易く、この部分の液はスクレ
パー部分でスラッジに吸い取られてしまい、分離したス
ラッジの液切れが悪くなる要因となる問題があった。

【０００９】この発明は、上述した従来の回転ドラム型
磁気分離装置の問題点を解消することを目的とし、分離
装置への流入時あるいは流入後に微細なスラッジが塊
状、綿状に集合する場合などに発生する搬送不良を解消
でき、微細なスラッジの分離回収能に優れるとともに、
優れた液切れが持続可能な構成からなる回転ドラム型磁
気分離装置の提供を目的としている。

【００１０】

【課題を解決するための手段】発明者は、搬送不良の解
消を目的に回転ドラムの構成について種々検討した結
果、例えば、非磁性材からなる回転ドラム表面の所要深
さのみ、その組織をフェライト組織化、マルテンサイト
組織化することにより、スラッジには磁石の磁力による
吸着力以外に、磁石により一時的に磁石化する回転ドラ
ム表面からの吸着力が作用し、回転ドラム表面の摩擦力
に対向して搬送力が向上すること、すなわち、スラッジ
と回転ドラム表面の摩擦力は、回転ドラム表面に発生す
る吸着力の分だけ大きくなり、磁石のスラッジを吸着す
る力を上回り、搬送不良を低減できることを知見した。

【００１１】また、発明者は、液切れの向上を目的にス
クレパーと絞りローラーの構成について種々検討した結
果、スクレパーが回転ドラムに全面接触しているのを例
えば、所要の内径の孔が配列した孔空き板、いわゆるパ
ンチングプレートを用いてスクレパーを構成し、接触面
積を減少させて掻きとる液分を分離させるようにする
と、液切れの向上が可能であること知見した。

【００１２】さらに、発明者は、絞りローラーの両端部
表面が濡れた状態の改善を目的に種々検討した結果、絞
りローラーの両端部に溝部、スリットを入れてやること
で、液濡れ部分が生じる幅を制御でき、ローラーの押圧
力や回転数、液の種類に応じて端面よりの液濡れ部分幅
を、スリットの幅、深さ、本数、間隔を適宜選定して制
御できることを知見し、この発明を完成した。

【００１３】

【発明の実施の形態】この発明は、回転ドラム表面の所
要深さだけ磁性体化させて、磁石からの磁気吸着力以外
に、ドラム表面からの吸着力をスラッジに作用させて、
スラッジと回転ドラム表面の摩擦力はドラム表面からの
吸着力分だけ大きくなり、磁石ドラムからの吸着力を上
回り、搬送不良を低減することを特徴とする。

【００１４】この発明において、回転ドラム表面の所要
深さだけ磁性体化する手段は、フェライト化処理または
マルテンサイト化処理する改質処理、例えば窒化熱処理
などの他、フェライトなどの磁性体シートを貼着あるい
は挟み込むことが可能で、回転ドラム表面の全部あるい
は所要部のみ、あるいは所要パターンで設けることが可
能である。磁性体層の厚みは、１０μｍ〜０．５ｍｍ、
好ましくは２０μｍ〜８０μｍである。

【００１５】上記の改質処理のうち、窒化熱処理条件と
しては、被処理材質に応じて適宜選定されるが、窒素含
有雰囲気で、３００℃〜７００℃、３０分〜２４時間保
持する処理が好ましい。

【００１６】この発明において、絞りローラーの両端部
に周方向の溝部をそれぞれ少なくとも１本設けた構成と
するのは、絞りローラーの構造上、その両端部は押圧力
が作用し難く絞り効率が悪いためであり、ここに所要
幅、深さの溝部を周方向に単数又は複数設けることによ
り液分は溝部に入り回転ともに排出され、液濡れが低減
される。ローラーの押圧力や回転数、液の種類に応じて
端面よりの液濡れ部分幅を、スリットの幅、深さ、本
数、間隔を適宜選定して制御できるが、例えば、ローラ
ー外径が７０〜１３０ｍｍの場合、スリット幅は０．１
ｍｍ程度、深さは５〜１５ｍｍで、５ｍｍ程度の間隔で
配置するのが好ましい。

【００１７】この発明において、スクレパーに所要内径
の孔を多数配列した板材を使用することにより、板材に
配列した孔より液分を排出して、掻きとったスラッジに
液分が戻らないようにする。孔の形状と寸法並びに配列
方法はスラッジの寸法形状、液種などに応じて適宜選定
するが、例えば、内径０．５ｍｍの丸孔を数個〜数十個
／ｃｍ²、千鳥配置するのが好ましい。

【００１８】

【実施例】実施例１ 前述した図１の構成からなる回転ドラム型磁気分離装置
において、ステンレス鋼からなる回転ドラム表面に、温
度５３０℃、窒素含有雰囲気、４時間保持なる条件の窒
化熱処理により、表層３０μｍ厚みのフェライト組織を
全面に形成した。

【００１９】上記のこの発明による分離装置において、
寸法が２０μｍ〜１０００μｍのスラッジを含む水のみ
あるいは、水溶性、油性クーラント液の３種の液よりそ
れぞれ磁気分離させたところ、いずれの液の場合も、回
転ドラム表面にフェライト組織を形成しない従来の装置
に比較して、塊状、綿状に集合したスラッジの搬送不良
が７０％低下し、搬送能力が大きく向上したことが分か
る。

【００２０】実施例２ 前述した図１の構成からなる回転ドラム型磁気分離装置
において、図２Ａに示す絞りローラー６には、その両端
部に液濡れ部６ａ，６ｂが発生していたが、図２Ｂに示
すように同部６ａ，６ｂに幅０．１ｍｍ、深さ１０ｍｍ
の溝部６ｃを２本ずつ設けたところ、液濡れ部は最も端
の溝部６ｃより外側の部分のみに減少し、スクレパー７
にて掻きとられるスラッジ８が液濡れすることが大幅に
減少した。

【００２１】実施例３ 図３Ａに示すごとく、回転ドラム３に当接させるスクレ
パー９に、内径０．５ｍｍの小孔９ａを１ｍｍ間隔で穿
孔したパンチングメタルを使用したところ、分離回収さ
れるスラッジ８の重量が穿孔のない従来に比較して８％
軽減され、液切れが大きく向上したことが分かる。又、
パンチングメタルによるスクレパーは、無負荷時の液切
れに関し、従来のスクレパーに比べて７１％向上した。

【００２２】

【発明の効果】この発明による回転ドラム型磁気分離装
置は、回転ドラム表面の所要深さの表層を改質処理で磁
性体化することにより、スラッジには磁石の磁力による
吸着力以外に、磁石により一時的に磁石化する回転ドラ
ム表面からの吸着力が作用し、回転ドラム表面の摩擦力
に対向して搬送力が向上してスラッジの搬送不良の発生
を低減し、あるいはさらに絞りローラーに周方向の溝部
を設けて、ローラー両端部の液濡れを低減し、穿孔内径
を選定したパンチングメタルをスクレパーに用いて液切
れを向上させることができ、各手段は個別に有効である
が併用することにより、搬送能力並びに固液分離効率が
相乗効果により一段と向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明による回転ドラム型磁気分離装置の全
体構成を示す縦断説明図である。

【図２】図２Ａは回転ドラム型磁気分離装置の回転ドラ
ムと絞りローラーとの位置関係の詳細を示す説明図であ
り、図２Ｂはこの発明による絞りローラーの説明図であ
る。

【図３】図３Ａは回転ドラム型磁気分離装置の回転ドラ
ムと絞りローラーとスクレパーの位置関係の詳細を示す
説明図であり、図３Ｂはこの発明によるスクレパーの詳
細を示す説明図である。

【符号の説明】

１ 本体 ２ 液溜め部 ３ 回転ドラム ４ 磁石 ５ 内筒 ６ 絞りローラー ６ａ，６ｂ 液濡れ部 ６ｃ 溝部 ７，９ スクレパー ８ スラッジ ９ａ 小孔

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 非磁性材からなる回転ドラム内に磁石を
   外周面の所要位置に配置した内筒を内蔵し、回転ドラム
   に当接する絞りローラーとスクレパーを備えた構成から
   なる磁気分離装置において、回転ドラム表面の全部又は
   所要部が所要深さで磁性体化された回転ドラム型磁気分
   離装置。
2. 【請求項２】 請求項１において、ステンレス鋼からな
   る回転ドラム表面に改質処理による磁性体層を設けた回
   転ドラム型磁気分離装置。
3. 【請求項３】 請求項１において、絞りローラーの両端
   部に周方向の溝部をそれぞれ少なくとも１本有する回転
   ドラム型磁気分離装置。
4. 【請求項４】 請求項１において、スクレパーが所要寸
   法、形状の孔を多数配列した板材からなる回転ドラム型
   磁気分離装置。